Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです 作:這い寄る影
ヨハネによる福音書より抜粋。
一節 「略奪」
目標を奪取することに置いて何が一番効率的であるかと言うと。
対象の心理的信頼を勝ち取った上で、疲弊したところに不意打ちである。
「アルトリアァ!!」
「アルさぁん!!」
二人は即応体制を整えていた。
流石だ伊達に此処まで来たわけではない。過去が過去なら人類史に勇姿を刻み英霊となっていた人材である。
だがしかし、
「えっわぁ!?」
「マシュ!?」
百鬼空亡の影を相手に無理をしたのだ。
当然消耗している。
マシュはペルソナを展開し車椅子から立ちあがるなり転げた。
だがしかしオルガマリーはそれに気を取られつつつも体の反射に身を任せて発砲。
幾千と人質を捕えられた場合のシチュエーションを味あわされてきたのだ。
最早、反射神経の領域で人質を盾にされていようが人質を無傷で対象だけを殺傷できる。
だが放たれた弾丸を達哉抱えつつ曲芸の様に回避するアルトリア・リリィ。
達哉の腹の傷は白い鉄の様な何かで埋め合わされ。彼は気絶していた。
すぐ様マシュも首筋に薬をぶち込み立ち上がる。
「二人の回収は不可能、予定撤退ポイントへ撤退します」
アルトリア・リリィはそう言って達哉を俵担ぎし自身が設定した撤退ポイントへと向かう。
「緊急事態発生!! 緊急事態発生!! コンデションレッド!! 保安部並びにサーヴァントは第一級戦闘配置!!」
『なにかがあったの?!』
「タツヤがアルトリアに刺された上で拉致られた。こっちでも追おうと思っているけど・・・施設内ではペルソナも使えないし、オマケに動きがいつもより早い!!」
オルガマリーは第一級戦闘配置を発令。
それに椅子に座って仮眠していたロマニが真っ先に反応。
事態を知る事となる。
保安部も直ぐに動き出したが、
「駄目です、幾らマークスマンライフルでもフルオート射撃では・・・人質に当たります」
「ちぃ! 総員近接戦闘容易!! ナイフと体術でどうにかするぞ!!」
進行ルート上から相手の逃げ道を保安部が封鎖、緊急時なのでフル装備とはいかず、誰もがPMCスタイルでガリルACE52を構えるものの俵担ぎされている達哉が居る以上。
マークスマンライフルであるガリルACE52のフルオート射撃では気絶している達哉に誤射しかねない。
その時だった。
「アルトリアァァァァアアアアアアアアアアア!!」
保安部の後ろから絶叫。
裏切りなんて絶対許さないマンの長可が猿声を上げて保安部の作った肉壁を越えて天井ギリギリを飛び、
アルトリア・リリィに向けてギミックを展開した人間無骨を振り下ろす。
だがしかしアルトリア・リリィは簡単に人間無骨を打ち払う。
―ヤベェ勝てねぇ―
その一合で長可はアルトリア・リリィの実力を完全に察知した。
完全に第一でのランスロットを上回っている。味方に未熟なフリをして各サーヴァントから保安部員までから武を習っているのだ。
才気溢れる者が極まった人員から武を学べばこうなるという典型例である。
「テメェ、三味線引いていた上に、返り忠したなぁ、なんでだ! 言えヤァ!!」
「アナタ方では救えないそれだけです。槍も書文さんとアナタから学んだ。勝てると思いで?」
「勝つか負けるかじゃねぇんだよ、やるしかねぇだろ」
「狂犬めが・・・ですがあなたに構っている暇は在りません」
そう言ってアルトリア・リリィはカリバーンの力の一端を解放した。
「まずッッ、退避ぃ!」
アマネが宝具解放かと思い部下に退避命令を出す、
此処は狭い廊下。宝具なんて撃たれたら自分たちは蒸発する。
故に近辺の空き部屋に逃げ込めと指示を出す。
これには倒れる訳にも行かぬ長可も急いで空き部屋に飛び込んだ。
光を通路が通過し光が晴れる。
「してやられた!?」
アマネ盛大に舌打ちしながらそう言う。
床が溶けてなかったつまり目くらましと保安部と長可を退けるのが目的だった。
