ようこそ才能至上主義の教室へ   作:ディメラ

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Chapter7
ポイント


 

 

 

 季節の移り変わりは早く、マフラーや手袋、長い靴下などの防寒具を身に着ける生徒が目に見えるほど増えてきた。

 登校中に感じた肌寒さと窓から見える今にも一降り来そうな曇り空、そしてフル稼働になっている教室内の暖房。

 これらは本格的な寒波の到来を物語っている。

 この時期になれば、一降り来るのは雪。空に広がる乱層雲を窓越しに観察しながら、僕は放課後の天気を予想する。

 HRが始まるまでの時間潰しには丁度良く、帰宅するまで天気は荒れないという結論を導けば、坂上先生が教室に入ってくる。

 

「HRを始めます。今日は伝えることがあるため少々長くなることを先に言っておきます」

 

 放課後の時間を楽しみにしていた生徒たちは露骨に嫌な顔をする。

 部活、遊び、何にしろ自由の制限は誰もが拒絶反応を起こすものだ。

 

「先程、前回の特別試験の集計が終わりました」

 

 報告の切り出しだけで生徒の顔色が変わる。

 待望の瞬間に笑う者、目を逸らしたかった事実を突き付けられて苦い顔をする者。

 二種に分けられた変化だが、へらへらと緊張感のない間抜け面を晒す者はいない。

 

「前回の特別試験、通称ペーパーシャッフルはAクラスとBクラス、CクラスとDクラスが直接対決をしました。

 試験結果は合計得点が高いクラスに100cp(クラスポイント)を移動するという形式です」

 

 負けたクラスが勝ったクラスに100cpなので、実質的なcpの移動は200cp。馬鹿にならない数字が移動することになる。

 

「勿体ぶらずに結果を言わせてもらいましょう。

 今回のペーパーシャッフル、CクラスはDクラスに────合計得点で勝利しました」

 

 坂上先生の通達によってクラスメイトの表情がだんだんと明るいものへと変わっていく。

 試験の勝利、それはクラスポイントの上昇。上のクラスとの差が縮まった。

 Cクラスは龍園くんが支給されたpp(プライベートポイント)を徴収するという税金制度を行っているため、一月のお小遣いが増える喜びは実感できないが、それでもAクラスに近付いたという目に見えた結果に満足していた。

 

「ちなみにAクラスとBクラスの勝負は、Bクラスが僅差で勝利しています。

 そのため今回の特別試験によるクラス入れ替えは起こりません」

 

 坂上先生はホワイトボードに今回の特別試験におけるcpの推移を分かりやすく書き出していく。

 

 

 Aクラス 1468cp→1368cp(Bクラスに敗北したため−100cp)

 Bクラス  845cp→ 945cp(Aクラスに勝利したため+100cp)

 Cクラス  530cp→ 630cp(Dクラスに勝利したため+100cp)

 Dクラス  185cp→ 85cp(Cクラスに敗北したため−100cp)

 

 

 これまでの各クラスのcpはAクラスが独走状態であったが、今回の結果によって多少は差が縮まった。

 とは言っても、依然としてAクラスの壁は高い。

 CクラスがAクラスとして卒業するためには今より倍以上のcpが必要だった。

 

「さて、もう一つの報告に移りましょう。今回の赤点獲得者についてです」

 

 板書を確認し終えた坂上先生が低い声でそう告げる。

 その態度に何人かの生徒は手を合わせて懇願を始めたり、固唾を飲み始めた。

 ペーパーシャッフルでは、通常の試験とは違い、赤点を取ってはいけない条件が二つ存在する。

 一つは1科目につきペアの合計点が60点未満の時。もう一つはペアの総合点が学校側で用意されるボーダーを下回った時。

 今年度のボーダーは692点と例年より低いようだが、出題されている問題の難易度によっては高い壁にも低い壁にもなり得る。

 そして出題される問題は生徒たちが作る。その出来次第では退学者が出る可能性は大いにあった。

 坂上先生は少し溜めた後、結果を言い渡す。

 

「今回のペーパーシャッフル────どのクラスにも退学者が現れませんでした」

 

 発言が終わると、クラスメイトから安堵の声が零れ落ちる。

 石崎くんに至っては今にもスタンディングオベーションでもしそうな勢いで喜んでいた。

 

「実に優秀です。この段階で退学者を出していないのは、今学年が例年よりレベルが高い証明ですね」

 

