Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです 作:這い寄る影
ペルソナ2罪より抜粋。
アルジュナは授かりの英雄として生を受けた。
それは逆に言えば神々の手によって敷かれたレールの上を走る機関車。
あるいは糸の突いた操り人形のような人生である。
自分の意志と言う物を発揮すれば出来るようにお膳立てされる人生だ。
もうそうなればそこに達成感はなく生きている実感も得られなかった。
さらに言えば彼は聡明すぎた。
戦や政や人間模様の黒さを直視し真面目に付き合っていたがゆえに、
黒い自分を生み出してしまった。さらに最悪なことにそれを自分とは認めたくなく、
イマジナリーフレンドみたいな存在として扱ってしまった。
宿敵とは碌な決着を付けられず、神々の玩具のような人生、醜い黒。
そしてアルジュナは影から言わせれば逃げているだけの人生だったと評される。
境遇が嫌なら父に反抗の一つくらいして見せろと言う物だ。
故に影は嘲笑う。
今もまた過去の悔いを拭う場所を授けてもらうという滑稽な立場にあることを理解していないアルジュナに、
―またそうやって誰かに与えられるのか?―
影はアルジュナの闇の中で蠢き嘲笑った。
ハッとなりアルジュナは意識を戻した。
どうやら飲みなれない未来の酒を飲んだことで眠っていたらしい。
恐るべしストロン●・ゼロ。
そして窓の外を見れば何か賑わっていった。
「なんだ?」
誰か見慣れぬ老人とディルムッドが訓練している。
気になったので近くで見てみたいと思い、アルジュナも広場に出てみた。
「メイヴ、この状況は?」
「見ての通りよ、模擬戦でどっちが勝つか賭け試合やってんの」
「こんな状況下で」
「相変わらず生真面目ね、少しは肩の力を抜いたら? 生真面目すぎるからそういう生き方になっちゃうし、ソレを生み出しちゃうのよ」
「!?」
メイヴは心底退屈そうにアルジュナを見ながら言う。
全部見抜かれたと驚愕していた。
アルジュナにとってはメイヴは軽蔑する女性像そのものだったからである。
淫欲を好み、欲しい物はあらゆる奸計を張り巡らして手に入れる、典型的な悪女そのものだったからだ。
性格も享楽的で余計に好きになれない。
だから心のどこかで侮っていた。
だが昨日のカルデアとの交渉はまさに女王そのものの風格を出しいたし、
同時に思った。敵に回してはいけないと。
「まぁ生き方は本人が選ぶことだからこれ以上とやかく言わないわ」
メイヴはそう言って模擬戦へと視線を戻し何時もの様子でヤジを飛ばしていた。
「ああ、アルジュナ、此処にいたのか」
「達哉ですか・・・私に何か用ですか?」
「昨日の契約の件があるだろう? 一時的にラインをカルデアに移すって」
「ああ、そう言えばそうでしたね・・・所で達哉はなぜここに?」
「朝練だ。なんか準備運動している間に賭け試合なんか始まっているが。老人の方のサーヴァント、宗矩さんとな」
アルジュナは老人の正体を知って納得が行く。
剣の腕だけ見ればアルジュナを遥かに凌駕している老人の正体がカルデアのサーヴァントと聞いて納得した。
何故なら剣の腕だけは現状、少し達哉の方がアルジュナより上であるからである。
あれほどの師に恵まれていればそうもなろう。
逆に言えば少しの言い方のほうがおかしい。
天才が宗矩に習っていればアルジュナを超えるし、アルジュナが習っていれば剣の腕だけで言えばカルナを上回っていたかもしれない。逆もまたしかりだ。
故に戦慄した。どれほど凡才の身で練り上げたのかと言う驚愕がアルジュナには内心あった。
無才の身で自分が勝てぬと思ったほど練り上げたのだ。
そして実戦ではなんでもありになる。そうすると潔癖症気味のアルジュナでは達哉に勝てなくなる。
「所長たちは応接の間で待っている」
「わかりました」
そうして達哉とアルジュナは分かれた。
アルジュナは応接の間へと移動する。
其処ではオルガマリーとマシュが準備を終えていた。
「私はメイヴに縛られる身、一体どうやって契約を移行するつもりで?」
「メイヴにはセルフギアススクロールが動いているわ。今、合図を行ったから契約は破棄されているはずよ。だからこれにサインして」
「確認しても?」
「もちろんOKよ」
術者とは騙す者だと知っていたアルジュナは一応、ライン接続の為の紙をチェックする。
オルガマリーの血で描かれたそれにはオルガマリーの魔力の匂いが香っていた。
メイヴに渡したセルフギアススクロールとは違い隠遁を使っていない。
だがもしもがあるとしてアルジュナは入念にチェックを入れる。
契約内容にも問題は無かった。隅の方に小さく何か書かれているとかは無かった。
魔術的ごく普通のライン移行の為の契約書である。
「これは私も血を使って書いたほうが?」
「ええ、と言ってもサインじゃなくて血判だけでも十分に機能するわ」
「分かりました」
そしてアルジュナは親指の先を噛み出た血で血判を押す。
その瞬間、魔力の流れが変わった感じがする。
余計な束縛も今のところはない。
カルデアは約束を守ったのだ。
「さてと・・・おっと・・・」
「大丈夫ですか?!」
