Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです   作:這い寄る影

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君の時間をどのように使うか。
意義ある時間の使い方は、命を大切にすることにつながっている。

日野原重明


二節 「緊急医療と死にたがり」

まず道すがら説明するという話になっていたが、

そうはならなかった。

なんせ敵が大挙して押し寄せてきたのだからだ。

狙いはオルガマリーの確保との事だった。

なぜどうしてと言うのも相手が機械という事も相まって判断できなかった。

 

「事情は知っているが、今は目の前のことが優先だ」

「拠点に着いたら、話すという事で良いでしょうか?」

「そうとも言う」

 

カルナは元エジソン陣営だ。

事情を知っているらしかったがロボット軍団の前に彼も手が空かず、

事情は拠点に着いてからという事になった。

そして一行は疲労困憊、指し物カルナでさえもだ。ヘロヘロになりながらデミングへとたどり着いたのだが。

 

「なんだこれ・・・」

 

主要時間軸を知っているロマニは驚愕した。

当たり前だ見並の建物は倒壊し、あちこちに表面がガラス状になったクレーター。

そしてロボットの残骸の山が転がっている。

主要時間軸では考えられないほどの戦場跡地みたいな有様だった。

 

「レジスタンスは本当に無事なのか?」

 

余りの惨状にロマニは顔面引き攣らせてフローレンスに問う。

カルナに聞いてたら圧縮言語されかねないので当たり前だった。

それだけの惨状だった。

デミングは壊滅している。カルナが居ても抑えきれぬ質と鉄の量の暴力の前に圧倒され守り切れなかったのである。

 

「まぁこのメンツだからね」

 

オルガマリーはバングルからあらかじめロマニが記載していたレジスタンスメンバーの確認をしつつそう言う。

純粋に火力不足だ。

ジェロニモは純粋に火力不足。

ロビンフットの罠なんて狗兵は兎にも角にもロボットなら容易く食い破る。

ビリー・ザ・キッドの早打ちなんてそも装甲の前に意味をなさない。

対抗できるメンツが居ないのだ。

もっとも主要時間軸とは違いフローレンスが早期にレジスタンスに合流しカルナが来るまで無価値の炎とかいうチートで薙ぎ払っていたのだが。

カルナが来ても抑え込めぬ物量である。

本当にどうしようもないのだ。

いや対人戦闘や普通のサーヴァントなら嵌め殺せるメンバーなのだがそれでも相手がロボットとなれば分が悪すぎる。

 

「とりあえず積もる話は拠点でしましょう」

「拠点って・・・ フローレンス、ここら一帯残骸しかないんだけど」

「いえ、地下に避難所兼拠点を作りましたので」

「「「「地下に!?」」」」

 

オルガマリーの問いにフローレンスは事も無げに言った。

なんと地下に拠点を構えているのだという。

 

「そこに皆が集まっています、こちらへ」

 

そしてフローレンスに誘導されるように一行は移動。

街のど真ん中に移動、相も変わらず瓦礫が散乱している。

そして無造作に落ちている歪んだ2m四方の鉄板にフローレンスは無造作に手を掛けてずらすと。

大穴が出現した。

所謂、ここが入り口らしい。

一行はアスモデウスを引っ張りながら穴へと降りていく。

そして最後にカルナが穴へと入り鉄板で蓋をして偽装完了。

穴の道中は暗く、アスモデウスのヘッドライトが頼りとなった。

 

「なぜ皆さん、こんな地下に?」

「攫われるからだ」

 

マシュの疑問、なぜこんな地下施設が必要なのかという疑問に対し。

カルナは簡潔に言い切った。

 

「今のエジソンは信頼する人物は三人、エレナ夫人、神取という男、そしてアイザックと言う男だ」

「神取といったか?」

「ああ言った。知り合いか?」

 

神取と言う名字は非常に珍しい。

さらに言うならこの時期のアメリカに日本人が居ること自体が可笑しいのだ。

可能性としては二つ、サーヴァントかニャルラトホテプの化身か眷属と言った所だろう。

 

「知り合いになるのか・・・敵対していた男だ」

 

達哉も神取の事は良く知らない。

何故なら神取は死んでいる。

セベクスキャンダルという事件に置いてニャルラトホテプに利用され、

デヴァシステムを悪利用し人類抹殺を企てたとしか南条から聞かされていない。

その後はニャルラトホテプの眷属か化身として復活、罪世界の裏で竜蔵の元で暗躍し敵対するのみだった。

 

