竜使いの姉(双子)と…   作:寿垣遥生

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まず始めに…つい先日、ジャムおじさん並びにマスオさんの声を担当していた増岡弘さんが亡くなられました。

心よりご冥福をお祈り申し上げます。


引き裂かれる姉弟(後編)

sideケイタ

 

『もう言い訳は聞きたくない…ケイタなんかもう知らないんだから!!』

 

 俺の胸にこねえから発された言葉が突き刺さる。喧嘩をしたことは数えられないほどあったけど、こんなことを言われたのはこれが初めてだ。

 

「ケイタ、俺で良ければ相談に乗りたいんだけど…いいかな?」

 

 その時、キリトさんが俺の元に歩み寄っては落ち込む俺に手を差し伸べてくる。彼もリーファさんという妹がいるだけにこねえの心境とかを理解できるはずだ…乗ってくれる相談を断るわけにはいかない。

 

「分かりました…ありがとうございます。」

 

「お兄ちゃん、私も一緒にいさせて!」

 

「もちろん、リーファにも協力してもらいたいと思ってたんだ。それじゃあ行こうか…」

 

「はい。」

 

「シリカちゃんの方は私に任せて!」

 

「分かった、シリカの方はアスナに任せるよ。」

 

 こうして、俺はキリトさんとリーファさんに連れられて拠点である鍛冶屋へと戻るのであった。こねえの方はアスナさんが説得してくれるとのことなので、女性同士だから解決も期待できそうかもしれない…

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

 

「お兄ちゃん、ケイタくん…紅茶作ってきたよ。」

 

「ありがとな。」

 

「ありがとうございます…」

 

 鍛冶屋に着いて早々、俺は個室に招かれてリーファさんが作った紅茶を配る。それにしても、バーチャル空間とはいえ鼻に伝う紅茶の香りのリアリティーが半端ない…改めて、ここがゲーム内なのかと疑いたくなるぐらいに魅力的な世界観だ。

 

「さて、まだ整理できてないと思うけど…何があってこうなったのかを俺達に教えてくれないか?」

 

「俺にもよく分かりません…ただ、こねえがピンチに陥っていたところを助けただけですよ。」

 

「そうか。しかし、シリカはアスナやスグに鼻の下を伸ばしていたとか言ってたけど…」

 

「スグ?」

 

「ああ、リーファのことだよ。リアルだと名前は"直葉(すぐは)"だからな…俺は昔からこの子のことをスグって呼んでるんだ。」

 

 なるほど、いきなりアバターネームと脈絡のないあだ名が出てきてビックリしたけどリーファさんのことだったのか…バーチャルでもリアルでも関係なく仲良くできてるというのは素晴らしいことである。

 

「お兄ちゃん、今はその話関係ないでしょ!」

 

「そ、そうだな…ごめん。」

 

「それで、ケイタくんはその…私やアスナさんに夢中だったということ?」

 

「えっ、いや!?違うと言ったら嘘になるかもしれませんけど、多少は…はい。」

 

「なるほど。それはシリカちゃんも嫉妬するね…私もその気持ちは十分に分かるよ。」

 

「分かるって…こねえの気持ちがですか?」

 

「うん、実はね…私、お兄ちゃんのことが好きすぎてアスナさんに嫉妬してしまったことがあるんだ。それで、お兄ちゃんのアスナさんへの想いを知る度に色々と考え込んじゃって…」

 

 そう言われてみればこねえは俺のことを大事に想ってくれていた。『姉弟だから』という理由で封じ込めてはいるが、俺はいつも優しくて可愛いこねえのことが大好きだ…もしかしたら、こねえも俺と同じ感情を持っているのかもしれない。

 

「そんなことがあったんですね。その気持ちにキリトさんは気づいていたんですか?」

 

「ああ、薄々とは気づいていたよ。この時の俺達はスグも自己紹介の時に言っていたと思うけど、実の兄妹じゃないことを知ってしまって気まずかった時期だったんだ。その上、アスナがこのALOに幽閉されていたこともあって俺はアスナのことしか考えられずでスグには苦しい想いをさせてしまった…でも、互いに想いをぶつけ合ったことで今があるんだ。こうやって仲直りできたのは何かの巡り合わせなのかもしれないな。」

 

 キリトさんはその当時のことを振り返り、しみじみとその時の出来事を語った。ここまでに至るまで二人は相当な苦労をしたということが同じ姉弟(兄妹)の片割れという立場として痛いほどに伝わってくる。

 

「そうだね…だから、私とお兄ちゃんのようにケイタくんも自分の想いを伝えてみたらどうかな?そうすればきっと仲直りできるよ!」

 

「大丈夫、シリカは優しいし物分かりもいいからな…君ならできるよ!」

 

 こうして、俺はリーファさんとキリトさんに励まされて一歩踏み出す勇気と仲直りできるだろうという自信が湧いてきた。

 

「ありがとうございます…俺、仲直りできるように頑張ります!」

 

「キリトくん、リーファちゃん!」

 

 すると、アスナさんが俺達のいる部屋を訪れる。どうやらこねえの説得も終わったようだ…

 

「アスナ、シリカの方は?」

 

「大丈夫、何とか解決したよ。ケイタくんをリアルで待ってるって…」

 

「分かりました。お三方、行ってきます!」

 

「ああ、また機会があったら一緒に冒険しような。」

 

「何かあったら、私にも頼ってもいいからね!」

 

「ケイタくんの無事を祈ってるよ。」

 

「はい!それでは…」

 

 こうして、俺はメニューから『ログアウト』を選びALOの世界を後にして現実世界の自宅へと帰還する。こねえはどんな顔をして俺を待っているのだろうか…仲直りできるといいな。

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

 

