Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです 作:這い寄る影
将来こういう風になりたいな・・と思い描く自分の姿があるならば、そこに向かって行動していくことが大切ですね。
サン・テグジュペリ。
状況は三体二ではなかった。
「ははっいいぞぅ、シャッガイ!!」
雁夜がそう狂嗤しながら、暴走状態のペルソナを放つ。
いや暴走なんて物じゃない、既にシャドウ化している。
故に超出力のシャドウが本人のキャパシティを超えて出現しているのだ。
しかもシャドウ化しているのはシャッガイでクトゥルフ神話における神話生物の一つ。
しかも珍しい複数個体展開系だ。
一匹殺した所で雁夜に精神的ダメージすら負わせられない。
切っても焼き払っても無尽蔵に沸いてくる。
「Araxaxaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」
加えてバーサーカーの狂化ランクも上昇しステータスがワンランクアップしている。
これにはマシュとディルムッドの二人掛かりで対処せざるを得なかった。
故に三対無数と言う地獄絵図である。
結界内の悪霊たちも応戦しているが何時まで持つことやら。
更にどこから調達して来たんだと疑問を言わざるを得ないマウザー M1918をバーサーカーは宝具化し、
左手で腰だめに構えてぶっ放してくる。
宝具化している時点で、サーヴァントでも直撃すれば下半身と上半身が無き別れする上に迫撃砲弾レベルの威力にまで上昇していた。
因みにマウザー M1918の調達所は臓硯がバーサーカーの宝具を確認した後手配したものである。
死んでも迷惑な爺であった。
お陰でまだ未完成な工房結界を抜かれてしまったし、おまけに間桐家穴ぼこだらけである。
そしてシャッガイを焼き払う火力はあるのだがそれするとただでさえガタガタな工房結界が吹き飛びかねないし、
間桐家周囲一帯が火事になる。
ここは堅固な城塞であるとともに彼らを縛る地であるのだ。
もっとも現状の火力だってサーヴァントを容易に屠れる威力はあるのだが。
群体型シャドウという敵に苦戦せざるを得ないのが現状である。
「シュレディンガー!! メギドラオン!!」
だがしかし其処に駆けつけたオルガマリーがシャッガイの大半をシュレディンガーのメギドラオンで消し飛ばす。
「所長!!」
「ちんたらしない!! 他陣営が見ているのよ!!」
「なに!?」
今やカルデア陣営&ランサー陣営は注目の的だ。
工房結界があったから見られていなかっただけの話でそれがズタボロになれば誰もが見に来る。
そしてオルガマリーは火属性では周囲の物も焼き払ってしまうのなら他属性で薙ぎ払えという事である。
だが市街地が近い上に周囲は森林だ。最上級ペルソナをぶっ放せば被害が及ぶが故にできない。
専用ペルソナなら細かい制御も聞くのだが他は相性が良くてもそうはいかないのだから。
つまりシャッガイを十分な威力で薙ぎ払えるのはオルガマリーしかいない。
マシュはカタルシスエフェクトタイプであるが故に良くも悪くも火力の加減が効きづらいが故にだ。
「なら速攻だ。所長バックアップ頼む」
「一応、生け捕り目的だから加減はしてよ」
「出来るならな・・・」
聖杯汚染はほぼ確定済み。
ならサーヴァントを落とす方が愚考だ。
マスターも下手に殺せない。マスター殺害=サーヴァント殺害になるからだ。
だからこそ今日の自分たちの討伐指令に教会に全員が集まるのを見越して停戦協定を出しつつ時間稼ぎ。
強制終了にまで持っていく算段だった。
だが早速選択はやってくる。バーサーカーを殺さないのか否か。
決断の時は迫る。
これ以上、拠点を破壊されては籠る場所もない故に。
「所長、一瞬バーサーカーの気を逸らす。アルトリア・リリィの召喚スタンバイ!!」
「わかったわ!! それでタツヤは!?」
「一撃で仕留める!! アレは本体叩かないと意味が無いタイプだ」
そうって達哉がアポロを出現させる。
彼も覚悟を決めたのだ。
それにオルガマリーも答える。
「CALL!! アルトリア・リリィ!!」
召喚されるはアルトリア・リリィ。
それを見たバーサーカーは叫ぶ。
「Arrrrrthurrrrrrrr――!!」
