少年の誓い~魔法少女リリカルなのはO's~   作:さっき~

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(申し訳無い)
《Do you think that I permit(それで私が許すとでも)?》

――学生の最大の特権の一つ、夏休み。
――何故か俺は、その一日目で自室にて土下座を敢行していた。
――無論、心の中でだが……。

(いや本当、マジでスミマセンでした)
《Do you reflect firmly(しっかり反省してますか)?》

――まるで母親が子を叱るが如く、突きつけるように疑いを向ける女声。
――そこには、怒りと悲しみが綯い交ぜになった音色が包まれていた。

――事の発端は、昨日の出来事。
――管理局に再検査に向かったあの日、ほんの少しの興味で局内を巡った自分。
――そこで目の当たりにした偏見に満ちた認識、己が意志のままにそれに対抗した自分。
――無謀だと分かっていた筈なのに、それでも尚、俺は前へ進む事を選んだ。
――そして勝利と共に頂いた、背中に残る微かな痛み。
――それが彼女、アポクリファの説教の理由。
――俺はその目に見えぬ存在の声を、床に胡坐を掻きながら聴いていた。

(もう二度としません、ってのは無理だけど……)
《It might be so. Otherwise, you had to have stopped neatly at that time.(でしょうね。そうでなければ、あの時きちんと止まっていた筈です)》
(でもな……俺にだって引けないモンはあるんだ)
《Getting and it are understood.(えぇ、それも分かっていますよ)》
(だったら……!!)

――何でそんな事を言うんだ!?
――俺の中に在るお前ならば、俺の想いを知って欲しい。
――膝に置かれた手はギュッと握り締めて、歯を知らぬ間に食い縛る。
――それは自分を理解して欲しいという、唯の我が儘から生まれた行為。
――身近に居る者だからこそ、伝わらない時の悔しさがこうして表れてしまう。

《Still, I worry about you.(それでも私は、貴方が心配なのです)》

――でも子供染みた俺の憤りは、その音には劣っていた。
――彼女の想いは純真で、何物にも換えられない言葉。
――それを言われてしまえば、俺は反論出来ない。
――心に縋り付くような声は、本当に機械が生みだしたものなのか不思議に感じてしまう。

《I am such painful because of you.(貴方だからこそ、私はこんなにも辛い)》
(……)

――俺の為に、身を削るような、心を削るような、そんな不安を抱えている。
――心の底からこの身を案じて、曖昧なモノをその体に宿していた。
――そこに機械だからとか、人工知能だからとか、そんな考えは微塵も無い。
――それを感じる事の出来るコイツは、誰が言おうとも唯の機械ではなく……

(…………ありがとな)

――きっと俺は、こう言うだろう。

《Thank you.(どう致しまして)》

――お前は、大切な『友達』だ。



――それは、少年の心。
――『人』と『人ならざるモノ』を繋ぐ、世界に一つだけの想い。







№ⅩⅩⅦ「知識の泉」

 

 

 

 

 

「全身の傷は完治。アポクリファの魔法で治癒能力を上げていたにしても、聖君の体はかなり優秀みたいね」

「はぁ……そうなんですか?」

 

 涼しく静かな清風が頬を撫でる。

 季節を無視したそれを送り、清浄な空気をもたらす機器の駆動音が耳朶を打つ。

 茹だるような熱さとは無縁な世界で、俺は……目の前で空間モニターを読み上げる白衣の女性に対し、何だかよく分からない声を上げた。

 

「あまり実感は沸かないんですが……」

 

 珍しく褒められた事はありがたく、そして恥ずかしいのだが、理解出来ない事柄故に曖昧な返事になってしまう。

 『優秀』なんて言われても、そういった部分は自分じゃ分からない。

 結局は他人からの目や、常識という秤があってそれ等は比較される訳で……。

 つまり比較対象が無ければ、そんな言葉は確固たる意味を成さない。

 右から入る声を左に受け流しながら、俺は目の前で忙しなく視線を動かしている女性を見詰めていた。

 

「色々と痕は残っているようだけど、それも時間が経てば自然と消えるわ」

 

 清潔に整えられた室内に薬品の匂いが香り、シンとした静寂が包み込む空間。

 俺自身、あまり良い想い出の無い場所。

 不本意ながら、最近めっきり縁の深いモノとなった『医務室』、それが此処だった。

 つまり今日は本局での2度目の再検査で、それに対応しているのがシャマルさんなのである。

 

「はい、それじゃこれでお終い。何度もこっちに来て貰ってゴメンなさい」

「いえ……。此方こそ、わざわざ対応して下さってありがとうございます」

 

 前回で終わると思っていた再検査、それが彼女の言葉で漸く終わりを告げた。

 俺の意志に関わらず、再三再四……は流石に言い過ぎだが、幾度に渡っての強制招集。

 しかしそれも、漸く今回で終わりを迎えた。

 

「折角の夏休みの時間なのに……」

「別に一日二日の時間なら、幾らでも代わりは利きます」

 

 此処に来るまで、色々と時間が掛かったのは事実。

 しかし仕事のついでだと言って、俺を此処まで連れて来てくれたシャマルさんには頭が上がらない。

 この人なんて、長期休暇も関係無いだろうに……。

 学生である俺からすれば、貴女の方が充分時間を大切にするべきだと思う。

 大切な家族が居るなら尚更だ。

 それをそのまま伝えたら、「ありがとう」とやんわり受け流されてしまった。

 ……むぅ、大人の余裕か。

 

「それに、大切な家族が居るのは、聖君も同じでしょ?」

「まぁ……そうですけど」

 

 それを言われては、ぐうの音も出ない。

 夏休みに入り、より一層毎日はしゃいでる弟妹達の事を思う。

 でも、最近はアイツ等に対して心配する事が減った気がする。

 それは放任するという意味なのか、信頼しているという意味なのか……。

 分からないけど、きっと後者であって欲しいと願う。

 そんな午前中の、とある日に……

 俺はこの世界での最後の用事を、この世界との最後の繋がりを、無事に終わらせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

 スライドする扉を背に、俺は溜息と共に医務室を後にした。

 やはりと言うか、こういった堅苦しい場所は俺の肌に合わない。

 双肩に掛かる見えない重みを取り除くように、両腕を回す。

 それだけで体と気持ちが、多少は軽くなった気がした。

 

「聖君!!」

「えっ……って、高町!?」

 

 廊下に響く、聴き慣れた少女の声。

 その発生源は近くにあった休憩スペース。

 以前見た教導隊の制服を着た彼女が、そこで紙コップを片手に佇んでいた。

 

「にゃはは、おはよう聖君」

「あ、あぁ」

 

 背筋をピンと伸ばし、腰にまで届きそうな栗色の髪を揺らしながら、少女が此方に歩み寄る。

 コツ、コツ、とリズム良く床を打ち鳴らす度に、彼女のサイドテールがふわりと宙を舞う。

 未だ見慣れないその制服姿が、見違える程に少女を女性へと変貌させていた。

 彼女特有の笑い方を除けば、の話だが……。

 

「どうして、此処に?」

 

 今日この場に、俺が居る事は教えていない。

 前の検査の時に、次の検査担当をすると志願してくれたシャマルさんとの都合を合わせる為に話したが、それだけだ。

 知っているのは八神家の面々であり、ハラオウンや高町は知らない筈。

 元々忙しい2人でもあるし、此方から連絡を取る事もしていない。

 メールだって彼女の教導を妨害した謝罪を送っただけで、それ以来は何もしていないし……。

 ならば彼女が此処に居る意味、まるで待っていたかのような対応の仕方の理由は?

