ということでUSJ編後日談。アニメで言う所の丁度一期分ですかね。
長かった(投稿ペース的な意味で)
世の爆速投稿者さん達は何を糧にそんなに書いてるの……?
それではどうぞ。
すぐにコレは夢だと分かった。
周囲は紅蓮に包まれ、視覚聴覚嗅覚の全てがその役割を全うできていない。
悲鳴。熱。煙。そして、炎。
もう見慣れてしまったたった一度の光景。何度も魘され、そして嘆いた過去の記憶。
ただ――何かが違う。
『熱いよぅ……』
『大丈夫、大丈夫だから……』
灼熱の中を進む二人の幼い男女。俺は彼らを後ろから見ていた。
飽きる程に見覚えのある角に、今でも忘れられない苦しむ彼女の声。
ああ、やはり、同じだ。
俺はコレが夢だと認識している。明晰夢、なんてものもあるが、既に結末を知ってしまった以上、変えられないと思っているからこそ内容を書き換えるなんてことは俺にはできない。
視線の先、二人の進行方向で炎に包まれた何かが崩れ落ちてきた。もうこれではここは進めない。道を変えるしかない。
そんな悠長にできる時間なんて有りはしないのに。
『こっち……』
『……うん』
角が少しずつ肥大化していく。こんな状況だ。自衛のための出力強化は無意識だった。
いや違う。そんなところに注目する必要はない。こんなことは前から分かり切っていたことなんだ。
何がおかしい?
逃げ惑う幼い影に、迫る炎。崩れ去る床に壁に天井。逃げ道はどんどん失われていく。
だから、やがて身動きがとれなくなってしまうのは必然だっただろう。
『どうしよう……』
『……』
『……? どうしたの?』
『――あきくん』
握られた手に力が込められる。
彼女の目には、強い覚悟が見て取れたのを覚えている。当時は分からなかったが、今ならあの眼差しの意味が分かる。
アレは……自らの犠牲を覚悟した者の眼なんだ。
『ね? 約束』
『?』
『君はヒーローになって。世界で一番強くて格好いい、そんな、最高のヒーローに』
これは呪いだ。約束なんて飾った言葉じゃ生温い。
俺に刻まれた呪い。俺の行く道を決めた原点。
『だから――』
この苦しみの中儚げに微笑んだ彼女の手を振り払う。
論理的な思考があった訳ではない。ただ彼女の個性とその発動条件、そして続けられるであろう言葉が無意識下で組み合わさって、手を握ったままじゃ駄目だと頭のどこかが告げていたんだ。
手加減なんて考える余裕はなかったし、それが分かる年齢でもなかった。相応に出力が増大していた俺の個性の力で振り払ったと言うのに、彼女の表情に苦悶の表情は浮かばなかった。
『……だめだ。だめだよ。まだ助からないと決まった訳じゃない。逃げられない訳じゃない。そんな言葉は聞きたくない!』
『うん。まだ助かるかも。逃げられるかも。でも……君一人なら、ね』
『ッ』
事実である。
俺に炎熱の苦しみはない。床が崩れて下の階に落ちようが、天井が崩れて下敷きになろうが、痛みや怪我は避けられないかもしれないが死に至ることはない。
そんなことは自分が分かっていたし、彼女もまた分かっていた筈だ。
『あき君だけなら逃げれる。わたしが逃がしてあげられる。だから、逃げて』
『……いやだ』
『君だけでも、逃げて』
『いやだ!』
『――あき君だけでも、逃げて!』
『いやだ……っ!?』
気が付けば顔は目と鼻の先。
間近に迫る彼女の顔に驚いている間に、動く唇が何を告げようとしていたのかも分からないままに――
『あ、ああ、あああああああああああ!?』
俺の身体は、そこからいなくなっていた。
――そんな光景を、俺は端から見ていた。
何度も見た光景だ。何度も魘された悪夢だ。何度も後悔した苦悩した自責した記憶だ。何度も。何度も。何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。どれだけ回数を重ねても、時間が経っても風化することも褪せることもなく俺を縛り続けるものだ。
独り残った少女が、ようやく涙を流す。
それは恐怖か、安堵か。苦しみか、喜びか。
その涙の真意は分からない。俺はもう、そこにはいないのだから。
そう――
「……悪趣味な奴だ」
