Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです   作:這い寄る影

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いちばん嫌らしい嘘は、いちばん真実に近い虚言だ。


一粒の麦も死なずば 二部より抜粋




四節 「現実の境界線と罪意識の軋み」

「意外ねぇ」

 

「なにが?」

 

「アンタっていいところのお嬢様よね・・・、こう見事に料理できるなんて」

 

「現実逃避の一環よ・・・もう三年ね」

 

マルタは肉を潰しつつ意外といい。

オルガマリーはどうでもよさそうに血抜きされ、既に腑分けが済まされた鳥の筋を切っていく。

 

 

あの後。聖別された武器にルーンとオルガマリーの強化を刻み込んでから。

彼女はセーフハウスへと戻ってきていた。

明日は会議が無い、時間もゆっくり取れると思い。

丁度、血抜きされた鶏があると思立って。

思い切って腕を振るうことにしたのである。

 

 

なぜ、お嬢様である彼女が料理が出来るのかと言うと。

カルデアに来てから現実逃避の一環で始めたのが、手料理だった。

 

心情的にというか、当時の彼女は周りが潜在的敵にしか見えない精神状態だったのである。

食堂には行きづらかったし行きたくなかった。

だったら自分で作る他ないと始めて。

これが思いのほか楽しくて。仕事が終われば魔術研究などではなく手料理の練習ばかりをしていたものだ。

本を読み番組を見て学ぶ。

ネットの情報網さえ使って腕を磨いていた。

料理に熱中していたのは、魔術研究で発生する義務感とか。

仕事や所長職の中で晒される。他者とのコミュニケーションが不要だったからである。

食器に食材、調理器具まで、ポケットマネーで賄えば。神輿の少女如きに誰も気にするようなことは当時のカルデアではかった。

だから仕事が終われば、自由気ままに出来る手料理という物は彼女にとって救いだった。

自分勝手に出来る、味も自分好みにできる、誰にも喜ばれないが同時に他者への干渉をせず。

自己完結できるとして。

 

さらに彼女の舌も一流だ。伊達にカルデアの所長をやってないわけではない。

会食などで一流料理店の味を知っている。

故に自分と金が許すままに自由にできるということもあってどっぷり浸かっていたのだ。

気付けば三年である。

オルガマリー自身の腕もすごい物になっていた。

 

暇さえあれば読書か手料理につぎ込でいたし。

嫌々やる魔術とは違って、すごく楽しかったから。

そう言う事もあって、地味に料理が得意になっていたりするし、グルメにもなっていった。

もっともストレス性の拒食症になりかけていたということもあって。

仕事に戻れば即座にリバースしていたから。

太ることに悩まされずには済んだが。

 

閑話休題。

 

「オルガちゃんは綺麗なんだし、手料理も出来てスタイル抜群なんだから、いいお嫁さんになるわよ」

 

オルガマリーに教えてもらった通りに野菜をたどたどしく切り分けつつ、茶化すようにマリー・アントワネットが言う。

お嫁さんという言葉を聞いて思い出す。

 

「そういえば。糞親父、婚約者とか最後まで連れてこなかったわね」

 

ふとオルガマリーは呟いた。

魔術師の大家はそれこそ古臭く黴た。政略結婚とかは普通だ。

だがいま思ってみてみれば。そういったやつを連れてきたような覚えが一切ない。

 

「いいじゃない、私とルイは政略婚だったけれど幸せだったからよかったけれど。政略婚で不幸になるっていう話は、私の時代にはよく聞いていたもの」

「そうね、選択できるというのは幸運な事よ」

「・・・うーんでもねぇ、私の意識が飛んでいるだけかもしれないし、あとで書類関係漁ってみようかな・・・」

 

ある種、恋愛の自由があるのならそれは幸運なことだと二人は言って。

オルガマリーはその意見に頷きつつ、自分が認知していないだけでいるのかもしれないと呟きながら。

帰ったら、一応確認しておこうと思い立つ。

知らない婚約者なんぞ御免こうむるからだ。

アニムスフィアの当主は自分だ。

故人のマリスビリーではない。

故に知らない婚約者なんぞ、取る気は一切なかった。

 

「そう言えば。オルガちゃんは気になる人とか居るの?」

「居ないわよ・・・、そういう暇あったことなんて無いし。」

 

マリスビリーが自殺してからオルガマリーは南極暮らしである。

そんな出会いなんぞなかった。

後継者候補とか言われていた。自分より優れ、家との繋がりも深いキリシュタリアは反りが合わない。

と言うより当時は自分より優れているから嫌いだとオルガマリー自身は考えていたが。

いま思えば、そう言った感情ではなくて。

単純に彼の人間性が嫌いだったのかもしれない。

何処までも雄々しく英雄のように進める彼が嫌いだったのかもしれない。

そんな思考を他所に。

リビングからカウンター越しに調理を眺めていたエリザベートが。

 

「だったら、あの達哉って子はどうなのよ」

 

というものの。

 

「彼は友人よ」

 

オルガマリーは脳裏に手を伸ばす彼の姿が写り込むものの。

それはあくまでつり橋効果だと切って捨てる。

 

そんなものを達哉に押し付けて依存はしたくなかったゆえにだ。

つまんないーとエリザベートは憂鬱下に調理の鑑賞へと目線を戻す。

当初は彼女も参加していたのだが。

食材を悉く駄目にするため。オルガマリーとマルタと珍しく笑顔を引きつらせたマリー・アントワネットが摘まみだして。

そこで見学させているのだ。

 