 坂上先生は率直に称賛するが、発言の裏を返せば、例年ではこの段階で退学者が出ていたということ。

 4月から始まり、とうとう12月になるが、上級生あるいは卒業生たちは一蓮托生のクラスメイトを見送るという経験をしていたようですね。

 間抜けと言えばそれでおしまいだが、仲の良かったクラスメイトとの突然の別れには悲しむ生徒もいただろう。

 果たしてこのクラスでも同じことが起きるでしょうか。

 

「以上で今日のHRを終えます。何か質問のある人はいますか?」

 

 一応の確認をするが、質問はなし。

 坂上先生が教壇から立ち去ると、クラスは放課後の騒がしさに変わっていく。

 特別試験という重荷から解放された生徒たちはそれぞれのグループで放課後の予定を話し合っていた。

 中には多少ポイントを奮発しようと考えているグループもある。

 

「カムクラさん~、俺やりましたよ!!」

 

 身支度を整え終え、席を立った僕に寄り添ってくる石崎くん。彼もまた心の不安が取り除かれて気持ちが楽になっている。

 

「そうですね。あなたの努力の結果です」

 

 一定以上の距離感は保ってほしいので飼い犬のように迫る石崎くんを適当にいなす。

 

「ポイントも増えて成績もアップ! これからも龍園さんとカムクラさんがこのクラスを引っ張っていけばAクラスも夢じゃないっすね!」

 

 楽しそうに話した後、携帯を見る石崎くん。少し覗いてみれば、手持ちのppを確認していた。

 彼もまた今日の放課後に遊びにでも行くのだろう。ちなみに、彼の残りppは3万と少しでした。

 

「来月から630cpになるから……配布されるppは3万3000。今月より1万多いってだけで結構自由にできるぜ」

 

 頭の中で算盤を弾いている石崎くんはそう独り言を零す。

 Cクラスは龍園くんからの3万ポイント徴収が月にあるため、支給されたppをすべて使えるわけではない。

 そのことに不満を持つ生徒もいるが、この学校の特別試験が特殊だったことを考えれば割り切って龍園くんにポイントを渡している。

 

「あんた、何でそれしかポイント残ってないのよ」

 

 帰りの支度を終えた伊吹さんが石崎くんのポイント残高を見てぶっきらぼうに問う。

 

「何でって……色々だよ。食費とか遊んだりしたらこんなもんだろ。そういうお前は俺より多いっていうのかよ?」

 

「当然な。あんたと違って私はそれなりに節約してんのよ。それに体育祭で得たppももらってるからね」

 

 体育祭で得たポイントとは、個人競技で上位に入賞した時に得られた賞与のこと。

 賞与は筆記試験での点数とppのどちらかを選択することができ、伊吹さんはppを、石崎くんは筆記試験での点数に変えている。

 この学校に入学してから8か月経過した。

 このように、様々な用途や報酬があるので、人によって持ちポイントの変化がある。

 

「あなた、『冬映画が始まるからポイント結構使うな~』とか言ってませんでしたか?」

 

 僕は日々の雑談を思い出しながら告げる。ついでに超高校級の歌手、演劇家などの声に関係する才能を併用して声帯を模写してみる。

 

「ほ、本当にキモっ!? その顔から私の声を出すな!!」

 

 予想通りの反応でツマラナイ。

 もう少し良いリアクションを取れないのでしょうか。

 

「すっ、すげぇ! カムクラさん、他の声も出せますか!?」

 

 こちらもこちらで反応がツマラナイ。とりあえず頷けばさらに喜ぶ。

 

「それで、どれくらい残っているのですか?」

 

 興奮する石崎くんを適当にあしらい、僕は話を戻して伊吹さんの残高を確認する。

 

「……大体10万くらい」

 

 大体のところの声量が小さかったので、四捨五入は切り上げを選択している。

 おそらく7〜8万と言ったところでしょう。

 しかし、生活費や食費を抑えながらその程度残しているのならば十分と言える。

 

「そういうあんたは何ポイント持っているのよ?」

 

 自分が答えたのだから聞くのは当然の権利。

 そう言いたげな得意顔の伊吹さんはやはり子供っぽい性格だ。

 

「さぁ、いくらでしょうね」

 

「ええ~、教えてくださいよカムクラさん!」

 

 残念がる石崎くん。

 特別試験で良い成績だった僕がどれくらいポイントを持っているのか気になるらしい。

 仕方ないので伊吹さんに携帯を手渡す。

 

「パスワードは?」

 

「してません」

 

「……はっ? 本当に言ってんの?」

 

