Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです   作:這い寄る影

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人間は足を切断してもその足が痛むのを感じるものだ。
議員さんは娘さんが葬られたらどこで痛みを感じますかな。

羊たちの沈黙より抜粋。


02 粛清と正面突破

雨生龍之介はルンルン気分で冬木の裏路地を歩いていた。

彼は狩人であり殺人鬼。同時に死の探究者。

警察の包囲網など手に取るようにわかる故に。

今まで捕まることが無かった本物のシリアルキラーだ。

だがそんな彼にもマンネリと言う物が襲って来た。

思考力の限界である。

自分が思いつくようなことは片端から文字通りやった。それでも自分の求める死の意味とやらは見つかることはなかった。

だからこそのマンネリ化だ。芸術家気取りの殺人鬼なんてそんな物である。

だがしかし天啓を得た。

姉を殺し実家から奪い取った魔術書に書かれていた魔法陣。

悪魔召喚の儀式はやったことが無かった。

召喚できるとも思っていなかったが、やっていないアートとしてはやってみる価値があるだろう。

だからこそ人をこっそり攫いこの場所に集めた。

ああ、悲鳴と阿鼻叫喚の中で自分は作品ならびに自分の求める”死”を作り上げるのだと思っていた。

だがしかし・・・

 

「相変わらず底が浅い、人の臓物を見たければ自分のを見ていればいい物を・・・」

 

アジトに戻るその道中。

腰まで艶のある黒髪を伸ばし赤いコートに黒のスーツを身に纏う男が居て。

そう龍之介を評論する。

 

「アンタは一体」

「只の通りすがりだ。そして君を見てきた者だ」

 

そう言って男は指をパチンと鳴らす。

次の瞬間、龍之介の両目に百円ライター程度の炎が灯った。

 

「がぁぁああああああああああ!?」

「この程度でも眼球内の水分と眼球を焦がすことはできる、生きたまま楽器に加工される気分はどうだね?」

 

それは眼球内の水分を沸騰させ眼球自体を焦がす。

魔術に派手さは要らないと考える男はこうピンポイントに使える。

男にとってこれは過去の清算だ。

嘗て楽器に文字通り加工された少年少女たちへの鎮魂歌。

それを龍之介の悲鳴で奏でる。

だが悲鳴は一般人には聞こえない、結界が音を封じ切っているからだ

 

「さて・・・君の愉悦やら美観だが私には理解できないな・・・醜悪極まる」

 

男はそう言って無表情で葉巻に火をつけ吸いつつ冷たい目で両目を抑えながら地面を転がる龍之介を見ながらそう評する。

 

「もういい、彼女たちには聞きがたい物だろう、もっとも最後まで苦しんでもらうがね、救いなんてものは無いのだから」

 

そう言って男こと孔明はウェイバー・ベルベットとして粛清を行う。

此処まで身に宿している英霊の力を使うことなく。

自分で培った力を使って龍之介を殺すのだ。

無論、大した火力は出せないため、龍之介は楽に死ねない。

此処に橙子や代行者、執行者クラスの人材が居れば一瞬で死ねただろう。

だがしかし居るには居る、そう達哉、マシュ、オルガマリーの三人だ。

それぞれがペルソナ使いで人体なんて消し炭に出来るが。

今は孔明の為に見守っているのと連れ去られた女性たちに記憶処理をしているので手は出せない。

第一孔明はこんな奴を三人に殺させる気は無かった。

ただでさえ血濡れ。こんな奴の死でさえ背負うとなればさしもの孔明も黙っていられない。

これは自分が背負うべき業だ。何と言われようとも背負うのは自分だと自負している。

決してマスター達には背負わせない。

 

「故に煉獄の味を知るのも一興だろう? 貴様的には」

 

そう言って再度着火、ウェイバーとしての火力はこれが限界。

具体的に言えば、人がガソリン被って自分自身に火をつけるのが限界と言った程度くらいの火力だ。

更に龍之介の悲鳴が上がる。

だがしかし誰も同情はしない、人を楽器にする殺人鬼に同情する奴なんて皆無だ。

因みに人は焼死自殺をした場合。主な死因は皮膚が焼けたとか肉が焼けたとかではない。

身に纏った炎が肺に入っての窒息か。あるいは痛みによるショック死である。

つまり簡単には死ねないのだ。

 

「あ・・・ああっ・・・」

 

警察にすら正体を掴ませず己が芸術の為に殺しまくった龍之介は。

 

―求めている物を見れずにこんなに苦しく醜く死ぬのか?―

 

見たいものを見れず、今苦しい死の中で死ぬのかと焼けた喉で絶叫し。

10分も炙られ、己が最も許さぬ結末を受けて失意の果てに焼死した。

 

