都入りを果たした信奈は、朝廷へ義昭を新たな将軍とすべく働きかけを行うのと同時に、京南東を支配する三好家掃討へと動き出す。
三好家は元は四国の阿波の守護代であったが。先代当主である長慶の優れた采配によって勢力を拡大させたことで、下克上を成し畿内に進出し遂には足利幕府を傀儡化することに成功し、天下に最も近いとさえ言われるまでの力を手にすることに成功する。
だが、その長慶が死去してからは、家内での権力争いによって内部分裂してしまい。今では見る影もないまでに弱体化してしまっていたのであった。
今回の織田家の上洛に対し徹底抗戦の構えを見せるも。防波堤として期待されていた六角家が早々に敗北したことで、十分な体制が整えることができず都のある中部を放棄し残る南東部での抵抗を試みていた。
各自が戦に出ている中、翔翼は朝廷のある都の防衛を任されていたのだった。
「(以前来た刻と変わらず、荒れ果てたままだな)」
着物姿で都を歩く翔翼は、1人眼前に広がる荒廃した都の町並に悲壮感を募らせていた。
信奈が尾張を統一を果たした折。その正当性を得るために刻の将軍足利義輝へ謁見すべく上京したことがあり。幾年経った現在も、その刻に見た光景と何一つ変わっていなかったのだ。
都でありながら野盗が当然のように出没し、それを取り締まるべき立場であった三好家の者達でさえ略奪が横行されたことで治安は悪化の一途を辿っており。早急な秩序の回復が必要と判断した信奈は、手口を熟知している蜂須賀党ら元野武士や野盗で構成された大空隊が取り締まりに最適とし、都の治安維持を司る所司代に翔翼を任命したのであった。
「む?」
今日は非番であるのだが、勝家ら家臣の殆どは三好との戦に出ており。都に残っている信奈や光秀は朝廷への工作のため多忙で、仮住まいの屋敷にいても暇なため出歩くことにした彼の耳に何やら喧騒が聞こえてくる。
「あれは…。南蛮の宣教師、か」
音のする方へ建物が密集して生まれた路地に入ると。キリスト教という南蛮で信仰されている教えを伝えるために、海を越えて訪れてくる伝道師の姿をした金髪碧眼の年若い女性と。10代になるかどうかという同じように金髪で左目を眼帯で隠している少女を数人の野盗らしき武装した者達が取り囲んでいた。
「何だ嬢ちゃん。俺達と遊びたいのかぁ?」
野盗らの頭目見られる男が宣教師の少女に下卑た目を向けながら嗤う。少女は日ノ本の人間である翔翼から見ても美しいと思える美貌を持ち、何より服の上からでも十二分に存在感を主張している胸部は男達の情欲を煽ってしまうのだろう。
大抵の女性なら嫌悪感を隠せないだろう視線に晒されながらも、女性は毅然と訴えかけるように男らに語り掛ける。
「どうか話を聞いて下さい。このような狼藉を働いても何も得るものはありません。清らか心を捨てず正しきことなさって下さい。さすれば主もあなたがたに祝福を与えて下さいます」
彼女らに後ろには、流民だろうか瘦せ細り薄汚れた着物を着た傷だらけの男性が、蹲って怯えた様子で体を震わせていた。
「ああ?そいつが肩をぶつけてきたのが悪いんだよ。俺達は何も悪くねえな」
「ち、違う。ぶつかってきたのはそいつで…」
「ああん!?」
「ひいっ!」
抗議しようとした男を野盗が凄んで黙らせると、少女が冷めた目を野盗らに向けるとフンッと鼻を鳴らす。
「無駄だフロイス。こいつらは話し合いでどうにかなる手合いではない。ここはこの梵天丸に任せろ!」
少女が刀を抜き野盗らに斬りかかろうとするのを、女性は制する。
「駄目です梵天丸ちゃん。暴力では争いを生むだけで何も解決はしません。皆さんで主に祈りを捧げましょう。さすれば主は祝福を与えて下さり苦しみから解放されるのです」
「でも…」
胸の高さで手を組み南蛮式の祈祷を捧げる女性を、野盗らは馬鹿にするように鼻で嗤う。
「祈りだぁ?そんなもんで腹が満たせるかよぉ!」
「そんなもんより、その体で救ってくれよ!」
