Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです 作:這い寄る影
シグルイより抜粋。
例えば自分を助けてくれた人たちが居たとするだろう。
些細な結果でもいい。
気まぐれだとしても良い。
されど彼らは手を伸ばしてくれた。
だがしかし、
人の悪意は善人を貪る、奇跡を起こせる人に食らいつく。出来る奴に押し付ける。
その良き人々が傷つこうが知っちゃこっちゃない。
だって大多数にとっては都合の良い機構であり他人なのだから。
使い捨ての機械を使う事と一緒。
その真実を思い知った。
本当にカルデアの人々は良い人たちばかりだった。
だから傷つき血反吐を吐き。たどり着いた三通りの結末を影に見せられ。
一抹の幸せの為に頑張った彼らを機構として使いつぶし何もしない連中に絶望した。
その時からだアルトリアが狂ったのは。
たったそれだけの話である。そして話を現在に戻そう。
「ちぃっ!!!」
「オゥォォォオオオオオオオオオ!!」
かのクーフーリンは攻めあぐね居ていた。
エミヤも此れには驚愕する。
固有結界を発動したところで今のクー・フーリンに万が一の勝ち目がないからだ。
精々持って数秒という所をパーシヴァルは彼此結構持たせていた。
それだけギフトと天使との融合は恐ろしいのだ。
考えても見て欲しい、クー・フーリンの人格を維持したままタニキの霊基を保持したクー・フーリンがエミヤの無限の剣製内部で全力支援を受けている中で。
たった一人抗える人物なんているだろうか?
いやそれこそ英雄王とカルデアのマスター三人組しかいないだろう。
それゆえに確殺の間なのだ。
だからこそ抗えるがゆえにその恩恵は大きい。
だがしかし時間も掛けてはいられない。覇道型固有結界は浸食型覇道か求道型固有結界で無いと世界の修正力で固有結界は打ち消されるがゆえにだ。
時間がない、時間がない、時間がない。
しかもパーシヴァルの得物はロンギヌスだ。
真名解放しなくても直撃を貰えば致命打である。
それでも攻めあぐねているのは馬の機動力に他ならない。
所謂速度の問題。エミヤが投影で射出するよりも馬の速度が速すぎて間に合わない。
現にパーシヴァルは何度もエミヤの首を取ろうとしているが、
其処はクー・フーリンがインターセプトして場を凌いでいる。
「馬も天使と融合してやがるのか!?」
「メドゥーサの天馬と謙遜がないな・・・早すぎて当てられん」
「オメー追尾弓持ちじゃねぇか!!」
「弓の射出速度より早く動いているのだ、この調子では射線を重ねられる!」
確かにエミヤは追尾宝具持ちであるが、
相手の機動力の方が上だ。
現に無限の剣製内部での全方位射撃を躱す機動力と速度がある。
下手に撃って射線重ねられたらどうしようもなくなるのだから。
そしてパーシヴァルはヒットアンドアウェイ戦法を取り続けていた。
足を止めると即座に試合終了だからである。
エミヤの高火力贋作宝具かクー・フーリンの因果逆転の槍か外装の爪でズタズタにされる可能性の方が高かったからだ。
故に千日手でもあった。
その時、エミヤに電流走る。
―あんた、固有結界内部の剣、全部壊れた幻想出来る?―
―できるが・・・それがどうかしたか?―
―なら単純、敵全員巻き込んだ瞬間に爆破しなさい―
オルガマリーとの第五突入前のやり取りを思い出す。
そうだ、それが在ったじゃないかとエミヤは思い出す。
剣の投射、弓での狙撃が当たらぬなら、
敵周辺の贋作宝具を起爆してやれば良い。
つまり応用である。考え方を見返せば無限の剣製はエミヤの認識範囲でならどこでも爆破可能な地雷原あるいは機雷原なのだから。
エミヤはある意味固定観念にとらわれていた。自分は模倣する者、贋作を作る者と思い込んでいた。
だがアマネが齎した戦術、戦略理論がオルガマリーに伝わり、其処からエミヤに伝播したのである。
宝具が一流二流など些細な事である。
