Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです   作:這い寄る影

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死神さ、お前を地獄に送るためにやってきた。

八手三郎「宇宙刑事シャリバン」より抜粋。


「掃討戦」

指弾というものは、懐からコインを取り出す。指に掛ける。腕を伸ばし照準を付けるというアクションが必要だ。

故に照準を付けて引き金を引く銃にはどうあがいたって勝てない。

それに銃は連射も効くのだ。

どうあがいても勝てるはずが無いのだが。

 

「遅ぇ」

 

ゾンビのドタマを次々とコインでカチ割っていく。

今は速射性重視なため単発発射と違い動きは見えるが、それでもサブマシンガン染みた動きだ。

それに動きが見えると言っても腕がブレているように見えるため決して遅いという訳ではない。

単発発射ならそのブレですら見えなくなる。

ペルソナよりあり得ないというパオフゥの指弾の技量は本当に異様だった。

と言っても相手はゾンビ。たかが頭にコインを叩きこんだけでは動きを止めるのが精々だ。

それをカバーするのが織である。

動きさえ止めてしまえば織が直死の魔眼での一閃だ。確実に殺せる。

しかも今の織はサーヴァントだ。

身体の能力も生前より強化されており動きは速い。

と言っても本職にはさすがに劣る。

経験が純粋に足りていないのだ。織はサーヴァントになる前の生前、誰も殺していないのだから。

対等な敵及び格上の敵という存在との戦闘経験が無い。

例えば訓練が刀でいう所の鍛造なら実戦は砥石による磨き上げである。

故にこの中の面々では明確に劣っている。相性が良いから前に出ているに過ぎない。

それに今、パオフゥが降ろしているのはミカエルだ。

相性が普通で燃費がよろしくない、マハンマオンは連射できる代物ではない。

こういった閉所では死体や霊体を焼き切るペルソナを下手に使えばフレンドリィファイアになりかねないからだ。

だから相手指定での確率即死のマハンマオンを使えるペルソナであるミカエルか、精密操作が堪能な専用ペルソナである「プロメテウス」しか札が無いのもキツイ場面である。

幸いなことに織とエリザベートが最前線で頑張っていること。

盾持ちのマシュがいることによって敵は抜けて来ないから、護衛対象であるロマニを引き連れてもお釣りは来る。

 

「しっかしこんだけゾンビ・・・なのか? 集めて何がしたいんやら」

 

三階通路の掃討が終わり、ゾンビの死体に対し屈みこんで死体見分をするパオフゥはぼやいた。

織に切断されたゾンビの肉の中からは見たこともない配線が出ている。

通常の人体にはありえない器官だ。

 

「織、なんか当事者として知っているか?」

「オレは早期に退場した身だからな。式かコクトーならなんか知っているかもしれないけれどな」

「やっぱり俺一人で接触しておくべきだったか・・・」

「いや止めて正解だぜ。式なら一人で突入しかねないし、コクトーなら余計な所に首突っ込むかもしれない」

「あの夫婦、どんだけ無軌道だったんだよ・・・」

「いやーさすがに結婚して娘も出来たみたいだし落ち着いたと・・・思いたい」

「元男性人格、そこは言い切ってあげろや」

 

両義夫婦と娘の話題で盛り上がっているところを尻目に。

医者のロマニが死体を改める。

 

「これ人形に近いなぁ」

「そうなの?」

「そうなんですか?」

「人形にも様々な種類があるからね」

 

当代で最高の人形師と言えば蒼崎橙子だろう。

彼女は人体の究極を求め、自らと変わらぬ人形を作りだした。

それは人形の一例であり、様々な種類が存在する。

今回のはまさにゾンビと言っても過言ではなく、

魔術的に作る意義が薄い代物だった。

 

「此処まで腐った死体に回路を埋め込んでゾンビを作るなんて第二次世界大戦の頃のナチとか米国じゃないんだからさ」

 

