Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです 作:這い寄る影
アンティステネス「断片」より抜粋。
ジル元帥は執務室で頭を抱えていた。
「私は・・・何を・・・」
それは状況への憂いではなく。自分は何をやっているのかと言う失活である。
先の大規模戦闘、須藤との戦闘。ジャンヌの消沈へのケア。
そのほぼすべてをカルデアへと押し付けていた。
彼等が多くの負担を担い。無理をさせ。
さらには彼等だけでの攻城戦と言う名の特攻が行われている。
その多くの責任を取っているのがカルデアの所長である。オルガマリーと最高戦力として戦っている周防達哉へと負担を強いていた。
彼等の奮戦はそれだけ見事な物だった。
人種差別色濃い時代に置いて黄色人種である達哉がフランス軍に認められているのもそう言うところが大きいし。
なんせペルソナという力を使って。メタトロンというキリスト教徒においても最高位の天使を降ろし使役するという離れ業あってこそである。
だがしかし彼らは歳も成人していない子供たちであるし。
そんな中で、何もできないという無力さに打ちのめされ。
あまつさえ。
「なぜ彼に嫉妬なんぞ・・・!!」
ジル元帥は達哉に嫉妬しているという事実に打ちのめされていた。
最前線でジャンヌと轡を並べ。
そして須藤に打ちのめされ幼子が泣くかのように絶望していた彼女を救ったのも彼だった。
月明りが照らす廊下の中で英雄が聖女の手を取って立ち上がらせる。
まさしく英雄譚の如き光景である。
加えてジャンヌが生きて居た時。ジル元帥にはできなかった光景だ。
故になぜ自分は出来なかったいう自責の念。
そして反立してなぜ彼、達哉に機会が与えられるのかと言う嫉妬が生み出されるわけだ。
なにせ一番助けたかった存在を助けたのは、言っては悪いがポッと出の達哉であったことがより拍車をかけるというものである。
その隙を影は逃さない。
窓際で踏ん張る人間を指先一つで落とすが如く、人差し指を突き出すのが。影の本領と言うものだ。
「なら行ってあげるべきじゃないかな? ジル・ド・レェ」
キィと扉を開けて漆黒が現れる。
半透明の身体に裏地に花をあしらった。黒スーツの男。
といっても人間として形容すべきか、人間の頭部があるべき場所には漆黒の髑髏の頭蓋が乗っていった。
紳士的幽霊的なテンプレート染みた存在がジル元帥の元に現れる。
「貴様、何奴!? 衛兵は・・・」
「衛兵は来ないよ。皆ぐっすり、シエスタ中さ。お久しぶり、そして初めまして、僕はLucid、偽りの光を以て破滅へ誘導する者」
そういってLucidはカタカタと微笑む。
ジル元帥は剣を引き抜いた。
カルデアからの情報では自分では倒せないと
「貴様が彼らの言っていた元凶か!」
「元凶? 酷いなぁ、僕は君たちの願いを叶えてあげただけだよ、君はジャンヌとの再会を望み、未来の君は憎悪に濡れた彼女を欲した。それに君もさ。この状況を望んでいたよね、ジャンヌに責任をおっかぶせて処刑した連中が紅蓮の炎に包まれ生きたまま解体されるという罰を望んだ。だからその願いを叶えてあげたわけだ。現にあの魔女裁判に関わった連中は殆どが死んだし、無関心を貫いた民衆は惨たらしく殺された。どうだい? 憎悪に濡れて自分が思っていったことをしてくれる、ジャンヌ・オルタの姿は胸の内がすっきりしただろう」
Lucidは他人事のように語る。むしろ願いを叶えてあげたのに怒られる道理がどこにあるのかと言わんばかりだ。
これにはジル元帥も言い返せない。
なんせジャンヌと再会することを何よりも望んでいたから。
そしてこの悲惨な状況こそ君は望んだはずだと指摘する。
「そんなこと望むわけないだろうが!!」
突き出される剣、だがLucidは防御するそぶりも見せずに刃を受け入れる。
半透明の身体は存在していないかのように刃を素通りさせ血さえ流さない。
