Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです   作:這い寄る影

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研修も大事だけど、その後の宴会が実は大事。
お酒を片手に、2次会まで胸襟を開いて侃々諤々に語り合う。
これに尽きる。

吉岡民夫


第五特異点に向けてのインターバル
01 一区切りの宴会


会議室に主要人物とサーヴァントが集められ、

通常職員は館内放送とマイクでのやり取りが行われていた。

 

「ところでマシュとロマニ・・・いやソロモン「ロマニでいいよ」そうか、なら皆いつも通りに、それでまずマシュの問題だが・・・マシュの両足の神経自体は損傷無しだが精神だけが欠損していると分かった」

 

アマネの質問にソロモンことロマニはロマニ呼びで良いよと。

それでまずはいつも通りロマニかドクター呼びになることが決定した。

それはさておきマシュの問題からである。

帰還以降、感覚は在るのに両足の一切が動かなくなった。

ただしペルソナ展開時は両足がなぜか何時ものように動くという状態になってしまっていったからである

 

「どういうこと?」

「幻肢痛の逆バージョンと言う事だよ、在るのに無いと錯覚している様子だ」

 

オルガマリーの質問にアマネはそう答える。

魂の形とは様々な論文が魔術協会では書かれている。

その内の論文の一つを仮定として語るならば、魂は人体と同じ形をしているとする。

その場合、魂の欠損あるいは精神的障害が発生した場合、幻肢痛の逆になることがあるのだ。

故に両足部の魂の欠損により動かなくなってしまった。

ただしマシュのペルソナはオルテナウスを取り込んだ影響もあってか精神増幅機能も持っている。

故にペルソナ展開時だけ両足が機能するというのが結論だった。

 

「だが精神的な面もあるからペルソナを展開していても機能しなくなる恐れがある。さらにデミサーヴァント計画詳細資料を見たが君は普通の人間と肉体が違う影響でペルソナの負荷にも耐えられない可能性が出てきた。故に戦闘以外での展開は基本的に駄目だ。最低でも訓練の時と日常生活で短時間的に使ってくれ」

「そう、ですか。ですが私は」

「ああ分かっている皆もな、その上でこれを渡す」

 

マシュとシャドウのやり取りを見ていた。故に皆止めない。彼女の想いを無にしたくなかったから。

そこでアマネが数本のペン型注射器が入ったケースをマシュに手渡す。

 

「これは?」

「律が作っていた精神増幅剤と代謝活性剤を混合した代物だ。ペルソナ展開中にも何処か動かなくなったり何かしらの症状が出た時使え、ただし劇薬だ。本当に緊急時の時のみだ。ロマニもそれで構わんな?」

「・・・医者としても魔術師としても進めたくはないよ」

「仕方あるまい。マシュ、君の肉体も魂もズタボロだ。もう劇薬しか手段がない」

 

ロマニが破棄し所長命令で再度書かれた今度こそ嘘偽りなしのデミサーヴァント計画の書類とロマニが行った延命処置の数々で、もうこれ以上の延命処置は無理と判断。

なら劇薬による強制稼働しかないという結論に至り、嫌そうなロマニをアマネが捻じ伏せて緊急時のみ使えと念入りに押しておいて渡したのである。

 

「日常生活に関してだが・・・」

「それは私がサポートするわ」

「所長・・・」

「だってトイレやベットに移動するときだけはペルソナ展開して消せばいいだけなんだし、介護と言ってもお風呂や着替えの時くらいなもんでしょ? 気にしない気にしない」

「ありがとうございます」

 

ぶっちゃけ介護には着替えや風呂以外は手間がかからない。

今のところペルソナを展開さえすれば両足は動くのだ。必要な時に展開して消せばいい。

だがどうにもならないのは着替えと風呂である。

なんせマシュのペルソナはカタルシスエフェクト型だ。

しかもバトルドレスと武器がセットなので、風呂と着替えはどうしようもない。そこらへんはオルガマリーがカバーすると志願した。

それに申し訳なさそうに頭を下げるマシュに対しオルガマリーは気にしないでと言う。

だが問題はまだ山積みだ。

 

「達哉や所長も他人事じゃないぞ。リバース・イドだったか。それらを使ったせいで二人の脳が変異しつつある。特に所長が酷い、もう別のナニカになりかけているそうだ」

「そりゃね・・・リバース・イドっていう名のビースト化が可能になっちゃったみたいだし」

 