そう、筋肉繊維が死にきっている死体に魔力駆動の回路を埋め込んだ所で魔術的にも価値は薄い。

精々、第二次世界大戦の裏で起きていたナチの不老不死計画などの純粋な戦力生産としてなら分かるという物。

もっともこのオガワハイムでは死の集積と太極の具現の為の歯車だったという事は皆知らない。

橙子は町を去った後であるし、当事者である式と幹也には感づかれないために聞き込みを行っておらず、主犯格の「荒耶宗蓮」及び協力者の「コルネリウス・アルバ」はこの世を去っている。

どう足掻いても知りようが無いのだ。

 

「通路の掃討は終わった・・・次は部屋の中か・・・」

 

ロマニがぼやくように言う。

確かにゾンビ共は兵器として優秀ではあるが、

武装が鉄パイプやら消火器程度だ。

銃火器やら専用防具で固めている訳もなく。第三特異点の狗兵のようにムド&ハマ系に耐性を持っている訳でもない。

精々物理的に死ににくいという事なので神経弾を持ち出せば容易く駆除できる存在であるし、

サーヴァント能力やペルソナ能力者の前では敵ではない。

それにペルソナ抜きでも理不尽技量のパオフゥがいるのだ。

時代が時代であればステイナイト時空のように小次郎のような代用品として英霊召喚されるくらいには理不尽技量だ。

さらに言えばパオフゥはペルソナ能力も持っており理不尽っぷりに磨きが掛かっている。

だから此度のこの町で起きた死んだはずあるいは過去の残滓から再現された魑魅魍魎共を相手に無双できた訳である。

と言っても指弾の練度はペルソナ抜きでもおかしい。

達哉曰く「ペルソナよりありえない」との事なので神秘が乗ればサーヴァントすら射殺する。

それはさて置き。三階通路の掃討もそう言う訳で楽々と終わった。

織は相変わらず不満気だ。

なんせパオフゥがペルソナで撃ち漏らした敵に対し動きを止めるために射出したコインで動きを止めた敵を斬るだけで戦闘もくそもない。

もっともカルデアのアマネからは本当のプロは殺し合いなんぞせず一方的に殺すのがプロたる所以と言われては文句も言えない。

加えて織のナイフ捌きに苦言を呈したいところであった。

ナイフとは本来細かく動かす。

人間、急所を斬りつけられれば案外浅くても、例えるなら三寸切れば死ぬ。

もっとも今更言った所で治りはしないとアマネは思っていたので口には出さなかったが。

織のナイフ捌きを見るに本来の獲物は刀だろうと思った。

いわば刀の術理でナイフを振るっているに等しい。

これは達哉と宗矩との鍛錬を眺め、保安部に入る以前、戦場でバリバリ働いていた頃に時々戦場にいる刀使いなどの動きを見ていたから見極められたのである。

閑話休題。

 

『織、刀が欲しいならこっちで見繕うが・・・』

「いいよ、俺はこの目とナイフで十分さ」

 

だからアマネは気を働かせて刀を用意すると織に提案したものの、

やんわりと断られた。

所詮は如何にサーヴァントと言えども亡霊であるし戦力もそろっている。

自分は死んでいるし、万が一自分に何かあってもパオフゥという特記戦力も居るのだ。

故に余計なリソースを自分に裂いてほしくないと思うのが織だった。

 

「それよか・・・次何が出てくる?」

「エリザベートだったか・・・、自分のシャドウが出てきたんだよな?」

「ええそうよ、もっとも私の場合、第一の方で・・・未来の私っていうもう一人の自分と対話して受け入れていたからシャドウが出てきても似たり寄ったりの内容で、すぐ受け入れられたから消えたけど・・・」

「じゃ、なんで部屋に閉じ込められていたんです?」

 

織の問いにエリザベートはそう答えた。

第一でカーミラという未来の自分というシャドウの亜種の説得と受け入れ。

第二では自分の黄金期という影の受け入れを行ったのだ。

今更シャドウが出てきても速攻で受け入れられる。

だったら何で、部屋から出ずに助けを呼んでいたのかというマシュの質問に対し答えは十分に単純だった。

 

「いや、普通に扉頑丈なのよ。槍で突いたりぶん殴ったり梃子にしたりしたけれど、開かなくてってねぇ・・・というかなんで私また巻き込まれているの!?」

「今更ですか!?」

「今更なのか・・・」

 