そして同時に引き抜かせない、どのようにジル元帥が刃を引っ張っても固定されたかのように動かなかった。
Lucidはカタカタと顎を鳴らしつつ、自らを貫く刃を撫でつつ言葉を紡ぐ
「嘘いうなよ、ならその書物は何だい? そしてなんで各地から孤児を集めた?」
Lucidが指を差す先には人の革で作られた本があった。
悍ましき異界の法則と神々を記した著作である。
「失って取り戻したいからそんな下らない物に手を出す。金持ちの発想は変わらないなぁ、そして望んでいないという割にはコミュ障よろしく死んだ彼女に関わろうとしたよね? もう言い訳は出来ないよ、それでジャンヌとの交流をしたいと望んだシュチュエーションが手に入ったわけだ。だけどいざやってみたらどうだった? 何もできていなかったよねぇ。敵を仕留めたのはカルデアで、特攻しているのも誰だ? 何一つジャンヌの為に役立てていない」
折角望んだものを用意したというのに、何一つ出来てはいないではないかと嘲笑う。
サーヴァントたちが居たからとかではなく、幾らでも交友の機会はあっただろうし。
ジャンヌが一番多く絡んでいただろうマリー・アントワネットだって、ジル元帥がお茶会に飛び入り参加を許可しないなどと言う器量狭ではない。
むしろマリー・アントワネットだったら嬉々として迎え入れてくれるというのに。
友人同士としての交流を邪魔したくはないからと言う理由で常にそういったことからはジル元帥は引いていた。
「それとも、罪悪感かな? みすみすジャンヌを見殺しにした罪悪感から話さなかったわけだ」
「黙れ」
「図星かな? その罪悪感で結局逃避では僕としても用意した甲斐が無いというものだよ」
ジル元帥の恫喝に近い声を中半スルーしつつ、これでは用意した甲斐が無いという物であるとして次の用意があるとLucidは言う。
「だから僕は君の願いを叶える為に此処に来た」
「願いを叶える?」
「そうだとも、君の渇望を満たし嫉妬心を洗い流してあげようといんだ」
そういってLucidは指を鳴らす。そこにはオルレアンのジャンヌ・オルタの居城の裏口が映っていた。
「今カルデアとジャンヌ・オルタの交戦も中盤戦だ。そろそろ本物と贋作も戦っているころだろう。だから行ってあげると良い。ただしサーヴィスは此処までだ。ジャンヌの場所までは自分自身の手で行ってくれ給えよ」
要するに送ってやるとのことである。
「さぁ選びなよ、ここで役立たずとして彼女の勝利を願うか、あるいは死ぬも覚悟のうえで、彼女の窮地を救いにいくかをだ。」
「窮地・・・だと?」
ジル元帥は呆然とする。それがおかしいという様にLucidは嗤った。
「君はあの聖女モドキを絶対視しているけれど。彼女、特段強いってわけじゃないからね」
Lucidは呆れながら指摘する
当たり前である。
真っ当に考えればジャンヌではジャンヌ・オルタに勝てない。
基本スペックは同じだが、潜った修羅場と鍛錬した時間が違うのだから当たり前である。
冷静さを取り戻しつつあるジャンヌ・オルタは徐々に戻り始めているのだ。
あの頃、神霊跋扈する神殺しと魔人たちの戦場を駆け抜けた頃にだ。
言っては悪いが人間同士の戦争及び殺しという場でもあまり活躍できなかったジャンヌに勝てる道理は無いだろう。
第一に影に戦いを挑んだ達哉、ケルト最高峰の英霊クーフーリン 武の境地の一角である書文と宗矩、戦国武将の長可、武闘派聖女マルタに竜討伐経験のある軍人してゲオルギウス、歴史の闇に葬られたとはいえ異界とかした街の区域に乗り込みペルソナ使いとはいえ討伐したマリー・アントワネット。
戦績で言えば見劣りするのも当たり前と言えよう。
第一に彼女自身の武力による逸話は限りなく少ないのだ。
個人技量でいえば最悪、オルガマリーにですら劣る。
「もっとも達哉あたりは交戦中の悪魔との相性もいい、間に合ってどうにかするかもしれないけれどね。だがね・・・」