要するに当たって確実に相手を殺傷できなければどんな宝具でも風車でしかないと思い知らされたのだ。
―それに―
カルデアからの通信を聞く限りオルガマリーもマシュも限界だ。
ここに至って。自分のプライド優先する訳にもいかない。
死人が生者を殺し、生者が死人を殺す、死者が死者を殺すこの状況において、
死者が生者を生かすために道理をかなぐり捨てて生かすというのは当然の事だった。
間違っても死者が自分の矜持だとかプライドだとかの為に今を生きてちっぽけな幸せを得ようとしている若人たちを切り捨てるのは間違っている。
故に矜持を切り捨てて、パーシヴァルが疾駆する先を予測。
その周辺に突き刺さっている贋作宝具に接触次第、壊れた幻想が起爆するように設定する。
―ランサー、最適の位置取りは?!―
―師匠の槍衾よりはマシさな、こっちで合わせる!!―
―了解した―
エミヤとクー・フーリン、なんだかんだ言って因縁ある二人は交戦経験がある故に。
互いの戦闘力を把握し訓練などもしているためレイライン通信であっても手短に息を合わせられる。
そしてパーシヴァルの馬が旋回という名の一瞬の減速をした刹那。
「壊れた幻想」
エミヤがその周囲の剣を起爆した。
馬の脚は繊細である、幾ら天使と融合しペガサス級になっているとはいえ。
其処ら辺は変わらない、変えられたら競馬の歴史が覆っている。
完全に馬が死に、地面に放り出されるパーシヴァル。
そして気づく大量の贋作宝具に包囲されている現状にだ。
下手に動けば地面に突き刺さっている剣の壊れた幻想。
かと言って抵抗しなければ浮遊する剣の投射でハリネズミ確定だ。
その派手さにまず眼が行くだろうが・・・忘れてはならない。
「
エミヤの派手さに眼が行ってクー・フーリンを見逃すとこういうことになるという事に。
霊基もメイヴの考えた最強のクー・フーリンなのだ。
槍の機能も十全に使える、それ即ち間合いに入れば確実に心臓を穿ちそこから全身にを食い破るように呪詛の乗った棘が炸裂するという事に他ならない。
因果逆転の魔槍の間合いに入った時点でそう言う事になる権能一歩手前の絶技である。
間合いに入れば最後、裏技使わない限り確実に心臓を穿ち全身をぐちゃぐちゃにする。
クー・フーリンが槍を引き抜く。
その後に残ったのはパーシヴァルという肉塊だけだ。
恨みを言う暇もないままに即死したのである。
彼は倒れて霊子に分解されていき退去した。
「エミヤ怪我は?」
「防戦には慣れているし固有結界下なのでね、ないよ」
「それは重畳、固有結界解除してくれ、達哉を早く救出しねぇとな」
「わかっている」
そして固有結界を解除すると。
「・・・状況最悪じゃね?」
「・・・同意だ」
上を見上げると、後頭部に円形状に伸びる角を生やし金細工が施された黒いドレスを身に纏ったオルガマリーが、足元の空間を操作し一歩一歩踏みしめるかのように最短距離で玉座の間に向かっていた。
即ちアンビースト化していることに他ならない。
完全に暴走している。イドタイマーの薬剤も封入容量に限度という物がある。
もう薬剤は連続注入によってただの時計に成り下がっているのだろう。
洒落になっていない、アンビーストとはいえビーストだ。
本格的に彼女が暴走すればこの特異点ごと世界がすっ飛ぶ。
こうもしていられないとエミヤとクー・フーリンは駆け出した。
一方その頃。
「なんだぁ? 武器放り投げてよぉ」
「くっそ」
長可は不思議に思っていった目の前のモードレッドが剣を投擲して来た事にだ。
相手の不意を突くと言えば聞こえは良いが。
そんな破れかぶれの不意付きなど簡単に対処できる。
剣を人間無骨で弾いた瞬間、モードレッドが飛び蹴りを放って来たが、
脇差抜いて逆にカウンターを長可は食らわせたのだ。
確実に腹は切った筈なのだが・・・モードレッドの腹と内臓はシュウシュウと湯気を立てて再生した。
