年内だからセーフみたいなとこない? ないですか。すみません。
こっから先主人公どう絡ませようかなとか考えてました。特に目下の悩みはインターン先。やはりオリジナルヒーロー出すしかないか……?
それではどうぞ。
俺はA組要の観客席で放心していた。
俺が纏う空気が気まずいのか、この辺りの空気が重い。折角もうすぐ決勝戦なのにもの凄く暗い。
いや俺の所為だってのは理解しているんだが、それをどうこうしようとする気力すら湧かなくてな……。
ちなみに。ボロボロになったジャージは新品を貰った。インナーまではどうにもなんねえから買い直さないとな。個性の出力段階も最低まで落ち着いた。
「ま、まあ元気出せって! 結末はああだったけど、内容はプロにも引けを取らない高レベルな戦いだったぜ!?」
「その結末が問題なんだよなあ……」
「ケロ……響香ちゃんも、機嫌を直したらどうかしら?」
「……別に、不機嫌な訳じゃないし……」
隣から発せられる負のオーラも相当ヤバかったわ。
まあ耳郎が勇気を出して応援してくれたってのに、その結果があのザマじゃあな。耳郎が機嫌を損ねるのもそりゃ当然だって話である。
ボトルを傾けて一気に酒を流し込む。別に逃避のためじゃないぞ。
「あー、その、なんだ。すまなかった。お前の応援をふいにしてしまった」
「……結局、アレは勢い余って場外に出たのか、自分から出たのか、どっちなのさ?」
「後者だよ。俺は自分から場外に出て、失格になって負けた」
「………………はぁぁぁぁぁ――……」
長い、とても長い溜息だった。
「もう別にいいよ。元よりいつまでも引き摺るのもウチのキャラじゃないし。この話はこれでお終い。これでいいでしょ?」
「訊かないのか? 俺が飛び出した理由」
「訊けば教えてくれんの?」
「別に教えるのは構わないが……まあ、訊かないでくれるのならありがたいが」
「ならいいよ、別に」
その口調からは険が取れたように聞こえて、眉間からも皴が消え、いつも通りの調子に戻ったことが見て取れた。
クラスの連中達からほっと安堵するような息が漏れたのも聞こえた。
指輪、というより俺がヒーローを目指すようになったワケ、俺の原点って奴をわざわざ進んで話すつもりは今のところない。どうしても暗くなる話だしな。話さなくて済むのならそれに越したことは無いだろう。
この個性社会、俺のような事情は多少珍しくても無い話ではないのだから、いつまでも気に病む必要はないとは頭では理解しているんだがな。そう簡単に割り切れたら苦労しないさ。
「しっかし、体力テストや模擬戦闘、今までの授業から分かっちゃいたが、やっぱオメーの強さは俺らの中でも抜き出てるな。頭一つ」
「元より戦闘向き、特に近接戦に特化した個性だ。こう言っちゃなんだが、ただのごり押し個性だよ」
「いや、その個性を活かせる技術があるのも確かだよ。何か武道とか武術とか習ってたのかな?」
「そこら辺俺にも謎なんだがな。俺は今まで戦闘術を習った覚えはない。だが何故か体が動くんだよ」
瀬呂、尾白が緊張した空気が解けたからか話しかけてきた。
尾白に説明した通り、俺は誰かに戦い方を習った覚えはない。自主的に特訓くらいはするが、あくまでその程度。だというのに何故か戦闘時に体は動く。まさしく『体が覚えてる』っていう感覚に近い。
体……というよりは間違いなく未だ謎の多い俺のこの『鬼』の個性の影響だとは思うんだがなあ。それ以上は何も分からん。分からんが使えるのなら利用するまでだ。