頭目が女性に伸ばした手を、気配を消して近づいていた翔翼は掴むと、背中に回し捻る。
「いでででででで!?!?!?」
「そこまでにしておけ。これ以上は見過ごせんな」
「な、なんだテメェは!?」
突然現れた翔翼にその場に誰もが驚く中。翔翼は名乗りを上げる。
「織田家家臣大空翔翼だ。所司代としてこの一帯の治安を任されている」
「なっ…!?」
翔翼の名を聞いた途端、野盗らは狼狽した様子で後ずさる。
「た、大空翔翼っていやぁ、ガキの頃から人を殺し回ってて、桶狭間や墨俣でも1人で何百人って皆殺しにしたっていう化け物じゃねぇか!」
「ほ、本物かよッ」
「俺達以上のおっかない野盗ツラ、ま、間違いねェ!!」
野盗の何気ない言葉に翔翼の中で何かがキレると、捻っていた腕に込めていた力を強める。
「いぎゃあああああああ!?!?!?」
「お、お頭ァ!?放しやがれテメェ!」
野盗らが襲い掛かって来ると、捕まえていた男を投げ飛ばし数人巻き込んで地面に叩きつけられ。残りは繰り出される刀や槍を避けるか掴んでへし折り、顎を掌底でかち上げたり鳩尾に拳を叩き込み打ち倒していく。
「残るはお前だけだが、これ以上は無益だ。降伏しろ悪いようにはしない」
「……」
翔翼の言葉に残った男は答えず、刀を構えながら間合いをはかりつつ詰めていく。
「でぇイ!!」
必中を確信した間合いから、一息に踏み込み袈裟斬りに刀を振り下ろす。
それに対し、翔翼は防ぐでもなく、まして避けようともせず佇んでいるではないか!
そのことに気づいた男は、刃が触れる前に刀を止める。
「何の真似だ!?」
「お前からは殺意を感じない。それどころか、死に急いでいるようにしか見えん。俺に討たれて果てる気か?」
「…ああ、そうだ。いずれの垂れ死ぬくらいなら、あんたみたいなの男に討たれる方がましだ」
「お前の仲間が言っていただろう。俺は多くの屍の築く怪物だぞ?」
「そんなのは尾ひれがついた風聞だ。目を見ればわかる。あんたは忠義に生きる高潔な男だと。だからあんたの手で死ねるなら本望だと思ったんだ」
どこか諦観した顔で刀を手放すと、男はその場に座り込んでしまう。
そんな男に翔翼は落とした刀を手にすると、細部を観察する。
「お前だけ彼女を邪な目で見ていなかったな。それに手入れにの届いた良い刀だ。そして先の筋の通た太刀筋、余程の鍛錬を重ねなければ成せんものだ。本心ではこんなことはしたくなかったのだろう?」
「…ああ、そうだよ。農民生まれでも戦で手柄を挙げて、いつかは大名になってやるって思ったけどよ。出世どころか、使い捨てみたいに扱われていつ死ぬかもしれねえ日々に疲れて逃げ出したんだよ。でも、もう行く当てもねえし食ってくにはこうするしかなかったんだよ…」
「…あなたも、この乱世の犠牲者なのですね」
項垂れながら話す男の境遇に。女性が憐憫の情を見せると、少女もそうだな、と共感するように頷く。
そんな中。翔翼は懐から金子の入った袋を取り出すと、男に歩み寄り方膝を突いて視線を合わせるとその手を取り握らせる。
「これは?」
「そう遠くない日に乱世は終わりを迎える。我が主織田信奈様によってな。その先――太平の世にはお前のような者が必要となる。だから生きることを諦めるな、これで真っ当な生き方をするんだ」
「あんた…」
予想外のことに唖然とする男に、翔翼は励ますように肩に手を置くのであった。
「あらためまして。助けていただき、ありがとうございますタイクウさま」
「うむ、大儀であったぞ翔翼!」
「いけませんよ梵天丸ちゃん。
「お気になさらず。子供はそれくらい活発な方がよろしいですから」
茶屋にてははは、と翔翼が笑うと。ありがとうございます、と恭しく頭を下げる女性。
あの後打ち倒した野盗らを獄に繋ぎ、絡まれていた者を手当てを命じた翔翼は。助けた女性と少女に別れを告げようとするも。女性が何かお礼をさせてほしいと頑として譲らず、ならば茶を奢ってもらうことで恩を返したとすることしたのだ。