 怪しみながら携帯を操作する伊吹さんだが、すんなりと開く携帯に驚きを隠せていなかった。

 これには石崎くんも同様の反応だ。

 そして、

 

「……嘘でしょ」

 

「す、すげっぇ!」

 

 僕の所持ポイントを見て引き気味の伊吹さんと興奮気味の石崎くん。

 個性分かれる反応だが、予想通りだ。

 

「どうしてこんなに持っているの? まさか、龍園から賄賂貰ってないよね?」

 

「貰っていません」

 

 視線が強まる。

 大きな声で賄賂と言ったので、教室に残っている生徒は僕たちの会話に興味を示す。

 疑われるのも面倒なので僕は二人に、そして聞き耳を立てるクラスメイトに聞こえるように詳細を話していく。

 ただし、説明は体育祭以降のことだけだ。

 

「まず大前提として、僕は船上試験で一度ppをすべて失っています。

 その後、とある生徒から50万ppを貰ったということを頭に入れてください」

 

「……え? ちょっと待って、あんた何言ってんの?」

 

 僕は有無を言わせずそのまま説明を続けていった。

 毎月貰えるポイントは9月、10月時は580cpだったので、徴収を差し引いて2万8000。

 11月、12月時は530cpだったので、徴収を差し引いて2万3000。

 合計10万2000ppが学校側からのお小遣いだ。

 そして体育祭の個人種目報酬は全てppを選択した。

 100m走、ハードル競走、障害物競走、200m走、借り物競走、そして二人三脚。

 1位になった時の報酬は5000pp。合計6つの競技で1位を取ったので3万ppを取得している。

 加えて、最優秀選手報酬で10万pp、学年別最優秀選手報酬で1万ppを得ているので、合計14万ppが加算されている。

 よって、全てのポイントを失ってから得られた利益は24万2000pp。

 不当利得も合わせれば74万2000ppとなる。

 そしてここから様々な出費があるので、

 

「────70万pp、これが僕の現在の手持ちです」

 

 僕は食費代を無料品コーナーから浮かしていることと他人に作る時は払わせていることから毎月3000すらかからない。

 それでも生活している以上他の出費が存在するのでこの結果。

 そして今回のペーパーシャッフルでは龍園くんから30万ppを貰えるので、とうとう100万ppに届く。

 これは教師役としての報酬です。

 固定報酬20万pp、試験に無事勝利したので10万ppの好待遇報酬。

 これを言われた時は、彼のことを少々訝しんだものです。

 

「おい、カムクラ」

 

 僕が彼らに説明を終えると、1人の生徒が近づいてくる。

 鋭い眼つきとアップバングヘアが特徴的な男子生徒。

 彼の名前は時任裕也。

 このクラスで一定数いる龍園くんのやり方に反感を持つ生徒の1人です。

 

「何だ、時任。カムクラさんに何の用だよ」

 

 ボディーガードのように一歩前に出る石崎くん。

 目付きと表情も相まって、時任くんから只ならぬ雰囲気を感じ取ったための行動だろう。

 

「どけ石崎、お前に用はないんだよ」

 

「あっ? 何の用かって聞いてんだよ」

 

 威嚇するように低い声で牽制する時任くんと応じる石崎くん。

 一触即発の雰囲気にクラスが静まり返る。

 リーダーである龍園くんはまだ自席に座っている。

 この雰囲気に気づいたようだが、未だ携帯片手に傍観していた。

 

「石崎くん」

 

 抑揚の少ない僕の声。それを意図的に低くして名前を呼ぶ。

 石崎くんはビクリと肩を揺らし、振り返ったその表情が分かりやすく歪む。

 

「あなたの行動を否定する気はありません。しかし、わざわざ余計な火種を作るのは控えてください」

 

 石崎くんは僕と龍園くんを尊敬している。

 だから舎弟のような立ち回りをする。

 この行動も彼なりの本心による行動、善意によるものだ。

 習性のようなものだから断りづらい。

 が、今回は僕自身が対応する必要があるので下がらせる。

 

「……は、はい。すいませんでした」

 

 謝罪の後、石崎くんは一歩下がる。

 これで時任君と対面しながら会話できます。

 

「それで、今の会話について質問があるのですか?」

 

「……ああ、そうだ」

 

 時任くんは警戒しながら肯定する。

 彼とは体育祭でアドバイスをした時くらいでしか話したことはない。

 なぜ龍園くんに反感を持つのか、この機に探ってみましょうか。

 

「大方、どうやって50万ppを手に入れたのか。その詳細を聞きたいのでしょう?」

 

