Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです 作:這い寄る影
見たくないから見ない、気がついても言わない、言ってもきかない。そして破局を迎える
だが、俺たちの世界じゃ、三度どころか最初の兆候を見逃せば終わりだ。
イノセンス キムの屋敷でのバトーの呟きより。
「さて哀れな。あの箱庭を破壊する準備は整ったが。これでは実に味気がない」
ケラケラと笑いながら影は言う。
偶々である。
その宇宙を観測したのは。
影がソレを見たのは。
愚かな人を憐れんだ人外の欠片が外に向かったが故だ。
故に彼は阿頼耶識と繋がり向こう側へと赴き。
”試練”の在り様として厄災を振りまくのだ。
「無数の輪の微妙な連鎖が、もっとも身近なものをもっとも遥かなものに結びつける。
目はいたるところに兆しを読みとり、あらゆる言語を薔薇は語る。
そして人間になろうと努力しながら、毛虫は形式のすべての螺旋をのぼりゆく。
すでに賽は投げられてあとは出目を待つのみ、だがそれでは意味がない」
コイツは無数の小さな起点を置いたに過ぎない。
それは世界にとっても利になるものではあるが、こいつが置くそれらは歪みとなっていく。
断てば断ち切るほど歪み大きくなり使用者を破滅させるのだ。
無数の小さな連鎖が共鳴し歪な災害となるバタフライエフェクト。
そんな混沌はふと思いつく。
「そうだそうしよう、オマエは何時も悪役だった。偶には英雄というのもいいだろう、なぁ、周防達哉」
扇動こそ我が喜び、虚飾の光こそ我が力。
そうだともと、彼は飽和し無に帰っていく世界を見て思いついたかのように嗤う。
「奪うばかりで与えていなかったなぁ、なれば与えてやろう、神なる力を、そして親愛なる理解者を」
影は笑いながら闇に溶けていった。
それと同時にたった一人っきりの世界で一人の青年が消失した。
マシュ・キリエライトはカルデアの施設内部を歩いていた。
それはレイシフト開始までの暇つぶしのようなものであり、たまたまの気まぐれだったのかもしれない。
窓から見る外は雪に覆われ空も顔を見せない。
ここにいるマシュは施設から出ることは許されず、故に空を見たことがなかった。
こうやってカルデアのロビーや通路から窓越しに見上げる空は悪天候で晴れることはなく。
曇っているか吹雪ているかのどちらかだ。
故に晴れと言う概念はデータ上のフォトだったりムービーだったりと仮想の物でしか知らない。
2016年の今日に至るまで。現在もなお仮想空間による疑似体験という一種の技術的領域には満たされていないのである。
ここカルデアのトレーニング用の空間もその括りからは逃れられないだろう。
魔術と科学技術の併用による、超科学的空間による疑似体験はできるが。
それはどこまで行っても疑似は疑似、限界というものがどうしても生じてしまう。
何かしら万能という訳ではない。
医療チームのトップたる『ロマニ・アーキマン』曰く「やはり本物に比べると無数の細かい粗がどうしても出てしまう」とのことのである。
現実は不形的であり無数の数式が混ざり合って不確定に蠢いている。
オリジナルの風景はやはり不規則に柔軟に動き、CPUで再現した物はどこか機械的に感じ、そこに齟齬を感じてしまうのだという。
故にこの施設から肉体の都合上出られないマシュは外の世界に憧れていた。
無論、それは残酷さを知らぬ少女の思いだからだろう。
現実はどこまでも辛い、人生云々は置いて、その天候でさえ不規則に牙をむく。
暖かさが田畑を乾かし、行き過ぎた雨水が濁乱を起こして破壊し、雪は肌に打ち付け、時に通路を封鎖し、道路は凍結し事故を引き起こす。
自然の厳しさはいまだなお、進んだ科学技術をもってしても克服しきれないのである。
それらは肉体的に生じる不便であったりする。
無論。現代社会は精神的にも来る、人間関係の軋轢やらなんやらも。
世界は万人に優しくはないし決して美しい物ではないのだが、今は置いておこう。
嫌でも彼女はこれから、それらの現実と向き合うことになるのだ。
そのきっかけがほら、その先にいるよ。
