Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです   作:這い寄る影

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小さな瞬間の喜びを見つけよう。

オプラ・ウィンフリー


03 在るべき日常

責任とかいう類は何も負の側面だけではない。

言っては悪いが家族を得る、守るというのも側面に含まれている。

だから家族愛と言う物と縁遠いオルガマリーからしてみれば。

背負う物が増えたとも言えるし、同時に失いたくない物が増え過ぎていた。

達哉やマシュからの愛を手に入れてもそれは生涯を共にするという夫婦愛に近い。

故に父愛、母愛などはよくわからなかった。

達哉には両親が居たしマシュには両親替わりとなるロマニとダヴィンチが居た。

だがオルガマリーには無かった。父であるマリスビリーは初めっからオルガマリーを道具としてしか見なしていなかったし。

母はオルガマリーを生んだと同時に死んだとも聞いている。

余計な期待を掛けるトリシャには母性なんぞ見いだせる訳もなく。

ここに来て初めて母と呼べるような存在と出会ってしまった。

ウィンドリン・アマネ。保安部の長。

仕事が恋人の様な女傑。出会った当初も機械の様な女という印象を拭えなかった。

現に人理焼却前は黙々と命令を熟していた。

魔術協会でさえ即応展開が間に合わないとして封印指定の魔術師が同志を募り現代もなお神秘が色濃く残る深海に存在する神獣「ブループ」の捕獲を試みた大事件でさえ機械的に処理して見せたのだ。

今でこそ改善されているがあの時から達哉が来るまで胃薬とかトイレにダッシュする日々が始まったと思う。

まぁ魔術式水爆でダイナマイト漁を企んだ封印指定と大量に雇われた魔術使い達はアマネ率いる保安部に殲滅され。

それでも魔術式水爆の魔力を感知したブループが暴れ出し、回収のヘリが間に合っていなければ保安部も壊滅していたかもしれない。

その後、暴れるだけ暴れ散らかしたブループは再び深海に戻って行った。

閑話休題。

そして人理焼却が始まり、オルガマリーはアマネから武を習う事になった。

身体を作る訓練、技術を身に着け磨く訓練、戦術と戦略の神髄を学ぶ勉強。

そして他愛の無い豆知識から彼女が関わった作戦まで色々と教えてもらった。

間違ったら怒られたり優しく諭されたりした時もあった。

時折、煙草も進めてくれた上で止めとけとかも言っていた。

母が居ないオルガマリーの母親代わりはまさしくアマネだった。

だからショックだったのだ。

 

―お前に教えることはもうない―

 

この前そう言われたことに。

まるで突き放されたかのような喪失感に。

アマネはいつか去って行ってしまいそうだったから余計に。

と言うか去ると明言していた。

そう全てが終わればカルデアの解体は確定事項だから。

保安部はアマネを長として傭兵として戦場に行くのだろう。

 

―私のようにはなるな、死に場所を求めて死ぬためだけに歩き続けるような人間にはな―

 

そう彼女たちはより絶望的な戦場を求めている。

己が機能を全力発揮した上で死にたいと願っている。

だから裏世界でも厄種尽きぬ此処にいる。

まさしく死に場所を求めて歩く生きている死者だ。

それでもオルガマリーにとっては母の様な人だったから。

夢の中真っ白い空間で必死になって背を向けて去って行くアマネの姿を追いかける。

そして手が届く瞬間に彼女の姿が掻き消え。

どこかの戦場で彼女が醜くくたばる位ならと思い。

 

「ハッ」

 

目が覚める何時もの夢だ。

寝台の上で上半身起こしながら右手を伸ばしている。

ついでに言えばリバース・イドが発動しかけていた。

自身の獣性はいつでも見ている。気を緩めれば。

親しい人を美しいままに終わらせたいという渇望が溢れてくるのだ。

 

「ハァ・・・ハァ・・・大人しくしてなさい私!」

 

そう言いながら寝台横の机の上に置かれた精神安定剤を口に含みミネラルウォーターで飲み込む。

すきっ腹に薬はよろしくは無いが背に腹は代えられない。

 

「ハァー・・・ようやく落ち着いてきた」

 

