Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです   作:這い寄る影

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雌の毒蛇の毒液は、 雄の毒蛇のそれよりも、もっと有毒である。

サミュエル・バトラー


四節 「やっとこさの休息」

凄まじい金属音の擦れ音が響き渡る。

 

「シャア!!」

「フッ!!」

 

チェイテ城の中庭でマシュと初代の模擬戦が行われていた。

理由はただ一つ、マシュ自身、ウリエルを今一上手く扱いきれていないことに起因する。

ぶっちゃけ運用がほぼメリケンサックだ。

そう運用が成り立っていないのである。

こんな鉄塊の運用方法なんてカルデアの誰も知らなかったのだが。

今は折角、大剣を扱う初代と言う一種の極みが居るので習っておけという事になった。

 

「まったく薬抜きも完了してないのにねぇ・・・」

「マシュさんは何か薬剤でも?」

 

オルガマリーがサンドイッチの入ったバスケットを持ちつつ苦笑しがらいう。

そうマシュは何度も言う通り劇薬投与済みだ、本来なら一週間程度の休みと薬抜きが必要になる。

ロマニがいることで薬抜き自体は出来ているのだが肝心の休息が出来ていない。

体を動かさないと安心できないんだろう。

それはオルガマリーも同じだった。

だからこうしてエミヤと一緒に料理なんてしている。

 

「静謐は本当にロマニの治療を受けなくて良かったの?」

「はい役目がありますから」

 

静謐の宝具は全身版毒手の様なものだ。

その毒は体液にすら及ぶ。

故に汗などを嗅いだだけで昏倒するが、

アーラシュやら初代にマシュ、オルガマリーにオジマンディアスは毒耐性あるいは無力化出来るので問題なく接することができる。

さらにロマニの手に掛かれば今回だけ全身の毒抜きも可能との事だったのだが、

自分にも役目があると言って断った。今の所被害も出ていないし、初代が睨みを利かせているからである。

そうもしも毒抜きなんて頼んだら静謐は首ではなく胴を真っ二つにされていたであろう。

ある意味、初代がハサンの首を切るという事は役目を終了したという名誉であるがゆえに。

自らの業と在り方を否定し元の自分に戻れるなんて案安な行動をすれば、

初代はそれはハサンの在り方ではない、つまるところ失格としてそこらの雑兵の如く切り殺すのは目に見えていた。

それだけは静謐にも我慢ならない一線だ。やり遂げたことをなかったようにされるのはたまったものではない。

最も呪腕も百貌も嘗ては存在していたハサンたちも聖杯戦争に出たのでお叱りは受けた。

誰もがエリザベートが単身で初代を説得し自陣に引き入れるという偉業を成すとは思っていなかったからである。

 

「と言うか、マシュ殿・・・どんだけ先を目指しておられるのですかな?」

 

初代とマシュの剣劇は止まらない。

無論、不利はマシュだ。素手での格闘技なら上を行くだろうが。

剣の腕では初代は宗矩さえ凌駕している剣聖でもある。

それにマシュは全力だが初代は手を抜いて教練しているのだ。

途中、マシュにアドバイスを送る余裕さえある。

それでも付いていけるマシュの成長速度は異様だった。

 

「まぁ寿命と引き換えに遺伝子レベルで改造されたからね彼女」

「自己改造という事ですかな?」

「違う違う、最初から人間兵器として扱うために人間としてあらゆる側面を削り取って製造されたのが彼女。あの糞親父・・・」

 

出来れば普通の人間として生まれて欲しかった。

そうすれば、達哉とマシュと自分自身で普通の人生を送れたのにと瘴気状のオーラを発しつつオルガマリーは思う。

 

「まぁ、事情があったのですよ」

 

呪腕がフォローを入れるが。

 

「人を外見だけのカタログスペックでしか見ていない糞野郎に事情もくそも無いわ」

 

