Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです   作:這い寄る影

17 / 82
我が軍の右翼は押されている。中央は崩れかけている。撤退は不可能だ。状況は最高、これより反撃を開始する。

フェルディナン・フォッシュ 1851年~1929年


七節 「前哨の混戦 星が降る日を駆け抜ける者たち」

「これで揃いましたな」

 

場は混沌としている。

屍兵はまだいい。ワイバーンもまだいいだろうが。

海魔に悪魔と着ている。

悪魔に至っては受肉済みだ。

真性悪魔に近い物の、それは別の種族でもある。

情報体を媒介に阿頼耶識から現れた歪んだ願いの結晶でもあるのだ。

 

「ええ。揃ったわね」

 

用意された椅子に腰かけてジャンヌ・オルタはジル・ド・レェの言葉に同意した。

もう我慢することはないのだと。

現在、本陣控えはジャンヌ・オルタ、ジルドレェ、ヴラド3世である。

彼女たちは指揮官だうかつに前に出るわけにはいかない。

前線組のアタランテ 清姫 ランスロット、カーミラは第二陣で待機で。

アサシン及びファブニールはフランスへと紛れ込んでいる。

アサシン組の行動タイミングはジャンヌ・オルタに一任されている。

 

「問題は左翼が薄すぎることですかな」

 

戦況を見ながらジルドレェはぼやく。

フランス軍の左翼が薄いのだ。

サーヴァントの有無は戦力的アドバンテージのウェイトを大きく占める。

故に左翼にサーヴァントが居ないことが分かってからはジル・ド・レェは避けるべきであると判断していたが。

 

「ジャンヌ、左翼には私に行かせてもらえないかしら」

「あら、珍しくやる気ね」

「ええ、ここまで良いところ無しだったし、いいでしょう?」

 

 

カーミラが自ら左翼に攻め込むと言い出したのである。

表向き武勲を立てたいと言っているが。

彼女の内心をジャンヌ・オルタは見抜いていた。

とりあえず安パイを取って安全ラインに到達しておきたいという愚物的思考である。

 

「エリザベート出てくるかもしれないけれど、いいのかしら?」

「大丈夫よ、私が出てこれるはずがない」

 

ジルドレェはそのやり取りを聞いて天を仰いだ。

カーミラは自己嫌悪から過去の自分を過小評価し過ぎである。

 

エリザベートをジル・ド・レェも見たことはあるが。

ハッキリ言って気に食わなかったら殴り込んでくるタイプだ。

カーミラの考える過去の自分とは差異が出ていることにカーミラ自身が気づいていない。

或いは目を背けていた。

 

 

「ああ、そう言う事ですか・・・」

 

そこからカルデアの思惑を、ジル・ド・レェは割り出す。

左翼自体がカーミラを吊り上げて殴殺するキルゾーンであるということに。

と言っても。戦力的に問題はなかった。

それは何故か? カーミラ自体が戦いが得意な人間ではないのである。

アサシンクラスではあるがはっきり言って技量がない。

スペックで見ればハサンに勝てるかも知れないが。

素の技量でハサンに負けるのがカーミラだ。

ハッキリ言ってスペックごり押しアサシンなんぞどう使えばいいのか。

しかも嗜虐思考で相手を仕留めるというより嬲ることを主な戦闘目的にしているから。

ジル・ド・レェ的には余分な駒であったりする。

いわば邪魔な駒だ。

ジャンヌ・オルタも痛感しているしいくら言っても聞きもしなかったので。

カーミラを捨て駒にする為にあえて事実は伏せる。

 

エリザベートを押さえる捨て駒としてだ。

 

「いいわよ、好きにしなさい、ただしこっちの戦術指示は厳守しなさいよ」

 

戦場では好きにしろ。ただし大まかな指示は聞けと言いくるめて。

カーミラが陣幕から去っていくのを見届けて。

指示を出す。

ライン経由での指示だ。

ワイバーンと悪魔はジャンヌが、海魔と屍兵はジルドレェが縄を握っており瞬時に情報を共有及び通信が可能。

サーヴァントも言わずもかなである。

 

 

「まず第一陣を前進、連中がどうって出てくるかでプランを替えるわ、現状プラン1に乗っ取って、サーヴァントたちは待機。」

 

そう言いつつ第一陣を前進させる。

刹那、大地が魔獣やら悪魔たちの咆哮で揺れた。

総錯覚するレベルで津波のような数の化け物たちがフランス軍に殺到する。

最初は数でプレッシャーをかけて相手の出方を見ることと第一陣という肉壁を作ることが目的だ。

 

「さぁて、お手並み拝見と行きましょうか、カルデア」

 

開戦である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『敵総数、7000!! いや一万!! まだまだカウントが上がるぞォ!?』

 

ロマニが通信越しに情けない悲鳴を上げた。

敵総数のカウントが上がっていく。

万単位での兵力の動員数はこの時期ではありえない。

圧倒的に数が上回っていった。

 

「まだ想定の範囲内だけれどね」

 

ロマニの悲鳴にもオルガマリーは冷静だった。

敵はそれこそ戦力を動員し補給し放題というインチキツール持ちだ。

故にこれはまだ想定の範囲内、敵陣の後方に動きが見えないということは。

使い捨ての部隊だ。

数で圧倒し、此方の手札を覗き込んでおきたいという思惑が透けて見える。

だが予定は予定だ。

 

 

オルガマリーは呼吸を整える。

魔術回路、全回路起動。

魔術刻印、全力稼働。

 

 

「アウロス!!」

 