「という事は、あのプラズマ複合防壁の中ではセベクスキャンダルと同じ状態のなのか?」

「それはどういう状態だ?」

「悪魔が跋扈する異界のような状態だ」

「それはないな。オレが追い出されるまでは悪魔の悪の字も見たことはない」

 

セベクスキャンダルのように町が異界化しているのではないかと言う達哉の言葉をカルナは否定する。

何でも追い出されるまで悪魔の悪の字も見たことがないとの事。

なら異界化はしていないかと達哉、マシュ、オルガマリーは胸をホッと撫で下ろすが。

 

「ただし住人や外部から攫って来た人材は強制的に脳を機械化摘出され仮想訓練で兵士に仕立て上げていた。より優秀な人材はデザインドだかファンタズマビーングにされていたな」

「・・・そのデザインドとファンタズマビーングとは?」

「デザインドは機械や薬物による強化施術を行う処置だったな。脳をユニット化した方が安上がりだとしてごく一部の適性値でもない限りは脳ユニット行きだが・・・ファンタズマビーングの方はオレも知らない」

 

カルナはそう言う、自分は深部まで関わらせて貰えなかったと。

 

「エレナは違ったようだが、もうアレもダメだ。そちらで言う典型的魔術師に成り下がって神取が行う別プロジェクトに熱を上げていたようだ」

「エレナ? エレナ・ブラヴァツキーの事?」

「そうだ」

 

ロマニの問いにカルナはそう返す。

ロマニの記憶ではエレナはそんなことに賛同するような女性ではなかったはずだったから。

だがそれ程の人格者であっても魔術師的欲求を抑えられないほどのナニカを神取は作ろうとしているのだろう。

要するにニャルラトホテプに見事心の隙を突かれ暴走状態にあるという事だ。

カルナの説明にこれはもう抑止力勢の取り込みは無理だと悟った。

 

「それで・・・なぜ所長が狙われるんだ?」

「言っただろう。オレは最深部まで関わっていないと・・・エジソンがつぶやいた言葉を聞いた限りではデットエンドが必要になるとか、それくらいしか知らん」

 

カルナの言葉にカルデア総勢嫌な予感が走る。

神取鷹久、セベクスキャンダル、デヴァシステムの悪利用、そしてデットエンド、即ちオルガマリーの持ちつつ封印しているビーストⅦの理。

嫌な予感しかしない。

 

「あとケルト軍はほぼ壊滅状態です」

「なんで? フローレンス? ケルト軍って無限沸きだったはずじゃ・・・」

「圧倒的量と質で押しつぶされました。あの人型兵器・・・アーマード・コア、通称ACという物にケルト軍の大半の兵器は通用しません。サーヴァントの宝具は別ですが基本的に装甲を貫けないのですよ、それが大挙して押し寄せてきたんです。さらにはデンバーから照射されたビームの様なもので敵の首魁のクー・フーリンは沈黙、軍勢も地面の染み、メイヴが破れかぶれで出した二十八人の戦士(クラン・カラティン)も文字通り蒸発。その後、神取の手によって聖杯はエジソンたちの手に落ちたようですが・・・」

「フローレンス、なんでそんなこと知ってんの?」

「ロビンが偵察で見ていましたので」

 

そう言えばロビンフットという本業アサシンじゃね?というアーチャーがいるという情報を思い出した。

彼がケルト軍VSエジソン軍と言う戦場を見ていたらしく、

レジスタンスにも現状の状況は伝わっていたらしい。

ケルト軍は機械化軍団の前に見事敗走。

メイヴもクー・フーリン・オルタが半殺しで意識不明と言う事態に意気消沈しつつ現在ワシントンに残存戦力を集めて次の決戦に備えているのだとか。

 

「今、レジスタンスの皆や各地からの難民もここに集まっています」

「戦力はあると思っていいのかしら?」

「「・・・」」

「ちょっと二人して目をそらさないでよ!!」

「戦力に成るのは現状私とカルナだけです。他は純粋に火力不足でして・・・」

 

眼を逸らす二人にオルガマリーが突っ込みを入れるが、

フローレンスは目をそらしつつ他のメンバーは火力が足りないと言う。

 

「ラーマが居ると聞いていたが?」

「彼は重症です生きていることが不思議なくらいです」

 

達哉の問いにフローレンスはそう返す。

打てる手は打ったのだが現状手の出しようがないとの事だった。

だが一種の予定通り所か確保していたおかげで早々に治療が出来ることの証でもある。

 