本能的にここから逃げ出したいと、終わらせてしまいたいと叫ぶ心を無理矢理沈め、周囲を見渡す。
そうだ。まず前提として、これは俺の夢である。
脳は未だに謎の多い人体のブラックボックスだが、夢に関する一つの通説として、記憶の整理だというものがある。だから夢には知人や見知った場所が出てくるし、組み合わさった結果見たこともない風景が広がることもある訳だが、少なくとも俺はこの光景を知っている。知っているし、覚えている。
知っているからこそ、俺はこの光景を否定できる。
周囲は熱の無い炎のみ。ならば突くべきは――
「お前しかいないよなァ?」
――涙を流す少女しかいない。
『――案外あっさりバレるもんだねえ」
今の今まで泣き顔を見せていた少女の顔は消え去り、喜悦に邪悪に歪む【誰か】の顔がそこにはあった。
俺はこの光景を覚えているが、俺はこれを覚えていない。
俺はこの夢を知っているが、俺はこれを知らない。
俺は……目の前の少女が涙を流していた姿なんて、見たことはない。
「誰かは知らねえが随分とまあ好き勝手やってくれるじゃねえか。人の夢にまで潜り込むとはな」
「知らないなんて酷いなあ。あんたと私は一心同体。我はいつだってお前と共にいたし、オレはいつだってここにいたというのに。……まあ、こうして現出するのはまだ二回目かな?」
「一人称くらい統一したらどうなんだ。面倒な」
「なんせ
何が面白いのか、【誰か】はきししと笑う。対照的に俺の表情は冷めきっていく訳だが。
くるくると踊るように俺の周囲でステップを踏むソイツに手を伸ばすが、ひらりと避けられてしまう。まあ別に真剣に捕まえようとは思っていない。
「何故こんなものを見せた? 今みたいにバレる可能性があるのなら最初から何も見せなければ良かっただろう。真っ暗闇でいい」
「君の弱点、一番揺さぶるに適したものがこれだっただけさ。これしきで折れるのならそれまで。妾がお前さんを食らうだけ。強がるのならそれまで。時間をかけてゆっくりと弱るのを待つとするよ」
「……結果は?」
嫌な顔を隠しもせずに訊くと、【誰か】はその笑顔を一層歪めて、
「気に入った! もう少しあんたに付き合ってやるさ。だからどうかアタシを飽きさせないでおくれ?――我が宿主様?」
「――お前は……」
何なんだ、と。
そう訊ねる前に視界がブレた。
世界が外側から崩れていくような感覚。思わずしゃがみこむが、どうにも足場も曖昧としていて妙な浮遊感が消えない。
それでも変わらず【誰か】は嗤っていて。
そこで意識が途切れた。
◇◆◇◆
目を覚ませば、薬品の匂いに白い天井。清潔感を演出するベッドやカーテン、それに窓から見える風景と合わせてここが学校の保健室の一室だと推測する。
この学校の保健室は別に一つじゃない。ヒーロー科なんてものがあるくらいだ。大小問わず何かと怪我の絶えない場所であるが故、保健室と呼ばれる部屋は複数存在する。リカバリーガールが主に作業する部屋は決まっているが、怪我の度合いや種類によって部屋を分けたりするとかしないとか。
まあ大抵の傷はリカバリーガールの個性で大体治ってしまうので、複数存在する意義はあまり無いように思えるが。昔の名残か何かだろう。
「目は覚めたかい?」
「……?」
どこかからか声が。
「こっちだよ、こっち」
こっち、と言われて何となしに窓に向けてた視線を反対側、つまりは扉側に向ける。
一瞬誰もいないように思えたが、視界の隅でちょこちょこ動くものが見えたので視線を下げると、白い鼠が。
「校長先生?」
「YES! 鼠なのか犬なのか熊なのか。かくしてその正体は――校長さ!」
いかんいかん。白い鼠は流石に失礼過ぎるな、うん。間違ってはないと思うけど。
来客用の椅子の上で自己紹介する根津校長だが、いまいち表情から何を考えているかは読み取れない。というか残念ながら人間以外の顔の表情を読み取れる程俺は動物に精通していない。
「私の毛並みが美しいのは分かるけど、あまりそう熱心に見つめないでおくれよ。どうにも本能的に逃げ出したくなってしまうのさ」
「そんなこと言われましても」
俺の眼つきってそんなに悪いか?