「さて、そろそろスープを」

 

鍋の様子を確認しようとして蓋を開けた時にバングルが鳴る。

通信音は文字通信ではなく。

映像付きの音声回線だった。

何かあったのかと思いつつ蓋をひっくり返して盆の上に置いて。

クツクツと煮られている茸とり肉のトマトスープ煮込みの味を見つつ。

バングルの通信をオンにする。

映像に投影されたのは達哉であった。

 

「何かあったの? タツヤ?」

『噂が具現化している』

 

達哉の見ている視界のコンタクトレンズからバングルに経由された映像が投影される。

見事にフランス語で「サトミタダシ」と看板に描かれている店が映し出されていた。

それにオルガマリーは顔を顰めた。

マシュは向こうで呆然としている。

ニャルラトホテプの介入が証明されたのである。

 

「ならセーフハウスに戻ってきて。ジャンヌを除くフランスのサーヴァント組はこっちに全員いるから、前線組にはライン経由で伝えましょう」

 

今現在、セーフハウスに居ないのはジャンヌと前線組だけである。

書文は現在敵陣の偵察、長可は時たまやってくる斥候部隊規模の相手を蹴散らしており。

この場にはいない。

ジャンヌとは一応カルデア経由での契約をしているためライン通信が可能だ。

達哉が了解と言って通信を切ったのと同時にため息を吐く。

 

「何かあったみたいね」

「ええ最悪よ」

 

オルガマリーは吐き出すように言うほかなかった。

この特異点で。

或いは下手をすれば残る6つの特異点で達哉の世界と同じものが再演されようとなっているのだから当然であった。

オルガマリーは万が一のためにジル元帥へと連絡を走らせる。

こんなこともあろうかと簡易携帯機器を彼に操作を説明して置いてきたのが役に立ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

達哉とマシュがセーフハウスに戻ってきて扉を開ければ芳醇な料理の数々が大机の前に並べられている。

どれも見事な代物だった。

プロ顔負けとはこういうことか。

 

「お帰りなさい、タツヤ」

「ただいま所長」

 

そういうテンプレーション的、挨拶を交わしつつ。

促されるままに達哉は何時もの席に着き。マシュがその隣に座る。

 

「説明した方がいいか?」

「まずご飯食べてからにしましょう。あの後ジャンヌにも連絡したらジル元帥を連れてくるって話だから」

「分かった。」

 

 

達哉はそう言うが。

まず料理を食べて胃と口を満たして体とオルガマリーは言う。

それに達哉は頷きつつ

色とりどりの食事を見る。作ったのはエプロンを現在進行形で外しているオルガマリーであることは分かるが。

先も言ったように、達哉からすれば、オルガマリーが料理を趣味にしていることは知らない為。

意外過ぎる一面だと達哉は思いつつあえて聞く。

 

「これ全部、所長が?」

 

達哉の問いに不満そうに、オルガマリーは頷いた。

 

「ええ、最も手早く作れるものだらけで満足のいく代物じゃないけれど」

「でも十分美味しいですよ」

「仕込みやら煮込みが甘いのよ・・・本来ならもっと時間をかけて丁重にやりたいのだけれどね・・・」

 

マシュの賞讃にオルガマリーは仕込みや調理時間が十分ではないとのこだわりを言う。

以外だなぁと思いながらマシュもを切って口に運び込んだ。

十分に美味しいのにと思いながらだ。

そんなこんなで料理を食べつつ雑談をする。

 

 

「あー、ビールが飲みたいわね」

「いや、所長は未成年じゃ・・・」

 

鶏肉を口に運びつつぼやく。

達哉はそれに突っ込んだ。

日本国民は20歳からの飲酒喫煙が彼にとっての常識だからだ。

 

「多国籍組織のカルデアに酒の年齢制限はないわよ」

「術式によっては子供のころからお酒を嗜んでいる方もいらっしゃいましたからね」

 

オルガマリーは、さらりとそう告げてマシュも肯定する。

魔術協会の一部門且つ国際組織のカルデアではイギリス法律を主体とした。

多国籍的法律で動いている。

ついでに言えば魔術師の巣窟でもある為。そういった物は形骸化しており。

未成年だろうが喫煙、飲酒は可能だ。

さすがに麻薬キメて、トンでいく奴は選考段階で弾いてるのが予断となる。

故にオルガマリーもマシュも喫煙に飲酒可であるが。

マシュに関してはロマニが笑顔で「喫煙飲酒は君は絶対に駄目だからね」と言明されているから飲まないだけであるし。

オルガマリーの場合はもし飲酒なんぞすれば入り浸りになるのは明白であったから普段は飲まないだけである。

そうこうしているうちに、ジャンヌとジル元帥がやってくる。

 

「お待たせしました」

「すいません遅れまして」

「気にしないで。状況は説明した通りよ」

 

 

二人のあいさつを適当に受け取って椅子に座る事を進めつつ。

台所にラップしておいたキノコとクルミのブルスケッタを出し。

ベルベットルームの方のサトミタダシで購入しておいた「マッスルドリンコ・R」を出す。

 