そうマリスビリーは本当に人を電極で動いている人工筋肉式マネキンとしか見ていない。

即ち表示されたカタログスペックが全て。

中身なんてそのカタログスペックに有利不利を翳す者でしかないと思う人間だった。

オルガマリーも人間として成長したがゆえにあの時の問いの意味を理解し父は外見至上主義のくそったれだったというのを理解する。

いやむしろ誰よりも中身を理解できるがゆえに外側を重視したのかもしれないと。

だが今はそんなことどうでも良い事だ。

ニャルラトホテプにフィレモンにビーストに特異点。

解決しなきゃならないことが山積みだ。

一々、厄介事押し付けてくたばった父に対して思う所は遅れた反抗期じみた糞親父程度だったからである。

ぶっちゃけ今はどうでも良い。

目の前の対処で一杯一杯であるがゆえに。

だがマシュの事は許さんと心に決めていた。

絶対、人理焼却が終わったら墓を掘り返してシュールストレミングを放り込み再び埋め戻すと決めていた。

大事な友人に走り切るとかいう覚悟を決めさせたのだ。

オルガマリーにはそうする権利がある。

 

「そう言えば呪腕は普通の食事はとれないのよね?」

「ええシャイタンの影響ですので・・・私の事は気にせず」

「なら発酵食品とか行けるんじゃない? ハイこれ」

「これは?」

「チーズと牛肉サラミのサンドイッチよ」

「これはご丁寧に」

「戦列を共にする仲だからね、これ位は当然よ、ああ食べれなかったら吐き出していいから」

 

そう言って右手でバスケットを持ちながら左手をヒラヒラさせつつマシュと初代へと声を掛けに行った。

 

「添い」

 

自分たちの事で一杯一杯だろうに。

それでも他者への優しさを忘れてはいない彼女らが呪腕には眩しく映る。

それは特別な事ではない当たり前の優しさだった。

そしてそんな優しさに触れてたとえ食えなくとも飲み込むことで感謝しようと思ったのだが。

 

「あ、美味しい」

 

パンも極論は発酵食品だ。

シャイタンも喜んでいる。

という訳で。

 

「兎に角眠いし、マシュは熱入れすぎ。またアマネに締めあげられるわよ」

「はいすいません・・・」

 

マシュはまた第三後みたくなりかけていた。

オーバーワーク仕掛けていた。最も初代がそれを止めたが。

マシュを心配するオルガマリーからは雷が落とされた。

 

「達哉が捕らわれている以上、汝の気持ちは分かる。しかし走っても登山はなせぬ」

 

急ぐ気持ちは分かるが走って登山はなせぬと初代も忠告を行う。

当初は初代直々にマシュの心をへし折る気でいたが、

その必要も無いと初代は安堵した。

一度経験して怒られたら反省する当たり前の事が出来ているがゆえにだ。

 

「それでマシュは止まれたから良いとして・・・翁は食べなくてもいい訳?」

「すまぬが物すっごい食べたいが我は内臓を掻きだしている上に死と同化しているため食べる行為が不要なのだ…吐き出すというのも料理をした貴殿やエミヤに失礼という物」

 

初代は天性の肉体がAからCランクに落ちるほど肉体を改造し死と同化している。

故に消化器官そのものを失っているし食べなくとも最早現象よりなので食べずとも死ぬことは無いし肉体を維持できるのだ。

 

「ここは貴殿らの気づかいを受け取り香を楽しむことで我も楽しませてもらうとしよう」

 

そう言って広場のど真ん中に設置された鍋を見つめる。

サンドイッチに鍋と酒と言う奇妙な組み合わせだが様になっていた。

因みに鍋は俵の宝具から何故か出てきた伊勢海老鍋である。

実に良い香りであるが初代と呪腕は食べれない。

 

「エミヤも伊勢海老には手を出したことがないって言うからロブスター風に調理+日本の味噌スープ風に味付けの鍋だけれども大丈夫かしら?」

「すっごく美味しいよ!!オルガマリー!!」

「そう言ってくれると助かるわ三蔵」

 

三蔵は感激してくれていた。

最新鋭と古代の料理じゃレベルが違うのは何度も述べた通りだ。

嬉し涙流して汁を啜っていた。

 