「気分は済んだか?」

「ああ、これで犠牲は出ない」

 

物陰から達哉が現れる。もしもの時の為に控えていたのだ。

と言っても相手が殺人鬼とはいえやり過ぎと言いたくもなるが堪える。

孔明の言った通り楽器に人を加工していたのなら同情の余地はないし。

それを実際に目にして焼き払った孔明の悔恨はいかばかりかというのも分かる。

自分も日輪丸に乗り込んで自衛隊相手に私情で切った張ったやった身だからだ。

兎に角、孔明が体感したような犠牲者がなくなることを喜ぼう。

龍之介の様に証拠不十分で裁けぬ犯罪者も居るし、人権派とかいう弁護士が必死になって擁護して裁けぬ悪も居ることは確かなのだから。

この場はこれで良い。

龍之介がキャスターことジル・ド・レェを召喚していれば被害はとんでもないことになる。

加えて達哉達が居るせいで第一特異点の記憶も継承するのだ。

孔明が体感した第四次より被害が出るのは火を見るよりも明らかだった。

 

「だが遺体をどうにかしないと・・・」

「それなら私がやろう、ここからはウェイバー・ベルベットとしてではなく孔明として動こう」

 

問題は遺体の処理だった。

今の龍之介は息絶えたとはいえ焦げた北京ダックの様になっている。

無論、遺体の処理も孔明は達哉達にさせる気はなかった。

故にウェイバー・ベルベットから孔明に戻った彼は、瞬時にその力を行使した。

岩が現れ瞬時に龍之介の遺体を挽肉に加工する。

その後、岩が消え、挽肉になった龍之介の遺体を下水に流し、血痕などを浄化隠匿した。

元より流浪の身なのだ龍之介は行方不明になった所で誰も気にはしないし居なくなった人間として扱われる。

兎に角過去のケリが一つ着いた。

 

「レディたちは?」

「今、オルガマリーとマシュによる記憶改竄処置中だ」

「そうか、しかしアマネ女史には迷惑をかけたな」

 

龍之介のアジトを当時の孔明の記憶情報から見つけ出したのはアマネだった。

そう言うのも彼女の得意分野だった。

戦況は常に変化する、故に上の情報を常に鵜呑みにしてきたわけではない。

時には自分の嗅覚も必要になってくる。

故に特定できたのだった。

裏社会ではこんな風にも言われている。”404”に嗅ぎ付けられたら逃げ切れない。

正しくその通りだった。その上で犯人の行動予測までして見せたのだから驚きだ。

もしアメリカで1994年当時、アメリカで龍之介が犯行をしてたらFBIを率いたタスクフォース404に始末されていただろう。

それくらい手広くアマネはやっていたのだった。

そしてアジトに囚われていた龍之介の被害者は魔術師でもあるオルガマリーとマシュが記憶改竄し解放済みとの事だった。

後は彼女らと合流し次の手筈を整えるばかりだ。

 

「マスターはどう思う?」

「なにが?」

「次の選択肢をだ。このままランサー陣営にかち込むかあるいは一息置くかをだ」

「・・・アサシンの聞き耳は?」

「結界に反応はない、むしろまだ時間はあると考えた方が良い」

「なら腰をじっくり据えていくとしよう、所長」

『なぁに?』

「果たし状書いてハイアットホテルに届けてくれないかな?」

『相手が乗ると思って?』

「キャスターの言いようだと十中八九乗る、そして上か下かはっきりさせた方が交渉事も楽に済む」

 

孔明のことを敢えてキャスターと達哉は呼ぶ。

此処はあえてこの戦争の流儀に乗っ取る。

当たり前だ。幾ら孔明の結界があるとはいえ安心できない。

袋叩きにされないためにも、此処はクラス名で呼んだ方が賢明だ。

そして果たし状を送れば受注八苦乗る人間だと孔明からケイネスの事を聞いていた為。

敢えて此処は果たし状を出しつつ真正面からの突破を行い。

上か下かを白黒つけて決定し同盟関係兼共犯者関係に持ち込む事が吉だと思ったゆえである。

 

『わかった場所も近いし合流ポイントまでに書いて届けておく、それと此処の地脈と本来のキャスターが繋ぐはずだったラインを一時的に孔明に譲渡したわ、これで偽装はOKよ』

 

なんにせよ全ての準備は整った。

明日の晩、ハイアットホテルのケイネスの工房に殴り込むという事が決まった。

 

と言っても此処までやっても龍之介を発見できるかは運だった。

 