施設を破壊すれば楽になるだろうにとも思うのだろうが、
「ロマニ!! 即応可能なサーヴァントはまだか!? 私達では止められない!!」
殆どの人員がアルトリア・リリィをそりゃもう可愛がった。(ブートキャンプ的な意味で)
故にほとんどの保安部の手口がバレている。保安部ではこれ以上は奥の手を使う羽目になる。
奥の手は一度切の片道切符だ。まだ切るわけには行かない。
よってここは即応可能なサーヴァントはまだかと問いただすしかない。
『全員自室に戻っていて突然の事で遅れて展開中なんだ、まだ無理』
「ならなぜ長可は即応できた!?」
「いや俺、ロビーの自販機に炭酸ソーダ買いに行く途中でなんか騒がしかったから即応出来ただけだ」
長可が速攻で駆け付けれたのには訳がある。
ロビーの自販機に炭酸ソーダを買いに出かけた時、保安部が銃担いで忙し気に廊下を走っていたし、
通信でアルトリア・リリィが裏切ったことを知って怒り大爆発。
後は持ち前の裏切り者探知機という感または嗅覚で居場所を突き止め現在にいたる。
「走れ走れ走れ!! 逃げ場はないんだ。なにすっか分かったもんじゃない」
アマネの指示と共に保安部と長可が呼応しアルトリア・リリィを追う。
「ロマニ!! 奴の予測進路は?」
『えーと・・・居住区格から離れて・・・レイシフトルームに向かっている!!』
「ええいしてやられた!!」
レイシフトルーム。
それはサーヴァントをレイシフトさせるための大部屋だ。
本来はシステムFateによって呼び出されたサーヴァントを特異点攻略時に押し込めまとめてレイシフトさせるための部屋であるが、
サモライザーの実装によってレイシフトルーム使わなくてもサモライザーに封入しマスターと共にレイシフト出来るようになった為、
すっかり使われなくなって久しい。
「先回り出来る奴は・・・『皆、一回自室に帰っているからいないよぉ!!』ダヴィンチちゃんは!?」
『私は戦闘職じゃない!! 0,1秒も持たない自信があるよぉ!!』
ロマニ&ダヴィンチは本来戦闘職ではない。
施設破壊出来ないから大がかりな術式を行使できず。アルトリア・リリィの対魔力を抜けない。
つまり止めにはいった所で瞬殺される。
しかも他のサーヴァントは自室に一度帰った為、即応に一歩遅れている。
このままでは逃げられる。
「ダヴィンチちゃん、ロマニ、レイシフトルームへの電力供給を落とせ!!」
だが一つ手段がまだ残っている。
良くも悪くもカルデアの施設機能の維持は管制室で行われている。
つまりレイシフトルームの電源落とせばアルトリア・リリィは逃げられないのだ。
『わかっ!!??』
「どうしたロマニ!!」
『ウィルス多数、送電系統と施設維持系統並びにレイシフト系統に浸食多数!!』
「見越していたか!!」
だがアルトリア・リリィはこっそりと潜伏型ウィルスを仕込んでいた。
ウィルスに対抗するためにはワクチン制作、そのワクチンを制作するにはウィルスへの知識も無ければだめ。
アルトリア・リリィは管制室での仕事を行う傍らでそう言うセキュリティ業務にも参加していた。
その時知識を得てこっそり忍ばせておいたのだろう。
足りない質は数で補うと言ったばかりに雑多なウィルスがカルデアのCPUを浸食していく。
なんにせよ数が多い上に潜伏型だ。
一休憩していた人員やローテーションで休んでいた人員までたたき起こされ駆除作業中だ。
そして保安部と長可がレイシフトルームの前に到着、少し遅れてオルガマリーもマシュもだ。
「ぶち抜きます!!」
マシュがウリエルを構える。
たかがワンルーム如きの扉なんてマシュの八極拳にプラスされた近接スキルの前ではいくら合金製とはいえ紙切れ当然だったのだが。
『待つんだマシュ!! レイシフトが開始された!! このまま扉をぶち抜くとどうなるか分からない!!』
「ッ」
だがロマニから制止の声。
そうレイシフトは危険を伴う、だからコフィンであるし、サーヴァント以外はレイシフトルームの使用の許可が下りない。