「まあ世間話はこのくらいにして。目覚めてすぐで悪いけど、君と話さないといけないことがあるのさ」
「……俺の個性、より正確には、暴走について、ですね?」
「話が早くてなによりなのさ」
俺の個性には所謂『暴走』が存在する。理性の消失に記憶の欠落、まあおおよそ暴走と言って差し支えない状態になっている……らしい。
と言うのも記憶の欠落ともあるように、俺にはその間の記憶が無いからだ。かつて一度だけ暴走した時にそう説明された。
暴走の条件は個性の使用。この鬼の個性は異形型個性、言い換えれば常時個性を発動しているようなものなので、多分だが何もしなくてもいつかは俺は暴走する。今回のUSJの件も含めて二度しか暴走していない以上確かなことは言えないのだが。
俺が個性の出力を伍式や拾式と言って段階的に分けてる理由もここにある。数字が大きくなる=出力が大きくなれば暴走へのタイムリミットが早まるって訳だ。因みに、玖以上は暴走前提の出力、程度に調整している。体力テストの時は一瞬だったから数度は拾式まで上げたが。
逆に暴走しないためにはどうするか。これは俺が普段から飲んでる酒が関係してくる。どういう原理かは不明だが、酒を飲むとその分暴走までの限界が延びるのだ。ただアルコールを摂取するだけでは駄目だったし、効果も日本酒が一番高いことが今の所判明している程度。要はワインや最悪料理酒でもある程度の効果は見込めるが、本当にその場凌ぎ程度だってことだ。
推測としては、【日本酒を飲む】という行為そのものに何か理由があるのではないかと睨んでいるが……結局は推測。現状これが最善である以上、妙なことはしない方が良いだろう。
「君はどこまでの記憶があるんだい?」
「どこまで……」
記憶を掘り返す。
飛び出したのは覚えている。手だらけの不気味な敵と相対していたことも。
この次だ。
「黒い巨体の敵に殴り飛ばされ……相澤先生。そうだ、相澤先生は!?」
その時の違和感も思い出す。
そうだ。あの時相澤先生が視界に入らなかったんだ。マークしていた筈の手だらけ敵も黒靄の敵も黒い敵も、警戒していた筈なのに行動できてしまっていた。
俺にも注意を払っていたからだろうか。敵側が動けたことの原因の一旦は俺にあるだろう。心配するのはお門違いかもしれないが……
「心配はいらないよ。命に別状はないのさ」
「そうですか……」
……命に別状
根津先生が隠すのならわざわざ追及はすまい。俺のことを気遣ってくれてのことだろうからな。
「では、ええ、はい。俺の記憶は黒い敵に殴り飛ばされた辺りで止まっています」
「うんうん。まあ聞いていた通り、推測通りなのさ」
「あの場に俺や相澤先生以外の誰かが?」
「緑谷出久君、蛙吹梅雨君、峰田実君の三人なのさ。詳しい話は当人達に聞くんだね」
あの三人が……?
