鬼よ、己が道を往け   作:息吹

8 / 13
 よし更新。

 USJも終わり、体育祭の始まりです。
 単純な身体能力が化物な主人公の順位や調整考えるの途中であきらめたのでそんなもんなんだと思って読み進めてください。

 それではどうぞ。


体育祭編Ⅰ

 雄英体育祭というものがある。

 それについては観客かプロか俺達のような卵か、どの視点で語るかで言葉は変わるが……まあ俺達にとってそれは最大の『チャンス』である。

 個性社会になった現在、かつてオリンピックと言われていたスポーツの祭典がほぼ日本限定に縮小、規模も雄英生徒のみになったとはいえ、全国全世界が熱狂したソレに代わるのが雄英体育祭だ。

 だから観客目線で語るのならこれは規模がデカい『お祭り』だ。

 では何故、俺らにとっては『チャンス』なのか。

 それはこの体育祭、プロヒーローも観戦しているからだ。

 勿論ただの観戦目的ではない。成績や個性、競技を通しての動きなどを見て自らの事務所にスカウトするためである。つまり、端的に言えばプロへの道のりがぐっと縮まるって訳だ。

 だからプロヒーロー目線から言えばこの雄英体育祭は……市場、とでも言えばいいのだろうか。

 と言ってもUSJ事件の記憶も新しい。生徒からも不安の声があったが、逆に開催することで雄英の危機管理体制は万全であると示すつもりなのだとか。警備も今までの五倍に強化されるとも言ってたな。

 まあ気兼ねなく参加できるってならいいことだ。俺らが気を揉んだってしょうがないだろう。

 なんだかお茶子が麗らかじゃなくなったり、敵情視察に来たらしき他科の生徒に爆豪が喧嘩売ったりととかもあったなあ。最早懐かしく感じるぜ。たった二週間前の話なんだがな。

 

「あーあ、やっぱコスチューム着たかったなあ」

「公平を期すため、着用不可なんだよ」

 

 A組に振り分けられた控室。各々軽くストレッチをしたり、座ってリラックスを図ろうとしている。

 今回A組……というよりヒーロー科は自分のコスチュームの着用は禁止されている。まあただでさえヒーロー科メインみたいな側面がある体育祭だ。経営科はともかくとして、普通科との実力差を埋めるための処置としてそうなるのは仕方ないだろう。ちなみにシューズはいいらしい。装備とかさえ外すのなら。

 勿論、俺みたいな個性上必要不可欠という理由での持ち込みなんかは申請して認められれば許可が出る。青山なんかもその類らしい。

 

「ねえねえ、今年の種目何だと思う?」

「まあオーソドックスに競走系とかじゃねえの? チーム戦なんかもあると面白いかもな」

 

 そんなことを耳郎と話していると、入場の時間が近付いたのか、飯田が控室に入って皆を呼びに来た。

 その時だった。

 

「緑谷」

「轟くん……?」

 

 彼が動いたのは。

 

「客観的に見ても、実力は俺の方が上だと思う」

「えっ?……う、うん……」

「けどお前、オールマイトに目ぇかけられてるよな」

「っ!」

 

 ……剣呑な雰囲気だなあ。

 

「別にそこ詮索するつもりはねえが――お前には勝つぞ」

 

 それは間違いなく、誰が聞いても、緑谷への宣戦布告であった。

 あまりの空気に切島が宥めようと声を掛けるも、轟は取り付く島もなく跳ね除ける。

 

「轟くんが何を思って僕に勝つって言ってんのかは分かんないけど……」

 

 言いたいことはそれだけなのか轟は出入口へと向かっていたが、緑谷も黙ってはいなかった。

 

「そりゃ、君の方が上だよ……実力なんて大半の人に敵わないと思う。客観的に見ても……」

「緑谷も、そーゆーネガティブな事言わねえ方が……」

「でも……! 皆、他の彼の人も本気でトップを狙ってるんだ。遅れを取る訳にはいかないんだ」

 

「僕も本気で、獲りに行く!」

 

「…………おう」

 

