Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです   作:這い寄る影

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未来への切符は・・・いつも白紙なんだ。

TRIGUNより抜粋。


「人理の盾 根絶の剣」

「では始めましょうか、どっちが残るに相応しい人格かをね」

 

マシュシャドウはそう言う。

姿は何時もの私服だが。

 

「ペルソナ」

 

次の瞬間、心臓から漆黒の杭が飛び出て、その周囲をアイビーとスノードロップの花が飾っている。

更に漆黒の機械的バトルドレス、オルテナウスに酷似した鎧に左背にスラスターを追加したような漆黒の鎧を身に纏い。

 

「ウリエル!!」

 

ペルソナとして右手に鉄板を刳り貫いたかのような大剣の様な漆黒の鉄塊こと「ウリエル」を呼び出す。

この形態のペルソナにはマシュも見覚えがあった。

他でもない、ジャンヌ・オルタのペルソナと同じ類、即ちカタルシスエフェクトタイプのペルソナだ。

恐らくモチーフはウリエルが持つとされる根絶の剣だろう。

ウリエル自体は有名だが武器の剣自体は無名だ。だから便宜上ウリエルと呼ばれているのだろうことは予想がついた。

シャドウはその性質上元になった人物を狙う。

故にパオフゥの指弾は照準が合っていた。

幾ら背の片翼のスラスターを噴射させようがパオフゥの方が早いが・・・

 

「それは見切っている」

 

荒耶?が間に入って銃と釵が合体したかのような武器を使ってコインを弾く。

 

「テメェ…見てやがったな」

「そうだとも、この聖杯戦争は所詮貴様らに対する生贄だ。見ていたとも」

 

そうとも、この聖杯戦争自体が噂で具現化した偽りの物でしかない。

全ては生贄、マシュとパオフゥと織が乗り越えられるかどうかの程度の物でしかない。

故に荒耶?は全てを見ていた。マシュシャドウも同様にだ。

対策の一つや二つ立ててくるのは当たり前な訳で。

相手が倍速で動くなら、その前に動いて事前に行動を置いておくという異様な読みで、

パオフゥの指弾を防いだのだ。

普通なら無理であるが、何度も動きを見ていた以上不可能ではない。

 

「おっさん!! こいつも死線が見えねぇ!!」

「ペルソナ使いか!!」

 

そして荒耶?にも織の目でも死線が補足できなかった。

という事はペルソナ使いかと思うのも無理はない。

 

「そんな筈はねぇ、以前にやりあったことは在るがペルソナは使ってこなかった「よそ見している余裕があるのかね?」!?」」

 

織は生前に荒耶?と交戦している。だがペルソナを使ってこなかったし獲物は素手だ。

間違っても釵と拳銃が合わさったような武器は使ってこなかった。

その経験の対価が支払われることになる。

一点集中型でいつも通り即殺を狙ったのが仇となった。

パオフゥの指弾が間に合わず、織に対して釵の切っ先が向けられ銃口が火を噴く。

それをエリザベートのアイアンメイデンが割り込んで防ぐ。

口径はパラベダム弾と変わらない。

オルガマリーの使用していている対サーヴァント用の神経弾魔改造式マグナムとは天と地の差だ。

といっても急所を狙われればどうなるか分からない。

相手は推定ペルソナ使いなのだから。

弾丸にペルソナパワーを込められたら織程度の霊基では致命足りえるかもしれないのだ。

 

「邪魔よ」

「くっ」

 

一方のエリザベートも咄嗟に織のフォローに回ったお陰でマシュシャドウの一撃を槍で何とか受け止めるにとどまり、

そのまま弾き飛ばされた。

だが余りの剛力である。自ら後方に飛ぶという選択肢を取っていなければ、ウリエルで下手すれば防御越しに真っ二つにされていたであろう。

案の定、そう言った最善の咄嗟的行動を取ったにもかかわらず。

エリザベートはふっ飛ばされフェンスに激突した。

 

「エリザベートさん!?」

「よそ見をしている暇があるのですか? もう一人の私」

「くっっ!?」

 

光の片翼を羽ばたかせマシュシャドウは反転。

マシュに襲い掛かる。

殴りつけるようにウリエルを振り下ろし、マシュは大盾で防ぐが、

足腰に来る衝撃だった。

 

―芯通し!?―

 