今更と突っ込むマシュとロマニ。

パオフゥはエリザベートも奴に目を付けられたなと同情の視線を送り、

織はどうでもよさげにしている。

ニャルフィレの両名に目を付けられるという事はそう言う事である。

つまるところエリザベートは期待の成長枠という訳だ。

最も此処にいる全員がソレを知らず。

この後全ての主要特異点に投入されることは知らない事だった。

 

「それにこの特異点、私と相性最悪よぉ。声が効かない敵が多すぎるし槍で突くよか場外ホームランした方が良い敵多すぎだしぃ」

 

この特異点はエリザベートと相性が悪い。

まず宝具が純粋に場所を取りすぎな上に超振動が効かない敵が多すぎる。

もう何体、槍をホームランバットに見た立てて突き落としたことか。

只のゾンビなら超振動で何とか出来るが、

相手は人形の一種、つまるところゾンビというよりフレッシュゴーレムというタイプの人形である為、

一度試した物の利きが薄く、上記の通りとなった。

 

「言っておくけど。室内で私の宝具は使えないわよ」

「当たり前だよ、あれじゃ室内でいくら指向性弄ってもこっちの鼓膜が最初にまいっちまう」

 

そう言う事もあり、絶賛現状エリザベートはホームランスラッガーとしてしか役に立てなかった。

室内で使用すればいくら指向性を弄ろうとも大惨事確定であると織は言う。

 

「問題はシャドウが具現化するってことだ。嬢ちゃんは一度や二度対峙しているから対処できただけで、今から突入しようとしている部屋にいる奴が対処できるかどうかは未知数だ。最悪暴走を覚悟した方が良い」

 

無駄話は此処までとばかりにパオフゥが指摘する。

そう、上記でも述べた通りエリザベートは試練を掻い潜っている。

故に部屋に閉じ込められる惨事となった訳だが。

次の相手は違うだろう。果たしてシャドウに対抗し飲み込める精神性があれば万々歳だが。

逆に言えばシャドウに飲み込まれる精神性だったら最悪だ。

もう殺すほかない。

 

「行くぜ」

「ああ頼む」

 

織がナイフを構え扉を殺そうとするのに合わせてパオフゥはもう射出体勢だ。

相手がシャドウに飲み込まれていると分かった刹那。

コインがサーヴァントの頭蓋を瞬時に砕く。

この噂で具象化した聖杯戦争での必殺の陣形だ。

あの噂で弓兵クラスとして顕現した浅上ですら何もさせずに殺しきったのだ。

上位サーヴァントでも防ぐのは難しい布陣である。

織が相手の攻撃を殺しパオフゥが指弾かペルソナの多重布陣だ。

更には背後でマシュも控えている。シールダーのクラスの異名とデミサーヴァントとしての性能、今まで鍛えた武は伊達ではない。

二人を必ず守り通せる。

エリザベートも此処まで来た猛者だ。特異点の記憶も引き継いでおり、霊基をカーミラと統合し最適化したことで、

かなりのレベルなのだ。

まず負けない。

最悪の要素であるロマニもマシュとエリザベートが絶妙な間合い取りをキープしているため増援が来ても対処できる。

 

「よし殺した」

 

織のその言葉と同時にパオフゥが扉を蹴破る。

神秘的なロックと強度を持つ扉の鍵さえ殺してしまえばペルソナ使いのパオフゥであれば、

この程度は容易い。

だが相手が敵か味方か確定していない以上。

突入即射殺というわけには行かない。

そして突入した先では。

 

「ブーディカ!!」

 

マシュが歯を食いしばり軋ませ彼女を睨む。

第二では敵として出てきた存在「ブーディカ」である。

歴史上はあり得ぬネロとの共闘関係にあった筈なのに。

彼女を止めるどころかニャルラトホテプの化身たる「ソーン」の暗躍を許しあの黄金郷という名の地獄を形成するのを許し。

挙句敵対してきた人物だ。

主要時間軸とは違い明確に敵であった上にオルガマリーが達哉が居なければ死ぬところだった要因の一人である。

憎悪や復讐心、逆襲劇という物をジャンヌ・オルタから学び。

それ以降ニャルラトホテプに煽られ、それらに触れ続けどういう物かを自覚したマシュに躊躇の文字はない。

寧ろ怨敵である。

だが不思議なことに殺意が多少沸いてきても直ぐ殺そうとはならなかった。

というか殺意が一定以上沸いてこない。”まるでその感情機関だけ抜け落ちた”様に。

 