「ラーマの傷はこっちで何とかできる。そのための用意もしてきた」

「・・・随分、用意が良いですね」

「まぁ、一度、ロマニが経験したからな」

「彼がですか?」

「色々あるんだ察してやってくれ」

「・・・ですね」

 

達哉の言葉を聞き、前準備が良すぎるとフローレンスは思い。

達哉に事情を聞く、そして達哉はロマニが一度、同じような経験をしていると言い。

フローレンスはまじまじと彼を見た。

デミサーヴァント特有の魂構造と霊子構造。

そして達哉の言葉にフローレンスはため息交じりに察した。

達哉と言う事例は聞いていたからである。そう言う物だろうと。

つまり加害者であり被害者的ポジションという訳だ。

詳しく聞いたところでキリがないとの現場が混乱する。

地下空間でAC軍団に怯えて民は暮らしていると言うのに。

誰かが漏らしたが最後、カルデアの方が吊るしあげを喰らいかねないのだ。

集団ヒステリックになったらそれこそ目も当てられない状況になるが故に。

フローレンスは知らない方が良い事もあるとしてそれ以上追求しなかった。

そして地下シェルターに到着する。

 

「・・・これは」

「どう言う」

「事です?」

 

達哉、マシュ、オルガマリーは驚愕。

ロマニは白目を向いていた。

何故なら目の前に在るのは無理やり地下に埋め込まれたような城。

チェイテ城が存在していたからである。

しかもなんかイルミネーションで飾られキラキラしている。

これには誰だって唖然とする。

 

「なんでまたチェイテ城が地下に・・・」

「逃げ場が無かったのでカルナの宝具でクレーターを穿ってもらい、エリザベートのチェイテ城を展開、カルナに埋めてもらい出来上がったのがこのシェルターです」

 

レジスタンスや住人は逃げ場が無かった。

何処に居ようがACやら狗兵が人狩りを行うためにうろついているのである。

だからカルナに大穴を穿ってもらい其処にチェイテ城を今回も呼び出されていたエリザベートが展開。

そして上から埋める形でチェイテ城を地下シェルターとしたのである。

と言うかエリザベートまた召喚されていたんだとカルデア一行は思う訳だが。

何だかんだ言って第一から皆勤賞、あの音楽フェスの惨劇も相まって長い付き合いだ。

この第五に呼び出されるメンバーに居るのはロマニの知識で分かっていたが大変だなぁと思わざるを得ない訳である。

現にチェイテ城で地下シェルターなんて無茶ぶりされている訳であるし。

まぁエリザベートが成長期待枠としてフィレモン&ニャルラトホテプに目を付けられているのは知りようが無かった。

兎に角中に入らない事には始まらないと難民が屯している広場を通りチェイテ城へと入る。

其処は修羅場だった。

人々のうめき声と鳴き声に絶叫が響いている。

香ってくるのは血と膿やら汚物の臭いだ。

端的に言えば野戦病院の如き様相を呈していた。

碌な設備もなく薬品も足らず食料もない、まさしく地獄絵図だった。

と言ってももうそんな光景で引くほど彼らは弱くない。

第一特異点はこれよりも悲惨だった。

 

「ああ、フローレンス戻って来たのね!!」

「状況はどうです? エリザベート?」

「薬品がとにかく足らない、治療薬自体はロビンやジェロニモが調合してくれているけど、傷口を消毒する薬剤が全く足りないのよ、そっちの収穫は?」

「カルデアと合流出来ました。あとは医療施設からこれだけの薬品を回収しましたけれど・・・」

「うん、全然足りない」

 

カルナとフローレンスが地上に出てうろついていた理由はカルデアとの合流ではない。

そっちは出来ればいいなぁ程度で主要目的は廃墟となった町々から薬品を搔き集めることだ。

ロビンやジェロニモは薬草などに詳しく魔術薬を作れるが、直すという行為には消毒という行為が付属する。

半受肉やら幽霊状態のサーヴァントに免疫能力がアホほど高いペルソナ使いや魔術師は兎にも角にも一般人は治療するのに傷口を消毒するというのは古来からの基本である。

まぁ一時期、傷口に馬の糞やら小便を引っ掛けるれば良くなるなんて誤情報が出回り中世ではえらいことになりパラケルススが呆れて武器軟膏なんて物を作った程に汚れは一般人にとって脅威だ。

故に治療できても傷口を消毒しなければ膿むか最悪壊死か破風傷コースである。

消毒は重要なのだ。

だからこそフローレンスがカルナを伴ってでも外に出て消毒薬を確保しなければならず、

現場を嘗て拷問趣味があり人体の限界に詳しいエリザベートに任せて地上に出た訳である。

そんなわけで、フローレンスがゆっくりと下ろした鞄の中身を確認、アルコールやら度数の高い蒸留酒が詰められていた。

それでも足りない。

 

