「…君、誰だい?」
「…どこから来たの?」
僕らは目の前にいる少女に問いかけた。
綺麗な顔立ちに、木漏れ日にキラキラ輝く銀色の髪。
驚いたような表情をしているその顔は、まだまだ幼さを残している。
少しして、彼女はその潤んだ唇を開いた。
「……なぜ、森に…?」
鈴の音が、静かな森に響き渡る。
見惚れたか、聞き惚れたか…僕らはワンテンポ遅れて、やっと返事をした。
「「えっと、それは…」」
僕らは走っていた。鬼の形相という表現が似合う顔で追いかけてくる、管理人から逃げるために。
「おまえらァーいい加減にしろ!!」
「「やなこった~」」
「ウィィィィズリィィィィ!!!!」
どうやらフィルチをキレさせてしまったらしい。まあ、いつもの事だ。周りの生徒が白い目で見ながら、「また双子か…」などと話しているが、こちらも同じく。
(そろそろだな!)
(投げるぞ!)
互いに意思疎通し合うと、同時に糞爆弾をフィルチに投げつけた。
「「じゃあな、フィルチ!」」
「逃がさんぞ‼ゴホ、ゴホ、…くさっ!」
フィルチは煙を吸い込んだのか咳をし、顔をしかめている。その隙に僕らは近くの道に隠れた。
生徒達の声がだんだん小さくなっていき、ついに聞こえなくなった。それを確認した僕達は、足を動かしながら、お互いに声を掛け合った。
「やったな、ジョージ!」
「やったぜ、フレッド!」
お決まりのハイタッチを交わした。
今日はなかなかの偉業を成し遂げた。
というのも、今日はフィルチの管理室に忍び込んで、没収された物を取り返す事が目標だった。
いざ実行してみると、管理室は意外と簡単に忍び込む事ができ、加えて自分達の没収品以外の興味深い品も手に入れる事ができた。
が、浮かれて油断したその時、フィルチが帰ってきてしまったのだ。どうやら見られなくなかったものがあったらしく……
まあ、そんなこんなで今に至るわけだ。
「ジョージ、そういえば、この道って森に行くんじゃなかったか?」
「…そうかもしれない」
先ほど急いで逃げ込んだため、どこの道か確認し忘れてしまった。
「まあ、着けば分かるさ」
「そうだな、フレッド」
僕らは軽い足取りで前へと進んでいった。
「あなた達、もしかして悪戯をしていたのでしょうか?フィルチさんを困らせたのですか?」
発せられた彼女の声で、僕らの意識が現実へと戻った。
「「フィルチさん?!」」
「な、なんで、さん付け?」
「あいつに、敬称付ける人がいたんだ…」
「フィルチさん……何か変ですか?」
何かおかしな表現かしら、と彼女は小首をかしげている。少しして諦めたのか、話を戻した。
「それはさておき。あなた達、やはり、悪戯していたのででしょう?」
「「ち、違うよ‼」」
「悪戯何て、し、してないよ。ねえ、ジョージ?」
「そ、そうだよ、フレッド。ぼ、僕らは優等生だから、ね?」
「怪しいですね…」
「「……」」
「あなた達はハグリットが言っていたあの双子ですよね…。
……そう言えば、お二人はなぜこんな所にいるのですか?ここは、生徒の立ち入りが禁止されているはずです」
透き通った青い瞳が、僕らの目を交互に覗き込んでくる。
「…えっ、えっと…僕達、秘密の裏道から逃げて来たんだ」
「そ、そうそう」
「…逃げて来た…?やっぱり、怪しい…」
彼女の整った顔がいっそう険しくなる。
「そ、それで…君は何でここにいるんだい?」
「制服じゃ無いけど、ホグワーツの生徒…?」
「理由は無いですよ。強いて言えば、この森が好きだから、ですかね。
それと私は、ホグワーツの生徒ではありません」
「「そうなんだ……って、へ⁈」」
僕らは幻聴でも聞いたかと思った。見かけによらず、随分と大胆な事を言う。
「へ?と言われましても…そのままです」
「せ、『生徒でもありません』って、じゃあ君は誰なんだい?」
「どこから…というか、いくつ?」
「…えっと、今は9歳ですね…どこからかは…う~ん、ホグワーツから?」
「「やっぱり生徒⁈」」
「だから違いますって…」
そう言って苦笑する彼女からは、触れたら壊れてしまうような繊細さが感じられる。黒を基調としたワンピースが、彼女の透き通るような白い肌と白銀に輝く髪を映えさせていて、彼女の周りだけ冬がきたのかと思ってしまうくらいだった。
「何か、言いたいことでもあるんですか?聞いてあげますよ?」
「あ、ああ、ごめん…。
そうだ!せっかくこうして会えたんだから、」
「お互い、自己紹介をしよう!」
「…自己紹介、ですか?」
そう言って、彼女は戸惑ったような表情をした。
「僕、フレッド。よろしく」
「僕、ジョージ。よろしく」
「「それで、君の名前は?」」
僕らはそう言って、彼女の顔を覗き込んだ。
「……私が入学するまで秘密、です……
そう言われましたから……」
彼女は顔を反らしながらそう言った。
「「え?」」
「「やっ、やっぱりどこかのお姫様なんじゃ……」」
僕らは顔をひきつらせ、声を揃えた。
「……クスッ」
「「え?」」
彼女が顔を反らしたまま小刻みに震え始めた。
「……フッ……フフフッ!」
「「は?」」
笑っている?
