あれから何ヵ月か過ぎ、冬が過ぎ、春が訪れた。9年目の春だ。
花が目を覚まし、動物が動き出した。暖かい風がやってきた。
『禁じられた森』。ホグワーツ城の敷地内にあり、たくさんの魔法動物が住む森だ。危険な動物もいるために、生徒達だけの立ち入りは禁止されている。
それなのに、10歳にも満たない少女はたった一人でそこに来ていた。
「ケンタウロスさん、またお会いできましたね」
「また来たのですか、少女よ。今日は星の輝きがいつにも増して強い…あなたが来るといつもそうだ…」
遠い目でそんなことを言っているケンタウロスは、自分の縄張りに入ってきた少女を追い出すことはしなかった。
「私がいない間、何か悪いこと、良くないことはありませんでしたか?」
「いいや、いつも通りだよ…それでは私はそろそろ行きます」
「ええ、またお会いしましょう」
彼らはいつもこうだ。手短に話を終わらせて、他人とはなるべく関わらないように生きている。
「さて、そこのニフラーさん。私の靴に金属はありませんよ?靴以外なら別ですが」
この子達もそうだ。金属集めが習性の彼らは、金属に目がない。まあ、このニフラーはどうやら金属目当てでは無さそうだが……ふと、肩に軽い重みを感じたかと思うと、ボウトラックルが私の肩に座っていた。上を見上げれば、鳥達が遊んでいる。
「いつも通り…ですか…」
そう、いつも通りの時間が始まったのだった。
家に帰ろうにも【死喰い人】に燃やされた。
唯一の血の繋がりを持つ叔父は殺された。
護ってくれる人はもういない。
護れなくて悔しかった。
私は自分の弱さに負けた。
帰るべき場所も、迎えてくれる家族も失った。
笑みを浮かべて戦う私を見て、【死喰い人】の誰かが言った。
『鬼だ』
────と。
恐怖に顔をひきつらせながら言った。
『死を喰らう鬼だ』
──────と、、、。
そんな血に濡れた "鬼" に声をかけた人がいた。
「新しい家が見つかるまでホグワーツで過ごさんかのぉ?」
その人は "鬼" を恐れなかった。それよりも "鬼" の中にいる闇に恐れを抱いていた。
「そっち行っても誰も死なない?」
「ああ、誰も死なない」
こうして "鬼" は人に連れられ、"少女"に戻った。
そして、その少女、レイラ・ユオハーゼはその森に居た。
少しの間で鈍ってしまった魔法を思い出すために。
「みんな、少しだけ離れてくださいね。当たって仕舞わない様に」
いつの間にか集まってしまった動物達に、レイラは声をかける。足元に居たニフラー。肩に座って居たボウトラックルも私の言葉を聞き動き出した。一人も残っていない事を確認して、彼女は呪文を唱えた。
「
もちろん、対象は生き物だ。この魔法を維持しながら攻撃魔法を繰り出し、二つの魔法を操る鍛錬を同時に行っていた。
「
杖から鳥が出てくる。
「
その言葉で、魔法の鳥が守りの中にあった木を攻撃した。
気がついた時にはもう日が暮れようとしていた。そろそろ戻らないと、ここに来た事がバレてしまう。
「皆さん、また明日来ますね」
最後まで見届けてくれていた彼らにそう言うと、彼らはうなづいた(ように見えた)。彼らに手を降りながら、レイラはホグワーツへ走った。
「またあの子は、森へ行ったのか?困ったのう…」
ダンブルドアは、森番であるハグリッドの小屋でそんな話をしていた。
「そうなんです。どうやら、動物達もなついちまったみてぇで」
「動物達が?」
「へい、あの気難しいケンタウロスも縄張りに入ったあの子を襲わねぇんです。それに、普通なら金属に目がないニフラーも、人を警戒するボウトラックルも、他の動物達もあの子の周りで見守ってるんです。あのユニコーンも遠巻きながら見守ってるんですよ」
「うむ…もう少し様子を見ていてくれるかのう。何かあればすぐに対処できるように準備も頼む」
「分かりました。あと、ダンブルドア校長。赤毛の双子がまた森で遊び始めましたんで、注意をお願いしていいですか?」
「あの二人もか?…了解じゃ。マクゴナガル先生に報告しておこう」
「それでは、ハグリッドよ。また近い内にな」
「へい、いつでも大歓迎です」
そう言って小屋を出ると、丁度赤毛の双子が前を横切った所だった。
「ミスター・ウィーズリー達よ」
ダンブルドアが声をかけると、二人とも跳び上がった。そしてギギギ、という効果音がつきそうな速度で振り返った。
「こ、こ、校長先生ではありませんか」
「こ、こ、こんな所でお会いできるとは」
「二人ともどうしたのじゃ?なぜそんなに焦っておる」
二人とも目を泳がせ、チラチラと辺りをみている。
「まあ、よい…じゃがこれからは気をつけるのじゃぞ?」
「「は、はい!!」」
返事をした二人は慌ててホグワーツへ帰っていった。
夏休みが永遠に続けばいいのになー