「達哉君、悪いが・・・」

「ロマニ、ここに来て許可とかなしだ。手伝おう」

「そうですね。皆さんを治療しないと、協力を得る以前の問題みたいですし」

「二人の言う通りね。水臭い事は無し、あと見捨てたら後味悪いし・・・」

「みんな・・・」

 

ロマニは目の前の人々を見捨てる事が出来なかった。

だから無理を承知で治療を申しようとするが。

達哉達三人はこの状況をどうにかせねばサーヴァント達の協力を得られないし後味悪いからと言うことで。

ロマニの意志を尊重した。

 

「ところでラーマの治療は・・・」

「アンタの話を聞く限り完治させたらすっ飛んでいきかねないから一番最後よ」

 

ロマニは思い出したかのようにラーマの治療はどうするとオルガマリーに尋ねると。

完全治癒した瞬間にシータの居ると思われるであろうアトラカラズに単騎特攻しかねため一番最後という事になった。

残念でもなければ当然である、ピンチに置いて愛とか恋とかラスボスを倒す念にはなるが、

逆を言えば、それは狂気なのだ。愛とか恋とかは。

反転すれば、切り札のようにブタとなってしまう。

今、ここで直ぐに治療することは可能だが、

それをすればラーマはシータの元へとすっ飛んでいくことだろうことは目に見えていた。

だから後回し。

 

「ラーマの容体は?」

 

一応、ロマニがエリザベートに聞く。

後回しにして間に合いませんでしたもまた愚手であるから。

 

「ネロが落ち着かせているわ、でも精神患者に看護を任せている様なものだから・・・」

「ちょっと待って、ネロも精神的にヤバいってどういうことなのよ・・・」

「アンタを思いっきり刺したことで病んでるみたい」

「あれほど気にするなって言ったのに」

 

ラーマの容体は付きっ切りでネロが見ているのだが、

何度も言う通りペルソナ使いとの記憶は持ちこされる。

つまり此処に召喚された時点でネロはあの第二特異点の惨劇を思い出したのだ。

自身がオルガマリーを殺しかけたという事実を。

故に精神的に病んでいる。

人手不足も良いところだ。

 

「問題はそれだけじゃないんです」

「まだなにかあるのか?」

「スカサハが定期的に強襲してきます」

「・・・なんで?」

 

フローレンスの言葉に唖然とする達哉。

確かロマニの知識だと一応レジスタンス側だったはずなのである。

それがなんで、レジスタンス側を襲っているのか・・・

 

「書文やカルナが迎撃してくれるのですが如何せんしつこくて。今書文が留守にしているのは、彼女にこのシェルターがバレぬように誘導してもらっているのも在るのです。あとベリアルの無価値の炎を使っている所を見られて私も目をつけらてしまいまして・・・おかげで私が行う薬品収集や救護活動に支障が・・・」

 

フローレンスがスカサハに目を付けられた理由はただ一つ。

ベリアルの無価値の炎と言う無法スキルがあるからだった。

かと言ってフローレンスは戦闘は本職ではないので勝ち目はない。

オルガマリーシャドウの時はB連打戦法しかできなかったから何とかなっただけの話だ。

フローレンスとスカサハが真っ向からぶつかった場合、フローレンスが技量負けする。

 

『なにやってんだぁぁああああ!! あの腐れ女ァぁぁああああああ!!』

 

半死半生のフリをしてレイライン通信で状況を聞いていたクー・フーリンは絶叫した。

皆必死なのだ。そこで空気読まず、エンジョイ&エキサイティングなんかしていたらもう空気読めと叫ぶほかない。

然しもの、クー・フーリンもここに来てキレた。

現在、人理がかろうじて持っているのは、フローレンス達レジスタンスの頑張りがあってこそだ。

それを自分を殺せるからと襲う馬鹿がどこにいる。否ここにいた訳で。

 

「本当に此処バレていないんだよな?」

 

達哉の懸念の言葉にフローレンスとエリザベートは頷く。

スカサハなら彼女たちの住処がバレ次第奇襲してくる危うさがあった。

 

「まぁ兎に角治療を始めよう。所長、エミヤを呼んでくれ。メスやら他の器具が必要になるからね」

「分かった」

 

