Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです 作:這い寄る影
ゴジラVSビオランテより抜粋
ジャンヌは悪酔いしていた。
普段はこの程度で酔わないのだけれど。
ジル元帥の言葉が胸に刺さる。
自分は最善だと思っていった。
あとは自分が死ねば誰も悲しまないものと。
だが・・・どうだ?
ジル元帥はジャンヌの事を思っていた。それが恋か横暴かあるいは父性からくるものなのかは。
知るのは本人ばかり。
愛されていた。愛されていたんだと自覚して。
脳裏にちらつくのはもう一人の自分。
憎悪で狂って滅ぼそうとするもう一人のジャンヌ。
そして座の記憶データに刻まれたジル・ド・レェの末路。
忘れようと頭を振るう。
自分は聖女なのだから、彼女とは違うのだと決めて。
布団に潜り込んで。
悪夢を見る。
それは当たり前の事、自覚していなかった悲劇が、自覚したことによって悪夢となっただけ。
それは此処に呼び出されてからの夢だった。
轟々と火の手が村から上がっている。
いやそれは正しくない表現だ。
ジャンヌ・ダルクの現実逃避的思考の産物である。
故に正しく表すならこうだろう。
山火事が起きたかのように村が焼き払われていた。
家も木々も水も土も何もかも燃え上がっていた。
まるで龍が神話のように戦士たちを吐息で薙ぎ払ったかのような燃え上がりっぷりだった。
ジャンヌ・ダルクの故郷の「ドンレミ」が焼け落ちていた。
「なにが・・・」
情報はない加えてスキルが不発。
それでも故郷が焼けているということにジャンヌは駆けだす。
全力で走り村へと向かう。
村との彼我の距離が小さくなるにつれて。
ジャンヌの鼻孔を擽るのは家の焼ける匂い。人が焼ける匂い、生き物が焼けて炭になる匂いである。
「なんで・・・」
村へと近づく。
入口の前は炎が壁のようになって立ちふさがっていた。
そして火柱の前には巻き込まれかけて生きながらにして焼かれて苦悶の声を上げる人々が居た。
ジャンヌの知った顔だった。
「小父さん!!」
慌てて駆け寄る。だがその人物はジャンヌをジャンヌとして認識できない。
五感のすべてが炎であぶられて破壊されているのだ。
皮膚は炭化し、肺は熱で破壊され。血液中の水分は致死量のレベルで排出されている。
瞳は熱波を浴びた瞬間から機能を停止し焼いた魚の目のように白濁としていた。
それでも人はなかなか死ねぬもの。
ここまで焼かれてショック死できないのは不幸極まるという物であろう。
ジャンヌは幼少期から世話になった小父さんと呼んだ彼に駆け寄って。
抱き起こそうとして。
「待ってください、いま「駄目じゃない、キッチリ殺してあげないと」
声と同時にドスと音が響く。
男性の後頭部に短矢が突き刺さっていた。
後頭部から脳まで一気に貫通し即死させる。
後頭部から血を噴出しつつ男性は倒れ伏し。血がジャンヌの頬を濡らした。
「・・・あら、どんな慈善業者が来たのかと思ってウンザリしていたけれど。アンタも来ていたのね。オリジナル」
矢の飛んできた方向を見る。
そこには。
左手に槍と旗が一体化した武器を持ち。右手の指の間に挟み込むように矢をもって。
瞳は黄金色に染まり、肌は蝋のように白く染まって。
灰色の髪の毛を腰まで伸ばし、身に紺桔梗色のドレスと具足を着こなし。
その表情は笑っているように見えて憎悪一色染まった。ジャンヌ・ダルク自身こと「ジャンヌ・オルタ」が存在していた。
彼女の一歩後方の左右にも敵性存在が居る。
一人は黒く赤く亀裂の入った鎧を身にまとう美丈夫で。
もう一方は漆黒のコートを着込み腰まで黒い髪を伸ばした美青年である。
「ジャンヌ・・・」
コートの美青年は口の端から炎をチラチラと滾らせながら、憎悪に染まっているジャンヌに声をかける。
―殺していいのか?―
と。
