Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです   作:這い寄る影

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笑えよホラ。こうすんだよ。

ドリフターズより抜粋。


五節 「女王メイヴ」

デミングからワシントンまでの距離は3200kmもある。

車で30時間から35時間ほどかかる距離である。

アスモデウスの走破能力ならそこまで時間はかからない。

そしてワシントンに向かっている理由であるが、

三日ほど前の事である。

 

『そうね私はアナタたちと取引を行いたい』

 

メイヴが妖艶に微笑みつつ言う。

並の男ならこれで落ちるだろうが、将来を誓い合った相手が居て尚且つ魅了無効の達哉には効かず。

シータはラーマが隣に居るので挑発してんのかと青筋を額に浮かべていた。

あとついでにオルガマリーとマシュも人の男に色気使うとかとシータと同じ気分になっていた。

もっともメイヴが色目を使っているのは此処にいるレジスタンスとカルデア組なのだが、

効くことはない。皆想っている人が居るし魅了を弾ける人材ばかりだからだ。

 

『本当にムカつくわね。私の美貌に平伏さないなんて。でもそれも良いわ。そそるわよアナタたち』

「はぁ・・・それで? 取引って何です?まさか色仕掛けが目的ではないでしょうに」

 

これでは話が進まぬと判断したフローレンスが割って入る。

 

『ぶっちゃけ、エジソン軍討伐の為の同盟。クーちゃんからは聞いているわ。宝具抜きでもAC軍や狗兵だっけ相手できるんでしょう?』

「そちらも、戦力は整っているのでは?」

『馬鹿言っちゃいけないわよ。フェルグスとアルジュナ以外は無理。フィンとディルムッドにベオウルフは相性が悪く、後雑兵なんていくらぶつけても意味は在りはしない』

 

メイヴの言う通り、AC部隊に対してケルト軍は不利だ。

相手の駒を取れるのがクー・フーリン・オルタ、アルジュナ、フェルグス程度のものなのである。

相手は質も兼ね備え物量でも押してくる。

雑兵なんてものは役に立ちはしない。

フィンとディルムッドにベオウルフはそもそも相性が悪い。

ACは瞬発的加速が可能な上に装甲もある。純粋な近接職では相性が悪いのだ。

例外として達哉やらマシュやらラーマにシータ、カルナが高火力+機動力もACに負けていない為対抗できるだけの話ではあるのだが。

それでもデンバーに殴り込むには数が少なすぎるのがカルデアの現状だ。

 

『そこでアンタたちと同盟を組みたいの』

「理由は分かりました。それでどこで交渉します?」

『無論、ここワシントンで』

「・・・論外ですね、中立地帯での交渉なら兎にも角にも敵地で交渉とはね。ですね? オルガマリー?」

「フローレンスの言う通りよ。人の男に色目使う首魁と数が減ったとはいえ軍勢を維持している勢力のど真ん中にのこのこ出向いたら囲んで棒で叩くことをしないなんて保障はおありで?」

 

オルガマリーの言う通りだ。交渉事と言うのは安全が保障された場所で行うのが常である。

無論互い安全が保障されているという意味ではあるが。

そう言った意味で、ワシントンに乗り込んでの交渉はカルデアにとって全く安全とは言えない。

相手は女王メイヴなのだ。欲しい物の為ならあらゆる知略を駆使し手段を選ばない。

同時に敵を排除するならあらゆる手管を用意する。

はっきり言ってやり難い相手ではあった。

そしてメイヴは痛いところを早速突いてくる。

 

『じゃあ、逆に聞くけど、そっちはクーちゃん回収できなくていいの?』

 

そうクー・フーリンの回収である。

今、現状、ただサモライザーで戻せばいいという状況ではないのだ。

クー・フーリン・オルタの欠損した霊核と霊基にクー・フーリンが同化し融合し乗っ取った形で。

サモライザーの帰還プロセスにも反応しない。

であるなら直接赴いて回収するしかない訳で。

なら見捨てればいいじゃないかと言う声もあろうが、クー・フーリンは達哉と並ぶカルデア保有戦力最強組の一角だ。

ケルト版ヘラクレスが弱いはずもなくそう言う立ち位置になっている以上、是が非でも回収しなければならない。

特に彼に匹敵あるいはそれに次ぐシグルドとブリュンヒルデをカルデアは失っているのだ。

これ以上の損失は認められないという台所事情がある。

 