オルガマリーの言葉に全員が驚愕する。

ビーストは其処にいるだけで人理を破壊する大災害だ。

ネロや怠惰の聖杯のように世界をふっ飛ばせる能力を持っている。

 

「まさか所長がビーストだったなんて。アレ? でもなんでまた獣の気配を出していないんだ?」

「それはねロマニ、なんかビーストとしての側面がリバース・イドってペルソナ化しちゃったみたいでね。展開さえしなければ通常通りの私よ。でも脳で蠢いているのは分かるわ」

「つまり短時間なら使用可能と」

「そうみたい」

 

オルガマリーとロマニのやり取りに皆が頭を抱える。

とんでもない爆弾拾ったものだと。

だが使わずにはいられないんだろうなぁと皆がそう思う。

奴ことニャルラトホテプはまだ蠢き、試練という名の難度上昇をしているのだ。

 

「・・・オルガマリーのイドタイマーの時間調整が必要だな」

 

溜息交じりにアマネがそう言う。

 

「イドタイマーってなんだ?」

「この先、アイツの特性上、絶対にリバース・イドを使わなきゃいけないタイミングは来ると思って私が作っておいたのさ」

 

達哉の疑問にそう答えるのはダヴィンチだった。

彼女はそう言いつつ箱を取り出し蓋を開ける。

其処にはGショックの様な腕時計が収まっていた。

 

「こいつはイドタイマー、リバース・イドの力を強制的にシャットダウンさせるものさ。脳の変異結果から君たちがリバース・イドを使えるのは一週間で10分程度だと算出して、リバース・イドをそれの時間を超過して使用した場合、精神安定剤を強制注入して鎮圧する代物さ」

「リミッターという訳だな?」

「早い話がそうだね」

 

達哉の言葉にダヴィンチは頷きつつも暗い顔で同意する。

 

「リミッターの制限時間解除法は?」

「リバース・イドの使用時間から一週間後にリセットが掛かる。あるいはカルデア医療スタッフの全員一致で強制解除が可能。あとイドタイマー自体も我々の承認が無ければ外れないようになっているからつける時は特異点の時のみにしてね。強度もクー・フーリンや長可君がテストしてくれて引きちぎるのは無理だからさ」

「了解した」

「ただし使われている精神安定剤はマシュの物より劇薬だ。絶対に時間を超過してイドタイマーを起動させるなんてことないように頼むよ。所長の方は達哉君よりヤバそうだから五分に設定しておくね」

「分かったわ」

 

ダヴィンチが念押ししつつ懇願するようにそう言う。

サーヴァント達も暗い顔だ。

マスターが身を削って戦う事にだ。

本来なら自分たちがその役目を背負うはずなのに。

最早、三人ともカルデアにはなくてはならない戦力となっている。

しかも第五から下手すると薬漬けとか何のために呼び出されたのかと自分自身の意義を問いたくなっていた。

話が暗い方向になってきたなと達哉は思い、思い出したかのように話題を変えるべく話を次に移行させる。

 

「そういえばロマニの状態はどうなんだ?」

「そういえばそうだった。今の僕ってどういう状態なんだい? 完全に前の時に戻った訳じゃなさそうだし・・・」

「ロマニの方はデミサーヴァントみたいな状態かなぁ?」

 

ダヴィンチも心底困った様子で言う。

しかし容体は安定しているし、宝具こそ限定された状況下でしか使用できない第一宝具しか使用できないが。

魔術王の異名は伊達ではなくチートの領域に達している。しかも神代基準でチートだ。

下手な宝具よりも威力は出せる。

そんなんだが人間でもあるしサーヴァントでもあるという珍妙な状態になっていた。

だからこそデミサーヴァント状態と言うしかない。

 

「あとこれからはロマニにも前線に出てもらうわ」

 

オルガマリーがそう言う。

これはケジメだ。皆にロマニがソロモンであり事の元凶の一翼を担ったという事実は変わりはない。

達哉、オルガマリー、マシュが許してもスタッフやサーヴァントたちが黙っていないことは確かなのだ。

今回戦力に成れなかったからサーヴァントの皆は黙っているが、もしあの場に召喚できていたらフルボッコにされても文句は言えない。

だからこそ責任は果たしてもらうとしてこれからは攻略組に編入と相成った。

 