ロマニの言葉にオルガマリーは頷きエミヤを呼びだす。

彼は快くメスや他の器具の投影を行った。

久々に裏方とはいえど正義の味方らしい魔術行使に彼も気合が入っていた。

この人数の治療となればカルデアの医療品がなくなってしまうための代替案だ。

使える物は何でも使う、消毒が終わり手術が終わった患者には治療魔術、ペルソナによる回復スキルで何とか行けるだろう。

執刀医はロマニとエリザベート、麻酔医代わりに魔術に長けるオルガマリーが麻酔医変わりオペ看としてフローレンスが参加。

トリアージを取るのは達哉、孔明、織、マリー・アントワネットだ。

ついでにスカサハ警戒しての防御メンツはマシュ、長可、宗矩となった。

書文はクー・フーリンの一件があるから同化しかねない危険性がある為、サモライザーの中で待機と相成った。

そして状況が一気に進む。

 

「思っていたより状況が悪い、感染症の気も見えるから余計に治療する場所も増えるし・・・」

 

流石に20人前後を治療したところで疲れが見えてきたので一旦休憩となった。

と言っても患者は待ってはくれない。10分休憩したら手術再開だ。

だから今のうちに水分補給も兼ねて経口補水液を飲む。

手術チームは予想以上に疲弊していた。

そして患者の容体もあまりいい物ではない。

フローレンスも知識として現代医療知識は在るが、知識とは実践してこそやっと使い物になる。

知識だけでは駄目だし第一現代医療器具が無ければ話にならない。

そこにメスやら剪刀などなどの金属医療器具なら投影できるエミヤと薬品を調達できる達哉たちが居て。

電子機器や抗生物質は魔術やペルソナスキルで代用できるので比較的、近代的手術が出来たとはいえ。

それはカルデアが来てからだ。

それ以前はフローレンスが現役の頃の未発達な施術だった。

だからカルデアが来るまで傷が膿んだりとかあったりしたのだ。

 

「私達・・・NPOじゃないんだけどね」

 

オルガマリーも経口補水液飲みながらぼやく。

だが定礎維持の為に必要な作業だ。人が死ねば死ぬほど悪化するし死人は戻ってこないのだから。

 

「それよりボクとしては問題が不出来なテトリスのように積み重なっていく方が気に来るよ」

「そうね・・・」

 

はぁっと二人はため息を吐く。

現状、全ての手術は完璧に熟しているが、これから先は分からない。

幾らペルソナ使いとデミサーヴァントにサーヴァントが行う手術と言っても体力より精神力を使う。

精神力が削れれば体にも影響が出るのは当然の事。

しかもテトリスのように問題は降って湧いて勝手に落ちて来る上に積み方間違えれば消すこともできない。

治療も手術と言う特性上ワンミスが患者の命取りとなる。

冷や冷やするのも当たり前で心がよく冷える。

何度も経験したがなれやしないとオルガマリーは中身を飲み干したペットボトルを握り潰しゴミ篭へと放り入れる。

 

「まだまだ患者が居るんでしょう」

「うん」

「ならやるわよ、ロマニ」

 

休憩時間も終えて二人は再び医療室へと戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

間が悪かったと言えばそうなのかもしれない。

出会った頃の赤の男装服?とは違い白装束に身を包み半泣きでネロは達哉に縋る。

どうしてこうなったと達哉は揺さぶられながら遠い目をしていた。

 

「頼む!! オルガマリーに会わせてくれ!!」

「彼女は手術中だ。会わせられない」

「そこをなんとか」

「しかしさっきまで休憩してたんだぞ、その時に会って置けばよかったじゃないか・・・」

 

そう先程まで、オルガマリー達、手術チームは休憩を取っていた。

その時に再開しておけばよかったじゃないかと達哉は言う。

 

「それはそのぉ・・・気まずくてな?」

「俺もその気持ちは分かる。痛いほど分かる。けれど話せるうちに話しておかないと取り返しのつかないことになるぞ」

 

達哉も罰世界で意図的に舞耶達から離れて独自に突っ走った結果二の舞になりそうだったのだ。

会えるうちに話しておき齟齬をなくす当たり前のことだ。

 

「だが難しいよなぁ」

 

だが難しいことも確かなのは痛感済みだ。

どの面下げてと言う心象も加わっていざ会いに行くとなると二の足を踏む。

達哉には痛いほどネロの心が分かった。

 

「まぁ待ってくれ。所長も今手が離せないんだ。次の休憩の時は俺もついて行ってやるからな、それで勘弁してくれ」

「・・・わかった」

 