だがその隙を逃すディルムッドとマシュではない。
ウリエルが崩拳の要領で叩き込まれ、ディルムッドの破魔の紅薔薇が頭部を抉り。
「五月蠅いですよ」
アルトリア・リリィの剣がかろうじてバーサーカーの喉笛を断ち切った。
「a・・・a・・・rrtur・・・・」
「死んでください、迷惑です」
そう言って返す刃でバーサーカーの首を切り飛ばしたのだった。
一方の雁夜もノヴァサイザー最大停止時間8秒からの心臓を突かれて倒れ伏していた。
人間、心臓を突かれただけでも即死はしない、血液循環が止まりゆっくりと死するのだ。
達哉とてそんな惨たらしい殺し方をしたくてしたいわけじゃない。
だが特異点であの手この手でノヴァサイザーは破られてきたのだ。
此処は安全マージンを取って心臓を狙い、万が一外れても肺などを取れる選択肢を取ったまでの事。
スナイパーだってよほど熟練したしたものでもなければ先ず心臓、動きが停止したところで頭部を狙う手法に移る。
ハナから頭部を狙えるウォンやアマネにオルガマリーが可笑しいだけなのだ。
その時である。
「達哉お兄ちゃん、マシュお姉ちゃん、オルガマリーお姉ちゃん!!」
間桐家から桜が飛び出てきたのだ。
心配になったというのもあるが工房の扉がバーサーカーの砲撃の衝撃で緩んで空いてしまったのが原因だ。
ソラウの制止も虚しく元気っ子である桜は素早い。
現に戦いを見ていたケイネスの隣でソラウは青吐息だった。
遠坂邸でのソラウが追い付けたのも一種の興奮状態だった為、今回は追いつけなかった。
「桜ァちゃぁん、葵さぁん」
「・・・」
最早人間の体すら保てない雁夜に桜は一瞬ビクつく、だって今の雁夜は桜のトラウマたる蟲倉そのものが人型を成したかのようである。
完全にシャドウに浸食されていた。
「死ね」
だから達哉はこの際、シャドウ化されてもたまった物ではないため。
ペルソナをアポロからシヴァにチェンジ。
メギドラオンを至近距離から見舞う。
この距離なら制御範囲で収められるのだ。
そして閃光が収まると同時に雁夜が倒れており、バーサーカーは消滅していた。
カルデア陣営にとってはカウントが一つ減ったことになる。
元から期待はしてはいなかったが此処まで酷いとは全員が思っても居なかった。
「おじさん」
「桜ちゃん・・・」
「待って桜」
倒れた雁夜に桜が近づこうとするのをオルガマリーが止める。
彼女が見る雁夜の目はマリスビリーに近い瞳だ。親しい人を通じて他者に期待する瞳。
マリスビリーだけではない。達哉がカルデアに来る前には嫌と言うほどそう言う目で見られた。
こいつ桜を決して思って見ていない。桜を通して誰かを見ているのだ。
「こいつに近づいちゃダメ、こいつはアナタを通して誰かを見ているだけの間男よ」
故にそれを見抜いた。
だからこそオルガマリーの心理解体の刃は容赦しない。
「タツヤ、こいつのシャドウ化の影響は?」
「もう肉体は人間じゃない、心臓穿った上にシヴァのメギドラオンを食らわせたんだ死んで無い方が可笑しい」
「気合いと根性ね、あー嫌になる」
こういう奴に限って無駄に気合だの根性があるのかとオルガマリーが溜息を吐く。
「もう黙って死ね」
「まだ死ねるか!! 俺は桜ちゃんを葵さんを「なんだかんだ言って桜の事を見てないのねアンタ」ぐっ!?」
黒いシャッガイを身に纏いつつ異形に変貌しながらも雁夜は立ち上がり、両膝をリペアラーで撃ち抜かれる。
シャドウになった場合、実にしつこい。恐らく神野というニャルラトホテプの化身から力を直接与えられているのだ。
深度も深いだろう。
故に此処は直接倒すより、心をへし折った方が良いと悪趣味だと思いながらオルガマリーは培った洞察眼を走らせる。
「さっきも言った通り、桜の事は付属品としてしか見てないんでしょ。語尾に葵って呼んだのがその証拠。アンタは桜を通して葵だったっけ? っていう女性を取りたいだけ」
証拠を突きつけていく。
「桜を救出したいなら、養子に出された瞬間、蟲蔵の真実も添えて時臣に言うべきだったわね? それも証拠、アンタ寿命を削って娘を助ける自分カッコいいとか思ってたんでしょ」
「ちがう!!」
「なら、いいじゃない、私が保証するわ。ケイネス夫妻の元でなら桜は魔術師として大成も出来るし一般人に近い生活様式も送れるわよ」