「あら? 戻ってきたのね、アナタ」

「わりぃが・・・俺はアンタの夫じゃねぇ」

 

パオフゥがマシュを左手で制しつつ右手でコインを額に照準しながら言う。

もう正気ではないものの、

まだ確証は得られていないからだ。

 

「夫じゃない?」

「ああ」

「嘘よ、私達は幸せな「織」「おう」」

 

暴走の危険な匂いをかぎ取った瞬間のパオフゥには躊躇が無かった。

確かに見たのだ。ブーディカの瞳が黄金色に輝くことを。

それ即ちシャドウに飲み込まれているという確証に他ならない。

もうわかったなら躊躇はない。シャドウに飲み込まれては更生の余地はないからだ。

故に無拍子で炸裂したコインはブーディカの額に見事にめり込む。

言っては悪いが彼女は戦士や将軍としての才能は超一流ではない。

だがしかしここで下手に話を引き延ばせば、アヴェンジャー化し厄介なことになるのは確定。

故に確殺に走る。

コインはパオフゥ以外に反応できぬ速度で射出された。

此処にいたのが達哉とかクーフーリンとかシグルドとか長可とか宗矩、書文なら反応出来たかもしれないが。

先も言った通りブーディカは戦士としては言っては悪いが女王上がりであり、反応できるはずもなく。

額にコインが直撃し即死。

だが念を入れてパオフゥの指示によって動いていた織が死線を見切って切断し殺す。

霊核も破壊され死線もなぞられた。

これで生きているのはどこぞの水晶谷の蜘蛛とか原初の母とか普遍的無意識下の邪神とか、そういう類くらいな物だろう。

流石にこう一蹴もしてみせればさすがの殺意に濡れたマシュも同情を禁じ得ない。

 

「よかったのですか?」

「影の無ぇ・・・人間なんかいるかよ。誰しもそこのエリザベートの嬢ちゃんみたいに立ち向かえる人間は居ねぇ。飲み込まれる人間も見てきてる」

「あの!! 今持ち上げられても困るんですけど!!」

「別に持ち上げちゃいねぇよ。しょうがないってことも分かるんだ俺からすりゃあな」

 

そう、あの舞耶ですら一度は影を受け入れられなかった。あの達哉ですら孤独から解放されたくて忘れられなかったのだ。

結果、向こう側が生まれた。

誰だって己の影を受け入れるなんてことは出来ない。

パオフゥも仲間が居なかったらどうなっていた事やらと想像はしたくなかった。

だがブーディカには誰も居なかった。夫は世を去り、娘は凌辱され自身は鞭打ち刑だ。反逆するなと言う方が無理があるのだ。

 

「だからこの話は終いだ。事が起こった時点で誰も止めなかった時点で終いなんだ」

 

懐から煙草の箱を取り出し。

其処から一本煙草を取り出して口に咥え火を着けて肺に紫煙を潜らせて吐き出しながらパオフゥは言う。

そうとも。生きているなら助言をやれるし幾らでも手を貸してやれる。達哉の時のように。

だがサーヴァントは死人だ。

もう終わった物語なのだ。物語と言う幕が下りた以上手助けできることはない。

その上、シャドウに飲み込まれている。ならもういっそ殺すほかない。

無駄な理想論を持ち出した所で現状救いはどう足掻いてもないし、座に帰る以上学習のしようもない。

まさしく終わっているのだ。

都合の良い物を持ちだした瞬間、ニャルラトホテプはそこを突いてくる故に。

だから確殺したのだ。

終わった物語に終わりという名の引導を渡しただけに過ぎない。

これは達哉とかマシュとかオルガマリーとかカルデアの職員とか生きている者達の物語。

決して死者が主役を張る物語ではないが故にだ。

過ぎ去ったものを取り戻そうとすれば必ずしっぺ返しが来る。

サーヴァントの願いは其処が過去でがあるため止めなければならない。

だからもうシャドウに飲み込まれた時点でパオフゥは即殺を決意したのだ。

 