書文から習った発勁の技の一種である。

相手の攻撃の真芯を捉え、得物を持つ手を痺れさせ落とさせる、あるいは次の動作を遅らせる技だ。

マシュの場合、相手の攻撃の芯をずらし受け止めることで防御負担をなくしつつカウンターで相手の真芯を捉え武器をはたき落とす。

あるいは次の攻撃動作を遅らせるなどの使い方をしていたが、

本来であれば攻め手が行う技でもあり、そう言った点では攻め手のマシュシャドウに一歩遅れを取ってしまう。

簡単に言えばマシュは受動的、マシュシャドウは能動的なのだ。

どうしても同じ技を有していた場合、後者の方が早いのは言うまでもない。

書文に教えを乞うていても彼は訓練の為に加減してくれていたのだ。

故にここでは通らない。

更にマシュシャドウはそのまま押し込むようにウリエルを密着させ。

 

「マハフレイダイン」

 

核熱スキルを起動させる。

その瞬間、ウリエルの刀身が多少別れ砲撃形態に移行。

密着状態故に多数攻撃を一身に受けることになったマシュもふっ飛ばされる。

 

「情けないですねぇ、もう一人の私」

「なにが」

「何がって、いまだに自分の力から目をそらしていることにです」

「ッ」

 

怖い・・・

そうマシュは常々思っていた訳である。

デミサーヴァントであっても拳を一つ振るえば民間人を容易く殺傷出来ることにだ。

だが同時に相手を倒したいという気持ちもあった。

盾持ちとして機能していない。

怪我をするのは何時も達哉かオルガマリーがゆえに第三で剣を取ってしまった。

 

「それでも私は!!」

「違う違うそんなことを言っているんじゃないのよ、もう一人の私」

「え?」

「騎士様の皮を被った力があるでしょう?」

「何を・・・」

「知らないならそれでいいわ、どのみちアナタは此処で死ぬ、私がアナタの墓を掘る」

 

そう言ってニタリとマシュシャドウが嗤い、マシュに対して猛攻撃を仕掛け始めた。

幾重にも交差する大盾とウリエル。

だが時間が経っていくたびにマシュの手は群れて痺れ膝が屈しかける。

それに慌てて痛む体を引きずりつつもエリザベートが援護に入ろうとして。

 

「来るが良いサタン」

 

荒耶?が遂にペルソナを呼び出した。

赤き七つの頭部と漆黒の身体、複数数の翼を持つ天使を召喚する。

 

「アルファブラスタ」

 

光が炸裂する。

継続ダメージ系の最高峰、アルファブラスタだ。

基本、達哉は耐性があるかもしれないと使用は控えていたが、

この場に限ってはパオフゥ以外誰も耐性持ちではない。

故に遠慮なく使える。

 

「アステロイドボム」

 

故に荒耶?も遠慮はなしだ。躊躇なく広範囲技を使ってくる。

此処に至ってマシュたち五人は理解した。

まず片付けるなら荒耶?のほうが先決だと。

こうも広範囲技をぶっ放されていればいずれロマニが消し飛ばされかねない。

パオフゥは焦った。

完全に分断されていると。

マシュはマシュシャドウに完全に抑えられている。

そうは言っても遊撃手が足りないのだ。

現状エリザベートがそうだが、技術という点ではマシュシャドウより荒耶?の方が上だ。

間合いと先読みでパオフゥの指弾すら無効化してくる。

加えて高位のペルソナ使いな上に達哉よりも優れたサタンを降ろしているのだから手の出しようがない。

故にパオフゥも切り札を切った。

 

「ルシファー!! オメガクラスタ!! アステロイドボム!!」

 

ペルソナの最高峰の一つにして何故かパオフゥだけが最高相性を発揮するペルソナ「ルシファー」である。

結果、サタンとルシファーのアルファブラスタとオメガクラスタにさらにはアステロイドボム同士がぶつかり合い。

宝具級の凄まじい光を放ちながら相殺される。

もうこうなれば一種のフラッシュバンだ。

グラサンかけておいてよかったとパオフゥは安堵する。

だが織が怯んだ。

そこを荒耶?が銃口を向けて狙う。

 

「させないわよ!」

 

エリザベートも意識が緩んでいた為、高位スキル同士のぶつかり合いの光にやられずに済んだ。

その為、マシュとマシュシャドウへの横槍はまだマシュが耐えている為、

緊急的に不味い状況の織と荒耶?の間に入って割り込んだのだが。

 

「温い」

「っ」

 