「そういや尾白は武道を習ってるんだったか。今度手合わせしてみるか?」
「いいの? なら是非お願いしたいかな」
「あ、じゃあやる時呼んでくれよ。俺も参加してえ」
「オーケー。手加減はしねえからな?」
望むどころだと硬化させた拳同士をガチンと鳴らす切島の強気な笑みに、つられて俺も小さく息を漏らすような笑みを溢した。
「ねっ、応援って何の話!?」
「うげ」
「入学した時からなーんか相間君と耳郎ちゃんって仲良いよね?」
「そんなことは……」
「「アオハルですか!?」」
「う、うるさいっ」
……隣から聞こえる好奇心と野次馬根性に塗れた声は無視するとしよう。
『さァいよいよラスト! 雄英一年の頂点がここで決まる!! 決勝戦、轟 対 爆豪!!』
「ほら、決勝が始まる。しっかり観てやれ」
一応の助け舟として声は掛けつつ、視線を会場に向ける。
これまで以上の熱気に包まれる会場に、同じように盛り上がる実況役のプレゼントマイク。
轟と爆豪。クラスで誰が一番強いか談義となると俺と一緒に名前が挙がる二人だ。こう言ってはなんだが、まあ一年生の部で最終的な優勝争いをすることになるのは俺を除けばこの二人だと思っていた。B組には少し悪いとは思うがな。如何せんあの二人という壁はちと高すぎる。
俺はアレだ。暴走の危険性とかあったからな。あははのは。
「うわ、かっちゃんすっごい不機嫌だ……!」
「申し訳ないことをしたなあ」
いやホント。
真剣勝負を望んでいた爆豪にも、その怒りの発散の矛先にされることになった轟にも。
『今! スタート!!!』
合図と同時、轟が先制で氷結を放った。
会場の半分以上を埋めるような規模だが、瀬呂との試合で見せたほどの規模ではない。緑谷との試合の時に対応されていた以上、それだけでは決着がつくとは限らないと学んだか。
だが、怒り心頭な爆豪にとってはこんなもので終わらせるつもりはないのだろう。
断続的な爆発音が続いたかと思えば、氷結の中からモグラのように氷を爆破で破砕しながら進んできたらしい爆豪が姿を表した。
顔がスゲェ。
爆発で投げ飛ばす爆豪に、場外に出る前に氷の足場を作り滑走することでそれを防ぐ轟。
実況の相澤先生の言葉通り、ことセンスとなるとあの二人では爆豪の方に軍配が上がるか。
……ん? 爆豪が何か轟に怒鳴り散らしてる。流石に声は届かないが、そんな雰囲気と迫力はここからでも見て取れる。
耳郎に聞こえているのか確認しようとも思ったが、個性を使ってない普段の聴力は普通の人と大差ないだろう。どうしても知りたい訳でもなし。別にいいか。
「あ、爆豪が決めにいった」
「轟君……っ」
宙へ浮かび、爆発と捻りで回転を加え威力を増した爆豪の大技。
対する轟は無防備に突っ立ったまま。いくら後ろに初手で繰り出した氷壁があるとは言え、直撃してはいないから確かな事は言えないが、モロに食らって大丈夫と言えるような威力ではないだろう。
どう出る、轟?
「負けるな! 頑張れ!!」
緑谷?
突然立ち上がり、声援を送る緑谷。今の戦況から見て、間違いなく相手は轟の方だろう。何だと言うのか?
いや別に応援すること自体は不思議ではないのかもしれないか。俺も状況が違うとはいえ送られてるし。
だが受け取った轟の方は何か違うらしい。左腕を構え、炎を吹き出し、爆豪に対して迎撃態勢を……解いた?