そう思った僕らの前で、彼女は声を出して笑い始めた。
「フフフッ……アハハハハッ!」
「なっ何で笑ってるの?!」
「え?なっ何がどうなってるの?!」
──これが彼女との出会いだった。
「お二人もまた来たんですか?全く懲りない人達ですね…」
「もちろんさ!」
「二人も?」
毎日のように来るようになった双子。だが、 "も" と言われるのは珍しい。フレッドが疑問に思ってレイラに聞き返そうとしたとき、
「これでいいか?」
「ええ、ありがとうございます」
レイラの後ろから、スリザリン生のマーカス・フリントが現れた。
「ごめん、無かったよ」
「そうそう見つかるものじゃないので大丈夫ですよ」
横の小道からはレイブンクローのチョウ・チャンが。
「案外簡単に見つかったな」
「そうなんですか?」
空からは、箒に乗ったハッフルパフのセドリック・ディゴリーが。
さらには、
「やっと見つけた、、、って何でこんなとこにいるんだ?フレッドとジョージ」
二人の後ろからグリフィンドールのリー・ジョーダンが。
「「「「「「え?」」」」」」
お互いの顔を見て、驚く6人。
「皆さん、ありがとうございます!これで怪我をしたニフラーを助けられます!」
6人の寮関係を知らないレイラは嬉しそうな顔でお礼を言う。
「何でここにいるんだ?」
「こっちのセリフだ、それは」
グリフィンドールとスリザリンという関係のマーカスとフレッド、ジョージは敵意を剥き出している。今にも飛びかからんとする勢いだ。
「お前ら禁じられた森にいて大丈夫なのか?」
「お前もな、ディゴリー」
眉を潜めて言うセドリックにリーが指摘する。その間にも、三人は杖を抜こうとしている。
「喧嘩しないで下さいよ?」
「そうよ、レイラが困ってるわ」
少し困ったような表情をするレイラと、彼女の近くに立って頬を膨らますチョウ。
少女二人が言ったところで事態は何も変わらない。
「「「「「ごめんなさい!」」」」」
────普通は。
すぐに謝った5人の男の子を見て、レイラとチョウはフフッと微笑んだ。
「ねえ、今日は何してるんだ?」
「また、魔法見せてよ!」
顔を上げたフレッドとジョージがキラキラした目でレイラに言った。
「今日は動物と話したり、炎を出す練習をしていました。あ、それとニフラーの治療ですね。
呪文を唱えると、レイラの杖先からリンドウ色の小さな炎が現れた。
「大きさも変えれるんですよ」
そう言うと、レイラは炎を自分の顔ぐらい大きくしたり、小指の爪くらい小さくしたりして見せた。
「わあ~すごい!」
「君、本当にすごいよ!」
「ありがとうございます」
賞賛してくれる6人にレイラは頬を緩ませた。
随分と長い間、年の近い人と接する機会がなかったためか、彼らといるとなんだか新鮮だった。
ランランラン
ルンルンルン
フンフンフン
(*ノ゚Д゚)八(*゚Д゚*)八(゚Д゚*)ノィェーィ!