「さて次の階に行こうぜ」

 

織の言葉に一同部屋を出て三階から四階へと上がる。

其処は地獄だった。

今まではゾンビやら幽霊が徘徊していたが、

四階にはそれらはおらず、嵐のように強大な魔力が荒れ狂っている。

常人なら意識を保つことさえ難しい。下手な魔術師なら魔力に当てられ発狂していただろう。だが何故かロマニは驚くこそすれどそのようなことはなかった。

パオフゥはそれを訝しんだ。

当たり前だ。前の情報交換によるとロマニはマリスビリーの付き人で魔術の技量はそこまでではないと聞いていたからである。

だがそれ以前に・・・

 

「やばいわよ・・・これ」

 

エリザベートがぼやく様にいう。

そう、これ程の魔力を渦巻かせているという時点で最上位サーヴァントと同じだ。

流石に第一特異点の喰いまくったジャンヌ・オルタ程ではないにしろ。

やろうと思えばオガワハイムの制圧くらいは楽勝な程の存在である。

そんな存在が黒幕の言う事聞いて、四階に居座っているという矛盾が生じていた。

 

「令呪で縛られて門番に据えられているという可能性は?」

 

パオフゥが当然の疑問を口にする。

確かにそれならば、これほど強力な存在でも縛れるだろう。

だがしかし、

 

「令呪は確かに強力だけれど拘束時間もある。黒幕はセイバーも抱えているんだから令呪を切るのは現実的じゃないね」

 

令呪も万能ではない。元々マキリが作り出した理由が、

聖杯降臨の為の自身のサーヴァントに対する拘束具兼首吊り用の縄だ。

そう、聖杯を満たし根源に行くためには七騎の魂が必要であり元々からしてサーヴァントの願いを叶えさせず自害させるための処刑器具でもある。

それでも使用回数は3回と制限されているし、令呪の効力時間にも制限が発生する。

故に安々と切れる札ではない。

このオガワハイムのマスターはセイバーのマスターでもある。

聖杯戦争が冬木式なら令呪は残しておくのがベストでそれ以外はアウトという事になる。

だからカルデアではあらゆる場面でサーヴァントとの齟齬が出ない様に訓練や食事に仕事を通してのコミュニケーションを行い信頼関係を築かせているという訳だ。

因みにカルデアの令呪補給も無限ではない。聖晶石を加工して補填されているため、リソースは使われているのが余談となる。

閑話休題。

兎に角、この通路にいる誰かは明らかに敵意を持っている。

全員が戦闘態勢に入った。

 

接続―我が本体(アクセス・我がオリジン)

 

その瞬間である。声がした。清廉でありながらまるで奈落の底から響くような声が。

嗚呼、例えるなら光も闇も知り尽くし、まるで地の底で尚も燃ゆる薪の様な異常性があるような声が響き渡る。

 

「パオフゥさん!!織さん!! 下がって!!」

 

マシュが叫ぶように言って最前列のパオフゥと織と入れ替わるように前進。

大盾を構えアンカーボルトを撃ち込み完全防御態勢に映る。

 

「十三拘束強制解除、唸れ十三の牙 最果てにて輝ける槍(ロンゴミニアド)

「宝具解放します!! 疑似展開/人理の礎(ロードカルデアス)!!」

 

マシュの宝具が起動、それと同時に竜巻のように漆黒の光がマシュたちに殺到してくるが、

マシュがそれをロードカルデアスで防ぐ。

しかしアンカーボルトで大盾を固定しているのも関わらず、

徐々に押され始めた。

加えて障壁にも罅が入り始めた。何時もの出力が出ない。

 

「どうして?!」

 

心は猛っている気力だって充実している。

この様子ではいつもと同じ出力が出せるはずなのに出ない。

 

「このままつぶれろ」

 

