Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです 作:這い寄る影
サミュエル・ヒューストン将軍
チェイテピラミッドアズライールの廟は人でごった返していた。
誰も彼もが聖別から逃げてきた人なのだという。
噂で堅牢な都市があるからと言う話であった。
その噂によってチェイテピラミッドアズライールの廟の城塞は堅固な物となっている。
されど山一つを城塞化したのだ。
山頂にあるチェイテピラミッドアズライールの廟へと行くには時間が掛かる。
最も路面は整備されアスモデウスと馬で駆け上がっていく程度は出来るのだが。
恒例の買い物である。開かれた青空市場でカルデアは食料をなるったけ買い込んでいた。
前も言ったように金には困らぬ故にだ。
第一に特異点時代よりもはるか先にあるカルデアの貯蔵技術の方が優れている。
買える時に買って置かねばカルデアの食糧事情は悪化する。
如何に第三特異点で巨大なドラゴン肉を仕入れて第四でルイに大量の食糧を分けてもらったとはいえ。
在るに越したことないし、現地調達で済ませることに越したことはない。
故にオルガマリーの審査眼は厳しい物となっている。
出来の良い物しか買わないのだ。妥協しても其処から値引き交渉だ。
貧乏性と言えばそこまでだが幾らカルデアの財源が膨大とは言えぼったくられる気はない。
財源自体終戦後のカルデア職員の退職金及び達哉、マシュ、オルガマリー自身の経費に当てたいからだ。
誰だって幸せな生活と言うのは望むものだろう。
オルガマリーとて例外ではない。
三人でゆったりとした一生を望む。誰が批判できようか?
第一、一つの大特異点でさえ人の身には余る。
それを5つ乗り越えてきた。
ペルソナ能力やら英霊の手助けが在れとはいえ人の精神の身でだ。
そして6つめの特異点に挑んでいる。
そんなの現代に生まれた
戦闘力と言う類は自分のあらゆる全てが満ち足りてこそ真価を発揮できる。
だがそれを許すほど戦場は甘くはないというのはこれまでの旅で嫌と言うほど痛感出来ている。
故に腹を満たし合間合間に休息をとるのだ。
「あー重い」
「所長、やっぱり私が」
「肩凝る程度だから良いのよ」
そう言うやり取りをしながら四人は山を上がっていく。
目指すべきはチェイテピラミッドアズライールの廟である。
買った物は必要最低限残してカルデア送りで荷物も少ないが。
やはり規格外超重量バイクのアスモデウスは重い、こうやって引っ張るのは魔術師でさえやっとこさだ。
一重に高ランクのペルソナ使いだからこそ肩凝る程度で済んでいる。
マシュが変わろうかと提案してくるがペルソナ展開してないと歩けない奴が何言うのかとやんわりオルガマリーは断った。
「あのマシュ殿に何かあったのですか?」
トリスタンがマシュに出会ったのはチェイテ特異点での出来事である。
あの時は五体満足だったし英雄の力を感じられていた。
今はそれがないどころか下半身不随であり自動走行車椅子に乗っている。
感じられた英雄の力も別物に変貌していた。
達哉やオルガマリー達ペルソナ使いに近い物を感じ取ったのだった。
「まぁ色々あってですね。私は今、デミサーヴァントではなくペルソナ使いですんで」
「そうだったのですか・・・」
「デミサーヴァントだった頃より力を出せますが、その代償です下半身は」
もう無茶苦茶である。そうマシュの肉体は無茶苦茶だ。
下半身不随程度で済んだことが奇跡なのだから。
何故なら己が命を繋ぐ盾の騎士の力をペルソナ化し、シャドウを受け入れたことによって肉体に適用できない負荷を生むスキルの会得。
それでも足りず、緊急時は劇薬の投与で。
現在薬抜きすら出来ていない。
「でも気にしないでください、私が選び私が走り抜けると決めたのですから」
されど後悔はない。覚悟は既に決まっているのだから。
故にトリスタンは頷き羨望の眼差しでオルガマリーとマシュを見る。
これ程の覚悟があるのなら自分が口を挟むべきではないとしてだ。
そしてチェイテピラミッドアズライールの廟の入り口前にたどり着く。
門番は居らず。カルデアが来たのかと察知して門が自動的に開きエリザベートが待っていった。
彼女もボロボロだった。色々あったのだろう。
「久しぶりってほどでもないわね・・・」
「ええアナタも巻き込まれて大変そう」
「ホントいい迷惑よ、さ上がって。皆が待っている」