通路を歩いていくと。白い毛むくじゃらの愛くるしいリスとも犬とも猫ともつかない白い生物。
マシュが「フォウ」と名付け「フォウさん」と呼ぶ生き物が。通路にうつぶせに倒れている人物の頬を舐めて起こそうとしていた。
その存在は一種の異端的存在だった。
ここでは専用の制服で職業ごとに統一されているが故だ。
胸元に黒色の罰点印が刻印された赤色のライダースーツに身を包み。
ブラウン色の髪の毛をメッティカットという珍しい髪型で整えており。
苦悶に歪んでいるがその顔の造形はかなり整っており十分に美青年と呼べるものであった。
が、見ての通りカルデアの職員服ではない。
衣類からして違うのだからすぐにわかる。さてどうしようと、マシュは若干慌てた。
カルデアのセキュリティはそれこそ世界最高峰の物である。魔術と科学技術の両立による物理的または監視的にも最高峰である。
それこそ魔法使いやら最上位の死徒くらいしか正面突破や潜入は不可能だ。
ということは、この青年はカルデアに正規に招待された人物か、最後の候補なのだろう。
入口のシミュレーションで酔って着替える間もなく気絶したのかなとあたりをつけて近寄る。
「あの・・・大丈夫ですか?」
おずおずと声をかける。
それに合わせてフォウが前足でペチペチと青年の頬を叩くと。
「うっく・・・ここは?」
青年はゆっくりと瞼を開け苦しそうに呻くように典型文を呟いた。
理解が追い付いていない、あるいはシミュレート酔いによる記憶の混乱か・・・。
身をゆっくりと起こして、彼は胡坐をかいてしばらくボゥとする。
マシュはなんと声をかけていいのかわからず青年を見下ろす形で立ち尽くした。
「フォーウ!!」
フォウが唐突に青年の服を掴んでよじ登り始める。
青年は少し困惑しマシュは慌てた。
「ダメですよ、フォウさん、彼が困っているじゃないですか」
「いや、いいよ」
「え? でも迷惑そうですし」
「・・・・少し困惑しているだけだ。それにこういうのは嫌いじゃない」
何処寂しげに、苦悶をかみしめるように青年は言う。
どっからどう見ても大丈夫ではないとマシュは思った。
なぜなら本当に辛そうだから。我慢して我慢してすり減らしきってしまったかのような表情である。
マシュが困っていると、それに青年が気づいたのか。
「すまないが、ここはどこだ?」
青年は話題を切り替えると同時に、現状を確認すべく問う。
また自分は罪から逃げたのではないかと思ってしまったからだ。
であるなら状況を確認し戻る手立てを立てなければならないからである。
「・・・ここは人類の未来をより長くより強く存在させるための観測所、人理保障継続機関カルデアです」
青年は初めて聞く機関の名にかつてかかわった流星塾のようなニュアンスを感じ取って顔を顰めるほかなかった。
「そうか、そういえばまだ自己紹介がまだだった。俺は周防達哉だ。君は?」
「ええっと・・・」
「どうしたんだ?」
「いえこういう自己紹介を自らするというシチュエーションは初めでして・・・少しどうすればいいかわからないんです」
青年は「周防達哉」と名乗った。
マシュも彼の自己紹介に返そうとするものの勝手がわからず少し考える仕草をする。
「・・・そういう時はとりあえず名前を言って。ヨロシクとか。そういう感じに言えばいい」
「そうなんですか?」
「全部が全部という訳じゃないが、少なくともこの場でならそれで通ると思う・・・、俺も人付き合いが得意な方じゃないんだ。まともな事言えなくてすまない」
「いいですよ、参考になりますから、ありがとうございます!!」
「・・・それならいい」
彼は困った風に俯いてしまった。
マシュに対する適切なアドバイスができずに自己嫌悪に陥っているのだろう。
「あ、じゃ自己紹介します!! 私はマシュ・キリエライト、ここの職員みたいなものをしています。よろしくお願いします、先輩!!」
「先輩?」
「はい、ええっと年上みたいですし、ダメですか?」
「いいや気にしない。それでだ。マシュ、適当に休めるところがないか。まだ意識がはっきりとしないんだ」
「あっ、じゃこっちです、休憩所がありますので」
マシュの後ろにふらふらとした足取りで達哉はついていくのだった。