敵の声が響く。どこかで聞いた声の様な気がした。

思い出すのは妖精郷の門を閉じながら旅立っていくあの日の彼女の姿。

ありえない。彼女はまだ生きている。

ならサーヴァントとして出てくるはずがない。

という事は可能性の一つだろうと思い歯を食いしばる。

それと同時にオルテナウスの駆動系が赤色に発行し出力を上げる。

だが相手の宝具の威力は尋常ではなく皆を庇う事で精一杯だ。

障壁に亀裂が入ると同時に相手の宝具も収束し光が消えていく。

 

「っはぁ!!」

「ほう・・・?」

 

限界一杯まで水中にいたような息苦しさから解放されたかのようにマシュは大きく息を吐き吸い込んだ。

そして相手は感心したかのように声を上げる。

相手は漆黒の馬に乗り、漆黒の鎧に身を固め、右背から光の片翼を生やした禍々しい騎乗槍を持った騎士だった。

 

『これは奇怪だな。サーヴァント反応と悪魔反応が同時にある』

 

ダヴィンチがそう言う。

そう目の前のサーヴァントはサーヴァント反応と今まで対峙してきたアマラの悪魔どもの両方の反応があったのだ。

だがそうも言ってられない。

パオフゥはマシュの右から、織が左から飛びて出て攻撃を行う。

弾き出される指弾は今度は連射型ではなく一点集中の早打ちと命中を考えた速射型だ。

此処にいる誰もが視認できない動作で射出される。

相手はよほど高位のサーヴァントなのか、かろうじて反応するが槍で弾く前にコインの速度の方が早く兜に直撃。

コインがめり込む。

少しよろめいたのを確認し、血涙が出るほど目を見開き織が相手の右腕の鎧と鎧の隙間を縫うように一閃。

だがそれは完全に反応され手甲で弾かれてしまう。

そして騎乗槍での横一線、織の耐久力で食らえば一撃で終わってしまうものの軽業師染みた曲芸で織はそれを回避後退する。

 

「すまねぇおっさん。眼の力を全力にして見たけれど、アイツ、死線が見えねぇ・・・」

 

血涙を拭いつつ織が言う、普通なら死線さえ見切れば鎧ごと切断できるのだが。

相手にはそれが見えない。だから先ほど鎧の間狙いに変更したのだ。

 

「ならヒット&アウェイだ。エリザベートの嬢ちゃんも前に出てくれ、三人で一気に押し込む。マシュ嬢ちゃんは押し込められなかったとき、もう一度アレを防いでもらう必要があるから中衛だ」

「「「了解」」」

 

カルデアからの情報、織の直死の魔眼が通用しないという情報から推測するに、

相手は間違いなくアマラの悪魔か天使と融合している。

それなら直死の魔眼が通用しない理由も通るという物。

だったら人体での殺傷圏内に持っていくしかない。

生憎とパオフゥの指弾は鎧を貫通出来ない。やろうと思えば手段はないことにはないが。

此処からは高速戦闘になる。

当てられる自信は在るが同じ個所をワンホール狙いでとなると難度は跳ね上がる故に。

 

「来いプロメテウス!!ワイズマンスナップ!!」

 

だがパオフゥにはペルソナがある。

プロメテウスと自身の指弾による弾幕形成だ。

 

「貴様、本当に人間か?」

「そう言っている暇が、オメェさんにはあるのかよ?」

「ちぃ!!」

 

弾幕形成は囮。

本命は先ほど敵の兜にめり込んだコインに直接指弾を当てる事。

数発ヒットもさせればぶち抜ける。

そしてそれらを囮にエリザベートか織の一撃を通すことである。

数とは暴力だ。質が数を圧するという例は何度も述べてきたが。

今回の場合はカルデア側に質と数が揃っている。

圧倒できない理由が無いのだ。

パオフゥが囮となり必死に弾幕張って敵に宝具使わせないように封殺し、

その隙を織とエリザベートが突くという形を取っている。

向うからすれば一つの油断が一瞬にして致命傷となり替わる緊張した戦場だ。

逆に言えば敵がロンゴミニアドを再射出出来る隙を作ってしまえば仕切り直しのジリ貧になりかねない。

故の速攻なのだが・・・

 