 随分と弱気だなと思ったが、全然そんなことはなかった。むしろ今この瞬間、誰よりも勝利に貪欲になっていた。

 ふふ、ふふふ。いいねえ、それでこそ俺も滾るというものだ。景気づけにもう一口。

 他の奴等の空気が一気に緊張する。楽しむという思考が一時的に消失し、これは勝負事であるという意識が皆の中に駆け巡る。

 いい緊張感だ。

 一早くその空気から脱した飯田が入場準備の声をあげるまで、俺らは動けずに、もしくは動かずにいた。

 

 

 

 

『雄英体育祭!! ヒーローの卵たちが我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!!』

 

 実況役にでもなっているのか、バカでかいプレゼントマイクの声が会場に響き渡る。

 

『どうせアレだろこいつらだろ!? 敵の襲撃を受けたにも拘わらず、鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星! ヒーロー科、1年A組だろおおおお!?』

 

 入場する俺達に、無数の光と視線が突き刺さる。それはカメラのフラッシュであり、昼間にも拘わらず眩しく咲く花火であり、燦々と照り付ける太陽である。

 いくら規模が小さくなったといえどそれでもかつてのオリンピックに代わる日本の一大イベント。観客席は見る限り満員で、しかも外にも、他学年にもまだ人がいることを考えると、やはり雄英ってのは相当なビッグネームなんだと再認識させられる。

 

「わああ……ひひひ人が、すんごい……」

「おいおい、今から緊張してちゃワケないぜ。普段通りでいいのさ」

「僕はまだ相間くん程の境地には達していないかあ……」

 

 控室での威勢はどこへやら。すっかりガチガチの緑谷であった。

 A組の入場に続いてB組の紹介、そのまま普通科、サポート科、経営科の紹介と入場が続く。

 整列が終わり、生徒の前に立つのは18禁ヒーローことミッドナイト。高校にいていいのかという常闇の疑問は峰田が肯定して解決した。解決したのかコレ?

 

『選手宣誓! 選手代表、1-A爆豪勝己!』

 

 まあ入試成績一位らしいしな。順当だろう。中身はともかく。

 普通科は嫌味ったらしくヒーロー科の入試であるとわざわざ教えてくれたが、この学校が単なる学力テストに科ごとに難易度を変えてくるとは思えない。そりゃ多少は差はあれど、それは内容であり難易度ではないだろう。実技があるとはいえ、ヒーロー科のテストがそれを加味されたのかと言われると多分違うだろうよ。ここはそういう所だ。

 だから緑谷、別に気にする必要はないんだぜい。にはは。

 まあこうやってヘイト集めてる大きな要因が今前に立つ爆豪にあるんだけどな。

 

『せんせー』

 

 ポケットに手を突っ込んだまま、彼は気兼ねすることもなく。

 

『俺が一位になる』

「絶対やると思った!」

 

 言いきりやがった。

 巻き起こるブーイングの嵐に対しても、寧ろ踏み台になれと煽る始末。

 まあどうあれ、そう宣言した以上後には引けねえなあ。

 

「爆豪の奴、あいつの所為でウチらまで顰蹙を買うんだけど……」

「かっはっは! ンなこと気にしたって仕方ねえさ。それに、敵対視されてンのは前からだ。今更今更」

「だからって前以上にヘイト集める理由にはならんでしょ」

 

 それもそうだけどな。

 

『さーて、それじゃあ早速第一種目に行きましょう』

「雄英って何でも早速だね」

『所謂予選よ! 毎年ここで多くの者が涙を呑むわ(ティアドリンク)! さて運命の第一種目! 今年は――コレ!!』

 

 効果音と共に表示される種目名は……

 

「障害物競走……!」

『計11クラス全員参加のレースよ。コースはこのスタジアムの外周約四㎞! 我が校は自由さが売り文句! コースを守れば何をしたって構わないわ! さあさあ、位置につきまくりなさい!』

 

