Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです 作:這い寄る影
ウィリアム・マクレイヴン 1955―現在
森の中を三人が走る。
シュミレーターの中ではあるがすべてが生々しい。
三人の勝利条件はゴールにたどり着くこと。
三人の敗北条件はゴールにたどり着けないことである。
状況が悪化しているのに訓練というのはどういうことかというと。
ひとえに、座標の特定が出来ていないからだ。
大まかな座標は捉えているが、正確にかつ安全にレイシフトを行うには、座標の特定が重要な作業だからである。
このまま強行しても。ペルソナ使い二人の適性値はSであり、存在証明作業自体は簡単であるが。
特異点への突入への作業は、また別物だ。
強行するとなると目標の到達ポイントも知らされぬまま、夜間に厚い雲の中をヘイロー降下するようなものである。
安全に着陸できるはずもない。
『だからこそ特定作業はスケジュール通りにします。着陸ポイントを逸れて戦力分断で各個撃破は笑えないわ』
『然り。私も所長に同意する。敵の戦力分断は勝つ上で基礎中の基礎。こちらがされれば負けは必須ゆえに』
だからこそ状況を聞いた。オルガマリーは突入開始予定と特定作業はスケジュール通りにということを言って。
宗矩も戦力が分断される、リスクは避けるべきであると同意する。
もっとも訓練内容は変更となった。
まず味方との連携の強化である。
自分の味方が、何が出来て何ができないのかということを、理解する必要性が在る。
故にサーヴァント組、マスター組に分かれての紅白戦だ。
敵として、相手が何が出来るのかということで、分かることもあるし。
達哉たちが強敵を相手にした際の対処法を学ぶためである。
達哉はあるが、オルガマリーとマシュにはそれがない。
それを学ぶための手っ取り早い手段としての模擬戦である。
達哉は抜身の刀を下段に構えて、この森というシチュエーション下を苦も無く進む。
マシュは所々たどたどしいところもあるが問題はない。
だがオルガマリーは息も上がり、ヘトヘトであった。
「先輩、少し休憩にしますか?」
「・・・ああそうしよう」
マシュが息の上がっているオルガマリーを倒れないように支えつつ達哉に指示を仰ぎ。
達哉はそれに了承した。
戦闘行為をしつつ一時間は走っているがゆえにである。
もっともその裏では。
(マシュ、所長を守れ、そろそろ仕掛けてくるはずだ。気配で察するのは無理だから、落ちている枯葉や草木を見て、不自然に動いたところに居るぞ)
(了解しました)
念話で、達哉は指示を出す。
園境と呼ばれる、書文の所持する気配遮断スキルである。
原理は内家武術の物であり、世界との同一化に等しいスキルだ。
まず、これを使われ、不意を突かれれば防ぎようがない。
されど、存在自体が完全消失したわけではない。
落ちている枯葉の動き、生えている草木の不自然な動きで察そうと試みるが。
何もない。
「-----」
「-----」
たらりと達哉とマシュの頬に冷や汗が流れる。
人間の感は正確ではないが滅多に壊れない。
つまり、どこにいるかは分からぬが、どこかにいるということは察することが出来た。
射程圏内である。
「タツヤ!! マシュ!! 5時方向!!」
「ブラフか!? マシュ!!」
「了解!!」
周辺警戒に集中しすぎたと。
達哉はオルガマリーの叫びを理解しつつ。
マシュが瞬間的にオルガマリーを左手で担いだのを確認し場を離脱する。
次の瞬間には迫撃砲でも、たたき込まれた衝撃が三人を襲った。
一方別所。
クーフーリンは自身の蹴りで投擲した。槍の成果を見て満足げに頷く。
真名解放などはしていないが。かの大英雄であるクーフーリンの槍の投擲だ。
下手なCランク宝具なんぞ目ではない威力が発揮される。
「いい反応だな、ほんと。」
三人が三人の欠陥を補いつつここまで走ってきて、自分の槍の投擲までを凌いだのだから誉めるべきであろう。
いい反応をすると、クーフーリンは率直に褒めた。
一方の彼の隣に居る、宗矩は表情変えず、双眼鏡を覗き込んでいる。
「で? どうするよ? じいさん」
クーフリンは宗矩に問う
これ以上続ける意味があるのか?という意味も込めてだ。
「このまま続行するべきでしょうなぁ・・・、主殿の判断力は良い物ですが。
少々目の前のことにとらわれ過ぎている気がありまする・・・、マシュ殿は単純に思考の経験不足が過ぎますな。
主殿の指示なしで動けぬのは致命的かと。所長殿は純粋に鍛錬不足と経験が足りて居ませぬな」
宗矩はそう評し打つ、クーフーリンの言いたいことも無論、それは理解していた。