自分ができることはしたと椅子から立ち上がるオルガマリーの身体が一瞬倒れ。
慌ててアルジュナが支える。
「ちょっと血を抜き過ぎた見たい。増血薬は飲んだんだけどね・・・」
「無茶をし過ぎですよ、アナタは、達哉「それ以上言ったら契約無かったことにするわよ」ッ!?」
こんなにオルガマリーに負担を掛けるなんて達哉達は何をしていたんだと言おうとして。
それ以上言ったらただでは置かないというオルガマリーの視線に制される。
「言っておくけどね、血を採血してセルフギアススクロール書いたりライン変更の為の書類をそろえる事なんて、彼らの労力に比べれば大したものじゃない。達哉は第三で右腕を一度は失っている。マシュはペルソナ展開しないと下半身不随なのよ」
無論達哉達も止めた。
だが貧血になる程度の事はオルガマリー的には何のことはない。
血は最高の触媒だ。魔術修行とか礼装作りなんてしていればしょっちゅうなる。
幾ら人理焼却まで魔術鍛錬や礼装作りを放棄していたとはいえ偶にはやっていた。
ペルソナ使いになり刻印の呪縛から解放された今でも戦力に必要とあってやってはいる。
案の定、鍛えておいてよかった場面はあったわけだし。
だから必要なことだとオルガマリーは達哉達を説き伏せた。
それもあるが、
それ以上に労力を達哉達も払っている。
常に最前線に張り付いているのは達哉達だ。
彼らも相応に血を流している。
そのせいで達哉は右腕を一度は失い、今は生体義手だ。
マシュの事に感づけなかったせいで、彼女は下半身不随だ。
そして自分の拙い指揮のお陰で多くの死傷者を出して来た。
それでも共に背負って歩もうと言ってくれたあの二人からの信愛と友情に茶々を入れられたようでオルガマリーは少しキレていた。
故にこの程度の労力で二人を侮辱するのは許さないと瞳が語っている。
「だからあの二人を責めないで」
「謝罪を・・・」
「なら良いわ、後ね」
「あとなんですか?」
「あまり本当につつかないで頂戴本当に、私の中のビーストⅦが目覚めるから」
「はぁ?!」
アルジュナは突然の独白に目ん玉が飛び出るぐらい驚愕した。
ビースト、人類悪と呼ばれる人類愛によって人類を駆逐する怪物。
鎮圧には七騎の冠位が必要とされる化け物。
それが目の前の女性が抱える物と知り、尚且つ抑えに回っているとは思っても居なかった。
しかも最後の獣だ。どんな精神力をしているのだとアルジュナが驚愕するのも無理はない。
「どうやってあなたは・・・」
「獣を見つめて自分だと受け入れて抗っているだけよ」
オルガマリーがそう言った刹那だった。
アルジュナの心に長剣が刺されたような衝撃が走る。
受け入れ抗う者と目を逸らし逃げた者の差と言う者が克明に提示されたからだ。
前者がオルガマリーで後者がアルジュナだ。
故にこの日初めて精神的な意味でアルジュナはオルガマリーと言う存在に屈したのだった。
汗が飛び散る。
クー・フーリンと達哉が木槍と木刀を交差させる。
両者共に必死だ。
と言っても達哉が押され気味だったがそれでも粘る。
「わりぃな、やっぱ俺もケルト男児なんだってなぁ!!」
「好きでやっているから問題はない!!」
「ハッハー!! そう言ってくれると嬉しいぜ!! 何だかんだでヤル機会無かったもんなぁ!!」
クー・フーリンと達哉は何だかんだでヤル機会が無かった。
得物を刀にして主兵装にしているのが達哉で。なんだかんだでほかの仮想敵も、書文、宗矩、アマネで済んでしまうからである。
だからクー・フーリンは敵対と言う概念では達哉と戦ったことが無い。
故に今がある。訓練とはいえ最高の敵と戦えることに歓喜する。
達哉には才能が一切ないのは何度も語っていることだ。
マシュを金、オルガマリーを銀とするなら、達哉は其処ら辺に転がっている鉄だ。
だがそれでもと彼は磨き続けた。
その執念、賞賛に値すると言えばクー・フーリン的に嘘ではない。
彼もまたケルトの英雄なのだ。純粋な磨き上げた強さを才能抜きにして褒めたたえる。
なるほど、師匠も褒めたたえる仕上がりだと。
一方のカルナVS宗矩も白熱していた。
鎧が破壊不可能? ならばよろしい露出している、あるいは鎧では覆えない間接駆動系を狙うという手法に出たのが宗矩だ。
実戦だったら既に兜割りも使用するためカルナの指はバラバラに加工されていただろう。
現に鎧の回復効果が無かったら指がバキバキに折られており決着がついている。
カルデアはカルナを一種の歩く無敵戦艦扱いしているが、対人戦闘に限定するなら一方的に蹂躙できる極まった連中の巣窟である。
だがカルナは今の状況を楽しんでいた。
剣だけに限定するならインドでも宗矩レベルと呼べるのは師とか神仙くらいな物だろう。
神の加護もないただの人の身で此処まで至った強者と模擬戦とは言え切り結べることに内心、父のスーリヤに感謝をささげていた。
そしてそこからさらに時が10分程度進み、
達哉と宗矩が動いた。
達哉は下段に放たれた木槍を踏みつけそのままクー・フーリンの首筋目掛けて木剣を走らせる。
宗矩はカルナが槍を突き出すと同時に雰囲気を変え最小動作で槍を弾き剣のベクトルを変更、達哉と同様にカルナの首目掛け一閃を放つ。