 鞭によって示された先にあるのは、見るからにスタート位置ですと知らせるような退場門に、明らかにカウントしますと言っている照明。

 ぞろぞろと移動するが、皆競走と言うだけあって前に前に詰めている。俺は少し下がって空間的に余裕のある所にしたが、まあ耳郎含め大体のクラスメイトとははぐれたよね。別に仲良しこよしで走る気はないが、角が目立つのかやけに視線を感じる。主に悪感情で。

 カウントが一つ進む。

 次はいつ飲む余裕があるか分からない。ペース配分もアドリブじゃないといけないし、今のうちに酒を飲んでおこう。

 カウントが二つ進む。

 ポーチに仕舞う。慣れた動作だ。こういうの、ルーティーンって言うのだろうか。アレも良し悪しなんだろうけど。

 カウントが、終わる。

 まずは様子見で、

 

「狂襲・参式」

『スタート!!』

 

 駆け出す。

 スタートゲートは酷く狭い。というよりは人数に見合ってない。誰もが我先にと押し合い圧し合いしてm詰まりに詰まりまくっている。

 ()()()()

 軽く助走をつけての跳躍。一息に飛び越えるため。だから敢えて下がった。こんな風になるのは目に見えてたからな。助走の邪魔になる。

 ……ん? 冷気?

 

「ッ! なァるほどなァ……!」

 

 空中ジャンプの方向を予定より変更。横向きにし、壁を蹴っていこう。

 そう思い体勢を整えると同時、世界が凍り付いた。

 まあ考えてみれば当然だ。アイツ、轟の個性なら、初手で足止めとして場を凍らせるなんてやらない方がおかしい。

 凍り付いた壁面を、氷を踏み砕いて滑らないようにし、再度跳躍。反対側の壁でも同様。つまるところの壁ジャンプだな。方向が上ではなく前なだけだ。

 

「うっわ某配管工みてえな奴がいる」

「どっちかってっとアレじゃね? バッタ」

「……お前の所為でGの存在を思い出したじゃねえか」

 

 おい聞こえてるぞ人を節足動物扱いしやがって。

 ゲートを超えると同時、今の凍結の邪魔立ての結果が分かった。

 見たことのあるA組連中はそれなりに突破できているようだ。他科も思ったよりは動けてる。同じヒーロー科の中だと、下がった分若干俺は遅れているようだ。急がなくては。

 壁がなくなり、やむを得ず地上に降りてからもなるべく空中に居ることを意識する。人、邪魔だし。地面、凍ってるし。速度は落ちるが凍った地面走るよりかは安定的なスピードになるだろう。

 着地の時は踏み砕いておこう。

 あ、視線の先で峰田が見覚えのあるロボットに殴り飛ばされた。

 あれは、入試の時の仮想敵か。成程、第一関門はこれか。

 

『さあ、いきなり障害物だ! まずは手始め……第一関門、ロボ・インフェルノ!』

 

 さらにその先には0P敵が所狭しと配置されている。邪魔くせえ。

 先頭集団の動きが止まるが、それも一瞬。俺が追い付く頃には轟が特大の氷結で道を作って突破していた。

 ぐらりと傾く機体。どうやらタイミングを見計らって凍らせたらしく、付いていくように通ろうとした連中の妨害にもなるらしい。今しがた倒れた。

 

『すげえな! 一抜けだ! アレだな、もうなんか……ズリィな!』

『合理的かつ戦略的行動だ』

『流石は推薦入学者!』

 

 負けてらんねェなァ……ッ!

 爆豪や瀬呂、常闇のように立体機動に優れる個性持ちの奴は頭上を飛び越えていくつもりらしい。飛んでる姿が。

 ふむ、これは酷く個人的な都合なんだが。

 

「狂襲・捌式――穿て、天閃!」

 

