クオリティーはどうであれ最後まで楽しんでいきたいと思うのでよろしくお願いします!
side珪太
俺は今、高校の剣道場にて新聞部員として剣道部の様子を取材している。今日は日曜日で普段だったら学校も部活も休みではあるが、この日はウチの学校の剣道部と埼玉屈指の名門である浦和龍昇(うらわりゅうしょう)高校の剣道部が練習試合をやるとのことで急遽新聞部の俺達が駆り出されることとなったのだ…現在は女子の団体戦が行われているところである。
「どうだ、綾野!剣道って華やかなスポーツだと思うだろ?」
「は、はい。そうですね…」
元剣道部の新聞部部長である外崎先輩はこうやって剣道の魅力を勧めてくるが、ALOの豪快な戦いを知る俺としてはあまり惚れる材料はない。しかし、剣を振るい力強く相手に立ち向かうことに関しては共通する何かを感じる…
「勝負あり!」
目の前の試合が終わり、いよいよ次の試合を迎える。次は副将戦…ウチは先ほどの中堅戦で負けて1勝2敗、相手側は2勝1敗と後がない状況である。
「こっちはキャプテンの両角で行きます。両角、行ってこい!」
「はい!」
ウチの方は女子のキャプテンである『メガネの両角』こと両角先輩を送り込む。彼女はチームのムードメーカーであり、実力に関しては2年時のインターハイの個人戦でベスト8の実績を持つなかなかの実力者だ。
「それならば、こちらはエースの桐ヶ谷で行きましょう。桐ヶ谷、お前が決めてこい!いいな?」
「はい!」
そして、相手側は桐ヶ谷という(監督曰くの)エースを送り込む。黒髪のショートボブで本当に剣道をやっているのかと言いたくなるぐらいに童顔なのだが、果たしてエースの器に相応しいのだろうか?外見からはよく分からない…
「先輩、相手の桐ヶ谷って人はエースと言ってましたけど…そんなに強いんですか?」
「バカ野郎!お前、浦和龍昇の桐ヶ谷直葉を知らないのか!?」
「す、すぐ…は?」
俺は外崎先輩の口から『直葉』という聞き覚えのある名前を耳にする。その人って確か、キリトさんの妹さんでつい昨日会ったばかりだ…なるほど、リアルではこんな感じなのか。(ALOは見た目とかがランダムで決まるので、リアルとゲームの容姿の違いは承知済み)
「ああ、彼女は1年ながらインターハイと玉竜旗のレギュラーに抜擢されて今は2年生ながら3年生を差し置いて名門龍昇のエースに選ばれた逸材なんだぞ?おまけに、ルックスとスタイルの良さから剣道専門雑誌にも特集が組まれた実績もあり、グラビアが近日撮影されるという噂もあるんだぜ!凄いだろ?」
「そ、そうですか…」
直葉さんってそんなに凄い人だったのか…こねえが言うにはALOでは兄であるキリトさんが率いるギルドの中では魔法と剣を扱わせれば超一流とか言ってたぐらいだから、剣道で身につけたスキルがALOに活かされているとするならば相当な強者であることに間違いない。
「始め!」
審判の合図と共に両角先輩と直葉さんがお互いに立ち向かっていく。その姿は遠くで見ても力強い…どちらも実力者だけに驚かされる。
「めええええええええん!!」
「どおおおおおおおおお!!」
開始15秒で互いの技が両者に命中するが、審判の旗は上がらずどちらも有効打と認められなかった。そんな中で試合は進んでいくものの、互いの技の打ち合いが続きなかなか決定打が生まれない…そんな中で試合開始から1分30秒が経過して試合が動いた。
「こてええええええええ!!」
圧力に押された両角先輩に一瞬の隙が生まれ、プレッシャーをかけてきた直葉さんの小手が命中して赤い旗が上がる。
「一本、勝負あり!」
そして、団体戦は相手の浦和龍昇高校女子剣道部が大将戦を待たずにして快勝した。本来であれば大将クラスの直葉さんを副将に持ち込まれては為す術がない…ちなみに、ウチの大将は都大会では無敵で全国でもベスト4クラスの大エースである諸熊先輩が控えていたのだが、切り札を使う前に負けてしまうという結果に終わってしまった。
「強いですね…」
