ようこそ才能至上主義の教室へ   作:ディメラ

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代表者

 

 

 

「よぉ、お前ら。昨日の話がまとまった。今からそのルールが記載してある紙を配る」

 

 3月3日水曜日。朝のHR、龍園くんが教壇の前に立って告げる。

 後ろには石崎くんとアルベルトを引き連れている。皆に敵意を向けている様子は久しく見ていなかった姿だ。

 坂上先生にはこの時間を利用することを先に告げているようで、彼は教室の端で事態を見守っていた。

 

「昨日も言ったが、参加は強制ではない。まぁ、40人参加しなかった時点で俺は500万ポイントを出さないがな。それと、もし参加せずに自分勝手な票を送った奴がどうなるか、もう言わなくてもわかるよな?」

 

 プリントを舎弟二人に配らせている最中に彼はクラスを脅す。

 選挙ゲーム、昨日の対策会議で決まった龍園くんの案。Bクラスの真のリーダーを決めるために特別試験を利用するという狂った考えだが、ただ特別試験をやるよりはオモシロイ展開と言える。

 

「大まかなルールは変わっていないが、しっかり読め。そして読み終わったら、お前らはどちらの派閥につくか決めてもらう」

 

 彼が言い終えれば、クラスメイトは配られた紙に視線を下ろす。

 僕もまたその行動に続いた。

 

 

選挙ゲーム

 このゲームは特別試験“投票試験”を利用して行われる。このゲームに参加する者は以下のルールを守らなくてはならない。

 

ルール一覧

 ・ゲーム参加者は“退学者を出す”“退学者を出さない”のどちらか2つの派閥に所属する。

 

 ・2つの派閥は“代表者”と2人の“人気者”を決めること。これらの役職の決め方は“代表者”と“人気者”の1人は自派閥の指名、あるいは立候補から。“人気者”のもう1人は敵対派閥の指名から決める。

 

 ・両派閥は“嫌われ者”を自派閥から1人決めること。

 

 ・ゲームスタート後、“代表者”には批判票を1票ずつ入れること。

 

 ・残り1票の批判票は“嫌われ者”に入れること。

 

 ・2票の賞賛票は“人気者”に入れること。

 

 ・残り1票の賞賛票は、自分の所属する“代表者”に投票してはならない。ただし、後述する場合のみ、自身の派閥の“代表者”へ批判票を取り消し、賞賛票を投じることができる。(取り消した批判票は“嫌われ者”に入れること)

 

 ・派閥間は1度決めたら基本的に移動することはできない。ただし、選挙ゲーム終了までに1度のみ変更することが可能であり、変更する場合は変更先派閥の“代表者”に賞賛票を投票しなくてはならない。(役職がある人間はその対象に含まれず、いかなる理由があっても移動できない)

 

 

 要約すると、このようなルールが纏められていた。

 重要な役職は“代表者”“人気者”“嫌われ者”の3つ。

 基本的に、退学のリスクがあるのは“代表者”と“嫌われ者”だ。“代表者”は特別試験に倣って責任=退学のリスクだろうが、“嫌われ者”はこのクラスで最も必要ない人間を炙りだした存在と言える。この4名が退学するかを競い合い、賞賛票を集める必要がある。

 しかし、賞賛票は“人気者”に吸われるため、“代表者”と“嫌われ者”は残り1票の賞賛票と他(・)ク(・)ラ(・)ス(・)からの賞賛票をあらゆる手段を使って集めなくてはならない。

 

「読み終わった奴から“退学者を出す”を選んだ奴は後ろに、“退学者を出さない”を選んだ奴は教卓に移動しろ」

 

 数分後、龍園くんは教卓から教室の真ん中まで移動してからクラスメイトに呼びかけた。

 それを機に続々と行動に移すクラスメイト。

 僕もまた移動しようと席を立つ。しかし、すぐに待ったをかけられた。

 

「カムクラ、お前は最後だ。お前がいる方に入ろうとする馬鹿がいてもおかしくないからな」

 