 

「話したい事があったから、シャマルさんから再検査の日を聴いたんだよ」

 

 なんて事無い、いつもの笑顔で高町が答える。

 身構えるまでもなく、理由(ハコ)(ひら)いてみれば案外普通の解答だった。

 別段気にする程の考えではなく、無粋な勘繰り、下手な邪推だったようだ。

 普通ならその理由が最も浮かび上がってもおかしくない筈が、何を勘違いしたか余計な方向にまで頭を回していたらしい。

 最近、ハラオウン達とまともな会い方をしていないからだろうか、思考が物事に対して正面ではなく、裏から考えようとしている節がある。

 いつからこんな捻くれた考えを持ったんだか、自分に嘲笑を向けざるを得ない。

 

「聖君?」

「んぁ、悪い。……それで、話ってなんだ?」

 

 少女の不思議そうな声に頭を振って、内側に巣食う嘲りを打ち消す。

 自分自身を嘲笑うような行為は、きっと高町は望まないし嫌っている。

 自虐の感情に蓋をして、俺は先程から気になっていた言葉に反応した。

 俺と話したい事、それはどんな内容なのか、何で俺となのか……。

 座って話そうと言う彼女の言葉に同意して、近くの休憩スペースの椅子に腰を下ろし、円形テーブルを挟んで相対する。

 

「何か飲む?」

「大丈夫だ、ありがとな」

 

 立ち上がろうとする高町を手で制して本題へ促す。

 そっか、と呟いて座り直した彼女は、やがて表情を笑顔から真剣へと変えた。

 いつもの少女らしさを抜け落として、若き教導官としての顔を見せていた。

 その変化に、内心少しだけ驚く。

 

「フィーネ、フィオーネ・キルトの事について」

「――えっ!?」

 

 それは突然告げられ、俺の心拍数を跳ね上げた。

 不意打ちとまではいかない、それでもその名前を聴いて胸が騒いだ。

 聞き慣れたモノではなく、言い慣れたモノでもない、1人の少女の名前。

 

 キルト、確かに知っている。

 魔法という才能に見放され、それ故に周囲からの奇異の目に晒され続けていた少女。

 幼い身で現実の重さに耐えていた姿は、あまりにも儚くて消え去ってしまいそうな程だ。

 思い出すだけで駆られる、胸を掻き毟る程の衝動を歯を食い縛って堪える。

 今はそんな時じゃない、高町の話を聴くのが先決だ。

 そう言い聞かせて心に溜まる憤りを、無理矢理腹に収める。

 

「気にならなかった? 資質の無い子が魔法学院の生徒だっていう事に」

「それは……」

 

 確かに、その疑念が無かったと言えば嘘になる。

 あれだけ辛い目に遭っている現状、逃げ出せとは言わないけど、もっと彼女にとって良い場所はあった筈だ。

 それなのに何故、あの子はあの場所に居る事を続けていたのだろう?

 高町の言葉と共に、疑問が次から次へと内側から溢れてくる。

 何故? どうして? そんな言葉が源泉の如く流れ出てきた。

 

「あの子のお父さんはね、管理局の『エディル・キルト』提督なんだよ」

 

 それがキルトの立ち位置を決める要因の一つなのだと、高町は言う。

 提督という他を圧倒する階級、様々な責任を背負いながら部下を指揮する胆力は、正しく豪傑と呼ぶに相応しい人格。

 そして母親も、元武装隊の局員。

 今は仕事から退いて家庭に従事しているらしいが、共にエリート局員であった事は確かな事実だった。

 そんな2人の間に生まれた少女には、否が応にも期待が寄せられていた。

 たとえ彼女自身に、何の力が無かったとしても……。

 

「資質が全く無い訳じゃない。それでも、魔導師を目指すには難しいラインだったのは確かだった」

 

 その事実を目の当たりにしても、両親は諦めなかった。

 今は小さくとも、将来きっと花開くであろうと、彼女の見えない先に想いを馳せていた。

 その想い、押し付けにも似た感情こそが、キルトの人生のレールに大きく影響してしまった。

 

 仕事で忙しくとも、可能な限り家族と共に居ようとした父親。

 娘に寂しい想いをさせない為に、いつも彼女の帰る場所を守っていた母親。

 その両親が大好きだった少女には、自分へ向けられる期待を裏切る事は出来なかったのだ。

 だから魔法学院に入学し、難しい勉強を頑張った。

 辛かったり苦しかった事は少なくなかったが、それでも逃げ出さないように耐えていた。

 自分自身の意志よりも、両親の期待を優先した結果が今だった。

 

「いつしか自分と周囲の違い、格差の中でその意志すら表に出せなくなった」

 

 そんな彼女を支えていたのは、自分を信じてくれている親だけだった。

 ……とても、悲しい事じゃ無いのか?

 自分の心から生まれたモノはなく、両親から薦められた道だけしか見えなかった世界。

 その小さな世界で、彼女は精神をすり減らしながら生きていた。

 正しい事なのか、正しくない事なのか、それすらも考えず歩いてきた。

 それはもう『生きている』のではなく、『生かされている』としか思えない。

 

 だから弱くなってしまった。

 自分を表す術を失って、儚い存在に変わってしまった。

 

「……」

 

 目の前の高町が語る、キルトが今まで歩いてきた道程。

 それは、幼い少女が通るにはあまりにも酷いものだった。

 

 ――――何だよ、それ。

 親が子供を縛り付けるなんて、そんな事が許されるのか?

 自分が進みたいと思う場所すら望めず、親の期待というプレッシャーを一身に受けて、明らかに不利な状況で必死になって頑張っている。

 でもそれは、本当に彼女の為になっているのか?

 若い頃から苦労は買ってでもしろとはよく言うが、これは過剰としか言いようがない。

 苦労をする事による対価は、必ず支払われるべき。

 

 しかしこのままではそれを受け取る前に、彼女自身が潰れてしまう。

 そんな未来しか、アイツには待っていないのか?

 ひなた園の弟妹達と同い年程度の少女が、青空の下で走り回る事も、友達と他愛ない笑い話をする事も許されない状況。

 周りに追いつく事で精一杯、その姿を想像しただけでも言い知れぬ想いが胸を突く。

 

「アイツ、全然笑ってなかったんだ」

 

 初めて顔を合わせた時、申し訳無さそうな表情をしていた。

 苛めの理由を訊いたら、悲しそうな表情になって……。

 最後には、全てを諦めたソレに変わっていった。

 子供らしい笑顔なんて一片も見せていない、何から何まで負に蝕まれたような表情。

 どれだけの辛さと痛みを受けてきたのか、その片鱗を見た気がした。

 

「そうだね。教導中も真剣に話を聴いてたけど、凄く必死で全く余裕が無かった」

 

 当然だ、才能に乏しい者が周囲に追いつくのは、並大抵の努力では不可能。

 誰もが出来る平均、それに辿り着く事すら困難なのだから。

 だから必死になる、そして結果が出なくて余裕が無くなるのは自明の理だ。

 花壇を彩る花々の中で自分だけ芽すら出ていない事実は、それだけで不安や焦燥を掻き立てる。

 

 ――その感覚を、俺は知っている。

 彼女が、進めない道を必死に歩こうとしているのならば……。

 俺は、目的地も何も無く、只管に足を動かし続けるだけ。

 言葉にすれば全く違うが、共通するものは確かにある。

 周囲に居る者が自分より優れていて、尚且つ自分が未熟であると否応無く知っているという事。

 

 でも、キルトの方が明らかに辛いのかもしれない。

 俺のように自らの意志ではなく、大好きな両親の願いで動いているだけなのだ。

 意志とは自らの願望の形であり、人の願望を自分の原動力にするのとは違う。

 それでは何も変わらない、何一つ得られない毎日を過ごして自らを追い詰めるだけだ。

 

 だったら、どうすればアイツは変われる?