大爆発。
当事者だったから実感なかったが、榴弾砲着弾の威力を客観的に見るとこりゃ凄まじいな。会場の大半が爆炎に包まれてら。いくら俺の方も出力が上がっていたとは言え、よく耐えれたなアレ。
『相間戦で見せた爆豪の超必殺技! 轟は緑谷戦での超爆風を使わなかったようだが、果たして……』
「……こりゃ相当荒れるだろうなあ」
もう決着はついた。あの状況で直撃からのあの火力じゃ、轟が耐えきったという線は限りなく薄い。背後にあった氷壁も崩れちまっているしな。
ただ問題なのはあの瞬間轟が炎を消したこと。俺に対して本気で来いと言った爆豪だ。轟相手に言わない筈がない。だが轟は終始炎を使わなかった。雑に言ってしまえば、半分だけしか本気を出していないようなものだ。
そしてそれをされた爆豪がどうなるか、俺の時どうだったのかを鑑みれば、まあ想像に難くない。
ほら、場外に吹き飛ばされた轟の胸倉掴み上げてる。
『轟君場外! よって、爆豪君の勝ち!!』
『以上で全ての競技が終了! 今年度雄英体育祭一年優勝は――A組 爆豪勝己!!』
再度ミッドナイトの個性によって爆豪が眠らされ連れていかれても、会場の熱気と歓声は止むことはなかった。
◇◆◇◆
「それではこれより、表彰式に移ります!」
ミッドナイトが言い終わると同時、視界が煙幕に包まれ、今俺が立っている表彰台がせり上がっていく感覚。
花火が幾発も咲き、紙吹雪が舞う会場。表彰式ということで、結果三位だった俺は生徒の前に立っている。ホントは飯田も俺と同じ場所に立つ予定だったんだが、家の事情で帰ったとかなんとか。残念なことだ。
いや今はそれよりも、横で未だ暴れ続ける悪鬼羅刹みてえな奴か。鬼は俺だけど。
「んーッ! んんん――ッ!!」
四肢と胴体を拘束され、口を塞がれ、個性防止用に両手も覆うような拘束具に包まれている。
喋れないから何か怒鳴りながら、俺と轟、両者に向かって睨むわ手を伸ばそうとするわなんなら噛み付こうとしているのか暴れまわる始末。というかミッドナイトの個性が解けて目を覚ました後も暴れ待ったらしい。よくこの状態まで拘束できたな。また眠らせでもしたのだろうか。
尚轟の方は何か考え込んでいるかのように静かに爆豪を無視している。それが一層爆豪をヒートアップさせてる節もあるだろうな。
「メダル授与よ! 今年メダルを贈呈するのは勿論この人!」
「――ハーハッハッハッハ!」
んお。この笑い声は。
「私がメダ「我らがヒーロー、オールマイトォ!!」来た!!」
被っちゃった。
気を取り直して。
「相間少年、おめでとう! 大健闘だったな!」
「そう言っていただけるのなら、ありがたいです」
「そう卑屈になるなよ。確かにあの決着は不完全燃焼かもしれないが、君の強さ、レベルの高さは誰もが認めるものだ。自信を持て!」
「……次こそは、絶対」
「良い眼だ!」
続いて二位の轟の方に向かうオールマイトを視界の端に入れながら、首に掛けられた銅メダルを持ち上げる。
色々と思う所はある。後悔なんてしちゃいねえが、それでもあんなイレギュラー無しに爆豪と、ひいては轟と白黒はっきり勝敗をつけたかったのも確かだ。
だが、俺は。
未だに過去を乗り越えられていないのだろう。
誰にだって譲れない思いがあった。感情があった。矜持があった。俺のコレだってそういった類のものであるのは否定させない。だが、ヒーローを目指すという一点において、一位を目指すという皆の目標の中でのコレは果たして、不相応なのではないだろうか。
そんな筈はない。これは俺の原点の象徴。疎かになんてしていい訳がない。
それでも、いつかは越えなくてはいけない過去のトラウマのようなもの。表面では隠していても、今回のようにふとした時、俺の身体は自然とこっちを優先してしまっている。
いつか、いつかだ――一体いつだ。