「そこまでです!! そこまで~!!」
そして車椅子に乗ったマシュが慌てて試合を停止させる。
これ以上はマジの殺し合いにになる。否、直前まで行っていた。
クー・フーリンの横首数cmの所で達哉の木剣が止まり、達哉の右胸部分にクー・フーリンの貫手が付きつけられ服一枚調度を穿ち。
カルナの右眼孔が一瞬だが光ったがマシュの静止で収束が消え失せ。
代わりにカルナの横首に添えられた宗矩の木剣がカルナの首からかすり傷として一筋の血筋を流していた。
このまま行けば、達哉の心臓はクー・フーリンの貫手で穿たれ、カルナの首は魔剣・兜割りで切り飛ばされていただろう。
もっともマシュに言われずとも四人は分かっていたので、
「いやぁあぶねぇ、だが今回は俺の勝ちだ。達哉」
「ああクー・フーリンの勝ちだ」
クー・フーリンはいい汗かいたとばかりに勝利宣言し、メイヴは賭けに勝ったのと推しが勝ったの両方で実にホクホク顔だった。
「師の言っていった空位という概念、魅せてもらった。オレの負けだ」
「いや危ない所でしたとも、そちらの奥義が早ければ屍を晒していたのは拙者の方でした。勉強させてもらいましたとも」
カルナの方は一瞬、
もしこのまま行けばカルナの首が飛ばされていた。
兜割り、因果破断領域に至っている斬撃は如何にスーリヤの作った鎧でも防げない物だからである。
だがそれ以上に宗矩が早かったというのもあって空位を見れた事を感謝しつつカルナは率直に負けを認めた。
「―――――」
「ラーマ様も戦って見たかったですか?」
「うむ、やはり戦士として四人共高レベルの戦士だ。血が疼く、余も戦士なんだなぁ」
「なら今度戦って貰えばいいじゃないですか」
「それもそうだな」
ラーマ夫婦は相変わらずのいちゃつきっぷりである。
「なぁオレ、アレと同レベル期待されてんの?」
「そうみたいですね!! 頑張りましょう織さん!!」
「うへぇ、勘弁」
アルトリアは意気込みを新たにして織は勘弁と言いたそうだった。
孔明は書類仕事に追われエミヤは朝食を作る事に精を出し、マリー・アントワネットは賭け事に負けたカイジのように地面に突っ伏していた。
そしてベオウルフは一つ気になる事があった。
「なぁ嬢ちゃん」
「はい? なんですか?」
掛け金を配っていたマシュにベオウルフが近づき声を掛ける。
疑問を知る為に。
「なんでそんな車輪着いた椅子になんかのってんだ? 自分で歩けるだろう?」
「ああ、言う事でもなかったので言ってませんでしたね。私、下半身不随な物で・・・」
「えっいやでも、嬢ちゃん。俺と戦った時は普通に立っていたじゃねぇか?」
ベオウルフはマシュの告白にぎょっとする。
当たり前だ下半身不随の女子に一撃でのされたのかと思うし、
第一、昨日は普通に立っていったじゃないかと。
「ペルソナ・・・まぁ私の鎧と盾と剣を展開していれば足も動くので」
「だったらそのペルソナだかを常時展開してればいいじゃねぇか」
「アレ精神力使うんで・・・それと私は普通の身体じゃないので常時展開と言うわけにも行かないんです」
「そんな嬢ちゃんまで最前線にでるってことは「ベオウルフさん一つアナタは勘違いをしています」ほう?」
アルジュナが批評したカルデア像を否定したオルガマリーのようにマシュもまた否定に入る。
「私は望んで此処に居ます。たとえ祝福されなかった命だとしても、先輩や所長と一緒に居て、彼らと隣に立って戦いたい。たとえ明日死ぬんだとしてもです」
それはベオウルフが目を見張る程の覚悟だった。
自分の生まれや身体改造をした連中を憎んでいないとなれば嘘になるが、
そもそもの話生まれていなければ、達哉とオルガマリーとも出会う事さえも出来なかったのである。
だからその生まれが呪われていたとしても祝福されていないのだとしても生まれてよかったと思えるし今受け入れている。
体の事もそうだ。たとえ明日自分が死ぬと分かっていても全力を尽くしたい。足掻いて足掻いて生き抜いてあの二人の隣に立っていたいのだと胸を張る。
その言葉にベオウルフは己が愚を自覚し苦笑し、
「済まねぇ、戦士の嬢ちゃんには侮辱だった」
率直に謝った。
マシュは戦士とか言われて反応に困りつつ曖昧な笑顔で返した。
「一応消毒しますので」
「ちょっと待て、鎧の間からアルコールをいれるな!!」
カルナはフローレンスにとっ捕まり殺菌消毒を受けて鎧の隙間からアルコールを入れられていた。
「皆朝飯が出来たぞ」
其処に朝飯作って持って来たのがエミヤだ。
最も食べるのはカルデアのマスター三人とデミサーヴァント状態のロマニと昼頃に戦闘を控えるアルジュナとカルナのみだ。
さすがにケルト軍の世話までしろと言われたら切れる自信がある。
「あー美味しそう!!」
出されたのはエミヤ特製カツサンドだった。
しかも出来立てホクホクである。全てが市販品で作ったものだがエミヤの腕であればこれ位は出来る。
そしてそれを見たメイヴが声を上げ物欲しそうに見つめるが、
「駄目だこれは、マスターとロマニそして昼には戦闘を控えているインド二人の者だ」
「ケチー、ねぇ私一人分だけで良いから作ってよ~」
「はぁ~後でな」