槍が釵の羽の部分で絡め捕られ。

そのまま腕をひねり上げる要領でエリザベートの槍を持ち手から離させ、ついでに弾き飛ばす。

そしてそれと連動して向けられる銃口。

これが複合武器の強みだ。

整備に手間こそかかるが動きを即座に連動させる事ができる。

つまり隙が生まれないという事だ。

しかもペルソナ持ち、それも高位だ。達哉やパオフゥに克哉・・・ほかの面々同様にサーヴァントとやりあえる。

堪ったものではない。

現にパオフゥが指弾を連射するもののサタンの拳が全て叩き落とし、

後ろから奇襲を仕掛けた織のナイフも絡め取られる。

危うくエリザベートと同じように弾き飛ばされる瞬間にナイフを引いたから弾かれずに済んだが。

三人掛かりでこれだ一瞬の気も抜けない。

一方のマシュはというと・・・

 

「そら、教えてもらったこと全然生かせていないですねぇ!!」

「くっ・・・!!」

 

マシュとマシュシャドウは実力自体は互角だ。

当たり前である。シャドウとは自らの分身、マシュが覚えた技の数々は十全にマシュシャドウも使える。

しかも文字通り肉体に刻み込み反射の領域である。

ならば普通なら互角の戦いが繰り広げられる事であろうが、

互角の技量を持つ対手同士が武を競い合った場合、

物を言うのは精神論だ。

技術、体力が互角とくれば精神力も互角で無ければ成立し得ない。

何故なら体を動かすのには体力を使うし、頭で消費されるカロリーも多い。

故にメンタリティが上回った時こそ上下の判別が付く、あるいは相手の武を上回る事が出来るのである。

マシュシャドウのメンタリティは絶好調だ。なぜならマシュは今自己嫌悪に濡れている。

故に殺意の顕現であるマシュシャドウはマシュ自身が自己嫌悪すればするほど力を増すのだ。

自殺の刃として。

そしてマシュは各特異点で自分がどれほど無力かを知り、尚且つ第三で刻み込まれ第四では力及ばずフランを死なせ達哉の暴走を招き。

挙句の果てに二人とも絶賛、意識不明状態だ。

マシュのメンタルはボロボロ、比例するかのようにマシュシャドウは力を増すのである。

最悪の悪循環だとパオフゥは思った。

せめて舞耶は無理だとしても相棒のうららや仲間の克哉が居て欲しい場面である。

 

「ほらほら!!私を倒さないと、また盾持ちとしての意義を失いますよ!!」

「黙れ!!」

 

これではドツボだとパオフゥは思う。昔のニャルラトホテプに煽られていた頃の達哉と一緒だ。

パオフゥ的にはすぐさま駆けつけてやりたいが。

 

「まだだ」

「クッソ!!」

 

荒耶?はまだ倒れていない。ペルソナによる身体能力強化&耐性持ちと来た。

指弾による致命傷こそ荒耶?は避けてはいるが。

パオフゥの速射には致命傷こそ捌かれ。

そしてそれ以外は何度か命中させて四肢を削られながらも倒れず、エリザベートの爪や織のナイフは的確に捌いている。

 

「吸血女!! いったん下がって槍取ってこい!!」

「誰が吸血女よ!!でもこの状況じゃ・・・」

 

織がエリザベートに槍を取ってこいと言う。

当たり前だ、もう腕が何度か穿たれ、危うく銃弾で挽肉にされそうなところを織とパオフゥのフォローで何とかしているだけなのである。

 

「エリザベート、ここは広い!! 宝具を使え!!」

「・・・!! それしかないわね!!」

 

パオフゥが叫ぶ。

状況を一旦仕切り直しにしなければならない。

パオフゥ最大の手持ちのルシファーが通用しない以上。

いつかは使わなくてはならなかった。

それにここは屋上、場も広い。

室内戦闘の様な制限はない。

 

「スピーカーメイデン最大展開!!」

 

宙に無数のスピーカーを内蔵したアイアンメイデンが展開される。

マシュシャドウは命の危機を感じ取り空中に退避。

だが荒耶?はそうもいかない、サタンに自身を抱えさせ空中に退避させようとしたが一拍遅れた。

 

破城魔嬢(ハウリングエルジェーベト)!!」

 

故に全方位から指向性を持って炸裂する殺人超振動音波によって全身を揺すられる。

城壁を破砕するという名に偽りなし。

直撃すれば全身を揺すられ、ミンチどころかシャーベットに加工される。

 

「これでってええ!?」

「嘘だろ・・・」

 

エリザベートと織は驚愕した。

相手が形を保っていることに。

尚パオフゥは一瞬で察した。所謂所のペルソナによる耐性である。

相手が立ち上がる前に一点集中型の指弾を叩き込むが。

 