 例えばそう、少しでも笑顔を見せる事が出来れば……。

 歳相応の少女らしく、ひなた園の皆みたいに、どうすれば心の底から笑える?

 別に破顔一笑しろなんて言わない、小さくてもいいから笑った方が良いに決まってる。

 だと言うのに、1人の少女が笑う事すら出来ない世界、それは果たして良い世界なのか?

 

 その思考が脳内を、沈黙が辺りを包み込む。

 

「……」

 

 お互い、さっきの言葉から何も口に出せないでいる。

 何か言いたい事がある訳じゃない、それでも無言の間が双肩に圧し掛かって息苦しい。

 今の時間、海鳴なら晴天だと言うのに、此処は暗闇のように淀んでいた。

 

 やはり苦手だ、こういった空気は。

 どうにか言葉を発しようと思考を巡らすが、それでも適切なものは何一つ出て来ない。

 もどかしさと煩わしさが頭を埋め尽くして、力の篭もった溜息が漏れる。

 どうするべきか、と切羽詰りながら考えて――

 

「でもね、これからは変わっていけると思うよ」

 

 ――突然、高町が口を開いた。

 先程までの真剣さを帯びた表情は、いつの間にか穏やかな笑みに変わっている。

 それは口にした言葉の意味を裏付ける、確かな存在として俺の瞳に映った。

 

「見ず知らずの人が、自分の間違いに気付かせてくれたんだって」

「それって……」

「うん、聖君だよ」

 

 自分に力を見せ付けてきた少年達、それを傍から見ながら決して関わろうとしない他の生徒。

 そんな諦めるしかなかった状況を、1人の見知らぬ誰かが変えてくれた。

 自分の中に常識として存在した魔法という絶対的な力の象徴、それを何も持たないその人が覆した。

 

「生身で魔法に立ち向かう勇気、そして自分に掛けてくれた言葉の温かさが、あの子に圧し掛かってた重圧を和らげてくれた」

 

 アイレインの魔法が暴走し、彼を守った末に俺が気絶した後の流れは、八神に教えて貰った通りのものだった。

 俺を運ぶ高町に付き添ったキルト、医務室ではシャマルさんに手伝いを申し出たようだ。

 

「手際が良いとは言えなかったけど、無心で聖君を治療する姿は、教導中よりも凄く輝いていた」

 

 それは、彼女が初めて自分から起こした行動。

 両親の期待も何も無い、自分自身の意志で動いたのだ。

 今までの自分を変える第一歩を、彼女は確かに踏み締めていた。

 

「その時思ったの、彼女の居るべき場所は此処じゃないのかもって」

 

 この世界の全ては、魔法によってのみ構築されたものじゃない。

 様々な人が努力によって積み上げて、今と言う形を創っただけの話だ。

 

「聖君も分かると思うけど、医務官は治癒魔法を使えればなれるものじゃないんだよ」

「あぁ、医務室の棚にかなりの薬瓶が並んでた。つまり、そういう事だろ?」

 

 シャマルさん等の魔法を使用する医務官には、治療の前段階として様々な手法を用いるらしい。

 そして治癒魔法は緊急を要する以外、可能な限り使用は控える事を心掛けている。

 それは突然の事態に備える為に魔力を消費しない事と、魔法に頼り切って人体の自然治癒能力が低下する事を危惧した為らしい。

 故に医務官には魔法だけでなく、人体の作りや薬学の知識が必要不可欠なのだ。

 

「シャマルさんのお手伝いをしてた時のフィーネを見て、彼女は前線よりも、後方で支援する方が似合うんじゃないかなって思ったんだ」

「確かにな。アイツが前線で活躍する姿は、全く以って想像出来ない」

 

 今までの事があったにせよ、内気な少女にその様相は違和感を覚える。

 戦場に赴くのではなく、その者達の帰る場所を守る事。

 自分の勝手な判断だが、フィオーネ・キルトにはそういう姿勢が似合っていると思う。

 まぁ、結局はアイツが選ぶんだけどな。

 

「今話したのは全部、授業後に彼女から教えて貰ったの」

 

 医務室のベッドで俺が休んでいる時、彼女は何の問題も無く授業を続行して無事、自分の仕事を終えたらしい。

 俺が引き起こしたトラブルも、教導隊の先輩のお陰で何とかなったようだ。

 その内容自体は彼女からのメールで知っていたが、それでも本人の口から改めて聴かされて漸くホッと一息吐ける。

 輝かしい未来が待っているであろう目の前の少女、その経歴に泥を塗ろうものなら、コイツの親しい人々から死刑宣告を喰らうかもしれない。

 ……冗談だよな、うん。

 

「どうかした?」

「いや、何でもない」

 

 否定し切れない自分の冗談に、薄ら寒いものが背中を這い回る。

 高町に向けたその言葉、彼女に向けた表情にそれは出てしまっているだろうか?

 しかし彼女は「そっか」とだけ返して、それ以上の追求を行いはしなかった。

 気付いていないのか、空気を読んだのか、それは少女のみが知る領域。

 故にそこに足を踏み入れるのは、自分の為にもやってはいけないと警鐘が鳴り響いている。

 

《It is a thing that the lie or the truth or you judge.(嘘か真か、貴方自身が判断する事です)》

(それで、気付いた頃にはもう手遅れとか?)

 

 それは流石に勘弁して欲しい。

 いや、万が一にも無いとは思うけど……。

 

《However, the fact whose your behavior is her trouble is not a tile.(でも貴方の行動が、彼女の障害となっている事実は変わらない)》

 

 そう、アポクリファの言う通りだ。

 俺の行動によってどんな良い結果がもたらされようと、高町がどんなに大丈夫と言おうとも、自分勝手な行動である事に変わりはない。

 迷惑だったのは確かなんだ、彼女の仕事を妨害したのだから。

 高町の優しさに甘えてばかりではいられない、俺は俺で自分の犯した事実を背負わないといけない。

 繰り返さない為にも、目を背けてはいけない。

 守られてばかりは嫌だから……。

 

「ありがとな、教えてくれて」

 

 改めて心に刻む、己が意志が孕む責任の重さ。

 俺の言葉に笑みを以って返す少女を見詰めながら……。

 夏休みのとある日、俺はまた反省を一つ抱える事となった。

 見慣れた彼女の背中は未だ遠く、目の前に佇む闇は振り払う事も出来ず……。

 未熟さは自身の心を深く落として、暗い想いは自然と溜息を漏らした。

 まぁつまりは、落ち込んでるって訳だな。

 

 ――――はぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 埃一つ見えない通路、行き止まりの見えないその先を目指して歩く。

 電灯の明かりは絶える事無く、時間の感覚を脳や人体から削り落としていた。

 この場所には時間の概念は通用しない。

 時空管理局について簡単な説明を受けた時に聞いた、『万年人材不足』というのはそれに由来しているのだろう。

 俺の一歩前を行く少女は、片側に寄った栗色の髪を揺らしながら道を進んでいた。

 