そして現在、状況は混沌としているとLucidは告げる。
各個分担され。魔王の上位分霊が顕現し、ジャンヌ・オルタのサーヴァントたちは大暴走状態。
「それでも疲弊はする、そんな状態で、また”英雄的に彼に無理”をさせるのかな? また誰かを英雄に仕立て上げて、自分は最善を尽くしたのだと言い張って殻に閉じこもるのかな? 死ぬのが怖くて」
「黙れ・・・」
「またそういう、彼女が真に聖女足り得るなら協力者を募り内部工作を重ねて救出だってできたはずだ。あの時既に喧伝は終わっていて。法王に接触すればどうとでも出来たはずだ。それが出来なくても私兵を率いて全てを投げ捨てれば届いたかもしれない。」
「だまれ・・・」
「なぜできなかったのか。単純だ。君は怖かったんだろう? 死ぬのが、或いは異端と名を押されてすべてを失うのが」
「黙れぇ!」
狂った形相で両手に力を込めてジル元帥は刃を返す。
死ぬのさえ恐れなければ。できたはずだとニャルラトホテプは煽る。
だが出来なかったという結果と事実、そして壊れかけるまで生きていたという事実がそういった負い目を浮かせるものだ。
本当に死ぬのが怖くなかったら、結果の是非は置いておいて彼は救出作戦をたとえ一人でもやったはずであるから。
「おや、おや、怖い怖い」
それでもLucidは動じない。
寧ろ図星だなと嘲笑う。
「だからこそ違うというのなら、それを証明すればいい、そこは直通済みだしね」
そして本当に命をかける気があるのなら。
さっさと行けよと言う。今、目の前に開いている光景に飛び込めばすぐそこはオルレアンなのだと。
それでも呻くように悩む様子を見せるジル元帥に。
Lucidはため息を吐きつつ。致命傷になる針の一撃を加えることにした。
「言っておくが、この機を逃すと君はジャンヌには会えないよ」
「え?」
「当たり前だろう? サーヴァントなんて世界の天秤の守り手だ。その役割は特異点化の元凶を抹消するための実働部隊な物で。お役目が終われば即座に撤収なのは道理だよね? 彼らからは耳にタコが出来るほど説明されていたはずだけれど。なんだまた都合のいい妄想、いや妄執と言った方がいいかな・・・ そんなものに逃げて事実から目を逸らすなんてね」
そう言われていたはずである。オルガマリーも抑止に関する知識をカルデアの修繕作業に必要な知識として。
フランス首脳陣には言ってあった。
現状のフランスがどういう状況で、カルデアがどのような任務をして、サーヴァントがどういう存在なのかを。
故に察することは出来たはずなのである。
だから、あの出撃の時に別れたら、もう懺悔も何もする機会は永劫に失われる筈なのだと理解していない方がおかしい。
だがジル元帥はその事実から目を背けた。彼女は帰ってくるはずだと。カルデアの戦士たちも同行するのなら今度こそ。
彼女の凱旋を見届けることが出来るのだと。
無論、そんな都合のいいものなぞあるわけがない。
目を背けた。知覚したうえで都合のいい妄想に縋りついた。
平時ならそうはならなったが。今の時期はジル元帥が一番精神的に参っている時期でもある。
つまり壊れかけていた時期でもあり、都合のいい妄執に縋るのは道理と言えよう。
「さて・・・だから僕は何度も言う通り、君の願いを叶える為にここに来て。現実を教えるために此処にいる。あとは君自身の選択だ。ここで待って、”周防達哉がジャンヌのヒーロー”という立場を指くわえて見ているか。あるいはもっとも願っていたジャンヌへの懺悔をするか。さてどうする? 全ては君の望むがままだ!! ジャンヌへの懺悔 民衆への断罪!! 前者は今の君が望み、後者は未来の君が望んだ!! ならば最後も思うがままにしてやろうというんだ!! チャンスは目の前にあるぞ!!」
「私は・・・・」
そして―――――――――――彼の出した答えは。
