ようこそ才能至上主義の教室へ   作:ディメラ

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最後の意思確認

 

 

 

 龍園くんの挑戦、矢島さんの意思確認を終えた僕は自室へと戻った。

 今回の試験でやるべきことは残り2つ、それらは今日中に終わらせる。

 まずは、僕の派閥内で裏切る可能性が高かった2人の意思確認だ。

 既に2人の呼び出しは帰路についている最中で行った。後は、僕の部屋にやってくるのを待つだけだ。

 

「来ましたか」

 

 部屋へ戻って数十分ほどでチャイムが鳴る。

 扉が開いていることはチャットで送っているので、続けて玄関が開く音が聞こえた。

 人の気配は4人。躊躇いなく進む足音が1つと恐る恐る動いているのが3つ、前者は実に分かりやすい。

 

「おまたせ」

 

 部屋の扉を初めに越えてきたのは伊吹さんだ。

 その後ろに金田くん、木下さん、園田くんと続く。

 彼らこそ、派閥の裏切り者筆頭の2人。伊吹さんと園田くんには、龍園くんと縁が深い彼らが不審な行動をしていないかを、数日間監視してもらっていた。

 

「……お邪魔します、カムクラ氏」

 

 部屋に入ると真っすぐ僕のベッドへ向かい、無遠慮に腰掛ける伊吹さんを傍目に、金田くんが戸惑いながらも挨拶する。

 他2人も挨拶をすると、彼らは椅子に座る僕の方へ近づき、立ったまま話をすることを望んだ。

 

「今日はあなたたちの意思を確認するためにこの場へ呼び出しました」

 

 手早く終わらせるために、僕は今日の用件を切り出す。

 

「意思というのは派閥を移動するかどうか、ですね?」

「はい。あなたたち2人は僕の派閥内で龍園くんと特に縁がある生徒、他の生徒たちよりも派閥を抜ける可能性があったため今日まで監視させていただきました」

 

 監視をつけていたことに、彼らは驚かない。気付いていたのだろう。

 伊吹さんと園田くんの監視スキルが高くない。今まで龍園くんから下されていた監視は気付かれても良く、圧力をかけるための監視だったため致し方ない。

 

「仕方ないですね。しかしカムクラ氏、もう監視を解くのですか? 明日、試験本番の朝に龍園氏が暴力を用いた勧誘をするのでは?」

「監視は解きます。そして、明日の朝に龍園くんが暴力を用いた勧誘をすることはありません。先程、彼の計画を壊してきましたから」

「……龍園くんの計画?」

 

 木下さんがその根拠が気になり、疑問を口にする。

 

「龍園くんは今日僕を負傷させ、明日の試験で出られないようにと考えていました。代表者が1人になれば、明日の試験の結果を自由に操作できますからね」

「ハッ、龍園らしい作戦ね。で、その計画を壊したってことは、龍園をぶっ飛ばしたの?」

「はい。本気で打ち込んだので完治までは数日、それまでは思うように肉体を動かせないでしょう」

 

 伊吹さんの問いに僕が答えれば、他3人は思わず表情を変化させる。

 映る感情は驚愕。僕の才能を知る彼らだが、暴力ですら龍園くんを打ち負かしたことは意外だったようだ。

 

「ほんと、なんでもありっすね。龍園の土俵に立って打ち負かしたなら、プライドも相当傷ついたんじゃないっすか?」

「その狙いもありますが、この程度で折れる彼ではありません。明日の朝、舎弟2人に肩を借りながらでも、あなたたち2人の交渉に臨む可能性はあります」

「……じゃあ、猶更監視を解くのは不味いんじゃないっすか?」

「万全な交渉ではない限り、あなたたちは靡かない。僕にやられたという事実を知るならば、どちらの派閥についた方が良いかなど分かり切っています」

 

 園田くんが納得を示す。これであらかたの疑問は解決できただろう。

 

「なるほど、確かにこの話を聞いた今、派閥を移動しようという発想はなくなりましたよ」

「……か、金田、あんたどうしてそんな平然としてられの? こ、怖くないの? ここにこうやって呼び出して教えたってことは、裏切ったら龍園くんのようになるって言われてるようなものだよ」

 

 状況を正しく理解した木下さんが警戒を見せる。

 現状、3vs2の状況。相手はクラスの暴君を凌駕する僕、喧嘩慣れした伊吹さん、運動能力が高い園田くん。

 この部屋に入った時点で僕が裏切りを許すつもりはなく、逃げられないことを悟っていた。

 