手だらけ敵の言うことには生徒達をバラバラにしたみたいな事を言っていたような気がするし、そこからあの中央広場に戻って来ていたのだろうか? まあ、その辺はどうでもいいか。
訊いてはいなかったが、校長はその後のことの説明を始めてくれた。
「暴走後君は敵達と相対。黒い巨体の敵――脳無と交戦。途中オールマイトがUSJに到着し彼が敵達と戦闘に入ったが君はオールマイトとも交戦を始めたのさ。その後脳無は撃破したものの主犯と思われる他二人の敵は逃走。君はそのままオールマイトと敵対していたけど、最終的に彼の一撃で気絶。そして今に至るって訳さ――凡そ客観的にはこんなところさ」
「オールマイトと交戦……? 俺はそんな無謀なことを?」
「私はそう聞いているよ。その真意は君も誰も分からないけどね」
俺にも記憶が無い以上、本当にこれ以上のことはもう闇の中だ。
ん? 何か頭にチラついたような。
……まあいいか。
「となると俺から話せることは何も。入学時に提出した書類に書いてある以上のことは俺も親も知らないです」
「んー……やっぱりそうなんだね。我々としてはこれからも暴走の可能性を考慮して、また新しい情報が得られればと思っていたんだけどね。でも元より期待していた訳じゃないのさ。気にする必要はないよ」
「……わざわざそれを考えないといけないってことは、俺の暴走は教師か生徒か。何かしら危険があるってことなんですね?」
「……オールマイト先生との交戦は君からの積極的攻撃行動だったと聞いているのさ。それが彼以外には向かないと限らない以上、考慮しなければならない」
「そうですよね」
分かっている。分かっているとも。
……この個性は、決して『善』には分類されない。
力に善悪は無い。振るう者こそ善悪で仕分けられる。今回の騒動の折、13号先生も言っていたではないか。
闘争を求める個性。破壊しか、破滅しか残さない個性。誰かの為ではなく自らの為に振るわれる個性――暴力。
「何で、俺の個性は、こんな……」
思わず、漏れ出た言葉。
根津校長は口を開きはしなかった。否、開かないでいてくれた。
「……俺の処罰はどうなるんですか?」
「処罰?」
「話を聞く限り、主犯格の敵二人の逃走を許してしまったのは俺がオールマイトの邪魔をしてしまったからというのもあるでしょう。流石に何もありませんとはいかないでしょう」
俺はそう言うが、根津校長、つまりはこの学校内でトップの権力を持つ方は何か迷っているようだった。それは俺への処罰の内容についてではなく、そも処罰が必要かという迷いのようで。
はっきりしない態度に、首を傾げる。
「うーん……確かにそういう見方もあるんだけどね……」
「他に何か?」
「オールマイト先生曰く、君が居ても居なくても、敵の逃走は防げなかっただろうとのことさ」
それは、どういう?
逆側に首を傾げる。
「脳無との交戦中敵の一人が呟いていたらしいんだけど、君の攻撃により、オールマイト先生が到着する頃には脳無は相当に弱っていたらしいのさ」
それでも十分な脅威ではあったけどね、と校長は続ける。
「『ショック吸収』に超パワー、聞いた所によると『超再生』もあったそうじゃないか。複数の個性持ち……彼の見立てでは、もし脳無がフルパワーだった場合、敵の逃走を防ぐ余裕があったかは怪しいと言っていたのさ」
「そこまで言われると逆に、俺が弱らせることに成功していたというのがむしろ怪しいのでは……?」
「所詮は推測の域を出ないけどね。それでもナンバーワンヒーローとして戦い続けているヒーローの言葉さ。強ち間違っていないと思うのさ」
本当にぃ~?
いやふざけてる場合ではないのだが。
そもそも性質や状態的に『暴走』と便宜的に呼んでいるだけであり、決して強化とは限らないんだよな、アレ。それを知るには圧倒的に回数が少ないし、試そうにも危険すぎる。話を聞く限りじゃ一応普段より強くなっている……ぽい。
まあ個性の使用や出力増加の果ての暴走なので、多分強くはなっているのだろうとは思っていた。
「学校側の見解としては、罰を与える必要はないだろうとの判断さ。そもそも敵の侵入を許した学校側の責任問題な訳だしね。それでも君自身が気にするのなら暫く校内清掃等ボランティア活動でもしてもらおうかな?」
「……それでいいのなら」
「冗談なのさ!」
所詮は個人感情の問題なので学校側がそう言うのならこれ以上は何も言うまい。
「さて、リカバリーガールから目を覚ませば帰宅してもいいとの許可は出ているのさ。取り敢えずは今日はもうお帰り」
「分かりました」
それじゃあね! と根津校長は小さな手を大きく振って部屋を出て行った。よく見れば明らか校長専用の小さな扉が出入口の下部にある。
帰宅許可は出ていると言ったが、一度教室に戻る必要はあるだろう。見た所荷物もここには無いようだし。
気付けば外も茜色になってきていて、完全に陽が落ちてしまうまでそう時間も掛からないだろう。腹も減ったし、強くらいは自炊やめて適当に外食かコンビニで済ませるか。
スキットルボトルの入ったポーチだけは置いてあったので、教室までの道中に飲んでおく。
……ん、まだ冷えてて美味い。
「何か、夢を……」
目が覚める前、何か妙な夢を見ていた気がする。
内容は何も思い出せない。何か引っかかるものはあるものの、気持ち悪くなるだけで手掛かりはない。
唸りつつ、再度ボトルを傾ける。
何か大事なものを見たような気が……。
何故か、誰のとも分からぬ笑い声が脳裏に過った。
「ん? まだ誰か残ってたのか?」
教室の扉を開くと人影が一つ。まだ夕陽が差しているので室内は決して暗くはないが、照明ぐらい点ければいいのに。
「って、耳郎か」
「あ、相間。起きたんだ」
残っていた人影の正体はどうにも縁がある耳郎響香その人でした。
携帯で音楽を聴いていたらしく、俺に気付くと耳からイヤホンを抜いていた。
その視線から見て取れるのは……心配?