「まぁやはりこうなるかな」
部屋にはポツンと影が一人。そうボヤいた。
あとはもう結果は見えているという物。
ジル元帥が何よりも望んだ光景には彼ではなく達哉が居る、そして落ちている聖槍、彼の嫉妬心と都合のいい妄執。
影からすれば蠟燭の火を見るよりも明らかと言う奴だ。
「死者は帰ってこない、失ったものは戻らない。まったくそんな現実も理解できないから。こんなことになる」
影法師は影法師、生前のコピー品でしかないのだから。
何を同行したところで無意味だというのにと言いつつ、影は姿を消した。
テーブルの上にあった悍ましい魔術書はそこになかった。
エリザベートとカーミラの戦いはエリザベート優位だった。
これはジャンヌ・オルタとのラインをカーミラが寸断してしまったことが原因である。
無限リソースから有限リソースへと移行している。
もっとも幾ら有限とはいえ、もしもの時に備えてカーミラは取れるだけのリソースを貯め込んでいたのだ。
かと言って臨時駆動とはいえエリザベートはカルデアの支援下だ。リソースに困らない。
「いい加減自覚しなさいよ!!」
槍を振い鉄の処女などの拷問器具を殴り飛ばしながら叫ぶ。
「なにがよ・・・」
「真っ当な領主としてやり直したい、それがあんたの願いだったはずなのに、そうやって逃避してることを」
「ッーーーー」
ジッっとノイズが配する
いつかどこかの記憶、自分が変わる筈だった大事な物。
「それが私の願いだもの、根源的なね・・・だったらあんたもそうでしょうが・・・」
「うるさい」
ジッジとノイズが走りる。
記憶が混濁する。月の記憶、人理焼却の記憶。どこかのカジノの記憶、有った筈のハロウィンの記憶。
カーミラとエリザベートが混ざり合ってノイズが走る。
「そして痛いからとりあえず八つ当たりしたいってのが、今のアンタよ」
それはエリザベートも同じだ。
影が仕込みを用意していないはずがないのだ、こんなおいしい主題を逃がすはずもない。
故に仕込んでいた毒の針。
噂結界によって繋がりが構築され強化されているゆえである。
何故ならエリザベートは、カーミラを未来の自分として公言していたからである。
それが周囲に広まっていれば噂として成り立つからだ。
「同時に罪と罰から逃げたい。復讐なんてどうでもよくて、本当は逃げたかった。だから名目上加担するように見えて、実際は第一特異点で終わらせるために加担した」
ギチギチ。
エリザベートも頭を右手で押さえながら指摘する。
カーミラの頭痛も、共有されかかっている。
どっちがシャドウなのか関係ない、サーヴァント自体が座から投射されたシャドウのような物だから。
「本当は・・・「やめなさい!!」
指摘を続けるエリザベートに対し絶叫する。
「アナタも望んだことでしょうが!!」
「・・・」
そうカーミラが望んだということはエリザベートも望んだことだ。
罪から逃れたい、終わらない円環から脱却したい。ああ・・・或いは。
「私自身をちゃっちゃと終わらせて普通の人として過ごしたいってね」
「望んだわよ、そりゃ・・・」
今でも覚えている一時の仮初の主。
ああやっていきたいと何度思った事か。ご普通の日常を送って友人たちと馬鹿笑いして居たかった。
罪悪感に胸を締め付けられ苦しめられ断罪すらされず永劫悩めという罰なんて受けたくなかった。
それは本音だ。だが一側面でしかないのも事実でもある。
「でもね”次”なんて永劫来ないのよ」
死ねば何もかも失う、罪と罰から解放された時点で。エリザベート・バートリーという個体の存在は消えている故に。
次なんて無いのだ。虚無に還るだけだから。
「座から消去されれば虚無に還るだけ。次なんて無い。達哉だってそうだもの」
次なんて永劫来ないのだ。
犯した罪は消えない。
なにか大きい罪を犯してしまった彼は背負って生きている。
苦しそうに、断罪され続けながら痛みを受け入れて矛盾しつつ生きている。