「ところでそちらの食糧事情は大丈夫なのか?」

 

素材の一部はカルデアが出してくれたものである、酒の調達もだ。

 

「ああ、私とマシュはベルベットルームって言う特殊機能使えるし、第三と第四で大量に食材手に入っているから大丈夫よ」

 

そう食材はウォンやエミヤが工夫すれば中華、日本食、そこにオルガマリーが加わればフレンチにイタリアンと言うレパートリーを回せるくらいには充実しているのだ。

 

「こういう物はなれぬが・・・良いな故郷を思い出す」

 

百貌がそう言って味噌汁を啜る。

ハサンは血脈ではなく、どれだけ本人が優れた技量を持つかで選出される。

故にその血には統一性がない。

教団に入信し一芸を極めた者こそがハサンに選ばれるがゆえにだ。

故にハサンの故郷はイスラエルの遠い土地とかもあり得るわけだ。

最悪、捨て子が拾われハサンになったという経歴持ちも居る。

 

「故に噛みしめよ、百貌の・・・、故郷があるというのは有り難いとな」

「ハッ」

 

初代の言葉にそう言って頭を下げる百貌。

そう帰る場所が残っているというのは有り難い事である故にだ。

 

「しかし大丈夫か? 勇者たちよ・・・余から見ても。そのなんだ疲れておるぞ」

「薬抜きが済んでいないからね。マシュに至っては此処に来る直前に一本キメてるし」

 

オジマンディアスからみてもマスターズは疲弊していた。

そしてオルガマリーから事情を聞けば。まだ薬抜きが済んでいないのだという。

こればっかりはいかんとロマニを横目で見るが・・・

 

「悪いけど中和剤はない。現状薬品関係はこっちも一杯一杯でね」

 

ロマニが落ち込むように言った。

人理焼却前なら豊富な薬剤で中和剤を作り上げることも可能だっただろうが。

如何にサトミタダシでもそこまでディープな薬品を扱ったら警察沙汰である。

故に結構手術用品なんかもギリギリだったりするのだ。

 

「でも敵は待ってくれないんです」

 

マシュがペットボトルを両手で持って言う。

そう、いつだって敵は待ってくれない。

カルデアは此処まで戦力分散と言う愚を犯し続けてきていつも血反吐を吐いて来たマラソンだったがゆえに。

特に精神的主柱である達哉が居ない。なんだかんだ言ってオルガマリーもマシュも一杯一杯であった。

 

「まぁ今は休まれるほうが良いかと・・・」

 

静謐も思わず同情し、気休め一択の答えしか出ない。

誰がどう見てもカルデアはギリギリだったから。

特に今回は一日休憩すらなく此処に突入だ。

いや判断は正しい、無色のコトワリを持つ達哉を使われたならどう転ぶか分からない上に、

人理定礎がリミットを切るギリギリなのだから。

 

「まぁ今日一日くらいはゆったりするわよ」

「あの~料理は・・・」

「趣味だから良いの」

 

今日一日くらいはゆっくりするというオルガマリーの宣言に、

それでもエミヤと同じく厨房で働いているではないかと静謐が突っ込むが、

趣味だからオールOKとオルガマリーが返す。

息抜きの一環だ。料理自体はオルガマリーの趣味であるし労働には入らない。

疲労は疲労だ。第四次聖杯戦争特異点で積まれた疲労はまだ抜けきっていない。

しかも時は待ってくれない。

 

「実際やることも無いですしね」

 

マシュがそう言う。

実際カルデアのやることは殆どない。

アルトリアが支配地域をほぼ占領。

自分たちはオジマンディアスの作る空中戦艦でジャパニーズバンザイカミカゼであるからである。

故にほぼすることはないというのも本当の話だ。

そう言ってほぼ全員と同タイミングでサンドイッチに齧り千切る。

因みに初代は喰えないのでお椀に並々注がれた伊勢海老の味噌汁の湯気を鼻で吸い込んでいて香りを堪能していた。

 