エミヤ、実に面倒臭そうである。
まぁどうせ今みたいに馬鹿騒ぎになると思っていたので昼の分はサーヴァント全員分の仕込みをしていた。
アルジュナとの契約云々後はオルガマリーも手伝ってくれるみたいなので多少量が増えても問題ない。
「・・・アンタもなのね」
「なにが?」
「・・・いえ、アンタの場合単純に鈍すぎるのね・・・苦労したんじゃないアンタの周りの女たち」
「なにがさ!?」
メイヴの審査眼によればエミヤは壊れている節があれど良い戦士だ。
だから誘惑するように声としぐさを送ったが無反応。
最初は達哉達同様なのかとも思ったが、
よく見れば単純に鈍すぎるだけだ此奴と見抜いた。
良い男なだけにエミヤ周りの女は苦労しただろうとメイヴはため息を吐き。
エミヤはなにが!?と言う反応を繰り出したのだった。
そうこうしている間に自由時間である。
と言っても宗矩と達哉には手合わせが殺到していた。
当たり前だ。ケルト人からすれば優れた武人と手合わせするのは誉だからである。
仮にもクー・フーリンと互角にやりあったり、カルナと激戦を繰り広げた者と戦いたいと思うのは当然至極であった。
もっともさすがに軽くあしらわれていたが。
そんなこんなで昼過ぎ。
「得物はこのままで?」
ホワイトハウス広場でアルジュナとカルナが相対し。
頬杖を付きながらレジャーチェアに座っているオルガマリーにアルジュナが聞く。
そう得物の問題だ。
基本的に弓は槍や剣に対して有利を取れる、遠距離攻撃とはそれほど野までに優秀だ。
故にオルガマリーが言った次の言葉は衝撃的だった。
「いいやスデゴロでどちらかが倒れるまで殴り合ってもらうわ」
「へ?」
「へ? じゃないわよ。戦いの基本は格闘戦よ。武器や装備に頼ったりしてはいけない。それに得物の性能差が無ければ後で言い訳も効かないでしょう? 明確にどちらが上で下か決着が着く」
「しかし加護や宝具は・・・」
「そのための私達よ」
スデゴロなら武器を離せばいいだけだが、生まれ持った加護と言う物がある。
どうしてもそれは取り外せない。だからこそ私達が居るのだとオルガマリーは宣言する。
「第一令呪を持って命ずる、アルジュナこの一戦での宝具は使用を禁ずる」
「第一令呪を持って命ずる、カルナこの一戦で宝具の使用を禁ずる」
第一令呪で万が一にでも宝具起動されたらダメなので宝具の使用を禁止。
「第二令呪を持って命ずる、アルジュナこの一戦が終わるまで神の加護を跳ねのけよ」
「第二令呪を持って命ずる、カルナこの一戦が終わるまで神の加護を跳ねのけよ」
そしてこれが大よそのメインだ。
神の加護は自動発動だ。本人の意図せぬところで発動してしまう。
それでは対等とは言えない。だから跳ね除けさせ対等にする必要性があった。
そしてこれが最後だ。これは両者が気持ちよく殴れるようにだ。
「「第三の令呪を持って命ずる、明確な決着が着くまで殴り合え」」
そうこれは勝手に納得されて決着が着かぬようにする縛り。
双方向の意思疎通が成り立って初めて解除される命令である。
明確に上下を決める縛りだ。
これを持って此処にいる全員がどちらが上かの生き証人となるのだ。
「では、初め!!」
それを確認すると同時に、見届け人となった孔明が右手を振り下ろす。
勝負の火ぶたは切って落とされた。
アルジュナは状況について行けず、唖然としていたが。
其処に躊躇なくカルナの右ストレートが全力で突き刺さった。
「ガッ!?」
「なにを呆けている? マスターたちはあの日のもしかしたらの決着を望んでいる」
アルジュナはきりもみ回転しながら吹っ飛び、そのまま数m程スライド、地面の土を噛む。
カルナ的にはお膳立てをキッチリさせてもらったし試合は始まっているのだと言っているつもりなのだがこの場には翻訳役は残念ながらいない。
ワナワナとアルジュナは立ち上がり。
「心の整理くらいさせろぉ!! カルナァァアアアアアアアアア」
「既に事前通告はされている」
思いっきり殴りかかったが、
カルナは冷静に攻撃を見切り左掌でアルジュナの拳を捌き右手ストレートをアルジュナの顔面に叩き込む。
カウンターを喰らう羽目になったアルジュナだが今度はカウンターしてくるだろうと思ったので、あえて受け止め。
顔面に突き刺さる拳の威力を感じならそのまま倒れる勢いに利用、後方中返りへと移行しサマーソルトを繰り出す。
咄嗟にカルナは首を沿ったが間に合わず、今度は宙高くカルナが打ち上げられ地面に落下した。
「やるな、アルジュナ、そう来なくてはな」
「不意打ちの一件は問わない、私の不徳だ。故にここから全力だ!!」
「ああオレもだ」
「「それでこそ!!」」
そうそれでこそと二人が叫び
「アルジュナァァアアアアアアア!!」
「カルナァァァァァアアアアアア!!」
二人の咆哮が交差しインド体術の髄を凝らした殴り合いが始まる。
神の加護も宝具もない。信じれるのは己が培った技術と経験と気合と根性のみだ。
そして一方のカルデアだが、
「そんなに何を気にしてるの?」
空を見上げている達哉にメイヴが問う。
と言うかオルガマリーもマシュも周辺警戒をしていた。