「終わらないのよ、永劫断罪され続ける、やらかした事は変えられない」
「ならどうすればいいのよ!? 永劫この頭痛と付き合えって?!」
「それだけのことをやったでしょ!! だけど私だってそんなの背負いたかないわよ! けどさぁ・・・」
―守るべき約束を破った―
「今を楽しめる若者が必死こいて背負って、足掻いて戦ってさ、生きてるのよ!!」
そうエリザベートのマスターだった存在達はいつもそうだった。
誰もかれもが必死に背負って戦っていた。
岸波白野の両手だって血で濡れている。生きるために親友を殺した。
しょうがないとかではなく、いくら環境に強要されたとはいえ最終的に選ぶのは自分自身だからだ。
藤丸立香だって周防達哉だってそうだ。
辛い物を背負ってそれでも生きている。罪と罰に目を向けて戦っている。
「だったら先達として恥をかこうが。助けてやるのが大人の役割だし、逃げている姿じゃなくてこう背負うんだって多少は楽に背負える姿を見せるのが・・・罪と罰の背負い方を教えるのが大人の役割でしょうが!!」
そう真摯に生きる彼らにエリザベートは憧れたのだ、辛くとも痛くても些細な幸せに微笑み生きる彼らのようなと。
「それはジャンヌ・オルタだってそうよ!!」
彼女は自覚していないだろうがとエリザベートは思いつつ叫ぶ。
あれはもう一人の自分だった。背負いたくて結局背負えず託してしまう側の慟哭だったから。
「五月蠅い!!」
もうここまでくればカーミラも理解するという物。
何故本当にジャンヌ・オルタが怖かったのかを理解する。
理想だったからだ。だがそう簡単に変える事なんてできない。
過程のエリザベートなら柔軟に適応できる。だが結果と言う側面で呼び出されたカーミラにはそれは不可能だ。
なぜなら遅すぎるからである。
生前の様に罪を犯して。気づけば取り返しのつかないところだからだ。
もっともエリザベートからすればそれこそ、座のシステムを言い訳にした逃げでしかないと思う。
故に交渉は決裂した。
カーミラの指先から血が滴り刃を形成する。背後の玉座の間から拷問器具が蠢めき巨人をなす
「ほんとに・・・」
エリザベートも内心怒髪天だ。
故に懐に手を突っ込み、切り札を切った。
「いい加減にしろォ!!」
投擲、空中に投げられるのはメギドストーンと言われる魔法アイテム。
アマラ固有の物で低出力ながらメギドを発動する便利な物であった。
そして如何に低出力とは言え威力は下手な榴弾よりあるのだ。
炸裂する光が巨人の前で炸裂。
一撃で吹っ飛ばす、ついでに周囲の拷問器具たちもだ。
「なっ」
これにはカーミラも驚愕である。
もっともこれには理由があり、先ほど言ったリソースの有限によってさらに強度が下がっているためだ。
「アアアアアアアアアアアア!!」
エリザベート雄たけびを上げて突貫。
カーミラは舌打ちしつつ、すぐには巨人やら獣やらは出せないため、今度は物量攻撃だ。
「邪ァ魔ァアッするなぁああ!」
押し寄せてくる、拷問器具たちを一閃しつつ叫ぶついでにマイク機能をON。
音波によって弾き飛ばすながら突き進む。
それでもなお、物量は津波の如くだ。
呼吸一つですら致命傷になり得る。
再度、懐からメギドストーンを引っ張り出し、複数投擲。爆発。
「なっ」
開ける視界の先にはカーミラはいなかった。
如何に優れて無かろうが、彼女はアサシンである。
「ざんねぇん」
「ッ?!」
爆発と轟音、物量で迫りくる器具の数々に集中せざるを得ないという状況ならば。
カーミラの低ランク気配遮断でも十分に姿は眩ませる。
背後を完璧に取ったという形で、喜悦に表情を染める様は暗殺者としては二流であれど。
十分にエリザベートを仕留めるのには十分である。
「くっ」
「今更じたばたしたところでねェ!!」
エリザベートは槍を横に翻すと同時に反転、カーミラに向き直ると同時に半身をずらし、突き出される手刀を回避しようと試みる。
