少年の誓い~魔法少女リリカルなのはO's~   作:さっき~

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「聖は凄いね」

――以前そう言ってくれた彼女の言葉に、俺は答えを返す事が出来なかった。
――単に気恥ずかしかった、それも確かにあったかもしれない。
――でも実際は、純粋に『そう思えなかった』からだ。

「スポーツ、勉強、子供達のお世話、ピアノ演奏、こんなに色んな事が出来る人は殆んど見た事無いよ」

――彼女の言葉に、きっと偽りは無い。
――唯、それが俺の全てじゃなかっただけで……


――出来る事がある以上に、出来ない事の方が多かった。
――本当は、諦めずに続けたものより、諦めて挫折したものの方が圧倒的に多かった。

『サッカーは、どう足掻いても瀬田達には勝てなかった』
『テストをどんなに頑張っても、点数でトップを取る事は一度も無かった』
『夏休みの絵の宿題、気合を入れて何十枚も書いたけど、それ程良い評価は貰えなかった』
『料理も何十回とやったけど、自分が納得出来る成果は何一つ上げられなかった』
『他にも数え切れない位、出来ないものがあった』
『いや……出来ていると思っているものでさえ、本当は出来ていなかったのかもしれない』


――俺は特別でも何でもなく、唯の一般人だから。
――人より優れた才能は無いし、それをどれだけ望んでも手に入れる事は出来なかった。

――でも、本当はずっと欲しかった。
――自分を誇れる何かが、胸を張って前を向ける事実が。


――だって人は、自分にだけは絶対に嘘を吐けないから。
――どんなに頑張っても、満足な結果が出ない限り、自分の努力を本当に認める事なんて出来ない。
――俺はずっとそれに抗い続けてきたけど、心の何処かでその虚勢を嘲笑っていた。
――だから本当は、俺に凄い所なんて何一つ存在しない。

――唯、現実を知るのが嫌で、自分の弱さを直視したくなくて……。
――我武者羅に走っていただけの、どうしようもない弱虫だった。



――だけど、それでもお前は
――こんな俺を純粋な想いで認めてくれるだろう。
――馬鹿正直に、友達という関係だけで、お前は俺を信じてくれる。

――そんな優し過ぎる女の子を、放って置ける筈が無い。
――あんなに助けを求めている女の子の手を、掴まずにいられる筈が無い。
――自分の弱さとか、無能さとか、そんなものはこの際どうだっていい。
――たった1人でも、俺を凄いと信じてくれる誰かが居るなら


――大切な人(アイツ)を守れる(ジブン)になってみせる。

――それが俺の見付けた結論(こたえ)で、俺が何よりも信じる聖義(みち)だ。
――世界中の誰に何と言われようと、決して曲がる事の無い『不滅の誓い』



「師父、我が愚考をお許し下さい《My father,I follow this way.》」

――それは師父、たとえ貴方であろうとも。





――それは、少年の誓い――

――不屈の想いを刻む、未来への歩み――














F№Ⅵ「猛き流動、蘇る雷霆」

 

~Interlude~

 

 

 乱れ狂う風の中、拘束されている少女を庇うように聖は立ち上がった。

 その視線と意識は、戦斧を携える黒衣の敵だけに向けられている。

 悠然と、静かに、そして真っ直ぐに……。

 酷く汚れた衣服は満身創痍を呈しており、決して力強さは感じられない。

 寧ろ流風に容易く飛ばされそうな程の脆弱さを示している。

 それでも両足は地面を確かに踏み締め、敢然と射抜く黒と金の双眸は強い光を湛えていた。

 

 それは肉体的な強さによるものではなく、精神的な強さが表す不屈の姿。

 色彩の不明瞭な世界にある、唯一の意志(いろ)だった。

 

「時間は掛けられない《Time is not taken》」

 

 言葉と共に腰を落とし、左の半身を引く。

 水平の構え、握り締められる拳、それに呼応するように風はその中心へ集う。

 そして双眸に一層の強さが湛えられ、螺旋を描く(チカラ)は収束する。

 それが何を意味するのか、それが何を引き起こすものなのか……

 最早、言うまでもない。

 

「さぁ……《Let's set》」

 

 だからこそ相対する黒衣の少女も、双刃の戦斧を掲げた。

 上段の構え、重厚な凶器が引き起こすのは必殺の一振り。

 彼の身を以って知り得た当然の帰結だ。

 

 ――――だが、それはもう意味を為さない。

 

 

「行くぞ《Sonic Ride》」

「……っ!?」

 

 刹那、瞬きの後、鋼の風を纏いし少年は眼前に。

 無慈悲な瞳が射抜く先に、狙い違わず拳を突き立てた。

 

「堕ちろ!!《Geo Impact》」

 

 そのタイミングは、完璧なまでの不意打ち。

 

《Tri Shield(トライシールド)》

 

 しかし、後僅か数十センチの距離を残して阻まれた。

 少女の魔法陣の方が辛うじて速く、揺らがぬ壁は以前と同じ結果を生み出していた。

 

 だが同じ結果でありながら、2人の反応が真逆だった事だけは、決定的に違うものだった。

 

「……」

 

 とは言え少女(カリス)が戦斧を構えたのは威嚇の為でも、まして牽制の為でもない。

 邪魔者を振り払う一閃、至ってシンプルなその為だけのものだ。

 

《Steel Strike(スティール・ストライク)》

 

 聖が鋼の風なら、少女のそれは鋼の塊。

 抗いの風すらいとも容易く吹き飛ばす猛威の化身。

 盾に守られた状態からの一振り、相手は間合いの内であり、退く様子は全く見られない。

 

 この一撃で、彼の意地は終わる――

 

 

 

「リペル《Repel Exist》」

 

 突如、カリスの攻撃を阻む流れが生まれた。

 振り抜こうとするその腕に重く圧し掛かるソレは、間違いなく聖が起動した魔法によるもの。

 時間にしてたった一瞬の均衡、しかしそれが彼に防御の一手を与えた。

 空いている右手を攻めの左手と交差、踏み込みと共に迫り来る戦斧の柄を――握り締める。

 

「なっ……!!」

 

 それだけで止まった。

 先程、己を一撃で吹き飛ばしたその刃を、たったそれだけで止めてしまった。

 斥力の波動による物理運動阻害、そして何より、最も遠心力の働かない柄を狙う一瞬の判断。

 この2つが合わさる事で、カリスの一撃を完全に封殺したのだ。

 

 

 しかし結局は振り出しに戻っただけであり、二つの均衡が崩れる様子は一向に現れない。

 聖が先程よりも深く踏み込み、カリスは半歩下がっただけでは、状況の変化を促すには至らない。

 だがその裏では互いに表情を変える事無く、機械染みた論理的思考で次の行動を計算していた。

 相手の次の行動と更にその次は?

 残りの魔力量を鑑みて出来る最前の行動の流れは?