「マハコウガオン!!」

「そっちまで使えるのかよ?!」

 

まさかのアマラの魔法スキルまで使ってきたのだ。

咄嗟に光耐性にあるペルソナに切り替えて防御するパオフゥ。

軽業師のように回避する織。アイアンメイデンを召喚し盾にするエリザベート。

ロマニを大盾で守るマシュ。

状況は仕切りなおされた。

最果ての槍が駆動音を立て駆動する。

 

最果てにて輝ける槍(ロンゴミニアド)「させっか!」!?」

 

ロンゴミニアドのチャージの隙を突いてパオフゥが指弾を射出する。

このタイミングだけは無防備だと判断したが故だ。

連続して射出されたそれは、敵の兜にめり込んだコインに連続して当たり。

遂に兜を粉砕、頭をカチ割らんとするものの。

 

「させぬ!!」

 

壊れた幻想の容量で兜部分を指向性を持って爆破、リアクティブアーマーの要領で指弾を防ぎきる。

だが爆発の瞬間、爆風が視界を遮る。

その瞬間を織は逃さない。

 

「死人が」

 

ナイフが走り、

 

「オレの前に立つんじゃない」

 

敵の首を半分程度切り裂いた。動脈切断、気孔切断によって通常は致命傷だが相手はサーヴァント。

まだ死なない、敵は憤怒の中槍を向けようとして。

 

「私を忘れてもっちゃ困るわね!!」

 

エリザベートが召喚したアイアンメイデンが織の盾となり。

疾駆していたエリザベートの槍が突き出され、敵の心の臓腑をえぐり取る。

更に追撃とばかりにパオフゥの指弾が顔面の左側に突き刺さった。

終わりである。

ジャンヌ・オルタとかの理不尽再生能力が無いのなら普通のサーヴァントはこれで終わりだ。

ぐらりと敵の身体が揺れて馬から落馬する。

 

「・・・子機より本体へカルデアの驚異度を送信、変更を要請・・・」

 

敵はアルトリアだった。あの海での記憶と違い黒装束だったし、別の可能性という奴だろう。

だからあの海の日の交友を結んだアルトリアとは違うと分かっていても、

マシュにとっては気持ちのいい物ではなかった。

だが死体蹴りをするかのようにパオフゥはプロメテウスの拳をアルトリア・ランサーオルタの頭部に叩き込み破壊する。

 

「パオフゥさん!?」

 

その行動に驚きを隠せないマシュ。

だって相手はもう放って置いても死ぬ。

なのになぜこんな死体蹴りみたいな真似をと。

 

「・・・こいつ俺らの情報をどっかに転送しようとしていやがった」

 

パオフゥはそう言う。

アルトリア・ランサーオルタの死に際の言葉はまるで機械の様だった。

そして情報収集でもしているかのような言葉だった。

子機から本体へという言葉もまるで別に本体がいるかのような風だったのだ。

パオフゥはそこらへんシビアだ。

見逃すわけにはいかない。

 

「とすると・・・ここのセイバーの分霊かなんかか?」

「織はそういう線見れたか?」

「一応、細い糸みたいなのは、もっともあの戦闘だったから切断する余裕なんて無かったけどな」

「・・・まぁ一応用心に越したことはねぇだろ、カルデアの方でもそう言うやり方してんだろ?」

「ああ、サーヴァントを使っての情報収集の為にね。レイラインを使ってマシュ以外のサーヴァントは視界ジャック的な感じでね」

 

パオフゥの問いにロマニはそう答える。

当たり前だ。やっていることは戦争なのだ些細な情報でさえ欲しい。

故に特異点内部ではカルデアのサーヴァントは視界をカルデア観測班が常時監視し円滑な指揮に役立てている。

アルトリア・ランサーオルタもその類だったのだろう。

言いようからするに噛ませ犬。

カルデアにぶつけて戦力と状況を計るための当て馬だったのだろう。

 

「そう言った意味では即死させて正解ね」

 

エリザベートがパオフゥのやったことに納得し頷く。

下手に戦力を計られても困るし。ほとんどの手札を現状切っている状態なのだから。

口封じは当たり前だ。

 