「駄目よ、ファブニール。アレは私の獲物よ。ランスロットも手出し無用、OK?」
「御意に」
ファブニールと呼ばれた青年は憎悪に染まっているジャンヌの言葉を聞いて舌打ちしながら下がり。
騎士「ランスロット」は不満はないため率直に下がる。
「アナタは誰です・・・、なぜこのようなことを・・・」
目の前の存在は余りにも
「誰? 誰?? 誰ですか??? なぜこのようなことを???? アハハハハハハハハ!! ハハハハハハハハハハッ!! 滑稽ね! 滑稽よ!! ねぇ聞いた? 元凶がなんか言っているわよ!!」
「元凶、私が?」
「そうよ、ジルがあの獣畜生風情に惑わされた元凶じゃない、ジルの狂気を見抜けず自己完結して勝手にくたばって。そのあとも彼の祈りに応えることなく放置してこの様じゃないのよ」
そう、自己完結する終わりとは大概周囲に不幸を生み出す。
生前からそうなっても悔いは無いと公言しているなら、狂った連中は馬鹿で済むが。
言っていないのなら。狂った原因が本人に有りきと一概に責めるわけにはいかない。
火あぶりにされて殺されても仕方が無いとジャンヌ自身が己が行動の結果を見定めて言いくるめておけば。
こんなことには成らなかった。
さらに言えば彼女がジルの祈りに応えたことはないだろう。
本当に彼の事を思うのならZEROの時に来てやるべきであったし。
この特異点で、ジルの召喚に応じて殴り飛ばして、戒めるくらいはしろよという話である。
「アンタはジルの祈りに応えず、その場で収めようとしなかった。結果、私が生み出された。ジルの理想の復讐に燃える聖女。ジルの自慰の果てに生まれた出来損ないの
その果てにジャンヌ・オルタはジャンヌの
祈りに応えなかった。結果、復讐者のジャンヌであるオルタが位置から作り出されたという分けである。
「だから私の両親を殺したんですか!! 私を苦しめるために!!」
だからこそジャンヌは自分への報復心でこんなことをしているのかと問い詰める。
ジャンヌ・オルタは状況的にそういう考えに行くかと思い訂正するべく言葉を紡ぐ。
「ああ、そっちに思考が行くのね・・・、こっちは私自身がやりたいことの為に殺しているだけよ、アンタは関係ないわ」
「・・・・え?」
別にアンタへの報復心で動いているわけではないと述べる
確かに彼女は不出来な贋作として生み出されたが。
不出来であったがゆえに本人とは別の可能性に行きついてしまった。
影の見せた現実のような夢の果てに。贋作は独立し一個の生命体として自立し掛けているのである。
故にこの憎悪はジャンヌ・ダルクのモノではなくジャンヌ・オルタが抱く本物の憎悪だ。
「私の目的は人を殺し尽す、区別はないわ、全人類を殺す」
ジャンヌ・オルタの考えはそれだけだ。
全人類を殺す、影と愚かな大衆への復讐としてだ。
「なぜ・・・そんなことを・・・」
「まだ分からないの? ジルの下りで理解しなさいよ、人は見たいものだけを見て、知らないものは知らないと通り過ぎて、危機に直面すれば出来るやつに縋って背負わせて挙句に使い捨てる。そんな愚衆の歴史がこの世の歴史よ、頑張っている連中が一向に報われない、試練は人類が人類である以上続く、祈ったところでなにも変わらない、だから終わらせるだけよ」
奇跡を無駄に浪費して生きていく世界に何の意味がある。
成果があれば希望もあっただろうが。
出したところで愚かな愚衆共はそれを食いつぶしていく。
ジャンヌ・オルタはそれを見てしまった。
故に復讐する、人類に。
余りの極論にジャンヌは唖然となり・・・・
叫んだ。
「それはただの八つ当たりでしょう! くだらない極論と何が違うというのですか!!」
無論、ジャンヌの言う通りそれは八つ当たりである。
糞くだらない妥協案と言っても差し違えない。
「アンタもやったことでしょうが」
がジャンヌも人の事を言える存在か?