「そうですね。しかし、それは裏切った時の話です。元より、今回の試験で裏切るつもりはなかったので関係のない話です」

 

 金田くんは冷静な態度のまま僕を見る。

 その表情は穏やかで、僕がこの場で暴力を使わないことを確信しているように見えた。

 

「あなたは龍園くんについていくことに反論はない。混合合宿の時も、同じ感情でした」

「はい。僕は龍園氏がリーダーでも構わないと今でも思っています。そして、カムクラ氏ならばより良い結果を持ってきてくれることも。ですが、どちらがリーダーであっても、僕のやるべきことは変わりません」

「それはなぜ?」

 

 僕は既に推測できているが、金田くんの意思を確認するためにあえて聞く。

 

「僕は組織のリーダーになれる素質はありません。ですが、組織の参謀としてならば素質はある。であるならば、どちらのリーダーであろうと僕のやるべきことはリーダーを支え、勝利に集中してもらうことです」

「正しい。その自己分析を僕は評価します」

 

 自分の役割を理解しているからこそ、クラスを活かすための部品であることを受け入れた者の言葉だ。

 金田くんは平田くん同様、現状変わる必要のない能力を有している。加えて、平田くんよりも自分の役割を正しく認識し、逃げずに前を向いている。

 これならば、僕が手を出す必要はない。

 

「では、あなたの意思も確認しましょうか?」

 

 僕は視線を木下さんに向ける。

 先程まで恐怖をしていたが、既に怯えはなくなっていた。

 どうやら、金田くんの自信あふれる言葉に当てられたようだ。

 

「……私も、裏切らないよ。金田の後に言うから……あんま信じられないかもだけど、私も龍園くんとカムクラくんのどっちかがリーダーならば文句はない」

 

 木下さんは嘘を吐いていないことを主張するが、僕に嘘は通じないため、無意味な主張だ。

 僕は視線で続きを話すように促す。

 

「……私は勝つためなら自分を犠牲にできる。物のように扱われても文句は言わない。そして、今回のゲームでカムクラくんと意見が一致した。だから、裏切らないでついてくことにする」

「なるほど。体育祭の時よりはマシな生徒になったようですね」

 

 嘘なしの言葉から彼らの真意は確認できた。

 木下さんは駒としての適性が高い生徒だ。

 彼女は他者にどう思われても構わないようで、徹底して自我を殺せる。その上で全体的な能力が高く、クラス内でも地位は高い。

 体育祭では龍園くんに協力して足の怪我を故意に作った。混合試験では僕の指示を忠実にこなして朝比奈なずなに伝言を届けた。

 今、僕の才能や金田くんの言葉に当てられたことを加味しても、十分な実力を持っていると言っていい。

 2人ともこのクラスに必要な人材で、現状の完成度が高い。優秀な生徒と言っていいだろう。

 

「あなたたちの意思は確認できました。これからもツマラナイ生徒にならないように精進してください」

 

 やるべきことは終えたので、僕は皆を解散させる。

 解散の途中、伊吹さんに今日の晩御飯をたかられたが、丁重にお断りした。

 まだもう一つ、やるべきことがある。

 僕は彼らとともに部屋を出た後、幸運の才能が発動することを確信して散歩を始めた。

 

 

 

 ──────

 

 

 

 散歩を始めて約十分後、僕は目的の人物を発見する。

 場所は寮から少し離れたベンチ。学校までの道のりにあり、良くカップルが利用している休憩スペースだが、今日は誰も座っていないようだ。

 既に時間は18時を越えた。冬頃とは言え夕日は消え、夜空は暗くなっている。

 目的の人物は街灯の下で他の人間と話し合っており、その顔色はあからさまに悪い。

 

「なぁ、頼むって平田!! 俺は退学したくねぇよ!!」

 

 諜報員の才能を使用して近付けば、声が聞こえる。

 訴える生徒の必死な形相を見て、目的の人物こと、平田洋介は動揺していた。

 

「わ、分かってるよ山内くん。でも……」

 

 大声を上げる生徒、山内春樹は退学の危機に瀕していて、平田くんはその相談を受けている。

 動揺し、余裕のない様子。どうやら、僕の忠告は聞かずに試験に臨んだらしい。

 ツマラナイ。結局、彼は何も出来ずに他者の選択に流されたようだ。

 