されどそれを加味してもエリザベートは肉体的にも精神的にも疲れ切っている感じだった。
初代山の翁との交渉は上手く行った。
されどここは何度も天使と円卓の軍勢に襲われている。
幸いネームドは出てこなかったがそれでも数が数だ。
守り切るには骨が折れた。加えて太陽王との接触である。
自分の城にピラミッド落とされた挙句に負けたくせして相変わらず偉そうだった。
そして事態は悪化の一歩を進み続け、最早塩の天獄ではないのはこの山の民の領域だけとなっている。
そこで初代山の翁が晩鐘は鳴ったとして出陣。
単騎でキャメロットに乗り込み、アルトリアに痛打を与えることに成功したが。
彼女もまた想定以上の化け物に成り果てていた、最果ての女神にして神の戦車、天使の統括維持機構、宝具を全て融合したソレに、東洋系剣聖の技量とかいう怪物に。
だがそれまでして初代とは互角だった。
それだけ初代山の翁が規格外すぎる訳だが。互角であった故にアルトリアを殺せずカルデアから拉致されたであろう達哉の奪還も叶わず痛み分けで逃げるしかなかった。
「グランドさえ痛み分けって・・・相手はビーストなのかい」
「否、アレはタダの哀れな幼子よ・・・故に怪物となったものでしかない人類愛すら持っておらん」
ロマニの治療を大人しく受けつつ山の翁は言い切った。
そう、彼女は人類愛を持ち合わせていない。ただ一集団に懇意を寄せているだけだ。
おもちゃがないからと駄々こねている幼女と変わりがない。
故に敢えて言うならエクストラクラス、エンシェントエンジェル。あるいはエンフォーサーというイレギュラークラスである。
最もそうしてしまったのはカルデアは親愛と言う概念でアルトリアを怪物にしてしまったと言っても良い。
まぁそれでも大部分は円卓が彼女を食い物にしたのが悪いのだが。
「そうですか・・・」
「気にやむなかれ、マシュ・キリエライト。少なくとも彼女は救われていたのだ。しかし影に当てられた」
そう真実、精神性だけ人間に戻れたのは記憶喪失と言うショックもあるにはあるがそこからカルデアの皆が引き上げたからこそアルトリアは精神性が人間に戻れたのだ。
真実救われたのだ。だが同時にそれは一時的に精神が弱くなっているのと一緒だ。
例えて言うなら骨折が治りたての所に足を引っ掛けて転ばせて同箇所を再度骨折させるような物。
ニャルラトホテプからすれば実に容易い手段だしアルトリアを発狂させるなんて赤子の手をひねるのも当然の如しである。
人に通りものの様に当たり道を踏み外させる。そのタイミングと機会を作る手腕に関しては右に出る物は居ない。
なんせ勝ち筋が本当に全てを受け入れ尚も足掻くという超人論を実践するしかないのだから。
現状の達哉も大人たちの啖呵がなければ二度目の敗北を喫し世界をまた滅ぼしていたかもしれない。
だがそれよりもだ。暴走しているアルトリアを止めなければならない。
一体どういう手法と目的でやるかは分からないが、達哉、マシュ、オルガマリーを欲していることから
明らかに世界をすっ飛ばす気満々である。
そして技量と力でも最上位の初代と互角とくれば初代の力添えは必要となるだろう。
「・・・初代殿、体改造しすぎ・・・ちょっと僕じゃ手に負えないなぁ・・・」
ロマニは初代を見つつそう言う。
内臓を掻きだし幽玄谷の死と同化して、
最早、霊基ですら初代は人の呈をなしていない。
人体的治療は不可能に近かった。
精々が傷口をエリザベートの様に強引に縫合してやる位しか手段がない。
「回復スキル掛ける?」
「抗う者よ、さすがにそれしちゃうと我死んじゃう」
「・・・死と同化した奴が死ぬとはいったい・・・」
「純粋に治療スキルは反転するのだ・・・」
オルガマリーの提案に速攻で首を振るう初代。
それも当たり前だった。
初代は死と同化しているゾンビの様なものだ。
其処に回復スキルを掛けたら逆にダメージにしかならない。
それならと、
「じぁあ闇スキルならどうよ」
「ぬぅ・・・それなら試してみる価値があるが幽玄よりも死を濃く出せるのか?」
「ツィツィミトル マハムドバリオン」
オルガマリーが呼び出したペルソナから放たれる暗黒の影は死そのものだった。
サーヴァントの上位階級なら耐えられるだろうがそれ以下は確立で即死させるものである。
もっとも大概の敵が光闇耐性持っているせいで雑魚散らしにしかならないが、今は違った。
「ぬぉぉぉぉぉおおおお!!」
初代も唸りを上げる死の奔流を浴び、