 幾つもの分岐点を経て、それらを総括して、戦術を組み上げていく。

 

 ――速かったのは聖だ。

 

「流動破壊《Disintegration》」

 

 一向に進展しないせめぎ合いに見切りを付け、コマンドと同時に収束した魔力を発破。

 体を発生した爆風の勢いに乗せ、そのまま大きく飛び退いた。

 

「まだ届かないか《It has not reached yet》」

 

 視線の先には、悠然と佇む1人の少女。

 それなりに上手く不意を突いたが、やはり簡単には通してくれない。

 ……だがその結果は、彼にとって大した意味を持っていない。

 元より大方の失敗を見越しての牽制、相手の反応と魔法展開速度さえ理解出来れば儲け物だった。

 ついでに自分の状態確認まで加味する辺り、彼の行動は何処までも徹底していると言えよう。

 

「まぁ、大した問題は無いな《Well, there is separately no problem.》」

 

 たった一度のせめぎ合い、それでも彼には充分な判断材料となり得た。

 悠長な独り言を漏らせるだけでも、その精神的余裕が容易に見て取れる。

 いや、元より焦燥などという余計なものは、今の彼に存在しないのだろう。

 発される言葉、悠然とした出で立ち、揺らがない黒金(ひとみ)が、それを否応無く物語っていた。

 

「……」

 

 しかしそれは、対する少女も同じ。

 畳み掛ける奇手に後れを取ってはいたが、根底の精神に揺らぎは無い。

 双眸に浮かぶ陰りは変わらず、仕切り直しとばかりにデバイスを一振り、横薙ぎの構えへ移する。

 そして三度目の激突は、間断無く繰り出され――

 

『素晴らしい、素晴らしいよハギオス!!』

 

 ――る直前に、狂ったように歓喜する電子音声に遮られた。

 

『遂に君は、君自身の本質に辿り着いた。君の在るべき姿に!!』

 

 逸る心を抑え切れないのか、ノイズ混じりの狂声が矢継ぎ早に吐き出される。

 人の心を酷く不安に陥らせ、違和感を圧し掛からせる異質な音色。

 それを聖は、無表情のまま見詰めている。

 

『魔法起動速度、魔力収束率、制御能力、どれも50%以上の上昇率。常人では成し得ないその偉業……』

 

 ディスプレイに映る黒衣の者は、身振り手振りを交えながら嬉々と説明を続ける。

 まるで自分の事のように、我が子の努力を盛大に誇るかのように。

 

『それを君は、今この瞬間だけでやり遂げてしまったんだ!!』

『理性と感情の統一、デバイスとの繋がりが、君に最後の一歩――――『共鳴(ハーモニクス)』へと至らせた!!』

 

 愉悦に浸る狂気、それは徐々に深みを増しながら少年にのみ向けられている。

 たった1人の為だけに語られる言葉は、しかしこの場には不相応な程に高らかだ。

 

『全く素晴らしいじゃないか、ハギオス・アンドレイル!!』

 

 嬉々として、喜々として、黒い影のテンションは最高潮にまで上り詰めている。

 何が黒衣をそこまで駆り立てているのか、それは誰にも分からない。

 しかしその姿は、そこに至る確かなモノがあるという証に他ならない。

 

『分かっただろう。それが君の――』

 

 

 

 

 

「――――黙ってろ《Become silent》」

 

 だが、狂声が永遠に続く事は無かった。

 向けられていた少年には、元よりそんなものに一片の興味も存在しない。

 雑音、それだけが彼の抱いている認識と価値だった。

 

「グダグダと長話ばかり、狂人の絵空事に付き合う暇は無い《Trivial rigmarole alone doesn't have madman's time of the empty wish each other》」

 

 それはあまりにも非情な言葉だが、彼からすれば当然のものだ。

 今現在、彼の最も見たくない顔を強引に見せられ、尚且つ意味不明な長話をノイズ混じりの声で聞かされているのだ。

 罰ゲーム以下だと、不満とも取れる無表情が物語っていた。

 

「下がれよ、アンタの出番は初めから無い《It repels, and there is no turn of you since beginning.》」

『…………解せない』

 

 完全な拒絶を言葉にし、遂に黒衣の威勢は形を潜めた。

 絞り出した声は僅かに震え、目の前の少年(げんじつ)をフードの奥に隠した双眸で凝視している。

 

『今の君は全てを論理的に思考している筈だ。私の割り込む直前の数秒ですら、カリス・ハルベルトに対して、数十通りのパターン予測と対処法を組み上げていただろう』

 

 ――いや、確実に出来る。

 確信を持った黒衣の言葉は揺らがない。

 今の彼の持つ理性ならば、思考能力ならば、全てを理路整然と判断し切れるのだと。

 故に、ディスプレイの先に佇む者は理解出来ないでいた。

 

『何故そちら側に居るのだ? 君の力を熟知し、その使い方を理解している私の許こそが、君にとって最も望むべき居場所である筈だろう!!』

 

 論理的に考えれば、それは圧倒的に当然の答えだった。

 聖自身、今の自分に何が起きているのかを正確に理解出来ていない。

 心に宿る信念と相棒の導きを信じただけであり、その結果が生み出したものについて、何の知識も持ち得ていない。

 しかし対する黒衣は、その全てを理解している。

 

『そのような人間モドキに肩入れするなど、全く以って論理的でない。君が今以上に強くなるには私の許に居るべきであり、私の持つ知識と技術だけが君を最強へと変革させるのだ。そんな奴の傍に居ても君は強くなれない!!』

 

 今はまだあやふやな『モノ』ではあるが、黒衣の叡智ならばソレは完璧な実像を結ぶ。

 それは彼が最も欲した、欲して尚、手にする事が叶わなかった『力』そのもの。

 最強と言う名を携えて、手放しでも喜ぶべき事実が目の前にあった。

 

『今の君なら分かるだろう。デバイスに近付き、デバイスに身を委ねた(・・・・・・・・・・)君ならば。論理的に冷静に考えれば、答えは容易に見付かる筈だ!!』

 

 間断無く吐き出される言葉が奔流となり、異を許さぬ暴力へと変わる。

 機械的な音でありながら、それは途方も無く感情的だ。

 抗う事を否定する音律が、聖の脳髄に響いてくる。

 

 

 

 だが……

 

 

「――――そんなもの、どうでもいい《Such a thing and how may be sufficient.》」

 

 返す言葉は、無情で非常に完結した響きだった。

 同時に彼の金眼の輝きが、一層増したように見える。

 

「自分の過去とか、才能とか、今起こっている現象とか、アンタの正体とか、目的とか、全部どうでもいい《Everything is not needed my past, talent, phenomenon that has happened now, and your true colors and the purpose》」

『何、だと……』

「俺に必要なのは、アンタじゃない《You are not necessary for me》」

『――――っ、ハギオスっ!!』

《Accel Rush(アクセル・ラッシュ)》

 

 荒げた語気と共に、大地が爆ぜた。

 

「後ろか《Back》」

 

 その意味に気付いた時、少女は真後ろに。

 黒衣をはためかせ、戦斧が纏う魔力光が煌く。

 

「シールド《Round Shield》!!」

 

 神速の機動が聖の意志を狩らんと迫り、寸でのタイミングで盾が阻む。

 だが鎬を削る間断は許されない。

 魔力で底上げされたカリスの力は、聖の防御程度では押さえ切ることは不可能。

 地に喰らい付く両足すら無力、薙ぎ払われた身は容易く背後へ吹き飛ばされた。

 

「チッ……《Shoot》」

『分かっているのか!? 君が守ろうとしているモノの正体が!!』

 

 電子の怒声が辺りに響き渡り、少年の舌打ちを掻き消す。

 同時にカリスは、宙に投げ出されたままの彼に追撃を開始。

 

『君の存在を利用した、人間のなり損ないなのだぞ!!』

「まだっ《Round Shield》!!」

 

 下から掬い上げる斬撃が襲う。

 足場の存在しない位置では、それに耐える為の力は生まれない。

 少女の剛力に流されるまま彼は、上空へ吹き飛ばされる。

 