「わたしはドミヌス会に所属する宣教師で、名はルイズ・フロイスと申します」
「我はこの日ノ本の転覆をはかる破壊の大魔王、”黙示録のびぃすと”こと梵天丸である!此度は我が同胞フロイスの守護者として同道しておる!」
翔翼とフロイスの間でシャキーン!という音が聞こえてきそうな、やたら格好つけた姿勢を取る梵天丸に、おお、これも南蛮の風習か?とどこか感嘆とした声を漏らす翔翼。
彼女の恰好をよく見ると。首から銀色の十字架を下げているが、何故か向きが上下逆となっており全身を漆黒のかっぱと呼ばれる南蛮制の雨衣に包み。更に腰には鉄でできた縄くさりを複数つけ彼女の動きに合わせて揺れることで擦り合いジャラジャラと独特の音を奏で、足は動物の革を加工したぶーつと。日ノ本の人間から見ると奇抜な恰好の多い南蛮風の装いにの中でも異質さを感じさせるものであった。
フロイスと同じ髪の色をしていることから南蛮人に見えるが、刀を持っていることから武家の出のようであり、不思議な少女だと翔翼は思った。
「いえ。梵天丸ちゃんは”よはねの黙示録”という恐ろしい物語がお気に入りのようで、黙示録のびぃすとに夢中なのです」
「確か聖書の最後に配された聖典でしたか」
「そうです!タイクウ様は聖書を読んだことがおありで?」
「ええ、主君の影響で南蛮の文化に触れることが多いので」
以前信奈が南蛮の商人から取り寄せた物の中に、日ノ本の言語に直された聖書が含まれており。それを読んだ彼女はなんか胡散臭いわねぇ、と関係者がブチギレるだろうことを言って放置していたものを貰ったことがあったのだ。
「おお、翔翼も知っているのか!あれは良いぞ!聞いていると、血沸き肉躍る気分になれる!」
「あの部分は幼子なら怖がるところだと思うが?」
ねねにせがまれ聖書を読んだ際、よはねの黙示録で大泣きしてしまったことを思い出す。まあ、あの刻はわざと怪談風な声音で呼んだからでもあるのだが…。それから暫く口を利いてもらえず苦労していたりする。
「ふふふ。我をそこらのお子様と一緒にするでない!この六・六・六のびぃすとの化身たる梵天丸には寧ろ心地よきものよ!この証を見よ!」
自分の眼帯をビシッ!と指さす梵天丸。その表面には6・6・6と刻まれていた。
「なる程。ではこの日ノ本だけでなく、南蛮の国々もいずれお前に滅ぼされてしまうかもしれんな」
「むー信じておらんだろう!罰が当たるぞ翔翼!」
ははは、とからかい気味に笑う翔翼をポカポカと叩く梵天丸。そんなやり取りをフロイスはクスクス、と微笑ましく見ていた。
「それでフロイス殿は、いずこの国より参られたので?」
「私はポルトガル出身です。主の教えを海を越えた世界中の人々に知ってもらいたく国を出る決心をしたのです」
「フロイスが日ノ本に来たのはこの我――黙示録のびぃすとを探すためなのだククク」
「こうして梵天丸ちゃんやタイクウさまのような素晴らしい方々にお会いできたのも主のお導きなのでしょう」
どうにか悪役らしい笑みを浮かべようとしているが、根の純粋さが滲み出ており愛らしさ溢れている梵天丸の頭を優しく撫でるフロイス。
「わたしがジパングでの活動を志したのは、我が師フランシスコ・ザビエルさまからヤオヨロズの神々の国ジパングが誇る自然の美しさ、そしてヨーロッパの騎士よりもはるかに騎士的だというサムライについて手紙で聞かされてきたからです」
「ザビエル司祭とな?」
「ザビエルさまをご存知なのですか?」
「ああ。かなり昔だが尾張で布教をされていた刻に。彼からポルトガルを始め、信奈様と共に南蛮のことについて教えていただきました。
「よろしければ、その頃の師についてお聞かせ下さいませんか?」
フロイスの願いに、翔翼はかまいませんよ、と頷くとかつての記憶を思い出しながら語り聞かせる。それを彼女は目を輝かせながら、一言も聞き逃すまいと耳を傾けていた。共に聞いていた梵天丸も、ワクワクと胸を躍らせた様子であった、