「感謝する抗う者よ」
「どう致しまして」
傷を癒した。
初代完治である。しかし、
「冠位は既に没収された」
「何か人理に歯向かう真似でもしたんですか?」
初代の言いようにマシュは問いを返す。
ロマニの知識によればグランドの階位は人理に叛いたり。無理をして他の場所に顕現されなければ奪われない筈だと。
「否、今回、アルトリア・メルカヴァーの行いは人理運営第二プランとして動いているらしい。ぬかったわ・・・」
だがしかし今回の特異点は人理さえも第二プランとして認めており、冠位の出撃を一切認めていない。
故に晩鐘が鳴れど初代の出撃は越権行為としてしか認められず。
グランドアサシンの冠位を没収された訳である。
「人理が認めているですって?!」
「そう言わなんと話の辻褄が合わん・・・第一にアルトリアが言っていたことだ」
「「・・・」」
そう言われてはオルガマリーもマシュも沈黙する他ない。
もう多数の干渉を確認している。彼らが良き良い未来の提示をしたのなら、
人理は乗っかることくらいわかっていたからだ。
「アマラ宇宙にでも行く気ですかね? アルさん・・・」
「馬鹿言わないで、座標も無く、達哉のいた宇宙は滅んでいるはずよ」
そう第一に座標がないし達哉のいた世界は滅んでいる。
実際は達哉と言う無色のコトワリを使って自分の思想を世界法則に当てはめつつ、
達哉を座標としてこの特異点事カルデアも巻き込んで打ち上げるという無理無謀は。
「それなら我が王から聞いている」
ランスロットから説明された。
召喚初期に聞かされていたからである。
アルトリアの狙い、それは時空間があやふやな特異点の特性を利用し、
達哉の座標に滅びる寸前の達哉の生まれた世界に干渉しつつ無色のコトワリを利用し自身の理を覇道として広げることにあるのだという。
だがそれでは不完全であり、故にオルガマリーとマシュを捕えて世界のシステムに組み込もうとしているのが狙いだという事をランスロットが語る。
「・・・じゃぁこの世界は」
「我が王は見捨てる気でいらっしゃる」
オルガマリーの問いにすまなそうにランスロットは言い切った。
最早価値すら見出していないのだと。
人理焼却犯、ハハ、バロス。私は私の世界を築くから勝手にやっていろの精神と言う奴だった。
「「―――――――――」」
もうオルガマリーもマシュも何も言えないでいた。
なんでどいつもこいつもこうも極論に走りたがるのだろうかと。
アルトリアも自分たちの事なんか放って置いて妖精郷に行ってしまえばよかったのにと思う。
何故なら、彼女は既に走り切り次のランナーにバトンを渡しているのだ。
もう休んで良いのだ。その権利が彼女にはあるから。
「もう斜め45度チョップの刑ですね」
「そうね馬鹿をしでかす友人を止めるには丁度いい刑よ」
溜息吐きつつマシュはそう言ってオルガマリーも同意する。
だってアルトリアは友達だ。
友達が阿呆な事をしているならぶん殴ってでも止めるというのが友の役目という物だろうから。
故にランスロットとトリスタンはこう思うしかない。
孤独な王を孤独から解放し友となってくれたカルデアマスターズ三人、そしてカルデアの良き人々。
なぜあの時代に彼らは居なかったのだろうかと。
居たらもっとよりよい結末になったかも知れないと思わずにはいられなかった。
「あのね・・・ブラウン管テレビじゃないんだから」
「同じような物です。道端でダイナマイトを弄っている友人がいたら殴ってでも止める。それが友でしょう?」
「マシュ・・・君、シャドウを受け入れてから性格荒くなっていない?」
「無垢は救いです。知らなければ無いのと一緒、でも現実は違います無垢ではいられない。私は私として無垢を捨てて歩くだけです」
もうあの殺意というシャドウを受け入れた時点でマシュは人造人間かつ無垢ではなくなった。
人間らしく成長したのだ。
白痴は罪だが同時に救いであることを捨て成長したのである。
だからこそ十全にウリエルと言うペルソナ、そして固有スキルのイノセントダストを使えるのだ。
それはさて置き、
「ぶん殴りに行くにしても・・・相手が私達狙いじゃぁねぇ・・・」
「第五の再演ですね」
デヴァユガシステムに接続させるためにオルガマリーを本拠地に誘引したのと同じ状況になるという事だ。
勝てなきゃ世界がすっ飛ぶ。
つまるところ第五の再演、敵の主要接続装置に自ら手を突っ込むという状況に他ならない。
