お師匠さんが女体化してから誘惑してくる件について   作:キサラギ職員

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誘惑には勝てましたか?


媚薬入り紅茶(伝統芸能)

「弟子君弟子君。思ったのだがね、例えばボクが記憶を失ったとするだろう」

「突然なんですか」

 

 ある日のこと。夕飯を終えて、食後のお茶を楽しんでいる最中にお師匠さんが急に言い始めた。

 ちなみにお師匠さんといえば、既に寝巻きである。どこで仕入れてきたのか薄ピンクのネグリジェを着ている。

 不潔だとか言わないで欲しいが、ここの地方では風呂に毎日入るという習慣が無い。まず、火を焚いてお湯を沸かすこと自体が重労働なのだ。薪代だってバカにならない。そこらへん魔術師はお湯を潤沢に使えるわけだが、あまり入らないという習慣のせいで、まず毎日入る魔術師などいない。

 ところが最近のお師匠さんときたら、毎日入っている。魔術師の特権をこれでもかと使って、お湯を並々と張った容器(どこから調達してきたのかわからん。そもそもうちに浴槽なんてものはなかったはずだが)に入っているらしい。俺は普通に水浴びで済ましてるよ。

 それから、出てきたら香水をうっすら体にかけてるのか、近くにいるとふんわりと甘い香りがただよってくる。

 こうして対面しているだけでも甘い香りが漂ってくるので、ドキドキしてしまう。

 お師匠さんは紅茶を啜ると、スコーンをもさもさと食べながら人差し指を立てた。

 そういや、この紅茶。お師匠さんが淹れたものだ。なにやら俺が料理が出来るような女の人が好きとかなんとか言った影響なのか、自分から淹れてきたのだ。

 

「記憶を失ったとすると、先天的な女性としての振る舞いをする私が現れるのか。男性としての振る舞いをする私が現れるのか。どっちだと思う?」

「さあ。お師匠さんの素が出てくるんじゃないんですかね」

「ボクの素というと今がその素に近いんだがねえ。たまに勘違いされるが私は同性愛者でもあるけど、異性も愛せるのだよ。同性相手のほうが強いだけで」

「へー」

「それで、暫く待ってみたんだ。君への興味がなくなるんじゃないかと」

 

 お師匠さんが綺麗な青い瞳で俺を見つめてくる。

 てっきり同性愛者かと思っていたけど、かならずしもそうじゃないらしい。本人曰く。

 ぱちん。音が響きそうなウィンクが返ってきた。

 

「むしろどんどん興味が沸いてきたね! 本の趣味はいただけないが」

「あーあー、人のプライバシーを侵害するのをやめてください」

「よかったよ。おっぱいが大きくて髪の毛が長い女の人が好きみたいで!」

「あぁぁぁぁぁぁクソどうしてみつかったんだよ!!」

 

 お師匠さんがにこにこしてくる。

 クソが。隠し場所を変えたはずなのにバレてやがる。そうなのだ。俺は、おっぱいが大きくて髪の毛が長い人が好きなのだ。お師匠さんはそれに加え―――顔がいい。面食いじゃない俺でも一目で射抜かれそうになるくらいに、顔がいい。最もお師匠さん(男性のときの)の面影がうっすらあるので、接近してくるとどうにも思い出してしまうところが難点だが。

 俺は一通り頭を抱えてから、若干冷めた紅茶を飲み干した。

 

「とにかく、もう寝ますからね! 絶対に付いてくるなよ! アンタはアンタの部屋で寝るの!」

「えー」

「えー じゃないえーじゃ!」

 

 デジャブを感じる会話をしたのち、俺は自室へと引きこもった。

 

◇ ◇ ◇

 

 “おさまらない”。

 ナニがかって? ナニだよ! 察しろよカス! と俺が精神的に不安定になるくらいには、乱れていた。

 おかしい。普通は一回二回“出せば”すっきりしてくるものというのに、今日に限って何回やってもおさまりがつかない!

 絶対におかしい。いやたまにこういうことくらいあるねんなって思いたいけど、俺は絶倫じゃない。性豪とかそんな属性持ってない!