「なるほど」

「!?」

「なにも見えぬ世界で見えるものがあるという事か」

 

荒耶?は普通なら反応不可避な一点集中型の指弾を釵で弾いた。

ここに来て彼は一つ覚醒したのだ。

現状、視覚、聴覚、味覚、体の各種器官が不味いことになっている。

各種、時間が経てば元に戻るがしかし、今は何も感じれない状況で新たな能力を覚醒させたのだ。

 

「追い込めば、追い込むほどって奴かい」

「物語の主人公じゃねぇんだぞ・・・」

 

パオフゥも織もこれにはあきれ果てる他ない。

先ほども言った通り、すでに時間さえあれば回復できるとはいえ破城魔嬢(ハウリングエルジェーベト)の威力は最低でもサーヴァントを肉袋に加工する。

だというのに立ち上がったばかりか、あまつさえ新たな機能を会得するとかどこの英雄譚だと吐き捨てたくなるのも道理と言えよう。

エリザベートはちゃっかりその隙に槍を回収していたが。

 

「マシュ嬢ちゃん!! わりぃ、こっちは三人がかりじゃねぇと無理だ。速攻で決着つけるから耐えてくれ!!」

「・・・ッ、わっかりました!!」

 

此奴はダメだ。

荒耶?はこの世に生かしておけない。かと言って追い込めば追い込むほど覚醒すると見たのだ。

だったら、初手で確殺するしかないと三人がかりでキメに掛かる。

それをマシュに伝えマシュ自身には自力で耐えてもらう他ないとパオフゥが叫ぶ。

 

「そんな腑抜けた盾で私を足止めする? 笑わせないでください」

「うぐ」

「殺したくて剣を求めて。守れなかったから己から必死に目を背けている女にぃ? 私を倒せるものですか!! アカシャアーツ!!」

 

そして炸裂する振脚と同時に崩拳の原理を伴って物理最強スキルのアカシャアーツを放つ。

マシュはそれを大盾で受けると同時に・・・

 

「うそ」

「そのまま死ね マハフレイダイン」

「「「「マシュ!!!」」」」

 

大盾に亀裂が入り、そこを砲撃形態に移行したウリエルのマハフレイダインを叩き込まれ盛大に粉砕された。

そのままマシュは吹っ飛び屋上の出入り口に突っ込み意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてマシュが目を覚ませば青空広がる砂漠のような場所だった。

これが彼女の心像風景なのだろうか?

いずれにしても高速で雲が流れていく。

 

「ここは・・・そうだ私戻らなきゃ」

「いったいどこにだい?」

 

のそりと起き上がり、マシュは元の場所に戻ろうとする。

当たり前だ、まだパオフゥや織にエリザベートが戦っている。

戦う力のないロマニだっているのに。

こんな場所に居る場合ではないと起き上がるのだが。

背後に誰かが居た。

紫色の白髪の騎士が。手にはマシュと同じ大盾を持っている。

その存在が問うのだどこに戻る気なんだと。

 

「どこって。オガワハイムです、皆さんが戦ってます、私のシャドウが暴れても居るんです!! 戻らない訳がないでしょう!!」

「でも君が戻る必要はないじゃないかな?」

「なにを・・・」

「だってそうだろう? 君より腕利きが三人も居るじゃないか?」

「・・・」

 

そうあの場には腕利きが三人も居る。

まずパオフゥは言わずもがな、織はアマネにはナイフ捌きは甘いと言われているがそれは保安部が可笑しいだけであって十分にサーヴァントとして相応しい腕を持っている。

加えて直死の魔眼持ち、最低でも宝石ランクの魔眼の使い手。

エリザベートは武術こそ低いが広い手札持ち、場さえ制限されていなければ準トップクラスのサーヴァントにまで成長した。

やりよう次第ではあの場の二人を鎮圧できる。

マシュの存在は必要ではないと騎士は語る。

だがしかし・・・

 

「アナタは誰ですか?」

「なに?」

 

騎士の瞳は黄金だった。

まずそこから違和感を感じる。

確か名は教えてもらっていないが、自分に憑依したのは高潔な騎士だったはずだと。

ならこんな諦めろなんて言葉を掛けるはずがない。

 

「私はギャラハッド、君に力を与えた者だ」

「そうなんでしょうね・・・きっと」

「何が言いたい」

「私自身、眼を背け続けていた。だからアナタは違う」

 

騎士は自分をギャラハッドと名乗るが。マシュという少女は否定する。

根拠は一つ、あきらめろとギャラハッドが言ってしまったことだ。

人理を守るべき英霊ならそんなことは言わない。

第一に聖杯に選ばれ神に選ばれたほどの高潔な騎士の代名詞たるギャラハッドがそんなことを言うだろうか?