そしてレイシフト中のレイシフトルームの扉をこじ開ければどんなことが起きるのか分からないのだ。
つまり一歩遅かった。
『では第六特異点で待っています』
アルトリア・リリィがそう言い残しレイシフトが開始されアルトリア・リリィと達哉が掻き消える。
それを黙って見ているしかなかった。
「くっそ!! してやられた!!」
一時間後の管制室で、
ガンと音を立ててチタン合金製の壁を右手で凹ませるオルガマリー。
なおマシュがやったら壁ぶち抜いていた。
「まさかアルさんが裏切るなんて」
「しかも金柑頭の様に衝動的な物じゃねぇ、松永の様に最初から裏切る算段立てていたんだろうよ。用意周到すぎる」
マシュの言葉に忌々し気に長可はそう答える。
アルトリア・リリィは召喚された瞬間から裏切る気だったのだろうと長可が切り捨てる。
出なければこうもタイミングよく用意周到に仕込みを入れられるかという話だ。
「しかしなんで三人を掻っ攫うなんて面倒な真似敢行したのだろう?」
ここに来て孔明が疑問を提示する。
人理焼却を完遂する為の第一の獣の使徒として動くなら、
あのタイミングだったら三人を殺した方が楽だからである。
現に三人共、百鬼空亡との影との戦闘でヘトヘトだったし不意打ちまでして殺さなかったのには何かわけがあるはずだと。
「それはそうよね、最低でもあのタイミングなら私達の内二人は取れていた」
故にそこが解せぬ。カルデア視点ではわざわざ拉致までしてやりたいことが見えてこないのだ。
「そういえば先輩は無色のコトワリ持ちでしたよね? それ使って新世界創造とか・・・」
「君たちの話を聞く限りあり得ない話ではないな、そもそもアルトリア・リリィはゲーティアの計画に相乗りした赤の他人だとすればだが」
マシュは第四で嘲笑するニャルラトホテプの声を聴いていた。
コトワリ、即ち新世界の為のルールにして玉座へと至り座る資格を持つという事を。
だが無色と聞く限り、まだ其処までは至っていないのだろうとも解釈ができる。
そんな物を利用してどうするのかと言う孔明の言い分もまた是だ。
「それにアルトリア・リリィの言いようからするに、達哉だけではなく君たちも確保したかったのだろう?」
「それは解せないわね、オルガちゃんの力はとても危険な物なんでしょう?」
「ああ、幾らアンビースト化しているとはいえビーストの力だ。暴走した時点で特異点事世界がすっ飛ぶ」
孔明の言う通りオルガマリーのニヒト・イドは危険だ。
リバース・イドがニヒト・イドになった事によってペルソナが正位置になり幾ら制御が効くようになったとはいえ。
大本は心の力、感情爆発で暴走しかねない危険な力だ。
しかも終局のⅦと来ている。ぶっちゃけ安全ピンを抜いた手榴弾を両手で持っているのと現状大差がない状況だ。
故に達哉はまだわかるがオルガマリーの使い処が今一ピンと来ない。
「それにマシュ殿もです、火力は対神まで引き上げられるとは言え、ソレも本人次第、今一使い所が」
そしてマシュを攫おうとしたことにも疑問符が付くと宗矩は言う。
マシュのイノセントダストは無限出力だ。現状確認できただけで、対神レベルまで引き上げられることが確認されているが、
そんなの戦闘でしかクソの役にも立たない力である。
というかマシュ自身がそう思っているので宗矩にいう事はない。
そう此処までくると達哉は最重要人物と言うのは分かるのだが、オルガマリーとマシュまで最重要人物扱いする方が分からない。
所謂考察のノイズになってしまい孔明もどういうことなのと頭を抱えるしかなかった。
「だがこれだけは言えるぜ・・・第六特異点は罠だ」
壁に背を預けていた織がいつもより増して真剣な表情で言う。
そう第六特異点が罠だ。ウィルス除去も終わりアルトリア・リリィの言い残した言葉や転送先の情報などから、
アルトリア・リリィの逃亡先は第六特異点と判明している。
あからさまに来てくれと言わんばかりだ。
もう此処までの情報を組み合わせれば案山子でも罠だと分かる。