「まぁガウェインは仕留められる、ロマニの情報が正しければね」
「根拠は?」
「まず私のシュレディンガーなら確実に筋肉無視して首飛ばせる。宗矩なら兜割り使えるわ。肉大強度を無視できる。書文なら八極拳浸透勁を叩き込み筋肉の鎧を無視して内臓に直接ダメージを与えられる」
主要時間軸ではあれほど苦戦した相手だが、この時空では対抗札が用意できていた。
ではなぜ、先の逃走戦でそれをしなかったのかと言うと。
単純に上空から射撃されていたからである。それなら対抗もくそも無い訳で。
それよりも問題があった。
パーシヴァル、ロンギヌスの槍の使い手である。
ロンギヌスの槍の効力は達哉の記憶を見てその壮絶さを知り、いざ振るわれたら理不尽極まるものである。
舞耶の時は間に合わなかった。達哉の時は既に治療手段を編み出していたが第一で傷を傷で上書きすると言った荒治療に皆が絶句したものだ。
故に致命傷喰らったら即アウトなパーシヴァルの方が厄介とも言えた。
なおモードレッドはまぁあれだ。マシュで十分に対抗できる。
他のサーヴァントでも十全に対応可能だろう。
だがそれに待ったを掛ける初代。
「彼奴らは天使とも同化している、舐めてかからぬ方が良い」
「天使って・・・魔術業界じゃ」
「そう汝ら魔術の徒では力を型に当てはめるために天使の概念を使うが、彼奴等が同化したのはアマラの宇宙に存在する本物の天使也」
「――――――」
ゼット、ルイ、シン。
そしてベルベットルームの住人と太極の白と黒が混入したことによって。
悪魔は無論、天使でさえ存在することになってしまった。
最悪である。
どっかの馬鹿が外宇宙のアマラを観測したせいでこうなって居るのだから。
この時空は悪魔も天使も架空の物ではない。
本物が溢れている。
「もっとも何が融合したまではわからぬがな」
初代はため息交じりに言うしかない。
最早、この時空は連中に浸食されつつあるのだから。
「そう言えば他のメンツは・・・」
「ピラミッドの中で休息しておる、狙い撃ちにされた故な」
「・・・アルトリアもロマニの様に主要時間軸の知識を持っている?」
そう主要人物は全て狙い撃ちにされている。
アーラシュも傷を負っている。
まさにロマニの様に事前知識が無いとできない芸当と采配だ。
「だがここからは違う」
ロマニがトリスタンの左腕に霊子義手を繋げつつそう言う。
そう此処からは違うのだ。カルデアが来た以上脚本はニャルラトホテプに移るだろう。
事前知識なんか役に立たない領域に足を踏み込むのだ。
「ところで事前知識だと、ハサン壊滅状態だった筈よね」
ロマニの知識だと残ったハサンは三人だった。
しかも現在進行形で静謐のハサンが捕まっているはずである。
「確かに三人のみですが静謐殿は本当にギリギリのところでアーラシュ殿に助けられましたので此処にいますよ」
トリスタンがそう言う。
やはり脚本が違うみたいだ。
と言うか主要時間軸でも平押し出来たと言うのに、なぜか始末されず拷問されていた謎である。
「よし骨に神経系、筋肉繊維、皮の縫合完了」
ふぅと一息ついてロマニがトリスタンに新たな左腕を付ける。
無論繋げたばかりでビグビぐとしか動かないが。
「後は所長頼みます」
「了解っと。ピクシー、メディアラハン」
そこからさらにオルガマリーがペルソナを使い回復させ腕を完全結合させる。
達哉も今の右腕にしたときにやった由緒正しい方法であるし効力も証明されている。
更には無理の効くサーヴァントだ達哉の時の様に経過観察は必要ない。
「おお!! これはすっごい、是非に他の人たちにもお願いします、アーラシュ殿は両目が、ランスロット卿は左手の腱が、それに他の者も・・・」
「全員此処に呼んできて!!」
まさかの医療祭り再びである。第五に続きまたもやという奴だった。
エリザベートが簡易的治療をしていた為、切断系の施術にならずに済んだのだが、器官養殖が手間だった。
「ありがとよ、お医者さん」
「気にしなくていいよー」
「疲れたー」
「私、専門医じゃないんだけど・・・」
手術にはエリザベートも参加していた。
第五と一緒である。
とりあえず片っ端からの治療だった。
これで十全に部を振るえるだろう。
三蔵法師は肌が一部ケロイド状になっていたが。
「まぁ戦闘に支障はないしね」
との事で治療を辞退していた。
因みにオジマンディアスはアーラシュの両目が戻ったことに大喜びでカルデアを褒めたたえていた。