『生まれた意味も、存在する理由も無い。他者に依存する事で、自らの全てを他者に委ねるという暴挙!!』

「まだだっ《Round Shield》!!」

《Metal Strike(メタル・ストライク)》

 

 打ち上げられた体を覆う(カリス)、上段に構える姿を視界に収め、間断無く対抗する。

 数瞬後、振るわれた斧と盾が三度の激突。

 それは先の2撃以上の力強さを以って盾を砕き、無防備な肢体をボールのように軽々と打ち払った。

 

「この程度で……《It doesn't lose.》」

『今の君に何の必要がある!? そのような紛い物、論理的に考えれば捨て去ればいい筈だ!!』

 

 衝撃と共に深い茂みに叩きつけられる。

 脆く細い枝が折れながら彼の身を受け止め、激突音と共に地は砂塵を撒き散らした。

 

『君が求めるもの、必要なものは力だ!! それ以外は要らない、無駄だ、無駄だ、無駄だ!!』

 

 狂う声は止まる事を知らず、未だ響き続ける。

 それを聞かせるべき相手を分厚い砂煙(カーテン)に置き去りにして、黒衣は怒りに酔っていた。

 

『………………分かったかい? これが私の力で開眼した者の力だ』

 

 数瞬の無言の後、漸く冷静さを取り戻した黒衣は、眼前の結末に甚く満足した声を上げる。

 自らの技術の結晶の一つ、それは少年を圧倒的なまでに超えていた。

 その骨身に嫌と言う程『圧倒的な力』を叩き込んだ。

 最早理解せずには居られないだろう、黒衣こそが彼に最強をもたらす存在である事を……。

 

『カリス・ハルベルトは元々、魔導師としての資質は君よりも高い。あらゆるパラメータを比較しても、ハギオス・アンドレイルが太刀打ち出来る要素は無い』

 

 ソレは紛れもない、厳然たる事実。

 口を吊り上げたような深い笑声で、今更口にするまでもない言葉を投げ掛ける。

 

『だが私の分析が正しければ、君ならば……ハギオス・アンドレイルならば……更なる高みへと至れる筈だ!!』

 

 だからこそ、続けられる言葉に偽りは無い。

 

『いい加減君も理解しただろう!? これが現実なのだと――――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――あぁ、分かった《At last, it has understood.》」

 

 ボソリと、何気無く呟かれた。

 緩やかに流れる風に煽られる煙は、それまで覆い尽くしていたそこから姿を消していく。

 

 残ったのは…………悠然と佇む、1人の少年。

 

「そもそも俺とお前では、考えの何もかもが違う《To begin with, everything of the idea of you and me is different.》」

『違う、だと……?』

「だから言える、俺とお前は絶対に相容れない《Therefore it says, and you and I are contradictory.》」

 

 先程までの苛烈な3撃による反動を感じさせない、全く淀みの無い言葉。

 その体にはダメージが確かに残っている筈でありながら……。

 それでも地に足を着けるその体、そして黒と金の瞳には一切の揺らぎが存在しなかった。

 

『ハギオス、君の言っている事が分からない……』

「お前は根本から勘違いしているって事だ《You are a thing of misunderstanding it from foundation》」

『なっ!?』

 

 それは黒衣にとって、衝撃的な言葉だったと言わざるを得ない。

 知識に於いて聖を圧倒する自分に向けて、彼自身がソレを否定したのだから。

 

「元よりアイツは、偽物なんかじゃない《First of all, she is not an imitation》」

『何を馬鹿な……。彼女はアリシアの細胞から生み出された、アリシアの偽物だ』

「それが勘違いなんだよ。同じ細胞であろうと同一人物には成り得ない《It's a misunderstanding. It's not sure to become a same person even though the same cell.》」

 

 言うなればそれは『あらゆる要素が似ている、別の誰か』であり、間違っても本人とは呼べない存在。

 人を形成する要素は数あれど、外見的要因だけでは、真に決定打として成り立たないからだ。

 本当の決定打、人を人足らしめる本質は――――『心』にある。

 

『それだけではない!! アリシアの生前の記憶を与え、その上での失敗作だったのだ!!』

「与えた記憶なんて、所詮は『記録』でしかない《The memory of giving it is 'Record' after all》」

 

 それだけは間違えてはならない。

 記憶は元を辿ってしまえば情報の塊であり、それを脳に刷り込まれた程度で記憶とする事は不可能なのだ。

 記憶とは、自らの体で触れ、自らの心で感じてきたモノによって形作られていく。

 

 故に聖は否定する、相容れない存在、黒衣の放つ言葉の悉くを……。

 

「どれだけのお膳立てがあろうと、アイツは最初からアリシアになる事なんて出来なかった《Even if how much arrangements exist, Fate is not good at the thing of becoming Alicia》」

 

 この世に生まれた瞬間から今の今まで、そしてこれからも……。

 彼女は、どのような時もフェイトだった。

 恐らくこのような事態を招いてしまったのは、あらゆる者達がソレを認識していなかったからだろう。

 彼女の境遇と生まれをなまじ知っているからこそ、彼等の意識には常にアリシアのクローンとしての存在を見させてしまっていた。

 それが無意識なものであろうと……。

 

 だが彼は、瑞代聖はアリシアという名の少女を知らない。

 たとえ知っていたとしても、その双眸で見詰めていたのは、この世でたった1人のフェイトという名の少女だけだ。

 そのような過去が存在しようと、彼の意志は囚われたりしない。

 

「お前もアイツの母親も、アリシアの存在を前提として見ている。だからそんな間違いをする《You and her mother also are looking on the assumption of 'Alicia's existence.Therefore, it makes a mistake》」

 

 もしアリシアのクローンとして生まれるのではなく、普通の人間として生まれていれば、そんな事は絶対に在り得ない。

 唯、彼女の母親であるプレシアにとって、アリシアこそが全てだった。

 だからこそ同じ容姿と細胞を持ちながら違ってしまった彼女を、アリシアの人形と称してしまったのだろう。

 本当ならば唯の双子と同じ在り方ながら、押し付けられた生まれが特異なだけに、それを認める事が許されなかった。

 

 しかし、今更生まれをどうこう言おうと何も変わりはしない。

 IFの話は起点を過ぎてしまった時点で、他愛無い戯言に成り下がってしまう。

 

 だから今の聖に出来る事は、彼女の存在を否定する全てを真っ向から叩き潰すだけ。

 『アリシアの生存』という願望から生まれた間違いも、『フェイトを傷付ける為』だけの悪意による間違いも、何もかも許してはならない。

 

「誰が何と言おうと、アイツは――――《What mean by whoever,She is a》」

 

 何故なら彼には、何よりも信じられる(ただ)しい結論(こたえ)が見えているから。

 その過去を知らずとも、常に見詰め続けた1人の存在。

 聖祥で初めて言葉を交わした相手であり、聖祥で初めて出来た友達でもあり、そして……

 

 

 

「――――1人の人間で、優しい女の子だ《A girl kind to at one human being.》」

 

 自分が初めて、途方も無い程に守りたいと思った大切な人だった。

 

「だからお前は、要らない《Therefore, you don't need》」

 

 胸に秘めた想いを吐き出した彼は、最早言葉は要らぬとばかりに口を噤む。

 代価の言葉は半身を引き、突撃体勢を取る事、そして最初の一歩を踏み出す事で答えとした。

 迫る姿にすぐさま大振りの斧を構える少女、だがそれは彼にとって求めていた隙そのものだ。

 

「今度は《Sonic Ride(ソニック・ライド)》」

 

