Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです   作:這い寄る影

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パトカーより戦車が必要です!

フランケンシュタイン対地底怪獣より抜粋



十節 「血路は混濁し破裂する・前」

「ああもう!!」

 

魔術回路、魔術刻印、ペルソナをフルスロットルでぶん回しつつ、オルガマリーは悪態を吐く。

そりゃそうだろう。

動いただけで巨躯という質量が破砕槌となり。

常に放射される魔力は乱気流の如く周囲を薙ぎ払う。

まさしく清姫以上の動く理不尽だ。

そんな怪物を相手に目の前の状況を対処しつつ。

飛んでくる支援要請に対応しなければならない。

戦線の突破を図る達哉たちに余裕はなく。

前線は崩すわけにもいかず援軍なんぞは期待できないからだ。

逆に実力がある方が限界以上の無理をしなければならず。

かと言って、実力がないから無理はするなと言うのは、状況が許しはしない。

襲撃してきたサーヴァント二人は書文とジル元帥が抑え込み。

ファブニールも疑似的にではあるが一時的に完全回復したジークフリードが抑え込んでいる。

そこでオルガマリーに若干の余裕はあるが。

先も書いた通り。その余裕というリソースは速攻で溶けてなくなる。

故に悪態の一つや二つ吐きたくなるのは、道理と言えよう。

そうしながら適度な遮蔽物を乗り越えつつ、その裏に潜り込み指示を飛ばす。

 

「ジークフリード!! 叩き落しなさい!!」

「了解した!!」

 

自重は一切ないとばかりに。オルガマリーはジークフリードに魔力を送り込み。

さらにカルデアから供給される魔力がよりジークフリードを満たしていく。

剣に装填される魔力が増幅を開始。

 

「させるか!!」

 

それをさせまいとデオンが書文の脇をすり抜けようとする物の。

 

「行かせる訳なかろうがよ!!」

 

叫ぶと同時に肺から空気を絞り出しつつ。

振り返ると同時に震脚。繰り出される崩し気味に肘撃の一種。

無論喰らえばデオンとてお陀仏な力が秘められている。

故に喰らう分けには行かず。脚を返して真横に跳躍する。

それを認識た瞬間。書文もまた身を翻しつつ拳を繰り出しながら追撃を執行。

超速で行われる戦闘を他所にジークフリードがバルムンクに魔力を装填する。

 

 

幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)

 

 

射出される魔力光。

ドラゴン殺しの命題氏たる一撃を放つ。

ファブニールはそれを意に返さない。

威力を削ぎ落すかのように吐息を吐いて直撃を甘んじて受け入れる。

だが威力が削ぎ落されたバルムンクの光はファブニールの身にまとう魔力によって完全に四散させられ。

完全に無力化されていた。

だが流石に全てが無傷というわけではない。

これによって魔力の鎧が剥ぎ取られたのだ。

 

 

「もう一発ゥ!!」

「承知している!!」

 

ジークフリード第二射準備。

だがそれを見逃すファブニールではない。

ブレスよりもパワーダイブの方が早いと判断し上空からの突撃を選択する。

 

「アマデウス! サンソンはこっちで引き受けるから。ファブニールを音波で叩き落して!」

「了解!」

 

竜種はその優れた五感が仇になって音波攻撃に弱いのは立証済みだ。

だからこそ此処はバルムンクではなく音波攻撃によってファブニールを地に引き摺り下ろすことが先決と判断し。

オルガマリーはアマデウスに攻撃をさせるべく。

叫ぶと同時にファブニールから若干意識を背け。

遮蔽物から身を乗り出して、銃を握る右手をアマデウスに襲い掛からんとしていたサンソンに突きだし、銃口とペルソナを向ける。

躊躇なく引き金を引かれ。特殊合金を媒介としたことによって。サーヴァントにですらダメージを与える六発のガント以上の呪弾が発射。

ゲンブによるマハブフがコンセレイトが乗った上で炸裂。

 

「ちっ」

 

サンソンは舌打ちしつつ攻撃をよけるべく後退。

後退した隙をオルガマリーは逃さず。

アマデウスからサンソンを引きはがすべく。

ペルソナをパワーにチェンジし、オルガマリーは遮蔽物から完全に乗り出し、跳躍と同時にパワーに自らを投げ飛ばさせる。

目標はサンソンだ。

さしものサンソンも。マスター自身が自らを砲弾代わりに飛ばさせるとは思わず。

その飛び蹴りを脇腹に直撃させられる。

 

