「今回は相当ヤバいんですよ、内容確かめずに現地まで来ちゃったのが悔やまれます」
「その悪癖は直すんじゃな、クジ引きなんかで決めるからそうなる」
「今回は文字の読めない蟹君に選んで貰いました」
「クソ野郎が、責任転嫁やめろ」
最近信徒の部屋の祭壇に祭られた神だったのだが、蟹君が勝手に祈りを捧げるようになり、その結果神と天使双方に気に入られていた。
「なんでも魔法少女を殺してくれって依頼なんですよ、死体引き渡しで」
「…急に来たのお、重いのがガツンと」
「みかん?」
「隙あらばボケるな、空気台無しじゃろうが」
既にフェリーを使って魔法少女が居る世界にまで来てしまっている。
まさか依頼主が邪悪な人間だとは、それっぽいのを気配で振り分けたがこういうこともあるらしい。
「とりあえず依頼主の話を聞きましょう、魔法少女が実は逆レしまくるタイプかもしれませんし」
「そんな魔法少女聞いたことないんじゃが」
ーーー
「で、マフィアかヤクザっぽい人たちから聞いたことを纏めたのがコレです」
魔法少女は自分たちの支配地域を脅かしている、卸している商品の流通を阻害してくる、すでに構成員が何人も殺されているなどなど様々だ。
「やっぱり雇われている以上依頼は達成しないといけないんですよね、でも報酬は後払いに設定されてました」
「頭金も無しか?」
「はい、なので買収された体で寝返りました」
「…した?まて、なんで過去k」
先ほど依頼の説明を受けたアジトの一つから爆発音が鳴り響く。
コンクリート製のそれは柱を破壊され、爆破解体された建物のように下から崩れ落ちていった。
「経費で降りるかは分かんなくなっちゃいましたが、高性能爆薬は格別ですね」
「もっとやり方なかったの???」
「浄化ビーム当てても改心する余地のないクズっているんですね、蟹君がどれだけピュアだったか分かりましたよ」
「あーもー儂賊なんて知らねー、女の子助けちゃうもんねー」
ーーー
「流石魔法少女、歌って踊ってますよ」
「アイドル活動も兼業しとるようじゃ、相当な努力家じゃな」
情報収集のため、賊のアジトを吹っ飛ばしてからでは遅いが依頼対象を見に来た。
大量のファンがイベントに駆けつけており、人気知名度共に高いのが伺える。
「魔法少女対地元ギャングかと思ったんですが、普通に化け物が出没するみたいですね」
「人の欲望を糧に実体化する化け物とは厄介じゃな、元を絶たねば無限に沸いてでるじゃろうな」
周りの勢いについていけず買ったペンライトを振るだけになっていたのだが、見るに見かねた一人のファンが話しかけてきた。
「アンタ、もしかして初めてかい?」
「はい、どうにかして乗りたいんですがちょっと分かんなくて」
「俺が先導する、話す通りに付いてきな!」
滅茶苦茶アドレナリン出てそうな奴が仲間になった。
ーーー
「ギャングは麻薬を卸しててな、奴らの麻薬で廃人になると…バケモンになっちまうんだ」
アドレナリンドバドバ太郎からそう聞いた信徒と神は麻薬の実物を手に入れるため、行動を開始した。
ちなみに彼は普通にいい人だったと記しておく。
「おそらくじゃが、この麻薬にこそ邪神が絡んでいそうと思ってな」
いくら麻薬で廃人になっても、そこからバケモンに変わるのは無理がある。
ギャング連中にそんなどこぞの薬作るよりゾンビ作るのが得意な傘の会社並みの研究開発能力があるとも思えない。
「ですよね、適当にギャングと中毒者締め上げますか」
「前世ギャング?」
「裏技に騙されてからというもの、私は真っ当な人間などではなくギャングに憧れるようになったんですよ」
「いや初耳なんじゃが」
以前狙撃(?)に使用した改造狙撃銃をぶっ放せば大抵その閃光にビビるので、追加でよく分からない即興のダンスを踊ればこっちの流れに乗せられる。
その勢いで脅して周り、あっという間に大量の麻薬を巻き上げていた。
「これ解析に回せます?」
「天使に回収させるか、呼ぶからちょっとまっとれ」
流通量は考えていた量の数十倍に及ぶようで、両手に持ったレジ袋満杯にまで集まってしまった。
価格を吐かせたがやけに低価格で、副作用もほとんど無いという。
「副作用が無いなら廃人化は一体…」
「「待てー!」」
「ん?」
可愛らしい声が聞こえたなと思いながら咄嗟に回避すると、さっきまで居た場所がクレーターになった。
「あれ?威力は可愛くないな」
「あなたが麻薬狩りですね」
「話は聞いてるぜ、アタシらに両手のそれを渡しな!」
魔法少女のフィジカルを舐めていた、思ったより普通に強いらしい。
二人はそれぞれ赤と青の衣装を着ているが、持っている武器は西洋剣とメイスだ。
持ち手こそ装飾が残るが、攻撃に使用する部分は塗装が剥がれて鉄が露出している。
「武器がガチだ、可愛くないし使い込まれてる」
「まだ子供だからって舐めんじゃねーぞ、にーさん」
「はやくそれを置いてください!」
一発づつぶん殴ってから逃げれば引き離せるが、そんなことを少女にやるほど悪人ではない。
「お主今何考えた?」
「天使はあとどれくらいで来ます?」
「30分はかかる、今すぐは無理じゃな」
両手の麻薬を渡したところで二人は取り押さえる気満々だ、ここはどうすべきか…
「これなんだと思う?」
「なんだそれ」
取り出したるは無線の起爆スイッチ、それを二度握ると爆発音が鳴り響いた。
「動くと町のどこか(のギャングアジト)が爆発するぞオ!近づくんじゃねえ!」
そう、解決方法とは自分が爆弾魔となることだ。
ギャングスレイヤーと化した信徒
珍しく前後編です