「・・・嬢ちゃん、そりゃねーよ」

「うむ・・・この料理で。これはな・・・・」

「生殺しにもほどがあるという物・・・」

 

美味そうな摘まみ系料理があるのに。

酒ではなく、マッスルドリンコである

 

 

「私も詳しいことを知っているわけじゃないのよ、概要はパッと見たけれどね。ただ噂すれば具現化するってわけじゃないんでしょう?」

 

達哉に説明するようにそう言って指示を出す。

過去の映像こそ見たが詳しい説明などはなかった。

だがパッと見て噂すれば具現化するわけでもないというのはオルガマリーにもわかることである。

達哉はその指示を聞いて意を決したように説明する。

 

「まず噂の具現化には条件がある、ニャルラトホテプという邪神の類が張る結界の影響下にある地域でしか噂は具現化しない」

「ニャルラトホテプですか? ・・・聞いたことありませんが・・・」

「ジャンヌの疑問も最もだ。が・・・マルタさんは知っているようですね」

「ええ、生前、主が盛大に関わった悪魔の事よね、座で知ったわよ・・・」

 

マルタは生前の事もあって知っていた。

無論、ニャルラトホテプの事もである。

 

『異常だね、何で知る英霊と知らない英霊が居るんだ?』

 

ロマニの疑問である。

英霊の座では抑止の関係上、英霊たちに共有される情報のはずである。

それだというのにジャンヌや宗矩にクーフーリンは知る様子もなかった。

おかしな矛盾である。

 

「奴は運営側の存在だ。フィレモンの事も考えてると、人類に対する試練としてサーヴァントの召喚や情報共有度に差があるのかもしれない」

 

だがそれもあり得ることだと達哉は言う。

阿頼耶識の具現である以上、ニャルラトホテプもまた運営側の存在だ。

試練と称して召喚されるサーヴァントの記憶から共有情報を抜き取ることも造作もないだろう。

ニャルラトホテプと対局の立場にあるフィレモンとて同じだ。

連中は総じて試練の為には手段を選ぶことはないのである。

 

「アイツら・・・ホント手段選ばないわね・・・」

 

エリザベートは片手で頭を抱えつつ、マッスルドリンコを飲みながらぼやく。

月では遊星関係での対策のために付きまとわれた経験があるエリザベートならではである。

 

 

「とにかく、阿頼耶識側の運営は信用ならないとそう言うことですかな? 主殿」

「ああそうなる」

 

達哉は宗矩の言葉に肯定する。

ニャルラトホテプは無論の事。

フィレモンも対象だ。

 

 

「だけどそこまでの力をあいつが持っているのかい? 僕の時は神父がトチ狂って町の一角が魔界化したけれど」

『あるらしいよ、座では共有されていない情報だけれどね』

 

だがそれでも、噂で世界の改変するということはアマデウスにマリー・アントワネットには信じられなかった。

如何に阿頼耶識の化身とはいえ、そのようなことが出来るのかと。思うアマデウスは言う。

情報共有されていないのが第一ではあるし。

第一に二人が挑んだときは、そこまで無茶苦茶ではなかった。

精々が信仰心に狂った神父が救済を行うために、ガチ物の悪魔を呼び出そうとしたことくらいである。

もっとも町の一角が複雑怪奇なダンジョン化して怪奇現象を起こしてたという時点で十分トンデモだが。

噂が具象化するということは一度もなかった。

 

 

そしてそれは真実だとダヴィンチは述べた。

座での共有情報にはないが達哉の過去を知ることが出来たから言えるのである。

 

(もっとも、達哉君の考察を受け止めるなら、座に情報はあるけれど、サーヴァントの私には連中が意図的に抜いている可能性があるけれどね、クソが、私もカルデアも、ロマニも、マシュも、オルガマリーも、達哉君も、お前らにとっては有益な駒ってわけかい)

 

ダヴィンチは内心で毒を吐く。

そうでも無ければやっていられないというのもが実情だった。

一応の為、達哉が自身に降りかかった”事件”を語る

 

「俺の時は街中に結界を張られて。噂が具象化するというのを利用し、奴は黙示録を成そうとした。

だが荒唐無稽な噂は叶えられない。

なぜなら結界の影響下にある人々が”真実である” ”そうであってほしい”と思うことで、初めて噂は具象化する」

 

「なるほど大多数を納得させなきゃ、噂は具現化しないって事でいいのね?」

 

「ああ、所長やマシュは俺の記憶を見たから知ってると思うが、あの時は”轟大助”という腕利きの探偵に頼んで、一気に効果が出るように都合の良い噂を流布してもらったから、すぐに効果は出た。」

 

つまるところ大多数が納得するような噂で無くては。具現化はしないということである。

達哉の場合は腕利きの探偵に噂の流布を頼むことで即日に効果を発揮させていたが。

 

「つまり、大多数に真実と思わせることが出来れば。即座に効果が発動するということでいいのですかな?」

「ああ、そうだ。さらにマッチポンプを仕掛けて大多数に真実と思わせてしまえば本物になる、そういう結界だ」

 

ジルの問いにそう答える

嬉しくないことに、マッチポンプを仕掛けて偽装を演じて。

大多数の民衆に真実と思わせれば事実になるということも伝えて置く

現に達哉の世界に存在した”新世塾”と呼ばれるカルト集団がそれをやって。

街を浮上させたのだ。

ジル元帥は頭を抱えた。

政治にかかわる身としては、これ以上に制御が難しい力もないのだから。

要するにこの力は、大衆の思考能力を完全に奪いでもしなければ防ぎようがないのである。

 