「これはケジメよ、分かっているわよね?」

「うん・・・微力ながら力を尽くさせてもらうよ」

「なら良いわ、はい話はこれでお終い!! もうこっちはデミサバ計画とか劇物使用とかどうでも良いくらいに疲れているのよ!! 一応ニャルラトホテプ討伐と復帰祝いよ。エミヤ、ウォン、なんか作って、全員の分ね!!」

「ちょっといきなり過ぎはしないかマスター」

「所長・・・いきなりこの人数分は・・・」

「私のプライベート倉庫の食材使っても良いし保管庫から秘蔵の酒も出すから「「喜んでやらせてもらいます」」」

 

辛い話もこれでお終い。

復帰祝いをすることになった。なお最初は全員分を作れは無理と難色を示したが。

オルガマリー秘蔵の高級食材使えると聞いて料理人、いや二人とも本職は別なのだけれど料理人の性が疼いて速攻で了承した。

といっても全員の注文を聞き、仕込みに時間が掛かるという事だったのと、

やはり人理焼却下という事もあるので食事は皆で取れるようにと管制室で行われることになった。

 

「なんか久々に座ったわね、ここ」

「そうなのか?」

「そうよ、事件が起きてから自室と訓練場と最前線に行ったり来たりですもの」

 

管制室の所長席に座りながらオルガマリーがぼやき、達哉の問いにそう答える。

日々が忙しすぎて、管制室の所長席に座ったのは本当にだいぶ前の話だった。

因みに達哉はパイプ椅子、マシュはダヴィンチ謹製の多機能型車椅子に座っている。

 

「今でも思うわ、碌な事なんてありゃしない。でもまぁそのおかげで達哉とマシュにみんなに出会えたからよかったけどね」

 

そう今でも思う逃げていたら出会えなかったのだと。その点は感謝している。

最も他の事は絶対に許さんと思っているのだが。

 

「おう三人とも飲んでるかい」

「クー・フーリン、もう飲んでいるのか?」

「男どもは先に管制室で飲んでいろとのお達しでな、先に飲んでいるって訳さ」

 

そう言いつつオレンジサワーを飲むクーフーリン。

 

「ちょっと私の秘蔵のワイン開けたはずじゃないの?」

「あれは濃いし渋すぎんだよ!!」

 

なおクー・フーリンが生きた時代のワインとは度数低めの葡萄ジュース的な物だった。

蒸留技術が未発達だったのでワインも今ほど度数が高くなければ味も濃くはない。

感覚的に言えば葡萄酎ハイみたいなものである。それでも酔えたのは神秘含有量の差であった。

まぁそれはさて置き。

 

「達哉、酒飲まねぇのか」

「いや、ほら、俺たち三日ほど医務室で栄養健康食だけだから胃がビックリするといけないと思ってな」

「そりゃそうか、まぁゆっくり飲めばいいだろ、こいつだって今の時代だと標準的なもんなんだろ?」

 

そう言って達哉にキンキンに冷えたオレンジサワーをクー・フーリンが手渡す。

 

「そういえば嬢ちゃんは「今すぐ開けたワインボトルもってきなさい、このスカタン!!」な、なんでだよ」

「ワインは開けた瞬間から酸化して味が落ちるのよ。ああもう飲めないならセーラー開けなきゃよかった!!」

「ああそれなら大丈夫だ。宗矩の爺さんと書文の爺さんに孔明が喜んで飲んでいるから」

「ならいいわ」

「ありゃ?そこは怒らねぇのかい?」

「酒は飾っていれば嬉しいコレクションじゃないでしょ?」

「ちげぇねぇ」

 

オルガマリーの意見にクー・フーリンもけらけら笑いつつオレンジサワーを呷る。

 

「お、それ美味そうだな、オレにもくれよ」

「いいぞ、まだ予備はあるし・・・って」

 

達哉が声に反応する。

オレンジサワーが美味そうだという声に反応してクー・フーリンから手渡されたオレンジサワーを手渡そうとして固まる。

無論、声の張本人以外全員だ。

そこには・・・

 

「「「誰だお前ぇ!?」」」

「誰だって言われてもなぁ死人だよ。よっ久しぶりマシュ」

「織さん!?」

「「「マシュの知り合い!?」」」

 