「ところで食糧問題は藤太さんがどうにかしてるんですか?」
「まぁな」
俵の宝具は宴会宝具だ。
主に美味しいお米を出すが他の物も出そうと思えば出せる究極の補給線維持装置と言っても過言ではない。
「だからアイツは出せねぇ」
「「「ですよねぇ~」」」
アーラシュの同意と同時にこのチェイテピラミッドアズライールの廟の食料全てを俵が賄っているゆえに。
彼は最前線に出せない。
本来なら最前線に出てもらいたい。
当たり前だ。大江の大百足をぶち殺している英雄である。
神秘殺しとして格上なのはヤマトタケルかあるいは吉備津彦命くらいな物だろう。
即ち日本の大英雄なのだから。
しかしだからと言って今先ほども言った通りここの食料事情を支えているのは俵一人なのだ。
彼が退場したら間違いなく詰む。
「トータは前線出せないの?」
そこに体のあちこちにケロイド状の痕を負った三蔵がやってくる。
既に傷自体は言えているが火傷は痕が残る。女性には酷だが。
「三蔵さん・・・」
「心配しないで、まぁ地獄よりはマシでしょ」
マシュの心配にカラカラ笑って言い切った。
彼女もまた大偉人であるし僧である根っからの求道者だ。
「しっかしこれからどうするか」
相手の守りは鉄壁、攻撃も完璧とくればどうするかとオルガマリーは頭を抱える。
第五ではインドと言う切り札があった。
だが今はない。
「それなら余の方で準備を進めている。カルデアの勇者たちよ」
だが心配しなくても良いというのはピラミッドの玉座から出てきたオジマンディアスその人だった。
「意外と勇者基準低くない? 私もマシュもロマニもタツヤもカルデアの皆も何処にでもいる普通の人間よ」
「ならなぜ? アレに勝てた?」
アレとはニャルラトホテプの事だろう。
「誰でも出来る事よ。影の無い人間なんているもんですか。それに愛しい人と軽食屋とバイク屋やりたかったから足掻いた結果よ」
「所長の言う通りです。アレは今でも心の中にいるけど抗っただけです。ダメと分かっていても」
「ククク」
オジマンディアスは右手で顔を覆い笑った。
「ハァーハハハハハ!! 確かに確かに・・・貴様らの夢を余は笑わんよ、だがアレに絡まれた以上大望だぞそれは!!」
そう、お店を立ててゆったり暮らす。現実では難しいがやってやれないことはない。
カルデアにはその権利と努力があり軽々と成せる夢ではあるが。
ニャルラトホテプに絡まれた以上、末路は英雄とほぼ決定している。
だが英雄なんてものは御免だだからこそ抗う普通の人間として。
「やはり余の目に狂いはないな、貴様らは英雄ではなく勇者だよ」
「そう」
「まぁそれは置いておいてだ。今急ピッチで我が神殿とそれに融合したチェイテ城ごと、空中戦艦にして連中の居城に突っ込む計画をしている」
「それはすごい!! 戦力を一点投入できます!!」
オジマンディアスの計画にマシュは驚愕しつつオルガマリーの方を見ると。
オルガマリーは納得した様子だったのだが、
「えちょ、私聞いていないのだけれど」
エリザベート呆然としている。
「この世の遍く神殿は余の物、即ち貴様の神殿も余の物だ」
「私の先祖っが、一から作ったから私のしろよぉー!!」
「ふははは!! 余の物は余の物、貴様の物は余の物だぁー!!」
「死ねぇ!!」
「無駄よ!! このチェイテ城も既に余の神殿に組み込まれているからなぁ!!」
エリザベートのドタマカチ割り攻撃を受けても即座に再生しながらオジマンディアスは笑いながら言った。
『歓談中の所悪いが・・・聖都から多数の魔力反応が出たことを検知』
「そちらで確認できる?」
『全員濃い魔力持ちだからね、このフラットの中でも察知できる』
「総員一端山を下りて迎撃態勢!! 対軍とか対城とかぶっ放されたらたまったもんじゃない!!」
「雑魚どもは任せておけ、デンデラの大電球で薙ぎ払ってくれるわ」
「・・・あのなぜ私達が来る前はそうしなかったので?」
「・・・あの忌々しい槍剣で薙ぎ払われたのだ・・・」
マシュの疑問にオジマンディアスはそう言いつつ顔を背けた。
「そんなこと良いわ。兎に角迎撃態勢急ぐわよ!! マシュは此処でオールコールして」
「私は待機なんですか!?」
「そうよ、もしもの時の最後の守りはアナタしかいないよ。もしもの時は頼むわね」
「所長・・・」
もしもがあるかもしれない。
故にマシュは残していく。
「では我は先に出る」
そう言って初代は姿をくらませ。
