ようこそ才能至上主義の教室へ   作:ディメラ

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リーダーの重要性

 

 

 

 

 

 ~プロジェクトB~

 

 

 

 

「集まったみたいだな」

 

 12月27日、午後1時頃。

 俺こと、石崎大地は自室にて寝転び、携帯を動かしていた。

 学校から支給された携帯に元々入っているチャットアプリを開き、「プロジェクトB」と記されたグループのチャット欄を見る。

 招待した人間たちは全員参加していて、そのチャットは少し盛り上がっていた。

 

『グループ名なんかダサくね?』

 

『石崎氏ですから。仕方ありません』

 

『何の頭文字なの? 馬鹿のB?』

 

 仕切っている人間に対してこの大ブーイング。

 リーダーが柄じゃないのは俺自身が一番理解しているが、こうまで言われると流石にムカつく。

 ちなみに、ブーイングした奴らは園田、金田、伊吹の順だ。

 

『馬鹿のBではないでしょうが、私も気になります。石崎くん、このBはどの英単語の頭文字ですか?』

 

『“Bonus”?』

 

『あいつが人に与えられる程プライベートポイント残しているか?』

 

『ありえない』

 

 椎名が肯定し、アルベルトが英語で答えれば、園田と伊吹が俺を馬鹿にする。

 園田と伊吹め、クラスじゃ大して仲良くないのに俺を罵倒する時だけやたら息ピッタリじゃねぇか。

 

『石崎氏、そろそろなぜ我々を集めたのか説明してくれませんか』

 

 金田のメッセージによって、逸れそうだった話題を戻せる流れが来た。

 既読の数を見ても、今は全員いる。

 金田の言う通り、そろそろ始めて良さそうだ。

 

『今日みんなに集まってもらったのは他でもねぇ。あるプロジェクトを完成させるためだ』

 

 俺はグループにいる奴らの名前を一人一人見ていく。

 まず、アルベルト、伊吹、椎名。

 こいつらはいつも一緒にいるような奴らだから、このプロジェクトを支持してくれるだろう。

 次に、金田。

 こいつは多分賛同してくれると思って招待した。

 最後に、矢島と園田。

 こいつらには事前にある程度説明をして、このグループに参加してもらっている。

 

 

『────ずばり、カムクラさん誕生日計画だ』

 

 

 カムクラさん誕生日計画。

 それは名の通り、1月1日に誕生日を迎えるカムクラさんを祝う計画だ。

 俺たちは龍園さんや伊吹と誕生日を祝ったが、その都度料理を振舞ってくれたカムクラさんにお礼をしなきゃいけねぇ。

 それでいて体育祭やペーパーシャッフルにおける指導。これに対して何も返礼をしていない。

 だからこそ、今回の誕生日で盛大に祝う必要がある。

 

『“Birthday”のBだったんですね。センスは置いとくとして、僕もその計画には賛成させてもらいます』

 

『私も参加します! カムクラくんにはとってもお世話になりましたので、ぜひお返ししたいです』

 

『まぁ、やるのは別にいいんだけど、具体的な案はある訳?』

 

 金田、椎名、伊吹とそれぞれの性格が分かる返しだな。

 皆が肯定をしてくれるあたり、流石カムクラさんだぜ。

 

『1月1日にやるって以外は決めてないぜ。それを考えるためにこのグループ作った』

 

 龍園さんの誕生日は直前に行おうと失敗した例がいくつかあるからな。

 

『一応事前に石崎くんから説明を受けたから、ちょっと案を考えてきたよ~。

 おせちセットをデリバリーして誰かの部屋使ってみんなでゲームしたり、お話したりする。まぁ、言ってみればタコパならぬ……おせちパ、かな』

 

 俺とは普段あまり関わりのない矢島だが、カムクラさんとの交流があるから今回は声をかけた。

 そうしたら矢島は乗り気で参加してくれた。

 どうやら、体育祭やペーパーシャッフルで世話になったらしい。

 

『待てよ矢島。今ここにいるのは7人、カムクラさん本人合わせて8人だ。

 流石に、寮の一部屋じゃ狭すぎる。やるとしたらどこでやるんだ?』

 

 以前誕生日会をやったが、その時ですら結構ギリギリな人数だった。

 園田の疑問ももっともだな。

 

『確かに。なら、ケヤキモールの飲食スペースでやる? その後遊ぶってのはどうよ?』

 

