Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです 作:這い寄る影
狂四郎2030より抜粋
01 ぶっちゃけ後続が偉大過ぎて先代がパッとしないあるある
カルデアマスターズの三人組は相変わらず医療室に閉じ込められていた。
イドタイマーやらマシュの使った薬の中和剤が作れないため、
仕方なく魔術業界における薬抜きの魔薬を使っているが結果は芳しくない。
結局、魔薬を試しつつ、半月間出さない方向で動いていた。
そしてようやく退院日である。
と言ってもここからはトレーニングや仕事は一週間禁止の方向性で調整が入った。
そう言う事で三人共趣味に時間を費やしている。
最も達哉だけアスモデウスの修理に行ってはいたが、
達哉としては趣味なので問題ないと判断された。
現に達哉はウキウキと喜んで機械弄りしていたのだから何も言えない。
オルガマリーはデミグラスとコンソメスープを作りドラゴンの肉をトリミングしつつ筋を切って調理用ワインと炭酸水に漬けて一日寝かしさらにほぐす。
そうやって一日解した肉をフライパンで焼きデミグラスの鍋に突っ込み四時間炊いてその後一昼夜冷まし。
肉を取り出し加工。さらにデミグラスを二時間煮詰めていきつつ肉を一口サイズに切っていく。
後は只管味が凝縮するまで煮詰めて行って完成である。
これだけ長時間調理しているので・・・
「グヘヘヘ、ゲェーハハハハハハ!!!」
「オルガ、女性がしては拙い表情になってますし、だしてはいけない声してますよ」
オルガマリー発狂状態であった。
そりゃ半月も医務室に軟禁されればそうもなろう。
だがマシュは突っ込まざるを得なかった。
と言ってもそれだけ長時間調理した甲斐もあって今夜は特別美味しいドラゴンシチューだろうと。
マシュは日記のプロット化に目を向けた。
アルトリアから運命力を譲渡されても最終決戦まで持つか否かなのだ。
先日吐き出したように生きたいというのも本音だが現実はそこまで優しくない。
だからその後二人に伝えたもし自分が死んだら有名な作家にこのプロットを渡して世に本として出してほしいと。
というかマスターズ三人衆と保安部は全員遺言を書いている。
閑話休題。
「ただいま」
今の達哉の服装はツナギ姿だった。
「おかえりーそれよりずいぶん時間かかったわね」
「パーツがないからなぁ、共食い整備と保安部の趣味の車から規格加工して無理やりパーツ取して何とかやっているよ」
「そう、でもそのままソファは汚れるわ。風呂焚いてあるから、風呂を満喫して着替えてからここにきてね」
「わかった。今夜の晩飯は?」
「ドラゴンシチューデミグラスソースでにてとライスは気が回らなかったからサトウのパックライスよ」
「了解した」
オルガマリーとそういうやり取りをして、
体をしっかり洗ったのちに風呂にゆっくりつかり、
達哉は汚れたツナギを洗濯機に突っ込み置き洗いにセットして、
久々の罰点マークの入った赤色の私服に着替える。
これはダヴィンチちゃんが暇な時間を見つけては夜なべして裁縫しなおしたものだ。
ついでに魔術礼装としての機能も持ち合わせている。
下手すれば施設内戦闘も考慮せずにはいられないという事情があった。
現にアルトリアには裏技的に召喚システムに介入され侵入を許し、その挙句天使軍団も送り込まれたからである。
万が一に備えて損はないに越したことはないのだ。
召喚システムFateにも常時の監視が入った。何かあれば即応体制が取られるレベルである。
そして万が一のための脱出用車両にも大きく手が加えられることになった。
ダヴィンチが趣味で組み上げていた物だが万が一が在るとして仕様変更あるいは拡張がなされることに成った。
仕事が増えたダヴィンチは枕を涙で濡らした。ついでに魔術チートのロマニも巻き込まれ枕を涙で濡らしたのだった。