其処には服装は白のYシャツに紺色のデニムパンツ。普通のスニーカーにジャケットといった様相の少女あるいは少年こと「両義織」が立っていた。

マシュはオガワハイムで彼あるいは彼女、この場では織は男性人格なので体つきは少女なのだがあえて彼と呼称させてもらうと知り合いだったので正体に気づけた。

後本職ではないにしろ気配遮断スキル持ちに加えて完全にOFFだからクー・フーリンも気づけなかっただけで。

戦闘時なら即座に槍の餌食にしていただろう。

と言ってもマシュが即座に知り合いと言いつつ、しかも好意的だ。

瞬間的に達哉はペルソナをクー・フーリンは槍を出しそうになったが寸前の所で何とか踏みとどまった。

 

「えーと、織さんはオガワハイムで協力してくれたサーヴァント?でして・・・」

「オレもキッチリ退場した筈なんだけどな・・・なんか目覚めたら今度は奇怪な部屋で寝そべっていた。食堂はなんか入ったらヤバそうな連中が食事の準備してるから、こっちに先に来てみたらマシュがいたから声かけたんだ」

 

確かに魔眼抜きにすれば織が逆立ちしても勝てない連中が今、屯っている。

マリー・アントワネットや孔明ならどうにかなるかもしれないが、その二人を殺す前に技術お化けの宗矩や書文にやられるか見つかるのは当たり前の話だった。

それでヤバいと感づいた織は兎に角話の分かる人の良そうな場所まで来て現在に至るという訳である。

 

「ダヴィーンチ!! ダヴィーンチ!!」

 

工房に戻ったダヴィンチにバングル経由で通信を入れてオルガマリーが叫ぶ。

当たり前だ一歩間違えばえらい事になっていたのだから。

 

『zzzz、あと五分・・・zzzzz』

 

だがさっきのイドタイマーの制作、マシュの多機能車椅子の制作、マシュの緊急用の魔剤と達哉とオルガマリーの魔剤の調合、ロマニが抜けたため医療班の指揮及び検査結果をアマネと討論で連日連夜徹夜でついに限界に来ていたダヴィンチは寝落ちしていた。

故に織の召喚に気づけなかったのだ。

ああもうと右手で頭を掻きむしりつつ織からオレンジサワーを奪い取って一気飲みするオルガマリー。

 

「今夜は無礼講よ、まぁ惨事にならなかったことで一つね」

 

そう言ってオルガマリーは席を立つ。

 

「所長、どこに?」

 

達哉の問いにオルガマリーはのほほんとしながら。

 

「軽井沢取ってくる、あとツマミの生ハムも」

「「「??」」」

「マジ?!アンタ軽井沢もってんの?!」

「糞親父のコレクションにあったのよ。じゃ戻ってくるまで好きにやっていてちょうだい」

 

そう言いながらオルガマリーは自室に一旦戻っていった。

織は驚愕の目線で瞳を開いている。驚愕のあまり直死の魔眼まで起動していた。

 

「織だったか? 軽井沢って地名だよな?」

「達哉って言ったっけ? まぁ地名でもあっているけど、所長が言ったのは日本産のウィスキーだ。オレの親父も欲しくてオークション漁っていたくらいには幻の酒だ」

 

このカルデアでの現在は2016年であり人理焼却が行われたのは2015だ。

でなければ軽井沢1960 52年物は丁度1400万で落札されるものだったからだ。

オークションでこれ程の金額で落札されたのは理由があり、軽井沢自体がそれほど作られておらず希少価値が高すぎる故に両義家も四方八方のオークションを漁っていたとの事である。

 

「そんな希少な酒を開けるなんて・・・」

「まぁ所長もよっぽど疲れているんだろうな」

 

達哉、マシュ、オルガマリー各々に放り込まれた異聞帯及び特異点は違えど、

精神的摩耗を一番起こしたのはオルガマリーであろう。

シャドウ七連戦後にモナドで一戦だ。計八連戦、その後にニャルラトホテプ。

何とか勝利を収めたのだ。

幻の酒の一つや二つ開けたくなるだろう。

サルルブ・シャルトルーズワインと言い、幻の酒持ちすぎじゃねと達哉は思った。

 

「まぁ前所長、税金対策で色々購入していたみたいですから」

「そう言うの、俺、詳しくないんだが・・・対策になるのか?」

「さ、さぁ?」

 

達哉の言いようにマシュも曖昧に返す。

カルデアの所属は一応国連組織であるが裏では魔術協会所属。

各国にも根を張り、そこらへんは曖昧だったりする。

 

「あー酒初めて飲んだけどいい物だなー」

 