 カリスの間合い、そこに至る一歩手前を踏み込んだ瞬間、聖の姿は風に吹かれたように消えた。

 地を焦がす跡を刻んだその行動は、少女に一つの結論へと導く。

 気付けば何も無い筈の背後へと獲物を振るっていた。

 

《Steel Strike(スティール・ストライク)》

「こっちの番だ!!《Geo Impact》」

 

 刹那、魔力を纏った拳が彼女を襲う。

 間一髪届いた戦斧がそれを迎撃し、両者の間に火花を散らす。

 

「っ!?」

 

 渦を巻く灰色の一撃と鋼の一振り、その力はほぼ互角。

 拮抗する拳と刃は鎬を削り、互いに喰らい付く。

 

「遅い《Sonic Ride》」

 

 そして又も聖は動く。

 力比べを続ける拳を透かさず引き、体勢を沈めたまま横へ一歩。

 振り抜かれる斧を掻い潜り、がら空きの胴を抜け、背後にまで瞬く間に迫った。

 

「コイツで――――《Geo》」

 

 構えを取った彼を視界に収める前に、カリスはその場から飛び退いた。

 敢えて拳を受け切る必要は無いと判断した、彼女の至極当然の解答は……

 

「――――吹き飛べ《Vortex》」

 

 掌を返すが如く、アッサリと覆された。

 聖の振るった腕は、集束された魔力によって衝撃波を巻き起こし地面を抉る。

 放たれた荒々しい暴風は、地に巨大な爪痕を刻み、真っ直ぐに少女を襲った。

 

「何っ!?」

《Tri Shield(トライシールド)》

 

 予想し得ぬ新たな魔法、カリスはすぐさまデバイスを盾に防御へ移る。

 だが空を切る風は止まる事を知らず、鋭い爪となり彼女の壁に襲い掛かった。

 魔力温存の為の回避が、その予想を覆す結果に足元を掬われたのだ。

 

 ――――危険だ。

 

「行くぞ……《Chance》」

 

 少女が数十メートル先の樹木に激突する瞬間を見届けず、体勢を整えた聖は再び走り出す。

 畳み掛けるならば、このタイミングを措いて他に無いと判断したが故の行動。

 

「スロウズ……」

《Steel Impact(スティール・インパクト)》

 

 シールドごと吹き飛ばされた彼女は、それでも冷静さを失わなかった。

 デバイスに命令を飛ばすと、くるりと体を反転させ、キックターンの要領で背後の木の幹を蹴り返す。

 魔力を帯びた得物を握り締め、前方に迫る聖へと向き直った。

 

《Sonic Ride》

《Accel Rush》

 

 そして示し合わせたかのような魔法行使、互いの姿が一瞬にして掻き消える。

 接近戦が本領の2人、それを理解しているからこそ『接近』手段を講じている。

 如何にして敵の意表と死角を突き、確実な一撃を与えるか……。

 専心を向けるべきは、その一点のみに集約されていた。

 

 ――――数瞬後、轟音と共に空間が爆ぜる。

 

「っ!?」

 

 周囲に撒かれる砂粒の中で、精神を乱したのはカリスだ。

 すぐさまデバイスを振り回し、視界を覆う砂塵を威勢良く吹き飛ばす。

 

 だが、彼女の行動はコンマ数秒遅かった。

 

 

「堕ちろ《Geo Impact》」

 

 彼の真上からの強襲は、既に有効範囲まで辿り着いていた。

 切り返す刃では間に合わないと判断し、すぐさま後方への回避を選択。

 避け切れるかどうかの刹那、迷いの無い判断が明暗を分ける。

 

「くっ……」

 

 結果として聖の拳はカリスに届かなかった。

 しかし地面に深々と突き刺さったソレにより再び土埃が舞い上がり、粒子ではなく塊が波のように視界を埋め尽くす。

 厚みは砂塵の比ではなく、1メートル先すら何一つ目視する事を許さない。

 だがその程度で彼は動じる事も、まして手を止める事も無かった。

 攻めるならば今、専心を向けるべきはそれだけなのだ。

 

「まだだ《Geo Impact》!!」

 

 壁とも呼ぶべき土塊を体躯で割り、幾度とも知れぬ流動を拳に集める。

 魔力収束、そして圧縮、最早それも慣れた作業。

 拳に重みを感じる事も、半端な収束による威力減衰も、今や欠片も存在しない。

 此処に来て彼の魔法(ジオ・インパクト)は、より精巧に、より完璧に近付いていた。

 

《Tri Shield》

 

 それを阻んだのは、デバイスのオート起動による防御陣。

 ギリギリのギリギリで直撃を阻止した最高のアシスト、堅牢な盾は少年の攻撃を完全に防いだ。

 

「まだ、だ……《Doesn't end still》!!」

 

 だが喰らい付く拳は決して退かず、寧ろ徐々に押し始める。

 シールドの維持にリソースを振らなければ、一瞬でも気を抜いてしまえば簡単に崩されてしまう程の威力。

 力尽くでガリガリと削られていく盾の出力を引き上げ、地を踏み締めて足場を固定する。

 僅かながら魔力を削られていくが、継戦に支障無し、彼女はそれで大丈夫だと判断し防御に徹する。

 事実、彼女のシールドが完全に破られる様子は一切見られず、聖の攻撃が届く気配は一向に訪れない。

 盾の強化だけで対処出来る程度なのだから、当然と言えば当然で、そして同時に今こそが――

 

「そこだっ《Repulser Shift》!!」

 

 ――聖の狙っていた、絶好のタイミングだった。

 攻撃から一転、踏み込みと同時の瞬間加速によって背後へ回り、少女の顔面を蹴り上げる。

 

「――っ!?」

 

 近接魔導師としての性か、戦斧の柄を用いてその一撃をギリギリ押さえた。

 

 しかし彼の攻撃は止まらない。

 逸らされた足を素早く引き逆足で回し蹴り、再びデバイスによって受け止められたその一撃に感慨を抱く間も無く、今度はその無骨な戦斧を掴んで真上へ飛び上がった。

 そのまま側頭部を足で払う――――が、デバイスを軸に立ち位置を入れ替えられ蹴撃は空を切る。

 ならばと今度は着地と同時にワンステップで接近し肘打ち、だが柄によってそれは阻まれた。

 

「まだ終わるか《It's a moment of truth now》!!」

 

 数度の攻めを抑えられて尚、彼の追撃の手は緩まず、寧ろ苛烈さは加速する一方だった。

 拳、腕、肘、肩、膝、脚、足、四肢のみならず頭、全身のあらゆる部位を巧みに操り的確な攻撃を繰り出している。

 まさに打撃の嵐、荒れ狂う暴風を以ってして少女へ挑む姿だった。

 

「くっ……!?」

 

 だがカリスが脅威に感じたのはソコではなく、彼が繰り出す連撃に隙が無い点だった。

 健常な肉体であろうと、攻撃行動には必ず予備動作や次の為の切り替えを必要とする。

 しかし今の聖はその2つが限りなくゼロに、文字通りの間断無い連撃を行使していた。

 彼の肉体がいくら数年の鍛錬を重ねたとしても、その事実は簡単に覆るものではない。

 しなやかな筋肉と類稀なるバランス力では説明し切れない、それは――――たった1つの意地だった。

 

「はぁぁぁ《It's quicker》!!」

 