幾ら元非正規作戦群の長であるアマネが龍之介をプロファイリングし予想を立てても、

現地入りして早速、冬木市全体を這いずる結果となったのである。

上記の様に華麗に始末出来たのは殆ど運がよかったというのもある。

まず最初にアマネの立てた行動予測に従っていた達哉が発見した。画像記録は一致、しかも血の匂いという僅かな匂いもペルソナ使いとして嗅ぎ取って。

シチュエーションを整えるまで追跡していたのである。

その間に移動ルートから龍之介のアジトを管制室スタッフがアマネの指示のもと算出。

別動隊として動いていたオルガマリーとマシュがアジトに突入し被害者に記憶改竄を施した後に解放。

そしてさらに本来ジル・ド・レェが受けるはずだった地脈からの魔力供給効果を疑似的にオルガマリーが再現したことによってキャスタークラスの召喚を再現し偽装した。

作戦第一段階完了と行った所だ。

次は第二段階、ケイネスの工房へと殴り込みしつつ工房移動を進言しながら避難だ。

実にタイトなスケジュールである。

日が昇り、出撃コースであるがゆえに強行軍気味になっている。

龍之介を始末したのも深夜なのでカルデアのメンツは碌に眠れていなかった。

そして現在、昼休みとなっていた。

立場上、達哉とマシュはオルガマリーの協力者という事になっている。

偶には単独行動も良いだろうという事もあってオルガマリー&孔明以外の二人は単独行動していた。

無論、攪乱目的もある。

何度も言うがスケジュールがタイトだ。無駄な行動をするにしても意味を持たせねばならない。

 

「はぁ・・・」

 

達哉は過密すぎるスケジュールにため息を漏らした。

ついでに言えば病み上がりだ。

なるほど医療班が一週間は休憩と言う訳だと思う。

こう多少動いただけで疲れが押し寄せて来るのだ。動くなともいうのも分かるような気がした。

故に自由時間の中、達哉は、公園のブランコ腰を掛けていた。

嘗て、罪の世界で淳と遊んだ時の様に。

大人を真似てココアシガレットを齧りながらだ。

 

「・・・お兄さんどうかしたの?」

「いいやちょっと昔を・・・!?」

 

それは運命だったのかニャルラトホテプの悪戯かは分からない。

目の前に最優先保護対象が居た。

つまり間桐桜である。

目の色は死んでおり既に”調整”を受けている可能性は非常に高かった。

 

「?」

「いや何でも・・・ちょっと昔を思い出していてな」

「昔?」

「ああ、色々あってね、いろんな所を旅する羽目になった。今はまぁ働き口が決定してそこに住み込みで働かせてもらっている」

「ふぅん・・・お兄さんも帰る場所はないんだ・・・」

 

この時期の桜は捻くれている。

そりゃそうだ犯され凌辱され激痛さえ味あわされているのだ。

他人に興味のない時期。誰も助けてくれない時期だったのだからそうもなろう。

 

「いいや今はその住み込み場所が帰る場所だ」

「そう・・・いいねお兄さんは帰る場所があって」

「君にもあるだろう?」

 

何を心にもない事をと自分身に吐き捨てた。

この子の境遇を知っていてなぜそうも言えるんだと吐き気がする。

 

「だって私要らない子だもの」

「・・・誰がそう言った? そんなことを言う親は「だって父さんも母さんも私を見捨てたっておじいさまが」!?」

 

こんな幼子に擦り込み学習か、利用しようとしている自分達より吐き気がするじゃないか間桐臓硯と内心悪態を吐く。

きっと時臣や葵だってそうは思っていないと言おうとするが。

達哉にとってはこの二人は赤の他人だ。現状言った所で信じて貰えないし説得力の欠片もない。

だが達哉は知らなかった、後でこの二人に桜が盛大に裏切られることをだ。

 

「・・・俺の父さんも酷い物だったよ」

「そうなの?」

「家庭は顧みないし仕事一筋だった。おかげで家庭の不和はすごかった」

「じゃお兄さんも一緒なんだね」

「いや違う」

「違う? なにが違うんです?」

「顧みなかったのは俺の方だったんだ・・・父さんは確かに仕事一筋だったかもしれない。だがそれも己が信念と俺たちの将来の為に働いてくれていたからなんだ。気づいたのはつい最近だよ」

 

確かに達哉の父は家庭人としては失格だったのかもしれない。

それでも息子たちの未来の為に金を貯蓄し少しでも良い未来の為に巨悪と戦っていった。

結果は惨敗だったが、それを知った今となっては尊敬できる唯一無二の父なのだ。

 