「だけど見過ごす理由にはならない」
オルガマリーの言う通りだ。
だからと言って見過ごす理由にはならない。
第六特異点の定礎崩壊度は第二特異点と同じくEXに到達。
早急に片づけなけれならぬ案件であるし達哉や自分たちを利用したいから誘っているというのを分かった上で踏み抜かねばならない。
「一週間休暇が欲しかったけどね」
第四次聖杯戦争の乱痴気騒ぎからは先ほど帰って来たばっか。
イドタイマーのリセットもなっていないしマシュの薬抜きも終わっていない。
だが状況が状況だ。
行くしかないのである。
「一日も休暇ないですけどやるしかないです」
ここはマシュも同意した。彼女の殺意は滾っている。
今の彼女なら神ですら殺せるだろう。
「連日不休になるけど時間がない、第六特異点に突入します」
オルガマリーの号令で第六特異点への突入が決定した。
一方の第六特異点。
そこは一種の地獄と化していた。
地獄とは言いようで天国とも言える。
なら強いて言えるなら天獄とでもいうべきであろうか。
臭いさえ殺菌され無臭、大地を濡らす筈だった血は白く白く染まる。
偽のリチャードに踊らされていた者達は歓喜の涙さえ流していた。
何故なら天使たちが舞い降りたのだから。
「貴様・・・」
「無様だな太陽王、ペルソナ使いであるが故、私よりマシな結末を編み出せるかと思っていたが、出来ないとは、王としては片手落ちですね」
膝を着くオジマンディアスを三対六枚の光の翼を羽ばたかせつつ天から見下し酷評するアルトリア。
そうオジマンディアスも主要時間軸通りの考えだったがゆえにアルトリアの顰蹙を買った。
故に排除対象、其処に慈悲はない。
神殿の大電球さえ直撃させても、ペルソナの最大火力を誇る固有スキルを直撃させても、技量対決でも敗北を喫し、
更には神殿さえ半壊させられて、打つ手がない。
「では、退場してください
炸裂する極光、最早、世界すらも殺す光の渦が炸裂し・・・
「逃しましたか・・・ですが三蔵が動くとは・・・土壇場まで傍観者に徹していると思ったのですがね」
その軌跡上の物が全て消失、否、浄滅されたのを見届けアルトリアはぼやく。
今の一瞬、三蔵が介入し、オジマンディアスの意識を奪い固有結界を強制解除。
それと同時に遁走したのを見届けた。
「まぁいいです。白く白く白く塩の純白に染まれ」
翼から光が放たれ大地が塩と化していく。彼女のカリスマに屈した物を問答無用で塩に変える機能、神の戦車としての権能の一つだ。
心強き者で無ければ人間大の塩に変換される。
大地も樹も人も純白の塩に殺菌される。祈るようにアルトリアを見ていた偽十字軍の連中なんか即座に塩だ。
そして遠くでは山をもぶち抜く出力にまで強化されたモードレッドの宝具に疑似太陽として顕現したガウェインの宝具が炸裂していた。
「王よ、大方の敵の掃討は終わりました」
「では陣払いを」
「・・・良いのですか?」
「何がですか?」
「三蔵とオジマンディアス、ニトクリスを逃がしたことです」
「ああ構いませんよ、所詮ほら吹きと自称王と私と同じ御堕落者ですから」
背から翼を生やし飛んできたアグラヴェインの報告に無感情に言い切る。
三蔵法師は偉大な事を成し遂げたが教えとは全員が理解できてこそ意味があるとアルトリアは思っているのでホラ吹き扱いだ。
オジマンディアスもくだらなかった。王の中の王を名乗るなら自分くらい縊り殺して見せろという話である。
ニトクリスは自分と同じで眼中にすら入れたくない本来なら真っ先に抹消したかったが出来なかった。
「なんにせよ、第一目標は達成しました。キャメロットへ帰ります」
「御意」
偽十字軍の首魁、偽リチャードも浄滅したし軍自体も塩に変えたか天使たちに縊り殺させたか円卓たちによって薙ぎ払わせた。
問題はない。
そしてキャメロット。
アルトリアは玉座に一人着いた。周囲の円卓には何も言わない。
寧ろこんな木偶の棒たちに何か言う事あるのという話だ。