そのまま再び寝台に倒れ込み30分。

精神安定剤が効き始めてきたのか獣性が引っ込む。

時計を見れば朝の六時半。

うんいつも通りと寝台から降りてリビングのキッチンへと向かう。

キッチンへとたどり着いたらエスプレッソマシーンからエスプレッソをカップに注ぎ。

それを一気に飲み干す。これからがオルガマリーの一日のスタートだ。

メニューはいつも通りフランスパンを切り分け、オーブンでトースト、後は目玉焼きに厚切りのベーコン、オルガマリー手製のコンソメスープだ。

無論サラダも忘れない。

手間はかかっていないし。フランスパンお代わり自由だ。

フランスパンには各々好きなジャムやバターにチーズを塗り付けることで味をお好みにする。

十分腹は満たせる。

無論バターやチーズは自家製が無理筋なのでオルガマリーの私物だったりするが

ジャムは全てオルガマリーの手製だった。

苺やブルーベリーは無論、バラジャムもある。

使わないのに色々作ったものねと思いつつ今は使われているので良しとする。

 

「ふぁ~おはようございます~」

「マシュ、また徹夜?」

「いいえ、第五は大体特定済み。後はどのポイントに突入するかの段階ですんで・・・寝てはいるのですが、寝ても寝ても寝た気がしなくて」

「・・・それ不眠症の一種じゃない?」

「そう思ってドクターとかにも相談しているんですけどね、オルガは大丈夫なんですか?」

「今のところはね。起きたら軽めの精神安定剤で鎮圧出来ているし」

 

ニャルラトホテプからの決戦から一週間がたち。

第五特異点の特定も完了、カルデアマスターズの三人も仕上がっている。

だがアスモデウスの調整が特急で行われていた。

運用自体がもしもの備えだったのでまさかのいきなりの投入で調整が急がれている。

今、バイクに搭乗できるものたちが大急ぎで調整とチューン中だ。

だがしかし問題も出ていた。

先ほども述べた通り、オルガマリーは獣性の活性化。いくらリバース・イドとして隔離しても一度油断すればこちらを喰らいかねない代物だ。

寝る時と起きる時も先ほどのように軽い精神安定剤が手放せなくなっていた。

一方のマシュは下半身不随の他に眠気も酷くなってきている。

以前は徹夜してでも書いていた日記や小説の書き溜めが出来なくなってきた。

無論、皆を頼らずに一人でなんて真似はしない。

皆に頼ってそれでも血反吐を吐きながら突破するしかないのが現状なのだ。

全員精神的に参っている。誰も彼もが必死に抗っている。

引きこもり気味の記録係ですら通常時は観測の為管制室に詰めている。

 

「それよりも問題はロマニの知識が一切役に立たない事よ」

「そうでしたね」

 

テーブルに三人分の食事を並べながらオルガマリーはため息を吐き。

マシュはそれに同意した。

ロマニことソロモンは事件のある種の元凶である。

それが平行世界とは言え解決に導いたのだからこの人理焼却の参考になるかと言われればそうでもなかった。

平行世界で起こった出来事は全く違い。

第一のジャンヌ・オルタは自分が複製品と実感していなかったし。あれほどの力を持ってはいなかった。

第二でネロが暴走しビースト化、総力戦になる羽目になっていなかった。

第三はあんな長期にわたる航海になっていなかったしポセイドンが真体を取り戻す事態となってはいなかった。

第四は幻想種のうろつく有様になっていなかったのだから。

それだけ差違が出すぎている。

一応平行世界、つまるところの主要時間軸との差違がそれほど出てきている。

第五はロマニ曰くメイヴと彼女が具象化した理想のクーフーリンが率いるケルト軍と、

エジソン率いるアメリカ機械化軍団。

そして両方に属さないレジスタンスの三つ巴が繰り広げられるとの事だが。

ぶっちゃけニャルラトホテプが暗躍している以上平行世界の出来事なんぞ尺度にも出来ない。

戦術単位でニャルラトホテプには勝利したが戦略単位での勝利はまだまだだ。

 

「そう言えば先輩は?」

「そう言えばタツヤにしては遅いわね」

 

昨日の晩飯までは共にしていた。

風呂から上がったのまでは確認している。

かと言って朝練は食事時を予想して帰って来ていた。

だと言うのに今は姿も形もない。

その時である。

 

「ただいま・・・」

「御帰りって・・・タツヤ、その恰好は?」

 

達哉はツナギ姿だった。一応オイル汚れなどは落としてきたがそれでも汚れていた。

 

「徹夜したんだ」

「なんの為に?」

「オルガ用のアスモデウスの調整にだ・・・」

 