「司祭と顔を合わせたのは短い時節でしたが、多くのことを学ぶことができました。信奈様が南蛮について強い興味を持つようになったのも、ザビエル司祭との出会いがあったからなのです」
「そうなのですね…。タイクウさまお教え下さり、ありがとうございました。あなた方にお会いできたことは、師にとってもとても喜ばしいことだったのだと思います」
「うむ。我もそのザビエル司祭と会ってみたいぞ!」
「…ごめんなさい梵天丸ちゃん。師は数年前に病で主の元へ召されてしまったから…」
「なんとっ。誠か?」
フロイスから語られた内容に、強い衝撃を受ける翔翼。出会った頃から病に侵され長くはないと聞いていたが。できることなら、彼ともう一度会いたいと願っていたからである。
「はい。大陸にある明という国で、教えを広めようとされていた途上で病にて…」
「そうか…。それは残念だ…」
心の底から落胆している翔翼を元気づけようと、梵天丸が彼の膝の上に乗って自分の分の団子を差し出す。
「元気を出せ翔翼。我に捧げられた供物を特別に分け与えてやる」
「ありがとうな梵天丸」
お礼代わりに頭を撫でてあげると、うにゅぅ、と心地よさそうに目を細める梵天丸。
だが、不意に彼女の表情が曇り、不安そうな瞳で見上げてくる。
「どうした?」
「お主は我が武家の者――すなわち日ノ本の血筋であることは気づいておろう。なのに南蛮人にしか見えない我のことが怖くないのか?」
「いや。どうにも俺は普通とはズレた見方しかできんようでな。外見だけで、フロイス殿を――友人や虐げられていた者を、身を挺して守ろうとしたお前さんを嫌う理由にはならんのさ」
その言葉に、驚嘆したように目を見開く梵天丸。暫く翔翼の目を見つめると、それが嘘、偽りでないと感じ取った彼女は。始めはくちごもりながらも、徐々に意を決したのか、自らの境遇を語りだす。
「…この梵天丸は 父上の実の子ではない。
「…そうか。話してくれてありがとうな」
堪えようとしてはいるのだろうが、不安や寂しさで体を小刻みに震わせている梵天丸を、そっと抱きしめ頭を撫でる翔翼。
「不躾なことを聞くが。見えているのに片眼を隠しているのは、そういった事情故か?」
「うむ。父上以外、皆この呪われた目を気味悪がるのでな」
眼帯を外して露になった梵天丸の左眼は、茶色の右眼とは異なり南蛮酒である葡萄酒のような
「……」
「やはり変、であろう…」
何も言わずジッと見つめている翔翼に、拒絶されるのを恐れるように震える梵天丸。
「ああ、すまない。綺麗だっもので魅入ってしまっていた」
ハッとしたように、安心させようと、謝罪の意も込めて頭を撫でる翔翼。
「綺麗…。ほ、本当か?」
「無論だ。俺は仏やら主やらを信じられんので誓えんが」
「…フロイスの前で言うことではないぞ…」
堂々と言い放つ翔翼に、おいおい、と言いたげにツッコミを入れる梵天丸。当のフロイスも面と向かって言われると流石にあはは…、と困り気味に笑っていた。
「大丈夫ですよ、タイクウさま。信じるか否かを選ぶ自由も、主は愛されておりますから。教えを強要することこそ、主への最大の裏切りに他なりません」
「そういって頂けると助かります。ところでフロイス殿は何故都へ?確か今は都での布教は許可されていない筈ですが?」
日ノ本には、古来より続く仏教始め独自の宗教を既に確立させており。海の向こうより新たな宗教を持ち込んできたキリスト教を敵視し、いざこざに発展することも珍しくなかった。
日ノ本の中心地である都のある京では、当然ながら寺社勢力の影響が強く、公家を始めキリスト教を良く思わない風潮であったが。先代将軍である足利義輝はそういった流れに逆らい、南蛮文化に寛容な姿勢を見せ。一説ではそういった思想を危険視されたことが、暗殺事件へ繋がったとする見方もされていた。