「顔色が悪いですね、平田洋介」

 

 考え悩む彼の前に、僕は隠れることをやめて姿を現す。

 僕が声をかけるまで接近に気づかなかった2人の反応は驚きから。

 マヌケにも2人揃って大きく目を開き、1歩後退する。

 

「……カムクラくん。申し訳ないけど、今は立て込んでてね。用は後にしてくれないかな?」

「彼が退学することに対して対策を立てようと考えているのならば、無駄なことだと言っておきます」

 

 現状を理解していることを伝えれば、彼は歯ぎしりをして敵意を向ける。

 他者に恐怖を与えようとする睥睨。見る人によってはありえないほど辛辣な視線と言っていい。

 

「その反応からして、やはり彼がDクラスの退学者なのですね。坂柳さんがちょっかいをかけることに思い当たる理由は?」

 

 僕は山内くんに問いを投げる。

 すれば、彼は恐怖に引き攣った顔を見せながら、虚勢を張って大声で告げる。

 

「さ、坂柳ちゃんがちょっかいっ!? そ、そりゃ、俺のことが気になるってことだろうぜ!! ほら、好きな子にはちょっかいをかけたいものだろ!!」

「ツマラナイ。そんな俗説に彼女が流されていると?」

「ほ、本当なんだって!! 俺は坂柳ちゃんに信頼してもらってる!! だから、坂柳ちゃんをバカにした綾小路を退学にして欲しいって頼まれたんだよ!!」

 

 聞いてもいないのに、坂柳さんとの過程を話すので大体の推測は完了した。

 坂柳さんは嫌いな生徒がいるからちょっかいを出したいと言っていた。そして、その嫌いな生徒というのが山内くんだった。

 それでいて、月城理事長代理による刺客からの依頼をこなしているように見せ掛ける一環として、山内くんの立場を陥れるような甘言を吐いた。

 案の定、山内くんはクラスにて裏切りの節を見せたのだろう。そして、退学者筆頭になってしまい、平田陽介に退学したくないと懇願し、すがっているわけだ。

 

「ツマラナイ。彼女が本当にあなたを好いているのならば、なぜあなたは彼女ではなく、平田くんに助けを求めているのですか?」

「……そ、それは、坂柳ちゃんと連絡が繋がらなくて、だな。た、多分だけど、忙しいんだよ、坂柳ちゃんだってさ……」

 

 語尾に向かうにつれて小さくなっていく声。

 どうやら、本人も薄々気付いているようだが、裏切られて退学するという現実を受け入れないようだ。

 ツマラナイ。動揺と苦悩からくる冷や汗は見飽きている。

 

「十分だ。それ以上、山内くんを追い詰める必要はないだろ」

 

 平田くんが敵意むき出しのまま会話を制止する。怒りによって余裕がなくなったことで荒々しい口調になっている。

 

「以前と同じ質問をしましょう。もしクラスメイトを1人切り捨てなければいけない状況があり、その1人を切り捨てればクラスメイト39人が救われるとしましょう。────あなたは1人を救いますか? それともクラスを救いますか?」

「……黙れ。僕はこんな結末認めない。誰かを陥れてクラスが崩壊することを良しとしない」

「それが本音ならば、なぜあなたは今まで誰かが退学しないように行動をしなかったのですか?」

「行動したさ!! 僕はクラスの仲を取り持って、特別試験で仲違いが起きないように……」

「質問を変えましょう、どうしてクラスメイトを切り捨てられないというのに2000万ポイントを貯めようとしなかったのですか?」

 

 平田くんは痛い所を突かれたことで俯き、唇を噛む。

 学級崩壊を起こさないように、彼が努めたことは本当だろう。

 事実、彼の悪い噂など今まで聞いたことがない。それほど真摯に他者へ寄り添い、クラスを一丸とするために身を粉にしてきた。

 だが、所詮それだけ。この学校では退学が背中合わせであることは4月の段階で露呈している。そして、その救済手段も早い段階で分かっていたはずだ。

 

「まさか、未だにDクラスから1人も退学者がでないと思っていたのですか? 堀北鈴音に任せていれば誰も退学しないと安心していたのですか?」

「……黙れ」

「浅い想定ですね。理想を他者に任せた時点で、こうなる未来は変わらなかった」

「黙れって言ってるだろう!!」

 

