セシリアの挑発のせいで、太一が今までのストレスとかを爆発させて一週間が経った。
この一週間、太一は楯無と、大輔は簪と、一夏は箒とマンツーマンで指導を受けていた。もっとも、太一と大輔たちはお互いのパートナーも専用機を持っている事から、実践的な訓練を行っていたが、専用機が試合当日にもらえる一夏は箒と共にISを使わない剣道での特訓で一夏の勘を取り戻していた。
最初はISを使わない特訓に文句を言っていた一夏だったが、太一からISは手足の延長線に近いから生身の動きはISの動きの練習になるし、大切なイメージの特訓にもなると聞き、やる気を倍増しているのだった。
最初は太一を頼ろうとした一夏と頼られていた太一に不機嫌さをあらわにした箒だったが、太一の勧めで一夏の講師役になり、一夏と一緒に過ごせる時間を作ってくれた太一とは名前で呼び合うくらいの仲になっているのだった。
そして今、太一と大輔、一夏の三人と付き添いの箒は第3アリーナのピットに向かっていた。
「つーかさ、何で今から試合する俺と太一さんが同じピットに向かうんっすかね?」
「さあな。俺も知らないさ。まあ、何か考えでもあんだろ」
「てか、何で俺もなんだ?」
「太一さんは別としてお前ら、落ち着くことができんのか?」
それぞれの考えを口にしながらピットに入っていく四人。
入ってすぐに目に入ったのは、白いISだった。
「む、来たか。織斑、八神、本宮」
「やあ、久しぶりと初めましての言葉を贈ろうか」
いきなり目の前に入ったISに固まった一同だったが、中にいた千冬と一人の男に声をかけられてようやく起動した。
「ち、千冬姉!?このISは?ってか、この男の人誰!?」
「ゲンナイさん!?あんた、何でここにいんだよ?」
「そうっすよ!?不法侵入でもしたんすか!!?」
「はは、落ち着きたまえ。まずは、織斑くん。初めまして。私はゲンナイ。無国籍IS研究企業、ホメオスタシスの社長をやっている者だ」
ゲンナイの登場に驚きを隠せない三人だったが、太一と大輔はゲンナイがISの研究をやっていたことから、このISもゲンナイが持ってきたものだろうとあたりをつけた。
「今日は君の専用機を持ってきたんだ。この白いISがそうだよ」
「これが…俺のIS」
「そう。名前は
「えっ、ゲンナイさんの助手っすか!?」
「ゲンナイさんの助手といえば…」
自身の相棒になるIS、白式に触れる一夏。
そんな中、ゲンナイが両手を広げまるでどこかの悪の科学者のポーズをとりながら、助手を紹介すると言った。
大輔と太一の頭に浮かんだのは、以前会う機会があったゲンナイとまったく同じ姿の仲間たちだった。あれは、いくらなんでも混乱するのでは?と疑問に思っていた。そんな中、大輔たちが入った扉の反対側が開いた。
「君が織斑くんですね。初めまして。僕は、ゲンナイさんの助手を勤める」
「光子郎!?」「光子郎さん!?」
「泉光子郎です。………太一さん、大輔くん。勝手に自己紹介に割り込むのはどうかと思いますよ」
扉から現れたは、太一と大輔が(特に太一は)よく知る人物。太一と共にデジタルワールドを救い、何度も大輔たちのサポートしてくれた泉光子郎だった。
「光子郎くんは、本来なら高校三年生だが、彼の能力をかった私たちがスカウトして、ホメオスタシスの一員に加わってくれているんだ」
「僕自身、ISに興味がありましたから、スカウトを受けたんです。知識に関しては、ホメオスタシスで学んだのと、僕のチャット仲間にいる『一人アリスさん』から教えてもらった事があるので、役に立てると思います」
太一と大輔は、いつの間にか職についていた光子郎に唖然とし、一夏と箒は自身たちと二つしか違わないのにIS研究企業の社長の助手という上役についている光子郎に驚愕するのだった。
ただ、この中で千冬が光子郎の言った『一人アリス』という言葉にとある科学者を思いだし、若干頭を抱えているのだった。
「さて!固まってるところ悪いけど、織斑くんにはこのままフィッテングとファーストシフトをしてもらいたい。その間に、太一くんと大輔くんは試合を行なってもらうから、別のピットに移動してくれ」
「ゲンナイさん、何故あなたが指揮っているのだ。そういうわけだ、八神と本宮は別のピットに移動してもらう。八神は山田先生に、本宮は布仏に案内してもらえ。二人とも、既にピットの外で待っている」
「「は、はい」」