それに合わせてアマデウスが己のペルソナを呼び出す。

ギリシャ神話に置いてアテナからマルシュアースの手に渡った木管楽器であるが。

アマデウスがペルソナとして呼び出したものは違う。

彼のペルソナヴィジョンは名前だけがあっている物である。

彼の背後には巨大な彫刻とそれを這うように無数のパイプが絡み合い。

アマデウスの周囲に数多の楽器を融合させたかような楽器の巨人がペルソナであった。

 

「ミュージックフリークス」

 

スキルを起動する。

アウロスのこのスキルは遍く音を捉えて伝えたりできるスキルだ。

アマデウスレベルの音楽家であれば音楽だけで魔術をなせる代物である。

音を伝達回路にしてフランスとカルデアの人物及びサーヴァントに通信を接続。

さらに魔力の波長の同期により、離れて居ながら起点する人物を選び、そこから合体魔法や合体宝具が使用可能となる。

これを利用し各々が個別の戦場で戦いつつ支援できるのだ。

 

 

 

Stars. Cosmos. Gods. Animus. Antrum.星の形。宙の形。神の形。我の形。天体は空洞なり

 

 

 

詠唱が開始される。

 

それと同時にラプラスが彼女の背後に浮き出た。

 

天に絵が描かれる星の運航を操る天体魔術。

大よそ現代においては物理法則に阻害され成すこと自体が難しい。

出来たとしても共同作業は必須である。

だがしかし此処は特異点、星の抑止力は動いていない。

そして過去のフランスということもあって。オルガマリー一人でも起動は出来るが。

威力はサーヴァント相手には不安が残る。

威力はあるがサーヴァントを傷つける概念的情報量が致命的に不足しているのだ。

であるならどうするか?

 

オルガマリーは単純明快な答えを出した。

 

即ち自身の魔術にペルソナを使ってスキルやら宝具を同調させて威力を底上げすればいいと結論付ける。

ラプラスを介して己が組み上げている魔術に他者のスキルを上乗せする。

 

「全ルーン、起動完了・・・。やったれ、お嬢ちゃん!!」

 

前線に出ていたクーフーリンも打合せ道理に原初のルーンを刻み効力をアマデウスの作ったラインに乗せ

 

「主よ、いま一度、奇跡を此処に・・・」

 

マルタが祈りと共に信仰の加護を発動し乗せる。

 

馬車で待機していた達哉もサタンを降魔しスキルを起動する

 

「アルファブラスタ!!」

 

達哉の背後に出現したサタンが最上位の光スキルを起動しラインに乗せて伝達する

 

天空に幾何学的に描かれて。

夜空でもないのに星がちらつく。

 

 

Ambers. Anima, anim sphere!!(空洞は虚空なり。虚空は神ありき)

 

 

魔術回路及び刻印が臨界駆動する。

当たり前である原初のルーンに聖女の祈りに最上位ペルソナによる最高位光属性魔法スキル「アルファブラスタ」を上乗せして。

融合させているのだ。

例えるなら普通車にニトロターボを乗っけて無理やり回している状況と大差が無い。

このままではエンジンブローと同等の事が起きるが。

ペルソナのお陰でそこまでは行かない。

だがキツいのは変わらない。

頭痛と魔術回路と魔術刻印の臨界駆動による激痛を堪えながらもオルガマリーは詠唱しきって。

それを現実のものとする。

 

空は昼であるはずなのに描かれた星々の軌跡が魔方陣と化して。

 

 

「コメットホーリーコール!!」

 

オルガマリーの絶叫共に。

 

空が堕ちてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シャレになっていないぞ!!」

 

さしものアタランテも目をむいた。

無数の隕石が着弾、第一陣が文字通り消し飛ばされ。

絨毯爆撃かあるいは津波が迫ってくる勢いでこちらに迫ってきているのである。

 

 

「ただの石ころでなにが出来るっていうのよ」

 

舐めるなとジャンヌ・オルタは憤怒を身にまとい。

右手を天に掲げて魔力を放射、圧縮、装填、形成。

作られたのは物質化寸前のエネルギーで編まれた巨大な槍だ。

 

「これが我が憎悪で彩られた咆哮」

 

 

 

 

―吼え立てよ、我が憤怒―(ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)

 

 

 

それが投射され空中で炸裂する。

炸裂した憎悪の熱波が隕石の群れを粉みじんに粉砕した。

 

「ッ―――――、所詮、猿真似は猿真似ね」

 

人修羅の至高の魔弾を真似た物だが本家本元には遠く及ばないと自嘲しながら、ジャンヌ・オルタは奥歯を噛む。

無理を気合と根性でやってこれだ。

本当に笑えないと思いながら。

次にジャンヌ・オルタは右手に魔力を集中させる。

隕石は爆砕したが破片が降り注いできているのだ。

それも迎撃しなくてはならない。

右手を横一文字に振るうと扇状に火線が迸り破片を破壊しつくす。

 

「ジャンヌは迎撃に集中を、ジル・ド・レェ、本隊を前進させるがよろしいな」

 

と言ってもすべてが迎撃しきれるというわけではない。

ジャンヌ・オルタが迎撃しているが、破片も多い数が降り注いでいる。

此処は火力担当のジャンヌ・オルタには隕石迎撃に集中してもらい。

ジルドレェには兵力の補填に集中してもらい、ヴラド自身が指揮を執った方がいいと。

ヴラドが判断し、ジル・ド・レェに判断を聞く。

 

「構いませんとも、私は戦力の増強に集中します故、指揮はヴラド公に任せますぞ」

 