否、断じて否だ。

マシュは「ビブリオフィリア」である。

あの病室から出てペペロンチーノに勧められシャーロックホームズの次に見たのがアーサー王伝説だ。

だからギャラハッドの事は知っている彼がこんなこと言うはずないのだと。

だとすれば答えはたった一つ。

 

「アナタは私のシャドウ・・・違いますか?」

 

そうシャドウなのだ。

自分がなりたいと思っていった理想図。

ギャラハッドの様な高潔かつ誰かを守れるような存在でありたいと現在は望んでいるし、

過去の英霊降霊実験で自分に降臨してくれたのも何の因果かギャラハッドだったのだろう。

だがもう彼は居ない、彼と対峙してよく分かった。

自分を守ってくれた騎士様はもうとっくの昔に居ない。

消えたのは恐らく特異点Fの時。あの津波の様な情報の中で掛けられた荘厳な声と共に。

そう宝具なんぞ最初から無かった。

自覚できていないから不安定だったのだ。

出力不安定にも陥ると言う物である。宝具はペルソナスキルと化していたのだ。

 

「違う私はギャラハッド「そうやって自分を否定するのが何よりの証拠です」・・・」

 

そうシャドウとは己の影に他ならない。

それは理想図であったり、あるいは殺意の権化染みた物であったり。

だがそれらが本当の自分という訳でもなく、また偽物の自分という訳でもない。

ペルソナとは無数の己の側面の一つに過ぎないのだから。

あの殺意に濡れて相手を殺したいと思う自分も一側面だとここに来てマシュは理解した。

他者の試練を横目で見て自分自身も学習し成長したのだ。

 

「アナタの正体、それはギャラハッドと言うかつて自分に憑依していた理想形という殻にこもりたいという私自身です」

「違う!! 私は!! 君の事を思って・・・!!」

「いい加減にしてください!! アナタは私だ!! 理想に引きこもっていれば夢が叶うと思っている弱い私なんだ!!」

 

否定を入れる騎士にそう返すマシュ。

ああどれほど願っただろうか。

あの理想の騎士みたいになれればいいとどれほど希ったか。

されど現実はそんなに甘くはなく、大事な人たちは傷ついていく。

その光景に耐えられなかった。

だからドンドン、スキルの出力は不安定となり。

結果、殺意に濡れた自分と言う影を生み出してしまったのだ。

 

「黙れ黙れ黙れ!! そうやって傷つく道を選ぶというのか!?」

「ええ、選びますよ約束したんです。人理焼却が解決したのなら、英国でオルガの立てた軽食屋さんに先輩がバイク屋を併設して私もそこに住んで作家になるって!!」

「18歳までしか生きられない身でか!?」

 

そうマシュには寿命制限がある。

人口生命体という事に加えてさらにスキルなどの戦闘行為はさらに寿命を削る行為だ。

やってるのは叶わぬ夢と知りながら血反吐を吐きながらするマラソンと変わりがない。

叶わぬと知りながら尚も走るのかとギャラハッド、否、騎士、否、シャドウは問いかける。

 

「それでもッッ!!」

 

マシュは渾身の想いで拳を振りかざしシャドウの顔面に一撃加えた。

 

「今、先輩やオルガと走らないと、死んでも死に切れませんので!!」

 

シャドウの外殻たるギャラハッドの姿が崩れ去る。

其処には何時もの姿で泣いているマシュのシャドウが居た。

 

「嫌です先輩やオルガと一緒にずっと三人で過ごしたいんです青空も見たいんです本も書きたいんです、なのにこんな運命なんてないです」

「私もそう思っています、ですが今諦めてなんになるんですか?」

「でももう私は・・・」

「あと二年くらい残っているでしょう? 青空を見る夢くらいは叶うかもしれない、残り一年で本を書く夢も叶うかもしれない」

「そんなの希望観測です」

 

そうシャドウの言う通りマシュの寿命解決方法はない。

だからマシュの言う事も所詮希望的観測でしかないのだとシャドウは告げる。

それは覆らない。

だがしかし、そうはならないかもしれない、所詮は希望的観測と言えど。

何時だって運命(Fate)という奴は。

 

「運命なんて後出しの予言なんです」

 

そう、あの人たちはあの絶望的な中、負けると分かっていても諦めず足掻いて足掻いて勝った。

 