まだ驚きから抜けれてないのか、生返事で返答する二人。
そんな二人の意識を呼び戻すために、軽く出席簿で頭を叩く。すると、その衝撃で二人の意識は戻ってきて、そのままピットに移動するのだった。
「それでは織斑くん。さっそく白式に乗り込んでください。ISに背の預ける感じで乗り込むんです」
「わ、わかりました」
光子郎に促進され、さっそくISに乗り込む一夏。
装甲の開いていた白式は、一夏が乗り込む事で装甲が閉じるのだった。
ISに乗ったことで、ハイパーセンサーが起動し、一夏の視界が360度広がる。急に周囲が見えるようになった視界に、戸惑いはしたものの気持ちの悪さなどはなかった。
そんな時、急に一夏に頭痛が走った。
周囲にいる人物、特に箒からは心配する声をかけてくるが、頭痛のせいで何を言っているのか一夏にはわからなかった。
不意に、視界が一面真っ白な空間に変わる。
どこまでも広がる真っ白な空間。だが、自分の目の前に誰かがいた。
まばゆいほどの白い髪。それと同じワンピースを来た少女。
白い甲冑を身に纏い、フェイスガードで顔は見えないものの体つきで女性だとわかる女性。
そして、二人の間に立っている青いウロコに白い腹と爪、赤い翼に角、瞳を持つ小さな竜。
この二人と一匹を一夏は知らない。けれど、どこか懐かしさがある。
『---が---モンの?』
『そ-だよ』
『-して-た---のぱ-とな--すね』
二人と一匹の会話。
途切れとぎれで全て聞き取れていなかった。
『あ、--んだね』
『-え。ま-たー、---あい-しょう』
言葉を残し、消えてしまった二人。
残った竜は、一夏に近づいていった。
そして、はっきりと聞こえる声で一夏に言った。
『今はまだちゃんと会えないけど…いつか、きっと。ちゃんと会おうな、一夏』
一夏の意識がまた反転した。
* * * * *
その頃、本音の案内でピットについた大輔は、直ぐさまブイフォースを展開していた。
「っしゃ!行くぜ、ブイモン!」
『おう!いっちょ、カマしていこうぜ!』
「頑張ってね~。だいちゃ~ん!ブイブイ~!」
ピット内には、本音しかいなかったためブイモンも問題なく喋れている。
本音はパートナーデジモンはいないけれど、デジモンの存在を知っている。むしろ、更識家の者と更識家が信頼している者たちはデジモンについて知っているのだ。
何故か、USBメモリ片手に激励を送る本音から見送られ、カタパルトからアリーナに入るのだった。
アリーナ内には、既に太一が待機していた。
「太一さん!今日は負けませんよ!」
「それはこっちのセリフだ。楯無から直々に鍛えてもらったんだ。アイツの顔に泥を塗るわけにはいかないからな!」
『それに、僕だっているしね!』
「俺だって、簪ちゃんから教わったんだ。無様な真似だけは見せないぜ!」
『いっくぞ~、太一!アグモン!』
二人と二匹が話しているうちに、試合開始のカウントは進んでいく。
カウントが0になった瞬間、太一と大輔は同時に動き出した。
「でやああーーー!!」
「はぁっ!」
開始と同時に殴りかかってきた大輔と太一が左手で受け流し、直ぐさま右手で正拳突きを放つ。
けれど、流される事がわかっていた大輔は、直ぐさまブースターを噴かせ上昇。そのまま、体を縦に回転させ、勢いを乗せたかかと落としをはなつ。
太一はそれを、両腕でガードすると同時に、その場から下降することで勢いに逆らわずに受け流した。
その一瞬のできごとに、先ほどまで歓声をあげていたアリーナが静かになる。けれど、直ぐさままた歓声が上がるのだった。
「ブイモン!一気に行くぜ!」
『ああ!どれで行くだ?』
「ここは………勇気だ!デジメンタルアーップ!」
大輔が叫ぶと、大輔の目の前に炎の模様と角が生えた卵のような物、勇気のデジメンタルが現れる。
それは、前みたいに手で持てるサイズではなく、大輔と同じ大きさだった。
勇気のデジメンタルが光を放つと分離し、ブイフォースの各部にくっついていく。
「アーマーシフト!フレイドラフォーム!」
「げ…それが大輔のISの能力かよ…」
見た目がフレイドラモンになったブイフォース。
これは、ブイフォースの特殊換装型装甲デジメンタルの能力である。これには、勇気・友情・愛情・知識・純真・誠実・光・希望のデジメンタルがあり、8つのデジメンタルを変えながら臨機応変に対応することをコンセプトとされている。武装を変えるデジローダーと姿を変えるデジメンタルとはある意味、近い能力だ。