否である。
「百年戦争という糞くだらない内紛を終わらせるために、神の声を聴いたという大義名分掲げて、気に入らない連中をぶっ殺したじゃない」
そう彼女も殺している。神という名の大義名分を掲げてお前も気に入らない連中を殺しまくったんではないかとジャンヌ・オルタが言う。
「祈ることを止めて、武器を手に取って殺す手段に出た。アンタに私をとやかく言う資格はないでしょうね、最低でもナイチンゲールくらいにやり切ってからものを言ってちょうだい」
無論覚悟があるからやって言い訳が無いのは言える道理である
自覚ありきで全力で滅ぼさんとしている女と自覚無しで他者を先導し殺す女。
どっちが正しいのかは勝利した物が正しいと言えよう。
「ほんと、私のオリジナルだけは在るわね、正の方向に走ったか負の方向に走ったかの違いだけね」
流石は自分自身のオリジナルだ、見ているだけで吐き気がするとジャンヌ・オルタは嘲笑う。
「違う!!」
「はっ、だったら答えてみなさいよ」
「なにを」
「私の憎しみはそうね、それらが出来なかった人たちのためと自分のためにやっている」
少なくとも、ジャンヌ・オルタの報復心の源泉はあの仮想体験だ。
幻想にすぎなくとも彼らと共に駆け抜けたのだ。
故に極論、自分の為ではあるけれど。
それでもジャンヌ・オルタには彼らという存在の憎悪を叶えてやりたいという気持ち。
即ち特定の誰れかが、存在する。
故に問いただす。
お前の渇望は他者を押しのけてまで成すべきことなのかと。
「だから彼らに殴られても殺されても胸を張って言えるわね。あなた達を貶めた世界が憎いから殺すと。だから胸を張ってアナタを救いたいという存在がアンタにはいるの?」
「誰かは皆に決まっているでしょう!」
その言葉に・・・
ジャンヌ・オルタは・・・・無表情へとなった。
「結局、誰も愛していないのね・・・アンタは」
「何を言っているんですか、私は「誰の名前もとっさに出てきてない時点でどうでもいいんでしょう」
反射的に言葉に出してしまう人の名とは本当に想っているという事である。
が逆に言えば、咄嗟的に言えないのなら。
それはどうでもいいということに他ならない。
全てを愛しているという言葉が平等というように。
誰かとか皆とか言っている奴は基本的に誰も愛してはいないのだ。
「だからジルの祈りに応えなかった。ジークのところに行こうともしない。」
それはジャンヌのアキレス健だった。
英霊の座にたどり着いてしまった時点で彼らのもとには行けない。
嗚呼、だがしかしだ英霊の座が並行世界に跨る以上。
チャンスはいくらでもあったはずだ。
聖女の仮面を脱ぎ捨てて少女として挑むくらいには世界は寛容だ。
人はそうでもないが。
「黙って」
暴論にも等しい正論にも
ジャンヌはその指摘に言ってしまった。
言ってしまったのだ。
オルタの表情から虚無から憤怒に染まる。
結局お前もそうなんだなと。
「ふざけんな! 私の言い訳なんぞ跳ね除けなさいよ! ジルがジークが大好きだったと、なぜほえないのよ!! お前がそんな様だから」
「黙って!!」
「私が無様に生み出されたんだろがぁ!!」
悪夢だった。
因果なものである。故に死は救いだ。
己が死後に世界を見ずに済むのだろうから。
救済の祈りが絶望を具現化したなどという悪夢を見なくていいのだから。
「どうすればよかったのですか・・・・」
悪夢にうなされ目が覚めたジャンヌは涙をぬぐいながらポツリとつぶやく。
誰も彼女に教えなかった。
愛するということはどういうことか一途に生きるということはどういうことか。
「駄目です、ちゃんとしなきゃ、私は」
―ジャンヌ・ダルクなんですから―
分からない知らない辛い。
故に聖女の仮面をかぶる。
ティエールから若干離れた丘の上。
そこには指揮所の為の陣が出され。
簡易的な倉庫がたてられていた。
その倉庫の中には一台の馬車が存在している。
「ふぅ・・・・」
達哉は馬車の下から這い出るように出てきてため息を吐いた。
敵戦力が前線に集結中とのことであった。
開戦は今日の昼から明日にかけてと予想されている。
戦術は既に決まっている。
敵サーヴァントをこちらのサーヴァントで抑え。
戦況を硬直させ、達哉、マシュ、マリー・アントワネット、ジャンヌで敵本陣へと殴り込みをかける。
敵の予想戦力がこちらの手札を総動員して拮抗状態に持ち込むのが一杯一杯である以上。