「何かが起こった後にこう言えばいいんです。全て運命(Fate)だったと」

 

そうやって彼は、尊敬すべき先輩は、愛している達哉は生き延び勝利を掴み此処にいるからと。

未来への切符は白紙だから何が起こるか分からないから。それをあの別世界で生きる大人たちに教わった。

だから現実に打ちのめされながらも足掻くのだと。

確かに自分を憎み他者を憎んでいたのは否定しない。

だが今ならそれも自分だと受け入れられるから。

散々、そう言う物だと大人たちや周囲の人たちに教えられ、現実を楽しみ、絶望し、生き残った事に喜びを覚え、大切な人を守れなかったことに自身に失望し、それを乗り越えた時は喜んだから。

その生を嘘にしたくないから。

 

「だから行きましょう?」

 

マシュはシャドウに手を伸ばす。

臆病な自分を受け入れて前に進むのだと。

 

「うん・・・うん!!」

 

シャドウもまたそれを受け入れる。

 

『此処に真実の契約はなった。良い旅路をマシュ・キリエライト』

 

シャドウが消えると同時に荘厳な声が響き渡る。

もう正体は分かっていった。

恐らくフィレモンだろう。

今だ奴の掌の感覚と言う物は抜けきらないけれどマシュは前を向き場を後にするかのように一歩踏み出した。

それと同時に心像風景が砕け散る。

彼女の真の意味での覚醒であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ばかな」

 

マシュシャドウは珍しく狼狽えた。

なんせ対象は死んでおらず。

寧ろ力を増した感覚だったからだ。

ガシャンと音を立てて瓦礫の中からマシュが現れる。

今まで無かったような駆動音をオルテナウスが立てて。

フレームや駆動系に仕込まれたナノサイズの脳波感応チップが緑色に光る。

 

「ペルソナ」

 

マシュがそう呟くと同時にオルテナウスの駆動系やフレームが緑光を発しながら溶けてマシュの展開するインナーの上に展開されたペルソナと同化していく。

それはマシュシャドウとは真逆に右背から光の翼を噴射し西洋のバトルドレスを彷彿とさせるものだった。

胸からは当然漆黒の杭が飛び出てその周囲をアイビーとスノードロップが彩る。

更に右手には先ほど破砕された大盾が展開された。

最もバトルドレスにも盾にも彩はなく漆黒だった。

だがこれこそ彼女のペルソナ。

ジャンヌ・オルタと形式がおなじカタルシスエフェクト型のペルソナなのである。

 

「ラウンドテーブル!!」

 

此処の真の力の覚醒はなった。

もう不足は感じない。全力で事に当てれるとマシュは己のマシュシャドウを見つめる。

哀れみや怒りではない、受け入れるものとして。

 

「クククク、そうだ。これが見たかった!!」

 

荒耶?は狂嗤した。

これが見たかった。長年人を見て達哉だとかオルガマリーとか以外にこれほどの大覚醒を目にしたことが無かったのだから。

その為に協力し、自分はそう言う存在の為に絶望として立ちふさがり打倒されたいと願い願い願い願って焦がれたのだから。

それは荒耶?自身が何よりも己自身に絶望していたがゆえにだ。

無論、その隙、逃がすほどパオフゥは甘くはない。

コインを射出する。

だが当然のように防がれる。パオフゥは舌打ちする。

だが同時に確信も出来た。今のマシュなら大丈夫だと。

 

「織、エリザの嬢ちゃん、こっちはこっちに集中すんぞ。もうアレは大丈夫だ」

「良いのか?」

「シャドウとの勝負は受け入れられるか受け入れられないかだ。今のマシュの嬢ちゃんなら大丈夫だよ」

 

今のマシュなら大丈夫だと織の問いに言ってのける。

寧ろ荒耶?の方が問題だろうという話だ。

マシュの大覚醒をみて荒耶?が大覚醒しないとは限らない。

早々に畳んでしまう必要性がある。それだけ危険な男なのだ。

そしてその四人を他所眼にマシュとマシュシャドウの激闘が開始された。

 

「いい加減死になさいよ、もう一人の私ぃ!!」

「殺意を抱いている事は認めます、ええ本当に糞でしたからね特異点のボスたちは!!」

 

振るわれるウリエルをラウンドテーブルで書文に教わり実戦で磨き上げたように捌く。

火花や紫電が散り、凄まじい激闘だ。

 

「マシだったのは自覚のあるジャンヌ・オルタさんだけでしたっけね!! だから彼女にあこがれた!!」

 