チューンとはデカい物を乗せてからの細かい調整の積み重ねだ。

増大するパワーを個人の癖に合わせて各部を強化、ひたすら地道な調整を重ね合わせていく。

それが本当のチューニングと言う奴だ。

それを疎かにして大味に仕上げるのはダメという奴である。

それら細かな強化を積み重ねてこそ本物のチューニングマシンとなるのだ。

だから只管、オルガマリーをシミュレーターで乗せ。マシュの多機能車椅子をサイドカーとして接続しデータを取り続けた。

その得られたデータから最適なチューニングを施すのにかなりの時間が掛かった。

さしもの、クー・フーリンやマリー・アントワネットは乗る専だったので。

チューニングはダヴィンチ&エミヤ&バイクの勉強していた長可、そして長年バイク弄りをしていた達哉が担当し徹夜で仕上げたのである。

 

「無理してませんか?」

「さすがに眠い、朝飯食べてシャワー浴びてから仮眠取るよ」

 

ゴキゴキと肩を鳴らしつつ、達哉も着席し朝食が始まる。

オルガマリーはブルーベリージャムをマシュはイチゴジャム、達哉はブルーチーズをパンに塗って食べる。

ついでに以前は不定期だったが、もう一週間前から毎日、この時間帯に現れるようになったフォウはベーコンを机の下で齧っている。

兎に角、食事は大切であるが味が伴っていないことには話にならない。

その点、我流とはいえどフランス料理、イタリア料理を三年間研究していたオルガマリーの腕は一流だ。

美味い。パンの焼き加減もベーコンの焼き加減も目玉焼きの焼き加減も素晴らしい。

コンソメスープだって見事な味加減だ。

故に文句はないのだがオルガマリーには一つ懸念点があった。

 

「タツヤ、日本食が食べたいなら食堂に行ってエミヤに朝食作ってもらっていいのよ? 無理してこちらに合わせなくても・・・」

「いや、オルガの朝飯は美味いし。それに今後の事を考えてな」

「そうだったわね」

 

何度も言う通りこの事件が終わったらカルデアは解体だ。

行く場所の無い達哉とマシュは必然的にオルガマリーの元に身を寄せることになる。

詰まるところイギリスでの生活が始まるのだ。

故に今のうちにオルガマリーが作れる手料理に慣れておくことには達哉的にはデメリットはない。

確かに白米と味噌汁が恋しくないと言えば嘘になるが、ここに来た以上なれる他ない。

それにオルガマリーの腕は一流だ。文句なんか出るはずもない。

そして達哉は表面だけを上手く焼いたパンにブルーチーズをテーブルナイフで切り分けつつ上手い事、テーブルナイフの平面に乗せてパンに塗り付けて一齧りする。

最初は癖があるなとも思ったが、今ではその癖が良いので達哉はブルーチーズをチョイスしている。

 

「それにしても第五は広大化しているらしい」

 

ブルーチーズの付着したテーブルナイフを一旦横に置き、新しいテーブルナイフとフォークでベーコンを一口大に切ってフォークで口に放り込みつつ達哉がぼやく。

 

「よく今まで観測できませんでしたね・・・」

「まぁ他がアレ過ぎて霞隠れしたみたいだし、観測員も万能じゃないもの」

 

そうカルデアの機器は万能ではない。

観測するにしても座標を特定しなければならないのだ。

それがまた難しい。今の今まではゲーティアの用意した聖杯に次の座標が刻まれているから何とかなっただけで。

達哉が大暴走した第四特異点の聖杯は破壊されている。

マシュがロマニ救出の為に突入したオガワハイム特異点の聖杯とロマニの主要時間軸知識が無ければ一年ごとに各国を遡ってのロードローラー作戦とかいう地獄が待っている。

だが今は違う。

 

「だったらドクターの知識を利用できませんか?」

「マシュの言う通りだ。そうすれば選択権は握れるだろう?」

 

そうロマニは主要時間軸の人理焼却を経験している。

その座標知識もだ。今度は隠しもせず公表した。

 

「そうにも行かないのよ」

 

オルガマリーは眉間を揉みつつそう言った。

そして言う。

 