神野と同じこと言われる。
其処を言われると雁夜もえづくし何も言えない。
始点からそもからして間違えているのだ。
この男には言い返せない。
「さっきも言ったけれど、それだけじゃ葵とやらの心は奪えない。アイツもまた一緒、自分の産んだ子を鎖にして愛しい物をしばりつける魔性の女よ。現に時臣も娘としてではなく娘の才能を愛しているゆえにねぇ? そんな男を縛り付けるなら子を利用する、アイツはそう言う女よ」
敢えてソラウと葵と言う女を比較するのなら其処だろう。
ソラウは桜を直視した。葵は夫を縛り付ける道具としか見ていなかった。
だから娘たちを通して夫しか見ていない葵は。
「アンタと同類のロクデナシな訳だ。他者を利用し本命の愛を求める屑野郎と屑女よ。ルーペにされる側となっちゃたまった物ではない」
嘲笑交じりにオルガマリーは雁夜を弾劾していく。
これもまたロクデナシの方法ではあるが自分を分からせるにはいい方法だ。
「違う違う違う、俺は時臣と一緒なんかじゃ」
「葵も一緒で貴方も一緒って話なんだけどね」
言葉の刃と共にリペアラーから吐き出される銃弾が確実に雁夜をえぐり取り致命へと運んでいく。
「だからそこまでにしておけって話よ。桜は助けられた、葵とアンタは結ばれなかったけど同類、蟲爺は殲滅され、聖杯戦争も幕を下ろす」
「黙れぇ!!「おじさん」桜ちゃん?」
オルガマリーの止めに尚も体が四散しながら喚き散らす雁夜に桜が一言。
「結局、おじさんも私の事を母さんと同じくルーペとしか見ていなかったんだ」
「それは違「何が違うんですか!!」・・・!?」
「おじさんの望みは私が救われる事だったんでしょ!? 今十分に救われました”達哉おにいちゃん達”の手で。彼らは約束を守ってくれました!! 対しておじさんはなにもいわず一人で突っ走って助けてくれも何もしなかったじゃないですか!! 挙句の果てにお母さんのことを、おじさんは私の事なんてお母さんや父さんの様に都合の良い道具としてしか見ていないんでしょ!!」
「――――――――」
雁夜はもう何も言えなかった。桜の心の奥底からの絶叫に何も。
そう、助ける手段なら他にも幾らでもあったのだ。
それを遂行できなかったのはタダの知恵足らずという事かあるいは桜を都合の良い道具としか見ていなかったのだろう。
可能性としては後者が高い。
なにせ、主要時間軸ではバーサーカーを使役する負荷で自滅し。
最期には、葵が自分の妻となり桜と凛が自分の娘とかいうあり得ぬ幻想を抱いて死んだのだから。
「さぁくらぁぁあああああああああああああ!!!」
遂にシャドウが暴走状態まで行き。
「アンタみたいな偏執狂にはこの言葉を送りましょう。絶望を抱いて溺死しろ」
その寸前に召喚されたシュレディンガーのヴォイドザッパーを振りかざす大鎌によって首を切断され即死。
文字通り雁夜は絶望を抱いたまま否定することも許されず。死神の如き女神の大鎌によって首を切断され絶望と言う物を抱いて羽虫の様に、あの臓硯と同じように死んだのだった。
そして死体は黒い粒子になって四散する。
後には何も残らないまるで最初から彼が居た痕跡も残らない。
それが結果である。
「孔明、他の使い魔は?」
「こちらで潰しておいた」
孔明は他陣営の使い魔も潰しておいた。
しかし、
「セイバー陣営はどうにもならん、君が出てくれなければね」
「狙撃銃の使い方教えてもらったでしょうに・・・」
「こういう森林地帯での狙撃法はならっていないのだが・・・」
「じゃ教習長目に入れておくわね」
「あんまりだぁぁああああ!!」
セイバー陣営だけは違う。なにせ近代火器を使ってくる暗殺者がマスターだ。
間桐家は幾ら木々に覆われた標高の高い丘に建ってるとはいえ。これ位なら1994年当時の技術の双眼鏡であっても見れる。
それに潰しの効く駒も居る。即ち久宇舞弥。
彼女こそ潰しの効く衛宮切嗣の駒だ。
それに適当な所である孔明の結界範囲外から遠目に監視させて置けば今回の強襲も即座に連絡がいくだろうし、
即座に撤収ができる。
孔明がオルガマリーレベルでDSRー50の扱いに長けていればよかったが。
それは酷という物であった。
彼とて凡人である。オルガマリーの様に短期間で速射の精密射撃と言うわけには行かなかった。