これ以上は戦場で生き残ってこそ培う物だからだ。
がしかし、VR訓練ということで話は若干変わる、その感触は現実的で。
現実の実戦とほぼ変わらぬ、死なぬとわかっていても、感触はある。
故に実戦に置ける経験値の会得数値の半分程度にすぎぬが、されど半分、だが貴重な半分を訓練で培えれるならば、それに越したことはない。
故に続行だ。
そして、この訓練が過酷なのも。
『ヒャハハハハアアアアアアア!! 見つけたぜェ!! マスタァァアアアアアアアア!!』
『もう追いついてきたのか!?』
不意打ちになれる為、書文は追手役で参加、さらに。
そこに戦えど倒れぬ、という恐怖を演出するべく宗矩が投入したのは我らが戦国DQN四天王。
痛みも発生するのだから、誰だってチェーンソウで抉られる感覚は味わいたくはない。
火事場のバカ力や覚醒も起きるという物であろう。
さらに李書文がハッスル気味である。
緊張感は増すという物だ。
無論、ショック死などは無いように痛みはある程度カットされるが。
それだけである。
状況に放り込まれた。三人からすれば、たまったものではないだろうが・・・・
これも実戦に置ける準備でしかない。
いざ特異点に突入するとなれば、これよりきつい状況なんぞダース単位で押し寄せてくることは明らかである。
訓練を終えてシュミレーターを終えた達哉たちは、軽めの運動の後。
明日に備えることになった。
気付けば、―明日だな―と達哉は一人呟き施設内をうろつく。
何時もの赤いライダースーツ姿ではなくカルデアの制服姿でだ。
赤いライダースーツはクタクタに草臥れ果てて。
今日に至るまでに、サバイバルをしていたと言うこともあって汚れや損傷が目立つため。
この服装が彼の今のスタイルである。
母校の夏服を思い出して、むず痒いのだが、まぁ時期に慣れていくだろうと思っておくことにする。
先も述べた通り、明日は早い。
故に休息に専念しているのだが、達哉はどうにも気分がせわしくなってしまい。
施設内をうろついていた。
爆破による破損は未だ、なお生々しい傷跡が残っている。
修繕作業は人手が足りず。
レイシフトの正常稼働に持っていくことと、館内の生体維持機能を稼働させるための修繕で限界であった。
達哉はその様な中を歩き、大破した喫煙ルームのすぐ横にある、奇跡的に生きていた自販機へと寄ろうとする。
そこには奇怪な客が居た。
「なんじゃこりゃ―――――――」
自販機の前に突っ立って。
長可が自販機から取り出したものを右手で保持するため、愛槍の「人間無骨」を左手で持ち左肩で担ぎつつ。
右手でもった炭酸飲料の入った。ペットボトルを見て呆然と呟いていた。
彼の気性の粗さは、達哉も痛感済みだ。
故にキレないだろうなと身構えて。
「めっちゃ、侘びてんじゃねぇか・・・、え? なにこれ? まじでこんなもんがあんの?」
長可、死後ではあるが、人生初の炭酸飲料に感動していた。
安くて誰でも買える上に。
美味い、液体自体も透明で綺麗で、その中に無数の泡が浮いては消える。
確かに現代人からすれば、そこら辺にある、ごく普通の炭酸飲料だが。
戦国時代の人間からすれば。
美しく泡を発生させる透明で美味しい水があるのかとショックを受けるのも仕方がない。
「器も良い、中の液体が見れて状態も確認できる、らべるだったか? デザインもシンプルで分かりやすく飾り切らずに実に良い具合だ・・・ まじでこれ使い捨てなのか・・・」
ペットボトルも文明の利器である。
戦国では硝子というぜいたく品を使ってやっとできるような、器が使い捨てとは、長可には信じられない様子であった。
その様子に達哉は疑いすぎかと思いながら、感動に浸っている長可の横を通り過ぎて。
通貨を入れて、ボタンが点灯したのを確認し。
スポーツドリンクを購入する。
投入された通貨は、お釣りの排出口から出てくる。
こんな緊急時である、金を払う理由は無いとして。
ダヴィンチが手早く改造し、通貨はスイッチの機能を立ち上げるためのトリガーとなっているのだ。
ボタンだけ押して飲み物が出るという改造は配線変更が面倒くさいということもあって、こういう形式に落ち着いたわけである。
達哉は排出口から缶を取り出し。
場を去ろうとするが。
「おいマスター」
「? どうかしたのか? 森さん」
「いやよぉ、バイクの事について分かんねぇんだけど、少し説明してくんねぇか?」
「バイクですか・・・・、どのような?」
「これだよ、これ、なかなかいいだろ?」
長可が懐から雑誌を取り出し、差し出して、あるページを指さす。
そこにデカデカと映し出されていたのは・・・スーパーカブであった。
(以外!! それはカブ!!)
