ようこそ才能至上主義の教室へ   作:ディメラ

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初めての退学者

 

 

 

 ついに投票試験当日、土曜日の朝を迎える。

 様々な思惑が蔓延る数日間は終わり、それぞれのクラスで結論は出た。

 

 退学者を出すか、出さないか。

 

 議論の中心はここ。この選択を間違えないために、それぞれのクラスは時間をかけて議論を重ねてきた。

 クラスの総意で決まった結論もあれば、絶対的なリーダーによる選択によって導き出された結論もあるだろう。

 紆余曲折を経て纏まった結論もあれば、そもそもリーダーを決める所から始めてから導いた結論もあるだろう。

 それまでの過程と状況が違う以上、どの選択が正しいとは一概には言えない。

 それを受け止めて、前へ進むことこそが重要だ。

 

 しかしそれでも、この結論は今後の特別試験で大きく作用する。

 

 細かいメリットデメリットはあげればキリがなくなるが、その中でもクラスを率いていくリーダーの評価は今後敵対する時に大きな指標となる。

 非情な選択を取れるか、理想へ走れるかどうか。

 総じて見られるのは、クラスを率いていくリーダーとしての覚悟だろう。

 

「注目しろ」

 

 8.30頃、本来ならばHRが始まっているこの時間に、龍園くんが教壇に立つ。

 登校時間は普段通りだが、投票試験の開始は9時。少しの猶予が設けられているのは学校側の配慮か、最後の最後まで疑心暗鬼にさせるための仕掛けか。どちらにしても、Bクラスにとっては選挙ゲームの集計を確認できるために使える時間だった。

 

「全員集まってるな。なら、これから選挙ゲームの集計を始める」

 

 欠席者は0。

 全員が事の顛末……選挙ゲームで勝ったクラスを率いていくリーダーを、知れる。

 

 ────僕か、龍園くんか。

 

 その答えは既に出ていた。

 グループチャットの投票機能を利用して行われた今回のゲーム。

 リアルタイムで票の動きが見えるため、皆は携帯を取りだし、現在の票差を確認していた。

 当然、反応は二通り。勝者と敗者によって表情の明るさが違った。

 僕も携帯を眺め、結果を頭の中で纏める。

 

 

 

 最終結果

 

 “退学者を出す”派閥────23人

 “退学者を出さない”派閥────17人

 

 派閥間の移動人数⇒8名

 勝者───“退学者を出す”派閥。

 

 批判票の詳細

 

 カムクライズル────31票

 龍園翔────39票

 真鍋志保────35票

 西野武子────15票

 

 賞賛票の詳細

 

 椎名ひより────39票

 金田悟────39票

 矢島麻里子────19票

 園田正志────15票

 カムクライズル────8票

 

 

 

 無事、僕は勝利を収めることができた。この数値だと、プロテクトポイントも僕のものですね。

 予定調和の未来に退屈が押し寄せてくるが、その過程で龍園くんの意志の強さを再確認できたので、マシな結末ではあった。

 結局、僕の派閥を集団行動させたことで龍園くんはそう簡単に手を出せず、最後まで引き抜けなかった。

 その理由は単純、彼の人間性だ。

 今までの人物像が仇になったことで、彼は暴力を用いた強引な手法か、ポイントによる買収のみしか頼れなかった。

 そして、僕はどちらにも対策を立てた。特に、後者はそもそも実行した所でクラス内でポイントが回るだけで量が増える訳では無い。

 報酬として莫大なポイントを渡された所でいざとなったら龍園くんに回収されると嘯けば、僕の派閥は誰も誘いに乗らなかった。

 

「本番はこの投票通りに入れろ。ここまでやってくだらねぇことをするなら、そいつは必ず退学にしてやる」

 

 ゲームで敗北をつきつけられても、龍園くんは狼狽えることなく告げる。

 それに反論するものはいない。

 これからリーダーの座を降りるといって、今までの龍園の行動は忘れられない。

 龍園翔ならば、気に入らない生徒を暴力を用いて退学にする。そんな強い確信、クラスメイトの中にはその恐怖が残っている。

 

「龍園、1つ質問がある」

 