織は暢気にオレンジサワーを飲んでいた。

クー・フーリンは食堂に呼び出されたらしく食堂へと戻っていった。

 

「織さんは、オガワハイム聖杯戦争の時、飲んだりしなかったんですか?」

「おっさんに止められていたからなぁ、いくら死人でも未成年の喫煙飲酒はダメだって、酷くね? 死人なんだからファミレスのサワー系くらい許してくれてもさぁ」

 

そう愚痴りつつ酒を口に運ぶ。

ある意味、超過業務なんだから酒、煙草くらい死人には許してくれてもいいじゃないかとそう織は愚痴った。

だがそうすると身分証の提示を漏れなくされるので、パオフゥ自身が危なかった為に飲ませたくても飲ませられなかったし、元検察官として許せなかったというのもあるのだ。

という訳でこのカルデアでは遠慮なく飲めるという訳である。

 

「ところでマシュは飲まないのか?」

「私、お酒に弱いんです織さん」

「そんなに弱いのか?」

「・・・まぁ色々あるんだよな、マシュ」

「えあっはい」

 

まぁ人には色々あるかと織も達哉の言いように納得し、

目の前の酒を楽しむ。

其処にようやくオルガマリーが帰ってきた。

左手に軽井沢とハモンイベリコのベジョータを薄くスライスした物を多量に乗せた皿を器用に持ち、右手にグラスが5つアルトリア・リリィを連れてだ。

 

「アレ、アルさん?」

「最初は手伝えてたんですけど、出来ることが無くなっちゃってですね、先に管制室で待っていろとの事でして、はい」

 

要は邪魔だからと追い出された訳である。マリーアントワネットらとは違い戦闘訓練は受けていても料理の特訓まではしていなかった故だ。

 

「まぁもう皆も飲み始めているし、いいでしょ。織だったかしら、アンタも飲む?」

「是非に」

「アルは?」

「飲みたいんですけど・・・これどういう味がするんですか?」

 

そう言えばアルトリア・リリィは此処に来てからそう言うのが縁が無かったと織を除く全員が思った。

真面目が過ぎるのか基本的に武術鍛錬と読書にアーカイブの閲覧と来ている。

 

「ここいらで多少は気を抜け。俺だって気を抜く」

「はい・・・」

 

達哉はソレはそれとして問題だと考えて気を抜いて置けという。

嘗て気を抜かず突っ走ったものが言うのだから間違いない話だった。

 

「それじゃ、皆にグラスは行き渡ったわね?」

 

因みにマシュは何度も言う通り酒乱だ。グラスには軽井沢の代わりにコーラが入っている。

そしてオルガマリーが全員に行き渡ったのを確認し。

 

「ニャルラトホテプ討伐及び織の加入に乾杯」

「「「「「乾杯」」」」

 

五人の杯を子気味のいい音が出るくらいに重ね音を鳴らし。

マシュ以外の皆が軽井沢を飲む。

 

「ゲホゲホ、ひ、火ですかこれ」

「アル、ウィスキーは舐めるように飲むのが基本だ、そう一気に飲むものじゃない」

「そ、そうなんですね」

 

ウィスキーをストレートで飲んでいるのだ。

故に基本は舐めるように飲むのが基本である。

今のアル見たく酎ハイ感覚で飲むようなものではない。

 

「アル、これ食べて一旦舌と喉を落ち着けなさい」

 

オルガマリーがそう言って生ハムの乗った皿を差し出す。

程よい塩気に脂身がまろやかに口内に広がりウィスキーの辛さを中和してくれる。

 

「もしくは軽井沢をコーラで割ってしまうのもありかもね」

「所長呼びでいいか?」

「ええそれでいいわよ。それで織、なに?」

「いやさ軽井沢をコークハイにするって世の人が聞いたら殺しに掛かるぞ?」

 

軽井沢をコークハイとか本当にマニアだったら血涙流しながらオルガマリーにナイフを向けて突撃してくるだろう。

最も今の彼女にマニア如きが勝てるはずもなく返り討ち確定だが。

 

「皆お待たせした」

 

そこでエミヤとウォンとその他複数名がカートに乗せられた色とりどりの料理が乗せられたカートを押して管制室に入ってくる。

 

「お上がりヨ」

 

遂に料理が出来上がったのだ。

管制室で直に食事と言うは汚いが監視も続行しないといけない。

という訳でここで食事会と相成った訳である。

 