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兎に角と、マシュに現在の情報を聞く。
現在、ここの組織は魔術によって人理、すなわち人間の歴史を観測し未来を保障するという組織であるらしい。
だが問題が起きた。観測機に映っていた人理の光が突拍子もなく消え始めたらしいのである。
原因は過去に起きた事象がねじ曲がったことによるタイムパラドックスによる現在の崩壊とのことである。
つくづく因果なものだと達哉は思いながらミネラルウォーターを口に含んで飲み干す。
「それで、その因果律崩壊にどう対応するんだ?」
「レイシフト、すなわち疑似的に人を霊子化させて異なる位相 時間軸の歪みを利用し、その償却地点となっているポイントに転送、システムFateによる英霊の使役で歪みの原因となっているものを取り除くというのが今回の作戦の大まかなものです」
「・・・」
「どうかしましたか、先輩? 顔色がすごく悪いですよ?」
「いや・・・、なんでもない」
過去に起きた歪みを呼び出した英雄を使って除去する。
まるでかつての己のようにだ。
気分がすぐれなくなるというものだ。
「それで、一応、俺はこんなことにかかわりあった記憶は無いのだが?」
「え? そうなんですか? タブレットには48人目として登録されていますよ?」
「なに?」
自分のいた場所は一人であった。
こういう場所もなければ組織もないはずだというのに。
いつの間にか“人のいる世界”に居て怪しい組織に登録されているということに達哉は内心押し殺しつつもややこしいことになっているため。
表情を押し殺し、表情を固定しつつ驚きを見せる。
マシュに差し出された。達哉に馴染みの無い平板上の機械。読んで文字の如くタブレットには己の顔写真がとられていた。
ご丁寧にバイクの免許に乗せた時の写真である。
マスターNo.48 周防達哉
霊基属性 善中立
塩素配列 ヒトゲノム
年齢 19
性別 男
身長 181cm
体重 68k
血液型 B
レイシフト適性 S
と表記されている、ご丁寧に生年月日は自分の見覚えのない年月になっていた。
また“罪”から逃げ別世界の自分に憑依したのかと思ったが。以前のような記憶はない。
つまり憑依前の記録が読めないあるいはないことから。憑依したとかと言うわけではないと直感が囁く。
脳裏によぎるのは黒色の怪物。
太極の黒、普遍的無意識下の悪意の総意たる神であろう。
「先輩、大丈夫ですか? 顔色が優れないですよ?」
「え? ・・・ああ少し故郷が恋しくてね、ホームシックというやつだ。」
マシュが心配するように横から達哉の顔を伺いつつ心配するが。
達哉は誤魔化した。
疲労感が凄まじく考えがまとまらない故である。
その時だった。
「マシュ、こんなところに居たのか」
モスグリーンのスーツにシルクハットを被った。
ぼさぼさの長髪が特徴的な紳士のような男性が来たのは。
達哉のペルソナがざわつく。
アレは良くないものであると嘯くのである。
だが初見の人間?相手にペルソナを怪しいからと言ってぶっ放すのはどうかという問題もある。
第一に殺しきれるかという問題もある。
コンディションは最悪でそれをやって意味があるのかという話もある。
自分は生きなければならない故にと達哉は脳裏に浮かべたカードを心の奥底にしまった。
「っと。マシュ彼は?」
此方に気付き何やら驚いたかのような表情を男性が取りつつ達哉の事をマシュに尋ねる。
「ええっと先輩は一般公募枠の最後のマスターです。先ほど到着なさったようで」
「ふむ、少し待ってくれたまえ」
男性が腕時計型の端末を操作し3D映像を投影する。
それは達哉の見たことのない電子機器であった。
まぁ彼のいた時代は1999年代である。
そこから16年の月日が流れればこうも技術は発展する物であろうと達哉は納得し。
或いは魔術的な物も組み込まれている故に、こう異常な発展をしているのかもしれないと納得する。
男性は映像に触れて名簿をスライドさせ。
達哉のプロフィールを閲覧し確認する。