あれ以来、どこかの勢力に所属したのか、戦場でランスロットとトリスタンにケイは何度とも刃を交えたが。
ケイはガヘリスと相打ち、ランスロットは致命傷を受けながらも2名を討ち取りつつ退散、トリスタンも1名を討ち取ったが左腕を持っていかれ退散しそれ以降は出てきていない。
もっともアルトリアにとっては自分の所に残った円卓なんぞ駒でしかないし天使を憑依させた機動兵器でしかない。
もう彼女に忠義とか響かない。
その時である。玉座の間の扉を開けて一人の少女が青年を抱き抱え現れたのである。
無論アルトリア・リリィと抱き抱えられているのは達哉だった。
「「貴様何奴!!」」
「ガウェイン卿、落ち着きなさい、アレはもう一人の私、カルデアに放ったスパイです」
剣を抜こうとしたアグラヴェインとガウェインをそう言って落ち着かせるアルトリア。
内心本当に使えないと吐いていた。
「帰還しました私」
「お帰り私、ところでマシュとオルガマリーは?」
「無理でしたやはりカルデアは油断の油の字もできない所です」
「そうですか・・・まぁ相手はあのカルデア、ニャルラトホテプの奸計を超えてきた勇士です、むしろ良く達哉を持ってこれました。では私の中に帰ると良い」
「はい」
アルトリア・リリィは円卓の騎士を無視しつつアルトリアに近づき達哉を手渡し、
それと同時に光となってアルトリアの中へと帰り、
閃光が走った。
「タイミングと癖さえ知っていればいくら探知不能でもこれ位は読めます」
「ぬぅ」
ギャリと火花が散る。
ロンゴカリバーと漆黒の大剣が噛み合う。
アルトリアはあらかじめ予測していた。
と言うよりも暗殺者として狙うならこの瞬間だろうと当たりを付けていたのだ。
そう山の翁による暗殺を。
何種類かのパターンを想定しこの瞬間に来ると思っていたからこそ防げた。
ついでに言えば、今のアルトリアはアルトリア・リリィがカルデアサーヴァントズや保安部から習った技術をアルトリア・リリィを吸収というか再合併したことによって得ている。
早い話が最果ての女神としての権能、神の戦車としての機能、竜の心臓に日本系サーヴァントの技量、保安部の技術、そしてエクスカリバー、カリバーン、ロンゴミニアド、アヴァロンを融合し作り上げた神造兵器「ロンゴカリバー」を持っている。
だがしかし、
「晩鐘は汝を指し示した」
「何を・・・!?」
そこでアルトリアは驚愕した死の無い筈の身体に死が立ち上っている。
初代山の翁、真なるハサン・サッバーハの一撃、受け止めただけでは防ぎきれなかった。
そう、アルトリアの予測した通りの最悪のタイミングでという奴である。
アルトリア・リリィと再統合した時点でこの短時間だけは羽化寸前の蛹の様なもの。
霊子構造的に一時的に脆くなっている。そこにグランドアサシンの権能である死の付与が加われば防げるわけがないのだ。
更に最悪なことにアヴァロンの機能が不全となったこちらも概念的に一時的に殺されたのだろう。
「だがしかし」
漆黒の大剣を弾きつつ構えを取るアルトリアはそう言った。
「そちらもミスをしましたね、私は所詮第二プランです」
「なに?」
山の翁の霊基構造強度がガクッと落ちる。
まるで冠位霊基を没収されたようにだ。
そうこれはニャルラトホテプが人理に提示した第二プランなのだ。
つまるところアルトリアの行いは特異点を形成する物とはいえそれで新世界に行けるならOKと言う話である。
仮にカルデアがアルトリアを倒せれば成長した証拠になるのでそれはそれでよしという話で通り当初の予定通り第一プランである時空神殿攻略へとカルデアを乗らせるだけの話。
故に今現在の山の翁の行いは人理決定に反するとして冠位没収にまで至った。
まぁニャルラトホテプはこうなるのが分かっていた上で誘導したのだが。
だからと言って山の翁の脅威が去ることはない。
この状態でさえガウェインを大きく引き離している怪物である。
「―――――――」
「―――――――」
だったらこの場全員でかかれば仕留められるだろうという話になるが、