そう諭しトボトボと去って行くネロの背を見ながら。

達哉はため息吐きつつベンチに腰を下ろした刹那。右手の入れ墨が疼く。

 

『どうだ? 仕上がった理解者と会話した感想は?』

「不愉快極まる。オマエという俺が其処に居るのは分かっているから黙っていろ」

『ククク手厳しいな』

 

不愉快極まるが理解者が欲しいという心があるのは嘘ではない。

そう言う影は掻き消せない。あらゆる形で湧いてくる。

だからその心は知っているしあるから黙って見ていろと言いつつ影を黙らせる。

ニャルラトホテプの声は嘲笑しながら消えていった。

理解者を用意すると言ったニャルラトホテプに手抜きはない。

自らの選択で世界を滅ぼしかけた事、友を危うく殺しかけた事、忘れ去れたくないと思ったこと。

これでネロはある種、達哉の理解者として仕上がったのだ。

オルガマリーもマシュもロマニもジャンヌ・オルタでさえも理解者として仕上げたのだ。

影からは逃げられない、ただすべてを受け入れ抗うのみだ。

そう思いながら達哉も休憩を終えて軽症患者を診るためにベンチから腰を上げた時だった。

 

『先輩! 所長!』

「どうした?」

『どうしたの?』

『表の方でここの書文さんとロビンさんがスカサハと交戦しています』

「『・・・』」

 

遂に来たかと思わんでもない。

幾ら戦闘狂とはいえ相手は賢人でもある。

幾ら攪乱しようと交戦ポイントから拠点を割り出される可能性だってあるにはあるのだ。

 

「どうする? 所長?」

『こっちは手が離せない・・・タツヤ、マシュ・・・ カルナを送るからスカサハを殺して。これ以上ノイズになったり引っ掻きまわされたら堪ったものじゃない』

 

スカサハを生かすメリットとデメリットを思考の天秤に乗せて、

メリットが無いと判断。

恐らくではあるが英霊とは伝承の存在、故に少なからず噂結界の効力を受ける。

伝承とはすなわち長く語られる噂なのだから。故に主要時間軸とは違ってスカサハの精神のタガが外れているのだろう。

それに此方はクー・フーリン・オルタの霊基をクー・フーリンが乗っ取っているのだから。

主要時間軸のボスを味方にできているような物である。

ならば要らない。データの詳細もある。不要だ。

下手に味方にしてこちらを狙ってくるようになったら洒落にならない。

処理した方が後腐れは無いと判断した。

その命令に達哉は同意、兼定の収まった鞘を掴みマシュの居るであろう入り口付近へとカルナと合流し向かう。

 

「待たせた」

「いいえ」

「状況は?」

「大分不味いことになっています」

 

ズズッと音を立てて鉄板をずらしひょっこりと三人横並びで頭半分を地上に露出させる。

其処には懸命に槍で美女の振るう二槍を捌く若い頃の書文が居た。

だが全身ズタボロだった。

偵察の帰りに襲われた事が見て取れる。

それでも若い書文は楽しそうだった。

 

『これが若さか・・・』

 

レイライン通信でカルデアの書文は若すぎる己に頭抱えていた。

楽しみ過ぎていると思っていた。

ロビンは三本程度の朱槍が手足に突き刺さり動けていない。

不味いこのままだと二人ともアウトだ。

 

「それでどうする?」

「あの技量、相当だ。俺とマシュが加わっても足止めがやっとだと思う、だから相手を釘付けにする。相手が完全に止まったら、俺たちごとで構わないから宝具で焼き払ってくれ」

「大丈夫か?」

「こっちにはマシュの盾がある、強度は知っているだろう?」

「それはいいが・・・どうやってマシュの元に集まる?」

「俺がトラフーリを連発してロビンと書文を回収して展開した盾に滑り込む、だから宝具展開タイミングはマシュが盾を展開したときだ」

「了解した」

 

全員でかかるのも良いが、

その場合逃げられるかもしれない。

故に此処は必殺を心掛ける。如何にスカサハとてインド核を防げるという伝承や噂は聞いたことがない。

だから此処はカルナには息を潜めてもらい、

不意打ち気味に倒す。

生きた死者に付き合うなと言うのはアマネに口酸っぱく言われていたからだ。

 

「行くぞ、マシュ」

「はい!!」

 

そして二人がペルソナを展開し戦場に乱入した。

 

「アポロ!! マハラギダイン!!」

「ウリエル! アトミックフレア!」

 