達哉、内心で驚愕。
長可の事だから、スポーツタイプに感銘を受けるかと思いきや。
カスタムカブに心打たれていた。
「いや、確かに良い物だが・・・」
「だろぉ? 洗礼されたフォルム。実用性を重視した内燃機関、そして誰でも買えて、やる気さえあれば好きにカスタムできる拡張性能・・・・、実に良い。侘び寂びの一つの極地だな」
(森さんの中での侘び寂びとはいったい・・・)
侘びとは、貧相、不足の中に心の充足を見出す意識のことを言い。
寂びは、静寂さの中に奥深い物や豊かなものを感じられる美しさの事を言うのだが。
それが果たして、カブに当てはまるのかは果てしなく謎である。
いいや長可の言う通り見れば見るほど、侘び寂びがあるのかもしれないと。
達哉は思い始めている。
「ところで、マスターもバイク持ってんだってな?」
「・・・ああ、まぁな」
「どんなのに乗ってるんだ?」
「ああ、これだ。」
とりあえず、ベンチに座り二人でバイクの話で盛り上がる。
「・・・なぁマスター」
「なんだ?」
「・・・気にすることねぇんじゃねぇの?」
「?」
「向こう側の事だよ」
「!?」
達哉は驚愕した。
長可が向こう側の事を知っているとは、思わなかったからである。
いやでもと、思う。
アーサー王は自分の事を知っていった。
とすると、ニャルラトホテプに関わった連中は知っていても不思議ではないだろう。
だが、返り忠を良しとせぬ、長可が知っていて自分を殺さぬとはどういうことかと、達哉は思わずにいられない。
「俺がアンタをなぜ殺さないって顔だな?」
「ああ・・・まぁ、俺は森さんの嫌う裏切りをやったからな・・・」
「どこが?」
「え?」
達哉は仲間との約束を裏切ったのに、なぜ殺さないと間接的に言うと。
長可はどこが裏切りななのかと言い返し。
逆に達哉が、鳩が豆鉄砲食らったような顔をする羽目になる。
「俺がマスターの事を知ったのは此処に来る途中だったんだよ.