タイミング的には間に合わない。手刀は軌道を変更しやや右にズレこそしたが直撃した。
肉が裂ける音と共に、カーミラの手刀が深々とエリザベートの腹部に埋もれる。
カーミラ自身の血も使って強化した手刀だ。そんじょそこいらの剣より切れ味はあるからこの位は容易い事である。
「コフッ」
エリザベートが吐血。
それに喜悦した表情をカーミラは浮かべ・・・次の瞬間のエリザベートの表情は苦笑だった。
「やっぱ”そうやる”わよねぇ」
まるでこうなるとわかっていたかのように
「何がおかしい!」
「だって、霊核も狙えたでしょう? っていうのに狙わないあたりが私だなぁって」
そうタイミング的に腹ではなく心臓を抉れたはずだと。
そうなれば戦闘続行スキルも糞も無いのに。
自分だからとクラス違いの差に気付いていなかった。
「だから」
エリザベートは腹部に力を入れてカーミラの腕を拘束。
必死に抜こうとするカーミラではあるが、駄目押しとばかりに拷問は血税の如くを変則起動する。
カーミラの手刀は血で強化されている。
そこを狙っての吸収だ。
「こうなるのよ!!」
槍を一旦、落して握りこぶし右ストレートをカーミラの顔面に叩き込む。
「アンタは、ほんとホントアンタはぁ!?」
右ストレートを直撃させられたカーミラの顔面が苦悶に歪む。
仮面の上越しに殴られ。砕けた仮面の破片が顔面に食い込んで。美貌は苦悶と屈辱に歪んでいた。
その怒りのままに左手に血を身に纏い、エリザベートの顔面を膾にしてやると、指先に血刃を展開した左手を振う物の。
エリザベートは右手を突き出し、右手が切り刻まれるのも我慢しながらカーミラの左手をがっちり残った指で拘束。
同時に、エリザベートの右手掌に血刀が食い込んでいる形になるので拷問は血税が如くの効果範囲内に入り。
ドレインが開始される。
「ク、正気?!」
「正気よぉ!?」
以前の自分であれば考えられない自傷前提の策にカーミラは驚愕の声を上げ。
エリザベートはその言葉に返事を返しつつ左手でストレートパンチ。
後退したくてもカーミラは両腕を押さえられドレインされているのだ後退は不可能。
左手拳がカーミラの顔面に直撃する。
今度は骨が砕ける音が響き、カーミラの鼻がへし折れた。
「この!! お前が!!」
「!?」
がここに来てカーミラも心情的に尻に火でもついたのついたのか。
再度繰り出される、左ストレートを回避しヘッドバットである。
予想だにしない反撃にカーミラの額がエリザベートの顔面に直撃。
さらにこうも繋がっているのだからと吸血スキルで拷問は血税が如くに拮抗させる
「いつもいつも、そうやって振り向いてからじゃ遅いのよ!」
「なにを」
「何をじゃない!! いつもそうやって気づくのが遅いのよォ、そうやってもう遅いのに気づいて高みに至りましたなんてしたり顔してぇ!! ふざけるなぁ!!」
振りかぶられる二度目のカーミラの頭突きとエリザベートの左ストレートが繰り出されるのはほぼ同時。
裂ける額と指骨や甲の骨がへし折れる音。
「そんなに無様な未来を見て、今の私はアナタと違うって見下たいわけ? そんなに私という未来を切り離したいわけ」
「そうだったかもねぇ・・・拗らせて、怪盗やらなんやらやって、それでも答えが出せずに逃げ回ってるやつなんて私じゃないって言えたらどれほど楽か・・・」
散々無様を互いに重ねてきた。
事の本質を理解せず犯した過ちを犯して迷ってここに来ている。
「でもやっぱさ。よく見てみると私だって自己嫌悪なのよそれは!!」
そしてやっていることが自分自身だから余計に腹が立つ。
そこを受け入れて、改善に努めない限りは何処まで行っても堂々巡りだ。
だから受け入れようとエリザベートは決めたのだ。
彼等の様に進むために。
「出来るわけないでしょう?! 今更!!」