「ロマニの言う人理定礎と噛み合っていない」

「ニャルラトホテプが調整しているという事か?」

「ええ、ロマニが言うには第五はA+、第六はEX、第七はA++だけれど。現状の観測結果はこっちの時空では第五がA+、第六がA、第七がBで違っている。ニャルラトホテプの思惑としては主要時間軸のように誘導したいようだけれど・・・」

「食いつかずには居られないか・・・」

「ええ、優先順位は決めなきゃならない、たとえ誘導されていてもね」

 

ロマニの言う定礎と現状の定礎が違っていた。

故に主要時間軸の様な順序で解決していかねばならない。

ニャルラトホテプも居るし緊急性の高い特異点から攻略していくのが筋と言う物だった。

 

「第六ではアルさんと円卓でしたっけ・・・」

「さすがにそれはないんじゃ無いかしら? 松島で接触して記憶取り戻して妖精郷に帰って行ったんだし」

 

ロマニの知識によれば第六特異点は獅子王を名乗るアルトリア率いる円卓との戦いだったという。

定礎もEXだったらしい。

だがここのカルデアは既に松島で最果ての女神と化したアルトリアと接触し記憶を取り戻させ妖精郷に旅立つのを見送ったのだ。

人間味を取り戻した彼女が態々第六特異点に介入する理由もなく。

恐らくこの時空での介入はないだろうとマシュの不安にオルガマリーはそう答えた。

もっとも後で盛大に後悔する羽目になるのだ。

そう濁り水は今この瞬間にゆっくりと流れ始めていたのだから。

 

「とりあえず目の前のことを片付けていきましょう」

 

ニャルラトホテプが介入している以上、何度も言うがロマニの知識は参考程度にしか役立たない。

故に目の前の驚異度の高い特異点から片づけていくしかない。

 

「あーアルの話してたら、牡蠣が食いたい、レモンカクテルソースかけて白ワインと一緒に」

「結局そこか・・・オルガどんだけ生牡蠣食いたいんだ?」

「しょうがないじゃない、彼此二年は食べていないもの」

 

牡蠣は鮮度が命だ。

カルデアとかいう南極の僻地まで運んでくる間には生では食べれない。

本当に日本の魔術組織との広島での会見の際に出された生牡蠣の味が忘れられないでいたのだ。

 

「一応、サトミタダシの一角に加熱用牡蠣なら売っていた気がするが・・・」

「なんかあの薬局スーパー化してない?」

「おばちゃん曰く個人経営の薬局はそうでもしないと最近の薬局についていけないらしい」

 

昨今の薬局も多様化している。それに合わせて色々多様化しているとはサトミのおばちゃんの言葉だった。

 

「なら今晩はカキフライね」

「・・・オルガ、カキフライ作ったことあるんですか?」

 

カキフライは一見洋食に思えるが実際は日本食である。

日本の老舗洋食店「煉瓦亭」が考案した物の一つであり日本食である。

マシュの問いに当然、オルガマリーは。

 

「作ったことないわ、でもレシピ通りにやれば不味いなんてことはないでしょうよ」

 

作ったことはない、だがオルガマリーはイタリアンとフランスの料理基礎と経験と知識がある。

それを転用しレシピ通りに作ればまず不味い物なんて出来上がるはずもない。

 

「それで今夜の献立が決まった所で、タツヤとマシュ、ソースは何にする? ウスター? 中濃? それともタルタル?」

「俺は中濃で良いかな。偶には揚げ物にドバドバ掛けて食いたい」

「私も先輩と同じく中濃で、ウスターだとサラサラすぎて・・・逆にタルタルだと胃が重くて」

「OK、なら揚げ物にはご飯よね、ライスも準備しておくわ」

 

晩飯は決まった。

その後はたわいのない雑談をしつつ達哉は風呂へと入り上がった後に仮眠へ。その後はベルベットルームで作りたいペルソナがあるとの事。それが終わればオルガマリーと合流しバイクの教練だ。

オルガマリーはバイク教練の後、型稽古。

マシュはついに奥義の完成工程に入るらしい。その後は免許皆伝が決まっていた。

真目出度き事である。

そして三人はそれぞれの場所へと歩み出し。

達哉はツナギを脱ぎシャワーを浴びて何時もの服装に着替え仮眠を取ってベルベットルームへと向かった。

 

「それで今日は何用ですかな?」

「ルシファーを作りたい」

 

イゴールの問いにそう答える。

普通ならサタンで十分なはずなのだが、これからより一層きつく成ることを見越してのことだった。

 

