お師匠さんが女体化してから誘惑してくる件について   作:キサラギ職員

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魔術師のおしごと

 俺は、魔術師だ。

 魔術師と一口に言ってもやることは多種多様で、薬剤師に近いことをしているものもいれば、山に赴いて薬草を摘んできてというものもいるし、王宮に仕えて軍事にかかわっているものもいるという。

 じゃあ俺はというと、医者みたいなもんだ。魔術を主に診断に使っているのだ。まだ、経験が浅いから師匠についているわけだけどな。

 そのお師匠さん(俺はいつもこう呼んでる)は、変わり者だ。脱いだ服はそのままだし、食器は洗わないし、ついさっきのことを忘れてみたり、というのに診断の腕前にかけてはピカイチなのだ。どこが悪いのかを的確に判断して、薬を処方している。魔術師というよりも、魔術を使える医者といった感じである。

 他にも変わったところがある。どこが変わってるかと言うと……。

 

『弟子君(お師匠さんは俺をこう呼ぶ)~イチャイチャしようじゃないか~いいだろ~』

 

 と絡んでくるのだ。しかも尻を触ろうとしてくる。尻をいやらしい手つきで触るのを止めろ。

 

 そう、お師匠さんは異性を愛せない同性愛者なのだ。

 それは、まあ、いいのだ。

 だがはっきり言っておくべきだ。俺は、女性しか愛せないのだ。

 それを伝えたとき、お師匠さんはがっかりとしていた。仕事はちゃんとしてくれるというのに、目に見えて落ち込んでいるのがわかるだけにこっちが罪悪感を覚えるほどだ。何? 俺って同性愛者だと思われてたわけ?

 

『弟子君はどうしたらボクを抱いてくれるんだい?』

 

 とか直球で聞いてくるようなお師匠さんだが、俺は尊敬している。この道十年も市民のために仕事をしてきているからだ。腕前も間違いなく一流だ。この人の下につけたのは幸せだったと思っている。

 だから、ケツ触るのをやめろっ! って思いつつ、その腕をねじって張り倒した回数は覚えきれない程だ。

 うん。悪い人じゃないんだよ。性的な部分がちょっと変わってるだけで。片付けられないというだけで。

 

 そんなある日のことだ。俺は仕事場で薬品の目録をつけなおしていた。昨晩、お師匠さんが薬品棚をひっくり返してしまい、薬品塗れになった事件があった。少なくとも三十の瓶が割れてしまったので、新しいものを仕入れてきたのだ。

 俺がかりかりと羽ペンを羊皮紙に走らせていると、一人の女性が店に入ってきた。

 黒いつやつやとした髪の毛を腰まで流した青い瞳の美しい女性だった。黒いセーター越しにもはっきりわかるたわわに実った豊かな体つき。薄手のズボンは、その肢体の滑らかさを隠すには不十分すぎて。赤い形のいい唇は、見ているだけでうっとりとしてしまいそうだった。上下共に服の丈があってないようだが、そんなことは些細なことだ。かえって美しさに拍車がかかってさえ見える。

 こんな美人さんが、魔術師の家に何の用件だろう。というよりも、入り口に鍵をかけていたはずだが。

 

「私だよ弟子君。君の師匠さんだぞ。いいニュースが入ったぞ」

 

 その女性は。

 

「なんと! 女になったみたいだ!!」

 

 自分こそがお師匠さんであると言い放った!

 ……まあ、落ち着け。確かにそんな口ぶりだが、目の前の美しい女性がお師匠さんであると信じるには、俺は年を取りすぎている。確かに性別を変える薬やら魔術やらはあるにはあるが、神話に登場するようなものだったり、危険性が高すぎたりと、御伽噺なんかの域を出ないものばかりだ。

 まさか。俺はその女性が腰に手を当てて胸を張るのを見ながら、恐る恐る声をかけた。

 

「まさか………薬品塗れになったせいでとか言わないですよね」

「そのまさかだよ。一晩高熱にうなされてな、ふと気がつくと体がこんなことになっていたのだよ」

 

 どーだと言わんばかりににこにこするお師匠さん(?)。

 

「いや、そんな冗談やめてくださいよ。あなた誰です?」

「本棚最下段虫の図鑑の中身」

「わああああああああ!! やめろ! なんで知ってんだアンタ!」

「だーかーらー君のお師匠さんだって言ってるじゃないか」

「そんな……ばかな……」

「本棚の裏も要注意だな!」

「なっ、ばっ………くそおおおっ!」

 

 美人さんもといお師匠さん(?)突然の暴露に俺は慌てて立ち上がった。その位置になにがあるかというと、男の桃源郷があるのだ。絶対にバレないであろう位置に仕込んだはずなのに、この目の前のお師匠さん(?)にはお見通しらしい。

 俺はここにいたっても、目の前の人物がお師匠さんであるとは認めたくなかった。道を歩けば十人中十人が振り返るような美人が、あの髭面のお師匠さんであるとは信じたくなかったのだ。じゃあどうやって鍵を開けて入ってきたんだよとか、なんで秘密の本の場所を知ってるんだよとか、色々突っ込みどころはある。

 俺が唖然としていると、お師匠さん(もう認めるしかないだろ!)が心底嬉しそうな笑顔を浮かべながら歩み寄ってきて、俺の肩に手を置いてきた。

 

「ふふ。お弟子君。君の大好きな女の子のカラダだぞ~? ボクはね。君みたいな子が大好きなんだ。どんなことでも、やってあげるよ? ほーら」

 

 いつの間にか俺の手は細い作りの手に捕まっていた。そのままゆっくりと、セーターに覆われた胸元に誘導される。

 ふにゅん。

 

「あっ、んっ………やー、女の子のカラダは感じやすくてしかたないなあ。もみもみしてもいいんだよ?」

「う、う、ぐ……」

 

 超やわらかい。なんだこれ。指が肉に埋もれている。

 お師匠さんの体から放たれる甘い香りが俺を狂わせる……………体臭にしては甘すぎる。

 

「“取り除け”」

 

 俺は精神力を振り絞って呪文を唱えた。すると、スッと匂いが引いていく。

 慌てて手を引っ込めると、お師匠さんがふふっと笑った。残念そうに自分自身にかけていた呪文を指を振って解除している。

 

「流石はボクのお弟子。チャームにかかってくれたら簡単だったのになあ。ま、機会はたくさんあるとも」

「ば、何やってくれてんだよ! 冗談にもならんぞ!」

「んー、だってキミ。男を抱くのが嫌なんだろ。オンナノコのカラダならどうかなって思ったわけで、なんならボクはキミの為にならなんだってやってあげるんだよ? おっぱいがいーい? おくち? 足が好きかな~?」

 

 俺は慌てて距離を取った。お師匠さんがやけに様になる仕草で胸元を強調してみせる。

 

「とにかく! 俺はアンタをあくまで男として扱うからな! いいな!」

 

 俺はそういうと、仕事に戻ったのだった。

 

 で。

 これであきらめてくれるだろうという俺の考えは甘かったようで、あの手この手で誘惑してくるようになってしまった、というわけだ。

 誰か、この状態をなんとかする手段を知らないだろうか。

 俺は今までとは逆の、尻を触らせようとするお師匠さん手を叩きながらぼんやりと考えていた。

TSものは

  • 順応早くてもいいよね
  • 苦悩しろ
  • 徐々にメス墜ちしろ
  • そんなことより毎秒投稿しろ
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