 しかし、このクラスには反骨精神がある生徒もいる。

 その筆頭、時任くんはその恐怖を知りながらも堂々と口を開く

 

「このゲームを成立するにあたって、他クラスに支払うポイントを用意したな? まさか、あれはクラスから集めたポイントを使う訳じゃねぇよな?」

 

 時任くんは小馬鹿にするように笑う。

 敗北を喫したこのタイミングでの指摘。

 既にリーダーとしての資格を剥奪された龍園くんへの攻撃には最適のタイミングと言っていい。

 

「安心しろ、俺の手持ちから支払う」

 

 龍園くんにはAクラスから徴収していた莫大なプライベートポイントがある。

 今回、選挙ゲームをするにあたって用意したルールは“A、C、Dクラスがこのゲームに参加するならば、報酬を約束する”というもの。

 最も賞賛票を送ったクラスには100万ポイント。もし3クラス全てが参加し、40票同票だった場合は全てのクラスに40万ポイントの出費だ。

 最大120万ポイント。しかし、問題ない出費です。

 

「……本当だな? 後で確認するぞ」

「龍園くん、その支払いには僕も半分出しましょう」

 

 訝しむ時任くんに龍園くんが言葉を返す前に、僕が提案を告げる。

 

「クク、どういう風の吹き回しだ?」

「選挙ゲームは退屈ではなかった。それに対する対価ですよ」

「そうかよ。なら、60万ポイント用意しておけよ」

 

 互いに他クラスの賞賛票を奪い合ったものだから結果は既に見えている。

 支払うポイントをわざわざ確認する必要はない。

 

「……待て、勝手に話を進めるな。俺は俺の目で確認したい。そういう約束でポイントを集めたんだ、何も問題ないだろう?」

「問題はありませんが、それは後程行ってください。わざわざこの場で確認する必要はありませんから」

 

 僕は適当に突き返せば、時任くんは僕の介入で追撃を止める。

 既に、龍園くんはリーダーから降りる。となれば、これ以上は個人の感情が優先された話になる。

 今回の試験を運の良さだけで乗り切った時任くんが発言する必要はない。

 

「おい、カムクラ」

 

 敵意を孕んだ鋭い視線が僕を見る。

 動きに不調あり。動ける程度に回復はしているが、ダメージは相当残っているようだ。

 

「この試験が終わってからはお前がこのクラスのリーダーだ。前に立て」

 

 前リーダーから次のリーダーの指名。

 これでリーダーの引き継ぎは完了だ。正式な受け渡しであった以上、他クラスにもすぐに広まっていくだろう。

 僕は席から立ち、教壇へと向かう。

 代わるように龍園くんは教壇から降りて、自席へ戻ろうとする。

 しかし、あえて僕と同じ道から帰ろうとする。

 超分析力に、彼の未来の動きが映る。

 パンッと、甲高い音が響いた。

 

「……お、おい、龍園!!」

 

 思わず声を上げたのは、時任くんだ。

 新しいリーダーの受任。それが右ストレートで渡されるとは思いもしなかったらしい。

 掌に収まる彼の右拳を僕は手放す。

 すれば、彼も拳を解き、臨戦態勢が解ける。

 

「必ず奪い返す。せいぜい、隙を見せないようにな」

 

 そう言えば、彼は痛みを我慢しながらも心底嬉しそうに笑って僕の横を通り抜ける。

 背後からの奇襲はなし。今回はこれで決着のようだ。

 昨日の襲撃で勝敗が付いたことは明白。延長戦にも備えていたが、リスク度外視で攻めるには開きすぎた力量の差を理解し、撤退を選んだ。

 

 ゆえに、彼はこの一撃を最後にリーダーの座を正式に降りた。

 

 これから彼はこの差を埋めるために試行錯誤する必要がある。

 だからこそ、彼は混合試験のように僕を観察する。

 言ってしまえば、力を溜める期間。リーダーとしての経験はこの一年間で十分得れた。後は、その使い方と殻を破るために必要なことを学ばせる。

 その間くらいならば、僕がリーダーとなってもいいだろう。

 

 しかし、問題が一つ。

 