 

「…………ま、まさか」

「ふふふ。そんなまさかあのお師匠さんが紅茶に媚薬とか盛ったとかそんなことはないよ」

「ひええええええっ!!!????」

 

 俺は股間を押さえたまま全力で壁際に逃亡した。振り返ってみると、薄いネグリジェどころか女性物のシャツ一枚羽織っただけのお師匠さんが四つんばいになっていた。

 鍵はかけたはず! まさかこのヤロー……。

 

「失礼な。魔術で破るなんて、魔術の神への冒涜だよ。合鍵だよ」

 

 お師匠さんがリングにかかった鍵を指でくるくると弄んでいた。上体を起こすと、いたずらっぽく笑いながら鍵を見せびらかしてくる。

 ただでさえ緩々なシャツから胸がはみ出さんばかりに自己主張をしている……!

 ナカミハオトコ……ナ、ナ……カミ……。

 

「もっと悪いわ! 何人の部屋の合鍵勝手に作ってくれてんのさ!」

「んもー、キミとボクの間柄じゃないか♡」

 

 俺は無言でお師匠さんの指から合鍵を奪取しようとした。

 

「わぁ指がすべっちゃった☆」

「くっ……! 小癪な……!」

 

 お師匠さんがあろうことか鍵を胸元に滑り込ませた。

 

 たゆん。

 

 鍵が胸の谷間に挟まっている。お師匠さんが呼吸するたび、鍵の位置が揺れる。

 俺は手を伸ばし、そして、取れない!

 

「う、くそ………」

「ま、ま。落ち着きたまえよ愛弟子よ。鍵ならいつだってあげるとも。“それ”がおさまりつかなくて困っていたんじゃないのかな?」

「………!」

 

 わかった。わかってしまった。こいつしかいない。こいつがなにやらせっせと紅茶を淹れている最中に、“手を滑らせて”しまったのだろう。オトコをいきり立たせるようなものを!

 脳裏に紅茶を入れたカップをカコンッと置いて薬をサーッ! と投入するお師匠さんの絵が浮かぶ。なんだクォれは……たまげたなあ。

 俺はお師匠さんから隠すため、ブツをささっとズボンに格納して立ち上がった。前のめりで。

 

「解毒剤、作ってきます」

「材料切らしちゃってさ☆」

「ブッ殺す」

「てへ☆ というのはさておき、まま、鍵くらいはあげるともー」

 

 お師匠さんの手が、俺の手に絡みつく。抵抗できない間に、手が胸元に。柔らかい肉の間に指が埋まる。危うく鍵を落とすところだった。

 …………う、ヤバイ。もうヤバイ。頭の中がお師匠さんの匂いでいっぱいになる。お師匠さんが入れた薬のせいか、立ってるだけで本日何度目になるかもわからない“状況”に陥りそうだった。

 胸が柔らかすぎて、もう、だめだ。耐えろ。耐えろ俺。

 

「自分に正直になろうよ………大丈夫大丈夫、減るもんじゃないからさ……」

「う、う……」

 

 体の力が抜ける。いや一部抜けてないんだけど!

 俺はあっという間にお師匠さんの力で押されていって、ベッドに寝かせられた。お師匠さんが唯一掛かっていたシャツを腕を交差させて脱ぐ。

 たゆん、ふるんっ。

 重量感たっぷりの効果音が見えそうなほど、それが弾む。

 

「大丈夫大丈夫。んっ、この体では初めてになるけど、天井の染みでも数えてればすぐに終わるからねぇ………いやーすぐじゃないな。すぐ終わらせるなんてもったいない……」

 

 それから――――。

 

◇ ◇ ◇

 

「ふぅ~~~~」

「………」

 

 朝。

 やけにツヤツヤした顔のお師匠さんがサクサクと焼きたてパンを頬張る一方、俺は机に突っ伏していた。

 色々と失ってしまったよ。

 

「パン、食べないならもらうよ!」

「頂きますよォ!!」

 

 お師匠さんが俺のパンをくすね様としたので大声を上げ奪い返して一口。

 どんな日でもパンは美味い。俺はそう思った。




Q.R18ルートがないやん!
A.そんなことしたら運営に怒られちゃうだろ!

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