「物足りなかった者は私かウォンに言ってくれ和中なら作って見せよう」

「そういう事で、皆楽しんでくださイ」

 

二人はそう言って壁際の席に座りサイダーを飲んでいた。

宴会は始まったばかりなのだ料理人が酔っ払っていては話にならない。

 

「よぅ、マスターあの貌無しぶっ潰っただってぇ!!」

「森さん、ぶっ潰したんじゃなくて、阿頼耶識の底に沈めただけだ。油断してるとまた湧いてくるぞ」

「それでもぶん殴った事には変わらねぇよ、アーカイブ見てスカっとしたぜぇ!」

 

達哉が謙遜する中、達哉の背中をバシバシと叩きつつ賞賛する。

こういう実直な所が彼の良いところでもありある意味悪い部分でもあった。

だが次の瞬間に笑っていった表情はなりを潜め真剣な表情で長可は達哉、マシュ、オルガマリーを見た。

 

「それはそれとしてすまなかった。マスターたちが大変な目にあっている間、眠りこけていてよぉ本当に悪かったマスターたちが大変な時に剣に成れなくてな」

「でも森さん、アレは俺のせいでもあって「それでもだ」」

 

長可は達哉の言葉を肯定しながらもそれでもだという。

 

「サーヴァントが主人に守らちゃ話にもならねぇ。主人の危機に駆けつけられないなんて論外だろう。俺たちは死人で今ここにいる理由はお前たち生きる人々の為なんだからな」

 

そうサーヴァントは死人だ。普通の聖杯戦争なら話は別かもしれないが、

今は人理焼却と言う大事件を解決する為にここに来たのだ。

故に第一に優先すべきはマスターの身の安全であり己が願いではない。

その点、シグルド夫妻はやり切ったとも言える。己の願いよりも達哉やオルガマリーにマシュの安全を優先しやり切ったのだから。

だから目が覚めた時、長可は己の不甲斐なさを呪った。

目が覚めてみれば全てが終わった後。

ある種の絶望そのものにマスターたちだけで立ち向かい勝った後と聞けば、

寝ていた己が不甲斐なさを呪いたくなるというものだ。

 

「だからすまねぇな・・・本来の役割を果たせなくてよ」

 

そう本来ならばこの状況下、マスターは後方にサーヴァントは前線にが正常だ。

断じてマスターが前線に出てサーヴァントと共同戦線する方が狂っているし、可笑しいのである。

それはサーヴァント全員が抱え込む慙愧だ。

だがニャルラトホテプが仕掛けるこの戦争は本物の戦争である。

マスター自身も最前線に出なければまずお話にならないのが現実だ。

 

「いいよ気にしていない」

「達哉の言う通りね」

「もう引き返せませんから」

 

だから気にするなと三人は長可に言う。

状況に流されたという事もあるだろうがそれでも選択したしたのは自分たちだと胸を張る。

誰に強要された訳でもない最善の策だからとして。

無論後悔が無いわけでもない。あの時こうしてれば、あの時アレを選んでいればと言う後悔の念は沢山ある。

それでも今の自分は後悔の念があるからこそ絶望に立ち向かえたのだと。

あってよかったなんて口が裂けても言えない。

それでもその傷が三人を後押しした。ニャルラトホテプという相手に対して。

その古傷こそが彼らを高みへと導き、それでも諦めそうになって、だがしかし稼いだ時間は無駄ではなく土壇場で第七の介入を引き起こしたのだから。

 

「森さんが悩む必要なんてないんです」

「マシュの言う通りだ。あの時はあれしかなかったからな。むしろ暴走した俺の方が申し訳ない」

「私なんて第一の獣そっちのけで世界ふっ飛ばそうとしたし今更よ」

 

マシュは脱落しかけ、達哉は第四で大暴走、オルガマリーに至っては獣の性として世界ふっ飛ばそうと思っていた。

各々に手助けしてくれる人物が居なければまずかったのだ。

だからこれでお相子。気にするなと言う。

 

「そうか、ありがとなマスター」

 