『人目につくって点はあるけどありだな。もしくは、寮の管理人に頼んでフリースペースを使わせてもらうか? まぁ、これも人目につくけどよ』

 

 意見を述べ終えた後、皆が矢島の意見について議論する。

 今のところ、スペースの問題上、反対側の人間が多いな。

 

『俺は誰かの部屋でやること反対だな。どっか店を借りて皆で飲み食いする方がいいと思う。でだ、こんな感じで正月でもやってる店をピックアップしてみた。

 その中にはおせちを限定で作ってくれる店もある。その後はケヤキモールで遊べるしどうだ?』

 

 ある程度議論が膠着したところで、園田が自分の案を述べる。

 正月に開いているケヤキモール内の店舗のURLを流しているので、とても分かりやすい。

 

『1つ目の所良いね! ビュッフェ形式のおせち料理!』

 

『3つ目はバイキング形式のおせちみたいだぜ。これも良いと思う』

 

 いくつかある選択肢の中で、1つ目と3つ目の店がグループ内で人気を見せている。

 どちらもおせち料理を提供するレストランようだが、一つ目はビュッフェ形式、3つ目がバイキング形式となっている。

 現状は、ビュッフェ形式かバイキング形式のどちらかで論争が起きているようだ。

 それにしても、どんどんと話が進んでいくな。

 流石クラスでもカーストが高い2人、こういうことには慣れている。

 

『バイキング形式の料金の方はどれくらいでしょうか?』

 

 椎名が現実的な質問をすれば、園田はすぐ返す。

 

『値段は3000ポイント。まぁ、割と高めだな』

 

『なるほど。でも、ビュッフェ形式の方は室料があるようですね。

 そこを踏まえると、バイキング形式の方が安いです』

 

『本当じゃん!なら、バイキング形式の方に私は一票!』

 

 椎名が値段を確認すると、矢島が3つ目の案を押す。

 いくら多少は贅沢をするつもりでも、ポイントの無駄遣いは避けたい。

 なら俺も、バイキング形式に賛成だな。

 

『なら、この店で決定でいいか?』

 

 誰もが納得の様子でその意見に賛成。

 案はバイキング形式に決定した。

 そのまま、次の話題に進む。

 

『プレゼントはその店で渡す感じでよろしいでしょうか? それとも遊ぶ時でしょうか?』

 

『プレゼントにもよるけど、なるべく早めに渡すのがベストだと思う。移動の邪魔になっちゃうだろうし。

 でも、バイキングの時に一斉に渡してカムクラさんの反応も見たい』

 

 大量のプレゼントを持ったままでは、移動中邪魔になる。

 なら、予め渡しておくのは一つの手だ。

 だが、園田。その気持ちは良く分かる。

 俺もあの人が口開けて驚いている顔を見たい。

 

『まぁ、そこら辺は追々決めようぜ』

 

『分かりました。ありがとうございます、園田くん』

 

 チャットでも丁寧な言葉遣いの椎名に園田は女子受けが良さそうなスタンプを返す。

 確かこういうスタンプも100ポイントぐらいで買えたはずだ。

 俺も買ってみるか? 

 

 

『ところで、龍園くんも参加するのでしょうか』

 

 

 話が纏まって解散。

 その流れだったが、椎名が爆弾発言を投下することで新しい波乱の種が生まれる。

 

『来ねぇ』

 

 俺はこの話題を遠ざけるために一言で返す。

 しかし、チャットは続いてしまう。

 続けたのは、屋上の件を知らない園田と矢島だった。 

 

『なぁ、龍園さんの件だがよ、お前たちに罰を与えようと屋上に呼び出したのは本当なのか?』

 

『それ、私も気になる。結果どうなったの? 急にX探しの連絡がストップしたのってそのことに関係しているの?』

 

 屋上の事件から5日。

 龍園さんがCクラスの生徒たちに指示を止めたことによって、だんだんと話題になってきた。

 今のところは、Aクラスの坂柳、橋本の助力で筋書き通りの噂が流れ始めている。

 

 龍園さんが俺とアルベルト、カムクラさんを呼び出して罰を与えようとした。

 そして返り討ちにあったという筋書き通りに。

 

『噂通りだぜ。龍園はXが中々見つからないことに腹を立てて、俺たちを屋上に呼んだ。

 そこらへんはいつも通りだったんだが、今回はカムクラさんにもそれが及んだ。そして返り討ちになった』

 