「敵はなぜこちらに直接攻撃をしかけてこないんだろうな・・・レフが居たし」
「そーれが謎なのよねぇ、人理修復されて困るのは向うだし?」
「ニャルホテプの妨害でしょうか・・・」
「それなら冬木終わった辺りで仕掛けてくるはずだ。と言う事はゲーティアを妨害して何かしらが在るという事だ」
達哉の言葉にオルガマリーとマシュが天井を仰ぐ。
そう相手のアクションが一切ないというのが不気味である。
いや第四で直接戦闘したがそれ以降のアクションがまるでない。
もっとも真相としてはアクションは取ろうとしているが悉くニャルラトホテプに策略やら特異点を乗っ取られ、
自慢の千里眼もジャミングされているというのが真相だったりする。
まぁそんなことを知る由もないので所詮は妄想と切って捨てて三人はドラゴンシチューに舌鼓を打っていた。
「ところで私の車椅子一号機は・・・」
「アレは完全に破棄だ。部品取にも使えない」
三蔵がぶっ壊したマシュの自動車椅子一号機は完全大破であった。
もう全部イカレていて部品取りにも使えない鉄屑と化したのである。
「仕様は一号機の方がよかったんですが・・・」
「今はアスモデウスの修復と緊急離脱車両の製造が優先されているから、それで我慢してくれ」
「はい・・・」
床擦れ防止は二号機もしている、むしろ実戦向きに調整されているのは二号機の方である。
鉄屑と化した一号機は居住性追求型だった。
だってあれダヴィンチが超特急の深夜テンションで作り上げたのだからそうもなる。
本来は戦闘用に調整された二号機の方が正しい仕様だった。
「あっですが・・・保安部の皆さん、愛車大事にしてましたよ?」
アスモデウスのパーツに加工されていく愛車という趣味に反対の声は上がらなかったのかとマシュは言うが。
「この騒動が終わったら中古新車を買う事で話はついた」
「その予算は・・・」
「無論カルデア持ちよ、大丈夫資産ならそれでも余りまくるから」
「そうですか」
話しは既についているとホロホロに解ける肉をスプーンの上に乗せて口に運びながらオルガマリーがそう言って。
マシュは安堵する。
「そう言えばうまい棒って美味しいのタツヤ?」
「あっそれ気になっています」
「ああ二人は食べたことないか・・・」
オルガマリーは貴族である。駄菓子なんて食べる機会自体が無いし、
マシュに至ってはカルデア暮らしのデザインチルドレンであるこちらも機会がない。
そしてなんでこんな話題になったかというと。ベルベットルームのエリザベスが食っていたからである。
マシュもロンゴカリバーを得たことによってウリエルとラウンドテーブルの調整の為に認識し入れるようになったからだ。
そう言えば食事には括ってもお菓子類に手を出す余裕は無かったなと達哉は思い至る。
「にしても一番驚いたのはエリザベスの住む東京で戦争やっていて、世界各地でも戦争やってるってことだよなぁ」
そうエリザベスの住む世界は混沌の中にある。
エリザベスの雇い主たちやらが中核となって日本政府が奔走している世界らしい。
なんでも天使や悪魔が暗躍&大暴れしているとか。
それで世界中大混乱らしいのだが。
エリザベス自身はフィレニャルの計画に則って強制徴用されたと愚痴っていた。
なんでも達哉達を一番導くのに適したエリザベスだからと。
まぁ彼女も彼女で苦労しているという事でこの話は脇に置いておいて。
「それはそれでタツヤは何味食ってたの?」
「ん?俺か?定番のコンポタだ」
「「無難~」」
「無難でわるかったな!!」
無難と非難されることに達哉も珍しく感情を顕わにする。
それだけメンタルが回復して来た証でもあるので一概に悪いとは言えないが、
だがアルトリアの件は三人に大きな傷を残したのも事実である。
所謂空元気という奴だった。
「しかしパックご飯も進化したなぁ」
「達哉の時代の頃はどうだったのかしら?」
「不出来なもち米みたいだった」
「「・・・」」