ラミエルとギフトの融合による超魔力による再生であった。
規格外の魔力に物言わせて再生しているのである。
血糊を祓いつつ脇差を鞘に納め長可は人間無骨を構える。
「三度目の正直だ。テメェはここで殺す」
殺意という名のギアを上げる。
第四ではシチュエーション的に参加させてもらえなかったが
アーカイヴは見た。
故にこれで三度カルデアに楯突いたことになる。オマケに自分優先で主君の事も理解していない上に、
過去に裏切っていてその様なら長可的にも生かしておく理由がない。
「チィ!!」
モードレッドが舌打ちしつつ魔力放射を行う。
モードレッドを中心に爆発が発生、土煙が上がる。
長可の視界は不良気味になった。
だがしかし、
「そこかぁ!!」
「!?」
モードレッドは魔力量が高すぎるのである。天使であるラミエルと融合しギフトも合わさった結果。
長可ですら位置探知が余裕で可能だった。
そして長可は連撃を行い、それでも掻い潜ろうとするモードレッドの剣を人間無骨を展開して翼の部分で絡め捕り、
徹底的に剣の間合いに入らない。
第一特異点で戦ったランスロット程ではないと見抜いたからだ。
と言うかカルデアには技術お化け三人も居るのでそれ等には及ばぬと判断。
しかし気は緩めない、力と速度だけは長可を遥かに上回っている。
間合いに入り込まれたら死ぬ、今回ばかりは組手甲冑術を下手に使えば魔力放射の餌食となるか剛力で捻り潰される。
だから徹底して人間無骨の間合いで戦う。
魔力放射でカッとんできた一撃もまともに受けず後方に飛びながら受け止め衝撃を吸収しつつ再び槍の間合いへ。
それを徹底する。
一方のモードレッドは全力を出せないのが現状だ。宝具の威力がクソ高すぎるのである。
キャメロット・ブライド・エハングウェンは計画に必要な物でもある。ここで宝具ブッパしようもんなら一部を吹き飛ばしかねない。
故に宝具は事実上封印状態。天使との融合とギフトのお陰で霊基は暴走。いつ崩壊してもおかしくはないのだ。
時間との勝負なのに長可の戦いは徹底して塩対応である。
ギリィと歯ぎしりするモードレッドであるが長可からすればそんなこと知っちゃこっちゃないのだから。
大人しくそのまま自壊するか隙晒して高得点の首に成れ程度である。
とまぁこんな感じで長可VSモードレッドの戦場は一件均衡状態に見えて長可が詰将棋をするがの如く詰めていった。
一方のマリー・アントワネットとガレスの戦いも一方的様相を呈していた。
ぶっちゃけ第一特異点でも述べた通りマリー・アントワネットは生粋の戦士ではない。
宝具とジュノンによる動く城塞と化してガレスの猛攻を凌いでいるに過ぎない。
普通に打ち合ったら負けるが、
「
様相は馬上試合だ。
ガレスにも馬を与えられていたが。
防壁張り巡らしてガレスの槍も通じないほどの弾丸と化したマリー・アントワネットに一方的に付け狙われる羽目になっている。
カルデア防御二大巨頭なのだから当たり前だ。
だがマリー・アントワネットしても歯がゆい。
生前ならフィレモン契約式の為、複数のペルソナを使って追い込めただろうが、
サーヴァントとなった身では専用ペルソナであるジュノンしか使えない。
それでも音速突破して突撃してくる城塞のような物である今のマリー・アントワネットは。
故にガレスが不利、槍では貫けず。
真っ向からかちあった瞬間、アクセルベタ踏みした10tonトラックに立ち向かった猿の如く粉砕される。
つまるところミンチだ。
天使との融合に加えギフトを得ていながらもガレスはマリー・アントワネットの防壁を突破できない。
ここに至って結論付けられるのはモードレッドもガレスも詰んでいるということである。
実力を発揮できない戦地、相性最悪な相手。これほど条件が悪いことがない。
「此れこそは、我が父を滅ぼせし邪剣!」
だがモードレッドは狂犬だ。
ギフトの影響で思考能力も酷く低下している。