「それはそうね分かったわ。相応の準備をさせてもらってからそちらに向かうわね」

『相応の準備ね。おお怖い怖い、何を持ってくるつもりなのかしらね?』

「それは会ってからのお楽しみという訳で・・・じゃ切るわよ」

『ええワシントンで会いましょう。最高の蜂蜜酒を用意してあげる』

 

そう言って通信が切れる。

オルガマリーは深い溜息を吐いた。

相手は対等な同盟なんぞハナから望んでいないことがヒシヒシと感じ取れる。

何が何でも自分たちが欲しいらしい。

メイヴらしいと言えばメイヴらしいが、オルガマリーとしては御免被る話であったがゆえに。

 

「二日頂戴」

「オルガマリー、一体何を?」

「向こうがこっちを無理に取ろうとするなら上等。こっちも相応の物を用意しなきゃねぇ」

 

フローレンスの疑問にオルガマリーはメイヴにも負けないくらい妖艶な微笑みを浮かべた魔女を彷彿とさせるような。

そして二日掛けてオルガマリーが用意したのは一枚の紙だった。

セルフギアススクロールと呼ばれるそれ。

魔術の奥義の一つでありいわば内容に署名した者通しに課せられる契約で、

破れば死に相応しい非業が待っていると言う物。

だが普通のセルフギアススクロールは対象がサーヴァントだと署名させたとしても純粋な神秘強度で破られる可能性もあるが、

このセルフギアススクロールは特別製だ。

魔術を極めた魔女メディアから教わった代物で、サーヴァントにも間違いなく効く上に破った場合のペナルティが豊富なレパートリーだ。

因みにペルソナ能力で呪いの類は無効化出来るので破った場合のデメリットは無い。相手だけがデメリットあるという詐欺書なのである。

しかもただ見た場合、並の者が調べただけでは只の血で書いた誓約書にしか見えない罠っぷり。

オルガマリーはメディアの悪辣なる魔術を一部とはいえ確かに会得していた。

それを二日掛けて製造し作り上げ、

一日休んで現在ワシントンへとむけてアスモデウスを走らせている。

因みに今回はカルナも一緒だ。

ロビンは置いてきた。カルナの代わりである。

向うにはアルジュナが居る。リバース・イドにも対応できそうな相手だ。

なら互角のカルナを連れて行くのは道理とも言える。

後ついでに上手く行けばアルジュナに恩を売れるかも知れなかったからだ。

 

『令呪6画を使うが・・・使えばアルジュナとカルナの仲を取り持つことができるかもしれない』

 

それは一日前に達哉がオルガマリーに語った案だった。

令呪六画と引き換えにアルジュナとカルナの仲を払拭できるかもしれないと。

それ即ちアルジュナに恩を売れるという事である。

それに今はマシュもマスター勢だ。3画は確実に余るのだ。

ロマニからアルジュナの人となりを聞いているので余計に分の悪い賭けではないだろうと。

 

『そんなに簡単に行くの?』

『彼らの遺恨は最終決戦時にカルナにガン不利なレベルでの状況を作ってアルジュナに勝たせたことだ。カルナは戦争だからそりゃ手を尽くすよねと気にしてない様子だったが、アルジュナはロマニから聞いた感じ違う。だから対等に戦える場を用意してやれば納得する』

『男って単純ね』

『そう言う物さ所長』

 

そうあまりにもカルナガン不利な戦場で彼を殺したことにアルジュナは悔いている。

それがロマニからの情報だった。

それはニャルラトホテプに付け入らせる隙であり、アルジュナが同時にこっちに加担する理由が無い理由の一つである。

それを解消するには単純、二人が対等な条件で夕日の下で殴り合いという奴である。

令呪6画も使えば実現できるものだった。

 

『それでいいな? カルナ?』

『そこまでしてくれるのは逆に困惑する。戦場では前準備を詰めて何でも使うのは当たり前だからだ。してやられたと思った時点で負けであり納得している。だから本当に良いのか? 誰かの意志も介在しない戦いをしても?』

『良いに決まってる。こっちとしてもアルジュナとカルナに恩を売れるなら惜しくはない』

 