という訳でこの特異点終わったら孔明、保安部ブートキャンプの巻。
ウォンはうだつの上がらぬ隊員に見せかけてああ見えて教練には苛烈である。
孔明、この後地獄行き確定であった。
「うっぐえっぐ・・・」
「桜・・・朝御飯にしましょう? 英国料理はアレだけれど朝飯は他国に負けないから」
「そうだ。もう奴の事は忘れるべきなのだ。アレは君にとって害でしかない」
ソラウとケイネスが泣く桜を二人で抱きしめ。朝飯にしようという。
そう言えばそんな時間だったかと全員が思い出す。
これからが勝負所であった。
一方のセイバー陣営事、切嗣陣営は頭を抱えていた。
当たり前だ。左手の腱を切られセイバーは宝具使用不可能、令呪で強引に発動できるかもしれないが。
それでは残弾3発と同意義である。
しかも一番排除したいカルデア陣営及びランサー陣営は天然の城塞に守られた間桐家を占領しているのだ。
御三家の間桐家も実質アーチボルト家に乗っ取られたと見ていい。
そして今朝のバーサーカー陣営の襲撃も失敗に終わったがケイネスの張った工房結界は破壊された。
それでも今は偽キャスターである存在が修復終了まで結界を張っている。
「っ」
「切嗣」
「大丈夫だアイリ・・・連中なんて物を・・・」
加えてカルデア陣営は近代火器にも精通している。
だが切嗣にとっては未知の武器を使って来た。
それがDSRー50、この時代より先に生まれる対物ライフルである。
文字通り対物ライフルなので人に向かってぶっ放す様なものでもない。魔術師であっても容赦なく真っ二つの威力だ。
それに弾頭はダヴィンチが強化生成した対サーヴァント用神経弾なのである。
本当に対人向けに使う物ではない。
舞弥はスコープのずれがあったのかAGUの完全大破で済んだが。
切嗣の時はスコープのズレも修正しぶっ放されたのである。WA2000は大破。
切嗣自身も12.7x99mm弾の衝撃波だけで右腕を深く負傷した。咄嗟に固有時制御・二重加速を使って回避して無ければ、今頃、銃の大破だけでは済まさず上半身と下半身が泣き別れしていただろう。
本当に何かに守られているように運がよかっただけ、通常ならゲームセットだ。
「カルデアと名乗る輩とランサー以外との同盟が必要だ」
「ですが、キリツグ、誰も彼も我の強い連中ばかりです」
「セイバーの言いたいことも分かるが、君の不始末でもあるんだぞ」
「それは・・・」
もう一回いうが宝具使用不可能になったのはセイバーが一騎打ちに括ったのが原因だ。
当初からディルムッドは宝具を開帳し本気で仕留めに来ていたのだ。
お陰でカルデア側の最低限目標は達せられてしまった。
即ちセイバーの宝具を封じる事、左手の腱を切られてしまった。
これでは宝具は使用不可能、恐らくその元凶たるランサー陣営を屠れればいいが。
それは無理だった、カルデアは複数人の英霊を従えているのはアーチャーとカルデアとの戦いで分かっている。
加えてマスター達も一級サーヴァントと肩を並べるほどの規格外だった。
本気を出していないとはいえ切嗣でさえあっ無理だこれとなったアーチャーの猛攻に果敢に挑んだ化け物たちにしか見えない。
だからと言って暗殺も無理だ、近代火器の手口に精通している上にホテルに仕掛けた爆薬も全解除した上で回収している。
凡そ対テロ戦闘にも慣れていることは簡単に彷彿させられた。
だったら令呪使って拠点事吹き飛ばすかと思考すればそれも難しい。
良くも悪くもセイバーの宝具は過剰威力が過ぎる、真昼間か真夜中に使ってみろ神秘の隠匿どころではない。
主要時間軸みたいにキャスターが大暴走していれば話は別だが龍之介は事前に始末されている。
ジル・ド・レェも出てこないので大っぴらには使えない。
蟻退治に戦闘機の機関砲持ち出す様なものだ。
この聖杯戦争の形式では使用制限が掛かっている。下手に使用すれば一般人も多く巻き込む。
そうなれば討伐対象がカルデアから自分たちに移行することは明らかだった。
「兎に角、監督役には使い魔で連絡を取って置いた。吉報を待つとしよう」
反則は反則だ。
監督役も動き出すことは目に見えていた。
カルデア陣営の全力討伐に向けてランサー陣営以外のすべてに声を掛けるだろう。
「もっともバーサーカー陣営は落ちたが」
切嗣の言う通りバーサーカー陣営は落ちた。