 負けたくない。

 今この時だけは、たとえ誰であっても負ける訳にはいかないのだと、発される裂帛の気合が示していた。

 それが苦でない筈は無く、一撃一撃を繰り返す毎に激痛が容赦無く全身を駆け巡る。

 だが漏れそうになる声を奥歯で噛み砕き、より速く、より強く、追撃の手はカリスを襲う。

 

 正しく今の瑞代聖に出来る、最大限の無謀な戦い方だ。

 

 

 

 

 

 その連撃に対するカリスは、眼前の状況に手を拱いていた。

 放たれる一撃一撃に込められる魔力はジオ・インパクト程ではないが、直撃を貰えば少なからずダメージを受ける。

 乱撃の狭間を縫うように回避と防御を続けているが、このままではジリ貧になる事は目に見えていた。

 だが反撃に転じようにも、頼もしい筈の相棒(デバイス)のスケールがネックになり思うように動けない。

 密着状態での戦闘、自分の間合いより内側であるが故に動き難く、シールドを張る事も儘ならず、引き剥がして距離を置こうにも全く離れようとはしない。

 懐から一歩も退かず、何が何でも喰らい付くその姿勢は野獣にも似た執念だ。

 

 彼女からすれば今の彼の何処に、そこまでの力が残っているのか甚だ疑問だった。

 最初の攻撃で一度は沈んだ筈の体が、如何にしてこれ程までに立ち続けていられるのか。

 お世辞にも万全とは言えない姿で、何故こうまで立ち向かい続けるのか。

 冷静に理論的な思考で導き出そうにも、その意は到底推し量る事は出来ない。

 

 

 

「ハラオウン、お前は唯、他の誰かが何よりも大切だっただけだ。俺が家族を想うように、お前も……《Ms.Fate,Other someone were only very important for you.As I valued the family, the same might be said of you.》」

 

 乱打の応酬の最中、視界に居ない、しかし誰よりも強く想う少女へ彼は伝える。

 自らの知る彼女、今までその目で見詰めてきたフェイトという少女の、人としての姿を……。

 

「それが悪い訳が無い。誰かを途方も無く大切に想う事は、何よりも尊い人としての心だ《It is not bad.It is the heart as a person from what for there to be also no method of a way and to regard someone as important.》」

 

 額から流れる鮮血を気にも留めず、呼吸すら妨げる激痛に耐えながら、只管に戦い続ける理由は唯一つ。

 1人の少女の存在を、誰よりも強く心に刻む為に。

 他人から、自分から、『偽物』というレッテルを貼り付けてしまった少女の本当の姿を、その瞳に焼き付ける為に……。

 

「お前はお前だけのものだ。生きている意味も、存在する理由も、誰かに押し付けられる謂れは無い《You belong only to you.There is no necessity that a valid meaning and the existing reason are forced on someone.》」

 

 最初から全てを持っている人間は存在しない。

 だからこそ人は考える力と、何かに想いを馳せる心を携えて、人生という道程を一歩ずつ進んでいくのだ。

 そうして一つ一つを理解し、自分と言うものを少しずつ理解していく。

 それは自分自身だけが歩める道であって、決して他人が見付けるものでも、押し付けるものでもない。

 

「だから、俺は守る《Therefore, I defend》」

 

 その道を歩む少女を、力の限り守るのだ。

 途中で傷付く事もあるだろう、進むべき道を見失いそうになる事もあるだろう。

 それでも彼女なら進めると信じている、だから自分はその背中を守るのだ。

 彼女の歩みを阻むどのような者からも、どのような出来事からも、必ず守り切ってみせる。

 

 ――――それが彼の至った、たった一つの結論(こたえ)

 

「くっ!!」

 

 疾風怒濤の猛攻は更に続く。

 ワンステップで顎への突き上げを避けたカリスに、聖はすぐさま張り付き逆手の掌底を突き刺す。

 地を砕く踏み込みによって生まれる力、それを乗せた一撃は、しかし寸での所でデバイスの柄に阻まれる。

 だが更に叩き付けるように上腕を押し込み、力尽くで堅牢な防御を崩しに掛かった。

 対するカリスは当然の如く耐え、その場に止まる為に地に突き刺すように両足を踏み締める。

 

 互いの角をぶつけ合う猛牛にも似た、至極単純で、それでいて苛烈なまでの力比べ。

 自力では聖が優勢だが、魔法が付随すればカリスが上を行くのは道理だ。

 

 肉薄する鍔迫り合い、勝ったのは例に漏れず薄青髪の少女だった。

 

 

「スロウズ……」

《Steel――――(スティール)》

 

 半ば無理矢理弾き出された聖を尻目に、此処に来て限りなくゼロだった距離が開き、カリスは勝機を見出した。

 すぐさま戦斧に命令を下し一振り払い、軽く膝を曲げながら追撃体勢へ移る。

 間合いは充分、数秒あれば接敵可能。

 光無き瞳に彼を収めて、少女はジリと足裏で地を噛み締める。

 

「……」

 

 奴が来る、彼の目に映った世界がそれを如何無く告げていた。

 即座に理解し、力尽くで弾かれた体を翻し体勢を整えるがすぐには止まらない。

 更に着地と同時に手を付いて制動を掛ける。

 

 視線の先には獲物を見据える敵の姿、そして――――

 

《Strike(ストライク)》

 

 此方へと一直線に飛び出す弾丸。

 決して目に見えない速さではないが、接触まで時間は掛からない。

 狙いは違わず聖へ、大振りの戦斧が鈍く光る。

 

「来るか《Come on》」

 

 万が一にも彼女が外す可能性が無いのは、聖の体勢から鑑みて明らか。

 回避の余裕は無い、無理に切り返そうとも一歩目を仕損じる。

 ならば、狙われた彼に出来る事は……

 

「いくぞ――《Set》」

 

 真っ向から、立ち向かうだけだった。

 

《Magic reaction from underground(地中から魔力反応)》

「何っ……!?」

 

 打倒への一歩、接近する最中にパートナーの警告が耳を突いた。

 だが既に、彼女は眼前にまで迫っている。

 

 

 否、迫ってしまった。

 

「――吹き飛べ《Geo Vortex(ジオ・ヴォルテックス)》!!」

 

 発されたのは鼓膜を貫く爆音。

 そしてそれに続く土石の上昇流、いや、空間を呑み込む分厚い大津波。

 頭上を容易く飛び越え、天空すらも覆い隠してしまう巨壁が、カリスの視界全てを埋め尽くした。

 

「……っ」

 

 疾走する足を止め急停止。

 本来ならば突っ切ってでも進まなければならない好機の筈が、しかし不用意に飛び込むのも危険だと、刹那の思考で見極めた。

 その意味では、この状況に於いてもカリスは冷静を保っている。

 不意打ち気味に放たれた魔法に対しても、既に対処の為の思考に切り替え――――そして気付いた。

 この状況に見覚えがあると……。

 

「っ、来る」

 

 意表を突く視覚外からの一撃。

 更に此方の視界を阻み、次の動きを把握させない障害壁。

 脳裏を掠めるのは、先程のジオ・インパクトによって発生した砂煙。

 もしこれがあの時と同じならば、この壁の先に居るのは、この後に続くのは間違いなく……

 

「堕ちろ《Geo Impact――」

 

 その確信にも似た予想を裏切らず、降り注ぐ雪崩れを貫いた1人の姿。

 振り被った右手に圧縮した魔力を伴い一直線に迫る。

 だが、今回は彼女の予測の方が速かった。

 

《Tri Shield》

 

 最速を以って展開される防御。

 充分な魔力によって堅牢な壁と化し、自身を狙う一撃を迎え撃った。

 