「さらに都合がいいからと言って使いすぎると、現実と妄想の境界線があやふやになって。噂の具現化のハードルが低くなる。

なぜなら使いすぎると噂が具現化するということが人々の手によって信じ込まれて、鼠算方式に噂具現化のハードルがどんどん低くなる。

そうなれば誰もが、どんな荒唐無稽な噂を信じ込む状況になり、結果的に具現化する」

 

「メイブのヤツあたりが泣いて喜びそうな力だなぁ、ところで達哉、その噂の具現はニャルラトホテプにも効くのか?」

 

「無論、奴自身にも効力は聞くが・・・事態が収拾する寸前までは出てくることはない、噂の力で奴の引く絵図に、不利を押し付けることは出来ても。根本的解決には至らない」

 

「効く、としても止めには使えないか・・・」

「それに噂の力は無差別ですけど。先輩の記憶を見る限り。奴の方で不利な噂は止められますよね・・・」

 

そう言いつつ面倒だなとクーフーリンはぼやき。

マシュは不利な噂はニャルラトホテプ自身が止めるのではないかと考察を言う。

達哉はそれを肯定し。

 

「マシュの言う通りだ。噂の力はあくまで奴の力だ。奴自身の制御下にある。だがそれを必要にしないくらい奴の情報操作能力は高い。たとえ奴の不利になる噂を流し具現化できたとしても十中八九逆手に取る」

 

例えニャルラトホテプに不利になる噂を具現化できても。

ニャルラトホテプはそれらを悉く逆手にとって状況を悪化させたのだ。

第一に何度も述べる通り。

 

「そして噂の力ははっきり言って危険だ。さっきも言った事に加えて、現実と妄想の境界線があやふやになって最終的には奴の領域に結界内部が堕ちる」

 

噂の力は利用する都度に阿頼耶識へと世界を落とすのだ。

使いすぎれば人理修復どころではない。

 

「反吐が出るな。そのニャルラトホテプと言う奴は」

 

ため息交じりに書文が天井を仰ぐ。

敵味方識別はないが。使えば使うほど奴にとって有利であり。

使いすぎた場合を知っている、自分たちが使用を控えたところで。

 

「でも敵はそんな事情知っちゃこっちゃないでしょ、便利だと思えば人理焼却に乗ってまで、欲望叶えている連中なんだから。文字通り際限なく使うわよ」

 

オルガマリーの指摘も最もである。

敵はそんな事情を考慮したうえで使用を差し控えてくれるとは限らない。

寧ろ人理焼却に加担してまで願いを叶えている連中である。

そんな事情知ったこっちゃないとばかりに利用するだろうことは眼に見えていた。

 

「とすると・・・、敵の攻勢を退けたのち、敵本陣へまっすぐ突き進むほかないように見えるのですが」

 

マシュの疑問もその通りである。

なんせティエール以外は陥落済み。

敵の一斉構成で防衛し敵戦力を出来るだけ削る。

無論、敵サーヴァントは再生する恐れがあり。

推測でなら防衛線後、一週間以内に敵の本陣を落とさねばならないクソゲーである。

ジル元帥は頭を抱えた。

民衆に思い込ませればなんでも具象化できるが。

逆に言えば民衆がそれを知った瞬間から暴走が始まるということだ。

故に情報統制は必須、加えて前線での小競り合いも多くなり。

宗矩やクーフーリン及び長可たち戦ガチ勢の意見を加味すると。

防衛陣地の構築、大砲などの設営も急がねばならないのである。

 

 

『マシュの言う手段しかないな、僕らにできることは余りにも少ない』

 

 

ロマニが意気消沈気味に言う。

もう策がどうのこうのではない

フランス軍はティエールに追い込まれ。そこに噂結界の相乗で人理定礎値がA-に突入している。

もうここは、敵がこちらに殺到してきたときに敵陣を防衛線の利点のあらん限りを尽くして戦力を削り。

防衛線でジャンヌ・オルタの首を取るか。

防衛線で凌ぎきったのちにまっすぐジャンヌ・オルタのところまで駆け抜けるほかないのだ。

 

「そうね、それしかないわ。防衛線でジャンヌ・オルタの首を取るかあるいは出来るだけ戦力を削った上でカウンターアタックでジャンヌ・オルタの首を短期間で取るほかないわ」

 

オルガマリーもそれに賛同する。

防衛戦後のカウンターアタックですべてを決するほかないのだと。

良くも悪くもやることがはっきりしすぎていた。

これ以上この議題について語ることはない。

連日の会議で大まかな方針はすでに打ち出している。

噂結界の事に関しては緊急的な会議が必要だったからこうなったまでの事である。

ジル元帥は対策に頭を抱えている。

マリー・アントワネットたちもそれは同様だ。

 

「今更だけれど、私たちよくケンカ吹っ掛けられたわよね」

「良くも悪くも僕も君も若かったじゃないか。」

「まぁそうね、あの時は本当に若かった。」

 

 

「そう言えば・・・なぜジャンヌ殿はサーヴァントの機能をすべて使えないのだ?」

「それは俺にも気になっていたな。奴が手を回していたと思うか?」

 