近年は加工技術も進み炊き立てご飯の様になっているが、
初期型は言うほど美味しくなかったのだ。
それでも食わねば生きていけない。なんせあの事件後、街は浮遊しライフラインが全て切断されたのだから。
「しかしそろそろ訓練したいな・・・」
「私は溜まりに溜まった書類の決裁が・・・」
もうこれではかと半月と一週間は休み取らされたのだ。
達哉は体が流石に鈍ると言い。オルガマリーには溜まった書類の決裁があった。
ツケがたまる一方で最早三人共泣きたい。
「とりあえず寝る」
「そうね明日の事は明日考えましょう」
「オルガの言う通りですね」
と言う訳でドラゴンシチューとサトウのパックご飯を平らげ三人共明日に備えた。
それから五時間後、警報である。
緊急解決が必要の特異点の発見の警報だった。
達哉は極限サバイバルして来たので手慣れたように起きれたが、
オルガマリー&マシュは違った。
暢気に寝間着など着て寝ていたのだった。
達哉は戦闘礼装に改造された私服を着ていたので先に行くと管制室に走る。
マシュとオルガマリーは完全熟睡状態だったことも手伝ってヨタヨタだ。
そして20分後、何時もの会議室に皆が集まる。
床の液晶パネルに表示されるのは日本だった。
「方式は冬木の時と一緒だ」
「平行世界浸食現象ね」
その特異点は第四次冬木戦争と同じ形式である。
最も地域に年代が違うが。
「そう言えば森さんって平行世界の英霊なんだよな?」
「自分でもわかんねぇけど人理の知識だとそうだな」
「何か知っていることは?」
「わかんねぇよ、この時期の越後はゴタゴタしてるつーことくらいで」
「情報取り寄せます、うわぁ」
長可のいいようにマシュがデータバンクからこの時期の越後のデータを取り寄せる。
ドンびくほどにグダグダだった。
「もしかして謙信が生まれないか殺されたかのどっちかしらねぇ」
オルガマリーがぼやくように言う。
特異点ならあり得る状況である。
又も平行世界の尻拭いかと全員が溜息を吐いた。
「だが無視はできない、不味い感覚がする」
達哉の感はそう告げていた。無視してはいけない物だと。
「謙信が死ぬか生まれないか、はたまた別の要因があるか、兎に角にって見ない事には分からんな」
孔明は相変わらず葉巻を吸いつつ言う。
そして全員の腹は決まった。
今回からもマシュはイドタイマー装着決定だった。
ついでに万が一の劇薬も続投である。
本当にしょうがないのだ。
「今回はロマニも同行して」
「わかってるって」
そう言いつつ皆がコフィンへと向かった。
まだ謙信は虎千代と呼ばれるくらいだった。
年齢で8歳御程度。されどその才は神童。
後に越後の龍、毘沙門天の化身と呼ばれるのは伊達ではないのだ。
だがそんな彼女も死にかけていた。
現代でさえも山育ちは理不尽級の強さを誇るのであれば戦国時代の大熊はより理不尽である。
―ああこれ終わったな―
と虎千代の脳裏を過ぎる。
熊が大きく振りかぶった瞬間。
世界が凍った。
虎千代ですら認識できぬ感覚。
そして気づけば罰点印の入った異国の衣服を身にまとった青年が熊の首を切断したのだった。
「無事か?」
「え、あ、はい」
「ならよかった」
その後二人の女が後に付いてくる。三人共、虎千代が見たことない服だった。
一人は虎千代も見た事も無い鉄でできた荷車のような何かに乗っていた。
「タツヤ、いきなり走り出したからびっくりしたわよってその子は?」
「知らない、だがこの熊に襲われていたから助けた」
「これ熊なんですかね」
タツヤと呼ばれた青年はそう言いつつ刀の血糊を拭いつつ女性の問いに答え、
女性は呆れた様子だった。
もう一人はまだ成人前のあどけなさが残る少女でタツヤの斬り倒した熊を見てそう呟く。
だってグリズリーの二倍の体格はある熊である。もう幻想種の域に達しているからKUMAとでもいうべきだろう。
「ひぃひぃ三人共ボクを置いてけぼりにしないでよー」