ランスロットとトリスタンも馬を取りに馬小屋に走った。
アーラシュは此処からでも狙撃できるので待機だ。
そして籠城戦が始まる。
「なぁ所長」
「なに長可」
「モードレッドは俺が抑えるって事にしちゃくんねぇかい?」
「ふむ、身体強化されているし聖剣連射可能だけど。出来るなら」
「安心しなぁ。策は容易してあるぜ。要は逸らせればいいんだろう?」
「なら期待しているわっと、始まったみたいね」
赤い閃光が直接チェイテピラミッドアズライールの廟を狙う。
それは山事消し飛ばしかねない威力だったが。
飛翔したマシュがラウンドテーブルのロードカルデアスで受け止めていた。
散々、これ以上の火力を受け止めてきた彼女である。
余裕とまではいかないが防ぎきって見せた。
その勢いでオジマンディアスの号令の下、デンデラの大電球による大火力とアーラシュの狙撃が空中の天使共を薙ぎ払う。
「総員突撃ぃ!!」
オルガマリーもアスモデウスのスロットルをフルにして軍勢と共に突っ込む。
「「
此処に至って、マリー・アントワネットも優雅さをかなぐり捨てて。
クー・フーリンとの合体宝具で粛清騎士たちをミンチにしつつ、後ろに乗せたサーヴァント達を適切配置していく。
更に・・・
「徳も無く」
漆黒の影が誰にも感知されずに。
「証も無く」
粛清騎士たちの首を
「教えも無く」
斬り飛ばしていく
「では死ねぇい!!」
其処にあるのはただ殺すという無慈悲ながら慈悲に満ちた刃だった。
「こんの!!」
モードレッドが漆黒の風に向かって剣を振り下ろさんとする。
がしかしその腕は振り下ろされず、上空に赤い閃光が走るのみだった。
「テメぇ」
「うるせぇ死んどけやカス」
「っがはぁ!?」
モードレッドの両腕に十文字槍形態の人間無骨の刃が食い込む。
そう振り下ろされなければ怖くはないのだ。
加えて通常なら円卓クラスの鎧を貫くのは難しいが。
振り下ろす勢いと突き出す勢いが乗れば骨くらいには到達させることができる。
そのまま左腕で長可は人間無骨を維持し。腰の刀を抜き放ち一閃。
間合い的に腹筋と内臓を切った程度で両断は出来なかったが致命傷である。
だがしかし、モードレッドの傷が癒えていく否再生していく。
「マハジオンガ!!」
「ちぃ!!」
そしてさらにアマラのスキルまで使えると来た。
これには魔力放出も合わさって。直撃を受けたら長可でもただでは済まない。
刀を鞘に納め、回避に専念しつつ煽る。
何度も言うがカタログスペックでは長可に勝ち目はない。
故に煽りと挑発を入れて冷静さを奪い取るのだ。
「テメェオレにこんだけやっておいて生きて帰れると思うなよ」
「ハッ主人を敗北者にしていまだに自分を忠義者だと思ってる返り忠女に俺が負けるかよ」
「・・・取り消せよ」
「なにをだ?」
「俺が女という事と父上が敗北者ってことをだよ!!」
長可そう言われて天を一瞬仰ぎそうになる。
いや自分も狂犬って自覚はあるが、モードレッドがまさかここまで酷いとは思っていなかった。
裏切ってアルトリアの理想を踏みつぶして止めを刺した自覚すらない。
「取り消すつもりは断じてねぇ」
「テメェェェェエエエエエエエエエエ!!」
「動きが単純なんだよ!!」
今度は振りかぶった瞬間に人間無骨でクラレントを弾き飛ばすそのままCQC交じりの組手甲冑術に移行。
モードレッドの喧嘩殺法? そんな物素人の御飯事だ。
無形の型と言えば聞こえはいいが素人仕事、真に無形の構えを行える書文、宗矩、アマネの技量に比べればそう言う評価にもなる。
幾ら素養が優れていても正式訓練を受けていない不良如き長可の敵ではなかった。
それにモードレッドの限界値と言う名の底も見えた。
だったら胴と首を物理的に分離してしまえばいい。
魔力放射などさせるかと人間無骨を短く握り、チェーンソー部分を起動。
そのまま首を落とさんとして。
いやな予感が脳裏によぎり長可は転がった。
刹那の差で長可の首があった場所を白銀の閃光が走る。
「何をしているモードレッド」
「テメェ!! セフィロス!! 来てたんなら手伝いやがれ!!」
「はぁ、私が出るまでも無いと言ったのは何処の騎士だったか・・・」
溜息交じりに美しい銀髪を腰まで延ばした美丈夫ことセフィロスは身丈を超える長刀をだらんと構えながらモードレッドの在り様にため息を吐く。
同時に長可に走るのは悪寒だ。
相打ち狙いすら許してくれないであろう技量を目の前の美丈夫は持っている事に勘づく。