「確認した。ようこそ周防達哉君。私はレフ・ライノール、此処の一部門を任されているものだ」
「周防達哉です、よろしく」
軽めの自己紹介を済ませて。
互いに握手を交わす。
達哉のペルソナが震えた。
「それよりもだ。作戦ブリーフィングが始まっている。マシュも周防くんも急いでレイシフトルームへと向かってくれたまえ」
「あのレフ教授、先輩は此処に来たばかりで、それとシミュレーションの酔いにやられて酷い疲労です、とてもではないですが。
レイシフトとミッションに耐えられるような状態では」
「それでも一応ブリーフィングだけでも出てほしい、ミッションから外すように私が手配しておくが。万が一もある。
長旅でマシュの言う通り疲れても作戦の概略だけは触りでも知ってほしいからね」
「ですが」
「ここにきている時点でそういったことは覚悟しているはずだ。違うかい?」
食い下がるマシュを諭しつつ。
視線を達哉に向けてそうだろう?と問う。
達哉も一応知っておきたかったゆえにYESと答えた。
それに満足したかのようにレフは満足げに頷きつつ場を後にする。
「すいません、先輩、レフ教授も疲れているようで何時もと様子が違いますが優しい人ですから・・・、あの」
「大丈夫だよ、マシュ、俺は気にはしていない」
いつもと違い多少強引なレフを見て達哉が不快になったら不味いとマシュがフォローを入れる。
もっとも達哉は気にしては居ない。
強引さで言えばハンニャの方が酷かったからだ。
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眠気がひどい、向こう側での疲労も残っている
今思えば心安らかに寝ていなかったなと思い、こんな頽落では所長も怒るだろうというものだ。
達哉はブリーフィングから叩き出されていた。
あまりにも長い演説につい寝てしまったゆえである。
レフがフォローする間も無くヒステリックに叫び散らされ叩き出されて現状に至るということだ。
叩き出されたのち、達哉を心配してブリーフィングルームから自主的に出てきた。マシュに案内されて。
自室へと目指している。
その過程でぐるぐると思考が廻りに廻った。
達哉を取り巻く状況の巡るましい変化に彼自身がついて行けず。
自分自身のあり様に整理を付けようと思考が動いている。
本来であれば彼自身が此処にいることが可笑しいという状況だからだ。
前のように此処の周防達哉に憑依したという訳でもない。
憑依したのなら前と同じように憑依先の記録が分かるはずだからである
となると向こう側からダイレクトに転送されたとしか思えない、情報を組み合わせるとそうなる。
『奴』ならそれが可能だ。『奴』は向こう側とこちら側を完全に把握していた。
となると人間という知性体がいる限りその領域は『奴』の領域となるだろうから
人理焼却、人理定礎復元。
まるで自分が行った罪を起因とする事件を解決するようなことである。
ともなると巻き込まれたという方が正しい。『奴』は確信犯であり愉快犯でもあるからだ。
マシュと別れ、渡されたカードキィを差し込んで部屋の扉を開く。
すると甘い匂いが鼻孔を擽った。
砂糖菓子などの特有の匂いである。
達哉の家庭がああなる前は。パティシエを目指していた。兄の「克哉」が作ってくれたものだ。
そしてそういう類の菓子でベットを占領し、PCを目の前に置きながら熱狂しているポニーテールの白衣の青年が一人存在していた。
ヒップホップが流れている。曲調からして、アイドル物であろう。
「あの・・・」
達哉は邪魔して悪いかなと思いつつ声をかけた。
「わぁ!? だっ誰だい!? ここは空き部屋でボクのサボリ場所だぞ!! 誰の断りで入ってきたんだ!?」
なぜかオーバーな驚き方をされた挙句に逆切れされた。
達哉はため息をつきつつ自分の認識上の一応の身分を言う
それを言うと。青年はあーと声を出し
「とすると君が最後の適合者か、ボクはロマニ・アーキマン、此処の医療主任をしているよっと、ところで君、ブリーフィングはどうしたんだい?」
青年の名は「ロマニ・アーキマン」というらしく、しかも医療主任ときていた。