それが一日前のやり取りだった。

カルナはカルデア、強いては達哉の提案に乗ったのである。

己がライバルと誰にも邪魔されぬ決闘と言うのには心が躍るものがあったからだ。

そして日が落ちアスモデウスを停車し、皆で光学迷彩テントを組み立てる。

その間、オルガマリーは調理台を組み上げていた。

デミングではさすがに美味い物を難民の目の前で喰えなかったのでデミングから離れたここではキャンプ飯と洒落込めるからである。

飯盒に良く研いで下拵えした米を入れて水を適量入れてご飯を炊く。

そして鍋に水を入れ沸騰した瞬間を身はらかって高級レトルトチキンカレーパウチを人数分入れる。

キャンプと言えばカレーだからだ。ついでにビール。

流石に戦場のど真ん中でビールは不味いのでノンアルビールであるがそれは仕方がの無い事だった。

妙なくくりが無い達哉とマシュは普通にコーラを選択していたが。

オルガマリーとフローレンスはノンアル。インド勢は現代飲料に興味があったのか両方を飲み比べしていた。

 

「健康には良いですが、只の麦ジュースですねコレ。いや味の再限度は素晴らしいのですが飲んで酔えないというのは実に興味深い感覚です」

 

フローレンスがそうノンアルビールを評する。

発売当初は苦い炭酸水だったのが技術の発展で今や限りなく味がビールに近くなっている。

飲んでいるのに酔えない、昔の人からすればなんとも不思議な感覚だ。

 

「むっこれは刺激が強い」

 

そしてコーラを飲んだラーマはゲップしながら刺激が強いと言っていた。

まぁ古代人からすればコーラの刺激は強いだろう。

因みにカルデアでのコーラはオルガマリーがコカ・コーラ派なのでコカ・コーラが食堂の常備飲料となっている。

そんでオルガマリーはシータを指導しながらご飯が炊ける前にさっと作れるツマミを作っていた。

無論サラダも兼ねの桃と水なすと生ハムのサラダだ。

材料はサトミタダシベルベットルーム支店やエリザベスの車内販売から調達している。

まず桃は皮をむき食べやすい大きさに切る。

水なすは食べやすい大きさに裂く。

モッツアレラチーズは食べやすい大きさに切る。

ボールに先ほど加工した材料とちぎったミントを入れ、塩、白ワインビネガー、パルメザンチーズ、オリーブオイルを加えよく混ぜる。

それを各員分作り皿の上に盛り付けたらオルガマリーの私物の生ハムを千切って添えて、仕上げにオリーブオイルを掛けて完成だ。

残った材料はカルデアに転送し保存、特異点攻略後エミヤの使う食材行きだ。

そして炊き上がった。ご飯を紙皿の上に盛り。あとはくつくつと煮えたレトルトパウチのチキンカレーをぶっかける。

これで今夜の夜食は完成だ。

 

「余の知るカリとは違うようだが・・・」

 

そしてインド勢はカレーを見て困惑していた。

古代インドからカレーの前段階であるカリは存在している。

故に知ってはいるし食ったこともあるが、

現代の日本食レベルにまで魔改造されたカレーを見ると困惑が勝る。

アレだとんかつの起源はフランスのコートレットですって言われたフランス人の気分と心境である。

まぁこれもまたカリの一つの形としてインド勢は納得した。

一方のフローレンスは缶詰より遥かに簡単に調理できるレトルトパウチの方に注目していた。

なんせお湯さえ沸かせれば最悪ルゥのみでもいけるのだから当たり前である。

現代の食事と言う物も発展したものだと思い、これさえあればもっと多くの患者をと遠い目をした。

 

「まぁ食おう」

 

達哉の声で全員がチキンカレーを頬張る。

流石にインド式の食べ方はあれなので、ここはカルデアに合わせる形で日本式のスプーンによる食べ方にインド勢は習った。

 

「お、おいしいです!?」

「なんと袋に入った物を茹でただけでこれ程の味とは!?」

「美味いな・・・」

 

スプーンでルゥとご飯を救い上げ一口。

その味にインド勢はびっくりする。

当たり前だ。レトルトパウチはお湯さえあれば放り込んで待つだけである。

ロマニもカルデアに来る前は大変世話になった。

 

「それでも戦場へは行き通らないのでしょう・・・」

「加工技術が高度だからね、後進国はどうにもね一般人には手が出せない値段になっているよ」

 

レトルトパウチは日本ではごく普通の技術であるが後進国でこれをやろうと思うとまだまだコストが掛かる。

ついでに言えば宗教的や民族的問題も様々だ。

それに後進国では中身がなくなったパウチの処理技術が普及していない事にも起因する。

だから中央の進んだ場所でしか消費されない。

戦争も終わっていない、形を規範を概念を変えて成長を続けている。

そうどこかの誰かが言ったように、平和な国であってもそこは所詮、戦場の最後方でしかないのだ。

 