「アンタデミサバなんだからというか戦場では全力疾走できてたわよね?」
「アレ魔術使ってブーストしてたんだですよ。今のボク、1割しか出力できてませんからね」
「一割で時間操作できるなら十分に化け物よ」
そんなやり取りを虎千代は目にしつつ。
「異国の戦士様ですか? 助けてもらってありがとうございます」
「異国の戦士って十分日本人ですけど」
「え?」
「え?」
普段は熱光学迷彩式衣装合わせで現地住人の標準の服装髪色にあわされている。
見抜けるのはサーヴァントか異質な者共だけだ。
「ちょっと、ダヴィンチ故障したの?」
『いやこっちでのモニタリングでは問題なし、順当に稼働中だ』
「その方は、虚空に絵が浮いているようですが」
『「「「「なっ」」」」』
ライン通信にも気づいたらしい。
彼らは虎千代が明らかに常軌を逸脱している。
「ちょっと見せてもらうよ」
「え?」
そう言って褐色肌の男が虎千代を見る。
「・・・そうかそう言う事か」
「何かわかったんですか?」
「半神だよこの子はしかも神よりだ」
「「「!?」」」
通常の半神より神よりなのはギルガメッシュや頼光が代表格であろうが。
この時代でそれを生むのは不可能に近い。
「羽化前とはいえこれは・・・不味いな・・・」
「どれほど不味い?」
「このまま成人でもすれば神になる、価値観の矯正が必要だね、というよりも噂結界の効力でブーストされているかもしれない」
「そうか・・・君。名前は?」
「虎千代です」
リーチ一発満貫ドラドラであった。
上杉謙信の幼名は虎千代だったからである。
全員の自己紹介を済ませとりあえず為景に会いに行くことになった。
「もう良い、分かった」
屋敷に乗り込み為景に未来の品々を見せペルソナ能力さえ見せた。
あと虎千代の相手をできるというのが決め手で客将として雇われることになったのだった。
要するに厄介払い&戦力確保が目的である。
付近の村などの調査も認めてくれた。
ついでに虎千代がサイコパスになった理由も判明した為、
虎千代の実母は追放と相成った。
「矯正プランはこちらで考えますが数日、様子を見させてもらいます」
「頼む」
「いえいえ医者ですので」
幾ら特異点化の解決とはいえ最初は虎千代の神化を解除するには反対と思われていたが、
未来の技術では難しくとも治療可能と知って我が子の為にロマニに飛びついた。
本人の視点という認識さえ矯正すれば神化はないからである。
ロマニも生前はある意味装置であったがゆえにだ。
「ところであの熊とかいるのに大丈夫なんですか?」
「いや、流石にあの巨体の熊はそうそう居ないからな!!討ち取った熊を見分させてもらったがアレは山の主かなんかじゃろうて」
達哉の疑問に為景はそう言う。
「というかお主の上司と英雄たち解体なれしすぎでね?」
「前にも説明しましたが、食料入手限られているんで。竜とかも討伐して食材に回していますし」
為景としては気が遠くなる話だった。
竜を普通に討伐できる英雄軍団、それが未来から来て色々してくれるのだから。
為景は受け入れる他なかった。
「そう言えば、後の儂はどう語られておるのだ?」
未来の事は話せないが些細な事だけは話せるという事なんで聞いてみた。
「虎千代の活躍が大きすぎてパッとしない感じに」
「だねぇ、歴史の教科書にも構文にも書いてないからねぇ」
「虎千代が偉業を成すのであればそれでいい・・・でも儂ちょっとショック」
達哉とロマニの言葉に為景はショックを受けている様子だった。
だが同時に誇らしくもあった虎千代が長男を何やらかの理由で押しのけ当主の座に就き。
偉業を成し遂げたのがだ。
その理由も分かっていた長男は病弱だ。
他は凡夫、なら才能のある虎千代が後を引き継ぐのは当然と言えた。
人の心が分からぬが、それも矯正と治療できるらしいとの事で為景は安堵の息を吐いたのである。