舞弥からの連絡である。今朝悠々と攻め込み結界を突破したまでは良い物の。
その後は無残極まるものだったと舞弥から伝えられた。
音声指向マイクで盗聴は出来たが、そこにあったのは雁夜という存在の愚かさと無残さだけ。
否定されつくした一種のテンプレート。
もう切嗣には有触れたものでしかなかった。
とすると、次に組みやすいのはライダー陣営だろう。
アーチャーはあの傲慢さゆえに組むに値しない、そも組める材料もない。
アサシンは落ちたと思うのが切嗣視点では妥当だった。
キャスターはそも無理筋だ、偽の方はカルデア、真の方は最悪最強の愉快犯であるし。
真の方は交渉するにもマスターの居場所がつかめない。
ランサーはカルデアと同盟中。
バーサーカーは今朝堕ちた。
消去法でライダー陣営しか残っていない。
接触出来ようと思えばできるが、それは監督役がマスターを集めた時にでも十分説得可能だ。
昨晩、カルデアとランサー陣営と共に焼肉行っていたのが気になる物の些事である。
「兎に角監督役の返答を待とう」
だが切嗣は知らない、アサシンはまだ生きており言峰璃正がアサシンのマスターを続行しているなど。
そして遠坂陣営。
アーチャーことギルガメッシュは不機嫌だった。
愉悦に塗れた聖杯戦争だと思ったら、かの天敵ニャルラトホテプの化身が召喚されたからその対抗馬として召喚されたと感づいたときにはもう遅かった。
確かに最古の王として奴を退けた二人目だ。
因みに一人目は異世界人の周防達哉である。
故に罪人と言いつつも彼の事は認めていた。
彼は己が罪を自覚し成すべきことを成し切った。
故に己が庭で生活するのに不足は無しの勇者でもあると認めていた。
そして二たび彼は影を退けたのだ。
そして彼を慕う少女たちもそれに続く形で一度目を退けた。
カルデアは間違いなく英霊豪傑の集まり。それは称賛に値する。
現に彼らは全てを受け入れつつも諦めてなどいないのだから。
それがどれだけ険しい道でも十字架を背負いゴルゴダを上がっていく道だとしても彼らは歩むだろう。
だと言うのに己がマスターときたら昨日から痴話喧嘩と来た。
そして己は町に湧き出てきた怪異をアサシンの如く叩く日々である。
言峰は既にニャルラトホテプに諭され魔となった。
お陰で神野と言う神霊級のニャルラトホテプの化身が具現化し、
現在流れている噂の補強に精を費やしている事だろう。
「時臣今回の痴話喧嘩は終わったか?」
「ええ、なんとか」
冷や汗を掻いて時臣がギルガメッシュの居る部屋に入室してくる。
それを冷めた目で見るギルガメッシュ。
何故なら主要時間軸とは違いニャルラトホテプが関与している時点で聖杯は財に加えるものではないと悟ってしまったからである。
本来なら邪悪に導くはずの綺礼もとっくにニャルラトホテプが勧誘済み。
故にここは一大人として全力で動いていた。
街に蔓延る怪異が悪魔化する前に倒しつつカルデアの戦力を思い知らせることによって拮抗状態へと持ち込む。
あとはカルデアが間桐家に行くようにもひっそり誘導していた。
出なければ、この世全ての悪ではすまぬ大災害が生まれるかもしれないからである。
それは災害、それは嵐にして大地、汚染される都度に怒り狂う古び放逐された神が具現化しかねない。
即ち黄龍の落ちた姿、八百万の神でさえどうしようもない空すら滅ぼす者「百鬼空亡」が具現化しかねないのだ。
そうすればさしものカルデアも暴走前程でリバース・イドという札を切らざるを得ない。
そうしたらギルガメッシュ自身も本気を出してカルデアと共同し自滅覚悟で冬木という町は消し飛ぶことは明らかだった。
「だったら我から助言を授けよう。時臣、貴様過去にやらかしている女性関係も清算しておけ」
「え、あ、何のことかさっぱり・・・」
「我を騙せると思うてか。いいから清算しとけ悪いことは言わん、でなければ死ぬぞ貴様」
「・・・はい」
(あこれダメな奴だわ)
時計塔に留学していた時の浮気行為の数々をギルガメッシュは親切心で清算しておけと言う。
時臣にはハーレム願望がある。それ即ち達哉のオルガマリーとマシュを娶るという事に理解があるという事なのだが。
全員が全員、そう言う事に理解があるわけではない。達哉とオルガマリーとマシュは三者ともに互いの間柄を理解しあってその上でOK出しているから成り立っているのであって。