「言わせてもらいますが・・・達哉様とは相性が最悪ですが」

 

作るのは良いが相性が最悪とエリザベスが言う。

そう達哉とルシファーの相性は最悪だ。

だがしかし。

 

「相性を抜きにしてもリターンが見込める、なら作らない理由はないだろう、本当はオルガに降ろしてほしかったが・・・」

「Lv足りてませんものなぁ」

 

本当はオルガマリーあたりに降ろして貰って、サタンとの最強の合体スキル「ハルマゲドン」を使いたかった。

アレならよほどデカいサイズか人類悪レベルでもない限り落とせる代物であるからである。

落とせなくとも大ダメージ確定だ。

最高のジャイアントキリングとして有効なのだが・・・

生憎とまだオルガマリーのLvは80台であり降ろせないのである。

それに達哉との相性も最悪だが、ルシファーはそれを加味してでも作っておきたいほど強力だ。

ペルソナ全書に登録しておいて、後でLvを満たしたオルガマリーに降ろして貰ってもいい。

作っておくのが得になるのだから此処は多少無理をしてでも作っておくに越したことはない。

一旦合体に不必要なペルソナを合体か削除かで消しておき。

必要な物を揃えて合体する。

合体事故もなくルシファーが生成される。

そして余った枠には、ペルソナ全書からQPを支払って元のペルソナを呼び出してもらう。

最近現金支払いじゃなくてQP支払いになったのは有り難かった。

ついでに先の200連大爆死で出まくった礼装をスキルカードに変えてもらいルシファーを整える。

本当に楽な時代になったものだと達哉は考えに耽った。

自分の頃はアルカナカード集めて苦労したと言うのに。

特にルシファーを作るのが苦痛だった。大人たちと並んでスロットを回したものである。

 

「今日は皆さまでアマラ回廊に潜らないので?」

「今日は所長はバイクの特訓、マシュは奥義の仕上げに入っているからな。俺も今からサトミタダシで剥き牡蠣買って冷蔵庫に放り込んでから所長に合流する予定なんだ」

「あら、という事は昼食は牡蠣鍋かカキフライですか?」

「残念、夕食でカキフライだ」

「それは羨ましいですね、甲斐性なしにも見習って欲しい物です」

 

エリザベスはそう言う。どうも彼女の生きる世界で彼女の同居人の甲斐性なしは料理ができないらしい。

そう言うエリザベスの言葉を聞いてオルガマリーに負担掛けないように自分も料理できるようになった方が良いのかなぁと思いつつ席を立つ。

そのままサトミタダシ薬局ベルベットルーム支店へと赴き、

精神力の回復に必要な物と傷薬、そして加熱用剥き牡蠣を買って部屋に戻る。

剥き牡蠣はキッチンの冷蔵庫に回復系は医務室の保管棚に放り込み。

シミュレーションルームへと向かうと。髪をポニーテールにしたオルガマリーがダヴィンチと話し合っていた。

 

「その様子だとチューンは上手く行っているのか?」

「あっタツヤお疲れ様。ええ、すっごく乗りやすくなったわ」

 

達哉の声に反応しオルガマリーはそう返す。

ここ数日の特訓もあるだろうがゲンナリはしていてもそれだけになっていた。

無論特訓だけではなくチューンした効力も大きい。

本人の腕だけでもダメ、ガチガチにチューニングしただけでもダメ。

何時、アクセルを踏むか踏まないのか様々な要因がバイクと噛み合わないと本当の速度と言う物は出せないものだ。

 

「と言うか達哉君も随分掛かったね。もうお昼だよ」

「そんなに長い時間、仮眠取っていたのか俺・・・」

 

ベルベットルームでの各種作業は夢と現実の狭間故にそんなに現実時間は経過しない。

故にここまで時間消耗したのは仮眠が長すぎた証であろう。

長すぎて最早昼寝の領域だった。

 

「それだけ疲れてるってことでしょ。奴のせいで誰も彼もが疲れ抜けきっていないし。まだロマニがソロモンで元凶の一つだったってこともあって精神的疲労やら摩擦が抜けきっていないのよ」

 