「というか未来の女は逞しい、熊をああも手際よく解体するとは」
KUMAはオルガマリーの手によって腑分けと解体が成されていた。
熊肉は臭そうなイメージがあるがちゃんと調理すれば美味いのだ。
故に為景も目を見張る勢いで素早く解体していく。
ちゃっかり虎千代も加わりオルガマリーに強請りながらKUMAの解体法を学んでいた。
「ところで領土の情報を知りたいのですが・・・」
ロマニがそう切り出すと為景はため息を吐いた。
「このような熊が頻繁に出没し山神様が荒ぶられ、村にも魑魅魍魎が出没しておる・・・」
「達哉君どう思う?」
「噂結界だな、十中八九」
「噂結界?」
「我々の世界は歴史事焼却され七大特異点を攻略中なのは説明しましたね?」
「まぁ普通なら信じられぬ話であるが神仏を宿す者達や技術力を見れば納得できる・・・して?」
「もう一つ戦っている奴が居るのです、ニャルラトホテプ。太極図の黒、全生命体の無意識の化身にして神とも・・・」
「それが?」
「奴は試練と評して様々な物を与える噂結界もその一つ、人々の共通認識が一致した瞬間、その願いが叶えられる」
「なんと!?」
「こちらの達哉君が二度追っ払いましたが、ニャルラトホテプは人間そのものであり接触した知生体の無意識下の影です一時的に行動不能にするのがやっとで殺すことは不可能です。第六で再起動も確認しました此処はもう戦場です」
そう既に此処は戦場と化している。
情報統制できぬととんでもないことになるのはカルデアが証明済みだ。
「達哉殿はそのにゃるらとほてぷとかいう神と戦ったのだろう? 現状は」
「随分マシです、詳しい事には村々に流れている噂を確認し具象化した噂の存在潰して行けばいい。ですが権力で情報統制をおこなうとあの噂は真実だったんだと思われかねません」
「あい分かった儂たちはそなたらを手厚く歓迎する。ナニカ必要な物があったらもうせ」
相変わらずの崖っぷちである。
もうカルデアは慣れていた。
「ふぅKUMAの解体作業終わったわ」
「肉は?」
「全部カルデアの私の私物冷蔵庫行、熊肉は癖強いしね」
そう言って、オルガマリーが額の汗を拭う。
「オルガマリー殿!! 私にこの包丁くだされ!!」
「駄目!! 一級職人に作って貰ったやつなんだから、こら駄々こねて振り回さない!!」
駄々こねて包丁振り回す虎千代をオルガマリーは即座に制圧する。
伊達にアマネの訓練受けて免許皆伝を貰っていないのだ。
今や彼女のCQCの腕前は世界でも五本指に入る程だ。
「・・・未来の女子はあれが標準なのか?」
「いえ我々の組織上鍛えないとアカンので・・・」
「そうか・・・」
どういう未来なんだ為景は天井を仰いだ。
そして事件は起きた。シリアス的な意味じゃなくてギャグ的な意味で。
カルデアでは食に文句を言う事は駄目な事である。
極限状況下なのだからどんなものというか自分自身が頼んだものは食べなくてはいけないし文句言ってはいけない。
もし味に批判などすれば恐ろしい物が待っている。
「なんだねこれ」
「チキンラーメンよ」
台所に鶏がらの良い匂いが香る。
チキンラーメン即ち即席麵の原点だ。
それを人数分、オルガマリーは煮ていた。
「ううむ煮るだけで、このような物が出来るとは」
「私達だけ未来食品って訳にもいかんでしょう・・・この程度なら人理に影響ないはずだから皆で食べましょう」
為景はオルガマリーの真摯っぷりに涙が出そうになった。
カルデアの誰も彼もが敬意を表してくれるのだから。
だが匂いに釣られて入って来た虎千代が・・・
「料理の味なんてしょっぱい、辛い、甘いだけでしょう」
この場にいた全員とカルデア管制室が凍り付いた。
「うふ、うふふふふふふふ」
オルガマリーが怪しい笑顔を浮かべる。
カルデアは思った、所長の地雷踏み抜きやがったと。
「ならアナタに特別不味い物を食わせてあげるわ、管制室、MREかシュル缶用意しなさい」