はぁと息を漏らしながらそれでも感謝の念が長可の中では絶えなかった。

こんな自分をまだ必要としていることにだ。

不甲斐なさを示した以上、どんな罵倒が飛んでくるかと思っていたらねぎらいの言葉だったことに安堵する。

だが同時に思う。自分は武器でありたかったと。

生まれながらに嵐であればよかった、主君の握る槍と言う武器であればよかった。

そう思っていて、だがしかし彼は人間としての長可を見てくれている。

これ以上の感謝があるかと長可は決意を新たにする。

死を超えてた果てで彼は新たなる主君を見つけたのだ。

故にこれ以上の言葉は不要だ。

己が願ったものは今ここにある。そして願った物以上に守りたいと思う物が出来たから。

故にこれ以上の言葉は無粋と判断し、

 

「じゃマスターたちも楽しもうや、折角の宴だしな! あと織とか言ったか? 返り忠したらぶっ殺すからな」

「しねぇよ、達哉の恩人がオレの恩人だからな。この旅が終わるまでは付き合うさ」

「そうか、なら文句はねぇよ、ハハハハ!!」

 

そう言って長可は達哉達の所から離れてサーヴァント達の様に用意された席に向かうついでに頼んでおいた鮭のホイル焼きの乗った皿をエミヤから受け取りながら酒もなくなったので氷が詰め込まれたバケツから八海山の瓶を取り出しに向かったのだった。

 

「なんかさっぱりして凄い人ですね長可さんって」

 

アルトリア・リリィがそう言う。

まぁアルトリア・リリィと長可はそこまで交友関係が深いわけでもなく。

今日初めて話したレベルだ。

最初は凶暴な人だなぁと思っていたがこう話してみると色々弁えている人だなぁとアルトリア・リリィは思う。

 

「長可ってアレか、鬼武蔵の名で知られた戦国不良四天王の一人の?」

「不良四天王って・・・まぁそうだが」

 

織は軽井沢を舐めるように飲みつつ達哉に聞く。

本当に日本人の間では猛将兼不良四天王の一角であり文化人でもあり家族思いな人と言う感じだ。

もっとも逸話が血濡れすぎて後半の文化人及び家族思いな点は織の時代には一般人には知られて無かったりする。

これはネットの発達時期が織が生きた時代より後だった事と織自身が常に寝ていたという事も相まっての事だったりする。

 

「結構気さくなんだな」

「良い人だよ、やらかしたのは第一の撤退戦の時くらいだったよな確か? なぁ所長にマシュ?」

「そう言えばそうね・・・」

「やらかしたの第一特異点の民間人連れての撤退戦の時くらいなものでしたね」

 

ここでは長可はあまりやらかしていない。

寧ろ猛将として部隊指揮を取っていったこともあるし、

現地兵の訓練に汗水流していた。

 

「・・・なぁなんでそんな奴がバーサーカーやってんの?」

「「「さぁ?」」」

 

なんか以外にバーサーカーしてないぞと言う織の意見に達哉たち三人も頭をひねる。

と言うか戦国武将と言うのはただ前線で戦うだけが全てではない。

部隊の運用、補給線の確保、戦場の全体的俯瞰やらなんやらただの脳筋では務まらないのだ。

だから最前線で暴れ散らかしていたとはいえ、戦場外ではキチンと戦略立てたり部下と討論したりなどちゃんとしているインテリジェンス系脳筋が長可なのである。

簡単に言えば伊達に武将をやっていないという事だ。

 

「まぁ逸話に引っ張られてでしょうねぇ」

「戦場での目立った武功がバーサーカー染みてますもんね」

「だが一つ気になることがある」

「「なに?」」

「森さん、なんで呼び出された当初、あんなロボ見たいな恰好してたんだ?」

「「あー」」

 

達哉の疑問にオルガマリーとマシュが声を上げる

 

「ロボ? それはどういう?」

「アル、なぜかな彼、呼び出された当初ロボみたいな恰好してたんだよ、今でこそ普通の鎧姿だが」

 

アルトリア・リリィの問いかけに対し達哉はそう答えるしかなかった。

なぜロボなのか当人もよくわかっていなかったらしい。

所謂、カルデア不思議の一つである。

 

「フォウ!!」

「あっ久しぶりです、フォウさん」

 

その不思議の内の一つフォウがやってくる。

アルトリア・リリィは何故か一瞬だけ目を細めたが皆が気にすることはなかった。

なぜなら殺気とか敵意が無かったからである。

それよりも不思議生物の登場に織は、

 

「何此奴?」

「フォーウ!? フォフォーウ!!」

 