それどころか書文以外の全員が呼び出されカルナとアルジュナの勝負を見ているようで周辺を警戒していたのだ。
賭け事大好き、マリー・アントワネットも両者轟沈のドローと言う大穴に所持QP全賭けし勝負に白熱しているように見えて周囲を警戒している。
レイジスタンス側のフローレンスも二人の怪我に対応するようにロマニと雑談しながら警戒し、
ラーマはシータを侍らせながらコーラを飲みつつ二人の勝負を見ながらも周辺警戒している。
「いや、神取達がこの状況を見過ごす筈が無いと思ってな」
仮にもニャルの化身、この状況を見逃す筈がない。
なんせ最大火力を持っている二人が無力化されているのだ。
策を突っ込むならここらへんだろうと、ついでにアルジュナとカルナの勝負を水入りにして退去させられる最高のシチュエーションだ。
「あの不気味な男と知り合いだったの? アンタ?」
「かつて俺の先輩たちの事件の元凶で、俺とも殺し合った相手だ」
「ふーん、そう」
メイヴも何か察したのかそれ以上何も言わなかった。
それから一時間後、まだ殴り合いは続いていた。
元より気合と根性に優れるインド英霊同士の殴り合い。しかもその中でも最上位クラス同士の殴り合いだ。
そりゃ長々と続く。されど会場の熱気は収まらない。
双方ボロボロ、意識も混濁状態であろうにそれでも拳を振るう。
「タツヤ」
「なんだ? 所長?」
「キナ臭すぎる、仕掛けてこないのが不気味なレベルで」
「・・・マシュはどう思う?」
「私的には”見られている”と思います」
もうかれこれ一時間が経過している。プチVOBを使えば連中は楽に戦力を送り込んでくる。
なのにそれをしない。
故に達哉は勘の鋭いマシュに問うた。
そしてマシュは見られていると答える。
それには二人も同意だった。達哉、オルガマリー、マシュはニャルラトホテプの刻印を刻まれているのだ。
何時もより見られているという感覚が強くなったのを感じるのは当然の事と言えよう。
勘の鋭いマシュはよりそれを強く感じられていた。
「メイヴ・・・」
「なぁに・・・ってこれは?!」
メイヴに不味いと進言しようとした達哉の言葉にメイヴは邪魔するなと言うようにでもこたえようとして、
感づいた。
「よっしゃぁぁぁあああああ!!」
マリー・アントワネットが咆哮する。なんせ大穴が当たったのだから
「引き分けだなこれは・・・」
孔明もそう断ずる。
アルジュナとカルナのクロスカウンターが突き刺さっての同士討ちと言う結末だった。
アルジュナもカルナも立てない。
両者共に立とうと発しているのだが気合と根性領域を超えたためか立ち上がろうとしては倒れ地面の土を食む。
そして決着が着き全員が気づいた。
アルジュナから黒い瘴気が立ち上っている事にだ。
最期の一打。会心の一撃だったそれは向うも同じだろうとアルジュナは思った。
いつかあの日の決戦の続きは相打ちと言う結末で終わったのだ。
其処に悔いはない、全力を尽くし上か下かを決めるのだから。
―本当に?―
アルジュナの中で黒い誰かが蠢いた。
―全力を尽くすなら在る物全て使ってからこそであろうがよ、弓も剣も槍も戦車もないのでは意味があるまい―
黒い誰かがそう意識が朦朧とするアルジュナに告げる。
そう本当の戦闘で蹴りを付けたいのなら全武装使って然るべきだと。
―馬鹿なことをいうな!! 条件は五分五分だったんだぞ、だから私は―
―納得してないのに何を言う―
―何?―
―お前の本心はカルナに勝ちたいだ。いかなる手段を使ってもなぁ? もっとも全力の彼を打ち負かしたいのであって生前の様な事は御免だし、今回の様な素手だけのショー染みた物でもない、我ながら面倒臭い性格だよ―
―・・・お前はクリシュナで・・・―
―いい加減目を背けるなよ。我は影、真なる我。争乱期にお前が生み出した汚さから目を背けるために生み出された影だ。即ちお前の汚濁だよ―
ケラケラとクリシュナは・・・いいやアルジュナの影は嘲笑いながら事実を突きつける。
―なぜマウントを取られたときに近くの石ころを握らなかった?―
―黙れ―
―なぜ、腕をへし折るような真似をせず打撃に拘った?―
―黙れ―
―そうすれば勝てたのに―
―黙れぇぇええええええ!!―
そう卑怯な手段を使えば勝てた。
幾ら令呪の縛りがあろうとも抜け道は其処らかしこにある。
なぜそうしないとシャドウは嘲笑いながら問いかける。
―黙らんよ、お前は私、私はお前だから―
―うるさいお前なんか―
朦朧とする意識の中で、
―私ではない―
―クハ!! そうだとも私こそが真なる私。我は影、真なる我!!―
拒絶してしまったがゆえに最悪の事態を引き起こす事となった。
「嫌だぁ、来るな、来るな!!」
アルジュナが突然と立ち上がるなりそう言った。
漆黒が噴出しアルジュナを覆っていく、リバース・イドとは違う。
シャドウによる本人の乗っ取り作用だ。
アルジュナという英霊を媒介に普遍的無意識下から一つの神を降ろす。
複数融合のリバース・イド、技と過剰供給を引き起こすジャンヌ・オルタのオーヴァードーズとは違い。
完全にシャドウに飲まれている。
「クリシュナァァアアアアアアアアア!!??」
そして瘴気が爆発する。
顕現したのはクリシュナの様な何かだ。