「次、何時攻めてると思ます? 所長」

「かけるなら夜襲ね、ハサンズは?」

「なんにせよ、人材が足りぬ」

「我らも同意見です、百貌のが聖都に何度か潜り込みましたがその都度バレるだけで意味がなく」

「本当に申し訳ない」

「いいわよ気にして無いわ、むしろアレに潜り込めるだけで武勲物でしょうに」

 

百貌はその分裂数を大きく減らしていた。

理由は単純、聖都に潜入こそしたが片っ端から見つかり数を減らし、

さらに先の防衛線にて大きく減らされていた。

今や分裂数は20を切っている。

更には初代、呪腕、静謐、百貌以外は殉教した。

本当にこのトンチキ空中戦艦による突撃に全てが掛かっているのだ。

 

「問題はパーシヴァルのロンギヌスね・・・」

 

エリザベートがため息吐きつつ言い切った。

腕の一二本はロマニがいれば再接続、再生成できるが。

戦闘状況下に置いてロンギヌスほど厄介な物はない。

レプリカでさえペルソナ能力封じてくる上に。特定のアイテムでしか異常状態解除できず。

そのアイテムは今現在、達哉の懐だ。

だが相手はロンギヌスレプリカを配備している様子はないのでまずそこの点は安心できよう。

しかしパーシヴァルは二代目の担い手である。この噂結界下では真名解放できる上に通常時ですら傷を受けたら治ることはない。

先の戦闘で仕留めたい相手だが円卓は揃いも揃って神話系でも上位に入る戦闘技巧者だ。

故に抑えるので一杯一杯な上にギフトを与えられ上位天使と悪魔合体されブーストを掛けられている。

あの混戦下でどう仕留めろという課題もあった。

だからこそクー・フーリンも慎重に出ざるを得ず仕留めきれなかった。

なんせ一撃受ければ手術確定なのだから。

それほどまでに噂結界内ではロンギヌスの槍と言うのは厄介極まる代物なのである。

第一特異点でジャンヌ・オルタが振るっていたから終わりと思いきや。まさかここで出てくるなんて誰も思っていなかった。

 

「本当に影は何処までも追ってくる・・・そこにあるってわかっていてもいい加減うっとうしいわね」

 

二口めのサンドイッチを齧りながらオルガマリーは言った。

本当に地獄絵図だったのだ事前に達哉が刺された場合の治療法を伝えてあっても大手術になったのだから。

 

「行っておくけど誰かがぶっ刺されても大手術不可避だからね」

「我であってもか?」

「ええ、一戦くらいは超えられるでしょうけど。その傷を癒すため大手術が必要になる。さっきみたいに闇スキルで回復できると思わないで」

「承知した」

 

兎に角ロンギヌスは不味い。

一撃受けただけで初代とクー・フーリン以外は戦闘続行不可能な上に大手術だ。

如何に死の淵EXを持つ初代であっても傷は癒えぬ。

だからこそ人体改造している弊害がでるのだ。

ロマニの専攻は人体術。死と同化して形だけの初代を癒す手段はないのだから。

 

「まぁ語り尽くした所でこんなもんね」

「ですね、後はアルさんの計画を妨害するだけです」

 

アルトリアの計画とはパソコンの買い替えと一緒だ。

より良き優れたPCにデータを移植しつつ旧PCは破棄する。

そう言うなればアマラという優れたPCに選りすぐったデータを移し、

旧世代である、この世界を投棄するという計画だ。

無論、まっさらな状態に移植するので、達哉、オルガマリー、マシュと言うOSが必要になる。

だからこそ躍起になってこちらを確保しようとしているのだろう。

逆を言えばオルガマリー&マシュを確保できなければ計画を実行するはずがないという保証である。

無論、アルトリアが隠し手を持ってなければの話ではあるけれども。

それまでは防衛線に徹しつつ、ピックアップした攻めて来る敵を削っていけばいいだけの話だ。

此方には攻撃にはデンデラの大電球やらクー・フーリンの投擲、アーラシュの宝具級に昇華した狙撃術。

各サーヴァントの性能に、マシュの攻防戦闘能力ある。

空中戦艦の完成まで十分持ちこたえる用意があった。

 