 僕がリーダーになってしまった場合、勝利は必然だ。

 そして、勝利するということは僕の立場はとうとう揺るぎないものになる。

 そうなってしまえば、龍園くんが僕からリーダーの座を奪い返すのは不可能になる。

 となると、彼が戻って来ても問題ない立場を残していく必要がある。

 彼には不本意でしょうが、その土壌であるクラスメイトの基礎的な能力をあげるくらいに留めておきましょう。

 

「先に確認しておきますが、僕がリーダーであることに異論ある人はいませんね?」

 

 念のための確認を行い、一人一人の表情を分析していく。

 もはや、僕がリーダーであることに誰も悪感情はない。

 未知を第一に求めて行動する異常者という点から見られていてもだ。それはやはり、混合合宿を絶対的な実力で制したことが大きい。

 好みや不安よりも、持ち帰る利益が大きいならば不満もない。さらに言うならば、僕は龍園くんと違って目に見える恐怖が少ない。

 失敗や罰は鉄拳制裁だった彼の統治と比べれば、僕は慈悲深いと思えるのだろう。

 

「……話し合いは終わりでいいのかな?」

 

 批判の声がなかったことを確認した坂上先生がゆっくりと口を開く。

 教室の後ろ、丁度監視カメラがある位置の下で彼は事態を見守っていた。

 そんな彼が話し合いを切ったということ。僕に席へ戻るように指示を出し、彼が教壇に向かうことからもその理由は言うまでもない。

 

「それでは、クラス内投票を始めます。名前を呼ばれた生徒から順に、投票室に移動してもらいます」

 

 投票試験がとうとう開始する。

 教室で一斉に投票を行うことはしないらしい。

 徹底した匿名対応は学校側の配慮だろう。しかし、選挙ゲームで意見が一致している僕らにとっては関係ない話だ。

 結果は、既に出ているのだから。

 

 

 

 ──────

 

 

 

 投票の集計が終わり、投票試験の結果発表が行われる。

 Bクラスは誰もが冷静にその時を待っている。

 選挙ゲームによってクラスの意思が反映されたうえでの試験結果。正しく反映されているかどうかを確認するために、皆が黙って結果を待っていた。

 それは龍園くんも変わりなく、後悔の映らない眼差しで坂上先生を見ていた。

 試験の結末を告げるチャイムとともに、坂上先生が教室へと入ってくる。

 その無表情からどんな感情を抱いているかはクラスメイトには分からない。努めて冷静に、試験の結果を口にしようとしていることは僕しか分からない。

 

「これより、追加特別試験の結果を発表します。まずは賞賛票を一番多く集めた者からです。Bクラスからは57票で────カムクライズルくんが選ばれています」

 

 57票による1位。

 これはクラスメイト全員に加えて他クラスからの賞賛票が入っていなければ納得ができない数値だ。

 票の詳細は自クラスからの批判票31票、賞賛票8票。BとDクラスからの賞賛票が80票。-31+8+80=57票だ。

 一目で分かる圧勝、当然の結果だった。

 批判票の数値も予定と変わりなく、クラスの意思が反映したと見ていい。

 

「では続いて、最もクラスから批判票を集めたものを発表する。ここで名前を呼ばれた者は退学です。この後荷物を纏め、私と一緒に職員室へと来ていただきます」

 

 眼鏡を自分の納得のいく位置に戻した後、坂上先生はクラスを見渡す。

 どよめきやざわつきはない。クラスの意思は選挙ゲームで既に分かっている。問題は、それが反映されているかどうかだ。

 

「最下位は、批判票35票を集めた生徒────真鍋志保」

 

 その結果に、静寂は続く。

 全ての票は選挙ゲームによって管理されていた。

 アプリによって反映された最終批判票は僕が31票、龍園くんが39票、西野さんが15票、真鍋さんが35票だ。

 しかし、僕と龍園くんは他クラスからの賞賛票を受け取っている。

 これによって退学者の候補から外れ、批判票は真鍋さんに最も集まった。

 

「……はい」

 

 真鍋さんは穏やかとまではいかないが、全てを悟ったように薄い笑みを浮かべながら、涙を瞳に溜めていた。

 