ああクソッ。こういうネガティブな思考は駄目だな。折角表彰台に立っているんだ。せめて今くらいはこんな今まで何回も俺を苛んだ思考は捨て置こう。
「オールマイトォ……こんな一位、なんの価値もねえんだよ!!」
爆豪の口の拘束具だけ外されたが、相変わらず鬼のような形相でキレている。いや鬼は俺なんだけど。
爆豪との決着もいつかはつけたいところだな。今回の件を抜きにしても、純粋に興味がある。
締めるに締めれないオールマイトの締めの言葉に一同ブーイングをしながら、こうして初めての雄英体育祭は幕を閉じた。
「お疲れー」
翌日。
学校に寄せられたプロヒーローからの生徒の指名の整理と、生徒達の休息も兼ねて今日と明日は休校になっている。
俺も流石に疲れたし、今日くらいは一日ゆっくりしようと思っていたのだが、お昼頃にインターホンの音で叩き起こされた。
何だ誰だと思い相手を確認すると、そこには眠たげな母親の姿が。
そういや何か携帯に連絡があったような気がすると思い出しながら、扉を開け招き入れる。そんで開口一番そう言われた。相変わらず、間延びした声で。
「ま、来た要件はなんとなく察してる。どうする。何か食べにでも行くのか?」
「それは夜でもいーんじゃないかな。今は……眠い……」
「よくここまで来れたなこの人……」
はてさて個性を使ったのか。
因みに今俺は枕代わりに抱き付かれている。ソファに寝転がる母親に、そのすぐ傍らで俺が床に座っていて、そのまま腕を押さえられた。これ枕というより暖を取っているだけでは?
夏場とは言え冷房の効いた室内だ。このままという訳にもいかないだろう。
「ほら、適当にブランケットでも取ってきてやるから、一旦離してくれ」
「んー……」
手は離してくれたが、寝ぼけ眼でこちらを見つめる我が母。なんだなんだ。
「……ン。まだ、きつい?」
「? 疲労という意味なら、まあ完全には……」
「そーじゃなくて」
……。
「……全く、何でこういう時は異様に鋭いんだ……」
「親なので」
「答えになって……るのかねえのか判断がつかねえ」
まあ普通に考えて息子が雄英生で、体育祭があって、テレビ中継されていると言うのなら、そりゃ観ているだろう。
となると俺のあの時の試合も観ていたに違いない。そしてそれを観ていたこの母親が、何だかんだ鋭いこの人が気付かない筈もなく。
今更隠したってしょうがないが、突かれ続けるのもそこそこにキツイよ、ったく。
「……きつくはない。きつくはないさ、別に。ただ、俺はどうするのが正解か、分からないままなだけだ」
「……きっと、せーかいなんてないよ。多分今の或鬼には切っ掛けがないだけ。いつか、乗り越えられる。なんて言ったって、私の自慢の息子だもの」
「切っ掛け、ねえ……そんなもの、あるといいがな」
俺の個人感情の問題の解決を他者に求めているような感覚でどうにも腑に落ちないが、実際今のままじゃ変われないであろうことも事実。
切っ掛け、か。十年近く変わらないこの感情を変えてくれる何かがあるとすれば、それは俺にとって、劇薬のような刺激物になるだろう。
それがどんなものになるのかは想像がつかない。それが俺にどんな影響を及ぼすかなんてもっと分からない。そもそもどう変わればいいのかも分からない。
俺は本当に、過去を乗り越えることを望んでいるのだろうか。
耳郎「……ッシュン!」
まあ体育祭編Ⅳとは銘打ってるけど、後日談的な、エピローグ的なものしか殆ど残っていないからそりゃこんなに短くなるよねという話です。
母親登場はなんか原作でも似たような感じだし、文字数稼ぎに使いました。これ姉とか従姉妹とかにした方が都合が良かった説ある?
それでは、次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。
耳郎→一番仲のいい男子。アイツにとってはどうなんだろう。
相間→よく話す奴。お、一緒に昼飯食おーぜ。