 今まで一度も抜かれなかったシールド。

 相手がどれだけ魔力を込めようとも、此方が維持にリソースを振り続ければ凌げる。

 暴風の如き乱打、虚を突く魔法行使、それによりペースを乱されてきたがそれも漸く終わりだ。

 気力のみで立ち上がるその身に一撃を、全てを根こそぎ奪い取る暴力を見舞う。

 

 この状況で何よりも最良の、そして最大限の選択をした少女は、これより紡がれるであろう数手先の未来を脳裏でシミュレートしながら

 

 

「――果てまで《-Forte-》!!」

 

 振り抜かれた拳と、激突する盾に向けた双眸を見開いた。

 魔力によって強度を水増しされた筈のシールドが、目の前でひび割れていった(・・・・・・・・)のだ。

 

「な、ぜっ!?」

 

 困惑に浸る間も無く、盾は瓦解の一途を辿る。

 何故このような事が起こるのか、その答えに至るのはすぐだった。

 

「バリア、ブレイクっ……」

 

 生成プログラムに割り込みを掛け、そのバリアに干渉し破壊する魔法――――『バリアブレイク』。

 確かにそれならば、防御の強度に関係無く破壊する事は可能だ。

 元よりソレは、その為に存在する魔法なのだから。

 

「砕けろっ《Break down》!!」

 

 無情な宣告はシールドの崩壊を加速させる。

 表面を走る筋は蜘蛛の巣のように範囲を広げ、火花を散らし、周囲に撃音を響かせる。

 最早、拮抗という刹那すら残されていない。

 

 そして、鉄壁を誇った筈の城塞(シールド)は、拳の一振りにてその悉くを破壊された。

 

「くっ……!!」

 

 破壊の余波によって体を押し退けられ、カリスは大きく仰け反ってしまう。

 

 瞬間、彼女は完全に無防備となった。

 それは戦闘に於ける決定的な隙、この状況で聖がそれを見逃す筈は無い。

 ――――いや、見逃してはならない。

 即座に体勢を整え前へ、次の魔法を選択し、がら空きとなったそこへ向かって一歩を踏み出す。

 

「これで……《Geo》」

 

 右腕に巻き付く環状の魔法陣、掌に携える圧縮流動の魔力を強く握り締め、深く大きく振り被る。

 全霊を込めた、その自身最高の一撃は――――――

 

 

 

 

 

 

 

 次の一歩を踏み外した事で、完全な不発に終わった。

 

「……なっ《What》!?」

 

 この時初めて、彼の顔が驚愕に染まった。

 反射的に体勢を立て直そうとしたが、あまりに突然の出来事で、拳に収束していた筈の魔力は一瞬で霧散。

 

 そしてその刹那が、この戦いの決定的な瞬間となった。

 

《Metal Strike(メタル・ストライク)》

 

 その音声が耳を抜けた時、腹部に広がる激痛と浮遊感。

 焼き鏝を押し当てたような感覚に、聖は声も無く黒と金の目を見開いた。

 知らず体は宙に浮かび、軽やかに、無抵抗に、埃のように吹き飛ばされる。

 最早何度目か分からない鋼の一撃は、彼の最大のチャンスをいとも容易く打ち砕くに至った。

 

「……」

 

 土の上を無様に転げ回る醜態に、カリスは構えを解かずに徐々に接近を試みる。

 既に死に損ないで半死半生を体現する聖だが、未だに警戒を続けるのは先程を振り返っての事だ。

 

 何度もジオ・インパクトを打ち続け、尚且つ、敢えて先程と同じ状況を作った理由。

 この2つは間違いなくあの一撃、バリアブレイクの為の布石だった。

 シールドならば確実に防げるという意識を刷り込み、カリスの行動選択を無意識に操作し、最も効果的なタイミングでバリアブレイクを叩き込む。

 切り札(バリアブレイク)を此処まで温存したのも、恐らく追い討ちの一撃を確実に成功させる為だろう。

 結果的に失敗に終わったが、彼が常態であれば間違いなく状況を覆し得る鉄拳を放っていた。

 

「……これで、終わり」

 

 それは宣言。

 砂埃が舞う視線の先、倒れまいと膝を地に刺す少年へ向けられた、静かで無情な勧告だった。

 痛みと限界に震え挫けそうな体を、意志だけで奮い立たせるその姿はあまりにも弱々しい。

 まともに動かない足は膝で支えるのが精々で、両腕は神経が切り離されたように機能せず。

 最後に残ったのは唯の意地、それすらも全身を小刻みに震えさせるだけ……いや、既に痙攣の域に達している。

 どれだけ意地を張ろうと、それ以上は在り得なかった。

 

「……っは、づっ」

 

 それでも、彼は立ち上がろうとする事を止めない。

 歯を砕かんばかりに食い縛り、動け動けと肉体に呪詛を送る。

 

「ぐっ……がぁっ……!!」

『無駄だ。君は既に、いや、奮い立った瞬間から限界だったのだよ』

「つっ、はぁっ……!!」

 

 耳を突く合成音(ざつおん)では、聖の気概は一点も揺らがない。

 静かに、着実に近付く足音よりも、今優先するべきは立ち上がる事だけ。

 全てはそれからだと、満身創痍(キズだらけ)の体を酷使して、動かない自身を否定し続けていた。

 

 その姿に、一つの影が落ちる。

 

「無駄……」

 

 酷く冷徹な響きだった。

 人間に可能なのかと疑いたくなる程の、込められたモノの無い空っぽの音色。

 何も無いという空虚さは、常人ならば末端の神経まで底冷えさせる恐怖を植え付ける。

 

「守っ、るっ……!!」

 

 それを、彼は喉から搾り出すような声で切り捨てた。

 

「お前、等……からも、アイツを……キズ、付ける、全て……から、もっ…………」

 

 恐らく本人も分かっているだろう。

 死に体を晒し守護を謳うなど、滑稽以外の何物でも無いのだと。

 分かっていて、心の底から否応無く理解していて、それでも止める事をしなかった。

 何故なら、それこそが彼が此処に立つ、一点の曇りも無い理由だったから……。

 

「それっ、が……俺、の…………誓い……!!」

 

 依然として立ち上がるには至らない肢体。

 どれだけの決意を胸に秘めようと、彼自身が既に終わりを迎えているのだ。

 掠れた声をいくら張り上げても誰にも届く事は無い。

 カリスの言葉通り、その意地は無駄そのものでしかなかった。

 

 

 少女を傷付けようとする害悪全てから、全霊を以って守ると誓った少年。

 その最後はあまりにも呆気無く、静かに幕を降ろすに至った……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《Haken Slash(ハーケン・スラッシュ)》

 

 戦斧を構えた少女が見たものは、距離をまるで感じさせない接近。

 本能でその場から飛び退くと、数瞬後にそこを金色の刃が通り抜けた。

 

「……っ!?」

 

 構えを直したカリスの目に映ったものは、1人の少女の姿。

 先程の刃と同じ金色に輝く長い髪、漆黒のバリアジャケットに背ではためく純白のマント。

 

 だが何よりも目を引いたのは、静かに燃え上がる炎の如き双眸。

 淀みの一切を捨てた、強く優しい光を湛えた赤の瞳だった。

 

「……フェイト・テスタロッサ・ハラオウン」

 

 そう、それは一度は自我を手放した少女。

 自らの歪さに気付き、全てから目を背き、あらゆるものから逃げた筈の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~Interlude out & side:Fate~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 凄く不思議な気分だった。