「まぁいい、下がれ、今回の侵攻作戦は失敗だ」
「まだやれる!!」
「目的を忘れたか? 王は城壁を破壊して来いと言ったのだ。カルデアのいる神殿ごとぶち壊せとは命じられていない」
「あんな奴らいなくたって!!」
「それ以上は言わない方が良い、アルトリアは私達に価値なんか見出していないのだから」
そうアルトリアは最早円卓を駒同然の扱いだ。
嘗ての様に信頼なんかしていない。
そして駒が勝手に動くなら聖槍剣を振り下ろすだろう。
「チッ」
そう舌打ちしつつモードレッドは下がる。
そして長可とセフィロスが対峙しようとしたときに。
「下がっていろ」
漆黒の風が走る。
初代が上空から奇襲を仕掛けたのだ。
刃と刃が擦れ合い風切り音を鋭く流す。
「こやつの相手は我がしよう。貴殿はあの哀れな子犬の追撃を頼む」
「恩に着る!!」
そういってモードレッドの追撃を長可は開始。
「何もない物を信仰して死と同化し何か得たかな? 得ていないなら後続たちと同じだな、なぁ山の翁?」
「それは貴様の語ることではない」
銀と漆黒がぶつかり合う。
そして問題のパーシヴァルも・・・
「くっ」
「はっ甘いなぁ!!」
クー・フーリンが全力で抑えていた。
霊基自体はメイヴのわたしのかんがえた最強のクーちゃん+魂自体はクー・フーリンなのである。
全盛期の彼に近い実力を発揮できるのだ。
更にそこにカルデアでの訓練が加わっている。如何にギフトを持ち天使と融合したからと言って、
円卓単騎では分が悪い。だが相手はロンギヌス持ちだ。
慎重に越したことはない。
モードレッドは長可に追い回されており、セフィロスは初代に抑えられ、ガレスは完全に討ち取る気のランスロットとトリスタン相手に遅延戦闘している始末。
粛清騎士たちは織、宗矩、書文、百貌、呪腕にこっそり始末されて行き、さらに孔明が宝具を展開しつつマリー・アントワネットが引き殺しを敢行し大混乱だ。
上空の天使はアーラシュの狙撃連射とオジマンディアスのデンデラの大電球とマシュのイノセントダストで薙ぎ払われていた。
久々の圧倒的戦果である。
かと言ってカルデア側もギリギリだった。
なんせ兵士がいない故に無理な追撃は出来ないと来た。
カルデア側も勝ちきれないのである。
百貌が無理して分裂して穴埋めし、オルガマリー込みの戦力で三国無双しようが敵数が多すぎる。
現に幾らデンデラの大電球とかイノセントダストとかメギドラオンで薙ぎ払おうが数が一向に減りやしない。
円卓押さえているが、じりじりと防衛線が後退する。
だが向うも限界だった。
「撤退だ! 撤退しろとの命令だ!!」
パーシヴァルが叫ぶ、ついに円卓勢の攻勢限界が来たのだ。
当初こそ、クラレントで敵戦力を削るはずが、
こうも無双系乱戦に巻き込まれてはその効力も発揮できず。
第一モードレッドは長可に追い掛け回されている。
上空の天使たちもデンデラの大電球とイノセントダストで消し飛ばされ、
何度も言う通りそれで攻勢限界がきた。
「総員に通達、追うな!! いいわね振りじゃないわよ!! 追わないで!!」
こっちも限界だ。
追撃戦は無しである。
と言うかオジマンディアスの神殿を空中戦艦に見立ててかち込まんとしている訳だから下手に追撃戦する必要がない訳で。
「マシュ、そっちの状況は?」
『全員無事です!』
「よくやったわ。とりあえず全員連中が地平線上の彼方に消えるまで待機!!」
そうやって円卓勢が消えるのを待った。
そして再度チェイテピラミッドアズライールの廟に戻り、
「はぁ酒よ酒」
オルガマリーはため息を吐きつつベルベットルームでワンカップ大関と弁当を購入し飲んで食べたりしていた。
流石に料理する気力もわかない。
因みにマシュは弁当とソーダである。
「そう言えば、マシュ殿は飲まんのかい?」
俵が聞いてくるが、
「ええと私、下戸な上に酒乱なので・・・飲むの禁止されているんです」
マシュは自覚がある為そう説明した。
羅生門の時は酷かった。酒気に当てられ大暴走。
寧ろカルデア側がマシュを気絶させるまで敵と共闘し殴る事態にまで発展したのである。
そう言う事情もあってか何度も述べた通りマシュは酒禁止だった。
彼女が酔っ払ったが最後、今はイノセントダストがある。それをぶん回すに決まっている。
そうなれば計画はご破算だ。
「しかし弁当で良いのかね?」
エミヤが尋ねる。彼は俵から出してもらった食材で手料理を他のサーヴァントに振舞っていた。