「やってみなきゃわかんないでしょう? もう互いに止めましょうよ・・・、こんなくだらないことで被害一杯出して。下手なことに目を背けて改善もせずに、今だけの都合のいい物を摂取したって不毛よ。その頭痛は一生抜けはしない」
「やれたら、とっくにやってるのよォ!! 今更膨れ上がった負債を背負えって?! 出来るわけがない、アンタも覚悟を決めた癖に、あのマンションで発狂したじゃない!! 知らないとは言わせないわよ!!」
主要時間軸で増幅されたと言え、オガワハイムで発狂状態だったことを指摘される。
確かにあの時はそうだった。
「そうね、あの時は見て見ぬふりしてたからね・・・でもね今度はそうならない」
故に今度同じうようなことがあるのなら乗り越えて見せる。戦って見せると。
エリザベートはカーミラを見抜き。
「アンタ・・・本当に・・・」
繋がりがあるからこそわかる。
噂結界の効力やら現在進行形で繋がっていることがだ。
尻に火が付いた影響故にカーミラはここに来て過去の己を直視出来た。
「だからアンタは私なの!! 我儘なお嬢様で気づいた後で取り返しのつかないことに発狂してる辺りが私よ。だから」
呆然とするカーミラにそう啖呵を切って。
「私の中に還れぇ!! このバカヤロォ!!」
動かぬ右手の代わりに全力のヘッドバットを叩き込んだ。
カーミラが消えていく。まだ霊基は全壊してなかったし霊核も穿った覚えはないのだが。
サーヴァントが退場するように粒子状になって消える。
そして物理的に、支えとしていた。カーミラが消えた事でエリザベートはその場に倒れる
戦闘続行スキルで無茶できたのも此処までみたいであった
「ごめん、すぐ行くって言ったのに」
罪と罰を背負ってでも彼らのもとに行くと約束した。
すべて思い出していた。月の事も主要時間軸の事も。
だがそれは無理だ。脇腹を派手に抉られ風穴をあけられている状態なのだから。当たり前だ。
血と同時に魔力が流れ霊基が崩壊する。
「すぐに行けそうにないや」
それでもエリザベートは血反吐を吐きなが槍を両手で保持し杖代わりに歩く。
アマデウスもジークフリードも死んだ。
先の会戦で見知った顔や親しかった人も死んだ。
皆最善を尽くして死んでいった。だから・・・
「くそ・・・なんで・・・私は子豚や子犬やコーチの様に・・・」
最善を尽くしたいのに。
もう体は動かない。
「・・・ああこれが」
惨劇を演じた人生を送った少女は無意味に死ぬ。
何も成し遂げられず無様に、あの漆喰の部屋で死んだ時と同じように。
だが。
『だったら諦めるのはナンセンスでしょう?』
カツンと音がする、エリザベートが見上げれば幻影の様に揺蕩うカーミラがそこに居た。
「まだ出てくるのね・・・」
『アンタが諦める都度に私は出てくる。影ってそういう物でしょう?』
「じゃぁ。また戦う?」
『今のアンタ相手にしたって意味はないでしょ・・・今の本心は諦めたくないだもの、この先に行くと辛いわよ』
「・・・知ってる」
『何処まで知ってるんだか。影は躊躇しないわ。主要時間軸のオガワハイムが比じゃなくなるわよ。永劫苦しむ羽目になる』
「それも知ってるわよ!!」
一時の感情なんかでこんなことをするかと。エリザベートは息を荒く吐きつつ槍を構える。
「でも先に行ったわよね?! どんな恥を見せてもこれ以上の恥の上塗りは出来ないって。」
『なら私を背負え、エリザベート』
「背負えるなら背負ってやるわよ!」
『今度は言葉だけじゃないわ。私とあなたが統合されて本当の意味ですべての記憶と記録がフィートバックされる』
今の今まで互いから目を背けていた。
故にエリザベートとカーミラが分かたれて本当の意味での全盛期で呼び出されることはなかった。
エリザベートは無邪気な幼少期、カーミラは末期の姿だからだ。
罪と罰を起因とする目を背けたことが主な要因で一人は二人に分かたれて召喚される。
それでは真の全盛期ではない。だが今回は違う。