「・・・だからきっと君を迎えに来ると思うよ」

「そうですかね?」

「俺も今あるイザコザが終わったら妻を迎える」

「・・・幸せそうですね」

「でもないぞ、妻(予定)と今はそのイザコザに掛かり切りだ。幸せは幸せなんだろうがな・・・それでも彼女たちと出会う前は散々やらかして今がある。荷を背負わせてしまったという負い目があるんだ」

「・・・」

 

そう一度犯した罪は消えない幸せになればなるほど自覚している者ほど幸せ自体が刃となって傷を抉る。

 

「だから時々思うんだ自分は此処にいていいのかってな」

「良いと思います、でなきゃ」

「でなきゃ?」

「誰も幸せになる権利なんて無いと思いますから」

 

桜は聡い子だった。

達哉が苦しんでいるのを一目見て分かった。

ある種の同類だという事も。

故に彼の努力が目に付く必死になって足掻いたのだろうという事も。

だからこそ嫉む、彼は救われてなぜ自分は救われてないのかという事も。

その理由も分かる、残酷的なまでの星のめぐりと努力の差だという事も。

だから嫉む自分が嫌いになる、だって桜は流されるままなのだから。

逆に達哉は抗ったのだから。

その差は明確に出るけれども。

 

「辛いときは辛いって言って助けて欲しいときは助けてって言っていいと思うぞ俺は」

 

それでも何だかんだ言ってあの大人たちに声を掛けたから今の自分があるんだという。

辛いときは辛い助けて欲しいときは助けてと言うのも勇気の一つだと故に達哉は桜に説く。

 

「それでも助けてくれる人はいませんから」

「・・・そうか、でも言った方が良いと思う」

「なぜです?」

「言うのはタダだからだそれで助けてくれる人はいるかもしれない、俺が一人よがりで苦しんでいるときはそうだった」

「・・・そんなものなんですか?」

「・・・そんなものさ」

「・・・なら私を」

 

―アナタは助けてくれますか?―

 

そう言われて達哉はもう我慢ならなかった。

 

「所長、マシュ、キャスター聞いてたか?」

『聞いてたわよ』

『聞いていました』

『聞こえている』

 

達哉がレイラインを通して聞く。

もうここまでくれば全員が我慢できない。

何だかんだ言って全員がお人好しであるがゆえに。

 

「・・・君「君じゃないです桜です」わかった桜一晩だけ時間をくれ」

「なにを・・・」

「きみを救うにはある人の説得が必要なんだ。だから悪い今晩だけ耐えてくれ、明日、君を俺たちは助けに行くよ」

「・・・嘘です」

 

助けに行くと言われても桜には実感がわかない。

当たり前だ助ける助けるとかほざいて本当は桜の瞳の向こうの葵しか見ていない雁夜しか知らないのだから。

こうやって一緒にブランコ漕いでいる達哉の言う事なんて信じられない。

 

「なら約束しよう、なんか食いたいものとかやりたいこととかないか? 君を助けたらそれを即座に履行するという取引だ」

「取引ですか」

「そう取引だ」

 

そう取引と言う形なら諦めもつく。

だがこれが彼女が心の扉を開くきっかけとなればいいと達哉は思ったからこそ取引と言う形でまず彼女に約束を取り付けることにしたのだ。

 

「・・・新都方面の焼き肉ゆーじーのミックスホルモンが食べたいです」

「分かった取引がなった時はそのゆーじーだったか? 奢るよ」

「期待しないで待ってます・・・それとお兄さん、ココアシガレット貰っていいですか?」

「いいぞ、ほら」

「ありがとうございます」

 

そう言って手渡したココアシガレットを口で食む桜。

それを尻目に苦笑しつつ達哉も軽くブランコを漕ぐ。

 

「そういえばお兄さんの名前聞いていませんでしたね」

「そういえばそうだったな。俺は周防達哉、まぁ国際機関の調査員をしている」

「へぇ・・・わかりませんけどすごいたちばなのはわかりました。私は桜。間桐桜です」

「そうか、改めてよろしくな桜」

「達哉お兄さんも」

 

その日、桜は運命に出会った。

 

 

 

 

その夜。

 

「こっちは爆破物あり、そっちは?」

「こっちも沢山、先輩は?」

「こっちも沢山だ。キャスター、スケジュールってどうした・・・?」

「いや腰が・・・」

 