太一からしたら、勇気と友情、そして奇跡の姿を知っている。一度使ってからなくなった奇跡があるかは知らないが、残りの6つの姿は知らないため、対策が上手く取れないのだった。
「行きますよ!『ナックルファイア』!」
『ロックオン!いっけー!』
『太一!来るよ!』
「わかってる!このカードで行くぜ!『ベビーフレイム』!」
ブイモンによって、ロックオンされたナックルファイアは、それぞれが上、中央、下と三方向に別れて太一に迫ってくる。
速度はあるが、かわせないことがないため、回避するのだったが、3つの炎はまるで太一に引き寄せられるように旋回し、太一に向かっていく。
だが、距離が空いたことでカードを入れることが出来た。太一はアグモンのカードを挿入すると、アグモンの目が光と同時に口が開き砲身がのぞく。砲身から放たれた火球は、ナックルファイアの3つ内二つを迎撃するが、残された一つが太一に向かうする。
相殺された時に発生した煙でどうなったか見えないが、爆発音から最後の火球が当たったことがわかった。
『やったか!?』
「馬鹿!それは言うな!」
フラグをたてるブイモンに、大輔が叫ぶ。
すると、煙から勢いよく太一が飛び出してきた。
一瞬、驚くものの、再びナックルファイアを放つが、いつの間にか持っていた楯でナックルファイアが防がれてしまう。
「おら!」
「ぐっ…」
ナックルファイアを突破し、大輔に接近した太一はそのまま一瞬でトップスピードを超える
「くっ…太一さん、その楯ってまさか…」
「ああ。デジローダー、第2の姿。『テイルシールド』だ!」
太一が持っている楯は、デジローダーにテイルモンのカードを入れて変化した楯だ。テイルモンの顔を模した三角型の楯。ダイヤモンドよりも硬いデジタルワールドの金属クロンデジゾイドの模造品、擬似クロンデジゾイドで作られたいるため、そう簡単に壊れることがない鉄壁を誇る。
「知ってるか大輔。ハイパーセンサーはセンサーだけどよ、視界が360度見える様になれるって」
「?それが、どうしたんっすか」
「そして、テイルモンにはこんな技があるんだ!」
『いっくぞ~!キャッツアイ!』
『うわぁ!眩しい!』
目を閉じていたテイルシールドは、アグモンの言った技名と共にその目を開いた。
そこから見えるテイルモンの目が輝くと、強力な光を放っていた。
あまりの眩しさに目を覆う大輔だったが、光が止み視線を元に戻すと
「た、太一さんが増えたぁ!?」
『ど、どうなってんだこりゃ!?』
そこには、同じ姿勢の太一が何人も見えていた。
これが『キャッツアイ』の能力である。本来のキャッツアイは、その眼光で自分自身を攻撃させるものだ。けれど、このキャッツアイは強力な光で中枢神経系を刺激し、網膜に何人もの自分を投射させる能力なのだ。
「次!行くぞ!」
『うん!バードアロー!』
いくら姿を何人も見せれても、声までは増やせれないので、だいたいの方向を検討がついた。
けれど、正確な場所を見分ける前に太一は籠手に戻したデジローダーにバードラモンのカードを挿入する。
すると、今度はバードラモンを模した弓に変わるのだった。
バードアローから放たれる矢。けれど、その矢は、何人にも見える太一が一斉に放ってくる。そのため、どれが本物かわからず大輔に当たってしまう。
「くっそ…どうすりゃいいんだ!」
『大輔!ここは、知識のデジメンタルだ!』
「信じるぜ、ブイモン!デジメンタルアーップ!」
このままではラチがあかないと判断したブイモンは知識のデジメンタルに変えることを提案した。
大輔はブイモンを信じ、直ぐさまデジメンタルを変えるのだった。
勇気のデジメンタルは光とともに消失し、今度は黄土色の卵型のデジメンタル。知識のデジメンタルが出現する。知識のデジメンタルにより、放たれていた矢は防ぐことができ、そのまま矢が止んだ瞬間に光となって分離しブイフォースにくっついた。
「スライドアーマーシフト!ハニービーフォーム!」
まるで蜂の様な姿をしたブイフォースに変わっていた。
これは、ブイモンが知識の紋章で進化した姿ハニービーモンをモチーフにしている。
ハニービーモンは小柄で一撃の威力が小さい。だが、それを覆す程の大きな利点を持っている。それは…
「行くっすよ!」
「なっ!?消え…」
「へぶっ!?」
『えぇぇぇ!!?』
目にも止まらぬ高速移動!