 敬称を外し、いかにも龍園さんと縁を切ったような文になっただろう。

 この噂が広がるまで、俺たちはこの演技を続けなくてはならない。

 そうでもしなくては屋上の件が少しでも外に漏れる可能性がある。

 そうなれば、不利なのは俺たちCクラスだ。

 

『へぇ~。じゃあ、今はカムクラさんがリーダーってことで良いのかよ?』

 

『いいや。あの人もリーダーをするつもりはないらしい』

 

『そうか。でも、あの人以外にこのクラスでリーダーを任せられる奴なんていなくないか?』

 

『かもな』

 

 素っ気ない一言で俺は携帯を閉じた。

 園田の言う通り、カムクラさんがリーダーをしてくれるなら俺も納得がいく。

 だが、依然としてあの人は首を縦に振ってくれない。

 何やら理由があるらしいが、それを俺たちには教えてくれない。

 このままではCクラスはリーダー不在。

 特別試験では戦っていけない。

 何としてでも、説得したいものだ。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 ~今後のために~

 

 

 

 12月27日の午前10時。

 僕はケヤキモールのカフェに赴いていた。

 人の少ないカフェで、1人優雅にコーヒーを飲むわけではない。

 それも暇潰しにはなるだろうが、今日は生憎、人に呼ばれている。

 

「それにしても、随分と変わったな」

 

 丸テーブルに向き合って座るは元生徒会長、堀北学。

 僕は彼と1対1で話し合いをしていた。

 ちなみに、いつかのように今回も奢ってもらえないか試しましたが、駄目でした。

 超高校級の妹の才能を使ってみましたが、相手は重度のシスターコンプレックス。

 流石に、難攻不落です。

 

「半分だけ千切れた状態では変でしょう? だから整えました」

 

「良いことだ。おどろおどろしい雰囲気も消えたことで、近寄りがたさが消えた。

 その反面、今日はお前を見つけるのに一苦労したがな」

 

 今日この場には僕の方が早く来た。

 僕は予め席に座っていたが、彼は僕の雰囲気を頼りに探していたため、結果、キョロキョロと落ち着きがない人のようになっていた。

 そして見つけた際には、僅かに驚いていて、その顔は堀北さんにそっくりでした。

 

「さっさと約束について話をしてしまいましょう。僕はもう答えを用意しています」

 

「ほう?」

 

 約束。

 それは南雲雅を止めて欲しいという口約束の事だ。

 彼はこの口約束を守らせるために50万ポイントを僕に投資している。

 

「先に結論を聞きたい。お前は、南雲を止めてくれるのか?」

 

「────今の所、その答えはYESです。

 南雲雅はいずれ邪魔になる。だから、どこかで一度叩き潰します」

 

「……今の所か。いや、お前がこちら側についてくれただけでもありがたい。

 感謝する、カムクラ」

 

「僕たちの都合もありますが、50万ポイントを貰ってしまいましたからね。

 それに、あなたの妹が僕に未知を見せてくれた。そのお礼と思ってください」

 

「……そうか」

 

 真面目な顔を崩さずに眼鏡を上げる堀北学。

 知的な雰囲気を醸し出しながら、内面では妹の成長に喜んでいる。

 何という感情の温度差。

 超分析力がなければ、見抜けないレベルの表情操作には感心するレベルです。

 

「生徒会には入るのか?」

 

「その点は未だ決まりきっていません。しかし、彼を叩き潰すにはより接触しなくてはいけません。

 これが必要条件である以上、生徒会に入ることは選択肢に入っています」

 

「俺が推薦状を書いてもいいが、そうすれば南雲はお前を警戒してしまう。

 すぐに手を打ってくるぞ」

 

「それで僕に何か出来ると?」

 

「あいつを甘く見るな。確かに、単純な個々の能力ならばお前の圧勝だろう。

 だが、南雲の恐ろしい所は1学年をまとめ上げるカリスマとその集団を利用した容赦のない攻撃だ。いくらお前でも1人では袋の鼠になるぞ」

 

 現生徒会長、南雲雅。

 実質上、二年生を支配している男だ。

 地位と権力が強大な武器であるこの男に個人で勝負を挑めば、いくら僕でも100%の勝率は導き出せない。

 だが、100%勝てる勝負に何の面白さがあるだろうか。

 

「ご忠告どうも。しかし、たとえそうであっても恐れるに足りません。

 なにせ、完璧に統率の取れた大規模集団なんてありませんから。どれだけ完成度の高い集団でも、必ず複数の核がある。

 それを一つ一つ壊していけば、どうとでもなります」

 