つまるところカルデアのメディカルスタッフの統括責任者である。
ぶっちゃけ、今の状況的にさぼっている方が可笑しいのは達哉以上にロマニの方が可笑しかった。
「いや、その睡魔に耐えられなくて・・・」
事実を述べると、ロマニは納得したかのようにうなずく
「うちの所長はプライドは高いからなぁ、学校の朝礼中に眠っていた生徒を怒鳴り散らして起こす校長の如しってやつさ。もっとも所長もあの年でアムニスフィアの当主に据えられちゃってね、あれでよくやっている方なんだけど。まぁ貴族同士の争いやら柵やら、プレッシャーとストレスでああいつもカリカリしているんだ。そこにスポンサーが望んでもいないカルデアスの不調と特異点の観測で余計ね。でもね悪い子じゃないんだよ、そこはわかってくれると嬉しい」
「・・・自分も家でちょこっと、いろいろありましたので。所長の心境はわかります」
オルガマリーを見て思ったことはそれだった。自分と一緒だったから。
同類というのは嫌でも目に付くものであるから。
二度と会えぬ、何故置いて行ったのと言うことすら許されなかったのだろうあの様子ではと達哉は思いつつ言葉を口にする
「あっなんかごめん・・・」
ロマニはバツが悪そうにするが達哉は気にしていないと返しておいた。
一応、決着をつけた分だけ自分の方が恵まれているからである
「ところで、ミスタ・ロマニはなぜここに? 見た感じでは危険が伴うような実験の様ですけれど・・・現場待機しておかなくていいんですか?」
「それは君と一緒さ。僕も怒られて待機命令中なのさ、うんちょっと君」
「はい?」
ズイっとロマニが達哉に接近し医師らしく達哉を見る
「体調がすぐれないのかな? 見た感じ、精神的に疲弊しているみたいだ。カルデアのテストでってところじゃなさそうだ、目の下に隈もある・・・、というか肉付きは良いけどあからさまに栄養失調気味だぞ。君、うん、叩き出されたのはある意味正解だね」
ロマニはパッと見た感じで達哉が具合の悪いことを医者らしく理解した。
パッと見た感じは良いがよく見てみればどこかで断食やら過酷なダイエットでもしてきたの?というレベルである
もし達哉がそのままレイシフトに参加するならロマニは身を張って止めて、医療室に叩き込んだであろう位にはだ。
「とにかく休むこと。腹が減っては戦は出来ぬっていうしね、良いね?」
「あ、はいわかりました」
「あと寝てからでいいから医務室に来なさい詳しい診察はそこでするから、じゃ僕はここ「Pipi」っと呼び出しだ」
言葉を発しつつノートPCをたたんでお菓子を片づけつつロマニはそういう
達哉としても医者の言うことには逆らえない。
状況の理解に思考が追い付かない。とにかく休み。ロマニの診察を率直に受けることにする。
そうしている間にもロマニは腕時計型の通信機から投射される映像に向かって何か話している。
『ロマニ、そろそろ実験開始だ。あと人員のバイタルサインに若干の乱れがある、一応の事も考え現場に戻ってきてくれたまえ。医療室で待機しているはずだから二分もあれば来れるだろう?』
「うん。もちろんさ。それにしたって。バイタルの乱れ? 緊張してるのかな。一応麻酔とメディカルキットをもっていくよ」
『心得た。だが早くしてくれよ。オルガマリーのストレスも限界値なんだから』
「分かってるって。じゃまた」
『ああ、また』
どうやら通信内容に聞き耳を立てればついにレイシフトとやらが始まるらしいのだが」
「・・・ロマニさん、ここから管制室まで走っても結構時間かかりますよ」
達哉は来た道を重い出しながら言う。
地味に長い道のりだった筈だったなと。
戦闘で走り慣れてはいるが、二分となれば無理だと達哉も断言できる距離をだ。
医者故体力はありそうなロマニであるものの、運動し慣れているといえば無いと言い切れるレベルの彼が二分で到着できるかは疑問である
「あははは・・・どうしよこれ」
「いや俺に聞かれても」
乾いた笑いを浮かべてロマニは問うてくるが。達哉に満足のいく答えを持ち合わせてはいなかった。
「うんこりゃ雷確定だ・・・。あ、これ食べてくれていいから」
「あ、ありがとうございます」