 目が覚めると、俺は自分の部屋に戻っていた。そして、アミュスフィアを外してこねえの部屋へと向かう…

 

「こねえ、部屋にいる?入るよ…」

 

ガチャ

 

「…」

 

「おかえり、珪太…」

 

 部屋に入ると、そこにはいつものような笑顔で待つこねえの姿があった。喧嘩した時の怒りはどこにもない…それだけでも安心できる。

 

「こねえ、こねえッ…!」

 

 そして、我慢ができなくなった俺は思わずこねえのもとへと飛び込んではしがみつくように彼女の身体を抱きしめた。俺の目からも熱いものが流れ、抱きしめる腕の力も強くなる…

 

「どうしたの、いきなり抱きしめて…苦しいよ?」

 

「ごめん!俺ってこねえに迷惑をかけてばかりだし、ちっとも役に立てずで何の役にも立ってないから…だけど、こねえを守りたくて。」

 

「ううん、私の方こそごめんなさい。珪太が他の人と仲良くしているのを見て嫉妬してキツく当たっちゃった…私ってお姉ちゃん失格だね。でも、珪太が私のことを守ってくれたのは嬉しかった。」

 

「こねえ…」

 

「それに…珪太は私が落ち込んでいたら励ましてくれるし、家事もしてくれるから十分役立ってるんだよ?だから、自分に自信を持って!」

 

 こねえは珍しく俺のことを目の前で褒めてくれた。普段は目の前だとこんな感じで褒めることなんてないので、驚きも多少伴っているがその分嬉しさもある。

 

「俺の方こそいつも家事をしてくれたり、話を聞いてくれてありがとう!そんなこねえがいたから今の俺がいるんだ。本当に感謝してるよ…」

 

 こうして、俺達は無事に仲直りをすることができた。一時はどうなるかと不安に思ったが、元通りの仲良しに戻れて本当に安心の一言に尽きる。本当に嬉しいことだ…

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

 

コンコン

 

 夜中、俺が寝ていると部屋の外からドアを叩く音が聞こえる。こんな時間に一体誰なんだ!滅多に帰ってこない母さんか父さんか、あるいは…いや、こねえも寝てるからそれもないな。とりあえず、ドアを開けよう…

 

「はーい…って、こねえ!?」

 

 すると、目の前には予想外のことにパジャマ姿で髪を下ろしたこねえがいた。普段は丁寧にノックもせずにいきなり入ってくるのだが、あまりにも珍しいことにまず何から触れればいいのかが分からない…

 

「ごめんね、今日のことを思い返すと少し寂しくなっちゃって。その…一緒に寝てもいいかな?」

 

「えっ、うん…別にいいけど。」

 

「ありがとう。それじゃあ、お邪魔するね…」

 

 こうして、俺とこねえは添い寝することになった。こうやって一緒に寝るのは何年ぶりのことだろうか?あまりにも久しぶりすぎて少し緊張してしまう…

 

「それにしても、こねえと久しぶりに寝るのは久しぶりだよな。」

 

「うん、珪太は雷が鳴ってた日はいつも『雷怖い』と泣きながら私の部屋に来ては一緒に寝たよね。ハッキリと覚えてるよ♪」

 

「その話は恥ずかしいからやめてくれ…」

 

「もう、照れちゃって…珪太は可愛いなぁ~。」

 

「からかうなっての!俺だってこねえに甘えたい時だってあるんだよ…姉弟なら当たり前だろ?」

 

「そうだね、うん…それじゃあ私はもう寝るけど、何か話したいこととかある?」

 

 こねえから話したいことは何かと訊かれ、俺は話題を絞り出そうとする。すると一つ大きな質問が頭に浮かんだ。

 

「そうだな…こねえって俺のことをどう思ってるの?」

 

「えっ?それはもう答えたと思うけど…珪太は私を励ましてくれたり、家事も手伝ってくれたりして頼りになるって。」

 

「違うんだ!一人の男としてどう思ってるのかって意味だよ…俺って男としてどんな風に映っているのか知りたいんだ。どんなことでも構わないから、ハッキリと教えてほしい。」

 

 もう我慢するのも限界だ…そのタイミングで俺は自分が男としてどうなのかをこねえに訊ねる。どんな答えでも構わない…嫌われたら嫌われたで男として諦めるまでだ。

 

「そうだね…珪太は少しいたずら好きなところもあるけど、普段は凄く優しくて、真面目に何事にも真剣に打ち込んでくれる。そんな姿がかっこいいなって私は思ってるよ。」

 

 こねえは笑顔で俺の魅力を語る。少々照れるけど、ここまで認めてくれるなら我慢する必要もない。

 

「こねえ…俺、こねえのことが!」

 

「すぅ…」

 

 俺が自分の気持ちを伝えようとするが、こねえはいつの間にか寝落ちしていた。相当疲れたんだろうか…これは仕方ない。

 

「(こんなタイミングで寝るとはな…でも、こねえは男としての俺を認めてくれた。きっといつの日かは伝わるはず…)おやすみ、こねえ。」

 

 俺は今回のことを前向きに受け止め、寝てるこねえにおやすみと言い残し眠りについた。俺の気持ちがいつの日か伝わるといいな…

 

To be continued…




前回の続きとなった話でしたが、どうでしたか?

最近はコロナウイルスの影響でオリンピックの延期や外出の自粛要請によるイベントの中止、無観客での開催等と暗いニュースばかりでついこの前もお笑い芸人の志村けんさんがコロナウイルスに感染する等とまだまだコロナウイルスの脅威は絶えることがありません…

そんな中で、僕だけでなく色んな人の作品が元気や勇気の起爆剤になればいいなと我々作家一同は思います。

最後に、この物語は正式にあと2話で完結させることにしました。どういう結末になるかは次回以降のお楽しみに!それでは…
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