ニャルラなんとかって奴に、マスターの過去を見せられた。
リセットの事も知っているが・・・、三人ともアンタに忘れるなと最後に言っていったよなぁ? アンタは孤独に耐えられなかったとはいえ律義にそれを守った。結果起きた破滅にも、ちゃんとツケを払った。
これ以上、なにやれってんだよ? よくやったと思うぜ? 俺はァよ」
寧ろよくやった方だろうと、長可は述べる。
右を向きながら左を向くなんて不可能だ。
孤独に耐えられなかったというのは減点であるが。
忘れるなという約束を取り付けたのは、ほかならぬ三人である。
故にその約束を守り。最後まで足掻きツケをを払ったのだから、長可的には何も言うことはない。
「それをゴチャゴチャと、あの貌無しはヨォ・・・本人が良しとしてるのに。重箱の隅突く様に、勝手に評論しやがって、うぜぇから、わかったわかったってな感じで殴って追い返してやった。」
しれっと、トンデモないことを長可はやっていった。
彼もまた。すべてを受け入れた上で足掻く者である。
彼自身、生前、自分はそうなのだと受け入れて、それでも生き抜き、むごたらしい末路を迎えてもそれでよしとした男である。
当然「すべてを受け入れ、なおも足掻く」ということが出来ている人間だった。
故に殴って追い返すことは可能である。
「森さん・・・」
「誰もが俺みてぇな奴じゃねぇのは、俺自身わかってる。まぁゆっくり割り切っていけばいいんじゃねぇの?」
「・・・ああ、わかってる」
誰もが自分みたいな奴じゃない。
故にゆっくりと割り切っていけばいいという。
達哉はうなずき肯定した。
周りの流れが激動過ぎて、そう簡単に割り切れるものではない。
誰もが割り切れるアドバイスを言い。その上で長可は達哉のペースで割り切ってしまえば良いと諭す。
長可から見ても、そう簡単に割り切れるモノではないと、理解できるがゆえにだ。
レイシフトも近い。
だからと言って、焦って無理に割り切っては、ろくでもないことにしかならないのは身をもって知っている。
「じゃぁな、マスター、俺は自室に戻って寝るわ、明日は早いしよ、マスターも寝ろよ」
「わかった・・・」
長可はそういいつつ場を後にした。
「・・・・俺なりのペースで割り切ればいいか・・・」
達哉は懐からジッポライターを取り出し蓋を開けて閉めて。
金属音を鳴らした。
レイシフト当日。
レイシフト準備は十全であった。
ヒューマンエラーを避けるべく、マスター勢も含めての交代制の多重チェックを重ねたのである。
これ以上はしようがなく、誰もが最善手を重ねて、成功確率を埋めたのだ。
後は埋まらぬ分が上手くいくことを天に祈る時である。
「先輩、レイシフトスーツの着心地はどうでしょうか?」
マシュが大盾を担いで更衣室を出てきた。
それと同時にオルガマリーもレイシフトスーツを身にまとい更衣室から出てくる
達哉は廊下の壁に背を預けて待っていったのだが。
予想以上のアレさっぷりに二人から目を若干そむけた。
二人とも超が付く美少女である。
そんな二人がタイツスーツの如き服を着ていれば。眼福という物である。
特に達哉は20歳に来年には突入する男性だ。
スタイルの良い二人が、そんな服装をすれば目のやりどころに困るのは必然である。
「大丈夫だ。マシュ、所長、問題はない」
「・・・所長・・・先輩の顔が若干赤らんでいるようなんですが? 突発的風邪でしょうか? 今日のレイシフトは中止した方が・・・」
「違うわよ、マシュ、こいつスケベな思考でも大方してたんでしょうよ。このスケベ」
「ち、違う、お、男ってのはな・・・」
オルガマリーの指摘が達哉の胸にグサリと図星が刺さり。
達哉は誤魔化そうと男というのはトークで、誤魔化そうと必死になる。
そんな青春の一幕であるが時は待ってくれれない。
カルデア職員のダストンが時間だと声を掛けに来てくれたのを機に。
三人が思考を切り替え管制室へと向かった。
到着すると、突入予定のサーヴァント三名と。
情報サポートを担当する、ロマニとダヴィンチが待っていた。
「では始めましょう、所長」
「ええ」
ロマニの言葉にオルガマリーが頷き、端末を操作し現状を3D映像として出力する。
「私たちが一に突入する特異点は。A.D.1431年、フランスよ。かの聖女ジャンヌ・ダルクが処刑された年ね・・・」
オルガマリーの説明に達哉は首を傾げた。
「・・・特異点化する要因が見当たらないんだが・・・・」