「簡単だけど、これで一周したね」

「そうだな。本当に広いな、此処って」

 

 先程まで居た休憩スペースに戻った俺達は、示し合わせた訳でもなく同じ席に着いた。

 

 ――あの話の後、高町の厚意によって本局内を案内して貰った。

 此処との繋がりが無くなった以上、俺が此処に来る事は無い。

 それを分かっていたから最後の想い出とでも言うのだろうか、彼女からそれを提案してくれた。

 

「どうだった? 時空管理局は……」

 

 両手にコップを手にした彼女は、片方を俺の前に置いて口を開いた。

 ありがとな、と一言の後に彼女の言葉の意味を考える。

 どうだった、か。

 此処を見て回り、色々なものを高町に教えて貰って……。

 

「勉強にはなったと思う」

 

 表面的な部分ではあるが、此処の仕組みとか少しだけ理解は出来た気がする。

 ミッドチルダと呼ばれる世界の他、幾つかの世界が共同して運営する次元世界における司法機関。

 そして世界の崩壊を未然に防ぐ為の、抑止力としての働きを持つ組織。

 そこには、様々な役職を持つ人達が忙しなく動き回り、緩慢の片鱗すら見えない。

 誰もが前を向いて、自分に与えられた仕事を全うしている。

 それはひとえに、此処で働く人達の仕事に対する情熱がそう見せているのだろう。

 自分達の行いが、幸せに暮らす人々の平穏を守ると信じて……。

 

「それに殆んどの人が、凄く充実した顔をしてた」

 

 自分の力が誰かの役に立てる、その事実は誰にとっても原動力となる。

 まぁ、自分に合っている、楽しいからという自分の為になる理由もあるだろうけど。

 特にあの人――ベリアル・ランドロウ技術主任は、その中で群を抜いて凄まじかった。

 

 

 

『私の城へようこそ、歓迎するよ』

『はぁ、どうも』

『君が色々と魔法に関わっているのは聴いている。突然だが、もしもの時の為にデバイスを持つ気は無いかな?』

『……いえ、今の所は』

『そうかい。もし必要になったら言ってくれ、君に合う最高のデバイスを用意しよう』

『あ、ありがとうございます』

『うむ、楽しみで仕方が無いよ!! 申してくれればすぐにでも用意するからね、いつでも大丈夫だ!!』

『は、はぁ……』

 

 

 

 寧ろあの人は、我欲に忠実な人なのではないだろうか?

 最初から最後までハイテンションで突っ走っていた為、正直俺では全く着いて行けなかった。

 助手の女性『マリエル・アテンザ』さんが言うには、管理局の魔導師全員のデバイスメンテナンスを2,3日前から開始したらしい。

 前に高町にレイジングハートのメンテナンスを勧めていた理由は、それなのだろう。

 どれだけの人数が居るのか分からないが、この前見た穏やかさが微塵も見えなかった所を見ると、相当なもののようだ。

 その姿を見て、慣れている筈の高町も苦笑を禁じ得なかった。

 

「にゃはは……。ランドロウ技術主任は、自称『デバイス馬鹿』だからね」

「自称で言ってりゃ世話無いな」

「だね」

 

 お互い、先程見た男性の半狂乱的な姿を思い出して笑う。

 虚ろな目でハキハキと仕事をこなしていく様は、勤労意欲に溢れたゾンビと言って差し支えない。

 視界に入った瞬間、素で引いてしまったのは俺だけの秘密だ。

 

「後は……名前でトラブルとか無かったのかって疑問が」

「名前?」

「そうそう。だって『時空管理局』だろ。一部の次元世界が中心になって、他の世界を『管理』するなんて、如何にも反発が起きそうな感じだろ?」

 

 作られた法の下で行われる管理という行為は、する側は兎も角、される側は良い気分じゃないだろう。

 何せその点だけで世界間のパワーバランス、上下関係が表れてしまうのだから。

 

「そうだね。次元の海には沢山の世界があって、その数だけ主義主張があるから、反発が生まれる事も少なくないって聴くよ」

「だろうな。やっぱ名前が直接的過ぎるからだよなぁ」

 

 なら折角だから『時空連携機構』とか、割と穏便な形に収めてしまった方が、名称的にも世界間的にもバランスは取れてると思う。

 とは言え100年以上前から運営されている組織だし、何より率先して各世界の文化管理や災害救助に体を張って対処したり、管理する側としての義務も果たしているようにも感じる。

 その辺りは俺の狭い主観だから間違っている部分も多々あるだろうけれど……。

 

 でも『権利』を行使する為に『義務』を果たすように、『管理』されるからこそ『保障』が得られるという事もある。

 管理下の世界では御し切れない問題も組織的に『管理』して、世界が平和で在り続けるよう『保障』する。

 少し強引だが、時空管理局はそういった形を求めた結果で生まれた組織なのかもしれない。

 ……まぁ、それが嫌で反発する人達も居るんだろうけど。

 

「世界の数だけ多くの人が居て、その数だけ言葉がある。そう考えると、今こうして形が整ってるだけでも奇跡だよなぁ」

「管理局の始まりから今まで、沢山の人達が頑張った成果なんだろうね」

「いつでも何処でも、先人の努力には頭が上がらないな」

 

 こうして俺達が普通に話している時間すら、そうやって積み重ねてきたものによって支えられている。

 きっと当たり前に感じてしまえば何とも思わない事も、時空管理局を見回って改めて実感した。

 

 一息吐いて、コップの入った透明の液体を口に含み、飲み下す。

 喉を通って冷たいモノが体内に進んでいく感覚、季節を無視したこの空間内では少々冷える。

 内側からせり上がる寒気のような震えを押し止め、目の前で同じような目に遭っている少女に問い掛ける。

 

「そんじゃ、帰るか?」

 

 元々、再検査だけのつもりで来た場所。

 それをこうして管理局の中を見て回ったのは、高町の親切心によるものだ。

 別に押し付けられた善意だとは思わないし、案内を買って出てくれた彼女には感謝している。

 今まで知らなかった事を知れるというのは楽しいものだし、未知のものに対する好奇心は人間特有のものだ。

 よく分からない事態から始まった縁だが、それでも俺は充分満足している。

 

「うん、そうだね…………あっ」

 

 その言葉と共に立ち上がり、さぁ帰ろうと言う時。

 高町が、何故か仕舞ったといった様子で苦い顔をした。

 どうかしたのか、と尋ねてみれば――

 

「もう一箇所だけ行こうと思うんだけど、良いかな?」

 

 との事。

 先程の反応を見るに、恐らく忘れていたのだろう。

 キルトの話に始まり、今に至るまでの道程。

 その時間と、申し訳無さそうに彼女が此方を見遣る姿を見て、俺は思う。

 

「あぁ、構わない」

 

 お前は何を申し訳無く思っているんだ?