宗矩の疑問。

それはジャンヌが依然としてサーヴァントとしての機能を発揮し得ないということにある。

あるのはサーヴァントとして補正された身体能力と武器だけで。

スキルは全部使用不可能、宝具にも同様であった。

ジャンヌ自身は「自身が死んだ年だから」と述べて考えているようだが。

抑止の関係上、そういうのは一切関係がないはずである。

となると、ニャルラトホテプかフィレモンが手を回したかとクーフーリンが達哉に聞くが。

達哉は首を横に振って明確に否定する。

 

「いや、後付けされた能力を奴は寸前で取り上げて嘲笑うが、最初から取り上げるということはしない」

「重要な局面で梯子を外すのが大好きってことだな」

 

確かにニャルラトホテプは物を取り上げられる力を持つ。

だが最初から奪うということはあまりしない。与えるだけ与えて暴発させて破滅させるか。

致命的なときに取り上げて梯子を外すのが、主に奴のやり口である。

英霊の座では記録の意図的統制以外は問題なし。

他は非干渉をつらぬいているとなると、とオルガマリーは魔術的な見解からソレを導き出す。

二人のジャンヌ・ダルク。

定礎が無茶苦茶の状態と同一人物が二人。

様は・・・。

 

 

「・・・ねぇジル元帥、いま、ジャンヌ・オルタに関する噂とかある?」

「いえ・・・しいて言うなら、ジャンヌが蘇り復讐しに来ているということくらいしか」

 

オルガマリーの問いにジル元帥はそういう。

オルガマリーはやっぱりねと頷き。

 

「それよ。」

 

素っ気なく言った。

 

「どういうことだ?」

「?? どういうことです?」

 

達哉とマシュの二人は首をかしげる。

ジャンヌもジル元帥も同様で、魔術に触れたことが無いサーヴァントも同様であったが。

ルーンの達人であるクーフーリンは「ああ、そう言う事か」と瞬時に納得する。

 

「要するに、噂が実現化するという状況下で先にジャンヌ・オルタが本物として認識されて真実として定着しているわけ。

後から召喚された方のジャンヌは偽物として修正力の過剰的影響下にある可能性があるってことよ。」

「わけが分からんのだが・・・」

 

書文の苦言に。オルガマリーは人差し指を自身の額に当てて少し思考し。

 

「抑止力はカルデアの資料によると、阿頼耶識以外の者は絶賛停止。でも人理が元の歴史に引き戻そうとする力である修正力は働いているわ。要するにその時代に生きているのはおかしいと判断されるとマイナス補正を食らう分けね、けれど守護者として呼び出され場合にはその負荷が軽減されている筈。出なければ仕事ができないもの」

「なるほど・・・、がしかしその修正力が何故、ジャンヌ殿に明確に働いているのだ?」

 

オルガマリーの説明に宗矩は納得しつつも問う。

存在し得ない者たちにはマイナス補正が掛かるというのは納得がいく。

緊急事態だから自分たちカルデアや抑止側のサーヴァントたちはそれが免除され。

敵皮のサーヴァントは聖杯による高出力供給によってそれを跳ね除けているというのは納得がいく。

だがしかし。抑止の側として呼び出されたジャンヌには明らかに過剰な制限が加わっているではないか。

 

「そこで噂結界の効力よ、さっきもジル元帥が言った通りのうわさが流れているのなら、オルタの方が蘇った本物のジャンヌとして人々に認識され、真実として固定化されている。そのあとで召喚されたジャンヌは噂結界で真実として認識されているオルタとは別物として認識されて。似たり寄ったりの赤の他人として修正力に認識されているため。抑止力による免除特権が機能していないんじゃないかしら」

 

要するに噂結界の下で偽物が先に本物として認識されてしまったがゆえの。

システム的誤作動であろうとオルガマリーは結論付けた上で解決策を出す。

 

「こればかりは噂結界を利用しなきゃ、キャパシティの制限解除にはならないでしょうね。」

 

 

噂結界による認識の歪みから発生する改変である。

干渉手段がない以上、霊基を根本的に弄繰り回すか。

或いは高出力の魔力炉でもつかって強引に霊基を起動させるか。

もしくは噂結界を使って歪みを正すほかない。

 

 

『一応聞くけれど、ダヴィンチ、ジャンヌの霊基の修繕は・・・』

 

一応確認の為、魔術師としてももう神代でも行けよと言うレベルのダヴィンチに。

ロマニはジャンヌの霊基を噂結界に頼らずできないかと聞くが。

彼女は首を横に振った。

 

『無理だね、できない事もないけれど。それは現地に居て尚且つ施設が整っていることが前提だよ」

 

無理だと述べる。同時に条件が整っていないからだと注釈を加える。

それは一般人なら所謂所の天才の傲慢だと思うであろうが。

ダヴィンチの実績を目にしているカルデア一同は出来るのだと思うし。

なんやかんやで便利アイテム送ってもらっているフランス陣営もダヴィンチの腕前は知っている。

故に、内心で皆こう思うわけだ。

 

 

『(((((((((((できるんだ))))))))))))))』

 

まぁ出来るのだろうと。

 