そう最初のボスにしてその力故に憧れたのがジャンヌ・オルタだった。

もっとも本人がこの場に居れば自分なんて参考にするなと言っただろう。

 

「そうよ!! だから私が生まれた!!」

「正確に言えば皆殺しじゃなくて邪魔者を排除したいという影でしょうに、良い様に歪められましたね私の影!!」

「黙れぇ! そう願ったのは私じゃないかええ!!」

「ええ願いましたよ!! どんな敵にも負けない力をと!!」

 

大盾と鉄塊が何度も何度も交差する。

だが立場は逆転だ。

マシュはメンタリティを取り戻している。

故に先ほどの構図とは逆転し十全に武を振るえるようになったマシュがマシュシャドウを圧倒し始めた。

光の片翼による推進力の影響も二人とも光の片翼を展開していることによってその差異ですら消えている。

このまま行けばマシュが勝つだろう。

だがマシュシャドウにも奥の手は在る。

 

「だったらぁ!! どんな敵にも負けぬ力を見せて上げましょう!!」

 

そう言いつつマシュシャドウが後退し飛翔。

マシュが上を見上げると同時に鉄塊がはじけ飛ぶ。

第三の時と同じように外装を外したのだ。

弾け飛んだ鉄塊の中から光る球体が出てきて。

マシュがそれに向かって手をかざすと剣の形へと変貌し、巨大化していく。

その大きさはマシュシャドウの殺意に準じて大きくなっていく。

 

「裁剣、抜剣!!」

 

それは第三の時ポセイドンを割った時の再現。

 

 

    

「イノセントォ!! ダストォォオオオオオオオオ!!」

 

 

即ちイノセントダストである。

現状の持ち札で防ぐ手段はない、そうマシュ以外には。

 

「それは全ての疵、すべての嘆きを包み癒す我らの郷里!!」

 

主要時間軸であれば、本来の宝具はかの騎士の物。

だが彼女はフィレモンとの契約によりそれを取り込み己の真の力と成し、

己の物としたかの騎士とは別物の力。

 

     「ロード!! カルデアスゥゥウウウウウウウウ!!」

 

無限出力による絶対防壁である。

だがイノセントダストも殺意が引き上がれば引き上がる程出力を上げる。

今まさに無限出力VS無限出力。

攻と防。

剣と盾。

それら矛盾をどちらかが制する戦いとなっていった。

展開された光剣と光盾が衝突。

衝撃と炸裂し四散する光でパオフゥも織もエリザベートも荒耶?も自分の身を守ることで必死だ。

四散する力は平面状かつ円形に広がり夜を照らしていく。

 

「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」

 

両者の雄たけびが木霊し、光が散る中でマシュシャドウは違和感に気づいた。

 

―自分の力が吸われている!?―

 

そう一向にイノセントダストの出力は上がらず失われていっている。

理由は言わずもがな、単純にマシュがマシュシャドウを受け入れているからである。

そう此処に立って、先ほどのギャラハッドの皮を被った自分との対話によって自分の殺意を自覚したからだ。

無論、そこには達哉が見せた記憶でのパオフゥや克哉たち大人の行動やカルデアの大人たちの行動に影響されたからだ。

彼女一人では勝てなかった。だが頼れる友達がいる、頼れる大人たちが居るのだ。

それが明暗を分けた。

 

「うそ・・・」

 

裁剣が砕け散り郷里の大盾が残った。

唖然とするマシュシャドウは力を失ったかのように落下。

飛翔したマシュによって受け止められる。

 

「なぜたすけたんですか・・・もう一人の私・・・」

「私はアナタだからです、消して帳消しになんてできません」

「そう・・・」

 

そのままゆったりとマシュが着陸する。

 

「大丈夫か? マシュの嬢ちゃん?」

 

其処に駆け寄ってくる三人。

いの一番に声を掛けたのはパオフゥだった。

大丈夫かと聞きマシュは。

 

「ええ大丈夫です」

 

と大丈夫な様子だった。

そしてマシュシャドウが光の粒子となっていく。

 

「もう一人の私!?」

「勘違いしないでください、アナタが受け入れたから、私は元あるべき場所に帰るだけです、ですが忘れない事です殺意は消せない私はいつでもあなたを見ている」

「ウッ!?」

「マシュの嬢ちゃん!?」

「「「マシュ!?」」」

 

そしてマシュが膝を着く。

全員が心配そうにマシュを見るが。

 

「いえ私の中に帰ったみたいです・・・」

 