「……では真鍋さん、これから職員室に来ていただきます。荷物は後程纏めましょう」

「分かりました」

 

 眼鏡をもう一度整えた後、坂上先生は告げる。

 窓から入る光による反射で眼鏡の奥に潜む瞳の感情は読み取れない。だが、淡々と試験を進めていく姿が非情に感じ取れる先生でも、その言葉に軽さは感じられない。

 かく言う真鍋さんは全てを受け入れたように、坂上先生との会話に応じる。

 同情の視線はある。しかし、彼女はそれらに見向きもしないで席を立つ。

 泣き喘ぐ声も絶望した悲鳴もなし。抗った上で結末を飲み込んだ真鍋さんからは泣き顔ながらも今までよりも確固たる意志を感じ取れた。

 全ての結果は伝えられた。

 予定通りの数値で、誰も逆らわずに選挙ゲームの結果通りに投票した。

 裏切り者はなし。龍園くんの脅しと僕がリーダーになることは十二分に効果を発揮したようです。

 

「それでは投票試験を終了する。後ほど、1階にある掲示板に今回の投票試験におけるクラス結果が掲載されています。興味があるならば、確認してください」

 

 坂上先生は試験の終了を宣言した後、真鍋さんとともに教室を後にする。

 全て予想通りに運んだ試験だったが、それでもその過程に未知が見えた試験でもあった。

 今回の投票試験によって、Bクラスのリーダーは僕になった。

 龍園くんという暴君からの変更はクラス内外によって大きな影響を及ぼすに違いない。

 

 それはそれとしてだ。

 

 僕は試験が終了したことによって、今回の特別試験で出た退学者の最後を見届けるために移動する。

 これから日向創に接触できるかどうか。

 少なくとも、以前この世界に干渉する杖を作ったよりかは、接触できる可能性は確実に高い。 

 

 僕は諜報員の才能を使用して、自身の目的を果たすために行動を開始した。

 

 

 

 ──────

 

 

 

 投票試験が終わり、職員室へ向かった坂上先生と真鍋さんを僕は尾行した。

 諜報員の才能を使用しながら職員室へ侵入。退学通告と今日の15時に退学者がバスでこの学校を去ることを知る。

 これによって、日向創が介入してくるのは15時と推測する。

 日向創が自由自在にこの世界に干渉できるのならば、僕がこの世界に存在している理由も説明している上に、船上試験であんな軽い接触は行わない。

 この世界に超高校級の絶望が干渉している可能性を推測した以上、日向創がそちらの対応に集中していた、かつ干渉を頻繁に行わないと見たからこそ、接触する可能性が最も高い一点に絞った。

 

 あっという間に、現在の時刻は15時。

 

 諜報員の才能を使用しながらバス停付近にて潜伏していると、キャリーバッグを持った真鍋さんと山内くんの二人が到着する。

 他クラスの退学者は掲示板に既に表示されており、伊吹さんからその報告を受け取っている。

 AクラスとCクラスは退学者なし。Bクラスからは真鍋さん、Dクラスからは山内くんの退学が確定した。

 Aクラスの戸塚くんがいないことから、坂柳さんは誰も退学者を出さないことを選択したらしい。

 予想外の結果。オモシロイ、現実的に物事を進める彼女らしくない選択だ。

 

「……あんた、Dクラス?」

「……Dクラスだよ。お前は?」

「Bクラス」

 

 どちらも暗い表情だ。

 真鍋さんはクラス内ではなんともないように振る舞っていたが、一人になれば退学したくなかったという本心が表れている。

 山内くんは今にも涙を流しそうな辛さを押し殺した表情だ。目元には泣いた跡があり、既に悲しみのピークが越えていたからこそ今は感情の機微が少ないと分析した。

 

「……なぁ、お前はどうして退学したんだ?」

 

 山内くんが沈黙に飽きたのか、真鍋さんに問いかける。

 2人を案内した教員は既に職員室へ戻り、2人だけの空間になっていた。

 

「実力が足りなかった、からかな」

「後悔してねぇの?」

「そりゃ、してるよ。下手を踏まなければ、私は退学してなかったと今でも思うし」

「……俺は後悔だらけだよ」

「それをあたしに言った所で……いや、あんたはどうして退学したの?」

 