 皆の遥か頭上を越え、さらに一体の0P仮想敵の頭部に着地する。こいつなら、良い感じに倒れた時に邪魔になるだろう。

 頭上の俺を認識したのか、振り落とそうと腕や頭を我武者羅に振り回すが、既に足を突き立て固定済みだ。

 角が伸びる。身体の紅い模様が拡がる。腕を引き絞り、限界以上の力と残像すら残す程の速度で以て撃ち出される一撃。

 反動で体が浮く。右腕が壊れ、断裂音や骨折の感覚が激痛として返ってくる。

 だが、それもものの数秒で甲高い破砕音と共に治る。

 捌式は俺の個性出力に当て嵌めるなら、暴走しない程度の限界だ。もしもの際、俺はこのレベルを基準として強敵かどうか、勝てるかどうかの判断をする。

 そして今の攻撃は何だろう。一番分かり易いのは中国武術の発勁と言うのが動きとしては近いのかもしれない。寸勁とも言うかもな。ネーミングについては母親に言え。名付けるつもりはないのに、あたかも技のように名付けたから、別に拘ってる訳でもなし。そう呼んでるだけ。

 自身の治癒力にかまけた一撃は、あまりにも鈍く響き渡る轟音となって仮想敵の頭部を文字通り粉砕した。

 制御中枢を失った巨体は、この攻撃の運動に流されるまま倒れていく、即ち――轟の妨害でただでさえ道を塞いでいる仮想敵のさらにその上に。

 連動するように、ドミノのように何体かも巻き込んだのも勿論計算済みである。思ったより少なかったけど。

 

『は? オイオイオイ! 今の何だよ!? 綺麗に頭だけぶっ壊していきやがった! トップには多少遅れているが、相間の奴、殺意高え!』

『衝撃を頭部にだけ集中させたんだ。どこかの試験会場の時みたいに相手全体に力を通した訳じゃないから、ああいう風に機体の一部だけが壊れる』

『高度な技使うねえ! ホントに高校生かよ!』

『……ま、一朝一夕でできるものではないのは確かだな』

 

 え、そうなの?

 これをするようにというかできるようになった経緯はと言えば、何か出来る気がした、の一言に尽きるのだが……。

 ……細かいことは気にしない! ほら、あくまで『っぽい』だけでそれそのものじゃないから!

 出力を元に戻し、倒した仮想敵の上に着地してから再度跳躍。先頭集団に早いとこ追い付くか、せめて距離を縮めないとな。

 右腕の感覚は、もう元に戻っていた。

 後ろからは非難と呆然の声がちらほらと届いてくるが、無視だ無視。

 

「次は……ンだコレ。綱渡り?」

『オイオイ第一関門チョロいってよ! んじゃ第二関門はどうさ!? 落ちればアウト! それが嫌なら這いずりな! ザ・フォール!!』

 

 点々と存在する足場に、それら同士を繋ぐ一本のロープ。下は暗闇が蟠り、落ちればどうなるかこっからでは分からない。流石に怪我防止のためのマットなりなんなりを用意しているとは思うが、それも見えない程の高さ。奈落。恐怖を煽るには十分だろう。コースアウト扱いにもなるかもな。

 後続も次々と突破してきている。八百万や切島等、それなりの人数が追い縋ってきている。

 先頭も、轟はロープを凍らせ滑るようにして止まることなく突破、爆豪に限っては空中を飛んでロープガン無視だ。

 俺も爆豪と似たようにして超えるつもりだが、なんどか着地を挟まないといけない以上それなりの減速にはなるだろう。

 スタート地点からゴールまでの凡その足場と着地のタイミングを予め決めておこう。

 えー……そこ、そこ、あそこ。んであの辺。着地はあの辺りと、一応そこでも挟んでおいて……よし。

 

「狂襲・肆式!」

 

 スピードを上げる為にも一段階出力を上げておく。

 そして跳躍。予定していた位置に着地して、助走をつけて再度跳躍。飛距離を稼ぎつつ、これを繰り返していく。

 中間を過ぎた辺りで轟がここを突破、爆豪もそれを追うように突破していくのが見えた。んー、最初のスタート地点で下がったのは悪手だったか?