 クラスメイト一人一人の意思をはっきりさせたいのか、彼は公平性を保とうとしていた。

 この点には僕も同意なので立ち止まる。ツマラナイ私情でゲームを台無しにされては本末転倒だ。

 1人、また1人と行動していく内にクラスメイトは前後に別れていく。悩んでいるものもいれば、迷いなく足を進める者もいる。

 そんなやり取りを観察していけば、とうとう僕と龍園くんのみが残された。

 僕は当然後ろへ。退学者を出すことが僕の意見だ。

 

 

「────ククッ、ハハハッ!」

 

 

 獰猛な笑みだ。

 歓喜の心が笑い声とともに彼の身体を震わせている。

 視線は恐怖の象徴へ。かの暴君の帰還にクラスメイトもまた身震いを抑えられない。

 

「この時をずっと待っていた。お前と正式に戦える瞬間をなァ」

 

 彼はそう言って前へ進む。

 歩みに迷いなく、挑戦するために進み続ける。

 定位置の教卓の上に座れば、クラスメイトから困惑の声。無理もない。その選択が想像しづらいのは致し方なかった。

 

「……お、おいおい、なんのつもりだ龍園。なんでお前が────“退学者を出さない”方に」

 

 動揺を隠せないまま時任くんは事実を告げた。

 教卓に進む、すなわち退学者を出さない選択。あの龍園翔の選択とは誰も思えなかった。

 

「何かおかしいか?」

「おかしいだろッ! お前は昨日……」

「勘違いするな。今回の試験は不要な人間を効率的に処理できる良い機会であることは変わりない。だが、2000万ppを支払うことで300cpのマイナスを受けずに一度だけ退学者を出さない権利を買えると考えるなら、こっちにつくのもありだ」

 

 狼狽える時任くんを見ずに雑な説明をする龍園くん。その視線は依然として僕を捉えていた。

 

「さて、カムクラ。お前の派閥は15人だなァ。これがクラスの意思である以上文句はないな?」

「構いません」

 

 彼の言う通り、派閥は15:25で別れている。

 やや不利な展開だが、クラス意思を反映した+龍園くんの根回しを考えれば妥当な数字だろう。

 

「なら、さっさと派閥で話し合いだ。役職を決めれば、ゲームは今からでも始められるからなぁ」

「制限時間は昼休みまでにしましょう。そこからゲームスタートです」

「良いだろう」

 

 僕たちは確認事項を決めた後、互いの派閥に合流する。

 決めるべき役職は3つ。

 朝のHRを使っているとはいえ時間は有限なので円滑に進めていく。

 

「“代表者”は僕で構いませんね?」

 

 誰からも反論はない。これで1つの役職が決まった。

 

「ありがとうございます、カムクラ氏。“人気者”の指名は誰か優先すべき人はいますか?」

 

 僕の派閥メンバーの1人、金田くんが続く。

 メンバーを1度見渡すと、主要メンバーは時任くん、伊吹さん、園田くん、西野さん、木下さんが揃っている。

 逆に“退学者を出さない”派閥、すなわち龍園くんの派閥には石崎くんやアルベルト、椎名さん、矢島さん、真鍋さんが揃っていた。

 

「プロテクトポイントを持つべき人間になるので、可能な限り有能な人間を挙げておくべきでしょうね。僕の意見としては、自派閥からは金田くん、敵派閥からは椎名さんが能力的に妥当ですね」

「椎名か。そりゃ、お前の贔屓って訳じゃねえんだろうな?」

 

 時任くんは僕を査定するように告げる。

 

「贔屓目なしです。運動能力やコミニュケーション能力は足りませんが、その他の能力、特に分析能力はこのクラスにとって貴重なものになるでしょう。時任くん、代替案はありますか?」

「いや、ない。念の為にお前が身内贔屓するかどうか疑って聞いたんだ。悪かった、俺も同意見だ」

 

 自分の意見と行動を嘘偽りなく述べている。

 やはり、彼は意思が強い人間だ。

 

「では、嫌われ者はどうしますか?」

 

 金田くんが次の議題に進めば、途端に会話が消える。

 “嫌われ者”の指名、すなわち退学するべき人間の指名だ。

 名を挙げれば途端に人間関係へ亀裂が入るため、誰も続きを話したがらない。

 だんだんと、責任を負いたくないという臆病な視線が代表者である僕に集まってくる。

 

「僕が即決するのはツマラナイ。何人かから意見を募りたいですね」

「では、僕からよろしいでしょうか?」

 