 用事がある訳でもないのに、俺を待っていてくれたり、キルトの事を教えてくれたり……。

 果ては局内の案内まで自ら買って出てくれたのだ。

 それをありがたいと思う事はあれど、決して悪いと思った事なんて微塵も無い。

 だから俺は、至極簡単にその提案を受け入れた。

 

「ありがとう。それじゃ早速行こう」

 

 若干急ぎ気味な少女は、徐に俺の手を掴むと駆け足で走り出した。

 それに抵抗出来ず、流されるまま俺は連れられている。

 

「急ぎ過ぎてコケんなよ」

「大丈夫だって!!」

 

 俺を先導する少女にそう言っても、笑顔で返される始末。

 

「……ったく」

 

 俺としては繋がってるその部分の温もりに赤面せずにはいられないのだが、そんな事はコイツには些事にすら劣るようだ。

 自分1人の空回りみたいで何処かムカついて、それ以上に恥ずかしい。

 時折、すれ違う人々の奇異に満ちた視線が突き刺さるが、高町はお構い無し。

 そして俺は唯、その顔を見られないように俯きながら彼女を後を行くだけだった。

 その様相を、第3者視点で見ればきっと

 

『姉に引かれながら帰る弟』

 

 のように見えた事だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――」

 

 浮遊感に包まれる体に、テレビで見た宇宙服を着た人が空間を歩く姿が思い浮かんだ。

 自分自身がそんなものとは無縁だと思っていたから、その時は気にも留めなかったのだが。

 こうして身を以って実感すると、想像とはまた違った感覚に陥る。

 しかし、そんな事よりも……

 

「何だよ、これ」

「やっぱり初めてみたら驚くよね?」

 

 円筒状に上下を無限に貫く形、目を凝らそうとも見えぬ先、天も底も視界に収める事は不可能な程の巨大さ。

 その中を縦横に駆け巡る通路らしき道には、管理局の制服に身を包んだ人達が物を抱えながら疾走している。

 一片の迷いも見せない機敏な姿は、それだけで巧みな仕事ぶりを見せ付ける。

 そして最大の注目点は、此処に居る全てを取り囲むように設置された――――本棚。

 何十冊、何百冊とか、そんな小さな範疇に収まらない無限にも等しい数。

 隣に居る高町の存在すら霞む程の光景が目の前に……。

 絶句、俺は正しくその通りの状態だった。

 

「此処は『無限書庫』。管理局の管理下にある世界の書籍とかデータが収められてる、超巨大データベースなんだよ」

 

 気の遠くなる程の規模の本棚には、ギッシリと詰め込まれた多種多様の装丁が施されている。

 見た事の無い豪奢な表紙や、俺達の世界と同じような文庫サイズの本まで。

 視界の隅に見えた『男を落とせる手料理集』というのは、無視した方が良いのだろうか?

 つーか何で、そんなもんまであるんだ?

 

「偶に管理外世界の物、地球の物も混ざっていたりするんだって」

 

 隣の少女からその答えを聞いて、無理にでも納得する事にした。

 どんなプロセスを踏んだら此処まで来るんだよ、という疑問自体が愚考なんだろう。

 魔法といい此処といい、不条理を感じずにはいられない。

 そう感じる事自体もまた、負けなんだろうなぁ……。

 無数とも呼べる書物に目を泳がせながら、異世界の常識に抗う事を諦めた。

 ……その時

 

 

 

 

《――――》

 

「えっ?」

 

 ふと何処からか、何かが聞こえた……気がした。

 反射的に周囲をグルッと見回すが、そこには先程と何ら変わらない光景が広がっている。

 誰かが俺に声を掛けた様子は微塵も無い。

 何だ、一体……?

 

「どうかした?」

「あっ、いや別に」

 

 隣の高町の声に、動揺したまま半ば反射でそう答える。

 どうしてそうしたのか分からない、恐らくは彼女を心配させないようにと思っての事。

 近くに居た彼女の全く気付いてない様子に、きっと空耳なのだと思ったからだろう。

 見えないものに惑わされるのは、正直気持ち悪い感情しか残らない。

 だったらそんなものは最初から見なかった事に、聞かなかった事にした方が良い。

 そう自分自身に結論付けて、腹に残っていた疑問を少女にぶつける。

 

「それで、どうして俺を此処に?」

 

 諦観に包まれた思考を抱きながら、改めてこの現状を鑑みる。

 無限書庫、この場所は先程の高町の案内には入っていなかった。

 だから連れて来られる理由としては、それだけで充分だ。

 ならば此処に来たとして、一体どうするつもりなのか?

 この圧巻せざるを得ない光景を目の当たりにして、驚かせてハイ終了では無いだろう。

 

 それだったら、何故?

 懐疑の視線を彼女に向ければ、少しだけ笑みを浮かべた。

 

「紹介したい人が居るんだよ。えぇっと…………あっ、居た居た」

 

 そう言いながら周囲をキョロキョロを見回して、だだっ広い空間を縦横無尽に駆け巡る局員を視線で掻き分ける。

 俺に、紹介したい人?

 脳内で新たに生まれた疑問が巡る中、目的の人物を見付けたらしい高町は、周りの目を気にする事無く声を張り上げた。

 

「ユーノ君!!」

 

 彼女の双眸の先を追うように、俺もそちらに目を向ける。

 そこには、肩近くまで伸びた狐色の髪と線の細い背中。

 顔の高さまで積み重なった本を両腕で抱えながらも、きちんとしたバランス感覚を以って立っている姿は凄いの一言に尽きる。

 その人は高町の声に気付くと、クルリと反転して此方を向いた。

 

 しかし見えるのは本だけで、顔は全く見えないのだが……。

 だが脚の生えた本の山は周囲に構わず、ソレは此方へ一直線に向かってきた。

 その前を行き交う人々は、まるでモーセの十戒の如く進路を空けていき――

 

「やぁなのは、久し振り」

 

 目の前に到達するや否や、爽やかな第一声を発した。

 

「うおっ、本が喋った」

 

 だから俺も、ワザとらしい驚き方で言葉を返す事にした。

 

「本じゃないから。人だよ、人」

「そうか。俺は妖怪『本の虫』が現れたのかと思ったぞ」

 

 苦笑いで俺のボケに突っ込んでくれた高町に、更にボケを上乗せする。

 まぁ、唯からかってるだけなんだが……。

 流石に俺が遠藤や金月のポジションに立つのは、少々じゃなくてかなり嫌だ。

 俺はいつだってマトモな人間だからな。

 ――――本当だぞ?

 

「ハハハ、本の虫っていうのは間違いないけどね」

 

 通称から自称に変わった『本の虫』は、よっこらせ、と親父臭い台詞を吐きながら両腕の荷物を降ろした。

 声のキーは男女の中間、一度聴いただけではどちらか判断出来ない音程。

 ドサッと重苦しい音と共に、今まで隠され続けていた『本の虫』の正体が明かされた。

 それは、穏やかな顔立ちに眼鏡を掛けた美が付くだろう少年。

 一見すると少女にも見えなくもない、中性的な存在だった。

 

「初めまして。僕は無限書庫の司書を勤めているユーノ、ユーノ・スクライアだよ」

 

 背は俺よりも少しだけ低く、痩せ型なのだろうと思わせる肩幅の狭さ。

 華奢と言われても文句の付けようもない、後姿でも感じた線の細さが如実に表れていた。

 一瞬だけ、本当に同性か迷った程だ。

 

「あぁ、こちらこそ。俺は瑞代聖」

 

 彼に差し出された手を握り返して、俺も答える。

 俺より小さく、指も少し短い掌。

 何故か微かに震えているのが気になったが、まぁ疲れてるのだろうと納得した。

 そして感触はやはり男らしさに欠けたもので、目の前の少年に対してどうにも微妙な感覚に陥る。

 顔には出さないが……。

 