故に解き放つはアーサー王を屠った邪剣の一撃であり閃光。
「
天空を引き裂いて真紅の閃光の奔流が放たれんとしていて。
ザクリと音がする
掲げられたその両腕を人間無骨の翼部分が抑え、尚且つ仕込まれたチェーンソーが起動し。
剣を持ったモードレッドの両腕事切断する。
前哨戦での再現だ、振り下ろすというプロセスが必要になる以上、振り下ろさせなければいいのだから。
長可は故にここで隠し持っていた切り札を切って仕留めに掛かった。
「学習しねぇな頭金柑頭ァ!!嗤え人間無骨ゥ!!」
そして両腕を完全に引き裂き
霊核を人間無骨で抉つつ張り倒し。
そのまま追撃とばかりに脇差もモードレッドの右目から頭部霊核を破壊する。
「何で・・・」
「・・・」
「なんでオレの願いは届かない・・・」
「はぁ~・・・ランスロットの奴にも言ったがな自分本位だからだろ」
皆子供かと長可はモードレッドがくたばるまで人間無骨と脇差を抜かず固定しながらそう言ったのだ。
「認知されないからどうしたよ? 現にお前は上手くやって宰相の立場まで得て認知されないから反逆しますとか糞だろうが、そりゃ認められないだろうさ、当たり前のことだ。第一にだ」
長可はモードレッドの心にも止めを刺す。
「不義理の子ですなんてばらした時点で、ウチの大殿や殿下なら首飛ばしてるぜ。それだけの事をお前はやったんだ。オマエは騎士に成りたかったのか? 子供として認知されたかったのか? 俺とは違って殴り飛ばして諭してくれる相手にも会えなかったからそうなったんだろうが、まぁ同情くらいはしてやる」
長可も散々やらかした側であるがその度に殴ってでも連れ戻してくれる人がいたから今が在るのだ。
「だからお前のは忠義心なんかじゃねぇただの「言うな・・・」我儘だ「黙れぇ!!」!?」
そう指摘されて遂にモードレッドの霊基が限界を迎え大爆発。
長可がふっ飛ばされ壁にめり込む。
爆発の衝撃と壁に直撃したことにより霊基損傷、骨が何か所も折れて実質行動不能だった。
「がッグッッ」
「森君!!」
「王妃様は自分の事に集中してろ・・・アンタも余裕ねぇだろ・・・が」
そう、今こそ一方的であるが展開時間には限度という物がある。
百合の王冠よ栄光を紡げはジュノンとマリー・アントワネット自身の宝具の合体宝具なのだ。
必然的に燃費が悪い。
故に早々カタを付けないと今度はこっちがまっしぐらに窮地に立たされる。
だから敢えて長可は気にするなと叫んだ。
どのみちこの馬上試合染みた殺しには長可は機動力の問題で参戦できぬのだから。
それにガレスは宝具を発動していない。
まだ油断はできないという奴だった。
互いの馬が旋回し真向から向き合う。
―決着ね―
マリー・アントワネットはそう内心ぼやいて決意を決める。
ガレスはもう安パイを取らない。
なにせモードレッドが討ち取られたのだから。
時間を掛ければ長可が復帰、隙を見せればそれはそれでマリー・アントワネットのペルソナのジュノンからの全快スキルがとび。長可が復帰し人間無骨の翼で引きずり降ろされ引き殺されるのは目に見えている。
十文字槍とは翼が受身となって基本刺し過ぎて引き抜けなくするのを防止するための工夫であるが。
それと同時に馬上の敵を引っ掛け引きずり降ろす物としても使えるのだ。
古今東西中世期の類にはそう言いう武器が流行った。方天画戟やハルバードなんかもそうだ。
歩兵が騎兵に対抗できる武装だったからである。
そしてガレスは自分の真っ当な一撃が通らない以上、宝具の解放を決めた。
最期の交差が始まる。
マリー・アントワネットの城壁がガレスを挽肉にするか。
あるいは逆にガレスの絶技が彼女を打ち砕くかの勝負になったのだ。
互いに魔力を最大展開。全力の姿勢だ。
それしかないんだからしょうがない。
「咲き誇り。絢爛に駆け抜けよう、我が行く道は刹那の軌跡!!
「仕留めます――我は狼、我が槍は必殺の牙!ゆくぞ!