 例えば、1年Bクラス。

 一之瀬さんという1つの核を壊せば、すぐに瓦解する。

 例えば、1年Cクラス。

 龍園くんが身を引いた今、誰かがリーダーにならなくてはいけない。

 代わりになれる人材は椎名さんと金田くん。

 Cクラスもそれら複数の核を潰しきれば瓦解する。

 このように、学年を支配していようが、付け入る隙というものは存外ある。

 

「話が逸れましたね。現状、南雲雅を叩き潰すことは既定路線ですが、その方法までは決めていません。

 ただ、学年が違う人物を潰すとなるともっと近づく必要があるので、生徒会の件はまだ考慮すべき点であると考えています」

 

「現状の最有力案は?」

 

「学年混合の特別試験か、生徒会に体験入部をして接触を図るかの二択ですかね」

 

「体験入部か。つてはあるのか?」

 

「一之瀬さんの力を借りる予定です。もしダメそうならあなたの推薦を貰います」

 

「分かった。その時は俺も力を貸そう」

 

 その言葉を最後に堀北学は立ち上がる。

 

「お前が本格的に動く時、もう一度連絡してくれ。

 その時は二年生で南雲に意見出来る人物のつてを教える」

 

 どうやら、彼も南雲雅に対していくつか対抗する人間を見繕っているようだ。

 

「分かりました」

 

 堀北学はコートを羽織った後、この場を去っていく。

 僕は彼を見送った後、カップに残っていたコーヒーを一気に飲み干す。

 

「分かってはいましたが、学年混合(・・・・)の特別試験は存在するのですね」

 

 堀北学にしては珍しいミスだった。

 生徒会長を辞めてから気が抜けた、あるいは僕の協力を得れたことに浮かれたか。

 それとも、僕なら既に気付いていると認識していたからか。

 何であれ、そろそろ他学年に接触できる機会がやってくるということですね。

 

「さて、この後はどうしますか」

 

 僕は食べたものをトレイにまとめた後、立ち上がった。

 そして返却口にトレイを戻し、店から出るまでに暇潰しを考えてみる。

 この後の予定は特にないので、時間潰しを考える必要がある。

 冬休みの課題は既に全て終わっている。買い出しも必要ない。

 完全に自由な時間です。

 

「おや? 随分とクールになったじゃないか、カムクラボーイ」

 

「久しいですね、高円寺六助」

 

 店を出て少し歩いていると、高円寺くんに遭遇した。

 周囲には、3人の女性を連れていて、休日を満喫している。

 

「ハハハ、この私にこそ及びないが、中々のクールさ。

 エクセレント!! 流石、この私に匹敵するヒューマンだね~」

 

 破天荒さは相変わらず。

 いや、久しぶりなこともあって、むしろ拍車がかかっているように感じる。

 

「ありがとうございます。あなたも随分と容姿に気合を入れているようですね」

 

「当然さ。デートには全力の姿勢を見せなければ男が廃るというものさ」

 

 私服姿に普段より手入れされている(普段も相当手入れしているが)髪型。

 少なくとも、高校一年生の姿には見えませんね。

 

「ならば、僕は邪魔ですね。折角の休日を是非楽しんでください」

 

「ハハハ、気遣いに感謝するよ」

 

 高笑いと共に彼は女性たちを連れて去っていく。

 本当に、彼はこの学校生活を楽しんでいますね。

 

「それにしても、彼女たちは上級生のようですね」

 

 高円寺くんが引き連れていた女性たちを僕は知らない。

 すなわち、それは他学年の生徒ということだ。

 1年生では問題児としての噂が強い彼でも、他学年ではそういう訳ではないらしい。

 

「彼は、上級生とのつてを持っている。どうアプローチしたのか少々気になるところですね」

 

 単純にナンパしたか、されたか。

 複数の女性を引き連れてデートしているのにもかかわらず、女性陣の仲は険悪に見えなかった。

 彼の器量がそれを成しているのでしょうか。普段の彼からは想像しづらいですね。

 

「今度、僕の方から彼を食事に誘ってみますか」

 

 上級生のつては今後必要になってくる。

 特に、南雲雅を叩き潰すための過程として、交友関係を広げていく必要はある。

 そこで彼を利用してみる方法は候補に入れていい。

 

 思考を終えた僕は暇潰しを再開した。

 

 

 

 




予定通り、4話で終われそう
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