ニャルラトホテプが暴露した真実に表面上はカルデアは混乱してはいないものの。

裏ではそうでもなかった。陰口を叩く者、それをしょうがないと否定する者、今だ混乱している者。

細分化すればキリが無い。

もっとも保安部は通常運転だ。

アイツらは本当に例外なのだ。どんな状況でも揺るがず己が任務を遂行する。

アマネが集めた最高の人材だ。

その程度では動揺もしなかった。

だがその他職員は先ほども述べた通り違う。

幾ら、レフが良い人たちのみ生き残るように調整しても人は人。

如何な異能やら魔術やら技量を持っていても不信感は湧いてくる。

それは当然の事だ。

それはさて置いて。

昼時である、達哉は仮眠をした為かそんなに腹がすいていないのでラーメンを普通で頼む。

オルガマリーは炒菜定食ご飯マシで。

合流したマシュも最終追い込みと免許皆伝の仕上げという事で書文と戦い、草臥れており八宝菜定食を大盛で頼んでいた。

というか手番が開いた職員とかサーヴァント達も次々に頼んでいる。

 

「一応ボク、保安部なんだけど・・・」

「飯の美味さは士気に直結する。あきらめるこったな」

 

ウォンがクー・フーリンに本業は兵士と愚痴っている微笑ましい場面も見れた。

なおウォンが台所に立っているのは単純に現状彼しか料理が作れないためだ。

イタリアン&フランス料理を作れるオルガマリーは多忙極まっているし達哉やマシュ以外には作る気が無い。

日本食ができるエミヤは酷使されまくっていて、時々にしか厨房に立てないのが現状だ。

故に訓練終わったら暇なウォンが今現在の食堂を切り盛りしている。

因みにウォン一見気弱な男に見えるが実際は超A級スナイパーで狙撃の腕はアマネをも凌ぐ猛者だ。

装備さえあればエミヤと同等の射程距離を誇る。

だがなんの因果か彼、中華料理の腕がトップレベルだった。

彼が幼少期に母と生き別れ射撃養成所に拉致されたのちに殺し屋組織に拾われなければ料理人として名を馳せていたかもしれない。

だがそうはならず、母とは再会できず、組織に裏切られ、あわや逮捕されかかった所に偶然居合わせたアマネに拾われ。

まぁそこからは色々あってこの業界に身を置き、アマネに従いついていくことを選んだ歴戦の兵士でもある。

だがレイシフトできない以上、やれることは訓練とこうやって中華料理を作ることぐらいだ。

だがしかし飯とは古来より士気に直結する。

兵士なのに飯を作ってばっかと愚痴を漏らすウォンに美味い飯を作れるのはそれだけ重宝されるとクーフーリンに賞賛されていた。

それを他所にカルデアマスターズはちょっと疲れ気味で料理を食べていく。

 

「私、上手くやれるでしょうか?」

「それは慣れだ、慣れ」

「そうね慣れよ、慣れ」

「先輩に所長、もっとこう具体的なアドバイスとか・・・」

 

マシュもデミサーヴァントではなくなりカタルシスエフェクトタイプのペルソナ使いとなり、

同時にマスターともなったし右手の手の甲にも盾を形どった令呪が現れたので、

これからはマスターとしての業務も熟さなければならない。

故に不安があった。デミサーヴァントとして目の前のことに対処しておけばいい時とは今は状況が違うのである。

指揮官の一人として動かねばなら故だ。

だがその先輩に二人に慣れとか言わたのだ。

そりゃ具体的アドバイスをくれと愚痴りたくなるもの。

 

「マシュ、アマネさんから戦術、戦略は座学で習っただろう? 卓上演習もしたし、後はやっぱ慣れだよ。それでも不安が残るならアマネさんに頼み込んで保安部での紅白戦に参加してもらうってのも手だな」

「それでは保安部の皆様に迷惑が・・・」

「かからないかからない。連中暇そうに訓練してるし、やらかしそうなの吹っ飛んだか氷漬けだもの。施設修繕も済んで来てカルデア内部の治安は維持できているわ」

 

不安があるなら保安部に紅白戦させて自分も参加すればいい良いという達哉に対し、

いやそれ迷惑になるとマシュは言うのだが、今の本部はやらかしそうなのがレフボンバーで吹っ飛んだかコフィン内で冷凍中である故に治安維持の必要性がなくなり、

施設も大方修理済み。指揮系統担当のアマネや料理できるウォン以外の保安部はまったりやっていた。

要するに血に飢えているという奴である。

という訳でオルガマリーは遠慮するなとマシュに説いた。

 