ヴラドの言葉ににべもなくジルドレェは頷き。

海魔及び悪魔を増産する。

 

「全軍前進!!、フランスを叩き潰せ!!」

 

 

 

 

 

 

『所長無事か?』

「なんどがぁ・・・ねぇ・・・・」

 

達哉の通信に言葉に濁点付けるかのような声でオルガマリーは返す。

合体魔術の反動である。

ぶっちゃけLvが違いすぎるがゆえに送り込まれた魔力が膨大過ぎて処理しきれなかった。

ペルソナのお陰で多少はマシだが。

起点を自身の魔術回路及び魔術刻印にしたせいでこの様である。

いくら優れた炉心があってもエネルギーを変換する砲塔がショボければ暴発するのは道理であるし。

寧ろ暴発させず術式を具象化したオルガマリーの手腕を褒めるべきであろう。

 

頭を押さえつつ立ち上がったオルガマリーはあらかじめ用意しておいた。チューニングソウルの蓋を開けて一気に飲み干す。

 

「しかし向こうも迎撃手段があるとは・・・」

 

隕石落しを見ていたジル元帥が呟く。

敵本陣から射出された、杭の様なものが空中で爆散。

第二陣に襲い掛からんとしていた隕石が迎撃された。

無論、迎撃されたと言っても細かな破片が降り注ぎ、それはそれで敵の本隊にダメージを与えているものの。

敵本陣から射出される熱線が大半を迎撃しているのである。

驚愕するほかあるまい。

 

ジル元帥の生きる時代とは全く違う戦場がそこにあった。

 

『どうします? 私たちが出た方が・・・』

「大丈夫よ、マシュ、予定道理だから。最も敵の第一陣を食い破っただけで大成果よ」

 

マシュの言葉にオルガマリーがそう返す。

最初から迎撃される想定もあった。

隕石は落着するまでのラグがあり。

落着する前に迎撃されれば威力を発揮できない。

故にまともに敵の先陣を吹っ飛ばせたのは僥倖であると言って。

浮足立つマシュを落ち着かせる。

 

「では、前線を押し上げます。それでいいですかな」

「元帥、こっちのことは気にしないで、こっちで合わせるから、ぶっちゃけ前線指揮なんてできないもの」

 

ピクシーを呼び出し自らにディアを施しつつ言う。

達哉も前線指揮は出来るが、兵力を纏めて動かすという経験は無い。

オルガマリーはできない事もないが。

すぐそこに専門家が居るのだ。

であるなら全体指揮はジル元帥に放り投げてサポートと足並みを合わせた方が得策である。

 

「分かりました。では中央は前進、右翼は――――」

 

ジル元帥が指揮を飛ばし。

カルデアラインおよびアマデウスのミュージックフリークスで的確に齟齬が無いように指示を飛ばす。

双眼鏡で見れば中央の戦況は悲惨だった。主に敵がだが。

 

 

「行くぜ野郎共ォ!!」

 

長可が率いる槍隊が前進を続ける。

伊達にここ数日間、長可に追い回されていた兵士達ではない。

ワイバーンの大半が消滅した以上、悪魔だろうが海魔だろうが長可に比べれば可愛い物だと。

突撃を勇敢に敢行する。

事前に武装にマルタとゲオルギウスが付与した加護によって屍兵も切り倒していく。

そこにクーフーリンが単独で一撃離脱先方で突貫。

サーヴァントの身体能力によって弾丸と化した彼は的確に薄くなった敵陣を切り崩していく。

 

 

「機なり」

 

 

宗矩がそう呟き騎兵隊を投入、ズタボロになった前線へと駄目押しとばかりに突撃した。

普通ならば壊走する所であるが。

 

「あん?」

「ッ」

 

飛んできた矢に反応し、遊撃手として暴れまわっていたクーフーリンは一旦足を止める。

クーフーリンは槍を構えて迎撃の体制に移行。

矢除けの加護があるとはいえ生前はそんな便利な物はなかったし。

第一にこういう類は突破されるのが常である

遠くを見ればカルデアの情報網には引っ掛からなかったアタランテが遠方で弓を構えていた。

当たりこそしなかったがあの矢の威力は即死級と即座に判断。

オルガマリーに敵サーヴァント補足迎撃に向かうと伝達。

当のオルガマリーからは全力で好きに撃滅しろと帰ってきた。

ならばいい、仕留めようとクーフーリンが槍を構えて疾駆しようとした刹那。

 

 

「ちッ、アキレウスに匹敵する奴が居るかッ!!」

 

アタランテは矢を放ち、クーフーリンと視線が交差した瞬間、理解する。

ギリシャに居てもヤバいやつが自分のところに突っ込んでくると。

であるなら。

 

「是非も無しか・・・」

 

己が宝具である獣の皮に魔力を注ぎ込む。

矢は届かぬ。

狩人の誇りなんぞ、ジャンヌ・オルタに従った時に投げ捨てた。

故に弓に固執することなく宝具を使用する

 

 

神罰の野猪(アグリオスメタモローゼ)!!」

 

民族衣装から扇情的な皮服にチェンジし彼女自身の肉体が歪な音を立てて変形するかのように肥大化。

 

「■■■■■■■!!」

 

山と形容すべき巨体、赤黒く染め上げられた毛並み。

ケルトでも早々お目に掛れぬ小さな山の如き威容を誇る魔猪である。

猪の額からはアタランテの上半身が生えており弓を構えていた。

 

「影の国の魔物じゃねぇーんだぞ!!」

 