ジャンヌ・オルタの首はサーヴァントとガチれる達哉にやってもらうほかないとの判断であった。
冬木では消耗しており今一真価を発揮できなかったが。
本来であれば最上位のペルソナ使いである。サーヴァントに遅れは取らない実力者である。
これで不足であれば令呪なりなんなり併用して仕留めに掛かるほかない。
サーヴァントとして絶賛ポンコツ気味のジャンヌが突入メンバーに選ばれたのは噂による機能回復及び。
ジャンヌ・オルタに対する特攻を付与するためである。
切れるリソースがそこを実際にはつきつつあった。
ジャンヌ・オルタも脅威的ではあるが制空権を握るファブニールの方が戦略的には危険であるとして。
元々枯渇気味だった戦力サポートリソースをジークフリードにつぎ込んでいるのである。
これ以上戦力を遊ばせる理由はないとオルガマリーは思い切って噂結界を利用することにした。
戦場という物は絶望に覆われるし大勢の目がある、故に事前に兵士たちにとって都合の良い希望を仕込んでおけば噂は即座に真実として認識され起動するからだ。
故に突入組に編入された。
マリー・アントワネットも裏では修羅場を潜り抜けているのである。
流石に本職騎士に劣るとはいえ地味に近接能力があったりする。
マシュは無論外せない。
シールダーという特性と防御宝具は突入の際に対して最も必要になるからだ。
まぁ所長から言わせれば。
『ほんとなら、敵ボスなんて囲んで袋叩きにしたいわよ!!』
という物である。
実際戦力分散の上に50%以下の賭けをするなんぞ普通は通らない。
というよりせざるを得ない状況だからしているだけの話である。
普通ならば各個撃破に持ち込みたいが追い込まれている現状その余裕はない。
後は出たとこ勝負で状況に合わせて戦術を変化させていくほかないのである。
という訳で。突入組は今までマリー・アントワネット率いる愚連隊が使っていった馬車を修繕して補強し突撃するということになっていった。
敵の親玉の懐に乗り込むのだ。
少しでも頑丈にと、ダヴィンチちゃんがプライベート用の自己製造車両のパーツのパーツキット(ボーダーとは別の趣味で作っていった奴)をよこしてくれたので。
バイクいじりが出来る達哉が工具を片手に補強作業しているのである。
「すまない、達哉、此れでいいかな」
「・・・大丈夫だと思う」
這いずり出てきてみれば。
馬車の横で鋼板を取り付けていたジークフリードがボルトのゆるみが無いかで悩んでいた。
如何に知識的バックアップがあるとはいえ知っているだけでは実際にちゃんとしまっているのかは分からない。
達哉はスパナをボルトに入れて何度か力を入れて締まりを確認する。
経験則上、問題は無いと達哉は判断し問題ないと判断を下す。
「少し休憩にしないか? かれこれもう三時間になる」
「そうだな・・・」
朝早くからずっと作業詰めだった。
ジークフリードは術式の予備チェックということもあって作業を手伝っていた。
現在、術式が走って痛みを消して魔力を通常の二倍流して強引に傷を押しとどめている。
故にこの程度の作業なら支障はないようなので。
問題なしとバングルでラインを送っておく。
「食べますか?」
コンビニのサンドイッチと缶に入ったお茶を差し出す。
「いいのか?」
「はい、手伝ってもらってるんで」
「・・・じゃ遠慮なく」
ジークフリードはそれらを受け取って。
達哉と共にベンチに腰掛ける。
空は青々としているが、開戦が近いということもあって町全体が沈黙しており。
通りには人が居ない。
それを寂しいと思いつつ達哉はハムサンドを齧って咀嚼し。
お茶を飲んで一息つく。
「君、ため息が多いな」
「・・・気に障りました?」
「いや、そうじゃない、少し気負いすぎだと思ってな」
ジークフリードから見ても達哉は気負い過ぎである。
いや世界を取り戻すという重圧は仕方が無いと思い言葉を紡ぐが。
「俺は世界を守るために戦ってるわけじゃない」
「・・・?」
「そんな大義に命はかけられないよ・・・俺は」
そうあの時もそうである。
いつだって達哉は仲間のために戦っていった。
世界を救うとかいうあやふやな大義を掲げているなんて一般人の達哉にはできない。
だから友達の為に戦っていた。
世界を救わねば人は生活できないし消し飛ぶんだから。そうするほかないだろう。
その方がしっくりくるし自分の純粋な気持ちだった。