「まぁ逆に言えば向こうも同じなんですけどね」

 

マシュの言う通りである。

状況は向こうも同じ、攻め込んだ方が負けるという条件は変わらないのだ。

逆に準備も整わず攻め込めばこっちが壊滅する。

故の拮抗状態。双方ともに嫌がらせしかできない状況とも言ってもいい。

だが時間はない、アルトリアは達哉を抑えた。

無色のコトワリ持ちと言う達哉をだ。

それは達哉の居た誰も居ない世界の座標とその世界を再誕させる権限を抑えた事に他ならない。

そう、アルトリアはもう飛んでいけるのだ。

だが言いようによってはそれは不完全であるが故にオルガマリーとマシュを求めている。

アルトリアが完璧主義者なのが功をそうした。

もし普通の奴、偽リチャード当たりなら飛翔を始めてもおかしくはなかったからである。

 

「だから今は腹に美味しい物詰め込んでゆっくり休むのよ」

 

故に休むチャンスだ。

今はただ牙を研ぐ期間なだけだ。

 

「そう言う訳でマシュ」

「はいなんですか?」

「宝具で狙撃されたら防御よろしく」

「・・・わかりました」

 

現状手持ちで防御宝具を持つのはマリー・アントワネット。

聖剣の一撃を防げるスキルを持つのはマシュのみだった。

という訳でオルガマリーの笑顔の肩ぽんでマシュは過労確定だなと空を見て思いを馳せるのだった。

 

「ところでですが・・・円卓はどれほど主力を有しているのでしょう?」

 

マシュの疑問ももっともだ。

パーシヴァルはまだクー・フーリンで抑えられる。

ガレスも未熟だし、モードレッドはそもそも宗矩とかの餌だ。

その疑問に答えたのはランスロットだった。

 

「ほぼ主戦力は討ち取っているかと、脅威なのはラミエルの力を宿したモードレッド卿、メタトロンの力を宿したガウェイン卿の二人です」

「・・・アグラヴェインは?」

「彼はサンダルフォンと融合すれど本質が文官なので前に出ることはないと思います」

「逆に考えればアルさんを守っている最終防壁はメタトロン級の大天使と・・・」

「はい・・・」

 

サンダルフォン、メタトロンの双子の兄弟とされている大天使。

故にギフトを与えられ、サンダルフォンと融合したアグラヴェインは彼の全盛期以上の脅威だ。

文官であるがゆえに内部突入した際に迎撃に出て来られても面倒な相手である。

 

「しかしビーストの力・・・は・・・」

「大丈夫、アンビースト化しているし再度万が一が在ったらイドタイマー遠隔起動して抑え込んでもらえるし、今は精神安定剤も飲んでるしね」

「相分かった。しかし無茶はするな抗う者よ」

 

ビーストを直視し受け入れ抗い封じ込めるそれがどれだけ難しく重い事かと思った初代はねぎらいの言葉を掛ける。

そして再び味噌汁の匂いを堪能する初代であった。

 

(マシュ、私今思うんだけど。初代って霞を食って生きられる仙人かなにか?)

(三蔵さんもやろうと思えばできるのでは?)

(いや私仙人じゃなくて僧侶だからね!! 托鉢とかもやってたから!! 湯気で満足なんてできないし腹も膨れないわよ!!)

 

三蔵はれっきとした僧侶である。多少お釈迦様の力を使えるが誰なんと言おうと僧侶なのだ。

故に霞食って生きれる仙人ではないとマシュの疑問に訂正を入れる。

 

「しかし良いんかねぇこんな良い物食っても」

「食材の殆どは藤太の宝具から出したものだし気にしない気にしない」

「でも酒は違うんだろう?」

「気にしないで糞親父の遺品だから」

 