 即座に反応したのは金田くんだ。

 

「そもそも“嫌われ者”とは名ばかりです。この役職に該当すべき人間は人間関係に問題がある者ではなく、能力が低く今後の試験で役に立たない可能性が多い生徒やクラスに迷惑をかける不要な人間ではないでしょうか?」

「龍園も似たようなこと言ってたわね。この試験は不要な人間を効率的に処理できる試験って。あんたはこの派閥でその人間が誰かもう見繕ってるわけね?」

 

 伊吹さんが会話を繋ぐ。

 金田くんも頷き、躊躇うことなく話を進めていく。

 

「候補が2名います」

「その2人って誰?」

「僕としては、西野氏か時任氏ですね」

 

 指名された2人は僅かに驚いた後、片や気だるげに、片や敵対心を見せた。

 

「ハァ? あたしかよ。……まぁ能力や普段の態度を踏まえれば妥当かぁ」

「俺の方もだな。金田、お前は龍園をリーダーとして認めている奴だ。当然、噛み付いてくる俺はお前の『嫌われ者』だ」

 

 西野さんはこのクラスの問題児。

 伊吹さん以上の一匹狼であり、集団生活を苦手としている。クラスでは孤立気味な点や学力が高くない点を踏まえれば能力的に妥当な選択だ。

 時任くんは問題児ではないが、反抗してくる点が不要と見なされるには十分な理由だろう。

 

「なら、俺は金田を指名するぜ。龍園の金魚の糞でイラつくからな」

「失敬ですね。僕は自分の能力を正しく理解している。退学する要素はありませんよ」

「普通ならそれで良いかもな。だが、今回は“嫌われ者”を決めんだ。単純にお前が気に食わないやつが大半を占めれば、何も問題ねぇ」

「好きにしてください。大半を占められれば、ね」

 

 2人は鋭い目付きのまま煽り合う。

 ヘラヘラとした雰囲気なしの言い合いに、空気は冷えていく。

 

「ちょっと、ヒートアップしすぎでしょ。落ち着いてくんない?」

「うるせぇ、木下。ちょっと黙ってろ」

「同意見です。申し訳ありませんが、少しお待ちください」

 

 俯瞰して会話を聞いていた木下さんが仲裁に入るが、熱くなった2人は止まらない。

 彼女はやれやれとため息を吐き、身近な椅子に腰かけ、携帯を触りだした。

 

「……カムクラさん、こうやって派閥間の空気が悪くなるのは不味いんじゃないっすか?」

 

 険悪な雰囲気で派閥がまとまらない中、園田くんが皆に聞こえるように言う。

 

「こうやって雰囲気が悪くなれば、こっちの派閥が勝てないと見限って抜ける人間が現れます。そうすりゃ、敵派閥の代表者に賞賛票が増えていき、このゲームで俺たちは勝てない。カムクラさんだって退学する危険が出てしまいます」

 

 コミニュケーション能力が高いだけあって、園田くんは状況と人の性質をよく理解していた。

 このゲーム、仲間割れを意図的に作り出すためにわざと“嫌われ者”の指名を自派閥で行わせている。

 それは派閥感の移動を助長させるため。となれば、裏切りをなくすために派閥の仲を保つことは勝つための大前提。

 よって、園田くんの意見は正しく、仲間割れは即座にやめるべきことだ。

 

「では、どうすれば?」

「カムクラさんの答えを教えてください。そろそろ頃合じゃないんですか?」

 

 僕を支持する園田くんだが、なかなか僕の行動を予測できている。

 

「そうですね。では、園田くんの言う通り“嫌われ者”を決めましょうか」

 

 僕が仲裁すれば、2人はすぐに喧嘩をやめる。

 気難しい顔で周囲を睨んでいた西野さんも、携帯に夢中だった木下さんも、ボケっとしていた伊吹さんも事態の動きを見てこちらに顔を向けた。

 

「正直、僕としては誰でも良かったのですが、今回は“嫌われ者”を西野さんに引き受けてもらいます。理由は単純に現状の能力、特に学力とコミュニケーション能力が低いからですね」

「……わかりました」

 

 西野さんは振り絞った様子でそう告げる。

 プライドの高い彼女だが、リーダーである僕が断言したことで反論に意味がないと判断したようだ。

 