「なら、所長の言う通りアマネさんに頼み込んでみます」

「そうすると良いわ。最もそれは後にして欲しいけれど」

「? なんでです? 皆さんやっぱり忙しいので?」

「そうじゃないのよアスモデウスの件が在るから私達三人そっちに集中してくれってお達しがでてね」

 

第五特異点の特定は出来ている。

あとは慎重に突入ポイントの協議とアスモデウスの調整だ。

そうマシュの現在座っている多機能車椅子をサイドカーとして直接接続し運用するデータが欲しい。

マシュ、あの超高速域は勘弁だった。

だってジェットコースターに乗っているのと変わりがない。

自分で制御できないが故の恐怖感があったのだ。

なお自分で制御できるならマシュは意外といけてたりする。

だが自分で制御できないものは怖いのだ。

現に特異点Fで達哉が運転するバイクに四人乗りとかいう無茶ぶりをしたときは実はオルガマリーの次に酔っていたりする。

故に必死に言い訳考えたが、

そもそも自分の身体が元凶だったので断るに断れず。

おのれマリスビリーと恨みを飛ばすのだった。

 

そんなこんなで午後も過ぎる。

 

「さて」

 

オルガマリーは髪の毛を一纏めにしエプロンを装着し袖を捲る。

 

「始めましょうか」

 

達哉はマシュの車椅子の調整をしてから帰ってくるという。

彼此、共有室に戻って来て20分前後。

達哉曰く30分で調整を終わらせるとの事だった。

因みにマシュはペルソナを展開し自力で自室に戻って来ており、散々、まだ荒っぽいオルガマリーの運転に振り回されダウン中だった。

ご飯は日本米、新潟のブランド米だ。

何故かサトミタダシに入っていたので買って来たそれを焚いておいた。

既にご飯は炊けている。

スープも事前に作っておいたコンソメがある。

故に、スープはチャチャっと作る。

まずキャベツ、玉ねぎは薄切りにし。ミニトマトは半分に切る。そして特製ベーコンは端から細く切り。

鍋に予め作っておいたコンソメスープを投入。味を見つつ濃すぎれば水を程よく入れて味を調整。

そしてスープが沸いたらキャベツ、玉ねぎ、ベーコンを加え、弱火で5分くらい煮込む。

五分経ったら塩、ブラックペッパーを加えて味付けし、ミニトマトを加えてさっと火を通して味を調える。

器に盛り、オリーブオイルを小さじ1ずつかけ。イタリアンパセリを手でちぎり、散らすのは最終工程だ。

それらは達哉が帰って来てからだ。

次、メインのカキフライである。

まず鍋に揚げ油を入れて熱を入れる。

目標温度に達するまでの間、剥き牡蠣を袋から出して保存水を出しておく。

次にボウルに水と塩を入れて塩水を作り、牡蠣の身やひだから慎重に身がダメにならないようにぬめりを取っていく。

ぬめりを取った牡蠣は水けを切ってキッチンペーパーの上に。

そうして全ての牡蠣が並びきったらキッチンペーパーでよりよく身とひだから水けを取る。

そしてボウルに割った卵を入れてよく攪拌し卵黄と卵白をよく混ぜて溶き卵を作る、次にパッドに小麦粉、別のパッドにパン粉を準備。

牡蠣の身を一つ一つ丁重に取りながら小麦粉を薄くつけ、次に溶き卵、その次にパン粉と言う順番通りに身に程よく付けていく。

揚げ油の温度も丁度いい頃合いだ。

そうやって下拵えした牡蠣の身を油にいれていく。

ここで気お付けることは一気に全部ぶち込まないことだ。

皆腹ペコなので30個ほど作る予定であるからであるし、一気に入れると温度が下がる。

故に30個を六回に分けて揚げていく。

意外と上がる時間も速い2分半から3分程度で揚がる。

されど万遍なく熱を通すために細かにひっくり返す。

そうしている間に時間になりきつね色に成ったら揚げ油から取り出して油を良く切りつつ揚げ物用パッドの上に敷いたキッチンペーパーの上に置きさらに箸で振るっただけでは落とせぬ余計な油分をキッチンペーパーに吸わせる。

 

「帰った」

「おかえり~こっちも出来たからマシュを起こしてきて~」

「了解」

 

するとタイミングよく達哉が調整したマシュの車椅子を押して帰って来た。

故にオルガマリーはマシュに調整した車椅子渡すついでに起こしてきてと達哉に頼む。

達哉はソレを快く聞き入れ車椅子を押しつつマシュの寝室に入って行った。

 