「ああ、まさか試合中に隙を見せない両角があんな形で負けるとは予想外だぜ…この調子だと今年の全国大会は桐ヶ谷さんのものだな。」
外崎先輩もこの強さには唖然とする。俺も彼女の戦いを見て、剣道の魅力をフルで感じることができた…彼女は予想通りに剣を扱わせたら超一流である。
「先輩、後ででいいんで桐ヶ谷さんを呼んでもらっていいですか?俺、彼女に取材したいんで…」
「ああ、分かった…とりあえず、相手の監督さんに頼んでみる。」
こうして、俺は部長の外崎先輩頼みで直葉さんを呼ぶことに成功した。後は俺のところに来てくれるかどうかを待つのみだ…
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練習試合が終わり、俺は校門前で直葉さんを待つ。どうして呼び出したのかと言うと、俺の決意を彼女に聞いてもらいたいからである…似た境遇の人間同士だ、きっと理解してくれると思う。
「こんにちは!」
丁度その時、直葉さんがやって来ては俺に挨拶をする。先ほどまでの道着とは打って変わり、制服姿も可愛らしい…このような人が剣道をやってるのかと疑問に思うぐらいに魅力的だ。
「こんにちは。すみませんね…突然呼び出して、俺はこの学校の新聞部部員の綾野珪太です。貴方が桐ヶ谷直葉さんですね?」
「そうですけど…って、もしかしてケイタくん!?」
「はい!昨日ぶりですね、リーファさん…いえ、直葉さん。」
こうして俺と直葉さんはリアルでファーストコンタクトを迎えた訳だが、その中で彼女は俺の姿を見て驚いていた。まあ、それも仕方ないかもな…よく知ってるこねえとほぼ瓜二つなのだから。
「本当に珪子ちゃんとそっくりなんだね。」
「まあ、俺達双子ですから…それはそうと少しお話があるんですけど、いいですか?」
「えっ、取材じゃないの?」
「まあ、後で取材したいこともあるのであながち嘘ではありません。それでも俺がメインでやりたいのは昨日の話の続きなので…」
「うん、いいよ。頼っていいと言ったのは私だからね…」
「ありがとうございます!それじゃあ、立ち話もあれなので俺のオススメのお店に移動しましょう。」
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移動すること5分、やって来たのは『ダイシー・カフェ』、俺がいつも通う喫茶店だ。ここは元々こねえが薦めてくれたお店で、初めて来店して以降は親友の友亮や外崎先輩と一緒に事ある度に利用している。
「いらっしゃ…って、直葉!?」
「エギルさん!?」
すると、直葉さんはマスターを見て『エギル』という訳の分からない名前を口にして驚く。しかも、マスターも彼女を知っているようだが…
「すみません、何が何なのかよく分かりませんけど…」
「わ、悪い。とにかく、詳しいことは後で話す…いつもの席は空いてるから座って待っててくれ。」
「は、はい…」
そして、俺達は言われるがままにカウンター席に腰かける。しばらくして戻ってきた後に何が何なのかを訊いたところ、マスターはSAOサバイバーにして直葉さんや俺と同じALOプレイヤーで彼女と同じキリトさんのギルドに所属しているらしい。なるほど、それならお互いに知ってても納得がいくはずだ…
「なるほど、お前も最近になってALOを始めたのか…しかもキリト達と一緒にクエストも回ったらしいが、どうだったんだ?」
「そうですね…まだまだ剣の使い方とかそれ以外のスキルはまだまだ未熟で迷惑はかけてしまいましたけど、最終的にはこねえに負けないぐらいの剣士になりたいです。」
「そうかそうか。俺も最近は店の仕事が忙しくてなかなかログインができてないからな…今度暇だったらお前の腕前を俺に見せてくれ!」
「分かりました、その時までには強くなりますよ!」
マスターは満面の笑みで俺の腕前を楽しみにしているようだが、次にログインできるまでに俺は強くなれるのだろうか?新たなる不安が生まれてしまった…