「しかしこのサラダは美味いな」

「あっそれシータが作った奴よ」

「・・・マジ?」

 

ラーマもこれには唖然とした。

一人分だけシータがオルガマリーの指導を受けながら愛すべき夫の為に作ったものである。

シータは元々器量良しだったし苦労する期間も長かった。

プロレベルの腕を持つオルガマリーの指導を受ければこれ位は出来るのだ。

現代料理も出来るのかと驚愕にラーマは目を見開きシータを見る。

気恥ずかしさからシータは頬を染めて俯いてしまった。

あーもう夫婦イチャコラは無効でやってろよとオルガマリーは内心思い呆れた。

 

「まぁまぁオルガマリー、彼ら呪いがあったんだしさ」

 

それをロマニが諫める。

そりゃ長い事で会えていなかったんだし人目も憚らず些細なことでイチャイチャし出すだろう。

 

「そういえばロマニ」

「なんだい?」

「アンタ。グラキャスなんだから呪い解こうと思えば織の力を借りずにやれたのと違う?」

「ボクでもさぁ、やれることとやれないことはあるんだよぉ!! 冠位英霊とかそんな万能じゃないからね!? 実際!!」

 

実際冠位でも出来る事とできない事はある。じゃなきゃ獣一匹に対し七騎投入しなければならないなんてことにはならない。

冠位が仮に全能だったら一騎投入してそれこそ終了だろう。

だが現実、出来ない事と出来る事がある為、獣一匹に対し七騎が必要となるのだ。

ジャンヌ・オルタ? アレ、負けこそしたがそれでもメガテン世界生き抜いた怪物なんで殺すや破壊するという事に置いてはここに右に出るものは居ない冠位霊基でさえ弱体化した状態の一種の規格外なので無視である。

閑話休題。

そんなこんなでワーキャーしつつも、カルナは一人で黙々と食っていった。

いや彼的には言う事を皆が言ってくれたのでいう必要ないかなぁと思って黙って食っている次第である。

 

「味に問題ありましたか?」

「いや不足はない、むしろ此処までして貰っていいのか・・・」

「良いんですよ仲間じゃないですか」

「・・・そうだな」

 

黙り込んで黙々とカレーとサラダを食っていったカルナにマシュが話しかける。

カルナ的には此処まで施して貰って良いのかと言う申し訳なさが勝っていた。

だがマシュはもうカルナを仲間だと思って気にするなと言う。

現にマシュにとっては仲間だ。

人理を守る為に戦ってくれているのだそう思うのも自然な事。

だがカルナには負い目があった。

嘗てエジソンと轡を並べていた事をだ。

無論人理の守護者として言葉を尽くした(カルナ的圧縮言語で)が聞き入れてもらえず、

ニャルラトホテプの介入を許し、自分はズタボロにされエジソン陣営から叩きだされ、

鎧の加護が在れど不味い致命傷を負わされ、フローレンスに拾って貰わなければまずい状況まで来てしまうという負い目があった。

さすがにカルデアにはキレられるかと思ったら厚遇され今や仲間として認識されている。

打算的な物もあるだろうが確かに親愛を感じた。

やはりオレは恵まれているとチキンカレーのホロホロと崩れるチキンを噛みしめながらしみじみとカルナは思うのであった。

彼らは日常の中で生きる人、自分たちが守るべき人であることを思いながらだ。

 

「じゃぁ、見張りは三時間交代で・・・」

「まてそれは余とカルナがやって置く」

「しかしだな。さすがにアンタたちに負担を掛け過ぎるのは「それはこちらの台詞だ」」

 

なんやかんやあって食事を終えて後は寝るだけとなったが、

見張りは三時間交代の声が達哉から出た時、

流石のラーマも止めた。

達哉の意見も潰してだ。

可笑しいぞこいつらの価値観とラーマは思った。

普通マスターとはサーヴァントに守られるものである。

前線に出てきたときから可笑しいとは思っていたが、

まさか見張り番まで買って出るとは思わなかった。

 

「そちたちは自分の身を労われ!! そちたちが落ちたら終わりなんだぞ!!」

「だが現実人手が足りない訳だし」

「言い訳無用!! 余たちがやっとくから休め、な?!」

 