『オルガマリー!!MREはまだいいがシュル缶はライン越えだ下手したら全滅する!!』
ダヴィンチも此れには止めに入ったMREはまだいい。
本当に糞不味いだけだがシュールストレミングは洒落になっていない。
本当になんであんなもの作ったとダヴィンチも思うし、
ここで開閉したら屋敷が使い物にならなくなる。
故に此処はダヴィンチの説得を聞き入れMREで済ませることにした。
「うっうっううううううううう・・・」
幾ら神視点と言えど不味い物は不味いのである。
皆は美味しそうにチキンラーメンを啜っている中で、
虎千代一人だけが糞不味い栄養食と言っても過言ではないMREを食べていた。
もちょもちょねとねと味気ないが舌に直撃し不味い物が如何言う物かを理解する。
これに比べればいつも食べていた物は美味しい物だと理解できるのである。
「父上・・・少しでも良いですから。その麵料理を・・・」
「駄目だ。カルデアの面々から禁じられておる、カルデアの本拠地で飯に文句垂れようもんなら一週間はそれだ。今夜だけでも有情と思え」
「そんなぁ・・・オルガマリー殿、先の発言謝りまする故に麺を麺を!!」
「アナタにとって食事は栄養補給なんでしょう? なら栄養俸給が最大効率出来るそれでいいじゃない」
「そんなぁ」
虎千代泣き崩れる、恐るべし世界一不味いレーション。
神でさえ認める不味さだった。嫌栄養価とかカロリー面見れば優秀なのだが、
如何せん触感と食べごごちに味が終わっている。
「しかし未来の酒は良い物のよシュワシュワ感と冷えている感じがたまらぬ」
スーパードライを口につけながら為景は一息つく。
この時期の日本にビールはない。
故に未知の感覚だった。
なお虎千代ドロドロのインスタントコーヒーを涙目で飲んでいた。
そこまで徹底しているのだカルデアの食事事情は文句を言ったらシュル缶かMREの刑一週間である。
最も今回はあくまで今夜だけで虎千代の味覚矯正も含めて行った罰ではあるが。
「所長、言われたとおりにうまい棒全種買って来たぞ」
其処に真っ先にチキンラーメンをかっ込んで姿を消していた達哉がうまい棒各種を抱えてやってくる。
ついでに三ツ矢サイダーも持って来ていた。
「私はたこ焼き味で」
「うーん、此処は悩むけどテリヤキバーガーもいいかしら?」
所謂、食後のデザートだった。
マシュはたこ焼き味を取りオルガマリーは悩みつつテリヤキバーガー味を手に取る。
達哉は堅実にコンポタだった。長尾衆の皆様方も取っている。
因みに虎千代はMRE付属の糞硬いチョコレートを齧る事しか許されなかった。
もう珈琲も飲み終わったのでお湯を涙目で飲んでいる。
「オルガマリー殿・・・私にもその菓子を」
「駄目ったらダメ、明日からは許してあげるから」
「ならば力づくで!!ギャフン!?」
「アンタ程度の腕で私に勝てる訳ないでしょうが」
ならば力づくでとオルガマリーに飛びかかったが投げ飛ばされ虎千代は気絶した。
無論オルガマリーは本気ではない、本気だったら追撃で銃弾か蹴りが飛んでくる。
流石に謙信時代か景虎時代なら対抗できるだろうが今は幼年期の虎千代である。
大人に挑む子猫程度でしかない。
如何に才能があろうとも実力が違う、地面を食んだ数の経験が違う。
ただの天才の虎千代ではカルデアマスターズ三人の内一人にも勝てないのだ。
そして次の日。
「うまうま!!」
「お代わりもいいわよ!!」
「お代わりもですか!!」
朝食にしては重いがドラゴンシチューを皆が堪能していた。
元々三人で喰うには量が多かったのでついでである。
虎千代はこれが美食、これが美味いという物なのかと感動していた。
凄まじい勢いで食べている。
長尾衆の皆も喰ったことのない未知の料理+竜の肉という事もあって感動していた。
無論、これには打算がある、長尾衆の信頼を勝ち取るのと虎千代の味覚矯正の為だ。