厳密に言えば本人ではない。
だがカルデアは此処に至ってようやく理解する。
そもそもアルジュナがケルト軍団を殲滅するための爆弾だったのだ。
だから今まで手を出してこなかった。カルデアならそうするだろうと見越して。
「そう言う事ね・・・」
「なにがそう言う事ねよ!! なにあれ!? 神格じゃない!?」
メイヴが冷静沈着なオルガマリーに突っ込む、神霊が目の前に顕現すればそうもう成ろう。
「カルナ、勝負は終わったか?」
「ああ終わった引き分けだ。だがしかし鎧が戻っても回復するまでしばらく時間が掛かる」
「悪いが飛行可能なサーヴァントは俺たちの仲にはアンタだけだ働いてもらうぞ」
「そうであれば是非も無し」
「今回復スキルを掛ける、アムルタート、メディアラハン」
達哉も冷静にカルナに話しかけ彼の傷を癒す。
ついでに一戦片付いた令呪の効力ももうない、カルナは十全に戦える。
「リバース・イドを切る。そしてある程度攻撃して霊基を崩して俺と所長で一旦飲まれたアルジュナを取り出すぞ」
「ええ分かったわ。その後シャドウボコってアルジュナに受け入れさせる方向で良いのね?!」
「ああ」
そして決意を固めた。
相手は飛行可能。カルデアの飛行可能戦力はカルナとマシュ、リバース・イドを切った達哉とオルガマリーのみ。
「来い、来いよ俺は」
「来て、来なさい私は」
二人の胸から漆黒の杭が伸び全身を文様が覆う。
「「此処にいる!!」」
彼らの叫びと共に神と獣が降臨する。
「アポロ・リバース・イドォォォオオオオオオ!!」
「シュレディンガー・リバース・イドォォオオオオオオ!!」
降臨する規格外。
そしてその二柱に追随するのも規格外。
相手も規格外。
神話の神同士の闘争が始まる。
達哉 10:00
オルガマリー 05:00
だが長くはもたない。その間にケリを付けなければならない。
地上もまたてんやわんやだった。
すぐさま、孔明とマリー・アントワネットによる合体宝具による防御陣地が形成され、
宗矩と織はうだうだいうケルト兵の避難作業に追われ、
アルトリア、エミヤ、ラーマ、シータ、クー・フーリンは対空攻撃を行うべく高所に上った。
そして超音速戦闘が空では繰り広げられている。
「ヴォイドフォール!」
空間が組み替えられアルジュナ・クリシュナを包囲、杭となって炸裂する。
一本一本が凡そ1000kmと言う長大な空間を圧縮して作り上げられた絶杭だ。
だがアルジュナ・クリシュナはオルガマリーの知覚領域を超える速度で一瞬加速。
杭の剣山を回避する。ヴォイドフォールは空間及びテクスチャ加工能力と言う規格外ではあるが認識系でもある。
つまるところ理論上、彼女の動体視力や第六感を超えられれば食らう事はないのだ。
「早すぎるな!! ユニオギアス!!」
だがいかに早かろうと時間と言う縛鎖からは逃げられない。
達哉がユニオギアスで時をあやふやにさせ淀ませる。
一気にアルジュナ・クリシュナの動きが鈍くなった。
其処に一気に攻撃を仕掛ける。
「ゴッドハンド!!」
「ヴォイドザッパー!!」
「
「裁剣。抜剣!! イノセントダストォ!!」
超火力、宝具・スキルの集中砲火だ。
さらに下からも遠距離宝具が在る者達が宝具をぶっ放す。
それでも、
「ちょっと!! タツヤと私の攻撃以外通じてないじゃない」
「おそらくクリシュナの逸話も再現されているのだろう、奴は足の裏以外無敵の肉体を持つ」
「だから貫通持ちの私とタツヤ以外は通用しない訳か」
「だが足止めくらいにはなって見せよう」
だがアルジュナ・クリシュナは達哉とオルガマリー以外の攻撃が効いている様子が無かった。
噂結界によってクリシュナの逸話までも再現され足の裏以外は無敵という絶対耐性持ちだからである。
故に足の裏を狙うか、そも耐性を無視する貫通スキル持ちの達哉とオルガマリー以外の攻撃が通用しないのだ。
だが衝撃までは殺せぬようで動きを止めている。
故にこのまま攻撃を続行、達哉とオルガマリーを主軸に他は足止めとして武力を振るう。
「ヴォイドフォール!! マハエイガダイン!!」
そして高機動で先ほどは逃げられたので空間を加工、65535ものワームホールを生成しアルジュナ・クリシュナを取り囲むように展開、其処からマハエイガダインを射出し逃げ場をなくすが、
「テラサイザー」
瞬間太陽が爆発したかのような爆発が発生。
マシュは咄嗟にラウンドテーブルにペルソナを変更、ロードカルデアスを展開し防ぐ。
達哉はユニオギアスで威力を減衰、後は耐性で耐え抜き、オルガマリーは空間の防御壁を出す事で無力化。
カルナには鎧があるのでそもダメージ自体が通らない。
「カルナァァアアアアアアア」
「っ・・・」
そしてふっ飛ばされる形で陣形が崩れたためそこを狙ってアルジュナ・クリシュナがカルナに襲い掛かるものの、
「させない!!」
オルガマリーがフォローを入れる。ヴォイドフォールによるワームホール生成で全員をワームホールに引きずり込みワープさせ陣形を即座に直す。
瞬間たたらを踏む形になったアルジュナ・クリシュナの動きが止まり、
「ハイパーサイザァァァアアアアアアア!!」
達哉の全力の一撃が射出される。