そしてそのあと特に名に変わらず。

場を切り上げて。

飲み会へと移行することになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

飲んで食べて。無論飲酒はせずに好きにやって。

帰ってきた長可の参加もあって場は加速し。

オルガマリーが「まぁ嗜む程度なら大人ならいいでしょ」と飲酒を許可したことによって。

出されたワインを飲んでジル元帥が大暴走し。

ジャンヌへの駄目押しを開始。

やれなぜに、フス派にあんな手紙を送ったのか。

やれ自分の意見を聞かずコンピエーニュに志願兵搔き集めて突撃したのかと言っている。

 

 

それから逃げるようにマルタとオルガマリーは宗教討論を行い。

アマデウスとマリー・アントワネットは。

亡者対策の為にエリザベート向けに作っている聖歌のアップデートに入っていった。

マシュは場酔いで達哉に絡み。

長可と宗矩に書文は武術やら武勇伝に茶道などの話で盛り上がっている。

夜は深くなっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宴会の半ばで達哉は席を離れた。

それは純粋に疲れたということもある。

ペルソナ能力で確かに普通では考えられないサーヴァントとやり合える実力と身体能力を持つが。

それでも生身の人間だ。

体に傷を負えば倒れるし動けば疲労するのである。

今日も一日かれは働いていたし疲れるのは道理であった。

布団に入り硬いベットに身を預けて目をつむる。

疲労感からか、ニャルラトホテプの介入の判明の為か気疲れも起こし。

蓄積された疲労は彼を即座に夢へといざなった。

だが夢とて良い物であると誰が保証できようか。

 

夢に見る・・・のはかつての仲間たち、そして・・・

 

「たっちゃん」

「達哉」

「情人」

 

 

 

「「「俺/僕/私たちを捨てたの?」」」

 

 

彼等から投げかけられる疑問。

あの孤独の世界を投げ捨てて此処に居場所を見出し。

自分たちを忘却の彼方へと追いやるのかと言う弾劾の言葉だ。

それに反応し・・・

 

 

「違う!!」

 

そう叫びつつ達哉はベットから上半身を跳ね起こす。

 

「はぁー、はぁー・・・・」

 

息が荒く動悸が激しい。

此処のところ、よく見る夢だった。

 

 

―だからこそ。贈ろうと思ってな? お前が何よりも欲するものをな?―

 

影に言われたあの日から。

カルデアなどに居心地の良さを見ると見てしまう悪夢だ。

 

選ぶ余地はなかった。

ため息を深くつきつつ。

ベットから出て。窓を開ける。

肌を伝う冷や汗もあるが純粋に夜風が冷たく気持ちの良い物であった。

しばらくそうしてボウとするものの思考はグルグルと回り続ける。

無論捨てたわけではない。彼らの事は今でも覚えている。

 

色褪せることのない記憶としてだ。

 

「外にでるか・・・」

 

ジッポを鳴らし。上着を着こんで屋上へと行こうかと思案する。

窓からの夜風では悪夢に火照った体を冷やすのには足らかった。

だから屋上で夜風に身を浸そうと歩を進めた。

 

 

Ra――――♪ Ra――――――――♪

 

 

流石にそのまま出れば汗が冷えて風邪を引きかねないので適当に汗を拭いて。

達哉は屋上へと上がる階段を歩いていく。

すると屋上から美しい歌声が聞こえてきた。

音質からしてエリザベートの物であろうことは簡単に予測がつく。

練習では上手くやれるとのことであるので。

その歌声はセイレーンも顔負けの美声だった。

 

達哉は屋上へと上がり夜風に身を涼めるべく階段を上がっていく。

 

エリザベートの練習の邪魔にならないようにゆっくりと扉を開けて。

屋上へと出る。

それとほぼ同時に。

エリザベートの歌が止んだ。

屋上の隅っこの縁に座って歌っていたが。

彼女のサーヴァントとしての能力は達哉の存在を感じ取ったからだ。

 

「すまない邪魔したか?」

「いや、別にィ、ギャラリーが居ると下手になるのよ私」

「・・・そうなのか」

 

エリザベートは確かに作曲以外の才能は備えているが。

練習以外はてんで駄目だ。

ギャラリーがそれこそいれば元に戻るどころか訓練した分だけ殺傷能力が増幅している歌に変貌してしまう。

自覚はあるのでエリザベート自身が切り上げたという訳であった。

そしてエリザベートは達哉の様相を見て。

 

「眠れなかったのかしら?悪夢でも見て」

 

見事に達哉がここに来た理由を当てて見せる。

 

「・・・そんなに分かりやすいか? 俺」

「まぁね、やせ我慢しているのが丸わかりだもの。私も似たようなものだし」

 

エリザベートは達哉の疑問に苦笑しつつ言う。

髪型が乱れ、肌には寝汗が滴っていった。

エリザベート自身が悪夢を見て眠りから覚めて鏡を見た時の自身の姿だからすぐにわかっただけの話である。

 

ようは自罰意識の表れである。

如何に本位的ではないにせよ。

この世界に来てしまい、そして居心地の良さを感じる自分と。

何とかできたはずだという自分。

そして楽しさや新たな仲間に縋るのかと問う自分が居ることを。

そう言った意識や意識的仮面の意識の摩擦が悪夢を発生させるのだ。

割り切れればいいが。そう簡単に割り切れるモノではない。

そしてそれは自分も一緒だと、エリザベートは語る。

 

 