クーフーリンは悪態を吐きつつも、戦場の高揚感に身を任せて笑みを浮かべる。

本当なら彼女ほどの英雄ならば己が槍とアタランテの弓、どちらが早いか競い合いたいところだが。

そうもいってられる状況でもない。

だがしかし。魔獣狩も戦士の誉れであるのは変わらない。

そして自分自身には人理を守るという役目もある。

 

「不足はない、全力で殺す」

 

故に躊躇はしない。

全力で殺すと決意する。

 

『補強する! ランダマイザ!! ヒートライザ!!』

『焼け石に水だけれど・・・ マハタルカジャ!! マハラクカジャ!!』

『じゃ私もね!! ジュノン! クリスタルパレス!! ヒートライザ!』

 

達哉がアムルアタートを呼び出し、全軍にランダマイザとヒートカイザを発動。

オルガマリーもこの日の為に用意しておいた。補助特化型シルキーを呼び出し

マリー・アントワネットも己のペルソナである「ジュノン」を呼び出して、専用スキルのクリスタルパレスを使用する

アウロスの作ったラインを問うして味方にヒートライザを付与、ステータスランクをワンランクアップ。

クリスタルパレスによって耐久を三段階上げ。

ランダマイザで敵のステータスをランクダウンさせる。

 

『長くはもたない、効力が切れたら言ってくれ』

『私はちょっと回復するからしばらくは援護できないわ』

『怪我をしたらすぐに言ってちょうだいな、言っては何だけれどまだ余裕があるから!』

 

「たく、達哉もマメなこって、まぁそこがいいんだが。宗矩の爺さん。アレ任せてもらっていいか?」

 

飛来する矢を叩き落しながら宗矩にクーフーリンが聞く。

あの魔物に突撃していいか否かをだ。

 

「無論、幾ら拙者でも。あれは手に余る」

 

さしもの宗矩もあの巨体は解体しきれない。

さらに強力な矢をぶっ放してきているのである、殺しきるのは実に骨だ。

であるなら、ケルトの大英雄にこの場は譲り、通常戦力を削ぎ取る方がいいと判断する。

なんせ図体が図体だ。

突撃された時点で前線が崩壊しかねない。

 

その言葉を聞いた時点で、クーフーリンは一つの弾丸となった。

飛翔する弓の如くアタランテへと接近する。

それを宗矩は見届け。

振り下ろされた漆黒の刃を華麗に捌きつつ、奇襲してきた相手と相対する。

 

 

「貴殿の相手は拙者だ。」

「そうか・・・、では死ね」

 

殺意と憎悪に濡れた声が響き渡り。

 

 

「Syaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!」

 

 

 

人語と爬虫類の叫び声が混ざり合えって聞き取れない音と共に巨体が突進してきた。

 

「二体一、卑怯とは言うまいな?」

「言わぬ」

 

黒騎士ことランスロットの言いようにも宗矩は問題ないと一蹴する。

この程度が卑怯だと片腹痛い。

武士が闇討ち、一騎打ちと評していざ決闘に来てみれば複数人で相手方は袋叩きにする気満々。

それに此処は戦場、切り抜けたものが勝者となるということを宗矩は知っているがゆえに文句を言うことはない。

宗矩が愛刀を青眼に構えて。

 

「柳生の爺さん、その真っ黒黒助は俺にやらせろ」

 

長可がソレを制止した。

長可は怒り狂っていった。

目の前の黒騎士は自身が最も嫌った、あの裏切り者「明智光秀」と同じ類であると長可は認識し殺意を滾らせる。

こういう奴は忠義だなんだいって己が身が可愛いというのが相場だと彼は良く知っている。

こうなってはこちらの言うことは聞かぬかと宗矩は大人しく引き下がった。

 

 

「任せる、しかし」

「安心しな、こんな奴に俺は負けねぇ、腐った金柑頭みたいな奴はぁ特にな」

 

故に対するには己しかいないだろうと槍を構える。

こうなっては言うことは聞かないかと宗矩はため息を吐きつつさがる。

 

 

「それにマスターたちから意地でも戦果上げて帰ってこいって言われてるからなぁ」

 

オルガマリーの命令はただ一つ戦果を挙げて帰ってこいという物。

戦の場に置いてこれほど無茶な命令はないだろう。

だがそれがいい、戦のし甲斐があるゆえに。

目の前の男は鼻に着くという物だ。

 

 

「貴様風情が私に勝てるとでも?」

「はっ、知らねぇよボケェ、勝てる勝てないで戦なんかするか、勝たねばならぬからやるんだよぉ!」

 

湖の騎士、ランスロット。

アーサー王伝説最強の騎士の一人だ。

近年、良くも悪くも評価傾向にある長可であるが。

それをプラスしても英霊としての格では目の前の騎士に劣る。

言っては悪いが、メジャーリーガーと日本野球選手くらいに世界的知名度では雲泥の差があった。

普通ならば勝てぬ相手である物の、それで戦を決めているなら、そいつは臆病者である。

普通ならばそれも良い。

だが長可にとってこの戦は引けぬ戦いだ。

ならば戦い主命を果たすまで。

勝てるか勝てないかではなく、勝ちをもぎ取りに行くには

行くしかないというのは嫌というほど戦国の世で痛感しているのだから。

 

―コイツ、死兵か?―

 

ランスロットは一瞬気圧される。

これほどまでに殺意を身にまとった忠義心というのは眼にしたことがない故に。

だが戦場で類似の類は見たことがある。

己が命に頓着せず。

命を簡単に投げ捨てて、自分を取りに来る兵士の類。

 

即ち死兵である。

 