世界を救うだとか万人を救うだとかそういうヒーロー的思考は達哉は抱えられないし思うことは不可能だ。
だから友人の為に世界を救うという思いを抱えて此処に居る。
付き合いは短いけれど。カルデアの面々と共に明日を手に入れるのだと。
「俺は皆と一緒に居たいから戦うそれだけだ」
それは極めてエゴティックな祈りだが。
純粋でもあるしそう思う方が進んでやれるというのもある。
大義を成すために大義を抱え込むのではなく大義を成すために小義を抱え込んだ方が健全だ。
「そうか君は、自分がなすべきをちゃんと理解しているのだな・・・」
「ジークフリードさんだってそうでしょ・・・」
「いや俺は生前、他者から言われたことしかやらなかった。それが英雄としての義務だとも思っていた。だがな逆に言えばそれは他者の意思に縋って自分では何も考えてこなかったのではないかと。思ってな」
生前ジークフリードはそうやって生きてきた英雄として。
他者の祈りに応えるように生きてきた。
結果、あの惨劇である。
その結果、死後にジークという少年の祈りに応えた結果。
彼を邪竜に変貌させて裏世界に叩き落すという結果を生んだ。
あの時はそれで納得したが。
振り返ってみれば善意で助けただけで。その後の事なんぞ知っちゃこっちゃないという行動そのものだ。
吐き気がした。行動の結果を考慮せず自己満足だけ満たして少年を地獄に突き落とした己の愚かさに。
故に他者の望むままに生きて望むがままに死ぬ。
それは自分で望まず人の都合の良い道具として主体性の無さの具象であるとも呼べる生き方に己を縊り殺してしまいたくなるくらいに・・・
故に、こうやって自主的に生きて目的を成そうと必死に生きている達哉という青年が。
ジークフリードには眩しく映っていった。
「だから望んで戦うという正しい義務を抱く君が眩しく見える」
「・・・それは買いかぶり過ぎだ。本音を言うとこんなことはしたくない、でもやらなきゃ皆を失うからやっているだけです」
義務とはやり通さねばならぬことだ。
望むにせよ望まぬにせよ。
達哉本人はこんなことを望んでも居ない。ただ皆と一緒に居たいという願いが根幹にある以上。
世界の滅亡なんぞ本当は欲しくはない。
だが皆を守り生き残るという題目を成すためにはやるほかないのである。
何かしらの願いを抱える以上理不尽に遭うのは必然である。
と言っても達哉の場合はその理不尽が度を超えているというのもあるが。
影に絡まれればそうもなるのはしかたがないといえた。
「というか、ジークフリードさんは自分に主体性がないとかいうが。あるんじゃないか普通に」
「・・・そうか?」
「他者の祈りに応えて生きてきたと言うけれど。やっぱそういうのって自分が望んでやってこないことにはできないものだと思う」
他者の意思に応えて生きる。
先ほども述べた通り主体性の無さを強調する生きざまだが。
これは側だけの理論である。
普通、他人の意思に応えるということは酷く辛い。
知人ならまぁ容認範囲ではあるが。見知らぬ他人の意思に応えるとなると辛いことである。
故にジークフリードレベルまでくると主体性の無さというよりはもう望んでやっていなければおかしいレベルだ。
「だからジークフリードさんが認識していないだけで。本当は自分自身でそうやりたいって根幹的理由がある筈」
「・・・そうかな」
生まれながらにしてそうであったなら。
それこそ怪物だ。
光の奴隷と言うほかない。
だがそういう奴に限って、こういう風に悩むことはない。
悩めるなら十分そういった風ではないと達哉は思い指摘する。
そう行動するに足りうる何かがあったはずだと。
達哉にはあったからアマラで、ああやって行動したのだから。
「・・・」
ジークフリードはその指摘を受けて過去に思考をうずめる。
生まれてから死ぬまで。
何故そう生きようと結論付けたのかという切っ掛けを知るためにだ。
そして思うのだ。
「そうか・・・そうだった・・・」
幼少期、幻想種に困らされている近所の老人の頼みを受けたのが切っ掛けだった。
そんなごく普通のやり取りだった。
誰かを助けられることがうれしくて。それで始めたはずだった。
「なぜ・・・忘れてしまっていたんだろう」
そうやっていくうちに擦り切れて義務感になり生理的反射に成り果ててしまった。
だが無理もない。
それが人間だ。自分のしたいことをやっているうちに、擦り切れて欲を忘れてしまい道を踏み外すこともあれば。