人材が足りない戦力が足りない火力が足りない。故にペルソナ使いの三人も前線で切った張ったなのだ。

マシュが最近デミサーヴァントからペルソナ使いになったお陰で火力面の補強も出来たが、

同時にメイン火力を担ってたシグルド夫妻を失いトントンと言ったレベルである。

戦場もほぼ多面作戦と負いう愚行をしなければならないほど追い詰められていた。

故に今回のようにリソースを一点集中できる方が初めてではあるが、ペルソナ使いである以上、自分たちも戦力に入れなければ

ニャルラトホテプが後ろから刺してくるだろう。

現状からしてもグサグサ刺してきているのだから。ニャルラトホテプの脅威に皆が備えるのは当然の事だった。

つまるところ遊びが作れないのである。

今回だって神経を擦り減らしている。場所が場所なだけあって下手に察知されてはならないからサモライザーから出していないだけで。

いつも通りだったら全員が外に出て警戒態勢だ。

故に基準が狂っている。サーヴァントを頼りにしたい、それは本当だが自分たちも出ないと戦線が崩壊する極地に彼らは出続けていたが故に。

自分も戦力として数えてしまっている。

現にカルデアマスターズはサーヴァントにも劣らぬ戦力となりサーヴァントの隣に立って戦える力があるから余計にだ。

故にカルデアのサーヴァント達を責めることは現地勢も誰もが出来なかった。

フローレンスはニャルラトホテプの化身の試練を体感済みだからさもありなんという奴である。

気を抜いて覚悟を緩めれば刺してくる。

元々噂結界だってどうしようもない代物なのだ。

認知したが最後、その効力に自分たちも巻き込まれるのだから。

例えば条件が揃えば世界が滅びるといううわさが流れる。無論止めようと条件を整えさせない者達も出てくる訳だが。

それ等だって条件さえ整ってしまえば世界が滅ぶという噂を信じている事になる。

故にこの人型機動兵器やらなんやらが使えるエジソン軍が居るこの特異点ではカルデアマスターズは特に神経をすり減らしていた。

戦略上の愚を犯してでも速攻戦を仕掛ける必要が其処にはある。

故にマスターとて戦力として成り立つ以上出なければ嵌められる。

まぁそう言う訳もあり、常時戦場の精神が三人に身に沁みてしまったのである。

彼らが安心して眠れるのはカルデアの自室のベットの上だ。

達哉はテントの端で兼定の収まった鞘を抱えて体育座りで寝ている。

オルガマリーはリペアラーをすぐさま抜けるように枕元に置いている。

マシュは即応できるように睡眠時間が減ったし、下手に触れようもんなら拳が無意識に飛んでくるレベルだ。

インドの三人は見ていられなかった。

彼らは日常で笑って過ごす人々の類だ。

ただ普通の人間には高望みかもしれんが自分の店を持って三人一緒に暮らしたいと思っているだけの只の人だ。

だが運命は彼らを逃さない、どこまでも追ってくる。

そう影は逃さないのだ。

無意識下に影ある限り何度でも勝とうが影は湧いて出てきて追ってくる。

 

「・・・」

「どうしかしましたか?」

「フローレンスか」

 

星空を見上げながらカルナはノンアルビールを飲みため息を吐く。

其処にフローレンスが来た。

彼女は様子が可笑しいぞとカルナに言う。

 

「時代は発展し成長を続けている。英雄が必要にならなくなった時点で大規模な争いも無いと思っていたが、現代ではある意味、オレたちが生きた時代より惨い戦場が増えたと聞いてな・・・」

「文明の発展は力の均等分配です。誰もが銃を握る権利が与えられればそうもなりましょう」

 

そうフローレンスが言う通り時代が発展すればするほど影は色濃くなる。

通信網が発展し現代社会で噂結界なんて使われてみろ、

一瞬で世界は滅ぶ。

文明と言う光が発達した故に影もまた濃くなっていく。

更には文明の利器が平等に人々に力を与える。かつての大英雄の突きが今や銃器で誰でも再現できる。

子供すら銃を握り、弾丸を込めれば力を持てる時代になってしまった。

 

「オレたちはなんの為にと思ってしまってな」

 

故に自分は間違ったのかと思ってしまう。

だがしかし、

 

「それは後生の判断でしょう。今を生きる者達にとっては過去は教訓に未来は無限の可能性に思いを馳せて見るもの、そして今は未来を現実とするために走る場所なのですから」

 

そう言ってフローレンスもノンアルビールの缶を開けて飲む。

 

「だからこそ、第一の獣の所業は認められないと我々は集ったのでしょう。影に何と言われようともそこに嘘はないはずです」

「そうか・・・そうだった」

 