理解がない場合はP5の蓮の様になる。
そして葵にはそんな理解はない。自分が居るのに風俗通っていておまけに孕ませましたなんてなったら結果は火を見るよりも明らかだ。
そして言葉では反省しているように見せて態度では反省していない時臣を見て、ギルガメッシュはワインを一気に仰いで天井を見上げた。
因みにニャルラトホテプの事は事前に通達済みだったが時臣は阿頼耶識の抑止力程度にしか考えていない。
寧ろ自分が勝てば根源へと至れる確信を含めていた。
街の住人の被害なんて知ったこっちゃない様子である。
もうだめだ此奴とギルガメッシュの中では時臣を切り捨てに掛かっていた。
だが抜けるのにはまだ全然早い。腐ってもセカンドオーナーの腕はあるし、この緊急事態を収める為に切るわけには行かなかったのである。
「時臣、我は少し出かける」
「またですか王よ?」
「そう言う所だぞ時臣。町中に神野のばら撒いた怪異が存在する。連中を誅しなければ我とて安心して酒も飲めん」
そう言ってギルガメッシュは霊体化し姿を消した。
時臣はそれにホッとする。
怪異のお陰で頗るギルガメッシュの機嫌は悪いと言えた。
唯一機嫌が良いのはカルデアの事をいう時だけだ。
だが時臣には確信があったニャルラトホテプ、阿頼耶識の太極図の黒を司る邪神。
それ即ち抑止力であると、つまるところ根源に近づいていると勘違いしているのだ。
ニャルラトホテプなら根源に突っ込ませたうえで絶望させて来る邪神と知らぬがゆえに。
ギルガメッシュの警告を自分に都合よく解釈してしまった訳である。
もっとも彼がそれを知ることはない、女の情念とは恐ろしい故にだ。
「さて次の一手で終わりだカルデア」
それでも自分が勝てる未来を夢想しながら彼は踊り続けるのだった。
そして。ライダー陣営。
「ライダーはどう思う?」
「んっ、何がだ? 坊主?」
「いやさカルデアと先生の同盟に加わるか、それとも他陣営の同盟に加わるかをだよ」
「それなら、カルデアと石頭同盟に加わるのが一択だわな」
大戦略と言うゲームを二人でしつつ言葉を交わす。
ウェイバーは迷っている様子だったが。
イスカンダルは迷わず、カルデア&ランサー陣営に加わるといった。
「理由は」
「戦力差・・・まぁこれは問題ない、連中が奥の手を残してない限りな」
「そりゃな、僕もお前の宝具聞いたときびっくりしたし」
イスカンダルにはカルデアとの戦力差を覆す宝具が在る。
すなわち王の軍勢と言う固有結界だ。
心象風景を同じくとした戦友たちや臣下を呼び出す固有結界。
誰も彼もが英霊でありその戦力差はカルデアを上回っている。
もっとも達哉達がリバース・イドを切らなければの話だが。
達哉のリバース・イドは兎にも角にも空間を己が心象に塗り替える固有結界はオルガマリーのニヒト・イドと相性最悪で速攻で潰されるのだが。
そんな切り札を持っているのは無論、ウェイバーもイスカンダルも知らない。
ギルガメッシュとの戦いで切らなかったのは孔明から事前に天の鎖の存在を告げられていたからである。
はっきり言って神格の断片を降ろすペルソナ使いとは相性が最悪だ。
捕えられたら抜け出すことは不可能、リバース・イドは降ろす所か身に纏うなので捕捉されたらその時点でアウトだ。
だからリバース・イドを切らなかった、いや切れなかったのである。
それだけ天の鎖は厄介なのである。
もっともイスカンダル達はそんな事を知る由もなく話を進めていく。
「連中程聖杯に精通している者は現状おるまい。運が良ければ浄化と言う手段も取れる。特異点化に触れなければ見逃してくれる可能性も高い」
「確かにそうだけどさ」
「どうした? 坊主」
「未来の僕が羨ましくってさ・・・どうやったらあんな大人になれるんだろうって・・・」
魔術師としては失格かもしれない。だが征服王やケイネスに胸張れる大人になったのだ。
それが羨ましくて仕方がない。未来の自分はケイネスと肩を並べて立っているのに自分ときたら何をしているんだろうと思う。
今更ながらに気づく、自分のくだらないプライドで他者を巻き込んでまで何がしたかったのかと。
そのことに怖気すら走った。
「成すべきことを成す、そうやってきたのが未来のお前だ。大丈夫だとも。未来のお前に出来て今のお前にできない通りがない」