「では次の階に?」

「だな、長居する理由もねぇしな」

 

そして皆が次の階へと足を運ぶ。

結論から言うと似たり寄ったりだった。

シャドウに飲み込まれたサーヴァントを相手にしつつ、

森に現れた超級ゴーストをハマ系で速攻浄化し、

次の階層への扉が開かれたので次に進むを繰り返す。

もうゾンビや幽霊あいてにも慣れてきたころ合いだった。

 

『屋上付近に強力な魔力反応、間違いなく居るよ』

「分かりました、皆さん準備は良いですか?」

「ちょっと待ってくれ一服取らせてくれや」

「パオフゥさん」

「いいだろ? 減るもんじゃあるまいし」

「私にも一本!」

「オレにもくれよ」

「駄目に決まってんだろうが!! いくらサーヴァントと言えどオメーら未成年だろう!!」

「「ケチー」」

「ケチで結構だ!」

 

そんなやり取りをしつつ、パオフゥが煙草を一本吸いきって。

屋上に突入する。

其処でマシュは唖然とすることになった。

なぜなら。

 

「待っていたわよ、もう一人の私」

「うそ・・・なんで・・・」

「第四終了から感じていたでしょう”私”が抜け落ちていたことに」

 

屋上のフェンスに背を預け皮肉気に嗤っているのはマシュだった。

所謂もう一人の自分、ブーディカにですら速攻で出せる殺意が沸かなかったのもこのためだ。

第四終了の時点でマシュの殺意はもう一人のマシュ。

つまるところシャドウとしてこの特異点にセイバーのサーヴァントとして具現化したのである。

 

「準備は良い? 荒耶?」

「いつでも」

 

そしてマシュシャドウの隣に立つ黒装束の陰険な男がぬるりと出現する。

 

「では始めましょうか、どっちが残るに相応しい人格かをね」

 

二次とも呼べるオガワハイムでの決戦。

マシュにとっての試練が幕を開けようとしていた。

 

 

 

 

 

 




技量が極まっている為、ある意味たっちゃんより理不尽なパオフゥ巻きでした。
防御を固めていても推定サブマシンガンに勝てる技量の持ち主ですからね。
これ位は当たり前、当たり前(白目)
原作とは違ってブーディカさんとマシュはほぼ面識ないですからね。
マシュにとってはむしろ敵だったしネロを止めてくれる大人だと後で思って結果そうはならず所長がたっちゃんいなけりゃ死んでいたかもしれない要因の一人ですから、故に同情無しの見敵必殺には何も感じておりません。
まぁこのオガワハイムはニャルに乗っ取られて罪のシバルバーや罰のアメノトリフネに近い感じです。
故に本作ではオガワハイムのサーヴァントは自分のシャドウと対峙させられ絶賛暴走中という訳です。
メッフィーは毒にも薬にもならないとハブられました。
あと騎士様ですが、マシュと相性良すぎて、自分がどういう状況か気づいていないんですよね。
その辺りは次回のマシュシャドウことセイバー戦でやります。
アルちゃん&下乳上(お眼めグルグル)

ああ後レオニダス一世とノッブは本特異点には居ません、第七でラハムの教育やバビロニア防衛で忙しいですからね。

騎士様「アカン、このままではマシュが・・・力の出力弱めないと向こう側にいってまう!!」
ニャル「お前、まだ気づいてないの?www」
騎士様「なにが・・・」
ニャル「お前はもうとっくにお前ではないことにだよwww」
騎士様「え?」
ニャル「え? じゃないがwwww とっくに気づいておけよ、まぁ顔面右ストレートは覚悟しておくんだなぁwwww」







騎士様「え?」





フィレ「お前の出番は当初から無いよ。まぁ、ある意味ではあるが切っ掛けとしてだ」





騎士様「え?」





という訳で次回、オガワハイム決戦。騎士様にマシュ渾身の崩拳が炸裂する回ですね。
荒耶宗蓮・・・いったい何ミーなんだ・・・・

次回は遅れに遅れると思います、自律神経がががが・・・・
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