カルナはそう言いつつノンアルビールを一気に飲み干した。

 

「哨戒に出て来る」

 

哨戒に出て来ると言って空に飛び立ったのだった。

そして日が出てワシントンへと向かう。

相変わらず規格外の走力によってロマニが何度かダウンしたが、

ほぼほぼ予定通りの到着時刻となる。

 

「壮大な歓迎だな」

「ですね罠を疑うべきかと」

「それなら踏みつぶすだけよ」

 

城下町はカルデアの事を変わったバイクが通っただけとしか見ていなかった。

だがホワイトハウスまでくると違う。きちんと訓練されたケルト兵士が詰めていた。

最も槍や剣に下手な魔術だけではACの装甲を貫けないから余計な戦力ではあるが。

 

「待っていたぞ。カルデアの戦士よ」

「お前はフィン・マックール・・・」

「あの時のようには行かぬぞ」

 

兵士の軍勢をモーセのように割りながら三人のサーヴァントが出て来る。

一人はフィン・マックール、チェイテ特異点で袋叩きにしたフィオナ騎士団の長だ。

もう一人は黒子と持っている二槍流の偉丈夫ことディルムッド。

そのディルムッドから女性陣に向かって魅惑が放たれる。最も魔術の使い手なら弾ける程度であるしサーヴァント級の霊基密度があれば容易く防げる。

達哉達はまぁ事前知識があったので顔を顰める程度だったが、

妻に色目を使われたのかとラーマは静かに柄に手を掛けた。

フローレンスは右手にガリルACE52と左手にメス持って黒子を切り取る算段ありありである。

そして三番手に現れたのは筋骨隆々の無頼漢ことベオウルフだ。

 

「どういう事かしら? 交渉をしたいのではなくて?」

「単純よお嬢ちゃん、私達の同盟に相応しい勇士か否かは見届けなくてはならないもの」

 

クー・フーリンを中継点にしてオルガマリーが疑問を提示すると、

黒衣と異形の鎧を身に纏ったバツが悪そうなクー・フーリンを伴ってメイヴがホワイトハウスから出て来る。

その直後に振動。

 

「何かあれば抑えればいいのだな?」

 

交渉と聞いていた為、サーヴァント達やロマニは後ろに控えていた。

それが仇となり分断された。

メイヴの命令に殉ずるフェルグスとアルジュナが間に入ったことによって。

 

「貴様・・・」

「宝具を撃ってみろその時は俺も虹霓剣を全力で撃たせてもらう」

「ちぃっ・・・」

 

宝具の打ち合いになれば勝てるだろう。

だがその時はこっちも甚大な徒労を被ることになる。

 

「まぁ力を見せろって事、一対一の決闘を同時に行って力を見せればいいだけの話」

 

メイヴはクスクスとほほ笑みながら言う。

要するにフィン、ディルムッド、ベオウルフの三人と達哉たちが一人ずつ一対一で同時に戦い力を見せろとの事だった。

 

「了解した」

 

達哉はため息交じりに了承。オルガマリー達も同様にだ。

 

「じゃもうやっちゃって良いわよ」

 

メイヴの号令と共に三人が動き出さんとして。

それよりも先んじて達哉達が動き出す。

 

「カハッ おいおいこいつは最高かよ」

 

ベオウルフの二刀を受け止めたマシュを見てベオウルフは嗤う。

ラウンドテーブルで防がれ、逆に押し切られそうになったのだからそれは嬉しさも一塩だ。

一方のフィンは縮地(技術)によって間合いを詰められ、放たれた神速の居合、首狩り一閃に槍で何とか対応した物の、額から冷や汗が一筋流れでる。

対応が一瞬でも遅れていたら間違いなく首を取られていた。

一方のオルガマリーは超塩対応である。

ある意味、戦闘に対して最もドライなアマネから教えを受けたのだ。

相手の誇り? 矜持? 戦場ではそんな強者のみが共有する誇りなんか知った事か。

迷惑なんだ死ね死ね死ね、無様に死に腐れ、お前らはとっくに死人であろうがよと。

故にその動きによどみはなく屠殺場の機械のように動き。

正確な狙いを持ってディルムッドを封殺に掛かる。

マスター全員が技術お化け共に鍛えられたのだこれ位は当然である。

そして、

 

「まだやるか?」

「いいや私の負けだ」

 