冬木ハイアットホテル地下駐車場をカルデアメンバーは爆発物捜索していた。

万が一の前倒しに備えてである。

自分達が突入しケイネスと激突している間にアボーンなんて洒落にならない。

だが爆発物は沢山あった。

ケイネスが予約していると知ったと同時に切嗣の奴はしかけていたのである

といっても設置位置の割り出しも済んでいる。これもアマネ率いる保安部が算出した。

幾ら非公認とは言えタスクフォースである、爆発物の専門家もちゃんといる。

腕で言えば切嗣より奇麗にハイアットホテルを解体する専門家が。

切嗣は所詮はテロリスト、専門家兼特殊部隊員には魔術抜きだと知識方面でも勝てないのは当たり前である。

故にガイドに沿って達哉達はケイネスに喧嘩売る前に爆発部捜索をしていた。

最も無理した姿勢のせいで孔明、ぎっくり越し気味になって両足をプルプルさせていたが。

 

「今から攻め込むんだからさぁ腰とか言わないでよ!! ピクシー、メディアラハン!!」

「す、すまない」

 

オルガマリーがピクシーを召喚し孔明の腰を治療。

ほんと貧弱だなこの人と三人と管制室、サモライザーの中の全員の心が一致したのだった。

 

『悪いけど、この様子だとまだあるぞ』

 

保安部爆破担当のワーイがそう言う。

彼曰く配置から念入りに設置されている可能性があると聞き。

達哉達はウンザリした。

幾ら周囲に被害が出ないからって爆破解体だぞ。幾ら人払いしたところで。

粉塵やら破片やら瓦礫などでホテル周辺を歩いている人被害は出る。

爺さん何やってんだ自分よりテロリストじゃないかとエミヤはサモライザーの中で頭を抱えた。

そして全フロア爆弾解除までかなりの時間を食った。

 

『遅かったではないかキャスターじ・・・あのなんだすっごい疲れている様子だが大丈夫かね?』

 

果たし状を受け取り攻めて来る時間より遅かったではないかとケイネスは嘲笑い。

そうも言えなくなった。

何故なら達哉達青吐息である。

何があったかとは言わずにはいられない。

 

「これのせいよ!!」

 

オルガマリーが解体した爆弾をブチ撒く。

 

『それは?』

「C4プラスチック爆弾、それがホテル中に仕掛けられていたわ、まるでホテルを爆破解体するようにね!! アナタまさか!!」

『私はそう言う下賤な事はしない!! 第一、此処に仕掛けられている物は一級品だ!!それを捨てるような真似はしない!!』

 

オルガマリー迫真の演技にこれにはケイネスも慌てて弁解する。

それほどまでに鬼気迫っていた演技だ。

と言うかオルガマリーはキレていた。市街地でこれ程までの爆弾の量はふざけている。

なんせホテル一棟解体できる量だからだ。

 

「まぁ良いわ、今からアンタをぶん殴りに行くから覚悟はしておくのね!!」

『望むところだとも、どことも知れぬ魔術師にキャスター、そして一般人に下半身不随の少女でどこまでやれるか見せてもらおうか!!』

 

そう言って通信が切れる。

因みにディルムッドはケイネスの背後で顔の色が急激に降下していた。

そう思い出したのだ。第五特異点で轡を並べ戦いどれほどの脅威が来ようとも打倒した彼らの姿を。

カルデアがなぜかやって来たと。

だがもう遅い。

ケイネスの工房は素晴らしい。

結界二十四層、魔力炉三機、猟犬代わりの悪霊、魍魎数十体、無数のトラップ、廊下は一部異界化という性能であり、その工房をホテルの1フロアまるまる借り切って備えたのである。

正統派魔術師では突破不可能に近い。

そう相手が高位ペルソナ使いとキャスターで無ければ。

 

「結界解析!! 詠唱省略!! メディアの結界より浅いわね。次!!」

「こっちも結界攻略完了だ」

「ならその次よ!!」

 

まず自慢の結界はオルガマリーと孔明に攻略される。

オルガマリーに至っては第三特異点で神代の魔女メディアの薫陶を受けているのだ。

この程度、造作もない。

孔明を憑依させたウェイバーもサーヴァントである故に結界の解除が可能。

そして猟犬替わりの悪霊、魍魎も。

 

「「次!!」」

 

兼定を抜いた達哉とウリエルを抜き車椅子から立ったマシュに駆除されて行き。

 

「マハフレイダイン!!」

 

仕掛けたトラップもマシュによって薙ぎ払われていく。

 

「すばらしい」

 

ケイネスはそう言って息を漏らす。

彼らの魔術解析能力そして異能。どれもこれもが素晴らしい。

連携も十分だ、このケイネス・エルメロイ・アーチボルトが相手取るに相応しい相手とも言える。

最優である三騎士に劣るとされているキャスターではあるが、マスターに恵まれればこう攻めに転じれるものかと感嘆の息を吐かずにはいられない。

 