逆もまた然り、やりたいことに固執しすぎるあまり間違った方向に行ってしまう。
だからこそ、人は一人では生きていけない。
他者との繋がりと視点をもって、己が人生の道筋を修正しなければゴールにはたどり着けない。
そう言った繋がりの部分でジークフリードは恵まれなかった。
こうやって指摘してくれる、思い出させてくれる人が居なかった。
だから忘れてしまうのだ。
頭を抱えて嘆くジークフリードに達哉は何も言えない。
達哉もある意味同じである。
皮肉なことに影があの運命を紡がなければ思い出すこともなかっただろうから。
だからこそとジークフリードは思う。
今度は道を違わないと。
「すまない、戦端も近い、休ませてもらうがいいだろうか?」
「はい、大丈夫ですが・・・・問題でも?」
「君のお陰で。ようやく俺はやるべきことを思い出せた」
影は言った。主体性が無いからそんな様なのだと。
打ちのめされて叩きのめされた。
だがいまなら奴にも胸を張って言える。
俺がしたいからやったのだ。
罪と罰は受けよう。
だからこそこれは自分自身の行動の結果だ。
お前がどうのこうの言う物ではないと影に心の底で言い返して。
場を後にする。
やるべきことの為に成すべきことの為に。
若人たちの道を切り開く為の剣を取るためにだ。
「やはり強いな英霊の皆は」
達哉は眩しそうに目を細めてジークフリードの背を眺めつつ。
残った作業も彼の手伝いもあってかあと少しなので。
ちゃっちゃと終わらせようと残ったサンドイッチを口に放り込み。
よく噛んでからミネラルウォーターで流し込み作業に戻っていった。
作業が終わって本陣へと入れば皆がそろっていた
今や、戦端は開かれようとしている。
「配置に変更は無し、左翼、変装したエリザベート、右翼 マルタ及びゲオルギウス、中央はクーフーリン、宗矩、長可で。本陣待機は私、アマデウス、書文、ジークフリード。敵本陣突入組はタツヤ、マシュ、マリーにジャンヌよ」
左翼右翼は主に通常戦力との戦闘が主眼となる。
敵のサーヴァントは不死だ。
中央突破に戦力を集中してくると言う事を予想し敢えて薄目で行くことにしておく。
そしてアサシンとファブニールは間違いなく本陣攻略に使われることは目に見えているため。
首狩り戦術を防ぐのとファブニールをおびき寄せる餌場として活用するためにこの配置となった。
中央戦力は精鋭を集め。相手の攻撃を縫い留める役割をしてもらわねばならないし。
最も激戦区になる。
前衛指揮官はやはりこの三人しかなしえない。
左翼はあからさまに人手が足りていない様相だが。
「これで突っ込んでくるなんて只の馬鹿か、私みたいな阿保でしょ、あ、なんか自分自身で言っていたら泣けてきた。」
それはエリザベートの立案だった。
復讐心に濡れて居ながら、根っこの部分は変わっていない。
故に一番薄い場所にやってくると彼女自身が言ったのである。
と言ってもカーミラはエリザベートの事を避けている。
故に魔力殺しの一級アミュレットをもって一般兵士に偽装して左翼を餌にカーミラを釣り上げるという事である。
碌な戦力が居ないと分かればカーミラは悠々と来てくれるはずだとエリザベートは言う。
そしてジャンヌ・オルタ側が裏をかき左翼に殺到すれば令呪とカルデアの魔力リソースを使ってサーヴァントを集結させればいいだけの話。
故に左翼は問題にはならない。
だから問題はない。
「フェーズ1、私と達哉、クーフーリン、マルタで敵第一陣を壊滅させる」
作戦初期段階。
オルガマリーの魔術にアマデウスのペルソナを使って合体魔術によってランクを宝具級に上昇。
敵の第一陣を薙ぎ払う。
ジークフリードはファブニール対策で温存、本陣待機
「フェーズ2、敵戦力をサーヴァントたちに抑えてもらうわ」
作戦第二段階、大火力を使った後。敵のサーヴァントをこちらのサーヴァントで抑える。
敵の通常戦力はインスタント聖剣やら武装をもった兵士たちに抑えてもらう。
ワイバーンなどは初撃で落とせるしアマデウスのペルソナの能力で味方が展開している地域にはいつでもエリザベート砲が展開可能。
大砲などに聖別を施した釘を大量に詰めての対空散弾もたんまり用意しているので脅威ではない。
これで戦場に拮抗状態を作り出す。
「フェーズ3、タツヤ、マシュ、マリー・アントワネット、ジャンヌ・ダルクで敵本陣に殴り込む」