「今はこうなんかコンビニ弁当が恋しくてね」
「所長に同意です。エミヤさんにはすいませんがそれ以外は受け付けないと言うか」
「なにその気持ちわかるとも、まぁ警戒は私達で何とかしておくから、マスターたちはゆっくり食べて飲んで寝たまえ」
そう前の第四次聖杯戦争特異点から休憩なしなのだ。
疲れもたまっているだろうし、何より精神的主柱の達哉が連れ去られた今、
少しでもゆっくりしていて欲しいと思うのがエミヤの本心だった。
「二人ともベッドメイク出来たから。眠たく成ったら寝なさいよぉ」
「あとこれ軽めの精神安定剤ね、寝る前に飲んでくれ」
エリザベートも気を使って二人分のふかふかベットを用意。
しっかり睡眠取れるようにロマニも軽めの精神安定剤を二人に手渡す。
そして夜が更けていった。
今年最後の更新となります。
モーさんあわや長可に討ち取られかける。
長可、モーさん大嫌いです、そりゃ、光秀を思い出させるんで余計にですね~
ザ・ボスの様にできれば長可も殉教として最高の戦士として認めてくれたんですが、モーさんのやってることって周り巻き込んでの癇癪ですからね。そりゃ長可も認められないし認めちゃいけないんですよ。
と言うか、攻め込んで来たモーさん、パーシヴァル、ガレスともに地味に命令違反してるんですよね。
アルちゃんが行ったのはあくまで山の民のチェイテピラミッドアズライールの廟の防壁破壊しろと言っているんで。
誰もオルガマリーやマシュ殺せと言っていない件なので。
もしどちらかを殺せていたならアルちゃん大発狂して三人殺してました。
アルちゃん「だから本拠地事カルデアを消し飛ばそうとするな!!何度も捕縛しろって言ってんだろ!!」
モーさん「(´;ω;`)」
そして第二部、一部を除いて自分の予想通りでした即ちニャルの計画に狂いなしですねー。
え?なに? オルガマリーがカルデアスに突っ込まないと詰むって?
安心してください。マリスビリーが気づかない様に既にニャルフィレが色々仕込んでます。
原作所長よりもある意味凶悪な反存在を。
ホントペルソナを主題にしておいてよかった。別の可能性の自分との対峙もまた自分自身との対峙ですからね。
原作ではペルソナ的なENDでしたけれど。今作の失敗時空は原作駆け抜けたけど誰かが一人ぼっちになるというハッピーじゃなくてバットですけど。
ですからそれらを見せつけられてアルちゃん発狂して。
自分で愚かなことをしている余計なお節介していると理解した上で天獄作ろうとしている訳ですしね。
本作では第二部で終わる予定なので。
第三部があろうと第二部で終わります。
今後のスケジュール的には第一部終わらせたら一年間ぐらい筆をおいてから1.5部からの二部となりますね。
マリスビリーの思想を見た当初のニャルフィレ閣下四文字
ニャル「うーん、落第!! 自分の考える超人論とは違うしな!!」
フィレ「どう考えても落第、ニャルの言う通り超人とはほぼ遠い」
閣下「あのさぁ・・・それもう人間である必要なくね? それじゃ人工筋肉式のマネキンでいいじゃん」
四文字「頭ウチの四大天使かよオメー」
まぁ評価が散々ですね。
だってマリスビリーの言っている事ってお人形遊びと変わりませんもん。
だからニャルフィレの仕込みに気づかずこうなるわけで。
ニャル「マリスビリー本当に試練場作りの職人としては腕良いわwww、ちょいと突くだけで面白いレベルで転がってくれるもんwwww」
■■■■■■「ニャルと契約してよかった。傍観と失意の1000年。そしてそこからの100年もの間分解され解体される日々、ようやく可能性が見えたわ。私と同様に彼らの描く超越譚の贄となれ■■■・■■■■■」
はい見事にマリスビリーはニャルに嵌められました。
多少の想定外もありましたがこれは達哉、オルガマリー、マシュの物語なのでね。
プロットに問題はないですね。
よかった~(白目)
本当に当初から■■■■■■放り込んでいる前程で話組んでいてよかった~!!
危うくエタるところだった本当に良かった・・・
それと今年で第一部完結出来ずすいませんでしたぁぁあああああああ!!
え? もうかれこれ六年になんの?
当初は三年程度で終わる予定だったのに・・・
あと武内社長や奈須きのこさんやFGOに関わっていた皆さんお疲れ様です、あなた方の物語をサービス開始からあなた方の物語を追えて幸せでした。
という訳で少し早いですが皆さん良いお年を~