「ランサー宝具開帳を許す」

「良いので?」

「逆に聞くが、宝具開帳せずに勝てる相手かね?」

「はっきり言いますが私では役不足です」

「ほう、いきなり消極的なことではないか?」

「彼らはカルデアです」

「??」

「そう言えばこの世界にはまだありませんでしたよね・・・、なら分かりやすく言います、彼らは五度も世界を救っている」

「ほぅ、それはまた大層な肩書だ。あの実力も納得が行くという物」

 

そう特異点一つが世界滅亡の規模なら現状、五つの特異点を乗り越えた彼らは五回世界を救っているに等しい。

それでもディルムッドの言いように一定の理解を示すケイネス。

何やらかの手段で平行世界運用を可能にしたのだろう。

そして向こうでは何度も世界が滅びかけていると思う。

それに挑む者達、なるほどそれほどの勇士たちなら自分が挑む相手に相応しいとケイネスは礼装をいくつか持ち出し

 

「行くぞランサー、私に忠義を示すというのなら、彼らに勝利して見せると言い」

「御意」

 

部屋を後にした。

 

「さて・・・」

 

全てのトラップを焼き払い、結界も解除し、悪霊、魍魎も切り殺され異界も蹴破されケイネスに後はない。

故にオルガマリーは後ろ腰のリペアラーを引き抜き構える。

達哉もマシュも臨戦態勢だ、無論孔明も両目を細め覚悟を決める。

 

「よくぞ蹴破した。カルデア」

「やっぱり。ディルムッド、漏らしたのね」

「すいません、今仕えるべきはマスターなので」

 

カルデアの事が漏れた。

ディルムッドは申し訳なさそうだが。

向うにも事情があるのだろうと当たりを付けて臨戦態勢。

それと同時に達哉、マシュ、オルガマリーから出て来る神気にケイネスは驚愕する。

 

「アレは一体・・・」

「主よ、お気をつけを。あの三人は神格の欠片を身に降ろしサーヴァントとも互角以上にやり合えます」

「なにっ!?」

 

ディルムッドの解説にケイネスは驚愕する。

神格の欠片を身に降ろすばかりか、最上位サーヴァントとも互角にやり合える性能があると聞けば。

指し物、ケイネスも驚愕せざるを得ない。

それと同時に。

 

「ふふふ、望むところ!!」

 

彼もまた男の子なのだ。

挑むという言葉に弱い。

相手が土俵に立ってくれているのだからこちらも全力を尽くさねば無作法という物。

 

「行くぞ!!」

 

そして・・・

 

「すっきりしたかしら?」

「ああ私の負けだ」

 

自慢の礼装もオルガマリーの劣化神官魔術式・灰の花嫁とシュディンガーのヴォイドザッパーの前に突破され。

ディルムッドもさすがに達哉とマシュ相手では分が悪すぎて取り押さえられていた。

 

「殺したまえ、君たちの完璧な勝ちだ」

「その気はないわ。むしろ逆、同盟を結びに来たのよ」

「・・・なに?」

「いきなり来て、こんな小娘が同盟結べって言うより、真っ向勝負してからの方がアナタも納得いくでしょう?」

「ふふふ、確かに」

 

ケイネスはそう言われ爽やかな敗北感に包まれていた。

なるほど確かに、いきなり達哉達が来たところで自分は同盟なんて結ぶ必要なんてないだろうと思うだろう。

だがこうも真っ向勝負を挑まれ敗北した上でなら是非も無しという奴である。

 

「とりあえず結界を再起動させる、そしたら私の部屋に来たまえ」

「了解」

 

結界が再起動する、悪霊の類とか仕掛けたトラップは直ぐには戻らないのでそのまんまだ。

そしてケイネスは自分の部屋にカルデアを招待する。

 

「それで君たちは私に何をして欲しいのかね?」

「単純です、後ろ盾になっていただきたい」

「ほう、それはこの地で何かするためにかな? ウェイバー・ベルベット」

「!!??」

「そう驚かなくても良い、魔術回路、魔力の入れ方の癖、そして大人の顔から子供の写真を探すのは難しいが逆は別だ」

 

そうここのウェイバーとカルデアの孔明を見ればケイネスも見抜ける。

孔明は成長したウェイバーなのだと、一応才が無いとはいえ目に掛けていた生徒なんだから。

魔術回路、魔力の入れ方の癖の癖も把握済みだ。

 

「ディルムッドから情報漏れたし・・・一定の情報開示は良いじゃないか?」

 

達哉がオルガマリーを見ながらそう言う。

情報が洩れている、もう黙ってはいられない以上、

一定の情報開示は必要ではないかと。

オルガマリーもそれに頷く。

 