そういう連中に限ってこちらの意表を突く上に道理を捻じ曲げて刃を届かせようとする危険存在だ。

英霊としての格は無論ランスロットに劣るが。

長可は織田家臣及び豊臣家臣として一軍を率いた武将である。

そんな存在が死に物狂いでくれば。ランスロットにその刃を届かせることは現実的な話であった。

ランスロットは認識を修正し、アロンダイトを構え。

それと同時に人間無骨の刃が走った。

 

 

「さて・・・」

 

宗矩もまた己が役目を果たすべく。

視線をその竜に向けた。

 

「シャァアアアアアアアア・・・・」

 

蛇のような唸り声をあげてワイバーンと同等程度の巨躯をしならせるそれ。

無論、大きさはワイバーンとほぼ同一とはいえ秘めた魔力量などは桁が違う。

骨が折れると宗矩は内心に思いつつ。

それでも思考を切り捨てる方向に持っていく。

巨体が突進してくる宗矩は感情も無く刃を走らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふ、より取り見取り」

 

カーミラはほくそ笑んだ。

隕石による絨毯爆撃というイレギュラーはあったにせよ。

ジャンヌ・オルタの采配で第一陣が囮になったおかげで、本隊及びカーミラの率いる手勢は損傷無しだった。

強い魔力反応もない。

まさに人間だらけ、さぁどうやっていたぶってやろうかと思った時に。

 

「見つけたわよ、私ィ!!」

 

絶叫と共に空から槍を振り下ろしカーミラめがけて落ちてくる存在が一人。

その方向に驚きつつカーミラは後方に2mほど下がり。

土煙に顔を顰める。

土煙が晴れれば、一般兵士姿のエリザベートが兜を脱ぎ捨てていた。

 

「アンタなんで!?」

 

カーミラの驚愕。

何処までの過去の自分ではない、尺度が合わない。

されど自分。もう一人の・・・エリザベートでありカーミラである。

 

「決まってんでしょ!!」

 

ギリリと槍が軋む勢いで槍を握りしめ。カーミラを睨み付ける。

未来を否定したいわけではない、駆逐したいわけでもない。

受け入れてその先へと進むべく彼女は此処に来た。

 

「前に進む為よ!! あんただって扉が開いているのに。いつまで漆喰塗の部屋に閉じこもってんのよ!!」

 

もう漆喰塗の牢獄の扉は開かれている。

まえに進めるのにいまだ閉じこもって哀れな自分に酔っている。

それが許せないのだエリザベートは。

いつまで閉じこもっている、いつまで嘆いている。

ふざけるなとエリザベートの瞳は語る。

カーミラはいい加減にしろと叫ぶ過去の自分の姿が薄気味悪かった。

過去の自分は無知で自己愛に溢れた白痴の少女だった筈なのに。

 

「やめなさい!! そんな目で私を見るな!! 違う! 違う違う違う!! アナタは誰よ!! 過去の私はそんなんじゃない!! 無知で自己愛に溢れた愚かな少女のはずのよ! なのに・・・どうして・・・そうやって強く・・・」

 

錯乱したかのようにカーミラは喚き散らす。

心の堤防の限界が崩れ去った。

愚かな過去さえ殺せればこの罪悪感や恐怖は消えると思っていた。

だが現実はどうだ?

すでに過去の自分は前に進んでいた。

最早、カーミラの思うエリザベートは虚像に成り果てている。

それが一層、自分自身のみじめさを際立たせる。

 

「なんで早く、そうならなかったのよ・・・」

 

故に思うのだ。

なんでもっと早くそうならなかった。

そうすれば、こんな無様な吸血鬼に成り果てずに済んだのにと。

 

「単純な話でしょ、私。都合の良い事ばかりに耳を傾け、都合の良い事に口を開き、そして不都合な物から目を反らし続けた。だから・・・いまここにいる、贖うために。わかるでしょう!! 私!! いつまでもそうは居られないって刻み込んだはずだもの」

「五月蠅い!! その口を閉じなさい!! 私に岸波白野は居ない!! 出会ったこともない!! だから影に無様に叩き伏せられて無様に壊れた私なんて私じゃあない!! そんなものは存在しないのよ!!」

 

 

エリザベートはもういい加減にしろと指摘を繰り出す。

無論自分自身に刺さる言葉である。

心が痛い、目を背けてしまいたい。

嗚呼だがしかし月での記憶が、思い出が、誓いがそれを許さない。

目を背けたら自分で自分を許せなくなる故に自身すら巻き込む弾劾の言葉を吐き出す。

 

 

「殺しなさい!! 悪魔に亡者共!! その得体のしれない小娘を殺せェ!!」

「いい加減にしろォ!! 私!!」

 

カーミラの叫びに悪魔と屍兵が殺到。

一方のエリザベートはいい加減にしろと言った怒りを表情に出して槍を振るい。

それに合わせて左翼の兵士たちも前進し、カーミラ軍と衝突を開始する

無論指示は出していない。

現場の兵士の判断だった。

 

「亡者や悪魔どもは我等にお任せを」

「あんた達・・・」

 

一部隊を預かる兵士長が、悪魔を蹴り飛ばしつつ戦場の怒号にかき消されないくらいの大声で言った。

兵士達だって。ここまで生き抜いてきた兵である。

エリザベートが、このフランスの為にどれだけ頑張ってきたのかを直接見て知っている。

カーミラの殺戮が起きるたびに、彼女が天真爛漫な少女の仮面をかぶる中で。

悔しさと後悔に打ちのめされていたのは知っているのだ。

だから雑魚は自分たちにまかせて。

君は君の成すべきことの為にカーミラと決着をつけるのだと態度で示し。

 