故に真正面からぶつかり合う。
強烈な騎馬槍の一撃はガラスの鎧を食い破ったが。
残念ながら彼女の宝具もパワーアップしているのだ。
マリー・アントワネットもカルデアで出来る努力をしていたのである。
行き詰っていた所でアマネから渡されたのは現代戦車装甲特集と言う物だった。
ニッチすぎる特集だったがそれがピタリと合わさった形である
現代理論を応用した複合式積層装甲にだ。
だから一枚破られた所で二枚目が出てくる。
故に一撃でどんな防御も貫くガレスの宝具化した技術は積層装甲の前に無意味だった。
しかしガレスの宝具の本質は連撃にある。
なぜに多次元屈折現象を引き起こしていないかと問いつめたくなるほどだ。
マリー・アントワネットの硝子の鎧その他諸々が砕けるのが先かガレスが連撃を行えなくなるのが先かのシーソーゲーム。
一瞬の交差の上でそれが行われ、
「ぐっ!?」
「取った!!」
最期の一枚をガレスが剥ぎ取り致命打を打ちこんで、
「ジュノン!!」
マリー・アントワネットはここに来て最後の札を切る。
ジョーカーとは相手が油断した隙に使う物だ。
確実に仕留められるタイミングで、マリー・アントワネットはスキルとしてではなく盾としてジュノンを使った。
ガレスとしても最後の一撃だったのだ。
故にその槍はジュノンを貫通すること敵わず。
完全に馬上槍が固定され、身動きも取れないうちに馬と馬が衝突。
馬が互いにミンチに成り両方空中に投げ飛ばされるが、いまだに馬上槍は固定化され、
ぐいぃっとガレスを強引にマリー・アントワネットは引き寄せレイピアの一撃をガレスの首に見舞う。
レイピアの本来の使い方とはそう言う物だ。鎧の隙間を狙って刺して斬るそれである。
故にガレスの首に完全にレイピアが貫通し二人は空中に投げ出された。
「ガッフッ!!」
「これでも死に至らないのね・・・」
喉を的確に貫いた。
だがガレスは死に至らない。
天使と融合しているからだ。
もうここまでくると怒りより呆れの方が来る。
マリー・アントワネットは苦笑しつつガレスが喉に突き刺さったレイピアを引き抜くのを見ながら。
「でも詰みよ」
「何を・・・がっ!?」
ガレスの背後から心臓部を人間無骨が貫いた。
狂化に寄るダメージを精神的、所謂気合いと根性で無視した長可の最後の一手が背後から襲い突き刺さる。
「もう動けねぇぞ流石に」
「いいえ動いてもらうわ私もアナタも、ジュノン、メディアラハン」
そう言って長可もマリー・アントワネットも全回復する。
と言っても霊基的損傷は回復したけれど精神的ものが回復しないのはいつも通りだ。
それでも先を急がねばならないと言うのに。
「どうしてですか? 私達の祈りは何時も届かない・・・」
消えゆく刹那でガレスが疲れ切った二人に問いを投げる。
でも帰ってくるのは一言だけ。
「「自分本位だから」」
たったそれだけ。
ガレスはその言葉に、自分が何に忠誠を誓ったという本質を見出しながら発狂して消えていった。
そう彼女が王に忠誠を誓うのはついでである。
ランスロットの様な騎士になりたいと王を踏み台にしたに過ぎないことに気づいたのだ。
それだけだ、たったそれだけの無慈悲な鉄槌だった。
「さぁて」
「上げていかねぇとな」
全員が無理をしている。
そうでもないとこの世が終わるからだ。
ズリズリ・・・
マシュは壁に身を押し付けるように歩いていた。
残る薬も一本だ。
両足の感覚も消えつつあるけれど。
最後の切り札だ。使うわけには行かない。
そしてたどり着いた玉座の間。
其処に存在したのは、
「来たか」
そう呟いたのはアルトリアだった。
多量の出血痕と達哉のポシェットから増血剤の入ったペン型注射器を取り出し、達哉の首筋に打ち込んで抱えゆっくりと達哉を床に降ろしマシュを見据えるアルトリアの姿が在った。
「アルさんもう終わりにしましょうよ・・・こんなことしたってなんにもならないじゃないですか」
そう計画はランスロットから聞かされている。
世界再編計画を。
特異点というこの状況を利用し時間軸のあやふやさを狙い、
まだパージ直前の達哉の世界へといき創世を行う。