「ガッ!?」

「そのまま・・・」

 

サンソンはその肉弾に耐えて踏みとどまった物の。

蹴り込んだ右足を軸にオルガマリーが身を翻して回転。

 

「くたばりなさい!!」

 

左足でのハイキックをサンソンの側頭部に叩き込んで吹っ飛ばす。

魔術強化。ペルソナ補正による強烈な蹴りだ。

普通の人間なら首か側頭部の骨が粉砕されれる威力を持つが。

サーヴァントの耐性的に仕留めれるには至っていない。

 

「ダヴィンチ! ジル元帥も出すから、指揮を交代して!」

『ちゃんを付けてくれたまえよ!! ジル元帥はサンソンへの追撃だ。無理はしないでくれよ。』

「心得ました」

 

 

そうやって。ジル元帥からダヴィンチに指揮系統を受け継がせる。

戦術データはもう飽きるほど見ているため。ダヴィンチであれば

アマデウスはアロウスで周囲の音を共鳴収集、指向性を持たせたうえで。

パワーダイブに移ったファブニールに直撃させる。

そのまま脳を揺さぶられ意識が混濁し。ファブニールが地面に激突。

土煙が溢れ飛ぶものの。

既にジークフリードがファブニールの真横についている。

既に魔力は装填済みだ。

 

幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)

「ゴガァ!?」

 

炸裂するバルムンク第二射。

横腹に直撃し押し出すようにファブニールを転がす。

同じく、蹴り飛ばされたサンソンに対し追撃をジル元帥が行う。

事前にバフは付与済みだ。

 

その巨体を転がしつつもファブニールは、即座に体制を整えんとする。

だが逃がしはしないとばかりにジークフリードは走った。

第三射装填までの時間的余裕はない。

オルガマリーがサンソンの処遇はアマデウスとジル元帥にぶん投げて、ファブニールの討伐に全力を注ぐ。

 

ジークフリードは跳躍し、ファブニールの翼の根元にバルムンクを突き刺す。

鋼と同等、あるいはそれ以上とういう硬度を切断できるのは。

魔力の鎧を先のバルムンクの真明解放で打ち払ったのと。

シークフリードの優れた膂力及び、瞬時に鱗の間を見極め、刃を差し込む技量の高さだ。

そこからさらに精密な魔力コントロールを行い。バルムンクの刀身に魔力を拘束循環させ切れ味を増幅しつつ。

突き刺した剣をそのまま前に走らせ。翼を断たんとするものの。

 

「ガァァアアアアアア!!」

「ッ!?」

 

無論、ファブニールもそのままにしておくわけもなく。

瞬間的に魔力放射で吹っ飛ば酸とする。

 

「させるかってーの!  ラプラス!!」

 

入念に調整された。ラプラスを降魔させ。

固有スキルである、コウガザンを振りかぶらせ。大鎌を深々とファブニールの脚に突き立て

血を浴びながら、ラプラスの大鎌を突き立てつつ、ラプラスの左腕をねじり込み傷口を横に広げて。

コルトパイソンの呪弾を全弾叩き込むオルガマリー。

 

服が血で汚れることなんぞ気にしている暇なんぞ在りはしない。

いくら多重の補正があっても、現状ではジークフリードの支援と敵の行動の妨害で一派いっぱいだ。

現にジークフリードの攻撃の方がファブニールにダメージを与られているし、再生も許してはいない。

オルガマリーの身体を張った攻撃は大きな傷こそ刻んだが。即座に再生が始まっている。

 

 

切り抜けながら体を転がし、体制を片膝ついて、しっかりとコルトパイソンの標準を引き絞り。

ファブニールの意識がジークフリードに向いたのをいいことに。

邪魔さえできればいいと。

ファブニールの両目や、肉体構造的にもろい部分を狙って穿つ。

が・・・しかし。

 

「うっとしいのだ!! 蠅ガァ!!」

 