冬木とは違いペルソナ能力をフルに使える達哉であれば一級サーヴァントと互角にやり合えると宗矩の保証もあり抜擢。
マリー・アントワネットはペルソナのブーストもあって一級サーヴァントクラス。
マシュは未熟なれど敵本陣に切り込む以上。守りは必須なため採用。
ジャンヌ・ダルクは噂結界の能力でサーヴァント能力を取り戻すために必須な行為+ジャンヌ・オルタに対する特攻付与の為に突撃確定という塩梅だった。
「私、書文、ジークフリードは本陣待機、アマデウスもね、これで敵が殴り込んできたところを迎撃するわ」
こう戦場を拮抗させれば向こう側も似たような戦術を取ってくるはずだ。
ジークフリードが居ようとも最上位ペルソナ使い&デミサーヴァント、一級サーヴァント一体に特攻搭載サーヴァント。
普通ならば焦るし。
そうなれば航空戦力であるファブニールを動かしてこちらを取りに来るはずであると。
アサシンであるシュバリエデオンも投入することは目に見えているため。
その迎撃と察知の為に書文も本陣待機となった。
「これ以上は無理よ」
「ですな」
これ以上の作戦は現状無意味とオルガマリーは述べて宗矩も同意する。
切れる手札が少なすぎるのだ。
ジークフリードが万全であるなら、もっとやり様はあったのだが。
彼は絶賛大怪我中であるどうしようもないのだ。
万全だったら。マリスビリーの遺産を聖晶石に変換してバルムンク乱射する予定だった。
まぁ出来ぬことは出来ない。
「以上解散!! 決戦に備えて各員第二戦闘態勢で待機!!」
マシュは手が震えていた。
開戦前の空気は張りつめていた。
兵士全員がピリピリとして。
サーヴァントたちも黙々と準備を始めている。
空はワイバーン達の声がこちらまで轟いていた。
それよりもだ。
敵本陣から漂ってくる殺気にマシュは恐怖していた。
殺す、殺し尽す、殲滅する。
そう言った意識が垂れ流れてきているようだった。
生れて経験した事の無い殺意の本流。
開戦前のにらみ合いである。
無論、戦経験者たちはこんなもの慣れっこだ。
所長は慣れていないので軽めの精神安定剤でどうにかしていたが。
マシュは生まれからくる薬物の反応を恐れたロマニが却下している。
サーヴァントとしての能力に影響があるかもとして所長も却下していた。
故に緊張感からか準備でさえ碌に手伝えない有様である。
どうしようと思い。
マシュは達哉を探した。
彼はすぐに見つかった。
簡易的に組まれた倉庫から馬車を引っ張りだして。
その屋根の上に座っていった。
黄昏るように戦場を見つめて手癖のジッポを鳴らしている。
「先輩」
「ん? どうした? マシュ?」
「いえ、なにかお手伝いできることは・・・」
「いや、いま作業を終えたばかりだ・・・」
「そうですか・・・」
「・・・少し話そうか」
「え、はい」
あからさまに緊張しているのは目に見えていた。
冬木では1on1や2on2が主であった。
戦力が三桁以上の軍勢のぶつかり合いは、さしもの達哉も初めてであるが。
日輪丸に単騎で乗り込んだときよりははるかにましだ。
なんせあの時は増援で舞耶達が来たが、彼女たちが来るまでには。
単騎で乗り込んでフル装備のクーデター軍やら、配備されたパワードスーツやら、悪魔やら相手取っていたのである。
たった一人で突撃するわけでは無いので達哉的には楽ではあった。
達哉が座る屋根に上ってきたマシュは彼の横にチョコりと座ると。
達哉がなにか言おうとするよりも早く。
マシュが口を開く。
「先輩は怖いとは思わないんですか?」
既に両軍にらみ合いの状況だ。
ロマニ曰く、サーチの結果複数のサーヴァントがすでに敵本陣に集結しているが。
動きが無いところを見ると大将各が来ていないと判断して。
故に動きが無いと結論付けている。
だからこそジャンヌ・オルタが本陣入りすれば
すぐに戦端が開かれるだろう状況である。
故に怖くはないのかと達哉に問う。
少しでも気を紛らわせるために。
「怖いさ」
達哉は躊躇なく本音を言った。
「先輩もですか・・・」
「まぁな。俺は普通の人間だよ。戦場を前にして恐怖しないなんてことは出来ないさ」
誰だって死ぬのは怖い。
戦場に恐怖を抱かないのはそれこそねじがぶっ壊れているというほかないだろう。
それは破綻者の証だ。
故に達哉は何時も恐怖していた。
何故なら・・・
彼は明確にペルソナの凶器的な側面を行ってしまった過去があるかだ。
「・・・だから怖がっていても縮こまっていてもなにもならない」
