他の作品で知っている方は、本作も目を通して頂きありがとうございます。
他の作品を楽しみにされていて「ただでさえ投降が遅いのに、何作品増やしてるんだ!」と思われる方がいましたら申し訳ございません。
昔ハマッていた戦国関連の漫画を読んだりしている内に、どうしても書きたくなってしまいました。
この作品は完全に息抜き目的で始めたため、序盤以降は他の作品を優先して書きますので、更新は他よりも遅くなると思います。
その点を了承頂き、読んで下さると幸いです。
尾張と三河の国境にある地にて数千の群衆が二手に分かれて対峙していた。
片方は尾張を治める織田家の家紋が描かれた旗を掲げ、もう片方は駿河・近江・三河を治める今川家の家紋が描かれた旗を掲げている。
両者は木盾を前面に立て、それ隠れながら矢を射かけあっていた。また、近年導入され始めた鉄砲の轟音も時折響く。
だが、数で劣る織田軍が徐々に押されていき後退を始めていく。
これを好機と見た今川側は追撃を開始し前進していくのであった。
「姫様。各諸将予定通り後退を始めました」
織田軍後方の小高い丘にある本陣にて、甲冑を身に纏った男衆の1人が跪きながら中心にいる少女に声をかける。
芸術品のような美しさを持つ腰まで届く茶髪をお団子状に結っている少女は、男衆と動揺に甲冑を身に纏っているも、年は17、8程だが。その身に纏う雰囲気は男衆を平伏させるに十分な覇気を持っていた。
「デ、アルカ。犬千代、
戦場を見下ろしていた少女は満足そうに頷くと、隣に控えていた自分よりも更に年下の藍色の髪をした、槍持ちの少女に指示を出す。
「わかった、姫様」
指示された藍色の髪は少女は迷うことなく頷くと槍を軽く振るう。すると、陣太鼓が盛大にならされ始める。
その音を聞きながら茶髪の少女は、これから起きることに期待を隠せないように笑みを浮かべる。
茶髪の少女の名は織田信奈――尾張の国を治める大名である。
戦場から少し離れた森の中。織田家の旗を掲げる30人程の甲冑姿で馬に跨る男達がいた。
「そろそろだな兄弟」
その中の25歳程で、両側頭部から髪を後頭部で縦線状に合わせた『りーぜんと』と呼ばれる独特の髪型をした男が、後退する織田軍を見て先頭にいた男に声をかける。
その男はりーぜんと男と同年齢で黒髪の短髪をしており。手には馬上弓を持ち、背には『方天画戟』と呼ばれる穂先の根元に三日月形の刃が片側だけにつけられた槍を背負っていた。また、乗る馬は真紅の毛並みをしており、他の馬より一回り大きな体躯をしている。
男な名は
「ああ、いいかお前達。やることはいつも通りだ、嫌がらせをして逃げる。深入りはするな」
「ま、お前の場合嫌がらせで済まないけどな」
りーぜんと男の言葉に、他の男たちがハハハッ、と笑い声を上げる。
そんな中、織田本陣から陣太鼓が聞こえてくる。
「合図だ。では、往くぞ
翔翼の言葉に、男たちが力強く答える。
「
闘牙が再び声をかけるも、返事が帰って来ることはない。それでも、闘牙は満足そうな様子で手綱を引く。
「駆けろ、
愛馬を走らせた翔翼は、眼前にいる今川軍最左翼の集団目がけて突撃していく。
翔翼に続いて小六らも続くが、赤兎は瞬く間に加速していき差が広がっていく。
「な…!?て、敵襲!!」
翔翼らの存在に、今川の兵らが気がつき動揺が走る。
足軽組頭が慌てて迎撃させようとするも、最早間に合わない距離まで翔翼は詰めていた。
翔翼は弦に矢をに番えると、限界まで引き絞る。
「ッ…!!」
弦を離すと、加速された矢が敵兵に目がけて飛んでいく。
矢は対処が間に合わなかった敵兵の喉に突き刺さった。翔翼はすぐさま別の敵兵に弓を放つと、今度も敵兵の喉元を貫く。更に放った矢は今度は額に突き刺さる。
「ヒィっ!?」
その光景を目の当たりにした兵らに更なる動揺が走る。その間に翔翼は弓から戟に持ち帰ると敵部隊に突進した。
前面にいた兵の脳天を赤兎が蹄で砕き、翔翼が戟を突き出すと穂先が敵兵の喉元を貫通する。戟を素早く引き抜き振り上げると、別の敵兵の脳天に三日月の刃を叩きつけて股下まで鎧ごと両断した。そこから更に横薙ぎ振るい数人の首を纏めて刎ね飛ばす。
味方が次々に打ち倒されたことで、恐怖に震える今川兵らを尻目に、翔翼は深入りせず赤兎を操ると離脱していく。
「ええい、何をしておる矢で射殺せ!」
怒り心頭な足軽組頭の激によって、どうにか立ち直った兵らが矢を射かけるも赤兎の速度に対応できず全て外れる。
「こっちもいるぜぇ!」
「うぎゃぁ!?」
完全に翔翼に意識を向けられていた敵部隊は、後続の小六らの突撃を受けて陣形が大きく乱される。
「よし、次だ!!」
その部隊に目もくれず新たな敵部隊に向かっていく翔翼に、小六らも続いていく。
翔翼の部隊は、今川軍左翼の後方にいる部隊を同様の方法で攻撃していき混乱させていく。
「何事かァ!!」
「き、奇襲です!織田軍の騎馬隊が!」
「何ィ!?」
異変に気が付いた左翼指揮官が、駆け抜けていく翔翼らを忌々しそうに睨みつける。
「たかが少数だ!さっさと追い払え!」
指揮官が激を飛ばすも、今川兵の放つ矢や銃弾は、先頭を走る赤兎の速度に翻弄されて掠りもせず。長槍の槍衾で抑えようとするも、翔翼は弱点である左側に回り込みながら矢の3本射ちで端にいる兵を倒すと、加速の乗った赤兎の突撃と持ち替えた戟による一撃で粉砕する。
「貰ったァ!」
翔翼の背後から迫った敵兵が背中に槍を突き立てようとすると、その額に棒状の手裏剣が突き刺さり崩れ落ちる。
敵兵が絶命する前に見たのは、翔翼を守るように背後に立った忍者装束を身に纏った10歳程の銀髪の少女であった。
「ヒィッ!化け物だ!?」
「敵わねぇ、逃げろォ!」
翔翼の圧倒的な武力に慄いた兵が逃げ出し始め、辛うじて踏ん張ろうとする者は、後続の小六らによる追撃を受けて蹴散らされる。
逃げていく後方の部隊を見た他の部隊にも動揺が走り、陣形に乱れが広がっていく。
「ええい、何をやっておるか!」
「せ、関口様!逃げていた織田軍が向かってきます!」
指揮官が苛立っていると、側近が慌てた様に叫ぶ。後退していた織田軍が、期を狙ったように反転して突撃してきていたのだ。
「いかん、陣形を立て直せ!!」
「だ、駄目です間に合いません!!」
陣形を崩された今川左翼は、碌な抵抗もできず織田軍の突撃を受けて瓦解していき。多数の兵が討ち取られ、指揮官は命からがらに逃げることとなったのであった。
これにより今川軍の戦線は崩壊し、総退却を余儀なくされ、戦は織田軍の勝利で幕を閉じた。