 やけにテンションの高いサポート科の少女の声を聞きつつ、大した障害もなく俺は第二関門を越えたのだった。

 

『爆豪に隠れて目立ってねえけど、相間の空中機動も大概じゃね?』

『個性の応用ではなく単純な身体能力だけで実現しているからな。その点だけで言えばA組トップクラスだよ、アイツは』

『担任からのお墨付き! メズラスィー!』

 

 照れるぜ。

 さて、最終関門だ。先頭二人も目と鼻の先。まだ追い抜ける!

 

『最終関門、かくしてその実態は――一面地雷原! 怒りのアフガンだ! 地雷の位置はよく見りゃ分かる仕様になってんぞ! 目と脚酷使しろ!』

 

 成程。先頭程避ける地雷が多くなり不利になるって訳か。続くマイクの声によれば、音と光が派手なだけらしいし、タイムロスを考えなければ最悪強行突破も選択肢として入れるのもアリか。

 だがこのトラップだと爆豪の足止めにはならねえな。アイツは俺と違って着地する必要が無い。

 轟も目に見えてスピードが落ちてる。抜かれるのも時間の問題だろう。

 跳躍して一気に距離を詰めてもいいんだが……強行突破は最後の手段だ。

 

「微妙に盛り上がってるのと、若干土の色が違う……のは地面を埋め直したからか。ふむ……」

 

 ぱっと見渡した感じ、この程度なら……いけるな。

 よし。

 後ろも足音が近づいてきた。早いとこ抜けなきゃな。

 

「狂襲・陸式……っ」

 

 一歩目を強く踏み出し、低空飛行で駆け抜ける。いや飛んでは無いけど。

 距離は稼げないが、この高さなら着地のタイミングを任意で変えれる。地雷の場所も見える。ン、一度ここ。

 二歩目を踏み込み、再加速。

 三歩目は両手で着地し身体を回転させて調整。両足で踏み込み、更に加速を図る。

 

『相間の猛追! 先頭集団に追い抜いたー!』

「角野郎……ッ!」

「相間……!」

「悪いな、一足先に行かせてもらうぜ?」

 

 わざと地雷を踏み抜いて爆発。爆風で身体が煽られたが、体勢を崩すほどのことではなかった。

 しかし。

 

「俺の前を、行くんじゃねええええッ!!」

「くっ!」

 

 お互いの妨害を止めた二人がすぐに追いついてくる。爆豪は爆発による飛行で、轟は後続を無視して地面を凍らせて。

 追い縋ってきた爆轟の掌の叩き付けを腕を弾いて逸らす。

 轟の氷結を蹴り抜いて砕く。

 抜かれた。

 再加速で抜き返す。

 妨害を受け流す。

 掴みからの崩しで減速させる。

 

『一進一退の攻防が繰り広げられる先頭集団! なのにアイツら元が速くてそれでも他よりリードを保ってやがる!』

『A組連中の中でも総合的な能力に優れた奴等だ。だが……』

『何だ?――ってうおおおお!? 後方で大爆発!? 何だあの威力!?』

 

 あ?

 

『偶然か、故意か! A組緑谷、爆風で猛追……っつーか抜いたああああああー!!』

「緑谷!?」

 

 何があった、いや何をした!?

 緑谷が乗るようにして手にしているのは……仮想敵の装甲か! さらに今の大爆発、地雷が爆発したのだとしても一個分の威力を優に超えている。となると複数個一気に爆発させ、そうか。その爆風でここまで飛んできたって訳か!

 足の引っ張り合いは終わりだ。轟と爆豪がそうだったように、共通の敵が現れれば取り敢えずの休戦になる。抜き返せないと。

 丁度良く地雷の設置されていない場所を強く踏み込み、前に飛び出す。一瞬遅れて爆豪が加速、轟も駆け出した。

 緑谷自身は空中機動に関する個性ではないし、そんな使い方もしない。大きく飛んだはいいが、見るにもう自由落下に切り替わっている。

 ほぼ横並びの俺達が緑谷を追い抜く寸前。

 

「ッ! ごめん、相間くん!」

「あァ!? ってェ、うぼばばばばばばばばば!?」

 