 

「ごめんなさい!!」

 

エリザベートが頭を下げて、カーミラに向かって一直線に走る。

これでいい、なれば自分たちは自分たちの成すべきことを成すまでと兵士長は盾を横に振るいぬき。

悪魔の振りかざした爪を弾いて。

そのがら空きになった胴体に剣の切っ先を突き刺した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦況は硬直状態だ。

隕石は第一陣を壊滅させた後。

敵の迎撃にあって。全て落されてしまった。

だが物量で言えば第一陣の方が上で。

戦況の拮抗状態も想定より良い状況である。

フォローもアマデウスのお陰で即座に適応可能だ。

 

想定外なのは敵がズバズバと隕石を叩き落せるような対軍宝具級の威力を持つ攻撃を連発できたことだろうか。

 

がしかし敵も無理をしていないわけではないということは分かった。

普通。そういうことが出来るのであれば火力で圧殺する方が手軽であるし。

そうしないということは。敵は無理をして動けないか。

或いは条件付きの迎撃手段であったかのどちらかであろうと、オルガマリーはあたりを付けた。

かと言って。突入班は動かせない。

重要なのはタイミングだ。

タイミングをミスればこっちが死ねる。

故に私情を押し殺し。

味方を見殺しにしようとも・・・オルガマリーは堪えなければならない。

無論それは達哉もマシュも一緒だ。

必勝を期するべく堪えているころだ。

 

『あの、所長。もう達哉君たちを出しても・・・』

『駄目だよ、ロマニ。現状戦況が硬直しただけだ。完全に相手の手札がこちらの想定した戦力と同値になるまでは達哉君たちはだせない』

 

双眼鏡を覗き込むオルガマリーの耳元にロマニの具申が響くが。

それをオルガマリーが否定する以前にダヴィンチが否定する。

この作戦の肝は如何に相手に戦力を釘付けにして自身の最高戦力を効率よく敵本陣に投入できるか否かにかかっている。

ファブニールとデオンを確認できない以上。

戦力をこれ以上投入は出来ないのだ。

 

「ダヴィンチの言う通りよ。極上の餌を引っ提げているんだもの。だから今更、罠の檻の扉を下げることは出来ないわ」

 

元よりチキンレース覚悟の策だ。

本当ならもっと楽がしたい。

オルガマリーの掛け値なしの本音だ。

だができない、今ある此処こそが現実なのだから。

双眼鏡越しにオルガマリーの視界に入ってくる戦場は間違いなく本物故に。

 

皆が絶叫する。生きたい。死にたくない。どうしてこうなった?と叫びながら剣を槍を槌を盾を振るって全力を尽くし。

 

血で血を洗う泥沼を演じる。

如何に英霊が居ようとも避けれない流血がそこにあった。

上層部とオルガマリーにカルデアの話で決めた戦術だけれど、決めたのは他ならぬ戦略、戦術を練って決めた本人たちである。

オルガマリーは言わずもがなである。

つまるところ戦場で発生する死というのは敵味方問わず。責任の類は指揮官や扇動した者たちの責任でもあるのだ。

最善は尽くした。しかし犠牲は必要だ。

魔術とは血を容認するものというけれど、どこかの誰か言ったように。

手に血がつかない殺しは自覚しずらいものである。

故にこの血風が香る戦場の空気は着実にオルガマリーの精神をむしばんでいる。

 

『所長殿。殺気の数が三、此方の陣地に兵士姿で近づいてきている。うち一人は人の形こそしているが。明らかに人間ではないぞ』

 

書文が念話を飛ばす。

敵を補足したが。想定よりも数が多いとのこと。

内一人は明らかに人間ではないとのことだった。

オルガマリーはすぐさま記憶から情報を引っ張り出し魔術回路及び刻印の演算機能を使って答えを導き出す。

 

『こちらまでの距離は?』

『100m前後』

 

本陣周辺は後方要員や指揮要因でごった返している。

敵に怪しまれないようにするために通常運営にしていたのが裏目に出た。

ファブニールは龍という伝承もあるが元は人である。

故に英雄として呼び出される可能性もなきにあらずというわけだ。

邪龍という固定観念にとらわれ過ぎたという事である。

ジャンヌ・オルタに裏をかかれたと舌打ち。

 

「アマデウス、周囲の連中と繋いで。」

「了解」

 

アマデウスがオルガマリーの指示を聞いて音を接続しオルガマリーは避難勧告を出しつつ令呪を起動させる。

令呪を二画切ってジークフリードを戦闘できるようにする。

あとは。

 

「タツヤ。こっちが慌ただしくなったら出撃して。敵が食いついたわ」

『・・・大丈夫なのか?』

 

達哉の心配そうな声にオルガマリーは精いっぱい強がった苦笑で返す。

 

「本当ならアンタを頼りにしたい。けれどそれじゃ勝てないのよ」

 

そう言いながら。

懐から魔銃を抜いて弾倉を確認。

魔術合金製の媒介弾は六発装填済み。

ペルソナ能力も併用すればサーヴァントですら殺傷可能。

 

脳裏のペルソナも確認して、右太腿に巻き付けたレッグシースの中にはきちんとサイドウェポンの礼装ナイフがしっかり収まっていた。

 

弾倉を元に戻し撃鉄を上げて安全装置を解除。

カルデアでの訓練と此処に来てから何度もやった戦支度である。

 