「西野さん、“嫌われ者”になったことはあなたの責任です。今後は退学しないように立ち回るべきです。しかし、安心してください。今回、あなたが退学する可能性は低い」

「……えっ? どういう事ですか?」

 

 後悔を噛み締めた表情は一瞬で変わり、キョトンとした様子へ。

 他の人も同様で、僕の発言の真意に気づけない様子だった。

 

「簡単な話です。あちらの派閥であなた以上の“嫌われ者”が現れますから」

 

 龍園くんは僕を退学させる気も、自分自身が退学する気もない。

 予めこの選択肢に誘導するため、そして僕と戦うためという2つの目的のためだけに、選挙ゲームを開いた。

 合理的。2000万ポイントを残せて、減るマイナスポイントはない。見事な策略と言っていい。

 僕は龍園くんの派閥を見る。

 話し合っている様子はなく、既に自由にさせている。

 つまり、こちらの派閥よりも意思統一が優れているわけだ。

 そんな中、リラックスしている人間たちの中に、1人の女子生徒が震えながら青ざめている。

 

 彼女は────真鍋志穂。

 

 クラスカースト上位の女子生徒だが、その周りには誰も人がいなかった。

 

 

 

 ────

 

 

 

 

「“代表者”は俺だ。文句は言わせない」

 

 別れてすぐに龍園はそう宣言した。

 嫌な鶴の一声。恐怖によって反抗できるものはいない。

 

「“人気者”はお前らで勝手に決めろ。“嫌われ者”は既に決めてある」

 

 龍園がそう言えば、誰もが目を見開く。

 “嫌われ者”の指定。それは退学すべき人間が決まっていることを意味している。

 自分の事か、はたまた隣にいる誰かなのか。不安感は視線として現れ、右往左往する。

 

「皆さんは誰が人気者になるべきだと思いますか?」

 

 弛緩した空気を和ませたのは椎名だ。

 特有の物腰の柔らかさだけで龍園への注目を奪い、そのまま話を続けていく。

 

「正直、私としては誰が“人気者”になろうと興味はありませんが、プロテクトポイントがある以上、ある程度能力ある人間が持っていた方が今後の特別試験で役に立つと思います」

「それは同意。このクラスでも有能な人間に渡した方が人柱になりつつ上手く立ち回れるとかできそうだね」

 

 椎名の発言を矢島が後押しする。

 2人の発言に龍園も同意だった。誰がプロテクトポイントを持とうと彼からすれば些細な問題だが、動かす駒は出来るだけ有能な方がスムーズな対応が出来てストレスがたまらない。

 

「じゃあ、敵対派閥なら金田とかか? あいつ頭いいし」

「頭いい理論で言えば、俺らの派閥からは椎名ちゃんでいいんじゃね?」

 

 石崎、小宮と順々に意見を述べる。

 アルベルトも二人の意見に賛成の意を込めて首を縦に振っていた。

 

「私ですか? 私としては矢島さんと園田くんの二人でもいいと思いますよ。文字通り、このクラスでは“人気者”でしょうし」

「ご指名ありがたいけど、私には責任少し重いかな。ある程度の分析とかはできても、金田くんみたいに徹底した参謀みたいな行動も、椎名ちゃんみたいに俯瞰して考えたりとかできないもん」

「そうですか。では、石崎くんはどうでしょうか?」

「お、俺かよ!?」

 

 思いもしない指名に石崎は肩をびくりとさせ慌てる。

 

「ま、まぁ俺だってそれなりに働ける方だし……妥当っちゃ妥当な訳か!」

「いえ、石崎くんにプロテクトポイントがあれば実質龍園くんが手に入れたようなものです。今後の特別試験で龍園くんが使いやすくするなら石崎くんは適任かと思いました」

「……あっ、そうっすか」

 

 容赦のない椎名の意見に龍園は内心少しウケていた。

 しかし、驚くべきはその冷淡な分析能力。普段の穏やかな態度を全て取り除いたような端的な発言は役に立つと確信できる。

 駒の中でも最上位で有用な武器と、龍園は椎名を再評価していた。

 

「クク、俺が使いやすい点で言えば石崎の方がましだが、それなら金田で代用が利く。石崎を指名する必要はないな」

「分かりました。では、敵派閥からの“人気者”の指名は金田くん。自派閥は……私で構いませんか?」

 