「あぁ、君の話はなのは達から聴いているよ」

「何を聴いたのか知らないし、そのパターンにはいい加減飽きたぞ、オイ」

 

 爽やかで少しだけ緊張したような笑みを湛えながら告げるソレ、最早聞き飽きた台詞に頭痛を感じてしまう。

 つーか高町、家族のみならずコイツにまで。

 チラッと横を見れば、ニャハハと可愛らしい笑いを浮かべやがった。

 小悪魔め、それが誤魔化しのつもりか……。

 

「ったく、内容だけは言うなよ。コイツ等からの情報は話半分に聞き流しとけ」

「その言い方は酷いよ~」

「そういう言葉は、人の事をきちんと説明出来てから吐けっての」

 

 ハラオウンやコイツとか、家族に話すにしてもいつもどこかでフィルターが掛かってる気がする。

 優しい人だと言われても、俺には理解出来ない範疇だ。

 何故なら俺は、俺自身の良さを知らないのだから。

 聴いても背筋がむず痒くなるだけだ。

 

「なるほどね、皆の言う通りだ」

 

 相対する彼は彼で、本人の与り知らぬ場所で理解に至っているし。

 何がなるほどなんだ、何が……。

 それにしても、ユーノって何処かで聞いた事があるような、無いような。

 

 随分前だった気がするが、確かあれは翠屋だったっけ?

 

『ユーノ君も同じだが、彼は少し強引さに欠けているしなぁ』

 

 ――――あぁ、把握した。

 士郎さんの呟いた、なんて事無い雑談の一言。

 俺を弄るネタとして出て来た、1人の名前……その本人が目の前に居た。

 優男の風体が特徴的な少年は、正にあの人の言う通りだ。

 

「お前も、士郎さんの言う通りだな」

 

 何となく軽い気持ちで反撃。

 あちらばかり俺の事を知っている事実、それは何だか癪に触る。

 スクライアの穏やかな表情が、まるで腹の底を見透かしているようなソレと錯覚してしまう。

 

「えっ?」

「気にすんな、唯の独り言だ」

 

 まぁ結局は、俺の妄想だけどな。

 純粋な疑問として聞き返す彼に、手を振って何でもないと答えて追及を避ける。

 本人が聴きたがるような内容でも無いし、聴いたら本気でヘコみそうだ。

 俺の胸の内に留めておこうと良心が訴えているので、それに従う事にした。

 スクライアの方も無理に尋ねる事はせず、そっか、とだけ呟くだけ。

 うん、物分かりの良いヤツで助かる。

 

「それじゃ、そろそろ睨むように見ないでくれると、僕としてもありがたいんだけど……」

「……は?」

「君が怒っていないのは分かってるけど、いつまでもそんな目で見られるとね」

 

 あぁそういう事。

 小刻みに震えてた手、よく見ると少しだけ引き攣ったような笑顔。

 それだけで、言いたい事は分かってしまう。

 

「悪いな、これが素なんだ」

「ゴメン……悪い事言っちゃったね」

「気にするな。こんな目をした俺のせいだろ?」

 

 自身の目付きの悪さ、それが目の前の少年が困惑する原因。

 最近は全く言及される事は無かったが、完全に無くなった訳じゃない。

 最近は慣れている隣の高町やハラオウン達と居る事が多いからで、初対面じゃ流石に気分が悪くなるのは当然だろう。

 まぁ、直そうと思ってすぐに直せるものでもないから、今はこういった反応も仕方ない。

 今更なのだから、俺が気にしなければいいだけの問題。

 そう心に言い聞かせて、皮肉気な言葉をスクライアに向けた。

 

「う、う~ん……」

 

 何処か納得出来ていない表情を浮かべながら、彼は歯切れ悪い呟きを漏らす。

 卑怯な言い方だろうけど、俺自身がそう思って納得してるんだから仕方ない。

 面倒だろうが、スクライアにもそうなんだと理解して貰うしかない。

 

「まぁ、気にするな」

「……分かったよ」

 

 此方の気楽な言葉に、スクライアは諦めたように苦笑いを浮かべる。

 言外に込められた意味に気付いてるのだろう、それ以上突っ込もうとはしない。

 これ以上は不毛な言い合いになるのは見えている、賢明な判断だな。

 

「おっ、お仕事中みたいだけど、邪魔しちゃったかな?」

「だ、大丈夫だよ。本当は休憩中だったんだけど、手持ち無沙汰で暇潰しに手伝ってたんだ」

「……それって、休憩じゃないような」

 

 俺の所為で微妙になった空気を、高町が切り替えるように声を上げる。

 それに乗っかったスクライアだが、残念ながらその言葉は彼女に引き攣った顔をさせるだけだった。

 場を盛り返そうと頑張っている2人だが、それが裏目になるとは思っても見なかったんだろう。

 その様子に俺は、腹の底から湧き出る苦笑を止められなかった。

 

 ……まぁ、言いたい事が分からない訳じゃない。

 この無限とも呼べる世界を管理する司書をしているという事は、それ相応の労力を求められる。

 見た所、書庫の整理をやってるみたいだが、それだってかなりの疲労が伴う筈だ。

 それを手持ち無沙汰だからって理由で休憩時間を潰したら、元も子もないだろう。

 スクライアにそう言うと、ごもっともと言うような顔で口を開いた。

 

「無限書庫の整理を始めて3年以上経つけど、未だ作業進行率は5%にも達していないんだ。本当なら休む時間だって惜しいんだよ」

 

 スクライアが言うには、此処の存在は何よりも重要だと言う。

 この無限書庫にある情報は、様々な世界に関わる管理局にとって無くてはならないもの。

 それなのに4年前までは書庫整理に着手せず、無法地帯と化していたらしい。

 故に1つの情報を探すだけでも、かなりの手間が掛かってしまうのだ。

 スクライアがある事件で無限書庫の有用性を実証する事で、漸く管理局も重い腰を上げたのだとか。

 そしてその後、彼を司書と書庫整理の陣頭指揮役に抜擢して今に至る。

 

「皆頑張ってるけど、並行して各部署からの要請もこなすから、思うようにはいかないけどね」

「それでも、前よりはずっと情報検索のスピードが上がったって色んな人達が言ってるよ」

「ハハ、そう言って貰えると、頑張ってる甲斐があるよ」

「……」

 

 多くの次元世界を管理し、守護する組織の頭脳と呼べる存在。

 今はまだ完全とは言えないが、着実に本来の機能を取り戻しつつある現在。

 それを行った中心人物が、自分と歳の変わらぬ少年だという事実。

 十二分に素晴らしい事を遣って退けてさえ、唯小さく笑って流してしまう余裕。

 

 ハラオウン達の繋がりは、何処までも俺の範疇を超えている。

 そんな現実を突きつけられたら、今まで自分の行ってきた全てがクダラナイものに見えてしまう。

 

「……」

 

 卑下しなくていい、元々スケールの違い過ぎる問題だ。

 才能という便利な言葉が、それを全て片付けてくれる。

 

 だと言うのに、何でこんなにも胸が苦しくなる?