猫を持ち上げるように片手で首後ろ当たりを掴んでひょっいと摘み上げる。

じたばたとフォウは暴れるが首根っこ掴まれている状態なので手が届いていなかった。

 

「まーたこいつってば、肉に匂いを嗅ぎつけてきたのね・・・」

 

私室の共用リビングにあるキッチンでベーコンなどを焼いているとよく現れるのは既にカルデアマスターズ三人組に知られているので、

生ハムの香りなどに釣られてきたのだろうと推測を立てる。

 

「なにこいつのこと知ってんの三人とも?」

「いつの間にかカルデア紛れ込んでた幻想種よ。出所は私達も知らない、害がないから皆のペット代わりになってもらっているわ。まぁベーコンとかに異様な執着見せているけど」

「ドッグフードは拒否しましたからね」

「ふーん」

 

要するにマスコット枠なんだなと織は納得しフォウを降ろす。

すると先ほどの持ち上げ方が悪かったのかフォウは警戒しマシュの車椅子の影に逃げてしまった。

 

「悪かったよ、ホレこれやるからさ」

「フォーウ♪」

 

織が生ハムを渡すとすぐに機嫌直して生ハムのスライスを両手で器用に持って食べる。

そう言えば犬と猫って生ハム大丈夫なんだろうかと達哉は思う今日この頃。

それとそう言えば自分たちの料理取ってきていなかったなと思い出し、

達哉が席を立つ。

 

「所長、マシュ、アルは何頼んだんだ?」

「私は回鍋肉」

「私はかけ蕎麦ですね」

「私はオムライスです」

 

オルガマリーが回鍋肉、マシュはかけ蕎麦、アルトリア・リリィはオムライスを頼んだのだった。

それを配膳カートに取りに行こうとして、

 

「全く、来るのが遅いからこっちから来たぞ」

 

四人分の注文品を器用に持って切ったのはエミヤだった。

だべって一向に来ないからエミヤが料理が冷えぬうちにやってきたらしい。

 

「ゆっくり食べて行ってくれ、あと織、カルデアにようこそ、今日できるメニューだ好きな物を頼んでくれ」

「じゃ鯖の塩焼きを頼む」

「任された」

 

織の注文を聞いたエミヤは食堂へと戻って行った。

 

「秋刀魚も美味いぞ」

「あーそれも良いかなぁと思ったんだけど、おっさんと活動していた頃はジャンクフードばっかだったから、あと生きていた頃も式に頼み込んで目覚めたときもジャンクフードだけだったから、ここは初めてってことで知識ではある癖の少ない鯖の塩焼きを食って見たかったんだ」

 

織はよくも悪くも必要最低限にしか表に出れなかった。

食事の経験も式に頼み込んで幹也との遊びの時のジャンクフード、サーヴァント化した後も式や他のマスターに悟られぬように拠点を転々としてファミレスかジャンクフードだったのだ。

という訳で一応、癖の少ない焼き魚初心者向けの鯖の塩焼きを選んだのである。

食べやすいし秋刀魚と違って骨も少ない。

なお上手く作らねば青臭さが抜けないのだが、作るのはエミヤだそこは心配ないだろう。

そんなこんなで一日の休息が終わっていく。

明日から再び何時もの日常だ。

 




バレンタインイベ?
そんなもんはウチのカルデアにはないよ。つまり・・・


バレンタインイベは浜で死にました!!



という訳で劇物祭りの回&宴会回でした。
都合の良い力には相応の対価ってもんが必要だからね。
規定値を突破して使い続けるとたっちゃんの場合はコトワリが発起、メガテンⅢの三ボス化待ったなし。
所長の場合はビースト化。
あとマシュの消耗ですがそう言う風に作られた人間である故に損耗する形です。
劇物使ってもマシュの場合は延命処置にしかならないしたっちゃんと所長の場合には劇物使っても止めなきゃ人理が崩壊するっていうね
ちなみにマシュが普通の人間になればペルソナやイノセントダスト自体ノーリスクで使えます。
まぁぶっちゃけマシュの肉体や魂に影響で始めたのデミサーヴァントとしてガタガタな所に英霊の力とマシュ本来のペルソナを合体融合させたフィレモンのせいなんですけどね。

あと配布で織登場、今度こそ死んだと思ったら儀式場と化した召喚ルームの中に呼び出されていたの巻き。


次は免許更新の為に眼科いって眼鏡のレンズ部分取り替えてそこから免許更新があるので次回こそ遅れます。
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