「じゃ孔明説明よろしく」

「私がか?」

「伊達に現代魔術科のロードやってないでしょ? それに向き合う時が来たのよ」

「昨日今日と明日と私にハード過ぎやしないかね?」

「だってアンタが主役の担い手の一人だものこの特異点、自分の過去であるという以上自分と向き合う他ないわ。私達は散々やって来たんだから、アンタもホラ」

「ああ分かった、今更師と呼ばれることに不快感を表されるでしょうがご了承を」

「いいから説明したまえ」

「はい」

 

そして孔明の説明が開始される。

現在カルデア時空では人理焼却が行われPROJECT GrandOrderによる七つの大特異点を修繕作業中である事と。

今、この聖杯戦争が行われている冬木市が特異点化、平行世界に当たるカルデア時空を浸食している事。

将来的に人類悪が誕生しかねない事、聖杯が汚染させれている可能性があるという事。

そしてそのすべてに、阿頼耶識の太極絵図の黒の邪神「ニャルラトホテプ」が関与しなんやらかの計画を進めている事を事細かに説明した。

ケイネスと孔明のやり取りは専門用語が飛び交い過ぎて達哉はチンプンカンプンであったが、

マシュとオルガマリーにとっては非常に分かりやすい物となっていた。

 

「つまり何かね? 第六王権絡みの紛争に我々も君たちも巻き込まれたということかね?」

「かねがねそれであってます」

「ふむ、確かに、この特異点を解決するには制約が多すぎる。私の後ろ盾が欲しいのは遠坂を抑えるためかね?」

「はい」

「ならば宜しい、間桐も人食いに堕ちた。誅伐だ」

 

既に第五次後の聖杯解体で第四次の時点で臓硯も人食いに堕ちていることは発覚している。

それを盾にかつケイネスほどの名家の後ろ盾があれば遠坂も抑えられるだろう。

 

「ケイネス」

「なにかね? ソラウ?」

「桜ちゃんだったかしら? 絶対に救ってあげて欲しいの」

「当たり前だ。だがなぜに執着する?」

「彼女は私だから」

 

ソラウはそう言い切った。

寧ろ自分より酷い待遇だと思ったからだ。

蝶よ花よと育てられ淑女に加工され魔術の家を維持すためだけの物にされたソラウよりもひどい仕打ちを受けてきた幼子。

自分は恵まれていたのだと自覚するのに十分だった。

そしてケイネスの出した方針は速攻戦だ。

今夜中に間桐家を急襲するという方針である。

理由としては三つ、まずバーサーカー陣営の拠点?を抑えられること。

二つ目は臓硯に悟られず確実に滅殺しておきたいこと。と言っても取り逃がした場合は執行者に放り投げておけばいい。

三つ目。確実にこれまでの聖杯戦争の資料を押さえそして拠点化しておきたいという事もある。

ケイネスは完璧な工房を作り上げたがセイバー陣営の爆破戦術が露呈した今。此処にいるのは得策ではない。

なら臓硯討伐をお題目として間桐家を乗っ取るのも悪くはないという話だった。

そう言う訳で兵は神速を尊ぶという言葉がある通り今夜決行ということになったのであるものの・・・

 

「すまないが少し休ませてくれないか」

 

達哉が疲れ気味に言う、爆弾解除してケイネスの工房を攻略してケイネス主従を怪我無く無力化してのだから疲れるのも当たり前な訳だ。

ケイネスもボコボコにされた影響でそれは道理だなとルームサービスを呼んだ。

 

「そう言えばソラウさんって、ディルムッドさんのどこが好きなんです?」

「マシュちゃん私は生まれてからこの方激情を抱いたことはないの」

「そうなんですか?」

「ええ、だからこの気持ちを持っていたいわけ。たとえ偽りだろうとしても」

「でも、ケイネスさん、アナタにゾッコンですよ」

「ケイネスが? 冗談よして? 彼私の事なんか好きじゃない、だっていつも話す事となれば魔術の事ばっか、渡すのも魔術の成果、彼は血筋で――――――ってマシュちゃん、オルガマリーちゃん? どうしたの? いきなり立ち上がって」

「ちょっと」

「ダメ男にお話をね」

「えっええ」

 

女子三人でワイン、もっともマシュは葡萄ジュースを飲みながら話してプチ女子会みたいなことをしていたのだが。

ソラウの話を聞いて威圧感満々で立ち上がった。

大股で二人とも隣の部屋で孔明と討論しているケイネスの場所へと向かう。

そして繰り広げ上げられる罵声、甲斐性なしなど酷い言葉ばっかりだ。

当初ケイネスも反論していたが。

 

