高坂紘子の今日は、いつも通りであったはずだ。
この就職氷河期の時代、叔母の紹介で入社できたはいいが、その仕事量はブラック一歩手前と言っても過言ではないほどで、入社まだ半年であまり要領がいいとは決して言えない紘子は、今日も半泣きになりながら仕事を片付けた。
残業をようやく終わらせたはいいが既に終電を逃し、帰る気力もなく、紘子は仕方なく駅近くにあるネットカフェで仮眠を取ることにしたのだった。しかし中々寝付けず、気まぐれと暇潰しにPCにダウンロードされていた限定初回無料だというネットゲームをちょっとやっていたはずだった。
なのに今目の前に広がっている光景は、廃墟と化し朽ち果てたビルの群れと、コンクリートを喰い散らかすように広がる緑、緑、緑――。
そしてどこまでも突き抜けたような鮮やかな色の青空がある。
徹夜明けにはあまりに眩しい日差しに手をかざそうとして、それがまるで覚えのない白く細い手であることにまた呼吸が止まる。
「……あ、そっか。これ夢か」
だってこんなこと、あるはずがない。
いつの間にか手にしている安っぽい木の杖も、全身をすっぽり包んでいる薄汚れたローブも、頭から流れている人間離れした白髪も、色素を根こそぎ奪われたような真っ白い肌も、その肌を埋め尽くすように這っている真っ赤な入れ墨も。
ぜんぶぜんぶ、夢なのだ。
うん、これは夢だ。
単純な話だ。これが現実じゃないなら、夢なのだ。
「うん、これは夢だよね。夢夢」
そう結論付けた紘子は、自分の手足が冷え切っていたことにようやく気がついた。
どれだけ意識を放っていたのだろう。口を開き続けていた喉は、呼吸するだけでひゅうひゅうと掠れた音を立てる。
白い絵の具を塗りたくったような肌はまるで自分のものとは思えず、何度も何度も手のひらを擦り合わせてみる。そのままひたすら、ひたすら無心に両手を擦っていた紘子は、やがてはっと何かに気づいたように顔を上げた。
「……夢なら、さめなくちゃ。あしたも仕事だし、ぐっすりねて、はやくおきなきゃ……」
名案を思い付き自分の言葉にこくこくとうなずく紘子は、明らかに目の焦点が合っていない。
周りで茫然自失となったり、座り込んだり、どこかに向かって叫んでいる人たちもまとめて、それら全てを紘子は見ないもの、存在しない背景として処理し、ふらふらと『宿屋』と書かれた店の入り口に向かっていった。
「……うん、だいじょうぶ。だいじょうぶ、だってこれゆめだもん」
名前:フィロ
種族:〈法儀族〉
職業:〈召喚術師〉《サモナー》
レベル:6
連載始めてみました。よろしくお願いします。
ログ・ホライズンのあまりの二次創作の少なさに絶望し、少しでもその試金石になればなーと思っております。
批評、批判ばっちこいで受け付けております。できればお手柔らかにお願いします。
ままれ先生は神。