 体勢を低くしていた俺ではなく、爆豪と轟の背を足場に緑谷が俺の眼の前の地面を再度叩きつける。地雷をわざと爆発させ、一気にこの最終関門を通過した。

 んでもって、この妨害の一番の被害を受けたのは他ならぬ俺であった。

 そりゃあ目の前で爆発されたら溜まったもんじゃない。体勢が崩れ、誘爆を繰り返し、運良くほぼ地雷原を抜けたものの、大きくタイムロスとなった。爆豪と轟も同じく巻き込まれていたが、アイツらは比較的早くリカバリーしていた。

 

「狂襲・漆式ッ!」

 

 もう第三関門は抜け、後はほぼ直線。整備された道(轟が凍らせてるけど)を如何に速く駆け抜け、会場に戻ってくるか。

 本当なら捌式まで出力を上げたいんだが、それはマズいと直感が告げている。こういう時は従っとかないと痛い目に遭う。多少は持つだろうが、その多少を信用できる程リスクは軽くない。

 だがそれを抜きにしても、単純な競走となるのなら、先頭の三人よりも俺の方に分があるという自信がある。

 駆ける。

 駆け抜ける。

 一歩分遅れてる。

 会場の明かりが見えてきた。

 まだ諦めねえ。

 まだ。

 まだ!

 

『雄英体育祭一年ステージ! 序盤の展開から、この結末を誰が予想出来た!?』

『無視か』

『今一番にスタジアムに還ってきたその男――』

 

『――緑谷出久の存在を!!』

 

 

 ……。

 …………。

 

「………………はあああああー」

 

 負けたなあ。最後まで緑谷は抜けなかった。

 二位は今映像で確認中らしいが、俺か爆豪か轟か。まあ誰がなってもおかしくはない接戦だっただろう。

 ……角の分俺の方が早かったりしねえかな。ダメか。

 最初のスタート地点の位置取りが既に失敗だった? いやでもあそこで下がってないと十分な距離跳べなかっただろう。もっと個性の出力を上げておくべきだった? それはあるかもなあ。各所で一段階上げておくだけでも多少の差は出たかも。ああでも、最後の直線勝負で出力上げきれなくなる可能性も出るか。

 緑谷の爆発に巻き込まれたのは違う。アレは偶然にしろなんにしろ、この障害物競走という種目においてなんら不思議ではない行動だ。巻き込まれる位置取りをしてた俺が悪いし、リカバリーが遅れたのも個人の問題。

 しかし応用性という点でやはり俺の個性は一歩劣るな。確かに戦闘時とかならそれなりに使えるだろうが、便利ではない。

 湧き上がる歓声の中、個性の出力を最低まで落としていく。角が縮み、模様も引いていく。

 ……あ、結果が出た。

 

『っつーことで大接戦だった二位から四位の発表だ! すげえぜ? 一位と二位の差でも一秒あるかないか、二位から四位の差なんてさらにそれ以下だ! んでもってー、気になる第二位は!』

 

『――相間或鬼!』

 

「よし、って、素直に喜べねェなァ……」

 

 何とか二位までは追い縋ったらしい。上々……と言っていいのだろうか。

 

『最終関門で大きなタイムロスを受けたが、持ち前の個性と身体能力で最後の直線で一気に追いついたな。ああなると相間の個性は大きく有利になる』

『あそこから二位まで上り詰めるなんてフィジカルお化けかよ! 因みに、結果に角部分は含まれておりません……続いて第三位!』

 

『――轟焦凍!』

 

「…………」

 

 特に反応はない。ちらりと見ても、どこか不機嫌そうに呼吸を整えているだけで、何がある訳でもなかった。

 

『序盤から一貫してトップを走り続けたのは間違いなくアイツの実力だ。今回は緑谷の奇策と相間の単純な身体能力とに遅れを取ったが、障害物の内容次第では結果は変わってたかもな』

『個性も、それを抜きにした素の身体能力もトップレベルって訳だ! 流石は推薦入学者! 次の戦いも見逃せねえな! そして、惜しくも第四位となったのは!』

 

『――爆豪勝己!』

 