ファブニールは弾丸で目などの脆い部分を穿たれながらも。

魔力放射を強行。

同時にジークフリードも、このままではまずいとバルムンクの宝具解放を行う。

膨大な魔力が衝突し、炸裂。

暴発し。

衝撃波に変換されて。周囲を薙ぎ払い。

無論ジークフリードも、オルガマリーも吹き飛ばされるほかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

書文とデオンの攻防戦は一進一退である。

極まった対人戦闘で一番重要なのは、間合いの取り方であるから。

互いに円舞を踊る様に間合いと位置を調整しながら隙を伺っている。

突き出される刃と拳。

互いにジャブの応酬じみたものを繰り出しつつ、一撃を届ける機会を伺っているのだ。

 

『駄目だ埒が開かないな』

『・・・埒が空かんなこれでは』

 

レイピアと掌が交わされ反らされること。

既に数十手。

互いに手をこまねいている状況が続いている。

書文的にはこれでいいわけではない

対人戦闘であれば彼は無類の強さだが。逆にあの巨体を持つ龍相手では分が悪い。

されどオルガマリー側も手数が欲しい所なのは明白だ。

故に早急に仕留める必要がある。

 

デオンもそれは一緒だ。

初撃の暗殺失敗で有利を取れないばかりか。

各個撃破的な状況に持ち込まれているのである。

ファブニールが暴れまわり場が荒れているが実際には綺麗に戦力分担されたのだ。

加えて、槍に刺され動けないようにしたはずの、ジークフリードが万全に動けている上に。

オルガマリーが後方から的確にサポートしているおかげで。

ファブニールはその巨体が仇となって嬲られている。

 

 

デオンは右手のレイピアを突き出す。

牽制ではない。十分に勢いの乗った殺傷可能なド本命の刺突だ。

だが単発でそれを出した所で。いかに早かろうが、レイピアと言うのは得物の重さが出せない武器である以上。

今までのやり取りのように払いのけるのは簡単であった。

レイピアの切っ先を払いのけ。腰を落しつつ震脚を踏まんとして・・・

 

―おかしい―

 

デオンは体術に秀で居ているようではない、剣術、暗剣の類の名手だ。

故に不自然さが浮き出てくる。

 

―なぜ、こうも甘い刺突を放った―

 

先も述べた通り。デオンは優秀な使い手だ。

だからこそ降匂い地内、本命の攻撃は何十

 

胴はがら空き、足運びも先ほどのように攻撃の位置をずらしての無力化だとか。

後方への回避だとかを行う様子もない。

これではまるで打ってくれと言わんばかりの愚行だ。

体術に移行する気配もない。

よしんば、体術勝負を書文に挑んでも技術面でデオンが負けるのは道理でありえるが一応の可能性と考慮しても。

体術に移行するような姿勢ではない。

そして書文は気づいた。

彼女の左手が懐に突っ込まれていることに。

腕の動きからして何かを握っている。

 

―短剣・・・否、もうこの状況では儂のほうが早い、故に遠い、それを理解できて―

 

そこまで書文は思考し。

脳裏に電流が走る。

此処に来る前に。オルガマリーが銃の扱い方を教えてもらっている光景がだ。

保安部の生き残った数人の一人で。リボルバーをこよなく愛する男が見せた拳銃の運用法が脳裏をよぎる。

それに思い至ったがゆえに書文はわざと姿勢を右に崩し倒れ込んだ瞬間だった。

刹那の前に書文の腹部があった空間を鉛弾が通過するのはである。

そのまま側転しつつ連射される、銃弾を回避し体制を立て直す。

 

「これも避けるなんてね、恐ろしいな」

 

デオンの左手に握られているのはフリントロックピストルである。

フランスの決闘の一形式として使われていたということもあって。

無論、デオンも並み以上に扱えるのだ。

加えてサーヴァントの武器と化したことで。フリントロックなのに連射可能というふざけている仕様だった。

 

「剣士が銃に頼るとはな」

「恥を知れってかい? ご老体」

「言わぬよ、殺し合いに卑怯もナニもあるまい」

 

銃の利点は拳以上に攻撃に使う動作がないことである。

空論上の話だが、射線を保持できるのならどのような姿勢であろうが指先一つ動かすだけで、相手を殺傷可能な攻撃を行えるのだ。

デオンの筋力はAであり。その条件をクリアしている。

加えて剣が威力を発揮しえない密着状態であっても。

銃ならば十分に対処可能だ。

うかつに近づくことができない。

 

縮地からの無拍子の間合いを詰めても。

攻撃動作に移る瞬間に打たれて終わりだ。

 