まず最初に不味い物を食わせて味覚の基準と基礎を作り美味い物を食わせる事によって美味しいの基礎を作るという物だ。
最もこれは偶然の産物だけれども。
結果上手くいった。
虎千代に美味い不味いを教え込んで味覚の矯正に成功したのだ。
「あの子が泣きながら物を食べるとは・・・」
「サイコパスというのは思い知らさねば学習しません・・・もっとも現代ではこんな荒治療許されませんが」
「許されない? なぜ?」
「人的保障のためにですよ、豊にはなりましたが、人は人を思いやり過ぎる傾向になったとも言えます」
「それはよきことなのだろう・・・無慈悲に人が死ぬよりは遥かに良いが・・・」
「人権の名のもとに過激な活動をする輩も出ます、過去を負の遺産として葬り去ろうとする輩も、我々はその過去に支えられ今の豊かな生活を手に入れたと言うのに・・・そして宗教観の違いから世界では火種が絶えません」
「・・・どの時代も荒れているのぉ」
諸行無常とはまさにこの通り。
過激派な活動家が過去の芸術作品を破壊しようとし。
未だに宗教観によるテロリズムや国家元首の身勝手で戦争は終わらない。
正しく諸行無常といった物だ。
「それでもあの子たちが笑って花畑で暮らせる世にはなっているのか?」
「それは・・・」
為景の問いにロマニは喉をつのまれせた。
為景にも分かる。あの三人はそう言う日常が似合う只人だ。
謀略とか暴力とか関係なく平凡に生きていているただの人だ。
無論、分かった上で聞いた。
只の人が虎千代を瞬時に制圧できる実力を持つはずがないと。
状況的に見れば、英雄を求める時である。
その無情さに為景は胸が締め付けられた。
一体いつまでこんなことが続くのかという終わりのない問いだった。
『終わらないさ。だが終わらさせるそれが我々の計画』
ロマニの右耳に吹き込まれるように紡がれる言葉。
ロマニは慌てて横を振り返るが誰も居なかった。
しかし、
影と蝶の計画はゆっくり確実に進んでいたのである。
と言う訳で始まりましたぐだぐだ越後。
今回はお酒パワーを使ってもガチで自律神経やられて鬱が酷くなるレベルで気温と気圧の寒暖差が激しいので遅れた上にキリ的に丁度良かったので文量少なめです。
為景さん未来知識と彼らの異能に興味を持って客将として迎え入れる。
ついでに虎千代ちゃんもカルデア側に興味津々で懐くがしかし料理を栄養補給とか言ったせいでMREの刑に処されるの巻き。
当カルデアでは作られた料理にいちゃもんつけたら一週間毎日三食MREの刑に処されます。
と言っても次回は虎千代ちゃんたっちゃんに限界までフルボッコされますがね。
今でやったらアウトですけど、サイコパスを矯正するには暴力が手っ取り早いですから。
あと薬剤治療やカウンセリングというコミュも平行して進めていきます。
ついでに袋麺という名の味の暴力が上杉家を襲う回にもなりますね。
だってお湯さえあればベルベットルームサトミタダシ出張店から幾らでも買えますもの。
戦国時代の貧しい料理喰うくらいなら袋麺用意するのは当たり前です。
因みにシャドウボーダーはロマニが遠慮なく魔術チートできるので各種機能拡張済み。
この時ガチで逃げるのに使われるとは思っても居ませんでしたがアルちゃんの一件があってから拡張工事開始です。
お披露目はカルデア襲撃事件までまだまだ先ですけど。
あと三蔵ちゃんがぶっ壊したマシュの自動車椅子一号機はダヴィンチちゃんが深夜テンションで作り上げた戦闘にも耐えうる超高級仕様です。
二号機は其処からさらに無駄省いて床擦れしない程度の超実戦仕様です。
マシュ的には故に一号機が恋しいですね。
あと地味に高級思考と栄養食しか食ってこなかったんで。オルガマリーとマシュはうまい棒知りません。
と言う事でサトミタダシでうまい棒買ってくるたっちゃんでした。
個人的にはたこ焼き味が至高だと思う(燃料投下)
次回も遅れますユルシテユルシテ・・・