「それでもさ今更になって気づいたんだ」
「何がだ」
「僕が空虚って事、勝利は過程でしかなくその果てを見定めてないってこと・・・」
そう勝利からは逃げられない、だがその果てを見定めていなければ真の勝利とは言えない。
勝利はあくまでも目標の達成のための中間点でしかないのだ。
目標が定まっていなければ真の勝利とは言えない。
自分を顧みない奴らを見返してやりたかったががその先がない。
故にウェイバーには明確な勝利目標がない。
未来の自分にはあって今の自分にはない物。それが彼を不安にさせていた。
「なら、余が見せてやろう!!」
「うわ!! なんだよライダー!?」
ならば自分が見せてやると豪語するイスカンダル。
「余が勝利の暁には果てのオケアノスの潮騒を見せて聞かせてやると言っておるのだ!!」
遂に到達することのなかった果ての潮騒。
それを今度こそと。
だから願うのは受肉、この世を合法的に支配するための王として君臨する為にと。
「だから余と共に来い、ウェイバー」
「ライダー・・・」
共に夢を見ようとイスカンダルはウェイバーに手を差し伸べてくれる。
ウェイバーは何故か涙が出た。こういうことを行ってくれる奴は今までいなかったから。
ああだからそうか、だから未来の自分は――――――――
「うん、でもまずなすべきことを成す」
「ソレも良し!!腹は決まったみたいだな!!」
「ああ!!」
それと同時に監督役からの連絡が来た。
もうウェイバーに迷いはない。
彼もまた未来の自分と同じように駆け出したのだった。
そして教会。
其処にランサー陣営とカルデア陣営に脱落したかのように見かけたアサシンに怪異退治に精を出すギルガメッシュ以外のサーヴァントとマスターが集まっていた。
「それでカルデアの処遇はどうするかね? 監督?」
「決まっています、彼らはルールを犯した。複数のサーヴァントを所持しているという事は聖杯になんかの細工を仕掛けたと思っても良い、討伐されるべきです」
時臣の問いに璃正が答える。
事情を知らない物からすれば実に白々しいやり取りだ。
何故ならこの二人は組んでいるのだから当たり前と言えよう。
ついでに言えばアサシンも脱落はしていない情報は随時共有しているのだから。
「僕もそれに賛成だ」
切嗣もそれに賛同する。
当たり前だ。ディルムッドの宝具によってセイバーの宝具は機能不全に陥っている。
それであの天然の城塞に結界二十四層、魔力炉三機、猟犬代わりの悪霊、魍魎数十体、無数のトラップ、森は一部異界化、ついでにカルデアで誇り被っていたクレイモアなどの各種トラップまで設置。
対空も兼ねての自動迎撃魔術もオルガマリーとケイネスの合作で設置され無敵要塞と化しており。
宝具抜きでのセイバー陣営では突破不可能だ。
いや対魔力Aランクのセイバー単独でなら突破可能だが、抜けたところで袋叩き確定である。
故に攻め切れない以上、切嗣としてはこの意見に賛同するしかない。
「それでライダー陣営はどうするね?」
時臣がギロリと睨むようにウェイバーを見る。
一瞬怯むウェイバーだったが、強く時臣を見返し。
「僕らはカルデア陣営、ランサー陣営と同盟を結ぶ、だからその意見には賛同できない」
「・・・なぜかね?」
「しらばっくれるなよ。昨日焼肉屋で聞いたぜ、桜の養子引き取り交渉ついでに聖杯が汚染されているってな」
時臣の問いに冷ややかにウェイバーが応じる。
あの炭火焼ゆーじーでオルガマリーからホルモンの奪い合いをしているときに聞いたのだ。
桜の養子の件と聖杯が汚染されている可能性が高いと。
「得体のしれない連中の事を君は信じるのかね」
「信じるも信じないも、神野明影が出てきている時点で可笑しいじゃないか、あんな悪性情報の塊かつ神霊級が出てきている事自体が汚染の証明に他ならない」
「アレは阿頼耶識の抑止の守護者だよ。我々はこの儀を持って愈々、魔術師としての本懐に近づいているという事だ」
「町一つふっ飛ばしたらやったもん勝ちじゃないか!! 後に残されるものの事はお構いなしかよ!!」
「我が悲願に比べれば軽いね、第一町が崩壊するという確証は「此処にあるわよ」」
時臣がウェイバーの言いようを否定しようとしたその時である。