準備も作戦もできることは全部やった。

後は勝つまで足掻くだけである。

作戦を成しえないからと言って放棄することは許されない。

それがこの戦場で命を懸けている全員と、命を散らしている死者に対する責任という物である。

 

だから達哉には頼れない。

彼は彼でなすべきことがある。

達哉もそれのみ込み

 

『わかった。生きて帰ってくる。だから死ぬな』

「当たり前よ。そっちも死なないでよ。困るから」

 

そう念話に応えた刹那。

 

オルガマリーのペルソナが震えて。

感覚のそれに反応したオルガマリーが振り向きながら銃口とペルソナを繰り出しながら対象に向ける。

既に刺突が放たれていた。故に一歩遅い。

 

切先が躊躇なく繰り出される。

 

襲撃者は仕留めたと、その美貌に笑みを浮かべ。

 

オルガマリーは表情一つ変えなかった。

自分は間に合うことはない。引き金を引くよりも早く。

放たれた刃の切っ先が自身の左眼孔から脳を貫くであろうと結論付けながらも。

すでに襲撃者よりも半歩速く動いている存在を認識していたからだ。

 

「させん」

 

書文は既に踏み込んでいた。

拳は刃よりも早く事前に繰り出されている。

高度な園境スキルによる気配消しだ。

恐らく襲撃者も気づけないほどに高度に編まれた術理をもって完全な不意打ちを成す物の。

襲撃者もサーヴァントであるゆえに。感情を切り離し体の駆動を経験反射に任せて。

その強襲に即座に対応。

攻撃に逆らわず飛ぶことによって、拳の威力を減衰しつつ当たりをずらす。

 

「チィッ! アサシンが居たとはね。てっきり本陣に行ったものだと思ったけれど」

 

 

空中で側転し地面に新体操選手の如く着地。

襲撃者。『デオン・アサシン・アヴェンジャー』は忌々し気にレイピアの切っ先を振い。

オルガマリーの放った銃弾と召喚したペルソナ「アークエンジェル」の刃を捌き切ってみせる。

 

書文は既に追撃に移る

流石と思っていると。

鼓膜にアマデウスの声が飛び込んできた。

 

「オルガマリィ!! ちょっとこっち助けてくれないかなぁ!!」

 

それとほぼ同時に、「サンソン・アサシン・アヴェンジャー」がアマデウスを襲っていた。

が彼とて伊達に修羅場を潜り抜けた経験がないわけではない。

医者の処刑人の生前戦闘経験が無いサンソン相手なら多少はしのげる。

タクトを振い。

音を衝撃波に転換し炸裂させる物の。

その威力は本来の威力とは程遠い。

味方の支援に多くリソースを割っているのだ。

現状のアマデウスではサーヴァント相手には荷が重い。

 

「ゲンブ!! マハブフ!!」

 

ペルソナを、アークエンジェルからゲンブにチェンジ。

マハブフによる飽和攻撃を敢行。

無数の氷弾が射出されアマデウスの付近を薙ぎ払う。

 

「あっぶない!? もう少し正確に狙ってくれ!!」

「うんな余裕ないわよッ!!」

 

サーヴァントの高速移動にかろうじてついていけるでしかないオルガマリーが攻撃をヒットさせるにはこうするほかない。

広範囲スキルの標準は意識操作だ。

動かないアマデウスを避けて撃つことは可能とはいえ、肝が冷えるという物。

だがそこでさらに余裕がなくなる。

二人のアサシンの後に続き黒フードの青年が本陣に入ってきた。

口の端からチラチラと炎を揺らしている。

フードには魔術殺しの術式及び魔力殺しの術式が刻まれている。

それは素人が施したものだが。塵も積もればなんとやら。

大量に刻み込むことによって質をカバーしているのだ。

 

「ジィィイイイイイイイクフリィィイイイイドォオオオオオオオオ!!!」

 

青年は魔力の香りから宿敵が居ることを嗅ぎ付けて雄たけびを上げる。

それは戦場が揺らぐほどの物だった。

フードが裂けて骨格が変化していく。

肉は肥大化し首が伸びて体表を漆黒の鱗が覆う。

頭部からは角が王冠のように伸びて。両目は黄金のように輝いている。

口も爬虫類のように変形し、鋸のように生えそろった鋭い牙が生えそろっていった。

体表を覆うのは漆黒の魔力の本流。

 

その巨大な体躯と巨大な翼。

 

まさしく幻想種の王種としての威容を携えた邪龍の権限である。

 

 

「ジークフリード。出番よ!」

「了解」

 

既に傷は限定的な完治積み。

それでも万全の戦闘が可能だ。

オルガマリーの言葉に応えて。ジークフリードが医療用の天蓋から飛び出てバルムンクを構える。

これで想定された戦力+想定外の戦力を吊り上げた。

であるなら。

 

「作戦フェーズ2完了!! マリー行きなさい!!」

『わかったわ! 飛ばすわよ!! ジャンヌ、旗を出して!!』

『ちょっと待って!? この状態では・・・・ にょわぁぁああああああああああ!?』

 

 

オルガマリーの叫びと同時に本陣近くの小屋の扉が爆砕されると同時に。

硝子の馬が引く馬車がスーパーカー顔負けの速度で飛び出していく。

馬車の天井にはジャンヌが固定用のベルトで括りつけられ直立姿勢のまま悲鳴を上げている。

達哉とマシュは申し訳そうな表情をしつつもそれを黙殺しているという状態で馬車は戦場を一直線に駆け抜けていく。

それを刹那の間だけ見送って。

オルガマリー、書文、アマデウス、ジークフリードは己が敵たちを見定めて。

 