アーラシュのボヤキにオルガマリーはそう言う。

もう反抗期超えて自分の想像力を凌駕する碌でもない事をしようしているのは理解できた。

これまでのアマネとかエミヤとの鍛錬、そして実戦経験で培った感が告げている。

シバとか兎にも角にもカルデアス自体はやばい。

あらゆる手段を使って解体しなければと思うほどに。

そんな遺産を押し付けた父なんて糞親父と言う他ない。

兎にも角にも、この人理焼却事件が終わったら買い取って責任を取るという面目で解体してもらいたいのがオルガマリーの本音であった。

と言うか今すぐにでも解体してしまいたい。

惑星スケールであれど終局のⅦの力。すなわちネガスキルを使えば終わらせられる。

だがしかし今は出来ないシバと同様、現状の特異点観測にはカルデアスも必要だからだ。

本当にマリスビリーの遺産は余計な事しかしない。

と言うかソロモン王なんて超ド級のサーヴァントをどう呼びだしたんだという話である。

ロマニが全てゲロッたあと捜索して見たが触媒が見当たらない。

聖杯は使えない筈だ。それこそメディアとかいう大魔女クラスで無いと。

まさか相性召喚で呼んだのかと言うのも博打が過ぎる。

閑話休題。

兎に角マリスビリーのやらかしのせいで頭痛くなるとオルガマリーは思う訳で。

そして糞親父とマリスビリーの事を呼びつつ酒を飲むオルガマリーの様子をアーラシュは見て察する。

 

「アンタも苦労してるんだねぇ」

「まぁね」

 

アーラシュの言葉に、

そう言いつつワンカップを飲み干すオルガマリー。

ああもうオルガマリーの姿はあれだ。

親のやらかしで苦労しつつ仕事で疲れたOLが夜の公園でブランコに座りワンカップを飲んでいる姿に非常に酷似していた。

 

「そう言えば呪腕さんはお酒大丈夫なんですか?」

「焼酎も発酵食品でありますからな、大丈夫ですとも」

 

マシュの問いに頬を酒気で赤らめながら呪腕がそう答える。

酒は基本発酵食品だ。呪腕の体質にも合うが。

 

「呪腕さん・・・あまり飲み過ぎると・・・」

 

静謐が呪腕を小突きながら警告を発する。

確かに久々の酒だ。浮かれるという物ではあるが・・・

 

「――――――――――」

「ハハハ! 少し羽目を外しすぎましたかな!! これ以降は水で良いですとも!! ええ!!」

 

酒を堪能していた呪腕。

思いっきり初代に睨まれるの巻き。

これが平時ならまぁしょうがないと初代にも見逃す余裕は初代には標準装備されてはいるし、

無礼講としてもっと飲めというくらいには器は大きい。

されど現在は戦時下である。

それに加えてカルデアマスターズの負担が掛かっている状況下で酒飲んで前後不覚になりましたなんてなったら、

首所の話ではない。全身が左右に分離される。

 

「静謐さんは飲まなくてもいいので?」

「ええっとマシュさん「マシュでいいですよ」ではマシュ、私の業は全身毒手みたいなもの且つ体液血液も毒なので下手の酔っぱらうと毒を散布してしまうので、それと酒精は実は好きじゃないんです」

「そうなんですか?」

「はい、仕事で飲めと言われれば飲みますが、あの酩酊感が好きになれずでしてはい」

 

マシュの問いにそう言う静謐。

様はアレだ。仕事では飲むが酒の酩酊感が好きになれず私生活では飲まないタイプ。

因みにハサンはその特性上ザルが殆どだ。

特に対象に忍び寄り酒に指突っ込んで毒化させ毒殺、あるいは褥の場で対象を毒殺する静謐は初代を置いておけば歴代一位のザルである。

 

「ですので私の事はお気になさらず」

「でも料理も進んでませんよ」

「いや私なんかがこんな美味しい料理、緊急時の下で食べて良いのかと・・・」

「気にしないで食べなさい静謐。その為に作ったんだから」

 

自己評価が低すぎる静謐にそう説くオルガマリー。

なお初代の両目が光っていたので大人しく食べることにした。

 

「しかし、日本食も出来るなんてねぇ」

「私がやったことは伊勢海老の解体だけよ、あとはエミヤ任せ」

 