無論アルトリアは創世を行う資格がない。何故ならコトワリを持っていなければナホビノですらないのだから。
だから達哉を使い無色のコトワリを利用し創世と成す。
こうして創世した世界に回収した魂たちを解き放ち住人となってもらいつつそれら全員と生まれてくる存在に絶対的幸福を強制付与する。
それでも悪魔や影の介入やイレギュラーという綻びが発生すればオルガマリーにはその世界の区切りを担ってもらう。つまりオルガマリーがデットエンドとして機能し、
再創世を達哉を使って行い再度全員の同じ幸せが約束された純白の塩の牢獄のような永劫回帰の世界、
即ち天獄を創るつもりだった。
そして次に達哉の世界に行くという問題はマシュのイノセントダストを燃料にしてキャメロット・プライド・エハングウェンを船として次元の壁を突破するという物。
やっていることが無茶苦茶だ。
「なら今の世界をありのままに受け入れろとでも? こういう状況にしないための抑止力は簡単に欺かれ、抑止の英霊どもは碌な仕事をしない。極論にたどり着けば即座にパージして無かったことにする。生きている人間は醜くなり果て上位層の豚共が幅を利かせている。なら初めから終わりまでを決めた世界を用意してやるのが筋という物でしょ、最初から決まっているのなら罪も罰も徳も功も私の物、私が定めた法の元で動く世界なのですからそこには悪人も聖人も居ない、天獄を作ります」
「かわりに何もない人形遊びですよ」
「知っています」
自覚はある。完全管理された世界と言う物はそう言う物だからだ。
絶対的幸福と破綻を許さない世界、永劫回帰する純白化された塩の牢獄は正しく天獄と言っても良いだろう。
考えに至った時点で間違っているとは思っていても、
もう止まれない止まることはできないのだ。
「この先■■■―――――」
「アルさんなにを?」
「ニャルラトホテプの検閲か!! 未来の出来事をしゃべることは許さないとでも!?」
アルトリアが何かを言おうとしてマシュの耳に届いたのはノイズのみだった。
ニャルラトホテプの検閲である、ネタバレは許さないとの事だった。
「兎に角、アナタたちがこの大災害を乗り越えても次に待ち構えているのは戦争だ!!」
「それでも―――」
「―――――――」
「私達は歩いていきます、叶えたい夢があるから」
「ここまで絶望を突きつけられてボロボロになって得た答えがそんな答えか・・・」
「ええそうです意地でもアナタを止める、アルさんも友達だから!!」
「ならへし折って無理やりにでも引きずっていく。アナタたちは私にとって大事な友達ですからですが」
そう言って互いに接近、拳を見舞う。
ハッキリ言って両者共に万全ではない。
マシュは薬の打ちすぎだ。オーヴァードーズ気味でペルソナは鎧かウリエルかラウンドテーブルかの選択方式になってしまっている。
なら此処は一番己が信頼する八極拳を十全に生かすべく鎧を選んだのだ。
アルトリアも素手での迎撃を選んだ。
理由としては思考能力が現在キャメロット・ブライド・エハングウェンの維持に分割されていたからである。
オジマンディアスとの思考合戦中でもあるからだ。
そしてマシュも計画に必要なファクターである。不殺で確実に捉えるなら素手だろう。
先ずアルトリアはマシュの右ストレートを容易く両手で受け止める。
普段なら絶対回避を選択するだろうが、今のマシュは弱りに弱り切っている。
だから容易く受け止められた十全であったなら受け止めた掌が浸透勁で骨関節がバラバラになりフニャフニャになっていただろう。
そも現状のアルトリアでは十全なマシュとのガチでの殴り合いには勝てない。
それだけ仕上がっているのだ。
だがしかし今のマシュは意識が朦朧としておりさらには両足の感覚がなくなりつつ在り十全に実力を発揮できているとは言えない。
思考能力も確実に落ちている。
現に先ほどから数十手拳を蹴りを交わしたがマシュは追い詰められていった。
ワンチャンすら確実にとらえきれない。
もう無茶苦茶だ。
アルトリアの襟首を両手で掴み押す。
それに意味はない。もう意識が体を動かしている状況だった。
アルトリアはその両手に自身の両手を掛けてCQCで振りほどく。