相手も殺傷してしまうかもしれない一撃ではあるが、
勝負を急いでいる以上、躊躇していられない。
その理由としてまず、リバース・イドは強力だが展開時間に限度があるのは前も述べた通り。
第二にリバース・イドの固有スキルは強力すぎる。空間やらテクスチャやら時間やらをズタズタにするものだから定礎の悪化が進行する。
第三にアルジュナ・クリシュナは手強すぎる相手だ。霊基強度で言えば神霊クラスである。火力も半端なくこのまま暴れられたら特異手が吹っ飛ぶ。手を抜く余裕が無い。
第四にアルジュナとシャドウを一旦引きはがすためにはある程度アルジュナ・クリシュナの霊基を破壊し緩んだ所で達哉のユニオギアスで引きずり出しオルガマリーのヴォイドフォールでアルジュナの霊基を形成する必要がある。
だから速攻を仕掛ける必要性があったのだ。
そしてハイパーサイザーが直撃、ガラスの様に霊基が割れたのを確認、全速力で達哉がアルジュナ・クリシュナの胸に右腕を差し入れる。
「ユニオギアス!!」
そしてユニオギアスでアルジュナのみを引きずり出す。
だが確かな形はない。
それをオルガマリーの方に放り。
「ヴォイドフォール!!」
オルガマリーがそれを受け取り形を確かな物へと加工した刹那であった。
カシュ・・・
その音と共にイドタイマーが起動。
動脈に直接鎮静剤が投与され、速攻で効力が発揮。
一瞬でオルガマリーの意識が刈り取られシュレディンガー・リバース・イドが砕け散るように消える。
そのまま姿を取り戻したアルジュナを抱えたまま落下。
慌ててマシュがスラスターを吹かしながら二人を受け止める。
「マシュ!! 所長を地面に降ろせ!」
「はい!!」
達哉の指示に従う、二人も抱えていては戦闘もくそもない。
そしてオルガマリーがこうなった以上、達哉のリバース・イド展開時間は残り半分を切っている証だった。
「もう一人の私ぃ!!」
「いかせん」
アルジュナ・クリシュナからアルジュナシャドウになった故に各性能が低下しながらも一度は取り込んだ主人格を取り戻さんとアルジュナシャドウは暴れる。
先程の絶対耐性がなくなったお陰でカルナの攻撃も通るようになった。
戦いは終局へと向かっていった。
アルジュナは誰かの膝の上で寝かされている事に気づいた。
「ああ、やっと起きた?」
「オルガマリー?」
「それ以外の何に見えんのよ・・・にしても医療班の連中め。どんな劇薬よ。しばらく手足動かせないし意識してないと意識が飛びそうになるんだけど・・・」
オルガマリーは眠たげにそう言った。
リバース・イドを鎮圧するための劇薬である。体はしばらく動かせないだろうし眠気が酷く意識して意識を維持しないと眠ってしまいそうだ。
そしてアルジュナも何時までも女性の膝の上に寝ている訳には行かないと動こうとするが何か大切な物が抜け落ちたように体が動かない。
「なにがあったの?」
「なにがですか・・・あの決闘が終わる直前にクリシュナが・・・」
「違うでしょ、アレはアナタ、アナタが目を背けて現実逃避に他人に仕上げたアナタの影、違う?」
「・・・それは」
「いい加減、やんちゃになったら?」
「はぁ?」
「生真面目に生き過ぎたのよ。私から見てもそう思えるもの。アナタ、大方、周囲の期待とか戦いに関するイザコザで生まれた戦闘思考や生まれのイザコザで嫌になった部分なんでしょうねアレ」
「アナタになにが「分かるわよ」!?」
「自分の母親ぶん殴ってやりたいとか思っていたんでしょう? クンティーの逸話酷いものねぇ。異父兄弟同士が戦うってなったら突然のカミングアウトとか嫁とりを盛大にやっていたのにそれに気づかず托鉢だと思ったりとか・・・、ふざけんなって話よね。殴って良いと思うわよ私は。当然だもの、その権利がアナタにはあるし戦争が多かった時期でもあるから戦闘思考になって汚い手段を考えるのも仕方がない」
「当然の権利って・・・ええ・・・」
「でも思ったでしょ?」
「・・・思いました」
「私なんて常日頃から汚い手を考えているし親をぶん殴っておきたかったって思っているわ。というか生きていれば誰でも思っている事よ」
「そういうモノなんですか?」
「そういうモノよ。人間薄汚くて当然、まぁ一部例外は居るけど例外は例外、参考にしていい物じゃない。まぁ私から言わせれば反抗期逃した同類よアナタは」
「オルガマリーもですか」
そのままオルガマリーは一つずつアルジュナの影の正体をほぐしていき受け入れさせる土壌を作っていく。
英霊としてではなく人間としてのアルジュナを見つめ肯定していく。
アルジュナの黒い部分はよくよく考えれば人間として当然の物に過ぎない。
だが生前はある意味でアルジュナを人間として見てくれる存在は居なかった。
だから黒い部分も含めてアナタだと肯定してくれる人はアルジュナにとって初めてだった。
まるで母のようなとも感じていた。
「なぜ・・・」
「なぁに・・・?」
「アナタは生前、私の所に居なかった。そうしていればあんな過ちの数々を犯さずに済んだのに」
「それが巡り合わせ、しょうがない事なのよ。それともう終わるわ」
オルガマリーが上空を見上げつられてアルジュナも空を見る。