三蔵的にはアジア圏の料理が馴染むから褒めるように言ったが、

伊勢海老なんてオルガマリーもエミヤも解体した事なんてない。

故にロブスターの解体経験の在るオルガマリーが捌き、エミヤが味噌汁として仕立て上げたという事情がある。

そう言いつつオルガマリーは味噌汁を啜り次のワンカップを開けた。

 

「おーい皆―、伊勢海老の炊き込みご飯出来たぞー」

 

その時であるエミヤが土鍋を持ってきた。

土鍋の中は炊き込みご飯だった。無論プリプリの伊勢海老の入った炊き込みご飯である。

 

「これはわぁ」

 

流石の静謐も目を輝かせた。

海鮮の香しい匂い。

藤太もまさか炊き込みご飯がこんなに化けるとは思っても居なかった。

藤太の生きた平安時代の炊き込みご飯はかさましした物のイメージが強く美食には繋がらなかったからである。

初代も炊き込みご飯の香りにご満悦気味だ。

 

「ふむ、実に美味。ニトクリスよ先ほどから縮こまっていないで。食え」

「ですが・・・ファラオ」

「腹は減っては戦は出来ぬというだろうに、貴様もまた重要な戦力なのだ。食って英気を養え」

「ですが私は先の戦ではなにも・・・」

「良いから食え」

「はい」

「全く、余の先達というファラオがなぜに余の顔を伺って休もうともしないのだから困ったものだ」

 

オジマンディアスはため息を吐いた。

ニトクリスは実はオジマンディアスの大先輩であるのだが、

成し遂げた事がオジマンディアスの方が偉業的かつファラオ最大の一つである為、

殆ど復讐劇に身を投じたニトクリスからすると自分よりはるか上と考えているのだ。

これにはさしもの、オジマンディアスも面食らった訳で。

今まで彼女のメンタル面を考慮して臣下扱いしていた訳だが、

此処に至ってはニトクリスの力も必要な訳であり、プライドチョモランマになるのはあれだけれど、

いい加減自信を持ってほしいと内心複雑だった。

 

「そう言えばラムセス二世ってペルソナ使いなんですか? 私のペルソナと共鳴しっぱなしですが」

「それは私も気になったわね」

 

マシュの言葉にオルガマリーも同意する。

ペルソナの共振現象が起きていた。相手が相手なので言うのを控えていたが戦力の把握は重要である。

 

「如何にも余もまたペルソナ使いである」

 

舌の上で焼酎を転がしながら気分よくオジマンディアスは言い切った。

 

「丁度、17のときだったか、奴の起こした事件に次期ファラオとして事件解決を使命とされてな、ネフェルタリとモーセでエジプト中を駆け回ったものよ・・・」

 

何処か哀愁を漂わせたように懐かしさを懐かしむようにオジマンディアスは言い切った。

あの事件の後しばらくが過ぎ、ファラオとして就任後大人になって、モーセと分かれたのだから。

そりゃそうもなろうものである。

 

「しかしショウチューも悪くはないがワインはないのか・・・」

「もう親父の遺品も限界なのよ・・・」

 

幾ら遺品があるからと言ってワインは無造作にバラまいた故に在庫がない。

あるとすればそれこそ焼酎かビンテージウィスキー各種にブランデー各種くらいな物である。

ウィスキーとブランデーは比較的近代の物だ。古代の英霊には口に合わない場合が多いため出さなかった。

 

「構わん、お勧めがあるなら出せ」

「・・・わかったわ」

 

オジマンディアスにそう言われ、オルガマリーは管制室の人員にガーヴからロマーノ・レヴィ グラッパ レゼルヴァ (1969年)を持ってくるように指示する。

無論、幻の品であるが。

達哉もオルガマリーもブランデーは趣味ではなかったしマシュはそもそも飲めないので、

ブランデーばっかり余っていたのだった。

 

「なんだ? そのふざけたラベルは?」

 

ロマーノ・レヴィ グラッパ レゼルヴァ (1969年)の子供の様な落書きのラベルを見てオジマンディアスは顔を顰めるが。

 