「何だ何だ。俺の事心配して待っててくれたのか? 愛い奴め」
「当たり前じゃん」
「……んあー」
そう真っ直ぐ見詰められながら即答されると茶化した俺の方がどう反応すればいいのか分からなくなる。
極まりが悪くてボリボリと頭を掻いた。
「……大丈夫?」
多分、その言葉にそれほど意味が込められている訳ではないだろう。
彼女は暴走について知らない。あの場に居合わせた三人の中に耳郎という名前は挙げられていなかったから、多分知らないだろう。
だから今の言葉は、今まで眠っていたからという意味以上に込められているものはない。
それ以上に、余計なことを考える必要は無い。
「まあ、な。個性で傷は癒えるし、これといった後遺症も残っちゃいねえ。後日事情聴取はあるらしいけど、今日はもう帰っていいってさ」
「…………そ」
妙な間があったが、短くいたく簡素な返事があった。
なんだか会話が続かなくて、仕方が無いので荷物の整理を始める。耳郎は椅子の向きを変え、特に何を言うでもなく俺の方を見てるだけ。気まずい。
ガサゴソと、無駄に音を立てつつ普段はしない程綺麗に教科書その他を纏めていると、
「……ま、相間がそう言うのならウチからは何も言わないし訊かない」
「何かあるなら気にしなくていいぞ?」
「じゃあ待たせた罰と待ってあげたお礼に何か甘いものでも」
「あ、そういう?」
分かってる。耳郎は今何かについて遠慮した。それ以上は踏み込むべきじゃないと判断して引いてくれた。
まず間違いなくわざわざ口にするのなら俺の暴走についてだと思っていたが、進んで話すようなことでもなし。引いてくれたのなら有難く乗るべきだろう。
まあ冗談にしろ、別に何か奢るくらいは別にいい。元より外食でもしようかと思っていたんだ。大した差じゃない。
既に帰路に着く準備は終わっている。荷物を持てば、耳郎の方も合わせて立ち上がる。
「分かった。疲れて自炊する気も起きんしな。なんなら飯ごと奢ってやろうじゃないか」
「お、ラッキー。んじゃ親に連絡しとこっかな。この時間ならまだ準備中か始めていないかだろうしーって、え? 自炊? 独り暮らし?」
「そうだぞ? 言ってなかったか?」
「初耳。じゃあ今度物色でもしに行ってやろうかな」
「残念だが、妙な期待はしないこったな」
他愛もない話をしながら歩く帰り道。
なんだか漸く、日常に戻ってきたのだという実感が沸いた。
なお帰宅したらしたで学校から連絡のあった母親が家で寝ている模様。多分。
ホントは最後の辺りもうちょっと耳郎が語ってたりもうちょっとイチャついてたりしたんですけど、『まだそんな時期じゃない! もうちょっと待て! 具体的には分からん!』と言って今みたいな多少サッパリした内容に。
ということでこれで大方主人公の個性については出て来たかと。もうちょっと設定はあるんですが、それが明かされるのは大分後になりますかねえ……。
それでは次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。
相間 或鬼(そうま あき)
個性 『鬼』
身長 175~180辺りを想定。凡そ瀬呂や飯田君辺り。角含まず。
細身だが筋肉質。創作あるある。かっこいいよりも綺麗という感想が先に出る容姿。ただし(※黙っていれば)が付く。所謂ギザ歯で笑うタイプのため、いい意味で粗野というイメージが追加される。結局は面が良い。プロ入りしたら年上にモテるんじゃないんですかね(適当)
性格は陽気(ポケモン脳)。というか正確に当て嵌まるもの分からないからだれかおせーて。
隠れ
好きなものはお酒。お酒に合うつまみや料理。
幼少期、個性の制御がままならない時期に他の子に怪我をさせてしまい、以来他の親から大なり小なり敬遠される。さらにその後、ある事件に巻き込まれ当時数少ない仲の良かった友人を亡くす。いつも着けているペンダントトップの指輪は形見のようなもの。