なのだが、あまりの速さに大輔は太一を通り越し、そのままアリーナのシールドにぶつかってしまう。
いきなり消えたかと思うと、気づけばアリーナにぶつかっていた大輔にブイモンとクラスメイトたちが驚きの声を上げた。
だが、太一は一人冷や汗をかいていた。
なぜなら、さっきの大輔の動きがハイパーセンサーがあるにもかかわらず見えなかったからだ。もしも、この速さを大輔が使いこなせるようになれば、反応できない太一は大輔に圧倒されるだろう。
『………変えるか、大輔』
「………デジメンタルアーップ!スライドアーマーシフト!ライドラフォーム!」
「って、あぶねぇ!?」
初めて使ったハニービーフォームは、使いこなせない事を悟った大輔はすぐさま姿を変えた。
知識のデジメンタルは光になると、再びデジメンタルの形になると大輔に蹴り飛ばされた。蹴り飛ばされたデジメンタルは太一に向かっていくが、直ぐさま太一はかわすのだった。
今度は黒い瓢箪型のデジメンタル、友情のデジメンタルが出現し、光になりブイフォースにくっつく。
黒いアーマーに額にブレード、背には3本のブレードを持ったブイフォースライドラフォームに変化した。本来ライドラモンは、4足歩行の獣だが、ライドラフォームは2足歩行の人型になっている。
『大輔!残りSEが少ない!一気に決めるぞ!』
「ああ!行きますよ、太一さん!」
「正面対決か…受けて立つ!」
『負けないぞ~!』
大輔はライドラモン専用装備である曲剣を手にすると、その剣に電撃が走る。それに対し、太一はバードアローを力いっぱい引くと、リムと矢が炎を灯し出す。
「『ライトニングブレード!!』」
「『メテオウイング!!』」
振り下ろした剣から放たれた雷撃。
放たれた矢とリムから複数の炎の矢。
だが、雷撃は矢の貫通力に負け消失し、大輔に炎の矢が当たり爆発を起こす。
爆発からでSEが尽きたのか、ISが解除され大輔が落ちてきた。
「あぶなぇ!」
落ちてきた大輔を直ぐさま、太一が掴んだ。
どうやら、さっきの一撃で大輔は目を回して気絶してまったようだ。
『め、目が~世界が回る~…』
『太一~、ブイモンも目を回してるよ~』
「まあ、仕方ないか」
ここに、クラス代表決定戦の第一試合は太一の勝利で終了するのだった。
今回出てきた光子郎は、ちょくちょく出てきます。主に、ISの整備などで。
今回でたデジモンの紹介です
フレイドラモン
ブイモンが勇気のデジメンタルで進化したアーマー体。炎の属性を持ち、格闘能力が上昇する。ブイフォースでも同じ現象が起きている。得意技は炎とかした拳を叩き込むか相手に放つ『ナックルファイア』。必殺技は全身を炎のロケットと化し敵を粉砕する『ファイアロケット』だ。
ハニービーモン
ブイモンが知識のデジメンタルで進化したアーマー体。体は小さいが非常に素早く、あっという間に相手の背後を取る程のスピードを持つ。が、攻撃力は弱い。ブイフォースでも同じ現象が起きている。必殺技は相手の頭の上から独の粉を撒き散らす『ポイズンパウダー』と頭の先の毒針を突き刺す頭突き『パラライズスティング』だ。
ライドラモン
ブイモンが友情のデジメンタルで進化したアーマー体。本来は四足歩行だが、ブイフォースでは二足歩行になっている。雷の属性を持ち、ハニービーモン程ではないが素早い動きができる。必殺技は雷を模した額のブレードから電撃の刃を放つ『ライトニングブレード』と背中の三本の突起から強力な電撃をはなつ『ブルーサンダー』。
これから、デジモンが(名前でも)出るたびにあとあがきで紹介を書こうと思います。
一夏のシーンの竜の紹介はないのが仕様ですので。