飛び出すと同時に火力を見舞う。

炎と核熱の閃光が炸裂するが、咄嗟に展開されたルーン文字の障壁で逸らされてしまう。

やはり魔法系スキルはサーヴァントに対し効きが薄いし反射系スキルを使われると完全に防がれしまう。

近接戦闘でしかないかと二人は舞い上がった爆煙に紛れて近接攻撃を仕掛けようとする。

がしかし、

 

「やる!!」

「「!?」」

 

完璧な奇襲だった。

だがしかしスカサハを挟み込むようにして放たれた達哉の居合の一刀、マシュのウリエルを持った崩拳はスカサハが左右に持った朱槍で受け止められてしまう。

女だからと思ったのが達哉達の判断ミスだ。

主要時間軸とは違い、今のスカサハはサーヴァントの域を超えてオリジナルに近い。

筋力ステータスも見た目以上だ。

だが両腕を使っている以上、隙なのは確かだ、レジスタンスの書文が踏み込み槍を迸らせらんとして・・・

虚空から朱槍が雨霰の如く降り注ぎ攻撃を中断せざるを得なかった。

 

「ノヴァサイザー!!」

 

だったらもう文句は言っていられない。

相手はクー・フーリンから聞いていた以上の強手。

最大静止時間8秒のノヴァサイザーを起動する。

だがしかしこれにスカサハは反応、後退し鮭飛びの要領で8秒という時間を費やす距離を瞬時に開ける。

彼女とて伊達に神殺しはやっていない。と言っても自らを光速を超えての超加速による求道系の時止めは初めてだが、彼女の魔境の叡智はそれを弾き出し正解に導いた。

達哉も逃げられたとして即座にノヴァサイザーを解除。

何時もの構えを取る。スカサハ相手には兜割りは通じない、宗矩クラスとなれば話は別だが大上段からの極限集中を要する一撃なんぞ、避けてカウンター撃ち込んでくださいと言っているようなものだ。

信じれるのは己が技量だ。

そしてスカサハが狙いを付けたのは意外なことに達哉だった。

濃すぎる深淵の香りと血の臭い。

間違いないと嗅覚でこの場で一番できる相手として目を付けられた。

深淵の香りはマシュもニャルラトホテプに目を付けられ右目付近に入れ墨を刻まれたしカルデアの書文に実力不足無し免許皆伝を貰っているが、

血の臭いの濃さで、達哉の方が場数を踏んでいると言う理由で目を付けられたのだ。

瞬時に間合いが詰まる。スカサハの手の中で朱槍が風車のように回る。

並の英霊であればそれだけで瞬時に三枚下ろしに加工されていただろう。

達哉はソレを弾く。相手の力のベクトルを逸らす柳生新陰流の弾きと呼ばれる技。

其処から十文字に移行、さらにはアポロのゴットハンドを添える。

十文字を回避すればゴットハンドがスカサハの胴を貫き。

かと言ってゴットハンドを回避しようと無理に体勢崩せば十文字がスカサハの手首を切り飛ばし再起不能にする。

回避不能の二連撃。この間合いで避けれるものなどいない。

だが逆に言えば、無理してよけようとするからそうなるのであって。

なら”避けなければいい”とばかりに達哉に肩からタックルを食らわせるように突っ込んだ。

これには達哉も虚を突かれる。

だが迷いはしない、ノヴァサイザーによる静止時間2秒、横にローリングして回避する。

時が戻る、再びスカサハと達哉は対峙。

 

「素晴らしい、凡才の身で良くぞ此処まで練り上げた」

 

スカサハが表すは賛美の感情だ。

達哉はこの戦場にいるメンツの中で最も才能がない。

まだ神話の時代、影の国に人々が行き来出来ていた頃なら門前払いを食らわせていた。

その程度の見るところもない矮小な存在が、ペルソナという異能ありとはいえこうも追いすがる。

それを素晴らしいと言って何が悪いのか? その執念を素晴らしいと言って何が悪いのかと言うのがスカサハの感想だ。

 

「いいぞ、私が戦い殺し殺されのし甲斐のある強者だ。奴で無いのが少し不満だが」

「なら2000年前に首括ってください」

 

達哉に気を取られている間にマシュがそう無情に言い切って気当てを行う。

殺気による感覚に訴えかける物、折れたことのない天才とか幻想種の類は幻肢痛を感じつつ心が折れるだろう。

なんせ今スカサハが見ているのは無数に飛来する剣に貫かれるという幻想なのだから。

だがそこは百戦錬磨のスカサハ、この程度幻想と割り切って脳と肉体反応を切り離し、

即座にカウンター攻撃に移る。

この程度で彼女の心は折れぬ、故にレジスタンスの書文の槍もカルデアの書文の奥義も当たらないのだ。

だが才気で言えばマシュは書文の上を行く。

まさに獣の如き感覚で突き出された朱槍を回避、身を回転させながら踏み込み鉄山靠を叩き込みふっ飛ばす。

 