そう所謂ぽっかりとした穴に在ったものが戻ってきただけなのだ。

抜け落ちシャドウ化していた殺意と言う物がマシュの心に戻ったのだ。

 

「その証拠にほら」

 

マシュがペルソナチェンジを行う、同時にバトルドレスもシャドウが着ていた物に代わり。

右手には大盾が消え失せウリエルこと鉄塊が握られていた。

完全にシャドウを受け入れペルソナ化したという事である。

 

「ところで皆さん。荒耶は・・・」

「アイツなら、マシュの嬢ちゃんとシャドウの結末を見て飛び降りて逃げたよ」

「ええ!? じゃ追わなくては・・・」

「良いんじゃないかな? ほれこれ」

 

荒耶?は逃げたらしいのだが元凶は織に投げよこしていたらしい。

織が荒耶?から投げ渡された聖杯をマシュに投げよこす。

 

『うん、これが今回の特異点の元凶だね』

「荒耶の反応はどうしましたか?」

『屋上にいたときは捉えられていたけど、逃げ出してからはさっぱりさ。それに修正も始まった。そのまま待機しておいてくれ』

 

荒耶?は完全に消え失せたらしく。カルデアでも追いきれないという。

だがしかし元凶の聖杯がカルデアの手に渡ったことによって特異点が修正されたというのだ。

現にパオフゥも織もエリザベートも光の粒子となって消えかかっている。

 

「やれやれ忙しねぇ一週間だったぜ。でもまぁ退屈はしなかったな」

「助かったぜパオフゥ、アンタのお陰で式は厄介事に巻き込まれずに済んだ」

「それならこっちも頑張ったかいがあるってもんさ、・・・・じゃあな織」

「ああ、じゃぁなパオフゥ、マシュもエリザベートもありがとうな」

 

式の幸せが守られたことによって織の願いは続く。

故に夢から覚める時間でもあるのだ。

 

「織さん本当に「良いんだよこれで」」

 

そう最初の方で織が言った通り死人が茶々入れる時ではない。

だからこれいいんだと織はマシュの気づかいを制す。

 

「ああこれでやっと少し楽にできる」

 

エリザベートは安心した様子で言う。

だがメタ的事を描かせてもらうと第五でも出勤なので彼女に安息はないのであった。

 

「それとなマシュの嬢ちゃん、今は厳しい道のりかもしれねぇ」

「はい・・・」

「生きてれば良いことはあるぜ、ちっとはな。だから生きな」

「はい!!」

 

そうして織、エリザベート、パオフゥの順に彼らは消えていき、

マシュとロマニもレイシフトアウトの固有の感覚に襲われて意識が・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『逃がさんよ、さぁ清算の時間だ、ロマニ・アーキマン』

 

 

 

 

 

 

 

 

水面に引きずり込まれるかのような感覚と共に漆黒に落ちる。

そして広がる宇宙。

達哉、オルガマリー、マシュ、ロマニが気づいたときには曼荼羅の様な床の上だった。

 

 




荒耶? いったい何コトミーなんだ・・・
という訳で騎士様の正体も騎士様の皮被ったマシュシャドウでした。
第二話でフィレモンと契約した瞬間にペルソナとして騎士様取り込まれ現在はシャドウ化していた影響で色々おかしいことに。
今はマシュが受け入れたため、マシュ自身のペルソナとして覚醒したわけです。
そして殺意の方のマシュシャドウも受け入れたため一気に後期型にも覚醒。
マシュのペルソナはアルカナは星で初期型が防御極振りのラウンドテーブルと後期型は攻撃極振りのウリエルとなりますね。
出力不安定だったのもこのため、自覚してなかったから真の力の使い方が分からなかったからです。
この二つを切り替えながら戦うスタイルになっていきますね。
因みにペルソナの型は両方ともジャンヌ・オルタと同じカタルシスエフェクトタイプです。
ですのでベルベットルームはジャンヌ・オルタと同じで使用できるですけども。
ペルソナを作ったりとかはできません。あくまでこの二つで戦います
という訳でここからはマシュもペルソナ使いとして頑張っていきます。
マシュもマスターデビューですが、サモライザーは予備がないんで使えません。


さてオガワハイムも終わり・・・次回、モナド決戦、ニャル様無双になります。
特にロマニがフルのボコボコにされるのでロマニファンの人たちは切った方が良いと思いますよ。
いいですか!! 警告しましたからね!!
あとこれ以上アンケ伸びなさそうなんでかなり早いですけどアンケ打ち切ります。
投稿は月曜にに行います。それでは皆さん次の話で~
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