そもこの場において少なくとも互角なのは、アルトリア・リリィから技量を吸収したアルトリアのみである。
下手に介入すれば円卓勢の首が物理的に飛ぶ。
「シャァ!!」
「疾ッッ!!」
神速の領域で交わされる漆黒の大剣とロンゴカリバー。
技巧を凝らした極みの押収に円卓勢も息をのむ。
「柳生新陰流―――」
「では死ねい!!」
アルトリアは1枚の札を切る。
基礎にして奥義、即ち――――――
「合撃――――!」
合撃である。
極まった新陰流使いは合撃と十文字で戦況を詰めていく。
山の翁よりも新しき時代、洗礼された殺しの技術。
だが山の翁とて只者ではない。考えても見て欲しい。暗殺技術に長けた後継たちを真正面から気取られることなく引導を渡して来た技量もまた。
柳生新陰流に劣らぬ魔業の塊だ。
「十文字――――」
首筋を狙われる今のアルトリアでさえ視認不可能な刃。
しかし五感に頼りすぎるなと宗矩に教え込まれた。
合撃からキャンセルして十文字に移行、狙いは山の翁の手首そのもの。
「ぬぅ」
「ちぃ」
スウェー気味に十文字を炸裂させ漆黒の大剣の一撃を逸らす。
首の皮が一枚切れた。もう少し深かったら喉笛を切られていた。
しかし確かな手ごたえ。山の翁の手首を切ったと思ったが、
「――――――」
「私が言えた義理じゃないですがどういう肉体構造してるんで?」
確かに山の翁の右腕を断った。
なのにまだついている。切断面から青い炎が噴き出し癒着させている。
これが死の淵EXによるスキル能力だ。
例え半身が砕けようが致命傷を受けようが五体満足の戦闘能力を維持できる疑似的不死能力とも言える物。
アルトリアも大概であったが山の翁も大概過ぎる。
そのまま睨み合いの時間が続く。
両者共に今度は一撃必殺体勢だ、アルトリアは袈裟切り。山の翁は首筋狙いと見せかけて。
「まさかっ」
アルトリア、横に飛ぶ。足元から人体なんて一瞬で消し炭になる炎が沸き出た。
その跳躍に魔力放射を+。一気に達哉の所まで飛ぶ。
其処には既に山の翁がいた。
千日手となると見るや否や、達哉を回収しようとしたのである。
このままででは連れ去られると確信したアルトリア。ロンゴカリバーに魔力を込めてクー・フーリン流の投擲術でロンゴカリバーをぶん投げる。がしかし山の翁は外套でそれを弾き。
「マハコウガオン!!」
「ぬぉ!?」
アルトリアは背中から生えた光の翼からマハコウガオンを射出。
神の戦車としての機能も合わさり死の具現と言う闇属性の山の翁には効く。
そのまま外套で再度防御。
何とか浄滅だけは避ける。
アルトリアは弾かれたロンゴカリバーを受け取り横一線、山の翁を弾き飛ばす。
アルトリアは自身の足元を見た。達哉はまだいる。気絶しているなら文句はない。
「今度こそ浄滅させて上げましょう」
「来るか――――――」
もう次はない、半身削られようが、致死の傷を与えようがそれでも五体満足で動けるのなら。
完全消滅させるまでと魔力を滾らせる。
山の翁も静かに無形の型を取った。
「
「聴くがよい、晩鐘は汝の名を指し示した。告死の羽───首を断つか!」
そして相応必死の間合いに入る。
炸裂する両者至高の一撃。
「
「
黄金と漆黒、光りと闇が衝突し・・・
「ぬぐぅ」
「これでも死にませんか・・・」
膝を屈したのは山の翁だった。
アルトリアはそのまま彼を見下ろしている。
「―――――――」
そして山の翁は四散する。
円卓の誰もがおおッと思った時である。
アルトリアが膝を着いた。
「ガヒュ・・・仕留め、切れなかったですか、ヒュガ・・・」
アルトリアの首からは血が流れていた。
アヴァロンが機能不全な今、死を与えられるも何とか機能している最果ての女神としてと神の戦車としての両方の機能を兼ね規格外の再生能力を備えた肉体がなければ終わっていた。
それでも出血し胃と肺に血がたまる。
常人なら窒息死だが上記の肉体も合わさってまだ辛うじて死ねない。
それは向うも同じだろう。山の翁は死んでいない。最も死の淵EXを持ってもしばらくは身動きできぬ傷は負わせたはずだからだ。