 やや自信なさげに彼女は皆に問いかける。

 だが、彼女の態度に反して味方は明るく肯定する。

 能力的な点も認めている上に、最悪な空気を変えて司会進行を務めた椎名に否定要素は見当たらなかったからだ。

 

「決まったな。なら、“嫌われ者”の発表の時間だ」

 

 再び空気はひり付き始める。

 龍園は笑みを浮かべながら1人ずつ見渡す。

 そして、ついにクロの前でカーソルが止まった。

 

「“嫌われ者”は────真鍋、お前だ」

「……はぁッ!?」

 

 クロの指名。

 その第一声は偽りなしの動揺だった。

 

「な、なんでよ龍園くん! わ、私はッ!!」

「クク、前の試験で活躍したから対象から外れるとでも思ってたんだろ?」

「……ッ!?」

 

 真鍋は大きく両目を開いて歯を軋ませる。

 

「そ、そうじゃないのッ!? 私、前の試験で役に立ったよ!」

「そうだな。しかし実際はお前じゃなくてもこなせた役割だった。カムクラが、何でお前を選んだか分かるか?」

 

 龍園は混合合宿の試験におけるカムクラの動きを全て把握している。

 何せ一番近くで見ていた。

 だから、カムクラが真鍋をわざわざ使った理由も理解していた。

 

「あの時、指示をこなせる人間の条件は気が強く、物怖じしない監視役だ。このクラスならば西野、伊吹、木下と条件の合う奴なら他にもいた。

 選択肢があった中でお前を使った理由、それは一度大きな失敗をした人間のこれからをカムクラが見たかったからに過ぎない」

 

 未知が見たい。

 それだけがカムクライズルの行動指針。龍園は超えるべき標的を見据えているがゆえに断言する。

 龍園の発言に真鍋も現実を突きつけられ、顔を青ざめる。

 真鍋はカムクラが自分のこれからがどうなるか、それに興味を持っていることを既に知らされている。

 だからこそ、混合合宿では期待と受け取って精一杯行動した。

 その結果、報酬を受け取り途方もない満足感に浸っていた。

 自分はカムクラの期待に応えられた。よって、今回の試験では“嫌われ者”に選ばれない、そう高を括っていた。

 しかし、

 

「カムクラは未知が見たいからお前を使うだろう。だが、俺からすると、お前は俺の指示をしくじり、挙句爆弾を抱えてきやがった女にすぎない」

 

 真鍋はカムクラの玩具であっても、龍園の玩具ではない。

 面倒な問題、軽井沢恵とのことで弱みを握られたことは真鍋とそのグループの責任に他ならない。

 それは龍園にとって完全に見限る理由とまではならないが、最も不要な人間としては妥当な選択肢だった。

 

「そういう訳だ。まぁ俺は退学者を出さない派閥の代表者だからな。お前は俺の勝利を願っていろ。そうすれば、救われる」

 

 龍園は突き放すように告げて会話をやめた。

 真鍋を愚かな女とは思っても、これ以上追いつめる気はない。

 真鍋の現状は、元を辿れば綾小路に目をつけられたこと。

 どこにでもいる性格の悪い女。ただし、その天罰を受けた運の悪い女。

 カムクラ風に言えば幸運の才能がなかった、そう思いつつ心の中で僅かな同情を向けた。

 

 

 




ゲームのルールで矛盾があったらすまぬ。
他クラスは原作通り阿鼻叫喚って感じです。リーダーたちが頑張って収め、彼らなりに試験の進め方を模索している真っ最中。
そんな中、我らが龍園さんは楽しんでおられます。

坂柳クラス⇒坂柳が混乱を収め、退学者の指名を行うことを宣言。葛城の名を既に仄めかしており、クラスの不穏はほぼなし。

一之瀬クラス⇒一之瀬が皆を宥めているが、大抵の生徒の心には不安が奥底にある。原作と違って、南雲からポイントを借りるという手段に走りづらい状況。

堀北クラス⇒堀北さんと櫛田さんが頑張っております。高円寺は原作通りの行動、皆が頭を抱えております。……山内? あぁ、あいつも某Aちゃんから仕掛けるように連絡を受け始めております。

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