そしてデオンも、攻め方を変える。

風切り音を鳴らしつつ、レイピアの切っ先を揺らしながら円形に回す。

 

「趣味じゃないが・・・」

 

デオンがポツリと言う。

 

「なりふり構ってられないんでね。一方的に切り刻ませてもらう」

 

本来なら主義に反する。

されどそれに括っていては勝てぬとデオンは判断し。

嬲り殺す方向に舵を切った瞬間である。

爆発音と共に。書文とデオンは反射的に互いの間合いを離して近くの障害物に身を隠す。

 

 

 

 

「ハァ!!」

「クソッ!!」

 

ジル元帥とサンソンの戦いは。おかしいことにジル元帥が有利と言う状況で続いていた。

噂での能力アップはない。単純にオルガマリーと達哉のバフが効いているのである。

後は単純に技量の差という奴だ。

騎士と処刑人では、そも戦う土俵が違いすぎる。

サンソンは生粋の医者で処刑人だ。

言っては悪いが対象を拘束したうえで切り刻んだ事しかないサンソンでは、訓練と実戦経験を得ている百戦錬磨のジル元帥相手では、暗殺という土俵に立たなければ強化さえあればどうにもできる。

 

「騎士の誇りはどこに行ったのかな!?」

 

地面をするように足をスライドし砂粒と石ころを巻き上げサンソンに向って放ち。

目を潰しながら愛剣をジル元帥は振り下ろす。

サンソンは砂に目をやられながらも。何とか剣を受けとめて叫ぶ。

曰く、騎士の誇りはどこに行ったのかと。

ジル元帥は若干顔を歪めつつ。

 

「戦場に綺麗も誇りもある物か!!」

 

必要と在れば指揮官は部下を数字としてみなければならない。

出なければ部下が死ぬからだ。分かった上で、極悪非道と罵られる覚悟も無しに元帥なんぞできるわけがない。

現に戦場に綺麗も美しいもない。あるなら、只の錯覚であることをすでにジル元帥は思い知っている。

 

『その結果。私を見捨てたんですか? ジル?』

 

その結果。未だなお、こびりついて離れない後悔が胸を締め付ける。

その後悔がありえないジャンヌの虚像となって心を抉る。

 

「ッーーーー」

 

無論。あれはどう考えてもジャンヌの独走だ。

彼が見捨てた云々ではないのだが。それをどう感じるかはジル本人の問題である。

 

「隙ありだ」

「しまッ!?」

 

だが戦場で後悔に耽るのは致命傷であろう。

身体能力に物言わせて。サンソンが強引にジルの剣をかちあげて身を旋回し。

回転廻し蹴りを腹部に叩き込む。

 

「ああ、クッソ!!」

 

吹っ飛ぶジル元帥を、アマデウスが演奏片手間に受け止めて、壁に激突するのを防ぐが。

サンソンは、そのまま間合いを詰めて。処刑剣を真横に首狙いで振う。

がしかし。アウロスの腕が動いて、剣を掴んでそれを未然に阻止。

 

「そんなものでなぁ!!」

「チィ!?」

 

ただしアウロスの力はぶっちゃけ低い。

図体はデカいが、ぶっちゃけ標準サーヴァント以下だ。

加えて生前、サポートに特化していた為。替えのペルソナを持っていない。

というよりも。サーヴァントとして座から呼び出されるのは一側面であると言う事が災いしてか専用ペルソナしか使えないのである。

もし替えが効くのであれば。もう少しこの戦争はやり様があった。

 

閑話休題。

 

よって、替えの戦力を用意できず。

アウロスの腕を振り解く様に。サンソンが剣を振って断ち切って見せる。

ダメージフィードバックが走る。無論現実的に傷が出来る様なものではないが。

精神が痛みを誤認し、幻肢痛として痛みが走るのだ。

アマデウスは表情を痛みに歪めつつも演奏だけは止めない。

ここで止めたら全部が崩壊するからである。

ジル元帥が食い下がっていく。

ここで鍛え方で差が出始めていた。

肉体面では無論サーヴァントの方が上であるが。

戦闘とは精神を削る物。従軍経験のありなしが差を生み出していた。

 

だがここに来て異常事態である。

 