だが、しかし良くわかっているからこそ立ち上がるのだ。
失うのは怖い、死ぬのは怖い。
情けないかもしれないがそれが達哉にとっての原動力なのである。
「マシュも、状況に強要されたとはいえ・・・、選んだはずだ」
「はい」
幾らでも辞退できる機会はあった。
周りの人たちはいい人たちである。
マシュが無理ですと言えばロマニが必死で降ろすだろうし。オルガマリーも惜しみながらマシュを外しただろう。
だが彼女は選んだ。選んでしまったのだ。
「私は嫌です・・・、皆が死ぬなんて耐えらない、そして一人で怯えて事態から目を背けるなんてできません」
短い付き合いと言えばそうであろうが。
それでも嫌だった。普通に過ごす日常を世界を失うのが。
戦火に身を晒し達哉とオルガマリーが行く中、力があるというのに身を縮ませて怯えているなんてできなかった。
此処に来てから短いけれどフランスの現地住民との交流もあって一つの輪を作った。
それを失うわけには行かないと。
そう考えると、震えも止まっていった。
人間安っぽい理由で命を懸けられるからここまで来たのだ。
失いたくない、それがどんなに矮小であっても。
世界を救うという大義を成す小義となるがゆえにだ。
それを達哉は見て言葉を紡いだ。
「だが、それで熱くなり過ぎるなよ、死んでは元もこうもないからな・・・、生きて帰ることも重要だ。無理なら無理だというんだ」
冷や水を頭にぶっ掛ける所業であるが。
死んでは元もこうもないのも事実だ。
覚悟は良い、戦う気力になる。
しかしそれは死と隣り合わせの危険なカンフル剤であるからだ。
だから冷や水を掛けるような真似をあえて達哉はやったのである。
マシュは初めての戦場だ。うかつに覚悟を持つと特攻しかねない危うさがあるのだ。
覚悟を理由に無茶をされても困るがゆえにだ。
「難しく考えるな。こういう場合はそこそこに考えておけばいい」
「はい、わかりました。すいません、なんか浮き足立っちゃって」
「仕方がないさ。俺も熱くなりやすい方だ。もしもの時は頼むぞ」
「え、私がですか?」
が先も言ったことは達哉自身も当てはまることである。
若気の至りやら精神的に追い詰められていたとはいえ。
クーデター軍が配備されている日輪丸と呼ばれる豪華客船に一人単独で乗り込んで暴れまわったこともあったからだ。
だからこそもしもの時は頼むと言っておく。
「はい、やってみます!!」
「ああ頼むよ。・・・・っと、始まるみたいだ」
敵の陣が動く。
達哉のつぶやきと共にアマデウスがペルソナでラインを作る。
カルデアの魔力供給および通信ラインとは違う支援用のラインをだ。
これで離れて居ながらアマデウスのペルソナのスキル範囲内なら合体スキルを使用できる。
「勝って生きて帰るぞ」
「はい!」
そう言って。マシュも頷く。
生きて帰らねば何もかも無に帰するがゆえに。
彼らは死地へと赴く。
という分けで雑の極みだったけれど、コミュ回はいったん終了!!
すまない、これが限界です、文章力の無い作者ですまない・・・
ジャンヌの悪夢。まぁ死後という物がない英霊たちは、生前の知人と邂逅すると嫌でも突き付けられる試練です。
此ればっかはしゃーなし
まぁ邪ンヌの皆殺しの願いも傍迷惑極まりないけどね!!
肯定されてはいかんのですよ、邪ンヌの願いも。
ちなみに出力アップの影響で邪ンヌは最終再臨状態です。
人にはそういった道を歩くのは、些細な切っ掛けでもいいからなんかあるよねって話パート1
パート2は戦争パート後のジャンヌとのコミュでやるよ!!
という分けで戦端が開きます
あとたっちゃん戦慣れしすぎじゃね?と思われる方も居るとおもいますが。
罪ほうでは仲間と一緒にカルト集団に殴り込みかけて
罰の方で、パワードスーツとフル装備の自衛隊が配備されている上に悪魔がうろついているテロリストの居城に単身乗り込んで無双してたからね?
ルートによっては、神取+パワードスーツ4機相手に単独で勝利してるからね?
慣れてないわけがないわけで。
箇所がきマジックすると、たっちゃんはMGSのサイボーグ忍者(初代)みたいなことしてますね。
という分けで次回から戦争パート、総力戦回を複数回に渡りお送りします。
だって憎悪深淵紛争だもの、この特異点のタイトル。
分かり合うことは出来ない。出来たとしても互いに相手へし折って進むほかないのですからねぇ。