実験体29号「織斑チナツ」   作:地味子好き

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少女は姉と出会う。

薄暗い地下、岩盤をくりぬいた部屋は冷たい空気が流れている。

 

その中に白衣を纏った男が一人、パソコンの画面を見つめていた。

 

「…もう、ここも終わりだな。」

 

眼前のパソコンには外の監視カメラの映像が映しだされている。

 

完全武装した複数人の兵士…そして特殊な装甲服を装備した二名の女…。

 

さらにもう一人、スーツを着た女の姿もあった。

 

「軍のIS部隊に…さらに織斑千冬(オリジナル)とはな…」

 

インターネットが普及したこの時代、よほどの秘境に住んでいなければこの世界最強のことを知らぬ者はいないだろう。

 

しかし男にとっては彼女は別の意味があった。

 

「父上の遺産(アーネンエルベ)か…」

 

その男はもう齢80に近い。その父親となるともはや軽く歴史の人になるであろう。

 

「…所詮私は父上の二番煎じだったのかもしれないな。」

 

男はそう自嘲気味に呟く。

 

「私の夢か…」

 

男に父親のような野望はない。唯、父の研究を超えたいという思いがここまで引き連れた。

 

その為にはなんだってした。そう、文字通り()()()()()()()()()()()

 

…その結果28の命を天国(ヒンメル)へ送ることになったとしても。

 

しかし、その犠牲が最高傑作を生みだした。人間を超越する存在、新たなる進化のアーキタイプ。

 

文字通り、進化を止めた旧人類への()()()()

 

「先生…?」

 

後ろから声が聞こえた。可愛らしい少女の声だった。

 

「ああ、ノイン。私の可愛いノイン。」

 

少女―その体躯は彼女の、15と言う年齢の平均より小さめであった。

 

しかし、誰もが振り向く黄金の髪と美しい碧眼。まさしく『帝国』が求めたアーリア人の姿であった。

 

「先生、どうかしたんですか?」

 

「…よく聞けノイン。今日は11月9日(運命の日)だ。そして…お前の誕生日でもある。」

 

「はい。先生、私の誕生日です。」

 

「…生まれてきてから15年。お前は私の夢をかなえてくれた。ありがとう。」

 

男の目からは涙が零れた。

 

「先生、泣いてるの?悲しいの?」

 

「いいや、このまま聞け。ノイン。私の最後の命令を伝える。現時刻をもって総統令第999号を完遂したものとする。」

 

男は机の上にある拳銃、ワルサーP38を少女へ手渡す。

 

「そして総統代行として第1000号を発令する。ノイン…私を殺せ。そして私の血でこの場所に我らのシンボルを描け!」

 

「…了解。すべてはわが父、総統閣下のために。」

 

少女の目から光が消え、銃を受け取った右腕は()()()()()()()()()

 

そして男は立ち、叫ぶ。

 

Ein Volk! Ein Führer! Ein Reich!(一つの民族 一つの総統 一つの国家) Heil Ahnenerbe!(アーネンエルベ万歳) Heil Deutschland!(ドイツ万歳) Heil Hitler!(ヒトラー万歳)

 

ダン―と音が響いた。

 

「さようなら先生。…ようこそ先生。」

 

そして扉が開かれた…。

 

 

* * * *

 

 

その日、織斑千冬は地獄を見た。

 

その発端は1週間前、自身が教官として働いているこのドイツの地で、悪魔的な研究が今なお継続されているという情報が諜報部より入った。

 

スイスとの国境にあるとある町、そこは昔から『ナチスドイツのオカルト研究が今なお続けられている』という都市伝説でそれなりに有名な街であった。

 

町民のほとんど…いや国民のほとんどがそれは単なるうわさに過ぎないと信じていた。

 

 

…とある日までは。

 

 

ある日、山へハンティングを行っていたとある猟師がソレを見つけた。

 

山中の崖にある扉のようなもの。そして猟師はすぐさま警察へ電話を掛けた。

 

その理由は扉に描かれていたある紋章、ドイツ人の中で知らぬ者はいない『負と栄光の時代』、それを表す、鉤十字(ハーケン・クロイツ)

 

噂は…事実であった。

 

その後、現地の警察が調査を行ったところさらなる事実が判明した。

 

()()()()()()I()S()()()()()()()()()()()。その事実はすぐさま軍部へ伝えられ、軍もこれに呼応し、今まで泳がせておいたスパイからの情報の確保と突入部隊の編成を行った。

 

そして…その突入部隊の指揮官としての白羽の矢が立ったのが、世界最強、ブリュンヒルデこと織斑千冬であった。

 

 

「…想像以上だな」

 

その施設に突入してからと言うものの、肝心のISらしきものは見つかっていない。

 

しかし代わりといわんばかりに人間の死体は大量にあった。それもほぼ数分前に自ら引き金を引いたようなものばかりであった。

 

「…教官、IS反応はこの先です。」

 

隣にいた教え子―『ラウラ・ボーデヴィッヒ』がそう言った。眼前には鋼鉄製の扉が備え立っている。

 

「よし、ラウラ、クラリッサ。位置につけ。突入したら速やかに制圧しろ。いいな、私が鍛えてやったんだ。後れを取るなよ」

 

「「了解」」

 

扉の前には二機の絶対無比な力、インフィニット・ストラトス。

 

引き連れた鍵開け専門(爆薬持ち)の特殊部隊がその扉の蝶番を破壊する。

 

ボン―と小規模の爆発が起き、絶対無比の蹂躙が始まる、かに思われた。

 

「きょ、教官…これは…」

 

しかしその先に敵はいなかった。いたのは血濡れの少女と、一つの死体。

 

その先には、壁一面に少女によって鉤十字(ハーケン・クロイツ)が描かれていた。

 

「千冬…姉様…?」

 

そしてその少女は、その碧い瞳でこちらを見つめ、そう言った。




始めまして。

普段は同じユーザー名でISの二次創作を投稿しているのですが息抜きに思いついたものを書いてみたくなったので投稿しました。

駄文ですが、よろしくお願いします。
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