大爆発である。

魔力放射による炸裂放射と言っても過言ではない。

竜種による全力の放射なのだから、その威力は凄まじいの一言に尽きる。

それにバルムンクの真名解放が衝突し。

なぎ払われた建造物及び遮蔽物が散弾どころか、土砂雪崩のように炸裂。

もはや敵味方もない物となっていた。

 

「ファブニール!?」

 

さしものサンソンもデオンも面食らいつつ回避行動に移る。

デオンの方は問題ない。書文も同時に間合いを離して後退しているからだ。

問題はサンソンの方なのだ。

無論。彼も回避行動を取り辛うじて残っている遮蔽物に足を向けた刹那である

 

「ダラッシャァ!?」

「ホォゴツ!?」

 

本日二度目のオルガマリーの肉弾がサンソンの脇腹に突き刺さる。

吹っ飛ばされ、ラプラスを盾にダメージを減衰しつつ、吹っ飛んできたオルガマリーのタックルが綺麗にサンソンの鳩尾に決まる。

もっとも意図してやったことではないため。オルガマリー自身にも衝撃が入り。

意識が数瞬飛翔し二人とももつれ合う酔いに地面を派手に転がる。

 

「クソ!! アウロス!!」

 

アマデウスはフォローに回れなかった。

サポート専用のペルソナであるため。

自分とジル元帥を庇うので一杯一杯なのである。

 

「クッガ・・・このぉ」

 

意識を飛ばしていなかったサンソンが懐からメスを取り出し組み付いたまま

 

「不味い!?」

 

アマデウスとジル元帥の顔色が青色に下降する。

組合の場で意識を数舜失えば致命打だが。

 

『―――――――――』

 

振われたサンソンの左腕が宙を舞う。

オルガマリーのラプラスの大鎌が振るわれている。

意識が完全に堕ちていないことが幸いし半落ち仕掛けている意識で何とか、ラプラスを呼び出して防御したのだ。

その隙を突いてオルガマリーがコルトをサンソンの額に意識が朦朧としながらも執念で突き付けて引き金を引き

 

カチリと虚しい金属音が響くだけだった。

 

「「!?」」

 

結論を言うならコルトから弾は排出されなかった。

何が起こったと驚愕する。無論オルガマリーとアマデウスたちはだ。

 

「貰った!」

「ッ」

「させる物か!!」

 

そんな中、すでに書文は動いており真っ当な引きはがしは困難として。

殺すつもりでサッカーボールキックをサンソンの頭部に叩き込みつつ。

オルガマリーの首根っこを掴んで即座に離脱し遮蔽物へと逃げ込みながら。

気付けのツボを強めに押す。

 

「許せ」

「いッた!? もう少し加減しなさいよォ!」

 

オルガマリーは半泣き状態になりながら意識を完全に取り戻しつつ悪態を吐く。

肉弾戦に、爆発に、肉弾戦である。

本来ならマスターのすることではない。

散々な目に合うのは、当然であるが自らも戦闘しなければならないので仕方なしである。

 

「散々ね!! ホント!!」

 

悪態を吐きながら背を防壁に押し付けて手動で薬莢を輩出し銃弾を装填する。

訓練の時にオートリロードがあるから。

こんな手動での訓練意味があるのかと教官に愚痴ったが。

 

―いいか? 戦場で最後に物を言うのは、自分自身の技能と気合と根性だ。オートリロードに頼るといつか痛い目に合う―

 

オルガマリーに銃の扱い方を教えた保安部課長は煙草を救いつつそう言った。

 

―そういうアンタはあるの? そういう類の痛い目にあった事?―

―あるよ、中東の秘密作戦に参加した時。民兵に追いやられてね、愛銃のM4とガバメントが同時にジャムって銃を突きつけられた時は死んだと思ったもの―

 

案の定である。

問題が起きて装填しきれず、相手を仕留められないと言う醜態を晒す羽目になった。

無論、これはオートリロードに頼り切ったのが全ての原因ではない。

残弾数を体に覚えさせ。

弾切れしているなら即座にリロードという工程を体に覚えさせきれなかったのも問題であるし。

第一にこっちでのトラブルならまだましも。

 

「オートリロードが機能していない。ダヴィンチ、どうなってるのよ!?」

 

向うでのトラブルなんぞ想定しきれるわけがない。

カルデアに通信を飛ばし抗議するが。

 

『送魔系統にトラブルだ。現在、こっちの判断で突入組以外は最低限の供給で運用中だ!』

 