「ゲホゲホ!! ガヒュ!!」
アルトリアは咳き込み血反吐をまき散らしながらロンゴカリバーを杖に立ち上がり。
達哉の元へと歩む。
そして彼を抱き抱え、玉座の裏側にある十字架へと移動し、
「ヒュー、ヒュー・・・お願いです恨んでください」
ロンゴカリバーから欠片を取り出す、さしずめ最果ての欠片と言って良いだろうか。
魔力力場で達哉を浮かせ十字架に押し付けると同時に、彼の心臓目掛けて最果ての欠片を突き刺した。
「がぁぁぁあああああああ!? アルトリァ!?」
「ご安心を生命活動に支障はありません。ただあなたに動いてもらっては困るので」
心臓に突き刺したと思われていた最果ての欠片は刺されると同時に植物の根の様に分岐して心臓を回避しつつ達哉と背後の十字架を繋ぎ合わせる。
更に両腕、両足にも最果ての欠片を突き刺し完全に固定。
その姿は磔刑にされた聖人のような姿だった。
「アルトリア・・・なんで・・・」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
再度意識が意識が遠のく達哉の言葉にアルトリアは壊れた蓄音機の様に懺悔することしかできない。
だって彼に動かれたら全てがご破算だからだ。
彼には残り二人、即ちマシュとオルガマリーをおびき寄せる餌になってもらうというのと同時に、
二人を捕獲したら新しき世界で統治機構になってもらうのだから。
それに彼がリバース・イドを起動したら十中八九負ける。貫通でアヴァロンの防護を抜かれ、ユニオギアスで最果ての女神と神の戦車としての霊基を剥がされただのアルトリアとなったら其処からは力の平押しで押し込まれてゲームセットだからだ。
故にこうして最果ての欠片で磔にしてペルソナ能力も封印し身動きとれぬようにするのは必然だった。
「決断の血は私が流します、だからアナタは眠っていてください、千年王国の夢の中で」
そしてアルトリアの表情が切り替わる、覚悟をした表情だ。だがしかし狂っている覚悟だった。
「なぁ父上、そいつそのままにしてどうするん「黙っていろ狂犬」!?」
若干引き気味になりつつモードレッドが問うがアルトリアはそれを一蹴した。
狂気に笑いながら、壊れた笑顔を浮かべつつだ。
「山の翁をっ仕留められなかったのはコフッ、痛かったですがカヒュ・・・計画に修正はありません」
計画に修正の必要はない。血反吐を吐きながら、笑う、嗤う、哂う、ワラウ、わらう、彼女はそう言って何処までも壊れた笑顔を浮かべるのだ。
「山の民たちはいかがしますか?」
「放って置けコヒュ・・・カルデアが合流するようなら叩くそれだけゲフォ・・・」
首が上手い事繋がらない。
流石の山の翁だ。アルトリアの全力を受け止めておきながら生き抜き逃げおおせたばかりか中々に言えない傷を負わせたげくロンゴカリバーのアヴァロンシステムを機能不全に陥らせたのだ。
回復はアルトリアの今のチートボディを以てしても遅れるだろう。
加えて
神の戦車になるにあたってミカエル、ガブリエル、ラファエル、ウリエルの四大天使を取り込んでいるのだ。
その合神が解けつつある。
加えて首の傷もあるしばらくは動けないだろう。
「卿等に命ずる、マシュとオルガマリーの捕縛を命じる」
「しかし彼らが王の目指す完璧な千年王国には「黙れアグラヴェイン・・・コフ・・・」
マシュは既に盾の騎士を飲み込んだ。彼の様な清廉さと言うよりは傲慢さはすでになく普通の人間として歩み出している。
オルガマリーは終局のⅦだ。人の悪性情報そのものにしかアグラヴェインは見えない。
なぜそんな連中がアルトリアの望む完全無欠の千年王国に必要なのか、システムとして必要なのは理解できるが。
それは我々、ギフトと天使との融合を果たした円卓の騎士こそが相応しいと思うのに。
「これ以上の論議は不要だ。各々任務に戻るように」
「「「「「「御意」」」」」」
そうして円卓勢は玉座の間を後にした。
「ああだからか」