「その通りだ。もしそのポイントが龍園から貰ったポイントだったら、あの野郎は本当に賄賂を渡したことになる。

 クラスから徴収したポイントは私的に使わないと約束したポイントなのにな」

 

 明らかに龍園くんを嫌った口調。

 その態度に石崎くんの表情が強張るが、ここは我慢してもらおう。

 不十分な説明をしたのは僕。

 堀北学の名前を出すわけにはいかないので軽く説明しただけ。

 彼の疑問は何もおかしくない。

 

「安心してください。このポイントは上級生から頂いたものなので、賄賂ではありませんよ」

 

「上級生からもらったポイントだと? 誰から貰った? 賄賂じゃないって証拠にはならないぞ」

 

「誰とは言えませんね。そういう約束ですから。

 証拠が欲しいなら龍園くんから徴収したポイントをどう使っているのか聞けばいいじゃないですか。

 本当に賄賂ならば差額が生まれているはずですよ」

 

 堀北学の名前を出すのは少々面倒なので、適当に誤魔化す。

 傍目で見ていた龍園くんにアイコンタクトを飛ばす。

 が、かの暴君はにやにやと笑うだけで動く気配がない。

 僕が時任くんにどう対応するのか、それを見たいのだろう。

 

「確かにそうだな。だが、俺はあの野郎が本当の事を言うとは思っていない。

 信用できないんだよ。だから、まだ信用できそうなお前が賄賂じゃないと示してくれ」

 

 どうやら、彼は僕の持つポイントに強い疑いを持っている。

 彼の頭の中では断定していてもおかしくない程、語気が強い。

 だから僕が嘘をついていると仮定して話を進め、このように問い詰めてくる。

 

「その方法が上級生の名前を教えるですか。証拠としては弱いと思います。龍園くんの所有ポイントを見せてもらえばもっと簡単に事が済みますよ」

 

「その後その上級生に確認を取るんだよ。手間こそかかるが、龍園の介入がないっていう条件ではもっとも確実だ」

 

「非効率極まりない。途方もない阿呆ですね」

 

 確認を取る相手が誰であろうと、龍園くんよりかは信用できる。

 彼の中で龍園くんへの信用度は最底辺に位置していた。

 

「先程も言いましたが、他言しないと約束をしているんですよ。

 約束を破るわけにはいかないので、他の証明方法はありませんか?」

 

「……なら、貰った経緯を話せ。その話を聞いてから納得するかどうか決める」

 

 僕相手に傲慢に言い切る時任くん。

 その態度に伊吹さんが腹を立てて、会話に参加する。

 

「はっ? あんた何様なわけ?」

 

「Cクラスの一生徒だ。不正をしている可能性がある人間を見つけたから問い詰めている。

 お前だってこのポイントの入手経路が気になるだろう?」

 

「そりゃ気になる。けど、カムクラは不正していないって言ってるだろ」

 

「はっ、何でその言葉を鵜呑みにする。こいつは龍園の右腕だぞ。

 それに、色々と行動に問題があるやつだ。

 前回の特別試験だって、クラスで交流が深いわけでもない生徒の面倒を見るために、裏で徴収したポイントの取引を行っていてもおかしくはない」

 

 時任くんの言い分を終えると、周囲からの視線は厳しくなった。

 一理ある。

 僕の才能をクラスメイトが認めていても、僕が龍園くんに協力した理由としては中々に筋が通る。

 

「くっだらな。結局、憶測じゃん」

 

「可能性がある以上、疑うのは必要だ。

 お前のようにカムクラと仲が良いわけじゃない。簡単には信じられない」

 

 その言葉に伊吹さんは舌打ちする。

 ヒートアップしそうな彼女を宥める意味も含め、僕はそれ以上の会話をさせないように話を戻す。

 

「とある約束をしてその対価としてポイントを頂いた、これで満足ですか?」

 

「その約束は?」

 

「プライベートなことなので言えませんね」

 

「なら賄賂の可能性は拭えないな」

 

 ほくそ笑む時任くん。

 まるで疑惑を掛けることが成功したように見えるが、彼の目的は龍園くんが賄賂をしているかどうか。

 にもかかわらず、この表情を浮かべる理由は会話を優位に運べていることから生じた愉悦感によるもの。

 龍園くんのことが嫌いで、その右腕の立ち位置にいる僕に有利な状況を作れたことが嬉しいのだろう。

 ツマラナイ。

 だが、このクラスで龍園くんに歯向かう意志を持つ人間は珍しい。

 簡単に見切るのは少々勿体ないので、ここは様子見です。意志を折る必要はない。

 