「現代だと幻の酒の一つよ、きっと気に入っていただけると思うわ」

「ふむ、なら一献貰うとしよう」

 

幻という言葉に食種が動いたのかオジマンディアスも許可を出す。

オルガマリーは黙ってコルクを抜き、グラスにロマーノ・レヴィ グラッパ レゼルヴァ (1969年)を注いだ。

琥珀色の液体がグラスの中で揺れるのを楽しみつつ、オルガマリーから渡されたグラスを受け取り、

匂いを嗅いで目を見開く。

嗅いだだけでもこれだけの豊潤な香り、飲めばどうなるかが予想が付かなかった。

そして一口飲み舌の上で転がす。

酒精は強いが甘く飲みやすい。実に美味くオジマンディアスの頃にはなかった酒である。

 

「実に良い、実に良いぞ。ネフェルタリやモーセと共に飲みたかったぞ」

 

オジマンディアスはそう評価した。

現代の酒は神秘抜きにすれば古代の酒に勝るのだから。

という訳で全員、メインの伊勢海老の炊き込みご飯に取り組む。

アジア圏以外のサーヴァントはスプーンで、アジア圏のサーヴァントは箸でだ。

カルデアマスターズは箸の扱いにも慣れているためか箸で食を進める。

相変わらず初代は料理の匂いを嗅いで楽しんでいた。

死と同化し実質的不老不死なれどそれはそれで不便だなとマシュとオルガマリーは思った。

 

「美味しい、美味しい!!」

 

三蔵は遠慮なく味噌汁と炊き込みご飯をかっ込んでいる。

案外図太いですねこの僧侶とマシュは塩対応気味ではあるが、

本当にやることないのだ。

なんせやることは既に決まっている。こちら側でできるのは防衛戦くらいな物なのだ。

 

「ラムセス二世・・・どのくらい察業は進んでいるのかしら?」

「全体的に60%と行った所か、なんにせよ、あの忌まわしい戦車のお陰で余の神殿も半壊したからな」

 

忌まわしき戦車とは、神の戦車と化したアルトリアであろうことは既に聞いているので、

其処には動揺ポイントはない。

寧ろオジマンディアスの神殿復元速度の方が問題だ。

現状60%と言うのは進んでいないのと同意義だ。

まぁそれも仕方がない。

果報は寝て待てというだろうし。

問題は防衛戦の方である、アルトリアが出てきたら決戦。

モードレッドとパーシヴァルが出てきたら絶対に排除、次はないのだと思い知らさねばなるまい。

 

「ふぅー食った食った、暇だしUNOでもしない?」

「それはいいですね」

「交流も含めてね」

 

そして夜になりまた飯を食べ、

その日は過ぎ去っていくのだった。




明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします(遅すぎる新年挨拶)

初代様、某ひろしみたいになる&今回はコミュ回ですた



カルデアの状況?
カルデア一同「がんばります(死んだ目で血反吐を吐きながら)」
現地サーヴァントズ(アカン!!)

現状、食料には余裕あるけれど精神的+肉体的疲労の為、カルデアは切羽詰まってます。


あとアフターストーリーですがとある理由によってたっちゃん、オルガマリー、マシュは参加しません。
第二部で終わらせる予定だからね!!アフターストーリーまで書きません!!
生き残ったAチームと生き残ったカルデアスタッフが処理すると思ってください。
そしてネタバレになるけども何やってんだぁぁぁあああああヤングじぃじ!!!!
いやあの人元超有能文官なのは知っているけども。
今のヤングじぃじが経営顧問で来たとかマルサやらマル暴やら大阪警察が税各種脱税罪で合同捜査しにきたのと一緒なんよ!!

次回、アルちゃんによるパワハラ会議とコミュパート2にホームズ走ってくるの巻き。


後次回も遅れます、今月の更新は無い物と思ってください。
良くも悪くもやること決まっているからねこの特異点。
暫く苦手な日常回が続くもので遅れます。
良くも悪くもやること決まってますからね。
両陣営ともに。
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