 その怒声は山内くんの懇願の比ではないほど大きい。

 怒気は殺意へ。あと1つ挑発を加えれば、彼は距離を詰めて暴力を用いる。

 ツマラナイ。体育祭の時、彼の本質は既に推測済み。

 彼は暴力や恐怖といった言葉に過剰反応する。

 それは過去に自らが利用したか、受けて経験したか、暴力が振るわれる現場を見て何もできなかったか。

 そして今、握られた拳に躊躇がなく、手馴れている。

 

「クラスメイトが退学して欲しくないという想いが、悪いとでも言うのかッ!?」

「悪くありません。しかし、この学校は特殊。退学して欲しくないと思うのならば、あなたは何としてでも抗うべきだった。予め退学者を救済するためのポイントを集め、堀北鈴音の論に立ち向かい続けるべきだった」

 

 決して、彼の考えが間違っている訳ではない。

 ただ、分不相応の理想を掲げるのであれば、相応の覚悟と計画を持つべきだった。

 そして、何もしなかった彼の言葉とあり方は子供の我儘、妄想に他ならない。

 

「あなたは山内くんを今からでも救おうと模索しているようですが、一つの解決策を授けましょうか?」

「なっ!? そ、そんな嘘に騙されると……」

「嘘ではありません。この試験が一人の生徒の退学で消えなければならないというのならば、1人の生徒を犠牲にすることで終わるというのならば、誰も文句を言わずに終わる方法が存在します」

 

 僕が断言すれば、平田洋介は戸惑いながらも、その瞳の奥に希望を見出す。

 僕の才能を知る以上、自分には思いつかない解決策を期待している。

 

「……な、なぁ、それは本当なんだよなッ!? お、俺はまだ退学しなくてもいいんだよなぁ!?」

 

 黙り込んで言葉を待つ平田洋介と打って変わって、自身の退学が取り消せる可能性を見つけた張本人は騒々しい。

 ────今日の僕の目的は平田洋介の意思確認と退学者が誰であるかだ。

 山内くんに興味は欠けらも無い。重要なのは退学者がDクラスから出るという事実だ。

 この試験、僕はどこかのクラスから確実に退学者が出ると最初の説明を聞いた時点で推測していた。

 当然、Dクラスはポイントの手持ちが少ないため、退学者が出る確率は高い。

 そして予想通り、山内くんという退学者が出る。

 

 退学。すなわち、この世界からの離脱の可能性がある。

 

 真鍋さんと山内くん。この世界から2人の脱落者が出る。

 その対応を、日向創が放置する訳がない。その確認と最後の状態を整えるために、僕はここに来たのだ。

 

「平田くんの覚悟次第です。もっとも、彼にその覚悟はありませんし、あなたがそれを良しとするほど腐った倫理観を持っていませんので、あなたは自ら退学を選ぶでしょう」

「……はっ? お、俺が自ら退学をえ、選ぶぅ!? あ、ありえないだろ、俺は絶対に退学したくないんだ!!」

「……僕が、彼の代わりに退学すればいいんだな?」

 

 怒りを収めきれていない低い声が思考を止まらせていないことを証明する。

 彼もまた、己の本質に従ってリスクなど考えずに行動しようとしている。

 ツマラナイ。彼はその選択を受容できるだろうが、他者がそれを許さない。

 彼は自分が必要とされている人間であることを理解すべきでしょう。

 

「はい。自死を選ぶというより確実な手段もありますが、ね」

「……はっ?」

 

 2つの声が重なった。

 低く敵意を向きだしていた低い声も、必死に懇願していたがなり声も、驚愕ゆえの不意にでた小さな声に変わっていた。

 ここで平田くんが死ねば、全ての批判票は人生からドロップアウトした平田くんに集められ、山内くんは退学しなくて済む。

 学校側も特別試験で死者が出たとなれば大問題。特に、この試験を強引に介入したであろう月城理事長代理、ひいては綾小路くんの父親にも少なからず影響があるだろう。

 

「ま、待て待て待て待て待て。おい、待ってくれよ、そ、そんなのねぇだろッ!?」

 

 先に言葉を発したのは山内くんだ。

 ツマラナイ人間であっても、彼の倫理観は至って普通。退学したくないと言っても、他者の死を対価としてまで救済は望んでいない。

 