 目の前で繰り広げられる書庫整理の熾烈さ、所々で倒れている人さえ居るこの戦場。

 その場所で何年もの間、スクライアは管理局を支える為に尽力してきた。

 たとえ生まれた世界が、過ごしてきた世界が違うとしても、それでも意識せずにはいられない。

 

「……凄いもんだな」

 

 自分にどれだけの誓いを課そうとも、組織に尽力出来る力を持つ彼には勝てないのだと……。

 今の自分を取り巻く知識の数が、それを否応無く示していた。

 悔しくて心中で悪態を吐いてしまう、そんな自分が情けない。

 周囲に存在する筈の音を聞き流しながら、俺は1人で書庫を見詰めていた。

 

「そんな事は無いよ」

 

 俺の呟きが聴こえたのか、スクライアが急に俺へ言葉を投げ掛けた。

 

「僕1人で出した結果じゃないからね。ところで、聖には好きな事ってある?」

「好きな、事?」

 

 あまりに唐突で、俄かにはその意図を理解出来ない問い。

 それに対して俺は、何を突然言い出すんだコイツ、みたいな顔をしてしまった。

 何で急にそんな事を訊かれるのかと、疑問符を並べずにはいられない。

 だが彼とて、そんな意味の無い質問をしないだろうと思い、改めて考えてみた。

 自分の好きな事、幾つもあるそれらを脳裏に浮かべていく。

 

「家の手伝い、家族と遊ぶ事、体を動かす事、それに……」

 

 ふと思い付き、スクライアの傍らに鎮座する本の山に目を向ける。

 別の世界の文字だから読めないが、それが本という存在であるのは確かだ。

 一番上の赤いハードカバーのそれを手に取って、彼の目線の高さまで掲げる。

 

「読書も、結構好きだな」

 

 ひなた園の師父の書斎、そこにあった書物の大部分を読み漁った過去を持つ俺には、これはとても馴染み深いモノ。

 紙の持つ独特の匂いが醸し出す雰囲気は、どの世界でも共通であり不変だ。

 

「僕もだよ」

 

 そして俺の言葉に同調するように、スクライアは俺に笑みを向ける。

 邪気の欠片も無い、心の底から生まれる純粋な想い。

 自分と同じ匂いを俺から感じ取ったのか、まるで歓迎しているような表情が見て取れる。

 コイツ、まさか……

 

「何だかんだで僕って本が好きだからさ。暇があったら本に触れていたいじゃない?」

「ハハハ……、流石だね」

 

 傍らに座す本の山に、慈しむような視線を送るスクライア。

 その彼の当然のような呟き、諦め切った高町の苦笑いで、俺の中にある確信が生まれた。

 目の前の少年――――コイツは真性の、重度の、無類の本好きだと言う事を……!!

 

「世界の歴史、進化を続ける文明、感性が生み出した物語、あらゆる世界のそれ等を記録した情報媒体。聴いただけでもワクワクするよ」

 

 グッと拳を握り締めて熱く語る姿は、正しく『本の虫』を体現するものだった。

 爛々と輝く瞳は生気に満ち溢れ、子供のような躍動感を秘めて……。

 本当に心の底から本が好きなのだと思わせる、そんな見た目通りの少年。

 

「聖、君もそう思わないか?」

 

 熱い視線を此方に向けて、スクライアが俺に問う。

 同意を求めるように、彼は更に語りだす。

 

「唯の文字の羅列に込められた筆者の意志、その形は読者の視点によって様々な形に変わる」

 

 その言葉にすかさず頷いて同意する。

 元々、本とはそういうものだ。

 作者の作り上げた世界を、読者である俺達が様々な視点から解いていく。

 その世界で作者は何を伝えたかったのか、何を知って欲しかったのか……。

 決して1つの見方に留まらない、100人居れば100通りのモノの見方が生まれる世界。

 他人と意見を出し合い、お互いの感じる事を論じていく事で、更に世界観を深めていく。

 きっとそれが本を楽しむ方法、真の意味で物語を読み解く為の境地。

 

「それが本を読む事の醍醐味、本こそ人の個性が滲み出るものだからね」

「そうだな。目の付け所、題材に抱く想いは人それぞれだからな」

 

 物語が深いからこそ、それだけの違いが生まれる。

 文字の羅列しか書かれていない筈の紙の束には、それだけの魅力が存在するのだ。

 改めて自分を取り囲む、色取り取りのソレ等に目を向ける。

 

「……」

 

 沸々と何かが、胸の内から湧き上がる感覚。

 それはきっと、本と言う無限の可能性へ向ける果て無き想い。

 紙面に連なる文字の羅列が生み出す、千変万化の物語。

 人を喜ばせ、怒らせ、泣かせ、笑わせる――

 読む者を引き込んで放さない想像の化身が、視界一杯に広がっていた。

 

「僕はその中でも、歴史に関する書物に心を惹かれるよ。自分が生まれる以前の世界は、どのように動いていたのか凄く興味があるから」

「あぁ。綺麗な部分も汚い部分も併せて、俺達が居る世界だからな。何があったのか、気にならないと言ったら嘘だ」

 

 自分が生まれる以前、過去の人々はどのようにして今の時代を築いてきたのか。

 その歴史は、紐解けば様々な想いによって形作られていた。

 中には戦争等の後ろ暗いものもあるが、それも今を構成する無くてはならないファクター。

 歴史とは、世界の道程の記録なのだ。

 

「俺は神話系統かな。何の関わりも無い2点が、意外な繋がりを持っているって知るとワクワクする」

「神話って言うのは事物の起源や意義だけでなく、人々の思想が混じったりするからね」

 

 神話とは、民族が語るだけの伝承などではない。

 その裏には文化集団の思想が色濃く残っており、それ等を探るのには持って来いのものである。

 神話学や物語学、はたまた文学、宗教学、民俗学、歴史学、人類文化学という幅広い分野に於いての研究対象になっている位だ。

 それだけの奥深さが神話には存在する。

 特にギリシア神話は、その中でもお気に入りの一作だ。

 世界の始まりと、神々と英雄の物語に心を強く揺さぶられたのは、良い想い出として今も残っている。

 しかも時間等の抽象的概念すらも、この物語では神とされているのだ。

 時間の神『クロノス』、季節や秩序の女神『ホーラ』と言えば分かり易い。

 

「それと冒険小説には、とても心震える要素が詰まってると思うんだ」

「その気持ちはよく分かる。人類に侵されぬ秘境、そこに何が眠るのか、どんな危険が待っているのか」

「うんうん。遺跡とか洞窟や財宝、そういうキーワードには興奮せざるを得ないよ」

 

 気付かぬ間に段々とヒートアップしていく会話。

 隣で頭上に『?』を浮かび上がらせている少女を尻目に、更に俺達に熱が篭もる。

 

 スクライアの言葉には共感できる部分、そして改めて気付かされる部分が沢山ある。

 俺よりも物語を深く読み込み、世界そのものに没入している。

 表面の文字を読んでいるだけじゃない、その奥にあるキャラクターの心情や設定を鋭く射抜く事で、更に物語の深みを味わっている。

 

 これ程の読者を、師父以外で見た事など一度たりとも無かった。

 ――――流石だな、本の虫。

 そしてその彼と互角に話せている俺もまた、本の虫なのだろう。

 そんな事実に今更ながら気付くと、お互いの顔を見て吹いてしまった。

 

「いやぁ、こんなに話したのは久し振りだよ。無限書庫勤めの皆でも、途中から呆けてるからね」

「俺もだ。本好きが身近に少ないから、必然的にこういった会話は無いんだよ」

 

 一頻り笑い合って、スクライアに対する認識を改めた。

 他者の追随を許さぬ偉業を為しえながらも、心に映るのはいつも本の事、物語の事ばかり。

 ユーノ・スクライアとは、そんな人物だったのだ。

 