そのまま腕を捩じり上げ床に叩きつけるように投げ落とすがマシュは咄嗟に両手を床に着き。
床とキッスすることは避ける。そのまま闘志の赴くままに顔面を上げれば。
顎を掬い上げるかのようなアルトリアの蹴りがマシュの顎に直撃、放物線を描きながらマシュはふっ飛ばされ、
玉座の間の床を転がる。
歯を食いしばり、ペルソナによる耐性が無ければ顎は粉砕されていただろうが。
それでもよろよろと意識を保ち立ち上がるマシュ。
「諦めてください」
「いやだ・・・」
「そんなボロボロの身で勝てると?」
「絶対にやらせない!!」
マシュはそう言って躍り掛かる。もうヤケクソに近かった。
だがそんな物役に立ちはしない。
「その鎧を砕かねば折れませんか」
右手に魔力を重点、紫電が走る。
そして一閃、マシュが仰け反る。
それでも鎧は砕けない、なら連続攻撃だとばかりに紫電を重ねていく。
遂に鎧が砕けてアルトリアは躊躇なくマシュの腹に拳を叩き込んだ。
「グガァ!?」
マシュは閃光の様に吹き飛ばされ玉座の間の扉まで弾き飛ばされる。
「これで二つ」
そう呟いて、マハエイガオンの漆黒の杭がアルトリアの動きを阻害するように炸裂した。
そして最後の一本がアルトリアの喉元に突き付けられる。
「・・・はぁ、はぁ、はぁ」
息を荒くし圧縮した空間を足場にしてショートカット。
玉座の間の壁をヴォイドフォールで強引に抉じ開けオルガマリーがやって来た。
「本当に本当に・・・」
アルトリアは拘束されながら喉元に漆黒の杭を突きつけられて呟く
必死にオルガマリーは己が獣の手綱を握りしめている。
乗りこなしているとはいえ使用時間は既にオーバーだ。
何時、どう転んでもおかしくはない。
頭の両側面からはペルソナと同じ角が横一文字に生えて、
そこから枝分かれするように縦に王冠を形作る様に伸びている。
右目はもう獣の物か彼女の元来の色ではなく様々な色に万華鏡の如く変化している。
その右目を右手で覆いながら、限界ギリギリまで我慢すれど、オルガマリーの左腕が上がる。
アルトリアを終了するという人類悪を持って。
それを見てアルトリアは目を瞑り・・・
「貴方達は何時もいつもそうです」
苛立ちながら言う。
アルトリアも彼等の旅路に付き合ってきた。
故にその過酷さに絶望し計画を起こした。
「体や心がボロボロなのに、いつも無理をして笑う、あなた達三人は私を――――皆を助けてくれた。なのに世界は何時もあなた達に「アルトリア!」」
左手を震わせながらその言葉を遮らせる。
そんなこと知っている、知っているし味わっている。でもとオルガマリーは続け。
「それが私たちの使命だから。やらなきゃ望む物も手に入らないから・・・」
でもそうでもしなきゃ望む物が手に入らない。
普通の人の生は遅れない。影と蝶に目を付けられ英雄譚を担う物として捧げられた以上は。
だけど、その先にあるほんのわずかな平穏を、オルガマリーは達哉とマシュと過ごしたいというちっぽけな願いを抱いて歯を食いしばって耐えているのだ。
「平穏な明日へと行きたい・・・わかっています」
アルトリアも分かっている。
分かっているがゆえに。
「だが、どう抑えればいいって言うのだ!!」
「アル?」
喉元に突き立てられた杭を右手で掴み取り切先で首をなぞり一滴だけ血筋を流しながら叫ぶ。
本来なら自分の首なんぞ捧げてもいい。
影に先を見せられ、惨たらしい未来を知覚し、
故に彼女はアルトリアは後戻りが出来なくなってしまった。
無限に続く闘争と戦争、そして影の嘲笑に。
その恐怖に屈した。そして怒り嘆いたのだ。
もう抑えられないと怒りと嘆きを叫ぶ。
「貴方達に責任を背負わせるこんな糞くだらない世界よりッッ!!」
「アル、だめよ!!」
「カルデアのみんな、達哉やマシュ、オルガマリーの方がずっと!!大事だ!!」
アルトリアの脳裏に移るのは今までの旅路と楽しかったカルデアでの光景。
故にそれらが踏みにじられるという現実に怒り。
怒りは原動力となる、初代によってズタズタにされた霊基結合を超魔力で強引に回復
再融合を果たす。
更に怒りに任せオジマンディアスの神殿との鬩ぎあいにも強引に打ち勝つ。
アルトリアはマハエイガオンの杭を全て粉砕、飛翔する。