聞きたくない言葉がダヴィンチから告げられ。

体当たりの衝撃より強い衝撃がオルガマリーの脳髄を貫抜いていく。

 

「・・・なにがあったのよ」

『原因は現在不明で、いま状況の把握中だ!!『開発主任!!』ああもう、すぐこれだ!? ジル元帥に指揮を変わってくれ。こっちは維持するので一杯一杯だ!』

 

要するに向こうでトラブルがあったということを。

オルガマリーは理解したくないが理解してしまった。

優れた魔術回路より優れた演算能力の賜物であろう。

 

「アマデウス、ジークフリード、そっちは?」

 

弾倉に銃弾を装填し戻しつつ。

状況を確認する。

土煙のせいで視認による確認は困難であるため

アマデウスの構築した通信ラインで確認を取る。

 

『こっちは無事だよ。演奏も続行中』

 

アマデウスはため息交じりにそう返す。

オルガマリーは内心で胸を撫でおろした。

現在、戦場全体の通信網を担っているのはカルデアのレイラインとアマデウスの音声ラインなのである。

その一角が落ちたとなればシャレになっていない故だ。

がしかし、ジークフリードからの連絡がこない上にカルデアからのナビゲートが沈黙済みである。

オルガマリーは自前のレイライン経由でオルガマリーはジークフリードとの視界を共有。

状況把握に努めれば。

ジークフリードが血反吐を吐いていた。

カルデアでの問題とかけ合わせれば自ずと、カルデア側でなにかがあったのがわかるという物だ。

 

「アマデウス。音でジークフリードの位置の特定は?」

『できない事はないけれど。そっちの機器の方が精密だよ』

「向こうは手一杯でこっちで探る余裕はないわ、だから、アンタの能力が必要なの」

『わかった。とりあえず。ファブニールの後方50mの所に居るみたいだ。それで僕らはどうすればいい?』

「ジークフリードが倒れている所で合流よ。あと元帥は?」

『なんとか無事だよ、意識もはっきりしている』

「なら指揮をダヴィンチと交代よ。問題が起きたみたい」

 

とりあえず此処は合流し戦力を立て直すことが最優先と判断し。

合流ポイントをジークフリードのいる場所に指定する。

ジークフリードは動けないのが明白だからだ。

 

『まったく。僕は音楽家だよ。なんでこう、あの時みたく走らなきゃならないんだ・・・』

 

ペルソナを使って街を奔走する羽目になった事件を思い出しながら愚痴り。

 

「土煙が晴れ切っていない今がチャンスなのよ。それに運動も音楽家じゃ業務内容の一つでしょうが!」

『それは今や歌手に楽器使いの話しであって、昔は違う! 今のミュージシャンみたいに走り込みやらウェイトトレーニングなんてしたことないんだけど!?』

「ごちゃごちゃ言ってないで。こっちで合図出すから、その時に走って、デコイも出すから音響でのデコイもよろしく」

『ああもう、無茶苦茶だ!』

 

アマデウスの愚痴を切り捨てながら。

オルガマリーはエンジェルを呼び出しコウハを空中に打ち出して。

信号弾代わりにする。

それと同時に全員が走り出した。

無論それに感付けないほど敵方も馬鹿ではない。

個の視界が利かない中で。足音を頼りにオルガマリー達に襲い掛かるものの。

オルガマリーはマハブフで適当に輪郭だけを似せた氷の彫像を配置。

そこにアマデウスが足音の音響を発生させて簡易デコイに仕立て上げる。

この砂煙の中なら流石にデオンやサンソンであっても引っかかるという物だ。

 

「クッソ!? またデコイか。ファブニールがやらかさなければ仕留められていたのに!」

「怒るな、サンソン。間が悪かっただけだ」

 

仕留める段取りが着いたというのに。

ファブニールが怒りに任せて周囲を薙ぎ払ったおかげで。

場は仕切り直しだ。

加えて土煙で視界が利かず、濃密に垂れ流された魔力のせいで感も効かない。

故にデコイに引っ掛かりサンソンは悪態を吐くものの。

デオンは次の事を考えながら、切断されたサンソンの左腕を彼に投げ渡しつつ落ち着く様に言いくるめる。

サンソンは苦虫を潰したような顔でそれを受け取り。

断面と断面を引っ付け癒着させた。

 

「仕切り直しだ」

 