「じゃ盛りつけね」

 

レタス一枚とレモンを二切れまずは添えて置きその上に一人十個のカキフライを盛り付けていく。

ご飯は日本のように茶碗ではなく西洋式で皿に盛り付けて。

スープも冷えていないかチェックし、大丈夫だったので器に盛り、オリーブオイルを小さじ1ずつかけ。イタリアンパセリを手でちぎり、散らしていれて完成だ。

 

「初めてにしては上出来でしょ」

 

味見として自分の分一個を実は食べていたが味に関しては問題が無い。

初めてにしては上出来としつつ、

カキフライの乗った皿やらご飯を盛り付けた皿にスープの入ったカップをリビングの中央机の上に配置。

ついでに中濃ソースのボトルとそれを入れるための小皿。そして飲み物のコーラも並べていく。

そしていると達哉もマシュもリビングに入ってくる。

 

「すっかり慣れたわね、車椅子の操縦」

 

オルガマリーがからかう様に言いつつ自分の席に座る。

 

「さすがにですけどね・・・」

「オートモードですっ飛んでいくとは思っていなかったからな」

 

マシュが初めて車椅子に座った日、彼女の車椅子は手押し式ではなく電動である。

無論万が一にも備えて手押し式にも出来るが電動でもあった。

だからマシュの多機能車椅子に座った時、カルデア内なら自動運行が可能と聞いて、

そのオートモードを試してみた。

それがいけなかった。

急遽でっち上げた物なので調整が不完全と言うかダヴィンチが過労寸前の曖昧状態で作ったものなので、

ロケットの如くすっ飛んだのである。

今は調整がキチっとされており問題はない。

マシュも十分使いこなせている。

 

「とりあえず食おうか、揚げ物は冷えると不味い」

「そうね食べましょ」

「これだけ食べれるか私的には心配なんですが・・・」

「無理はしなくて良いわよ、一応多く作っただけだし」

 

そう無茶食いはいけない。

吐くまで食べるなんて阿呆のすることだからだ。

 

「まぁ楽しんで食べよう」

「タツヤの言う通りね野暮な話しはなしってことで」

「ですね」

 

こうして彼らは楽しく会話をしつつ食事を進め一日を終えていく。

これこそ彼らの帰るべき場所の一端だった。

そして取り戻すべき日常は人理焼却の果てにある。

故にその旅路はまだ長かった。

 

 




なんか食事で済ませた感じがする・・・
あと最近の薬局って色々あるのね。
という訳でサトミタダシも大手に負けない様に品ぞろえ豊富です
ロマニの原作知識は座標特定くらいしか役立ちません。
特異点自体、ニャルが荒し廻って原作の形を成していないですからね。
その上でニャルが原作通りの順番を辿るように難度調整しています。
因みにバビロニアの現状の定礎が低いのは賢王が過労死ギリギリの原初のエナドリ各種服用して働いているのとノッブが酷使されエレちゃんも既に引き込まれて人形遠隔操作して頑張っているお陰です。

エレちゃん「休みを、休みが欲しいのだわ・・・」
賢王「そう言えるのならばまだ余裕あるな(粘土板ドサリ)」
エレちゃん「労基に訴えてやるのだわ!!」
賢王「そんなものない!! 見ろノッブを!!」
ノッブ「あひゃひゃひゃwwwww金の字、もっと人と物資を寄越せwww桶狭間パート23に行くからのうwww」
賢王「どうだ!! あのノッブとて頑張っているではないか!!」
エレちゃん「アレどう見ても働き過ぎて壊れているのだわー!?」




あと幾らペルソナ化したとはいえ所長の獣性は常に纏わり憑きます。
エドモンが舞台裏で必死に焼却作業してるんですが。
得た物を守りたいと思うほど反比例して増幅していくのが所長の獣性なんで。
愛が深まれば獣性も増大する、愛など要らぬと悟った所でそれはそれで増幅する。
それがデットエンド、所長の持つ獣性って訳ですね。
どう転ぼうがずっと付き合っていかねばならぬのです。

あとインターバルを二話ほどやるか、あるいは次回から第五に突入し。
そこから第五→イベ→第六→イベ→第七→最終決戦の順で書いていくのでカルデアも休む暇ありません。


あと次回も遅れます。

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