「私も同意です、ジャンヌ・ダルクという歴史的人物は重要なファクターですが・・・、この時期でのジャンヌ・ダルクはパリ解放に失敗して。転換期と言いづらいのでは?」
二人の言いようはジャンヌという人物は確かに大役を果たしたが。
この時点では歴史に与える影響力は少ない。
この後の戦いではシャルル七世の戦いの方が歴史的には重要だ。
「そうね、ジャンヌ・ダルクは大して重要なファクターじゃぁない、だけど、その後歴史的に大きな役割を果たした。シャルル七世が殺されたらどうかしら?」
「・・・崩れるな」
オルガマリーの問いに達哉はそう返す。
この後、起きる近代文明に必要なことがなくなれば人理は崩れる。
この時代でそれほどの影響力となれば。
ジャンヌ・ダルクが蘇ったというよりシャルル七世が殺されるという方が拙い。
「だがそれじゃ・・・、崩れた後の事はどうにもならないんじゃないのか?」
達哉の言うのも、もっともな事である。
すでに失われているなら戻しようがないはずだと。
そこの説明はロマニが行った。
「まぁ普通ならそう考える、でもね、この世界には人理定礎と呼ばれる、いわば歴史の保存があって。それで運行されている。
ようはゲームでいうところのセーブ機能だね、それがあるから普通なら特異点が発生して横やりをしても人理は遺物とみなし違法セーブデータとして消去してまうんだ。
特異点の発生前にね。
つまりどう足掻こうが現在地点からの干渉で歴史は変えられない、
でも今回は話が別だ。
冬木の特異点で回収された、便宜上”聖杯”とも呼べる膨大な魔力リソースの反応が、発見された七つの特異点から検出された。
流石にこれほどの。魔力リソースで歴史改変を行ったとなると、その世界のセーブデータの防御プログラムを抜いてねじ込むことが可能なんだよ。」
普通の常套的手段で人理は揺るがない。
だが干渉に使うエネルギー源が願望機の聖杯となれば話は別だ。
世界の内側で大よそ叶えられない願いはない強力なソレを使って強引に割り込むことによって。
無理やりに維持を行うことは可能である。
「つまり・・・聖杯という楔があるからこそ、特異点は特異点として機能するということか?」
「そう言うこと。聖杯という楔さえ回収してしまえば。あとは人理の仕組み的に無かった事になり歴史は元通りってわけさ」
逆に言えば聖杯なくして特異点の維持は不可能なのだ。
故に聖杯さえ回収してしまえば、特異点は消去修正され、消失するのである。
(・・・すべてを、無かった事にか・・・)
チクリと達哉の心の胸に刺さった棘が痛み出す。
まるで。自分がもし帰らなかったらということを突き付けられているように感じてだ。
「タツヤ、質問は以上かしら?」
「・・・いや、あと一つだけ・・・ いくら過去とはいえど流石に、この服装は不味くないか?」
達哉の言い分も最もである。
タイツスーツが主流であった時代はほとんどない。
というか達哉の知りうる限り、タイツスーツが主流であったことはない。
その認識はある意味間違っておらず。
此処に居る、全員の視線がクーフーリンへとむけられた。
彼の姿はタイツスーツであったからである。
「・・・なんで、皆で俺を見るんだよ!?」
「いや、奇怪な事もあったものよ、と思ってな・・・」
「書文の爺さん、俺だって好きで着てるわけじゃないんだが・・・」
書文の言葉は此処に居る、全員の心を代弁していた。
ケルト神話にもクーフーリンがタイツスーツ着ていたという記述は一切ないのだから。
彼の姿はおかしいのである。
文献的に見れば。普通であればキャスター時の姿を豪華に仕上げたような恰好が彼の姿のはずだ。
それが何故に、こうなるのだと思われてある種必然である。
「じゃぁなんで、着てんだよ」
長可の問いにクーフーリンはため息を吐きつつ説明する。
「これは、俺の師匠の手製の逸品の一張羅でね、そこらへんの鎧より頑強に出来ていて俺の動きに着いてこれる」
クーフーリンは大英雄であるゆえに。生半可な衣類では持たないのである。
持っても数回の出撃でズタボロになるという有様であった。
がしかし、このタイツスーツはクーフーリンのスカサハの特注の品であり。
どの様に酷使しても壊れることはないため愛用していたのである。
話しが脱線しかけていた為、ダヴィンチがわざとらしい咳払いをして周囲の意識を引き戻しつつ。
技術的話をする。
「レイシフトスーツはあくまでもレイシフトの補助だ。だから向こう側についたときには。君たちの何時もの衣類になっているから大丈夫さ」
「そうか・・・すまない、魔術については素人以下だから分からなかった。」