この時にヒーローを目指すことを決意する。しかし母親からは心配されている模様。
父親については特に設定を考えていません。未亡人にしてもいいし、単身赴任でもいいし。片親にした方が何かと便利なんだろうかと考え中。
母親の個性が個性なので家事スキル高し。休日お菓子とか作ってそう(数少ない砂藤要素。活かされることはないだろう)
・個性について
『鬼』
端的に言えば、『鬼の力を得る』となる。
出力段階に応じて壱式から拾式まである。追加予定(強化)あり。段階分けはもともとこの個性には関係なく、特訓でできるようになっただけ。
身体能力強化、感覚強化、耐久力強化、回復力強化と、自身の肉体を様々な方面で強化する個性。出力段階に応じて角が伸び、身体の紅い模様の範囲が広がる。最大時は全身。暴走時は額部分に眼のような模様が出来る。
どこかで書いたような気もするけど、特化型の個性には一歩及ばないことが多い。パワーではオールマイトには負けるし、感覚(特に聴覚)では耳郎に負ける。物理耐久という点でいえば切島にも負けます。(刀剣や銃弾を通さないことはできるが、打ち勝つ訳ではない)まあ裏を返せば特化型と比べるくらいには強いんですが。
ただこの耐久力、別に物理だけに向かない。言うなれば真・全門耐性。無効化ではないが、おおよそカット。だから感覚強化をしても、耳郎のように逆に突かれたりしない。されても耐える。
そして回復力。彼の場合回復や再生とは厳密には違う。どこぞの怪異殺しと同じ、肉体を保つというもの。傷を癒すのではなく、戻すと言った方が近い。出力が高ければ高いほど瞬間的に回復するようになる。暴走時であれば瀕死の傷でも瞬時に治る。
・暴走について。
カウントダウン方式。個性の使用(≒出力強化)に応じてカウントスピードが上がると考えて貰えれば。異形型のため常時カウントは進んでいる。酒を飲むという行為そのものがカウントを引き延ばす一番の方法。酒気があれば基本何でもいい。最悪料理酒でも。アルコールを含んだ錠剤などでは効果なし。
幼少期に日に日に肥大化する角や拡大する模様に母親が悩んでいたところ、彼が手を伸ばしたのは料理用に置いてあったワインでした――的な過去話があったりなかったり。
暴走時が最も個性の出力が大きい。つまりは彼の段階で言う所の現状の最強モードだと思ってもらえれば。しかもその実、力の最大値は或鬼自身に拠るので、まだまだ成長途中。
デクがパワー型なので、こちらはテクニック型を想定。デクの全力スマッシュくらいなら受け流せるんじゃないんですかね。デラウェアはどうだろう。
暴走時の行動基準は【強者との闘争】。この為、本人の自覚していないところで戦闘狂のケがある。闘うことそのものも好き。
要は暴走とは【――――】の一部現出のこと。彼の者は強きもの、美しきものを好む。故に強者を求める。
或鬼が戦闘中の動き方を知っているのも、個性が酒を求めるのも、【――――】という存在が為。
この個性について最初に言いましたよね?
予想以上に長くなりました。まだ明かしていない部分は多少ありますが、何かこの時点で書き加えることができるものが発覚次第更新します。
Q 長い。十文字以内で。
A 東方projectの鬼(英語部分は音数で)
鬼とは、奪い、犯し、壊すものである。
気に入ったものは力尽くで簒奪する。気の向くままに凌辱し、逆らう者、気に入らないものを破壊する。
悪なる者の代名詞にして、強き者の象徴である。
だが同時に、彼らは常に『倒される者』である。
彼の鬼は望む。自分を倒す英傑が現れることを。彼の鬼は望む。いつかその日が訪れることを。
だからそれまで――酒でも呑んで気を紛らわせるとしよう。
【――――】――そう呼ばれていたこともあったか。
なに、肴には困らない。必死になって英雄たらんと走り続ける存在がそこにいる。楽しもうではないか。その生き様を。愉しもうではないか。自分に抗う様を。
嗚呼、またいつか。またいつか、話してみたいものだ。