「ククク、これほどに楽しいのは久しぶりだ」

 

だがふっ飛ばされながら血反吐や鼻血を出しつつも空中で一回転。

二槍の朱槍を地面に突き立て速度を減衰する。

その刹那だった。

 

「ゲァァァアアアアアアアアッッ!!」

 

マシュの右肩を踏み台にして達哉が跳躍。

集中しようやく抉じ開けた隙に兜割を行う。

振り下ろされる一刀阻むものあらず。

如何にゲイボルグのアーキタイプの朱槍とはいえ両断される因果破断の一撃。

それは容易にスカサハを両断せんとする物の、

 

「空位か!! 本当に良くぞ練り上げた!!」

 

達哉の眼前に槍衾が出現する。

空中だ身動きできない、達哉は朱槍に貫かれようとして。

 

「マシュ!!」

「スキル展開!! ロード・カルデアス!!」

 

達哉にスカサハが集中した隙を逃さなかった。

マシュがペルソナをウリエルからラウンドテーブルに変更。

防御スキルを起動する。

そして達哉は。

 

「ノヴァサイザー!!」

 

最大停止時間8秒を展開、さらにアポロを踏み台にして再飛翔。

スカサハの背後を取りつつ、アポロによるマハラギダインを複数発射。

それは直撃寸前でスカサハの前に停止。

それと同時にノヴァサイザーを解除。

スカサハは即座に背後に振り向きつつ反射ルーンを描きベクトルを逸らす。

だが達哉はペルソナをアムルタートにチェンジ、トラフーリを使い瞬時にレジスタンスの書文とロビンを回収する。

そして合図は既になっていた。

 

梵天よ、我を呪え(ブラフマーストラ・クンダーラ)!!」

 

この一瞬の間にカルナが空中に飛び出し宝具を射出。

大爆発にスカサハは飲み込まれ、

達哉達はマシュの背後に滑り込みマシュがその爆発に耐える。

数分の爆発の後。

 

「やったんですか・・・」

 

大型クレーターを見ながらマシュがつぶやく。

 

「いや」

 

それにカルナは否と答えた。

 

「直撃する寸前に何かしらの文字を刻んでいた。おそらく転移の術式かなんかだろう」

 

カルナが淡々という。

手ごたえはなく直撃する寸前を見たのだ。

言葉は少ないが彼の言葉は真を付く。達哉とマシュはルーン魔術を知っているので、

恐らく転移のルーンか何かで逃げられたとみるほうが良いだろう。

 

「またアレの相手をするのか・・・」

「気が重いですね・・・」

 

卓越した技量、恐るべき知恵、怪物の如き剛力、出来ればまた相手などしたくは無かった。

それだけに仕留められなかった事に気が重くなったのだった。

そしてオルガマリーから連絡が入る。

ラーマの手術を行うとの事だった。




緊急避難としてカルナさんが頑張って穴掘って其処にエリザベートがチェイテ城を展開。
緊急シェルター兼拠点として活用しています。
エリザベートが居ないと住人壊滅してるか、連れ去られてデザインドにされるかカレンデバイスに加工されてましたね。

そしてロマニ医療無双、グラキャス兼紛争医療経験済みなのでこのくらいはやれます。

兄貴「あと俺何時まで死んだふりしてなきゃなんねぇの?」
所長「私達がいくまでね!!」
兄貴「そりゃねぇーよ」

兄貴、タニキに進化したが動けず。


おっぱいタイツ師匠「ヒャッハー!! お前たち私を殺せるのか!!」
カルデア&レジスタンス「こっちくんな!!」
兄貴「なにやってんだぁぁああああ!!シッショーーーーー!!」

おっぱいタイツ師匠はアレです、主要時間軸とは違い噂結界のせいでオリジナルの魂腐った状態で出てきてますんで原作のような善性は一切ございません。
兎に角、某吸血鬼漫画の少佐と一緒、意味のある死が欲しい狂人の面を本作では出していきます。
もっともカルデアやレジスタンスには付き合う義理はないですしニャル的には満足死させるつもりなんてないわけですがね。
という訳で、次回ラーマ手術した後、誘導とシータ救出も兼ねてアトラカラズへと向かいます。


あと次回も遅れます。
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