「気にしなくても良いよ。分からないのが駄目じゃなくて分かろうとしないのがダメなことだからね~、達哉君は学ぼうとしているから、そう後気になることはないよ、これから学んでいけばいいさ」
ダヴィンチにそう励まされつつ達哉はうなずく。
だがそれに付属する問題もまた在るのだ。
それを気にした。宗矩が口を開きダヴィンチに問う。
「ダヴィンチ殿・・・それでも、仏蘭西の方々から見れば我々は奇怪なのでは?」
現代服は当時の人からすれば奇怪だ。
マシュは鎧の部分で、まだなんとか、誤魔化せるだろうが・・・
書文の衣類は現代衣類に近く。
宗矩に至っては着物であり、長可に至ってはパッと見てロボだ。
さらにクーフーリンは全身タイツである。
どの時代であっても実に奇怪な姿をした不審者集団にしか見えない。
「・・・旅芸人でごり押してくれたまえ」
ダヴィンチ、匙を投げる。
だが全員分の衣装を用意する暇もなかったゆえに、それでごり押しするしかないかと全員が思うほかなかった。
無い物ねだりはできないのだから。
そしてこれ以上の説明は不要とい判断した。オルガマリーが作戦開始の号令を口にする
「現在、フランスの定礎値の悪化を確認済み、これ以上の観測による情報の会得は徒労に終わる可能性が大として。
詳しい作戦は現地での様子と情報を会得次第に決めるわ。
私を含めて、タツヤ、マシュはレイシフトコフィンに搭乗し現地入り、サーヴァントは自動転送だから、レイシフトルームで待機していて。
此れより、人理を再編するための。一大プロジェクト「Grand order」を開始するわ!!」
オルガマリーの開始宣言と同時に全員が所定の位置につく。
彼らの旅路が始まった。
『A.D.1431 憎悪深淵紛争 オルレアン』 『冥府の聖女』 人理定礎値A-
開幕
という分けで。今回はサラリと巻いて。
サーヴァントの方々との模擬戦と森くんとたっちゃんのコミュ、特異点突入回でした。
森くんがニャル様をさらりと退けていますが。
ニャル様的に本気ではなかった上に、森くん現実見た上で是非も無しと言えるような人なので殴り返せただけです。
森くん的にはたっちゃんの約束破りは。忘れるという約束は破ったが、三人から言われた忘れるな約束は守ったし。
やらかした事のツケ払いもちゃんとやったため、返り忠判定にはヒットしません。
第一特異点現状
ニャルが展開した噂フィールドによって邪ンヌ勢が強化&クラスチェンジしたことによる一方的すぎる戦況と噂フィールドのせいで矛盾だらけになった為。定礎が悪化している。
このままだと異聞帯かあるいはモナドマンダラに侵食され第六特異点状態になりかねない状況
エリちゃん CCCなどでフィレモン&ニャルのダブルラリアット試練を受けた結果、原作より成長している。現在第一特異点でマリーと共同戦線を張りつつ西へ東へ。休む暇なし。
Fateキャラのになぜかペルソナキャラっぽく見えてきた今日この頃。
マリー、ニャルの試練を受けて跳ね除けた一人。ニャルの介入を察知している
アマデウス、マリーと共にニャルの引き起こした怪事件に挑んだ一人。エリちゃんプロデュースという地獄巡業中。
マルタネキ、邪ンヌに召喚されておらず抑止力側として参加。町の防衛任務中
すまないさん、邪ンヌが与えた呪いは解除されているが”槍”で傷を受けたため虫の息状態。
免罪剣、マルタネキのサポートをしつつ精力的に活動中
ジャンヌ、いまのところまだ通常営業中、そう今はまだ・・・・
邪ンヌ、戦況を見極め中、本家の方はあえて見逃している。
次回 第一特異点ですが、仕事がマジで忙しいため、更新は遅れるか。
更新できない場合、未完で終わらせるかもしれません・・・
こんな拙い小説を読んでくださっている、皆様方には本当に申し訳ないのですが・・・
いつの間にやら高い評価を付けてもらい嬉しさもあるのですが、反面プレッシャーが凄まじく、仕事のトラブルで私自身精神状況もよろしくなく。
このままでは自分自身でも納得のいくものが書けない恐れがあるからです。
本当に未完となった場合は申し訳ないですが・・・ご了承ください。
コメント返しについてのアンケート
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コメ返した方が良いよ
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コメ返ししなくても良いよ