前回の暗殺依頼から数日、就職してすぐに辞めますとは言えずに次の依頼を終わらせにやってきた。
派遣会社も手広くやっているようで、別の世界へ出張することになった。
「武器は向こう側の支社で手に入れろって言われました」
「道中は手ぶらか、ちと不安じゃな」
「触手相手だと分が悪いですね」
邪神勢力は触手が主戦力らしく、度々それには苦しめられてきた。
二度退けたものの、火炎放射器と水鉄砲という武器の活躍によるものだ。
「天使に調査をさせているのじゃが、まだ結果が出るには時間がな…」
「また親玉がライブ配信してませんかね」
「規約が更新されてBANされたから無理じゃろ」
現在邪神のアカウントは永久BANされており、別のアカウントを作ろうとした痕跡はない。
話は変わって、かなり前に説明したがこの世界は様々な異世界とつながっており、あらゆる作品のシチュエーションに対応している。
他世界へは飛行機や船舶で移動が可能だ。
「…乗客の数が少ないのう」
「これチャーター便らしいですよ、依頼主が大至急来てくれって言ってまして」
「今回の依頼、その詳細を聞かせてくれんか?」
「女の子がひどい目にあってそうな依頼を箱に詰めてクジ引きで決めてますんで、まだ内容確認してません」
「アホなの???」
いそいそと懐から取り出した資料にはエイリアンに攫われた人質を回収ないし殺すことと書かれていた。エイリアンは兵士を捕獲しては地下深くに連れ去ってしまうとか。
明らかに一人でやれる仕事ではない、この依頼を取ってきた営業は何を考えて「わが社ならやれます」と言ったのだろうか。
「なんか相当やばい依頼引きましたね、確率は平等なのでやりますけど」
「相当ってレベルじゃないぞ、依頼もそうだがお主の頭もな…」
「SF系の世界はエイリアン多いんですよね」
「定番の敵じゃからな、兎に角天使に武器を用意させるか」
ーーー
対エイリアン戦線の東部防衛線と呼ばれる所まで軍から借りたバギーで突っ走る。
車は燃料は必要なくなるように天使が改造してくれた。
「これ到着したときに思ったんですけど、世界観相当ダークですよね」
「そうじゃな、雰囲気が暗くてヒロインが全員死にそうな雰囲気がするわい」
「こっちの流れにエイリアンを乗せないとキツそうです、最終的にはエンディングで全員踊るくらい」
「飛行機の中でインド映画見たじゃろ、絶対」
話に聞けばエイリアンはデカい虫とか甲殻類系の見た目をしているらしい。
「なんで人を攫うんでしょうね」
「どれくらいの知性があるかにもよるじゃろ、単純だと飯とか」
「とりあえず、分からないなら調べますか」
「まあ待て、装備を整えてから…」
ーーー
神が天使製の装備を携え再度現れると、彼は見知らぬ場所に居た。
「今現在、敵本拠地に居るんですが」
「ちょっと目を離した隙にそこまで???」
「明るいですね、地中なんですけど」
いえーいとスマホを取り出して記念撮影を始め、一緒に写っているのはデカい蟹のような何かだ。
何故か意気投合している。
「何があった、いやホントに何があったんじゃ」
「試しに浄化してみたらあっさり敵意を失いました、やっぱり邪神の差し金っぽいですよ」
「…この神器どうしようかの、大陸一つ消し飛ばせるんじゃが」
「神様も大抵スケール壊れてますよね」
地下通路で出会うエイリアンに向けて浄化ビームを放てば、全員があっさりと友好的な性格になった。
「なんで明らかに不機嫌な個体がいるんじゃ」
「じゃんけん教えてみたら理解してくれたんですけど、手がハサミなんでチョキしか出せないって分かってキレてます」
「アホしかおらん」
掛け声と共に指を上げて数字が合えば勝てるアレはやれるようで、そっちを教えたら嬉々として遊び始めた。
「神器って奴で浄化パワーを広範囲に放ったりできます?」
「お茶の子さいさいじゃ、使え」
神が持つデザインまで気にする時間が無かったんだなと分かるシンプルな杖に力を込めると、ドーム状に浄化範囲が広がっていく。
「破壊に力を入れないんじゃったらこの星くらいは包めるじゃろ、このまま込め続けるのじゃ」
「遊んでる蟹が気になって集中できません」
「なんでよりによって折り紙渡した?いじめか?」
この惑星に居るエイリアン達を全て浄化するのにかかった時間は3時間程、蟹がずっと動いているので退屈にはならなかったのだが…
「一万体はこの場所に集まってますよね」
「群体恐怖症になりそうじゃ」
「片手間にあやとり教えていいですか?」
「蟹で遊ぶな」
ーーー
捕虜となっていた人々はどうなっていたかというと、全員カプセルに入れられて保管されていた。
洗脳されていた蟹たちに聞けば集めることが目的だったらしく、人間を休眠状態にしては集めていたらしい。
「無事だったのは良いんですが、邪神は何かとんでもないことを考えてそうですね」
「そうと見て間違いないのう、天使からの情報が届き次第手を打つとするか」
「うーん、捕虜を躍らせることで踊りエネルギーを集めて銀河中を躍らせるとかでしょうか」
「それはインドじゃないじゃろ、何を見たんじゃ一体」
蟹たちが別れを惜しんで手…いやハサミを振ってくれている、あれで柔らかくて「わにゃわにゃ」と鳴けば完璧だったのだが現実は厳しい。
彼らには受け取った報酬を使って世界の遊びを纏めたゲームを送る手筈を整えた、これで彼らも娯楽には困らない筈だ。
しかし配送された50台のゲーム機は蟹たちの間で奪い合いになり、最終的に大量のエイリアンが外貨を求めて出稼ぎ労働者と化すことをまだ誰も知らなかった。
ーーー
「…どうしたんじゃ、その蟹」
「表の顔のカフェ事業で雇うことになったらしいです、系列店でいろんな種族が働いてるカフェがあるのでそこで研修するとか」
「じゃあなんでお主の家に居るんじゃ」
「隣に引っ越して来たんですよ、今はオセロやってます」
玄関の鍵が開く音がしたかと思えば、何時ぞやのサキュバスが缶チューハイのパックを持って入ってきた。何やら言いたいことがあるらしい。
「最近牛乳を餌にした罠に引っかかる子が増えてて、アンケートに答えると開放してもらえるってみんなして言うんですよ…」
「それ僕、こっちは隣に越してきた蟹」
「え?」
サキュバスの労働環境は思ったより悪いことが近年の調査では分かり始めている(信徒調べ)。
APEXのランクマ引退します
蟹のイラストは常識の範囲内でご自由にお使いください。