「男の甲斐性=魔術の才能じゃないのよ!」

「偶には女性の好みとか聞いて花束を用意したりレストランに連れて行くとかないんですか!!」

「いやあのだなそう言う物よりも魔術師として礼装の方が・・・「「普通の女にそんな物が引かれると思うかぁ!!」」

「ひぃ!?」

 

オルガマリー、マシュの言いようは当然である。

普段のコミュニケーションからしてケイネスはあれだった。

何と言うか女心を分かっていない不器用な達哉でさえ察してちゃんと出来るのにそれが出来ていない。

女にとって魔術云々より自分を見ていて欲しいし男を見せて欲しいのが本音だ。

達哉だって二人の前では未だ人理焼却下と言うのもあってさすがに性交渉はしていない物の、求められたら添寝くらいはするし。

共通の話題だって作ってくれる。

足りないところがあればフォローもしてくれるのだから。

その点ケイネスはなっていない、女を口説くのに魔術関係持ちだしてどうする。

一般人に分かり易く例えて言うなら、好きなOL相手に如何に自分のプレゼン資料が優れているかを披露している様なものだ。

そりゃ嫌味な奴としてしかとらえられないだろう。

そう言う事実をグサグサと言葉のナイフでケイネスの心を滅多刺しにしていくオルガマリーとマシュ。

遂にケイネス半泣き状態で正座させられ説教を喰らっていた。

 

「それにディルムッド、アンタもよ」

「お、俺も」

「所長に同意見です、その黒子、必滅の黄薔薇で切り飛ばせばよかったじゃないですか」

「あっ」

「あっじゃねーだろうがぁ!! 貴様ァ!!」

 

そうその黒子、サッサっと生前に必滅の黄薔薇で切り落とし焼いて傷を塞いでおけば一連の悲劇を防げたというマシュの指摘にそれもそうだと唖然となり。

ケイネスキレた。

 

「令呪を持って命ずる!! その黒子、必滅の黄薔薇で斬りおとせぇ!!」

「我があるじぃぃいいいいい!?」

 

そして黒子が切り落とされた。

少なくともこの聖杯戦争中には黒子は使えないであろうことは確かだった。

それと同時に黒子の効力がなくなったことによってソラウへの魅了が消えうせた。

 

「あ、あ私は・・・・」

「すまないソラウ、本当に済まない!!」

 

陸地に上がった魚の様に口をパクパクさせながらソラウが喘ぐ。

そんなソラウを抱き抱え今まで間違ってきたことを謝罪するケイネス。

そしてそんな二人を見ながらオルガマリーはため息を吐き。

 

「これからが大変かもねあの二人」

「不器用ですからねケイネスさん」

 

オルガマリーの言葉に同意した。

ある意味、二人の関係はこれからが大事だったし。

真の意味で始まるのだろうと思った。

 

「よかった本当によかった」

 

二人の仲が正常に戻りそうでよかったと咽び泣くディルムッドであったが。

その背後でオルガマリーとマシュが指の音を鳴らしていた。

 

「アンタ、ちょっとホテル駐車場に来い」

「ええ私もそう思います」

「え?」

 

ディルムッドはオルガマリーとマシュの手によってボコボコにされたのだった。

そして・・・

 

「ではこれより間桐家攻略戦を始める」

 

それから二時間後、ホテル側に荷物は後で取りに来ると言いつつ。

間桐家への強襲作戦が開始されるのだった。




ストレスのあまりビール飲みまくってたら完成したんで深夜投稿!!


龍ちゃん「これが人間のやる事かよぉぉぉおおおおおお!!」

まぁ龍之介の最悪の死に方といえば作者的はこうでしょうと思ってやりました。
あったりまぁだよなぁ? 他人を最悪な死に方させているのに自分が最悪な死に方しないなんて。
裏の住人には通用しない訳で。という訳で龍ちゃんには北京ダックになった後挽肉からの下水コンボで消えてもらいました。
孔明としては一つ区切りをケジメを付けた感じです。
後は過去の自分と向き合うという事ですかね

ケイネス先生「こう言うのでいいんだよ、こう言うので!!」

ケイネス先生はカルデアを真っ当に評価、ウェイバーの成長に男泣き。
なお余りの甲斐性の無さにマシュとオルガマリーに言葉の刃でめった刺しにされた模様。
ディルムッドの黒子も必滅の黄薔薇で斬り飛ばしましたんで効力無効です。
それによるソラウへの魅了も無効化、一時的にソラウ混乱になったものの、ケイネス先生が漢魅せて落ち着かせました。
二人の関係はこっからスタートって形ですな。
ニャルの出番はもうちょい先になります。
ニャルニャルを期待している人たちには本当に申し訳ない。
後次回こそ遅れます。
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