「……自殺、そうか自殺か。それで、今度は誰か一人を救えるんだね」

「へ、変なことを考えるなよ、平田!! ……お、おい聞いてんのかよ!!」

 

 先程まで黒い感情が乗っていた平田洋介の言葉から感情が抜ける。

 山内くんは即座に異常を感じ取り、平田洋介の肩を両手で持ち、声を届けようとする。

 

「……山内くん、もういいんだ。確かに、この方法ならば君が救われる。僕も、もうこんな風に悩まなくたって……」

「弱気になるなよ!! ひ、平田が死んじまったら悲しむ奴だっているだろ!!」

「変な話だ。君はさっきまで退学したくないと僕に頼み込んでいたのに、対策が見つかると今度はそれすらもやめてくれと僕に頼むのかい?」

「あ、当たり前だろ!! ……お、俺だって自分がクラスで貢献度が低いことは、わ、分かってんだ。こんな試験で退学したくねぇから平田に頼んだけど……、それでも、他人が死んでまでこの学校にいたいなんて思わねぇよ!!」

「……そうか、僕は全てを放り出す事すら許されないんだね」

「あ、あいつの言葉は嘘だ!! 俺たちを揺さぶろうとしている嘘なんだよ!! 騙されんなよ!!」

「その通りです。あなたが自死を選んだ所で、山内くんやあなたを信用した人間が続けて退学するか、後追いをするだけです」

 

 僕は山内くんの言葉を肯定する。

 今の言葉で平田洋介の過去に何があったかも察した。後は、綾小路くんにでも任せておけば彼の更生は問題ない。

 

「山内くん、これで分かったでしょう。あなたの退学は免れない。それでいて、あなたは普通の感性を持っている。善意で他者にその言葉をかけられるならば、今後あなたにも更生の可能性はあるでしょう」

「……う、うるせぇよ。俺は……」

「嘘にも使い方があります。もっとうまく嘘を使いこなせる人間になるか、今後他者に嘘をつかずに接するか、その選択はあなた次第です」

 

 この学校を去る人間を絶望に落としてもいいが、それは僕の考える日向創の思考とは異なる。

 この世界は江ノ島盾子を打倒した後の世界だと推測している。ならば、日向創はこの世界の住人にも未来の可能性を与えたいと考えるはずだ。

 だから、今回は二人の退学者の精神を折れないように仕向ける。

 

「ちなみに、あなたがクラスメイトに退学者を自分にするように宣言しても、結果は変わりませんよ。あなたはクラスに貢献しすぎたでしょうから」

 

 僕は平田洋介に向き直して告げる。

 その表情には様々な感情が濁流のように現れては流れ去っていたことで、疲労が映っている。

 

「……君は、どうして他者を救ってくれないんだ。それだけの才能があるのならば……」

「前にも言ったでしょう。僕が支配した所でそこから未知は生まれない。この学校の退学システム、特に今回の試験は理不尽極まりないですが、一之瀬帆波、坂柳有栖、龍園翔の各クラスのリーダーは今回の試験で退学者を出さないような一手を打てた。理不尽に立ち向かえなかったのはDクラスのみ、これを実力が足りなかったと評価するのは酷な話ですが、それでもこの評価は間違いではない」

 

 坂柳さんと龍園くんはクラス中からポイントを集めることで、一之瀬さんは足りなくても他学年から集めることでこの試験を乗り越えることができただろう。

 Dクラスだけだ。堀北学からポイントを借りるという選択を選ばない限り、退学者なしで乗り越えることはできなかった。

 

「あなたの意思は確認できました」

 

 退学者が出るという事実と2人の反応から大体の未来は推測できた。

 どうやら、Dクラスでの話し合いは綾小路くんがしっかりと働いてくれたことも察した。

 既にやるべきことは終えた。

 僕は2人に背を向け、部屋への道を進んだ。

 

 

 




カムクラくん、自〇教唆はダメですよ。まぁ、彼に倫理観なんてある訳ないんですけどね。頭開いた時に捨てちまったから。
さて、次がラストです。
お待たせしました。ロンパ編、そろそろスタートです。

木下⇒堀北に怪我させられたよーって言ってた人。この子は原作とほぼ変わりなし。強いて言うなら、本作では駒としての適性が高いってことにしてる。
陸上部であって運動能力は高く、矢島さんとも仲良くてコミュ力も問題なし。勉強は平均より下そうだけど、カースト上位の優等生ですね。
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