そこでは勝負の決着が着いた。
「ゴッドハンドォ!!」
「グガァァァアアアアアアアア!?」
達哉のリバース・イドの拳が遂にアルジュナシャドウの霊基を破壊し地面に叩き落とす。
皆が地面に降りて来る。
そしてアルジュナシャドウが落着した場所にはアルジュナの影が蠢いていた。
「ほら行って、受け入れて、いい加減自分を許してあげなさい」
「自分を許す・・・」
「ええ」
そしてほほ笑んだオルガマリーに背を押され何とか立ちながらアルジュナは影に向かって歩いていく。
一抹の暖かさと勇気をオルガマリーから貰ったアルジュナは今度こそ真実の自分と対峙する。
「母上と父上なぐりたかったよな、母上は自分可愛さ満点だったし父上は過保護すぎてウザかった」
「―――――――」
「そうだ。戦闘するのも本来は嫌だった。戦闘をするたびに友人たちが死んでいくのが嫌だった。だから卑怯な手を必死で考えて下卑た連中みたいになっていく己が嫌だった」
「―――――――」
「ただ狩りをして友人や兄上たちと穏やかに過ごしたかった。カルナとは時々組み手を今日みたいにして過ごしたかった。神の加護なんていらなかったし敷かれたレールの上なんて走りたくなかった。ただただ人間として生きたかった。家族や友人、ライバルが居る普通の日常が欲しかった。英雄になんてなりたくなかった・・・」
「―――――――」
「私も少しはっちゃければよかったのかな? メイヴの言った通りに・・・」
「―――――――」
「やはり私はオマエでオマエは私だよ。今にして分かった。なんでこんなに遠回りしてしまったのか・・・鈍い私が嫌になる。だから帰ってこいもう一人の私」
「ああ、そうさせてもらう。だが忘れるな英霊である限り闘争からは逃げられはしないと」
「覚悟ならある。私は私として守るべき人と営みと言う物を見つけたからだ。そのためなら永劫であろうとこの弓を振るい続けましょう」
「そうか・・・我は汝、汝は我。我は汝の心の海より出でし者、深き黒、クリシュナ也」
アルジュナが受け入れたことでシャドウはペルソナへと変じる。
それは英霊として永劫向き合っていくものであり困難に立ち向かうための仮面となった。
「ありがとう、カルデアの皆、そして謝罪を」
「あー気にしなくて良いぞ」
「皆やらかしてますんで」
「そうそう、あと私寝るから・・・しんどい」
「皆やらかしているとは?」
「少なくとも私達三人はやらかしてんのよ・・・アンタより酷かったもの。じゃ寝る・・・」
そう、やらかし度で言えばカルデアの方が上だ。
達哉は第四特異点を消し飛ばしかねなかったし。
マシュはポセイドン毎、味方まで手に掛けかけた。
オルガマリーなんて地球の自転を止めかけたし。
まだ範囲的にとどまっているアルジュナの方が被害的にマシである。
そして気絶したオルガマリーを背負って運ぶ達哉を見てアルジュナは察する。
「・・・ご愁傷様だ」
「いいえそれで良いんですよカルナ、彼女が幸せならば」
「そうか・・・」
オルガマリーに感じた母性、アレは初恋の様だったとアルジュナは思い込んでいたが、
カルナは見抜いていた。正真正銘のアルジュナが初恋したことに。
だが真に彼女の幸せを望むなら身を引くのは当然だろう。
本当に間が悪いなとカルナはアルジュナに同情したものの。
吹っ切れたようにアルジュナはほほ笑んだ。
守るべきものが見つかった。漸く永く探していた物が見つかったからだ。
故にわが身を賭し、どのような泥に塗れようとも彼らを守るとアルジュナは心に決めたのだった。
クリシュナ(黒)の正体、ニャル汚染食らったアルジュナのシャドウでした。
アルジュナ自体がニャルの用意した爆弾です。仲間の引き入れるため殴り合いさせると先読みし。
仲間に入れたら試練と評し起爆させる気満々でした。あとメイヴがつつき続けても暴発するという罠です。
ニャル汚染のお陰でリバース・イドの領域ですからねアルジュナのシャドウ。
元々爆弾抱えていたケルト勢に対してニャルは手を出さなかったのが真相です。
頭ケルトとアルジュナって相性最悪ですからね。
でも皆の協力お陰でアルジュナもペルソナ使いの仲間入りです。
あとアルジュナ真実の意味での初恋、四人の嫁さんとはある意味政略結婚やら英雄の義務でしたので、もっとも秒で粉砕されるが決意を新たにする。
あとインドラはヴィシュヌに詰め寄られれて。
後日駐車場に呼び出されています、息子のメンタルケア怠って毒親の如く与え続けたから残当。
その後、カルデアに迷惑かけないように支援するようにとブラフマーから厳命されています。
なお盛大に間違えた支援のせいで第五終了後の幕間のある人が事件解決後に盛大に迷惑被るのは後の話ですけど。
そして対人戦闘ならカルナより剣を突き詰めた宗矩の方が強いと書きましたが。
実戦では普通にカルナが勝ちますからね距離詰めるまでにブラフマーストラぶっ放されたりシャクティの余波に耐えられない。
尚距離詰められたらどうなるかは分かりません。宗矩には関節狙い&兜割りなどなどの魔剣、カルナにはゼロ距離ブッパできるブラフマーストラやら魔力放出がありますんで。
あと次回も遅れます、暑すぎて冷房効かねぇ・・・