オルガマリーが達哉、マシュ、ケイネス、そしてディルムッドにカルデアのサーヴァント達を率いて教会に来襲したのだ。
それと同時に投げ渡される資料の数々。
「間桐家が隠し持っていた過去全部の聖杯戦争の資料よ、ピックアップしているから全員で速読して頂戴、魔術師なんだしそれくらいは出来るでしょうよ」
時臣の顔面の色が急降下する。
彼は事前に資料を渡されていた側だ。
もしこの隠匿が破られれば。聖杯戦争自体が止められかねない。
「監督役これは本当なのか!!」
セイバーが怒髪天になって問いただす。
彼女の状況は切実だ。万能の杯を求めて態々死に際で過去から未来に来たと言うのに。
羅列されてる情報は聖杯が汚染されていますよなんてなればそうもなろう。
「キリツグ!! アイリスフィール!! 私を謀ったのか!!」
「おいおい七騎殺して真の起動とはのぉ、坊主は知っておったか」
「いや此処までは僕も読めていなかった・・・」
更に資料には令呪の本格的用途まで書かれていた。
それにセイバーは激高、切嗣とアイリスフィールを問い詰める。
ライダーは呆れた様子でウェイバーを見てウェイバー自身も愕然としていたのを見てウェイバーも令呪の本来の用途についてまでは知らなかったのかと胸を撫で下ろした。
「それよりも汚染についてよ、ナニコレ地脈まで達しているじゃない、こんな物で願いを叶えた時点で猿の手核爆弾よ、町が下手したら消し飛ぶわ」
オルガマリーがそう冷たい目で時臣と璃正を見る。
聖杯のメンテナンス作業すら行えていないのによくもまぁセカンドオーナーとか監督役とか名乗れたものだと。
「今の資料は魔術協会、聖堂教会、そして宮内庁に送って置いたわ。聖杯の浄化、あるいは解体作業まで停止宣言を出せてもらうわ」
「なんの権限が・・・」
「権限はないけれど、明日辺りには遠坂の正式なセカンドオーナーの立場の取り上げと監督役の更迭は決まると思うわ、ちなみに今の三組織に弁解しても無駄よ、既に資料は送ったから、この場にある資料を燃やしても意味はないわ。私達も突貫作業で疲れたから、二日後に大聖杯の調査に入る。その時は覚悟しておく事ね」
既に関連各所には資料を送っている。
あと数日でもしたら介入が開始されるだろうとオルガマリーが予測を語った。
そしてこれで連中の同盟はされない筈と内心思う。
なんせ今からそれどころではないのだから。
魔術協会、聖堂教会、宮内庁が慌てて介入してくるだろうことは明らかである。
あくまで穏やかに済む儀式だから見逃されていただけで、汚染は地脈までに達しているとなれば話は別だ。
街が吹っ飛ぶどころか県全体に損害が出かねない。
そして今日は疲れたので二日後に大聖杯の調査に入ると告げてオルガマリーたちは去って行く。
「ウェイバー、アンタも来るのよ」
「ええ僕も!?」
「ええ、同盟してくれるんでしょ?」
「そうだけどさぁ・・・」
「なんかしまらんのぉ」
「それが我々の気風ですから」
そうしてライダー陣営もカルデア陣営に続いて教会を後にするのだった。
今回は各陣営の状況&ウェイバー君覚悟決めるの巻きでした。
次回は聖杯問答とかやっていきたいですね。
やめて!カルデアの数の暴力で、ギルガメッシュが蹂躙され退場されたら、関連各所に詰め腹を要求されてる時臣の精神まで燃え尽きちゃう!
お願い、死なないで時臣! あんたが今ここで倒れたら、葵さんや凛の約束はどうなっちゃうの?
ライフはまだ残ってる。ここを耐えれば、カルデアに勝てるんだから!
次回「時臣、葵に刺される」デュエルスタンバイ!
ニャル「と言う訳で次はおまえだよぉーん!!」
トッキー&葵「!?」
ニャル「ついでにセイバーお前もな!!」
セイバー「!?」
まぁ時臣死にます。
アクセルゼロオーダーでも空気でしたしね。
アルトリア・リリィ(カリバーンを素振り中)
まぁ本作のセイバー、碌な死に方しません!!
なんせうちにはアルトリア・リリィちゃん要るからね。
それにたっちゃんの前でZEROの時の様な願いを行ったらカルデアの核地雷踏むようなもんですから全方位から許してもらえません。
まぁ早い話、ZERO名物セイバー精神的フルボッコ回です。
二重コピーみたいになるのなんなんだろう本当に投降した後で発覚したからめっちゃ焦った。
後次回こそ遅れます。