「行くわよぉ!!」

 

オルガマリーはやけくそ気味の半泣き状態で号令を下した。

 

 

 

 

 

 

戦場は混沌として地獄の釜の底が開いたかのようになっていった。

 

「まだだ! まだよッ!!」

 

ジャンヌ・オルタは地面に崩れ落ちながら崩壊する体をつなぎ留めていた。

宝具の使用とそれに匹敵する魔力放射の過負荷が霊基を崩壊させていく。

それを精神が焼き切れるような感覚を味わいながら。

全身に亀裂を発生させ血を滴らせながら、まえに進もうとする。

 

「まだぁ「いい加減にしたまえ」」

 

叫び続ける彼女を落ち着かせたのはヴラドである。

 

「今君に無理をされても、私たちが困るのだ。連中がこっちに来るまで落ち着いて霊基の再統合に勤めていてくれたまえ」

 

正論を言って彼女を黙らせつつ。

彼女を担ぎ上げて椅子に座らせる。

正論と激痛故に彼女は禄に反論もせず、目をつむって霊基の再統合を行う。

分かっているのだ。

今の今までは連携のために力を落していたが。

本気で力を行使すれば周防達哉は手に負えない存在である。

故にジャンヌ・オルタはヴラドの言葉を聞いて大人しく引き下がったのだ。

 

 

「痛ましい」

 

ヴラドはそう呟き、そう思う己を嫌悪する。

祈りを託す、否定するという悍ましさはヴラド自身がよく知っているのに。

自分でやっていれば世話無い事であろう。

背負わされる辛さは知っているというのに。

 

ジャンヌ・オルタに背負わせるということをやってしまった。

 

本当なら今すぐ彼女を終わらせたい。

けれどそうさせてしまったという事実がそれを拒む。

もしここで殺せば。彼自身が憎んだ都合が良いからと英雄を利用した民衆と同じに成り果てるためだ。

 

ヴラドは今目の前の戦場を見た。

誰もかれもが戦っている。

そこに嘘も虚飾もない。

硝子の馬が引く馬車が高速で戦場を一直線にこちらに向かってきている。

無様な選択をしてしまった以上、ヴラドはジャンヌ・オルタを裏切れない。

故に罰。この地獄的な召喚に応じた以上。

やり遂げなければならないのだ。

魔が差したとかの言い訳は通用しないのだ。

過去の所業は戻らない。引いた引き金を戻すなんぞ不可能だ。

それはごく普通の事。当たり前のことだと知るべきだった。

誰も彼も己が行いの重さを知らないから愚行に走る。

 

悲劇は悲劇を起こし憎悪を発生させて燃え広がっていく。

 

逃げることは許されない。目を背けることは許されない。手を汚さないということは許されない。

 

 

 

 

 

 




という分けで所長のメテオ。
事件簿読んでからずっと温めておりました。
基本的に魔術はサーヴァントに通じないけれど。
合体スキルとして発動させればサーヴァントも直撃すればただではすみません。
ただし周囲のレベル違いすぎて所長ぶっ倒れたけども。
所長のLvが上がれば連射できるようになるよ!!
でもまだまだ先の話です。

今回はごっちゃ茶していますが。今回は導入ということでご容赦ください。

ああ文章力とが欲しい・・・。





コメットホーリーコール
合体魔法 本作オリジナル。
魔術ランクA
対軍宝具C相当
所長メテオ+聖職者系スキル+アルファブラスタ+魔法スキル
全体に光属性で大ダメージ、ゾンビ系&ゴースト系の敵を即死させる。



アウロス

Lv64
耐性無し
ステータスなし。
スキル
フル・アナライズ
ミュージックフリークス
シンクロコンセレイト
スイッチチャージ

専用スキル
ミュージックフリークス
音に関する事ならほぼ何でもできるという物。
アマデウスの技量をフルに発揮するためのスキルである。
ペルソナスキルが少ないのもこれによってほぼ応用が利いてしまうためである。
作中ではスピーカーとしての機能および。
魔力を音に乗せて伝達させ支援先のペルソナ使い及びサーヴァントを起点に合体スキルを使用可能とする。
つまりアマデウスの支援範囲下であれば仲間同士が離れていても合体スキルが使用できる。
支援スキルも遠隔で伝達可能なため。
常時、アマデウスの支援範囲下なら相互支援が可能となる。
ただし攻撃スキルは合体スキルの為の魔力に変換されるため、遠隔砲台とかは不可能
他にも自身の宝具を超広域で発動したり
エリザベートの歌や歌系宝具及びスキルが鬼性能に成ったりする。

ゲーム的にはクラス別にバブを掛けるスキル

シンクロコンセレイト
クリティカル発生時に、クリティカルを発生させたメンバーにコンセレイトを付与する。

スイッチチャージ
クリティカル発生時、クリティカルを発生させたメンバーにチャージを付与




対戦カード 現状

兄貴VSアタランテ
森君VSランスロット
宗矩VSキヨヒー
所長&すまないさんVSファブニール
アマデウス&ジル元帥VSサンソン
書文VSデオンくんさん
エリちゃんVSカーミラ

そして引き逃げ愚連隊と化した。たっちゃんズ


邪ンヌは無理して気絶。ジル悪魔召喚中。ヴラド指揮で大忙し。

電波待機中


次回は宗重VSキヨヒー&森君VSナニスロット戦で行きたいと思います

マルタネキの活躍は戦争の最終教区面で予定しておりますのでご安心を



コメント返しについてのアンケート

  • コメ返した方が良いよ
  • コメ返ししなくても良いよ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。