天高く跳ねる脚   作:レオーネ

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強引な勧誘です!

「どうしてこうなったんだ・・・」

 

瑞貴は1号戦車C型の操縦席に座りながらボヤく。

 

二人は戦車道の連盟が練習用にと開放している東富士演習場へとやってきた。操縦に関する練習は学校で出来たとしても流石に実弾を使った射撃練習は出来なかった。

 

他校の生徒も多い中、中には有名な高校もちらほらと見える。そんな中戦車乗りたてペーペーの彼女たちが居るというのもいささか気が引けるというものだ。

 

「やっぱりもう少し練習してから来たら良かったんじゃないのか?それにこの格好も・・・さすがにバレるんじゃないか?」

 

「何回も言ったでしょ?現状、実弾射撃の練習は学校じゃ出来ないんだから、それに変装も完璧よ!男ならくよくよしないで堂々としてなさいな」

 

自分の姿を見た瑞貴は彼女の言葉に疑問を覚える。

 

 

 

男・・・ねぇ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダメだぁぁぁ!」

 

ある日心陽が叫びながら倉庫へとやってきた。

 

瑞貴はいつもの事だと思い、再びユーノスコスモの下へと潜る。

 

「なんだ、やっぱりメンバーは見つからないのか?」

 

「そうなの!友達に聞いてみたんだけどやぱり戦車道経験者はこの学校は居ないみたい」

 

戦車道やってたらもっと戦車道で実績のある高校に行くのが普通だろうと瑞貴は思った。

 

「別に経験者じゃなくてもやってみたい人とか募ってみたらどうだ?」

 

「ムリよ」

 

「だろうな」

 

今や戦車道はマイナーな武道である。有名校ならともかくこの学校でそういったことに興味を持つ人というのは皆無だった。

 

ここ数日、放課後になったら喚きながら彼女が倉庫にやってくるのが日常となっている。

 

まぁこうして話し相手が居るのも悪くないと瑞貴は思った。

 

すると心陽はハッと気付く。

 

「そうだ!」

 

「ん?」

 

瑞貴はユーノスコスモの下から顔を出す。すると彼女と目が合う、何か嫌な予感を感じた。

 

「瑞貴、アンタが操縦手やればいいんじゃない!」

 

彼の嫌な予感が的中した。なにを言ってんだか・・・

 

「戦車は乙女の嗜みだろう?俺は男だ」

 

変なことを言うんじゃないとまた作業に戻る瑞貴。

 

「そんな事は昔の話よ、女性だけ、男性だけだった職業だって今は男女問わず就職できるし柔剣道をする女性もいるし逆に華道をする男性だっているわ。武道も時代に合わせて柔軟にならないといけない時代なのよ!」

 

「すげぇスケールのデカイ話になってるが現状戦車道をやってる人は女性しかいないだろ。そんな中男が入ってみろ、戦車道をやってる所に練習試合とか申し込んだりしても色々と面倒だぞ。相手だって色々と気を遣う」

 

瑞貴も言い返す。彼は戦車の操縦手になるつもりなど毛頭なかった。

 

「まぁ確かにそうね・・・」

 

心陽も一応は納得してくれたようで彼も一安心した。

 

しかしまだ終わっていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なかなか似合ってるじゃない」

 

花楓が彼の変わり果てた姿を見てそう漏らした。

 

結局瑞貴は半ば強制的に操縦手に任命された。もちろん心陽と長い押し問答があったがこの倉庫を無許可で占有している事に突っ込まれてしまっては何も言えない。

 

結果戦車同好会を作り学校に申請し、戦車の整備をするという名目でこの倉庫を正式に使用することが出来るということになったのだ。

 

そして瑞貴はその大きな代償を払うことになる。

 

「花楓、お前後でぶっ殺す・・・」

 

ワナワナと怒りに燃えるのは鏡の前に佇む少女、だが男だ。

 

そう、瑞貴は女装させられていた。

 

どうしても瑞貴を参加させるにあたって心陽は花楓に相談した。すると花楓は・・・

 

「女装でもすればいいんじゃないの?」

 

と言った。

 

半ば女子二人の悪ノリから始まったこのミズキちゃん計画、やるからには本格的にという心陽のポリシーの元、瑞貴の男としての尊厳は彼女たちによってどこか遠くに放り捨てられてしまった。

 

ウィッグをかぶせられ、花楓がどこからか調達してきた女子用ブレザーにスカート、タイツを履かせられ、体のラインを誤魔化す為に陸のミリタリーショップから送ってもらったドイツ軍のコートを羽織った。

 

さらには花楓が家から頑張って持ってきたメイク道具一式によってメイクもさせられた。

 

「すごいわ、人ってこうも変わってしまうのね・・・」

 

心陽は率直な感想を述べた。確かに傍から見てコイツを男と思う人は皆無だろう、それ程のクオリティだった。

 

「このままミス・椰箏コンテストにでも出たらいいんじゃないの?ミズキちゃん(笑)」

 

「お前ら・・・あとで覚えてろよな・・・」

 

ミズキは生まれて初めてこの中性的な名前を呪った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして心陽と瑞貴・・・改めミズキは戦車道演習場へとやってきた。

 

申請は心陽がすべてやってくれた。一言も話さないミズキを連盟の人達は疑問を浮かべていたが彼女が連盟の人に極度の人見知りであると説明し納得してくれた。

 

こうしてサソリを背負った1号C型がフィールドに入る。さしずめサソリさんチームといったところか。

 

将試合に出るにあたってパーソナルマークを付けようと心陽が提案した。そこで瑞貴はこのサソリのマークを貼った。

 

理由は単純、そこに落ちていたからだ。もとはアバルト500をレストアしたときに使ったものだった。

 

アバルトとはイタリアの自動車レース用部品製造販売会社だ。今はフィアットの傘下に入り同社製品のチューニングを手掛けているメーカーである。

 

アバルトが手掛けた車には独自のエンブレム、サソリが冠される。このサソリを背負ったマークの車はほぼ同じ見た目と言えど全く異次元のパフォーマンスを見せる。

 

イタリアと縁深いサソリを付けるのもおかしい話だと思うかもしれないが同社はポルシェの356を手掛けていたこともある。そしてポルシェと戦車もまた深いつながりがある。ドイツと縁が全くないと言う訳でもないのだ。

 

「さて車長、準備は出来たか?」

 

「えぇ、早速撃ってみるわ」

 

ズドンと辺りに銃声が響いた。

 

1号C型に搭載された主砲7.92ミリ対戦車銃が火を噴いた。しばらくの後、遠くで的が倒れるのが見えた。

 

「すごい!当たったわ!」

 

「ビギナーズラックだよ・・・」

 

「素直に褒めてくれてもいいんじゃないの?」

 

心陽は膨れっ面をみせる。

 

そうは言ったものの心陽のセンスにはミズキも舌を巻いた。まさか初で命中させるなんて思ってなかったのである。

 

ミズキは2射目を待っていたが一向に発射される気配がない。

 

「どうした?」

 

上を見ると心陽が銃まわりを見回して困っていた。

 

「普通撃ったら装填しなおさないといけないと思うんだけど、どうやるの?」

 

「え?」

 

まさか彼女、コイツが機関銃であることをご存じでない?

 

「こいつはベルト給弾式だから続けて撃てるぞ」

 

「そうなの!?」

 

やはり知らなかったか・・・

 

 

 

 

 

これは先が思いやられる・・・

 

 

 

 

ミズキは口に出さずともため息をついた。

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