「似たような物?」

「ええ、生前の夢よ。我がままで馬鹿だったころの私、そのまま大人になって若い娘の血を浴びれば美を保てると思っていた頃の私の夢よ」

 

達哉の疑問にエリザベートは答えた。

まさしく達哉と同じなのだ。

彼女はぽつりぽつりと語る。

生前の悪行故に死後に座に召し抱えられ、月の聖杯戦争に参加することになった。

 

―行くと良い、この戦争はきっと君にとって良い物になるはずだから―

 

自身にはまだ先があるといったのは仮面をかぶった黒衣の美丈夫だった。

当時まだ罪の自覚さえしていなかったエリザベートはそれに乗った。

良い物とはいうが、良い物をエリザベートは自分自身都合の良いように解釈して戦場へと出てしまった。

 

それが自分自身にとって、愚かさを自覚して大人になるという激痛や失意を知る物だとは知らずに。

 

結果

 

―滑稽だな、愚かな幼子。自覚しないというのも問題だ。故に正してやろうではないか。咽び泣けよ、この私自ら授業してやろうというのだからな―

 

闇に堕ちた彼女を待ち構えていたのは影であった。

 

その後、影に散々打ちのめされて月での聖杯戦争で己が罪を自覚し罰を受け入れ歩くことを決意し。

一人のマスターを救い、その後の平和になった月で過ごす中で。

その場の居心地の良さに今になって作られた良心が呵責を引き起こしているのである。

 

このままではいけないとエリザベートは座へと戻り。

 

今に至るというわけだ。

 

結局それは月を離れても変わらない。

寧ろ真摯に教えてくれる人や親しくなった人が増えて見える世界が広がったことで。

より重い痛みを齎すこととなった。

今を肯定すればするほど自身の犯した過ちが強くのしかかってくる。

 

 

 

「・・・」

「まぁ反応に困るわよね・・・」

「いや、俺も同じようなものだ・・・」

「・・・何やったのよアンタ・・・」

「約束を・・・友との生涯守っていくはずだった約束を破った・・・」

「そう・・・」

 

説明は簡略すぎるものだったが。

エリザベートは達哉の表情で察する。

その約束が何かしらの要因となって達哉の罪意識の源泉となっていることを。

そしてそれはもう償うことが出来ない取り返しの聞かない致命的なミスだったということを理解する。

 

「キッツイわよね・・・終わりが見えてこないってのも」

 

だからエリザベートは弱音をつい吐いてしまった。

巡り合うこと自体が少ない同類が居るからだろう。

達哉もエリザベートの言葉に頷く。

終わりが見えてこない。

自罰意識という物はそう簡単に拭えるものではない。

 

「それでも・・・少しずつだが進めているような気はするんだ。」

 

だが少しずつであるが拭えこそできないが。

受け入れて納得できるようには、なってきていたのも確かだ。

 

「そう、それは良い縁があったのね、アンタにも」

 

そしてそれは出会いに恵まれたということでもある。

エリザベートもそうだったからだ。

月で出会った少年との出会いが、彼女にとってのそれだった。

だから此処に居るのは、達哉もエリザベートも同じである。

 

「ああ、俺には持ったいないくらいの縁だ」

「そう卑屈に・・・まぁ私も人の事は言えないかな・・・うん」

 

そう苦笑してエリザベートは立ち上がる。

 

「少し気分が晴れたし。私は寝るわ。聖歌の練習もあるしね」

「そうか、じゃ御休み」

「ええ、達哉もいい夢をね」

 

そう言ってエリザベートは達哉と別れ用意されてた寝室へと無向かう。

 

「少しずつね、そうね私もよ。」

 

そのさなかぼそりとつぶやく。

達哉の少しずつ進んでいるという言葉に同意するかのように。

 

「まず一つ、私は私との決着を付けなきゃ」

 

もう一人のエリザベート、即ち「カーミラ」と呼ばれる、ジャンヌ・オルタ陣営に呼び出されたもう一人の自分。

愚かな自分の象徴だ。

開戦初期に交戦したが逃げられ。

今では一方的に避けられている有様だ。

だが次の一大攻勢には加わるだろう。

ジャンヌ・オルタはエリザベートが目にしたかぎり奇跡を否定するタイプだ。

いつまでも自分と邂逅したくないというカーミラの願いを叶えているわけではない。

ケツを蹴り上げてでも戦線に投入するだろうことは眼に見えていたからだ。

 

 

 

 

彼は生き延びる為、仲間を守るために戦うのならば。

エリザベートは未来であり過去との因縁に決着をつけて。己が愚かさを受け入れて少し前に進むために此処に居るのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次は決戦よ。出撃拒否は許さないわ」

「分かっているわよ」

 

 

オルレアン。

すでに荒廃しきったこの都市の城でカーミラはジャンヌ・オルタの言葉にそういうほかなかった。

ジャンヌ・オルタは怒り狂っていた。

カーミラの醜態にである。

勝ち負けはどうでもいいのだが、過去の自分におびえて逃げ回るのはジャンヌ・オルタの気に触れていたというよりも。

ジャンヌ・オルタが毛嫌いするというよりも憎んでいる大衆像そのものであったがゆえにだ。

 

「無論、逃げるのもね、次に私事で逃げたら・・・・殺すから。」

 