 真鍋さんは冷たい態度を見せながらも、山内くんとの話を続けていく。

 

「……俺は、クラスを裏切る行為をしちまった。一時の感情に流されて、友達を裏切っちまった」

「そう。最低ね」

「ああ。本当に、後悔しかねぇよ」

 

 互いに自分の今までの行いを振り返りながら、何が間違っていたのかを話し合っている。

 同じ境遇で、これからこの学校を去るからこそ、嘘偽りなく今の心情を語っていた。

 

「これから、どうすりゃいいんだよ」

「他校への編入試験の話は聞いたでしょ? まずはそこを受かることから考えなきゃじゃない?」

「そりゃそうだけどよぉ……」

 

 2人の会話から察するに、学校は退学者のアフターケアを怠っていなかった。

 おそらく、退学した者たちに適した学校を複数用意しており、それぞれの学力に適した学校に編入させる手筈なのだろう。

 しかし、この世界は新世界プログラムの世界。

 かつて、新世界プログラムでは世界から抜け出す選択肢として“卒業”か“留年”を選ぶことを強いた。

 それと同じように、今回もどちらかの選択肢を選ばせる可能性はあるが、この学校において“留年”がないことは確認済み。

 となれば、“卒業”と“退学”の選択肢が今回の世界から抜け出す選択肢として大いにあり得る。

 

 さて、どうなるでしょうか。

 

 現状、周辺に異変はない。

 真鍋さんと山内くんは互いに退学した理由を話して傷のなめ合いをしている。

 2人に介入するとしたらここ。

 しかし、そのまま異変を分析すること数分、何も起きることなくバスが到着する。

 2人はそのバスに乗ろうとするので、僕も最後尾である山内くんの後を続く。

 誰に気付かれることなく侵入成功。無賃乗車であることはこの際無視する。位置情報が反映される携帯などの学校から支給されたものは全て寮においてきた。

 以前作ったこの世界に干渉する杖を改良して利用したので、僕が監視カメラやセンサーに反応してしまうようなへまはしていない。

 このまま気配を殺して日向創の干渉を待つ。最終停留所まで干渉がなければ、同様に戻らなければならないが、それは才能を利用すれば問題ない。

 

『次は○○前、○○前~』 

 

 次の停留所を示すアナウンスから分かった地域は高度育成高等学校周辺の地域。

 これもまた異変ではない。

 推測が間違っていた可能性もある。このまま待っても無駄かもしれない。

 何も起きない現状とあまりに変わらない事態からそう考える。

 自分の推測が間違っていた可能性を考慮するのは、今回が例外だからだ。

 相手は僕と同じ才能を持った人間。であるならば、僕を出し抜く可能性はありえる。

 

 仕方ありません。とりあえずはこのまま、

 

 

 

 

 

「待たせたな」

 

 

 

 

 

 

 正面から声がした。

 僕が他者の気配に気付けないことは、今までもこれからもあり得ない。

 あるとしたらそれは、僕と同じ才能を持つ人間の登場でしかない。

 そして、運転席の真横に立つ少年はその例外に当てはまる。

 

 まじまじとその姿を確認すれば、幾ばくか懐かしい気分が押し寄せてくる。

 

 白くなった特徴的なアンテナヘアー、艶のいい赤色の瞳、金のオーラ。

 予備学科入学前に通っていた高校の制服を身にまとった彼────日向創が堂々と僕を見ていた。

 

 

 




次回からはinterlude10です。
二話構成。この世界の正体に入っていきます。本当はchapter0にしたかったけど、まぁそれはまた先の話で。

日向創⇒スーパーダンガンロンパ2の主人公。髪が白く、目が赤くなって超サ〇ヤ人みたいなオーラを纏ってるけど、本来は違うよ。希望ヶ峰学園の元予備学科生で、才能はなし。じゃあカムクラとはどんな関係なんだよって訳だけど、それはダンガンロンパの根幹のネタバレなので、是非ゲームをプレイしてみてください。
本作では人の夢に出張したり、用務員の姿で現れたり、変な空間にいたりと大忙し。これもかれも江ノ島盾子という女のせい。
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