煤けた感じでロマニは菓子の乗った皿をテーブルの上に置き食べてもいいからと言いながら部屋を後にしようとする。
達哉はいたたまれない気持ちで礼を言いながらベットに足を運び・・・
施設全体が振動に包まれた。
腰を抜かして倒れるロマニ。
達哉は長年の経験から。これが爆発による振動だと瞬時に見抜く。
「ロマニさん!? 爆発があったみたいだが。そんな風になる実験だったのか!?」
「まさか!? 逆だよ!! 爆発なんてそれこそ爆薬でも持ち込まなきゃ起きないようになっているはずだ!? 周防君、僕は管制室に急ぐ、君は此処に居るんだ」
確かに指示に従えば楽だろう。
だが彼の脳裏にマシュ・キリエライトという存在がよぎる。
出会って一時間程度とはいえ、久々の人との会話で情が沸かないとなれば嘘になるから。
救いたい、無事であればそれでいいと思い。
彼はロマニの申し出を断った。
「一応、こういう状況にあったことがあります、簡単な救命処置程度はできます、だから自分も・・・」
「・・・わかった。手伝ってくれ」
管制室が爆破された以上人手は手薄になっている、正直猫の手も借りたかった。
危険だといっても彼の決意は揺らぐことは無いだろうと彼の瞳に灯る決意の意思を見てロマニは了承する。
::::
達哉は炎の中を走る。
広大な管制室の中を生存者を探してだ。
だが大よそあるのはかつて人だった物の肉片と血と臓物である。
コフィンに入った連中はコフィンの保護機能というよりも作りの頑丈さで傷は一見してないように見えるが。
生命維持装置との繋がりが途絶えており一刻も早くコフィンから出さなければならないような状況でもある。
だが自分ではどうのこうのできるような物でもないため施設復旧が早急に終わることを祈るほかない。
ため息をつくと。
―フォーウ―
フォウの鳴き声がした。彼? も此処に居たのかと鳴き声のする方向へと行く。するとそこには。
「うう・・・」
崩落してきた瓦礫に下半身と左腕を押しつぶされたマシュが倒れていた。
「マシュ!!」
達哉が彼女の名を叫んで、駆け寄る。
瓦礫の撤去は不可能、ペルソナ能力で消し飛ばせば。その衝撃に彼女が耐えられないし瓦礫がどこに飛んでいくかわかったもんじゃない。
そして・・・
(・・・・だめか)
達哉は回復魔法をマシュに掛ける。
すでに出血量からみて下半身がぐちゃぐちゃだろう。ショック死していないのが不思議なくらいであった。
それでも彼は駆け寄り回復魔法をかけた。一種の鎮静魔法のようなものだ。痛みだけを和らげるだけ。
「先・・・輩・・・、にげて・・・ここは、崩壊・・・します」
「後輩見捨てて逃げる先輩がどこにいる!! 大丈夫何とかなる、だから・・・」
暖かい光がマシュを包み込む。
達哉の顔は苦渋に満ちていた。根拠なき希望を言っているのではない。
達哉自身知っている、もうこれは助からない、だからせめて安らかにという自己満足。
自分も傷つける優しい嘘。
マシュもそれを見て己が死期を悟る。だから彼の心情を理解したのだ。
「先輩・・・一つ。だけいいですか?」
今日が出会って、初めてだけど。
心優しい嘘を付けるくらい優しい人だった。
だからこう思う、ありがとうと。
「ああ、なんだ?」
「手を握っていてほしいんです」
「分かった」
警報は解除されず鳴り響く中
達哉がマシュの手を握る。
暖かい掌だなぁと思いながら。
2人はレイシフトの光へと飲まれていった。
-かくして罪人は特異点をめぐる戦いへと巻き込まれる、それは破滅か栄光か、いずれにせよ、英雄譚という物は結果的には不幸な結末で終るのが常である-
外宇宙を観測しようとした某魔神柱のせいで『奴』が紛れ込んじまった話。
所長が何とか生き残って人間的に成長したりペルソナしたり。
憑依神をたっちゃんと召喚したり。
ジャンぬが覚醒して冥王になったり。
オガワハイムあたりでロマニが『奴』に宝生永夢ゥ!!されたり。
獅子王と第一の獣が『奴』にm9(^Д^)プギャーされたり。
『奴』が賢王に賢王パンチでボコられたりする話。
『奴』とか英霊たちとか初投稿で人生初めてのSSなので書き切る自身がないので誰か続き書いてください。