「どうかしましたか? アグラヴェイン卿」
「いや何でもない」
そして一人理解する。王をああしたのはカルデアの皆だと。
ニャルラトホテプが居たら嘲笑いながら言っただろう。
―お前がお前らが理想を押し付けすぎた挙句、寄って集って食い物にした結末だろうがよ―と。
嘲笑っていたに違いない。
いいや否現在進行形で嘲笑っている。
逆恨みも良いところだと。現に、
「私が出なくて良かったのか?」
「ええ、アナタも浄滅する予定ですから」
「出来るのか? お前らに」
「やりますとも」
その頃、玉座の間、相変わらず血反吐を吐き続けているアルトリアの前に一人の美丈夫が現れる。
黒い外套、腰まで延ばした銀髪、そして中性的美貌に2mはあるであろう刀を携えた美丈夫が。
此奴こそ第六特異点担当のニャルラトホテプの化身「セフィロス」
もっとも本物のセフィロスとは違いニャルラトホテプの化身らしく両目の瞳は黄金に染まり皮肉気な笑みを浮かべているが。
「まぁ私は私で好きにさせてもらう」
「好きにすればいいです、最も邪魔すればその身は消し飛ばしますけどね」
「本体はどうする?」
「それは千年王国成就の時に行いますよ」
「できるかな、ククククク」
そう言って影は去って行った。
どうせ余計な所で介入する気だろうことは目に見えていた。
まだまだ聖別は必要だ。
達哉、マシュ、オルガマリーを世界の運用機構として国を作っても元となる人が無くては意味がない。
後はカルデアの良き人々も回収せねばならないがこちらは目途がついた。
カルデアの座標もアルトリア・リリィがこちらに来る際に確保済みだからである。
「後は案山子共が暴走しないかどうかだ」
今のアルトリアはかなり弱まっている事に違いはないのだ。
アグラヴェインの報連相しない私情たっぷりの暴走やら正しさの奴隷であるガウェインとパーシヴァル、どこか今一信用できなさそうなガレス、そして狂犬のモードレッド。
特にモードレッドにカムラン再現されたら堪ったものではない。
「まぁいい、どのみちチェックメイトですカルデア」
そう言った意味では第四次聖杯特異点は助かったとも言える。
なにせ丁度良く彼らが疲弊してくれる特異点だったからだ。
百鬼空亡の影もいい仕事をした。おかげで楽に事を運べる。
山の民の動きが若干不安だが、ハサンの最大戦力である山の翁はしばらく身動きが自分と同じように出来ないだろう。
最も回復力で言えばアルトリアの方が上だ。
四大天使を身に宿し最果ての女神となった自分の方が。
そして玉座の間に狂った女の泣き声の様な笑い声が響き渡るのだった。
カルデア、時間内から前回の第四次聖杯戦争特異点から強行軍です、皆ヘトヘトの状態ですが。
強行しないと特異点がすっ飛ぶ寸前ですからね早期解決しないといけません。
偽十字軍? オジマンとアルちゃんの激突の余波と天使たちによって殲滅されました。
偽リチャードは人の形っした塩に変換されています。
という訳でパーフェクトアルちゃんVSじぃじ、痛み分け。
と言ってもアルちゃん殺し切れず、たっちゃんも奪還出来なかったからじぃじの判定負けですかね。
晩鐘は鳴ったけれども人理君的には第二プラン妨害されたのでじぃじの冠位ボッシュートですね流れ的には。
お陰でORTと同じく死の無い体のアルちゃんに死がエンチャント出来ました。
最も時間で解決できるからマジで些事だけどもね。
という訳でアルちゃん&じぃじ現在行動不能です。
と言うかチートもりもりオリ主染みたパーフェクトアルトリアにしてようやく勝ち目が出て来る(勝てるとは言っていない)じぃじってなんなのさ。
次回カルデア第六特異点に今回たっちゃん抜きで突入するの巻き。
たっちゃんのサモライザーはマシュが今回装備します。
今回のニャルの化身 セフィロス、略してニャルロスでお送りします。
多分第六特異点最終決戦前にマシュにちょっかい出してくるかも。
あと今回もおビール様パゥワーと深夜テンションで書けただけなので次回こそ遅れます!!本当ですからね!!