サーベルを一振りし彼らがいる地点へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

まんまとデオンたちを出し抜いた。オルガマリーは、ジル元帥と書文にジークフリードを引きずらせて。

一定距離を交代し、ペルソナをラプラスからゲンブにチェンジ。

 

「ゲンブ。マハブフ!! ラプラス!! 詠唱破棄!! 強化! 構築!!」

 

ゲンブを過労死させる使用頻度でマハブフを使用し。

氷塊を形成。積み上げて組み上げて、即興の壁として。

さらにラプラスを呼び出し。ラプラスを魔術回路、あるいは刻印兼媒介として機能させる。

神格の断片である以上。ペルソナは魔術回路及び刻印としても使える。

自前の刻印と回路も併用し。普通なら詠唱しなければ行使できないようなものを行う。

ただしこの使い方は、専用でしかできないので。

緒戦の差異も、今もラプラスを使ってでの行使だ。

アマデウスを護衛しつつジル元帥も同じ遮蔽物に隠れる

 

「アマデウス、ジークフリードの状態は・・・」

「良くない、僕の演奏で代謝を活性化させているが・・・このままじゃ持たない」

 

吐血だけではなく、腹部の傷口まで開いていた。

ジル元帥が止血を行い、アウロスのミュージックフリークスによる代謝活性で傷口を抑え込もうとするが。

正直な所焼け石に水も良い所。

 

「要因は・・・連中の攻撃じゃない。彼の鎧は機能している。となるとこっち側の問題か」

 

オルガマリーはちゃんと聞いていた。送魔設備系でのトラブルだと。

あの具合からして、かなり拙い状況であることは予想がつく。

そしてそのトラブルのせいで、供給量の絶対値が途端に不足したがゆえに。

強引に封じ込めていた傷口が開いたと感がる方が自然であろう。

かと言って状況を聞こうにも、先ほどの口ぶりからすると。向こうもパニック状態だ。

自分から連絡を入れても

チェスや将棋のプロの試合はこういう具合なのだろうとオルガマリーは思う。

着々と進む駒。

どちらかが詰んでいく盤面。

そして結果はまだわからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「送魔ケーブル6番及び8番破損!! ああこれは・・・完全に飛んじゃってます!?」

「原因は!?」

「過剰供給です!! 想定以上に魔力が消費されています!!」

 

彼等が現場で血を流す中で。カルデアも必死の作業が行われていた。

カルデアのスタッフのコンソールには施設の状況が映し出されている。

スタッフが叫んだ番号のケーブルが弾け飛んでいた。

しかも最悪な事に弾け飛んだケーブルが他の設備を傷つけあふれ出る魔力が計器に異常を発生させているのだ。

 

「過剰供給? 馬鹿なそんな余裕は無いし、今まで全員想定道理に供給されていたはずじゃ・・・」

 

無論、そうならないように、模擬戦でテストがてらに運用はしていた。

ここに来てから、ラインを繋いだサーヴァントが多くいた上に。ジークフリードに供給する魔力を含めた上でも揺らぐことはなかった。

さらにそこにリアルタイムでの監視を行っていたのだ。

異常が少しでもあれば感付けるように複数のスタッフが監視していたのである。

普通ならこうなる前に気付けたはずなのに気づけなかった。

まるで急激に、供給魔力の数字が跳ね上がったかのように。

ダヴィンチは親指の爪を手袋越しに噛みつつ、コンソールを操作し原因を探ろうとするが。

そうするよりも早く、スタッフの一人が原因を突き止める。

 

「開発主任。原因特定できました!! ジャンヌです! ジャンヌへの供給ラインに異常発生!!。魔力が過剰に取られています!!」

「なんで・・・そうか・・・”噂”か!!」

 

多数のサーヴァントの契約。これは問題ない。元々50名近くのサーヴァントの魔力を賄う予定だったからだ。

それに定員が満たされていない以上。

ジークフリードに魔力を鱈腹に供給しても想定の範囲内だったが。

レフの爆破によって、送魔ケーブルは本来運用される物より少なく、送らねば話にならないので

減った本数を賄うために、残ったケーブルに理論上の限界値まで利用して送っているのである。

だが何度も述べる通り問題はなかった。

そう、このままでの話ではある。

上で述べた要因と噂による過剰強化で、ついにケーブルが限界を迎えてしまったのだ。

 