何でもありなら現在でもカルデア最高戦力の一人である達哉とフィンの決着は即座に着いた。

ノヴァサイザーからの目つぶし&首に刃を添えて。背後にはアポロのゴットハンド待機である。

どう足掻いても詰みだった。

一方のマシュとベオウルフは熾烈な近接戦闘へと移行していた。

だが所詮、喧嘩殺法的な物でマシュは落とせない。

故にマシュは覚悟を決めた。

この時空のマシュは優しくはない、かと言って殺すのも後に響く故に、

 

「一撃です」

 

マシュは指一本を立ててペルソナを消した。

いや厳密に言えば武装部分を消しただけであって鎧の部分は消していない。

出ないと立っていられなくなる。

故の半分展開と言う技法だった。ジャンヌ・オルタも使えるがそれは彼らもあずかり知れぬ話。

マシュは下半身不随生活の中で自然と身に着けた。

ベットやらトイレやらの度に鉄塊やら大盾みたいなペルソナを召喚していては邪魔だ。

故に鎧部分だけ展開できるように自然と出来るようになっていた。

 

「あん、ふざけてんのか?」

「事実です。今からアナタを一撃で沈めます」

「クハ・・・・カカカカカカカ!!」

 

ベオウルフの疑問に腰を落として八極拳の構えを取るマシュ。

ウリエルを使えば確実に相手を殺してしまう故に、素手で挑み尚且つ一撃で気を飛ばすと来た。

ベオウルフは目の前の小柄の少女にそれは出来ないと、思わなかったのである。

今の今までのやり取りで感じた。殺す気だったらとっくの昔にやれていると。

だからベオウルフは見誤らない。

全力の拳を持ってマシュを鎮めると決めて両手の剣を放り投げて、拳を振りかざし。

 

「やってみろぉやぁぁああああああああああああ!!!」

 

その瞬間、マシュの背がベオウルフの前に現れる。

不味いこれを受けたら沈むという気配を感じ、両腕を交差して防御姿勢し移りつつ咄嗟に一歩下がる。

凌いだと思った瞬間、其処には衝撃も何もなく先ほどまで迫っていたマシュの背もない。

所謂所の気当てである、常人ならそよ風とも感じないだろう。だが天才的ベオウルフの感性はマシュの殺気とも呼べる風に当てられ技を撃たれたと幻視してしまった。

よって完全にずらされたのはベオウルフの方。完全に凌ぎ切ったという安堵感から、

マシュの全力の鉄山靠が炸裂しふっ飛ばされ壁に叩きつけられた。

因みにこれでも加減した方である。

本来なら気当ての段階で相手の心を完全に圧し折る幻影を見せる。マシュの場合は無限の剣が体をミンチに擦る光景だろうか。

そして鉄山靠なら直撃した瞬間に胴部の骨と内臓を破壊しただろう。

だから確実に内臓を痛め肋骨をへし折る程度に止めたのは実に手加減だ。

 

「はは、マジで一撃とか」

「満足しましたか?」

「いいや、だが今は良い。だが今度は全力でだ」

 

ベオウルフは良い笑顔で意識を落とした。

だが満足して無い様で今度は全力で殴り合おうぜ!!と一方的に約束されてしまった。

そしてオルガマリーの方だったが。

 

「もう止めてくれぇ!! ディルムッドのライフはゼロだ!!」

「離せヤァ!!」

 

別世界に煉獄と言う技がある。簡単に説明すると一定のパターンに従って決められた手順の打撃を放つことにより相手の動作に制限と強制を強いり連撃で沈むまで殴り続けるという技だ。

この世界ではアマネが考案した。

アマネは女であるがゆえに体格差で押されることも多かった故に考案した代物だった。

無論、アマネに師事していたオルガマリーもキチンと教わっている。

弾幕を抜け槍の間合いで戦闘しようとしたディルムッドにさらに間合いに踏み込まれソレを行われたディルムッドなすすべはなかった。

文字通り意識が途絶えようと初手で誘惑してきたディルムッドに対し手心をオルガマリーは加えるつもりはなく。

秘伝とも呼べるそれを実行。結果、オルガマリーの息が切れるまで意識が途絶えようともボコボコにされるという悲惨な結果になった。

余りに惨かった為、フィンがオルガマリーを羽交い絞めにして顔面が蜂の大群に刺されたように膨れ上がったディルムッドが倒れ伏すのを確認したメイヴの号令と共に

試し試合は終了となったのであった。

 

「じゃ、そちらの要望を聞きましょう」

 

場所は移りホワイトハウス内に移動。

会議室で卓を囲みメイヴはそう言う。

そう言われたオルガマリーはポーチから例の紙を取り出す。

 