「可能性が拭えないと何か問題がありますか?」

 

「……何?」

 

 鋭い眼つきをさらに尖らせる時任くん。

 僕が賄賂を貰ったという噂がクラスに広まれば、確かに日々疑いの目で見られるだろう。

 時任くんはそのような視線で見られたくなければ弁明しろとでも言いたかった。

 だが、僕はそんな視線どうでもいい。

 

「人の噂も七十五日と言うでしょう? 僕は嘘をついていません。

 なら、あなたが頑張って募らせようとした不信感も消えるまで待てばいい」

 

 僕の主張は一貫している。

 七十五日と言わずとも、すぐに消える。

 

「……はっ、そうかよ」

 

 時任くんは鼻で笑って話を切る。

 このまま会話を続けても平行をなぞり続けることを悟ったらしい。

 彼はスクールバッグを持ち直し、教室から立ち去った。

 

「ちょっ、良かったんですか!? あれじゃ、カムクラさんのメンツが立ちませんよ」

 

 石崎くんが焦った口調でそう告げる。

 Cクラスのリーダー格が一生徒の反論に何も言い返さずに静観すると言い放った。

 確かに暴力をちらつかせる龍園くんのやり方と比べればぬるい対応だ。

 カムクラなら多少反論しても痛い目を見ないという理由から軽んじた態度の接触が増えるかもしれない。

 

「反乱分子を見つけて放置とはお優しいこったな」

 

 事の顛末を眺めていた龍園くんが会話に参加する。

 その後ろにはアルベルトの姿も見える。

 

「クク、お前は反乱分子の動きも掌で転がそうとしているのか?」

 

「さぁ、あなたが言っていることを僕は理解できませんね」

 

 ただ見逃したようにも見えれば泳がしたようにも見える。

 疑い深い者は後者が正しいと判断している。

 

「お前が理解できないだと? はっ、つまらない冗談だ」

 

 龍園くんは鼻で笑った後、クラスを見回す。

 

「念のため言っておくが、俺はこいつにポイントを渡していない。

 疑う奴がいるなら直接俺に聞け。手持ちポイントを見せてやる」

 

 残っているクラスメイト全員に聞こえる声量で宣言する龍園くん。

 それで聞きにいける度胸がある人間がどれほどいるのでしょうか。

 

「落とし前ですか」

 

「俺には俺のやり方があるんでな。舐めた態度を取られるのはいちいちブチ殺す手間が増える」

 

 この会話がクラスメイトの耳に入ることも計算済みなのだろう。

 絶対王政化の進行を根強くしたいらしい。

 

「さて、下らない寸劇も終わった。本題に入ろうか」

 

「本題? 何か用でもあるのですか」

 

「今日の夜、話がある。場所はお前の部屋だ。俺の分の飯を作って待ってろ」

 

 とんでもない暴論をかまして来る龍園くん。

 この僕を召使い扱いしてくるとは、良い度胸です。

 

「あっ、ずるいっすよ龍園さん! カムクラさんの飯にありつくなんて! 俺も行きたいっす!」

 

「そうよ龍園。あんただけはずるい」

 

「うるせぇ馬鹿共。飯はついでだ。話があるっつったろ」

 

 そこからぎゃあぎゃあと仲良さげに3人は喚き散らかし始める。

 しかし、部下2人を適当にあしらう龍園くんの雰囲気には気だるさだけでなく、真剣さが読み取れる。

 

「どうやら、タダ飯をたかりに来た訳では無いようですね」

 

「そういう事だ。重要な話をする以上、誰かに見られる訳には行かないからな」

 

 龍園くんは落ち着き払ってそう言う。

 人前で話せない上に僕と龍園くんだけで行われる話し合い。

 いつものカラオケに行かない理由は今日が特別試験終了日で、人気レジャー施設であるカラオケは人が大量に集まると判断したためだろう。

 

「良いでしょう。ただし、材料費は後で請求するのでお忘れなく」

 

「クク、豪勢な物を頼むぜ」

 

 僕は首を縦に振り、早速スーパーへと向かうために帰り支度を素早く終わらせる。

 その際、部下2人の視線が僕に刺さっていたが、無視を決め込む。

 僕はそのまま彼らに別れを告げ、帰路に就いた。

 

 

 

 

 




矛盾あったら修正します。
よう実0巻の情報次第で丸ごと修正の可能性もあるのでご了承ください。
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