「ク、ソ……があああああああああ!!」

 

 二位が俺と発表された瞬間からワナワナと震えていた爆豪が、ついに爆発した。

 声を上げ地面に拳を叩きつけるその姿からは、悔しさと、苛立たしさがひしひしと伝わってくる。

 

『爆発による立体機動で殆どの障害を無視して突き進んできたが、残りの二人が僅かに上回っていた訳だ。だが、最後のあの混戦の中、個性のコントロール手放さなかったのは認めるべき点だろう。飛ぶだけでも微細な調整が必要だからな』

『おいおいなんだかべた褒めじゃねイレイザーヘッド?』

『客観的に見て判断できることばかりだ。それに、改善点や指摘したいこともある』

『それは後に取っておけイレイザー! わざわざそんな盛り下がりそうなこと言わなくていいって!』

 

 お小言回避。

 大接戦だった俺達しか発表する気はないのか、続々と会場に戻ってくる五位以下の生徒達への言及はそれほどなかった。

 そして大体の生徒が戻ってきて、順位もはっきりした。ミッドナイトによる発表によれば、五位と六位にB組を挟み上位陣は軒並みA組が殆ど。B組の残りの面々は少し落ち着いた順位に集まっている。

 ……ん? 耳郎の方がB組の殆ど面子よりも上の順位?……んー。ま、いいか。

 別に見下してる訳じゃないが、耳郎自身の身体能力は然程高くは無い。だと言うのに、明らかに『肉体派です』みたいな見た目をしているというかそんな個性らしき犬みてえな奴より上だというのは少し不自然な気もするが、まあいい。

 上位42名が次の第二ステージに駒を進めることができるらしく、安堵する者、落ち込む者、様々な反応をする生徒の姿。

 普通科、サポート科を含めると軽く150を超える人数の内の約四分の一程度。多いのか少ないのかはともかく、相当に絞られてるな。

 飲む余裕がなかった酒を流し込む。美味い。ボトルが一本空になったので、今日持ってきた分の内残ってるのは六本。普段より少し多めに持ってきたんだぜい。

 予選通過者の発表が終わってすぐ、第二種目、本戦の種目内容が明かされた。

 

『第二種目は――コレよ!』

 

 そしてモニターに映し出される種目名は……『騎馬戦』

 個人競技じゃねえのに、と思ったが、説明されたルールによると、予選の順位で生徒にポイントを割り振り、組んだ騎馬での総合ポイントを奪い合うらしい。奪うのはハチマキだが。

 んで肝心のポイント。二位の俺で205、三位でも200とあったが……

 

『予選通過一位の緑谷出久くん! 持ち(ポイント)1000万!!』

 

 あほくさ。頭の悪いクイズ番組か何かか?

 だが、そうなると分かり易い。要は一位の、緑谷がいるチームのPの奪い合いだ。流石に一位だけが次の種目に進めるって訳ではないだろうが、それを取らない限り一位は有り得ない。

 どうせなら一位、獲ってみたいよなあ……!

 自然と上がる口角を隠すように、またスキットルボトルを傾けた。

 さて、誰と組むのが正解かねえ?




 ちょっと甘めな相澤せんせ。

 そりゃ身体能力強化がメインの個性なんだもん……ああやって露骨な妨害やこじ付けが無いと直線勝負で負ける訳ないんだよなあ……。
 というか現時点での爆豪の空中機動って第三種目時点で轟の走る速度とそれほど大差ないんですかね。緑谷が抜いた後殆ど同じくらいの位置でしたが。
 主人公はなんか飛蝗とか兎みたいな動きです。ぴょんぴょんしてる。なんでこいつ空中ジャンプできるの?

 砂藤不在と主人公の登場でどう辻褄合わせるか考え中。
 順位は主人公以下を一個繰り下げるからいいとして、騎馬のメンバーがなあ……。ちなみに主人公のチームはもう決まってます。というよりこれくらいしか思いつかなかった。

 それでは次回も読んでいただけることを願いつつ、ここらで終わりとさせていただきます。

 技名は語感で決めました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。