「此処に書かれている事が私達の要求」

「ふーん、エジソン軍打倒までの同盟、良いわね、次にクー・フーリンの返還、まぁそれは良いでしょう。雌雄を決して誰が本当の主か分からせるのも良いでしょう。・・・アルジュナの一時的そちらへの帰属?」

「アルジュナはカルナと因縁がある。その解決の為に一時的にカルデアに下ってもらう必要がある。私達はアルジュナに恩を売れる。アナタはエジソン軍始末の後にアルジュナを遠慮なく従えられるし女王の器も見せられる。アルジュナは今後の戦いに遠慮なく弓の腕を振るえる」

 

アルジュナとカルナは因縁を抱えている。

故に因縁の清算の為に一時的にカルデアに下らせ、

因縁解決後に契約をメイヴの元に戻すと言う物だった。

これならカルデアはアルジュナに恩を売れるし、メイヴは女王の器量をアルジュナに見せられるついでにカルナにも恩を売れる。

そしてアルジュナとカルナは口語の憂いなく戦えるだろうことだったからだ。

 

「なるほど良いことずくめね。でも私自身がカルデアの勇士に手を出すことは禁止ってのはどういうことかしら?」

「自分の逸話をご存じで?」

「無論、知っているわよ、ああだからか、達哉だっけ? 彼を取られるのが怖いんだ?」

「―――――――」

「うふふ、可愛いわね。だけど安心しなさいな私はカルデアの戦力全てが魅力的に映って欲しいのよ。取るなら総取りってあなたも良く知っているでしょう?」

 

そうメイヴは勇士に目が無い。

カルデアのサーヴァント、レジスタンスのサーヴァント、皆綺羅星的魅力がある。

故にこの強欲な女王が欲しない筈が無いのだ。

加えてマスターズもメイヴの守備範囲だ。達哉はフィンを瞬殺、オルガマリーはディルムッドをボコボコ、マシュは宣言通り一撃でベオウルフの意識を刈り取った。

いずれもケルトに名を連ねる勇士であるそれらを一蹴したのだ欲しがって当然という訳である。

特にオルガマリー、マシュは達哉に恋する身だ。

達哉に限ってそう言う事は無いかもしれないが可能性が頭によぎった時点でこの項目を盛り込まないと気が落ち着かなかったのである。

後魅惑関係で引っ掻き回されても困るという意味でだ。

 

「それにしても、このギアススクロール、魔力を感じさせず良く作ったわね。並の王なら気軽にサインしてあぼーんよ」

 

メイヴは紙を持ちあげながら妖しく微笑む。

オルガマリーの表情は変わらないが背筋に冷や汗が流れた。

バレた以上ご破算とカルデア勢が思った瞬間。

 

「良いでしょう、このギアススクロールにサインしてあげる」

「分かっていてなぜ・・・」

「ふふ、達哉だったかしら、交渉担当のオルガマリーも立派な勇士だからよ。私が見抜いた事を行っても表情を変えなかった。こっちも契約を掻い潜って如何に手に入れるかワクワクしてきた。久々のそれに対して免じてね」

 

そう言ってメイヴは親指を切ってギアススクロールにサインした。

やはり侮れない女だと全員が思いつつ、

一時的な同胞が出来たという事もあって宴へと場面がシフトしていくのだった。




ゆるキャンFと女王メイヴとの交渉回でした。長距離移動だからね、そりゃ日数も掛かるわけで。
あとシータですがメシウマ設定です、追放されたり旅したり監禁生活してりゃそりゃ現代の調理法を学べば直ぐに一般家庭くらいの味は出せます。
あとメイヴちゃんは策略家としての一面を強く出させて貰いました。
本来戦闘職じゃないからね彼女。キャスターあたりが適正だと思うこの頃。
それでメディアの入れ知恵を受けたオルガマリーも上回った模様。
本作メイヴちゃんは伊達ではない
その上で勝つためにサインするのも女王の度量よ。

あとフィン、ディルムッド、ベオウルフ瞬殺の件ですが。
たっちゃん、所長、マシュもペルソナ補助がある上に歴戦の技術お化け共に鍛えられているのでこうもなります。
固有スキルもチートだからね三人共。

次回はカルナVSアルジュナ、宝具やら加護やら一時的に放棄してのスデゴロ対決となります。
あと多分、おっぱいタイツ師匠退場するかも。

では次回も恒例てきに遅れますんでご容赦お~
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