「すみませーん、注文決まりました!」
「はい、少々お待ちを…それじゃあ、後はお二人でゆっくりしてってくれ。」
俺達が注文したコーヒーを置いてマスターは他のお客さんのところへとダッシュでかけていく。昼間の喫茶店というのは実に忙しいものだということが見ててよく分かる。
「それで、珪子ちゃんとはどうなったの?」
「おかげさまで仲直りすることができました。これはもう直葉さんのおかげですよ…」
「そうかな?でも、私も力になれて良かったよ。」
直葉さんは安心してそっと胸を撫で下ろす。もちろん兄であるキリトさんの働きがけも俺を救ってくれたもう一つの要素と言えるが、彼女もお互いの立場になって話を聞いてくれたからこそ今の俺がいるのだ。
「それで、実はですね…もう一つ相談したいことがあるんですよ。」
「それは何かな?」
「俺、ずっと前からこねえのことがずっと前から好きで好きで仕方ないんです。だから、この気持ちをこねえに伝えたいと思ってて…」
「それってつまり、珪子ちゃんに恋をしてるってこと?」
「はい。俺、たとえ姉弟という壁があったとしてもこねえのことを諦めたくありません!仲直りできてそれ以前から自分の気持ちが熱く燃えているのだとしたら…俺はその気持ちを伝えたいです。」
俺はこねえに対する熱い想いを直葉さんにぶつける。同じように上の者に恋をした立場なら俺の気持ちも分かってくれるはずだ…
「珪太くんの気持ちは分かるよ。私も経験したからね…だけど、これで失敗したら元の関係に後戻りできない可能性だってあるんだよ?その覚悟は…」
「できてますよ。覚悟ができてなかったら俺は貴方に相談してませんから…」
「そうなんだ。じゃあ、これをあげるね…」
直葉さんはバッグのポケットからチケットを2枚取り出す。そこには『ワンダフルランド1日利用券』と書かれていた…ちなみに、ワンダフルランドはお隣の千葉県にある日本最大の遊園地である。
「ワンダフルランドの1日利用券じゃないですか…どうして?」
「本来だったら今週の週末にお兄ちゃんと一緒に行こうと思ってたけど、その日はお兄ちゃんにバイトが入ってしまったの…折角なら珪子ちゃんと二人で行ってみるのはどうかなと思って。」
「ありがとうございます!」
彼女がここまで協力してくれた以上、恩を無駄にはできない…俺は彼女が渡したチケットを感謝して受け取る。
「厳しい道になるとは思うけど、頑張ってね。」
「はい!」
こうして、俺がこねえに気持ちを伝える舞台は整った。後は日程の調整のみである…
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「えっ、今週の週末?」
夜ご飯を食べてる時のこと、俺はこねえに今週の週末に予定があるかどうかを確認する。
「うん、実は友亮からワンダフルランドの1日利用券を2枚を貰ったんだ。アイツったらラグビーの練習が急遽入ったからデートする予定だった女の子と行けないって言ってたよ…」
そんな中で俺はワンダフルランドのチケットのことを話す。もちろん、直葉さんと会ったことや彼女からチケットを受け取ったことに関しては伏せているが…(チケットに関しては友亮から貰ったことにしている)
「ワンダフルランド!?行きたいけど、大丈夫かな?私達って姉弟だし…」
「そんなことは考えなくていいよ。俺達、最近二人でお出かけしてないだろ?それに、俺は久しぶりにこねえと遊びたいんだよ…お願い!」
「そこまで珪太が言うんだったら…いいよ。今週の土曜日でいいよね?」
「うん。ありがとう、こねえ!」
俺がこねえに気持ちを伝える日まであと6日、舞台も日にちも決まって胸は高鳴る一方だ。どんな結末になろうとも俺は運命を受け入れる覚悟はできている…果たして、どんな答えが俺に返ってくるのだろうか?その楽しみと動揺を抑えて当日を待つのであった。
To be continued…
次回、いよいよ最終回!果たして、珪太と珪子は結ばれるのか否か…お楽しみに♪