もうここまでくれば実力行使しかない。
「ヴォイドフォール!!」
空間を組み替え圧殺せんとアルトリアに空間そのものが襲い掛かるが、
それより早くアルトリアは飛翔する。
―追いきれない?!―
ビーストしての特異性すら全開にして、
なお追いきれぬ速さ。
そしてスキル展開時間も限界にきてヴォイドフォールが崩れた瞬間。
アルトリアがロンゴカリバーを呼び出す。
「十三拘束強制切除」
聖槍剣がうなりを上げる
「
炸裂する絶対光。
それが着弾する刹那に。
「ユニオギアス!!」
目を覚ましたばかりでズタボロの達哉がオルガマリーを庇うように立ちふさがりユニオギアスによって威力を分散するものの相性が悪く。
そのまま強引に突破されてしまい。
達哉もオルガマリーも壁に叩きつけられ気絶する。
「ハハ・・・アハハハハハハハハハハ!!」
初めてだった。
始めて勝った。
その感覚にアルトリアは狂嗤する。
だがなんでだろう涙が両目から溢れて止まらない。
悲しくて虚しくて苦しくて仕方がない。
だがそれでいい自分が苦しめばそれで済む話なのだから。
『全軍に通達、カルデアの三人は我が手に落ちた。貴様らの負けだ』
そして戦場に響き渡るアルトリアの勝利宣言。
此処までかと現地サーヴァントの皆は諦めた。
「まだだ!! まだ終わってねぇぞ!!」
大量の天使の物量に押され気味ながらもクー・フーリンが叫ぶ。
カルデアサーヴァント組はまだあきらめない。
だが管制室の面々は諦めかけてしまっていた。
何故なら管制室の外で銃撃音がする、アルトリアがこれを機にカルデアの面々を捕えるために天使たちを送り込んでいるからだ。
それに対しフル装備で保安部が応戦中である。
だが現実どこまで持つか。
保安部は諦めていないが管制室の職員は折れる寸前だった。
と言うか現地サーヴァントもやばい。折れる寸前だったし、
気力が在るのが初代とオジマンディアスくらいな物で折れている者も出始めていた。
平たく言えば一部を除き後方も前線も士気が崩壊していた。故に、
この日カルデアは負けた―――――――――――
「まだです・・・」
それでもという者がまだいて、
アルトリアは目を見開いた。
パーやん「ついて来れるか!! 我が機動力に!!」
エミヤン「なら贋作宝具を地雷に見立てて爆破するわ」
パーやん「」
兄貴「じゃけんゲイボルク注射しましょうね~」
パーやん「アー!!」
パーやん、オルガマリーがエミヤンに授けた卑劣戦術の応用で殺されるの巻き。
なお卑劣戦術教えたのはアマネなので間接的に彼女に殺される形になる。
人類舐めるなサーヴァントって奴ですね
そしてモードレッド、森君に一蹴されるの巻き。
そりゃ剣なんて投げるモーションが在るのが悪いしランスロ相手に初見殺し連発した森とは相性最悪ですの巻。
得物を投げて油断したな馬鹿めなんて喧嘩殺法は正規訓練受けた戦士には通用しないんですわ。
今でこそマシュと防御二枚看板ですけど生前はオルガマリータイプな豊富な手札で圧倒するタイプの王妃様でしたからね、ガチでガレスに勝つにはこれしかなかった。
そしてマシュもオルガマリーもたっちゃんもボコボコにするアルちゃん。
もう自分自身にも絶望しているからねしょうがないね。
アルちゃんの目指した世界は天道緋想天と永劫回帰の良いところ取り。
絶対的に統率され理に綻びが出来ればシステムに組み込んだオルガマリー使って強制リセット。
再び世界創生前後からやり直し住人は全く同じ道を幸せに歩むという物。
尚そこに選択権や自由意志はない塩の様に純白に漂白され閉じ込められた輪廻の世界、即ち天獄である。
あとたっちゃん、マシュ、オルガマリーはシステムに組み込まれてますが分霊方式で強引に住人にされる模様。
アル「絶対幸福が続き続ける世界を完成させる!! あとは飛翔するだけだ!! アハハハハハ!!(壊れた笑顔で)」
ケリィ「ゲフォア!?(流れ弾喰らって血反吐吐きながら)」
ニャル「またアルトリアが壊れて切嗣殿が吐血されておるぞ!!(愉悦)」
あと打ち切りじゃありません、マシュが大覚醒しますので見とけよ~見とけよ~!!
さらに次回も遅れます~。