 先程まで奈落の底に落ち込んでいた筈の自分が、まるで上昇気流に乗ったかのように軽やかに浮上している。

 全く動けなかった筈の体が、何よりも動く事を求めていた。

 今此処に立つ事だけを、狂おしい程に、途方も無く求めていた。

 

 理由は明白。

 そう、誰に言われるでもなく自分で分かっていた。

 

「私は、二度と目を背けない」

 

 瞳に焼き付いて離れないのは、彼の姿。

 絶対的な力の差を、絶望的な状態の差を分かっていて、一度でも、一瞬でも下を向こうとしなかった少年。

 その背中が、その声が、強く、強く訴えていた。

 

「私は、まだ終われない」

 

 ――――私を守ると。

 無数の激痛に苛まれながら、動かぬ体を無理矢理引き摺って、そして只管に抗い続けた。

 痛くない筈なんて無い、辛くない筈なんて……もっと無い。

 その姿が自分の所為だと分かっていたから、傷付いていく体から何度も目を背けたくなって、でもそんな事は出来なくて……涙が溢れた。

 

「私は、歩き続ける」

 

 だって、それでも戦い続けた理由はきっと、その想いが何よりも大切で、その誓いが何よりも信じられるものだと彼自身が理解していたから。

 

 私達はまだ終わらない、此処は決して立ち止まる場所じゃない。

 これからも前を向いて、未来へと真っ直ぐに歩いていける。

 

「そして、私は――――」

 

 そんな確証なんて何処にも無い夢物語を、一瞬の迷いも、一片の躊躇いも、一分の後悔も無く、心の底から信じている。

 私を、フェイトという1人の人間を、最後の最後まで信じてくれている。

 

 搾り出すように吐き出された、聖の誓い。

 それがどんなにか細く弱々しくても、私の心には確かに届いた。

 だから私は、再び相棒(バルディッシュ)を手にしたんだ。

 

 だから……

 

「――――聖と、皆と一緒に、今とこれからを生きます!!」

 

 強く宣言する、1人の人間として。

 今まで心に残り続けた『アリシアの偽物である自分』を拭って、大切な人が教えてくれた『アリシアの双子である自分』を認める為に……。

 

 

 ねぇ、アリシア……。

 闇の書の中で見たあの夢のように、私達は普通の姉妹で居てもいいよね?

 私はアリシアの妹として、これからを生きてもいいよね?

 

 

 声にならない呟き、決して返ってくる事の無い無意味な問い。

 それでも、心の何処かで彼女の声を聴いた気がする。

 

 

 

――当たり前だよ、私はフェイトのお姉ちゃんなんだから――

 

 

 

 

 

 

 

 

「バルディッシュ」

《Zamber Form(ザンバーフォーム)》

 

 手にした相棒が私の言葉に呼応し、その形を変えていく。

 大鎌から大剣へと、魔力で構成された刀身に紫電が奔る。

 目の前で軽く一振りして感触を確かめる…………うん、大丈夫。

 

 私は戦える、前を向いて歩く事が出来る。

 

「フェイトぉぉぉぉ!!」

 

 その時、背中に声が掛けられた。

 とても大きな、そして何処か幼さを感じさせる声。

 声の主は考えるまでもなく分かっている。

 今の今まで計り知れない心配を掛けてしまった、私の大切なパートナーであり家族。

 

「アルフ」

「フェイト、もう……」

 

 背中越しに聴こえる声は、まさしくソレだった。

 当然と言えば当然だけど、だからこそ自分の犯した事の大きさが分かってしまう。

 知らず、バルディッシュを握る手に力が篭もる。

 

「うん、大丈夫だよ」

 

 それでも、アルフの方に振り向く事は出来ない。

 まだ私には、前を向いてやるべき事が残っているから。

 

「だから、聖をお願い」

「あ、あぁ……分かったよ」

 

 だから今は大切な人を、私の為に戦い続けた彼を、アルフに任せる。

 あの子ならきっと聖を守れるから心配は無い。

 

 

 

 さぁ、始めよう。

 私が再び歩き出す為に、皆と一緒に生きていく為に……。

 私が、フェイトらしく在る為に……。

 目の前の現実から、自分自身を逸らす訳にはいかない。

 

「行くよ、バルディッシュ……!!」

《Yes,sir》

 

 

 

 

 私の意志に相棒が応え、戦いは音も無く始まった。

 初速にして最速、地を蹴った瞬間に大気の壁を突き破り接近。

 即座に背後へ回り込んで、薙ぐように紫電の刃を横一閃に振るう。

 

「くっ……」

 

 鋭い初撃は寸での所で受け止められる。

 しかし、苦しげな声が漏らしたのは相手の方だ。

 それを見逃す訳にはいかない。

 

「はぁぁっ!!」

 

 有りっ丈の力を両腕に込め、防御を崩しに掛かる。

 元来パワーで押し切るタイプではないけれど、虚を突いた先手でなら私に分がある。

 程無くカリスは押さえ切れなくなり、背後へ飛び退いて距離を取った。

 同時に、私も魔法を発動。

 

《Plasma lancer(プラズマ・ランサー)》

 

 彼女の行動は予測済み、追い縋るように形成したスフィアを発射。

 一直線に突き進む金色の群れは、着弾の前に少女のシールドによって遮られる。

 10基に及ぶ弾体にも全く揺るがない防御力、それは素直に賞賛すべき事だろう。

 

 でも、それだけじゃ終わらない。

 

《comes back(背後注意)》

「っ、遠隔発生……!?」

 

 私は既に2基、その無防備な背を打ち抜く槍を伏せていた。

 いつだったか、なのはと戦った時にも使った戦法。

 カリス、君はどう切り抜ける?

 

「ふっ……!!」

 

 思考は一瞬、躊躇い無く黒衣は空へと舞い上がる。

 それにより対象を失ったランサーは、すぐに直角機動を行い敵を追尾。

 目で追える直線機動の2基が、迎撃体勢を整えた彼女に軽く打ち砕かれた。

 

 

 ――その刹那が、私の勝機。

 

《Sonic Move(ソニック・ムーブ)》

 

 地を踏み締めた次の瞬間、私は宙に舞うカリスの背後に回った。

 

「はぁっ!!」

 

 先程よりも速く、振り向く暇さえ与えずその背中を切り払う。

 抵抗の無い肢体は容易く吹き飛び、土煙と共に地上へ押し戻された。

 

「バルディッシュ」

《Yes,sir》

 

 ソレを目で捉えながら、私もすぐに後を追う。

 

 此処までは理想的な展開だけど、気を抜けば相手はそこを突く抜け目の無さを持っている。

 それは聖の戦いで、彼の傷付く姿で嫌という程目に焼きついていた。

 私の目的は彼女を退ける事じゃなく、彼女を『確保する事』。

 それによって、これからの聖への脅威を無くす所にある。

 だから、絶対に逃がしちゃいけない……!!