「結局は好きなだけなんだよ。人から賞賛されるだけの結果を出したのは、僕に出来るのはこれだけだって事と、自分にとっての一番がこれだから」

「スクライア……」

 

 俺の手によって少しだけ低くなった本の山から、彼もまた一冊を手にする。

 それに目を向けて、先程の俺と同じように目線の高さまで掲げた。

 

「それに仕事にするなら、やっぱり楽しい方が良いじゃないか」

「……そうだな」

 

 ――――楽しい。

 自他共に認める本の虫であるスクライアだからこそ、この場所に居る事を常に許容出来る。

 常人ならばノイローゼでも起こしそうな文字の軍勢。

 数十人、数百人では太刀打ち出来ぬこの戦場で、彼は自身の全てを以って挑む事が出来る。

 好きだから、自分が出来るから。

 確かに良い結果を出すのに、これ以上の理由は要らない。

 

「ったく、馬鹿だな俺……」

 

 スクライアの言葉、そこに込められた想いは何よりも強かった。

 『何が男らしさに欠ける』だ……今のコイツを見てそう思える訳が無い。

 好きな事と出来る事、その両方を仕事として活かして結果を出せるスクライアは……。

 俺なんかよりずっと大人で、ずっと男らしい少年だった。

 見掛けや性格なんかじゃない、自分の意志にきちんと一本の芯が通っている人こそが素晴らしいのだから。

 

「やっぱり凄いよ、お前も高町も」

 

 自分の持つスキルを以って教え導く、戦技教導官の高町なのは。

 無限とも呼べる情報量を整理し統括する、無限書庫司書のユーノ・スクライア。

 それぞれ方向性に違いはあれど、それに向けられる熱意と意志に差は微塵も無い。

 2人共、尊敬出来る程の実力と相応の努力を兼ね備えているのだ。

 それは正しく賞賛するべき事で、また俺自身が見習わなくてはならないもの。

 

 そんな言葉を掛けられるとは思いもしなかった2人の表情に苦笑しながら、周りで忙しなく動いている局員の背中を眼で追う。

 その中にはプカプカと死体……ではなく肢体が、放り出されたように浮いていた。

 しかもそれぞれが笑っていたり、苦しそうに「もっと、もっと本を……」と呟いていたり。

 数十人、それ以上の局員達が日夜、本の整理や要請された資料の捜索を行っているが為に起こった事故。

 壮絶な戦場跡を髣髴とさせるその様相は、常人が見れば1秒後に99%引いてしまうであろう光景。

 しかし、それが仕事による疲弊の極みならば、彼等も本望だろう。

 此処で仕事をしてる人達は絶対に本好きだろうし、そうでなければこんな不条理な戦場へと赴く筈も無い。

 好きな事で倒れるのは、それが充実している証だ。

 

「本当……羨ましいよ」

 

 ――――何もかも頑張るだけだった。

 辛さを感じる間もなく、見えない目標へ進み続けた自分自身。

 果たして俺は、此処の人達のように充実した日々を送っていただろうか?

 どれだけ辛くとも笑顔で倒れる事が、出来ただろうか?

 

 ……答えは、否だろう。

 いつだって自分本位の考えで、自分への見返りを考えなかった。。

 自分のやりたい事と言い聞かせて、自分にとって大切な事を、必要な事を一番にしてきた。

 だからこそ考えてしまう、自分自身の最も望むモノを。

 

 俺は俺自身の為に、一体何を望んでいるのか。

 俺は一体何が好きで、何がやりたいのだろうかと……。

 

 無限に広がる知識の源泉を前に、果ての無い思考を巡らせる。

 

「俺には――――」

 

 何が出来るんだろう?

 自分の事なのに、そんな分かりきった事実すら分からない。

 今まで自分を省みなかった、知ろうとしなかった結果がこれだ。

 自業自得とは正にこの事。

 あまりに馬鹿馬鹿しい問答に、自嘲を含む笑いが込み上げてくる。

 その代わりが、音にする必要も無い呟きだった。

 

「聖君?」

 

 高町が不思議そうな顔で此方を見る。

 誰に聴かせるつもりの無いそれを、隣に居る彼女は真っ先に反応したようだ。

 だが、俺のくだらない心の内を晒す事はしたくない。

 首を横に振って、何でも無いとだけ示す。

 

 そうだ、本当に何でも無い。

 唯、もし言葉にするのなら……

 

「自分が本当に好きな事を探すのは、意外と難しいなって思ってさ」

 

 誰が聴いても意味の分からない、そんなものでしかなかった。

 普通なら誰も迷わないその問いに、俺は素直に答える事が出来ない。

 さっきスクライアに伝えた好きな事だって、その元は『家族の為』という、自己の意志から生まれたものではないのだ。

 それがどれだけ滑稽か、どれだけオカシイか、自分が一番分かっている。

 傍に居る2人との差は、もしかしたらそれが原因なのかもしれない。

 

 コイツ等だけじゃなく、ハラオウンや八神、バニングスに月村も同じ。

 自分がしたいと思った事、好きな事を知ってるからあんなに一生懸命になれる。

 その姿が、尊く眩しく見えるのだ。

 だったらどうすれば、俺はその場所へ辿れるだろうか?

 行き止まりの見えない天井を見上げて、同じように見える事の無い自分の道を探していた。

 その何もかもが、無駄な行為だったとしても……。

 

 

 

 

 




「それにしても、まさか靴を投げて魔法を防いじゃうなんてね」
「魔法を使わない無手の相手から遠距離攻撃が来れば、割と驚きだろ? 真正面から奇襲を仕掛けるのは、俺の戦術の一つだ」
「にゃはは……何と言うか、色々と斬新だね」
本編が詰め込み過ぎた為にボツった会話ネタ。
ぶっちゃけてしまうと、今回それでも2万文字を超えてしまったのですが……(´・ω・)

どうも、おはこんばんちはです( ・ω・)ノシ
№ⅩⅩⅦをお読み下さり、ありがとうございます。

前回で終わったと見せかけてのフィオーネの生い立ち説明、彼女がどうして魔法学院に居たか、これで分かって貰えたかと思います。
こういう立場の子供は、きっと何処の世界にも居ると思うんですよね……。
そして遂に登場した、公式非公式問わず不憫な扱いを受けているユーノ・スクライアです。
僕は結構好きですよ、前線でなく後方で支援する有能キャラって素敵ですよね?
まぁ個人的にやりたかったのは、聖とユーノの本の虫コンビでのマニアック会話なんですけどねー(・3・)
StrikerSで日の目を見ないキャラが目立つ事で有名(?)な『少年の誓い』ですので、ユーノも勿論その予定だったり……。

今回で聖と管理局の繋がりが希薄になり、彼も日常に戻ります。
ですがそろそろ、彼の運命が良くも悪くも加速しそうなのですよ。
運命編のヒロイン別ルートも、そろそろの出番ですよ(」・Д・)」<ですよー!
誰になるかは敢えて言わない方向で……。

今回はこれにて以上となります。
感想や意見、タグ関連やその他諸々は遠慮無くドシドシ書き込んで下さい。
直接メッセージでも、作者的にウェルカムです。
では、失礼します( ・ω・)ノシ



割と適当にタグを追加したりしてますけど、他に何か必要ですかね?
あ、それと感想ありがとうございます!
日々の活力にさせて頂いてますので、まだまだドシドシ待ってますー!ヾ(`ω´)ノシ

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