ジャンヌ・オルタの言葉に心の奥底からカーミラは冷えて怯える。

彼女はやると言ったら必ずやる。

それこそ次に私事で逃げれば。フランス住民に働いた虐殺行為をフルセットで体感させたうえでジャンヌ・オルタはカーミラを殺すだろうから。

 

 

「アタランテ」

「此処に居るぞ」

 

ジャンヌの言葉に玉座の後ろから彼女の声に応える声がする

 

「私は少し寝るわ・・・、少し統制が効いていないのよ、ランスロットは現在修復中だし。ヴラドは前線で小競り合い中だから。暴れたら叩き起こして」

「分かった。」

 

アタランテと呼ばれた薄紫色の美しい髪の毛を持ち民族装束に身を包んだ女性にジャンヌ・オルタは暴れたら叩き起こすようにと言い含めて。

玉座に腰かけたまま足を組み頬杖を付いて眠り始める。

隙だらけの様相であるが、カーミラではジャンヌ・オルタは殺せない。

令呪とかの縛りではなく。純粋に実力差があるからである。

湖の騎士とレイラインを通じての夢の中での圧縮時間訓練やらあらゆる手段を尽くして技巧を身に着けているのだ。

それにアルゴノーツの一人として弓の腕をとどろかせたアタランテを掻い潜ってとなるのは元々良いところのお嬢様であるカーミラには土台無理な話しと言えよう。

カーミラには土台無理な話しと言えよう。

 

カーミラは逃げるように玉座の間を後にして。

 

「どうしてこんなことになるのよ」

 

過去の自分に対する報復心でジャンヌ・オルタの召喚に応じた。

それは正解だった。

ジャンヌ・オルタはカーミラに力を与えた。

それこそ過去の自分なら嗤って殺せるくらいに。

だが過去の自分はそれ以上を行っていたのだ。

と言うよりもカーミラの知る過去の自分とは違っていた。

罪を是として認めて。前に進む芯の強い娘ではなかったはずだから。

結果、エリザベートがカーミラの知る過去の自分と違って見えて。

同時に自分を否定する怪物のように思えてしまい。

逃げに逃げてこの状況である。

 

「逃げるのはいいけれどさぁ、所詮は先延ばしだよ。勝利からは逃げられないってなぁ」

 

嘲笑。

 

背後に振り替えれば。黒のYシャツにジーンズ姿の白髪の殺人鬼がそこで見下すように嗤っている。

 

「須藤・・・アナタ私を馬鹿にする気?」

「馬鹿に? おいおい、馬鹿にっていうかな、今のお前は負け犬そのものだよ。情けないよなぁ過去の自分は成長したのに未来である自分はその様だもんなぁ。ヒャハハハ!」

 

 

過去の自分であるエリザベートは強く成長した。

だというのに未来のカーミラは何も成長していない。

ただただ過去から目を背けて危うく敗北しかけたのだから。

負け犬と言えればその通りであろう。

 

「ッ・・・・!!」

 

唇をかみしめてカーミラは須藤をにらむ。

だがそれしかできない。

何故なら須藤も強いからである、ヴラド三世やランスロット、アタランテにジャンヌなら勝てるかもしれないだろうが。

この男は平均的なサーヴァントよりも強い怪物だ。

 

「まぁ精々逃げ回ってろよ。どうなるかはお前さんが一番よくわかっているはずだしなぁ」

 

煽るだけ煽って、須藤は踵を返す。

後に残ったのは両手を強く握りしめ唇を血が出るほどに噛みしめているカーミラだけであった。

 

 




コミュ回!! 次回はすまないさん!!とカルデアの誰か!!

あるいは邪ンヌの回想と邪ンヌ陣営の話のどっちか!!

噂システムが特異点という特殊状況下で動いている以上。
たっちゃんたちは、急いで特異点攻略しなければP2罪の二の舞になりかねないので速攻を掛ける必要性があります。
邪ンヌは自分自身の計画の為に、噂結界を使う気はないですが。
彼女自身は悠長にしている気も無いので一大攻勢しかける気満々で。
現状ドコモかしこも余裕はなし。
ちなみにニャル的には噂結界は使用前提ではなく
設置して意味のあるものとして起動しているので。
たっちゃんカルデア陣営と敵陣営が使おうが使わないがどっちでもいいという物。
つまり有るだけで、最終的に両陣営に不利になるようなギミックです。

使いすぎるとどうなるかは第二特異点でやる予定。

あと何故か座でニャルの事は共有情報なのに知る奴と知らない奴が居るのは。
主に場を有利に動かし過ぎて現状が試練として機能しないということを避けるのと。
サーヴァントのフィートバックによる成長を期待したフィレモンによる意図的操作です。
あと下手に知っているより知らない方がニャルを殴れるキャラにも情報統制が入ります。

ニャルはノータッチ

エリちゃんなんで二人に目を付けられたの?という疑問が読者の方々にはあるでしょうが。
単純に相性の関係上、フィレモンとニャルでは遊星には勝てないため。
エリちゃんを動かしてトンチキさせるために目を付けられた上に。
ついでに成長させるためにボコボコにされたのが真相です


あと作者。メンタルが色々アレなのでしばらく休みます。

デスストで11月は更新できないと言いましたが。

そもそもゲームもできないほど忙しいためや、休日が家族問題やらなんやらで休めず気が落ち着かず、精神的に余裕がないためということもあります。


皆さまには迷惑をかけて申し訳ありません。














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