これが原作通りのジャンヌ・オルタであれば問題はなかった。

だが此処のジャンヌ・オルタは自己を強化しまくっている。

ジャンヌ・オルタの想定は、獣やら神格やらを想定した物なのだ。

現状それでもジャンヌ・オルタは満足していない物の。

手っ取り早くいってしまえば強引にハイ・サーヴァント化しているのである

それに基準値を合わせて強化すれば。噂による強化であるため、ジャンヌ本人に負荷はないが。

魔力供給への負荷は倍増する。

ジャンヌ・オルタとて聖杯と怨霊を燃料にして自己維持しているのだから。

今やジャンヌの魔力消費量はインドのトップサーヴァントのフルスロットルとほぼ変わりがないのだ。

つまり噂による過剰強化をし過ぎた。あるいは想定が甘かったというほかない。

こうしている間にも、状況は悪化していく。

 

「こっちとは独立してるんだぞ。噂の力はこれほどなのか!?」

「いいや。ダヴィンチ、明確に言えば供給ラインはつながっている。ラインだけは影響下にあるんだ。至急、バックアップケーブルに振り分けるんだ!」

 

ロマニも自分のコンソールに戻り、ダヴィンチの叫びに応えつつ。ケーブルの魔力供給を変更

ケーブルが吹っ飛んだところで。残ったケーブルに供給先が自動変更され。ジャンヌに供給を開始するならば。

もう割り切って一本丸々、ジャンヌ専用に設定する。

 

施設までは噂の影響下はない。

なんせ特異点とは独立した世界のようなものである。

だがカルデアはそこにラインを通して魔力供給を行っている。

ラインは特異点とつながっているゆえに影響範囲内だ。

そこから逆算して効果が結果的に及んでしまっている。

そこにさらに追撃と言わんばかりに問題が発生する。

 

「カルデアの炉の稼働効率20%下降!! 基部に異常発生!!」

「開発主任!! 炸裂したケーブルが他のケーブルにも悪影響を出して。どう足掻いても供給量が・・・」

「漏れ出た魔力が他の機器に異常を貰たしています!?」

「所長へのオートリロード回線もやられました!?」

 

高濃度の魔力は電子機器にも影響を及ぼす。

漏れ出した魔力が施設の機材にもダメージを与えるという最悪の展開だった。

 

「炉からのライン接続いったん中止して。この際オートリロード回線は無視だ!! 接続先を予備バッテリーに変更。残ったケーブルは突入組み以外は最低限に振り分けるんだ!! ロマニ。ここの指揮は任せる。アマネ、保安部の連中を全員呼んできてくれ」

 

修繕作業には人手が足りず。

本来ならカルデアの治安を担う保安部も動員する事を、ダヴィンチは決意し。

その意志にカルデア保安部統括の「ウィンドリン・アマネ」は頷いて同意し。

インカム経由で詰め所の保安部に指示を飛ばす。

 

「ダヴィンチ。けれど、この消費量なら、バッテリー供給じゃ持たないぞ?!」

「ケーブルの交換と炉の修繕まで持てばいい!! 兎に角、突入組を優先で他は最低限にだ。」

「所長の方はどうするのさ?! 彼女たちは防衛線組以上に余裕がないんだよ?!

「ジークフリードの方は、こんなこともあろうかと準備しておいた。聖晶式供給機を使って維持する!! 今はそれしかない!」

 

ダヴィンチは作業指示を飛ばしつつ。

聖晶式供給機、通称「石割機」を置いてある自らの工房に技術スタッフ数人を引き連れて走り。

保安部は保安所から掛け出ると同時に医務室で防護服へと着替えて工具を片手に指示された場所に走る。

事態は混迷を極めて破裂した物は治らず。

猶も戦場は駒が進められて。決着の時は近づいていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




後半に続く。
とりあえず後半戦は、書文VSデオンを書けば完成まで書けました。
そして気が付けばもう八月中半です、前回の投稿から遅くなって申し訳ないです。
本当に死ぬかと思った・・・マジで・・・

後、メガテンⅢリマスターにメガテンV発売決定 ウレシイ・・・ウレシイ・・・
でもスイッチ持ってない・・・ドウシヨウ、ドウシヨウ・・・
パニグレの為に端末換えた直後にこれだよ・・・
メガテンVは完全版がPS4あたりで出たりしないだろうか・・・





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