「はい。先のショーグンさまであらせられた。ヨシテル公がお亡くなりになられてからは、都での活動が禁じられてしまい、今は堺に移っているのですが。新たに都を治められるオダノブナさまは、南蛮文化に寛容な方であらせられるとのことで、今一度都での布教をお許し頂きたく、お目通りを願いに参ったのです」
「なる程そうでしたか。ですが残念ながら、信奈様は義輝公の弟君の義昭公を新たな将軍に擁立すべく多忙なため、お会いできるようになるには暫しの刻がかかるかと。ですので、よろしければ私が取次いたしますので。それまで私の屋敷に滞在するのはいかがでしょう?」
「それは大変ありがたいのですが、よろしいのですか?タイクウさまも多忙な身なのでは?」
「ザビエル司祭のお弟子様を無下に扱ったとなれば、私が信奈様にお叱りを受けてしまいます。ですので、是非とも」
「それでしたら、お言葉に甘えたいのですが…」
「無論、梵天丸もよければどうだ?」
「うむ、世話になるぞ翔翼よ!そなたとは、語るべきことが悠久なる刻を費やしても足りない程あるからな!」
心の底からはしゃいでいる梵天丸に、翔翼もフロイスも妹を可愛がるように微笑みを浮かべながら頭を撫でるのであった。
翔翼はフロイスと梵天丸を連れ、仮住まいとしている屋敷へ戻ると。門番らが困惑した様子を見せていること気づく。
良く見れば門の前にて、平伏している男がいるではないか。それも先に出会った野盗にいた金子を恵んだ男であった。
「お前は…。どうした?金子が足りなかったか?」
「いえ。そんなことではございやせん。お願いしたきことがありやす」
「言ってみろ」
「はっ。どうか、どうかあなた様にお仕えさせて頂きたくございます」
地に額を擦りつけながら懇願してくる男に、翔翼はどうすべきか思案するように眉を顰める。
「何故俺に?俺は我が身を顧みない生き方しかできん。戦場では常に死地に赴くのを良ししとし、多くの者を死に追いやる碌でなしだ。お前が仕えるに相応しい者は他にいくらでもいる、織田家であ良ければ取次しようぞ」
「いえ。だからこそあなた様に仕えたいのです。あなた様こそあっしが求めていたお方。あなたこそこの日ノ本に必要なお方、だからお側でお守り致したいのでございやす」
認めてくれるまで梃子でも動かないといった様子の男に。翔翼は観念したように息を吐くと、片膝を突き男の肩に手を置く。
「お前の名は?」
「はい。
「わかった。では、彦蔵お前の命預かろう。ただし、1つ条件がある」
「何でしょう?」
「死ぬために戦うな。お前が生きることが、きっと誰かの明日になる筈だ。だから、生きるために戦え」
「はっ、肝に銘じやす」
2人のやり取りを見ていたフロイスがやはり、タイクウさまは素晴らしい方です、と感服していると、隣にいる梵天丸は俯きながら体を震わせていた。
「見つけたぞ、フロイス」
「梵天丸ちゃん?」
「これだ。これこそ、我が探し求める
拳を握り締め、がばっ!と顔を上げた梵天丸の目には、目標を見つけたと言わんばかりの輝きに満ちあふれていたのであった。
なんとなく捕捉
彦蔵の元ネタは『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』からです。
20年近く前の作品ですが。クレヨンしんちゃんらしいコミカルさと、戦国の世の悲哀さが絶妙なバランスで組み合わさっていたり。合戦描写もとても良くできており、戦国時代好きでも十二分に楽しめるので、見て事の無い方は是非見てみてほしいと思える作品です。
今後について
上洛変が終わったら、翔翼と信奈らとの出会いと。信奈が尾張を統一するまでを題材とした外伝の『尾張統一編』をやりたいと思っています。
本編を待ち望まれている方々には申し訳ございませんが。織田家の面々が、どのように今の絆を育んできたかを描くのも大切だと思ったので、お付き合い頂けると幸いです。