 

「このまま、一気に」

 

 接近の中に見た、煙の先に立つカリスの姿。

 戦斧の柄を最大限長く持ち、腰を捻り一歩前に出す構え。

 此方に真っ直ぐ向けられる双眸、そして彼女の足元に展開する若葉色のベルカ魔法陣は、迎撃体勢が整えられた証拠だ。

 つまり――

 

「行くよ、バルディッシュ!!」

 

 ――この一撃で勝負を決める。

 即座に接近を止めた私は、ザンバーを強く握り締めて振りかぶる。

 相棒である彼は何も返さず、答えとばかりに撃鉄を3回起こした。

 そう、バルディッシュも分かっている、これが最後のぶつかり合いだって事を……。

 足元に展開する金色の魔法陣を見たカリスは、刹那、地面に弾かれたように飛び上がった。

 

「剛撃……」

 

 瞬く間に距離を詰める姿に、私も全霊を以って一撃を放つ。

 

「はぁぁっ!!」

 

 空を払う斬撃が発するのは純粋な衝撃波。

 物理破壊力を備えたその一撃に、次は彼女が正面から立ち向かう。

 

《Diamond Strike(ダイアモンド・ストライク)》

 

 捻り上げた全身の力を解き放ち、鋭く、重く、頑強な一閃を放った。

 ぶつかり合う2つの魔法は、大気を爆ぜながら鎬を削り合う。

 力はほぼ互角、凄まじい拮抗に一瞬の気も許せない。

 

 でも、私はこれだけじゃ終わらない!!

 

「撃ち抜け、雷神!!」

 

 あらん限りの力を振り絞り、バルディッシュを高く上段に構える。

 掲げた刃に激しく奔る紫電。

 戦いの最後の一撃にして、この魔法の真の一撃。

 

 ――――そして私の、全力全開!!

 

《Jet Zamber(ジェット・ザンバー)》

 

 全力で振り下ろした魔力刃が、そのサイズを何倍にも膨れ上がらせる。

 長大な金色の大剣は更に紫電を奔らせ、鎬を削る暴風圏を貫くように伸びていく。

 

 そして眼下の彼女(カリス)へ、真っ直ぐに落ちていった。

 

 

 

 

 

「……あ」

 

 迸る雷鳴を携えた光剣の一閃は、間断無く標的を撃ち抜いた。

 数瞬の後、宙へ投げ出される少女の姿。

 純粋魔力攻撃による魔力値の枯渇と、先の魔法の衝撃によって意識が飛んだのだろう。

 身に纏う黒衣の至る所にある傷と、体を這う電撃の痕の存在が、それを肯定していた。

 

「カリスっ!!」

 

 でもそれを見送っている訳にはいかない。

 意識の無い状態での落下は、空戦魔導師にとって珍しくないアクシデントだ。

 すぐさま落下する姿を追って、地面へ叩き付けられる前にその体を抱き止める。

 

「さ、流石にやり過ぎちゃった……かな?」

《Will you not regret(後悔は無いのでしょう)?》

「……うん、そうだね」

 

 擦り切れた黒衣の中で、静かに呼吸を繰り返す少女に目を向ける。

 あれだけの魔法が直撃したんだから、この結果は当然と言えば当然だ。

 誰が見ても過剰な攻勢だったと思う。

 だったら何故、私は此処まで全力を出して戦ったのか。

 それは……

 

「これが、私の選んだ道だから」

 

 自分自身が、何よりも求めていたから。

 前を向きたい、まだ終わりたくない、これからも皆と一緒に居たい。

 

 

 

 ――――聖の、傍に居たい。

 

 

 

 その想いがあったから、その想いが本物だって証明したかったから、私は戦った。

 それが私、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンが出来る未来へ踏み出した一歩。

 自分自身を認める為の、生への執着。

 

「フェイトぉ!!」

「アルフ……」

 

 叫ぶような呼び掛けに視線を動かせば、そこには半身とも言える大切な家族の姿。

 突然居なくなってしまったから、凄く心配させたと思う。

 だからまずは、あの子に「ゴメン」って謝ろう。

 

 

 

 そして彼女に支えられながら、私を真っ直ぐに見詰めてくれる大切な人。

 立ち上がれない位までボロボロになって、それでも尚、私の姿を見守ってくれた。

 君にも伝えよう、心の底から「ありがとう」と。

 

 それと

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――これからも、一緒に居てくれますか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




たとえ力及ばずとも、その姿は何よりも強さに溢れていた。
崩れ落ちた少女の腕を引き上げ、奮い立たせるまでに……。

どうも、おはこんばんちはです( ・ω・)ノシ
フェイト編№Ⅵをお読み下さり、ありがとうございます。

今回のタイトル『猛き流動、蘇る雷霆』は別名『アラウンド・フォース&リバイバル・ライトニング』です(特に意味は無し
個人的に今までで一番気に入ってるタイトルだったりします。
それと今回の聖の戦闘に挿入歌を入れるとしたら、やっぱり奈々さんの『stay gold』ですね。
ついでにフェイトの戦闘には『Pray』が雰囲気に合うのかなぁ……(´・∀・)

さて、一度は倒れ伏した聖の怒涛の反撃、それが決定打とはなり得ませんでしたが、フェイトを奮い立たせる切っ掛けとなりました。
たとえ同じ細胞から生み出されようと、同じ記憶を受け継がれようと、決して同一人物にはならない。
それが聖の出した結論であり、それを伝える為に身を挺して戦う必要がありました。
まぁ此処までの見解は、結局は読者の方々がどう受け取るかの問題なのでこれ以上は不毛ですね。
そして聖の身に起きた現象、黒衣は『共鳴』(ハーモニクス)と言っていましたが、一体どういったものなのかは語られる事はありませんでした。
台詞の端々からヒントらしきものは出ているんですけどね(´・∀・)興奮し過ぎて大サービス
この謎が明かされるのは、いつになる事やら……。

何はともあれ、次回はフェイト編最終話となります。
意地を通した少年と、彼を信じて前へ進むと決めた少女の、一つの終幕です。
唯、お伝えしなければならない事がありまして、最終話は必ず『ラブラブな2人』になる訳ではないという事です。
なのは編は言わば、我慢し続けた少女のワガママを解き放ったが故に、デレへ振り切れたので。
ですが今回のフェイト編では、なのは編と違う点がそれなりにあるので、決して同じ道を辿る事は無いのです。
特にフェイト編の聖は、背負わなければいけない『重り』があるので……。
その点を加味して、2人のこれからがどうなっていくのか……というのがエンディングです。
別に無理矢理ビターなエンドを作るという訳ではないですし、困難を乗り越えた2人には可能な限りハッピーなエンディングを迎えて貰うつもりです。
その点に関してはきっと大丈夫です(;・ω・)

今回はこれにて以上となります。
感想や意見、タグ関連やその他諸々は遠慮無くドシドシ書き込んで下さい。
皆さんからのお声が原動力なので、是非、是非、是非宜しくお願いします!!( ;Д;)
では、失礼します( ・ω・)ノシ




今回のストーリーは、以前掲載時には投稿出来なかったものです。
最終更新であるフェイト編№Ⅴは2010年2月、つまり4年越しの最新話となりました。
今までこの話を待ち続けていて下さった方々には、本当に申し訳無い気持ちで一杯です。
これからも未熟な身ではありますが、見守り続けて頂ければこれ幸いです。
宜しくお願いしますm(_ _)m

…………あ、感想もあると非常に嬉しいです!( ゚∀゚)貰えるとヒャッハー!!ってなります、マジで。
それと今後の更新等を活動報告でお知らせする為にも、お気に入りユーザーに入れて貰えると助かります。



『リリカルなのはINNOCENT』の新しいバトルイベ、メインはすずかですって(・´ω・)
流石にHRは狙えませんが、ウェディングラベンダーは頑張りたいと思います(`・ω・´)
それに来週はPS3『アルノサージュ』の発売日ですね、忙しくなりそうだ……。

まぁ、だから早めに更新したのですが……。
なのセントのイベまでに、フェイト編最終話を纏め切れればいいなぁ(´・∀・)



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