彼女は目を背けないことを誓い受け入れた。
それ故にカーミラは霊核を抉られていないにもかかわらず消えたのはそういう事であり。
カーミラも受け入れることが出来たからである
無論、噂結界の効力もある。
二人の統合が始まっていた。
『主要時間軸の比じゃないわよ、私たちの抱える後悔は、二分していたから軽く済んでいるだけの話し。それでも背負えるのかしら?』
「背負って永劫を行く・・・とは言えないけどね」
『そこは断言しなさいよ、情けない』
「うっさいわねェ、永劫なんてそんな安っぽい概念なんてどこにもありゃしないのは確実だもの、だからそうは約束できない」
『そうね』
「けれど今は背負うし、背負いきれなくなったらいったん下ろして、その時はまた喧嘩よ。今度は誰にも迷惑かけないようにね・・・」
永劫背負っていくと言えばウソになる。
背負えなくなったら荷を下ろしてまた向き合おうと心の奥底から誓い。
そうなったら今度は誰にも迷惑かけないように喧嘩しようと決める。
永劫なんて概念はどこにもないのだからそこに嘘はない、きっと座に縛り付けられる限り終わりはないのだから。
「だから一緒に行きましょう? アンタもそうしたかったんでしょう? 彼等みたいに」
岸波白野 藤丸立香 周防達哉の様に・・・と
『そうね、そうよ・・・』
カーミラは微笑み消えていく。
『でも一応言っておくわ。影はずぅっと見ている何処までも、光がある限り、私と言う影は消せない』
「うん、だからさっきの言葉よ」
だからこそその時は喧嘩と言う奴である。
カーミラが微笑み消えていく、だが彼女と言う影は消えない、ただ中に還っただけなのだから。
そして四散していたカーミラの霊基がエリザベートの元に集まり出し融合を果たす。
エリザベートの脳裏によみがえる様に切り込むように刻み込む様に過去に犯した罪が克明に刻まれていく。
絶叫はない、ただただ粛々と受け止めて受け入れていく。
そして彼女自身の見た目も変貌していく。
本当の意味での全盛期、年齢にして19の頃にだ。
紅色の髪の毛に白いメッシュが入り。
背丈も10cm前後伸びる、
衣類も大きく変わり黒を基調とした落ち着いた軍服を模様したゴシックドレスに。
角は若干小さくなり、されど翼は大きく広がる、犬歯は吸血種の様により鋭くなり。
瞳の色は蒼色と金色の色が混濁した物となった。
エリザベート・バートリー、おおよ19の頃の全盛期の頃の姿にだ。
彼女は翼を伸ばす、約束を果たすために。戦っている彼らのもとに駆け付ける為に。そして彼らの様に生きるために。
翼をはためかせ夜のとばりの向こうを流星の矢の如く飛翔した。
という訳で、パーフェクトエリザベート、略してパフェエリちゃん爆誕回。
エリザベート・バートリー(オリジン)
筋力C 機敏A 耐久C
魔力B 幸運C 宝具B+
スキル
騎乗 D 貴族としてのたしなみ程度の物。
拷問技術 A
嗜虐のカリスマA
抗魔力 B 吸血鬼としての特性も得てしまったためランクダウン
戦闘続行 B
吸血 B 自分自身を受け入れたことによってランクアップ
無辜の怪物 A 自分自身を受け入れたことによって乗りこなしている
宝具
エリザベートとカーミラの使用できるものは使用可能と言った感じ。
さらにスピーカー内臓の拷問器具ビットなども完備
ニャル「自分を受けれ、罪と罰を背負う、結構! 結構!! という訳で全特異点出撃確定な!!」
エリザ「え?」
フィレ「私としても君の成長は嬉しい、もっと成長してほしいので切っ掛けは一杯あげるよ!!」
エリザ「え?」
エリザ「え?」
賢王「過労死は良いぞうぅ、小娘ェ・・・ふかいぞぉ!(エリザの右足を掴みながら)」
ノッブ「金の字の言う通りだぞぉ、いいぞぉ!!(エリザの左足を掴みながら)」
エリザ「ちょま・・・!?」
賢王&ノッブ「「お前も過労死枠になるんだよォ!!」」
エリザ「ウワァァアアアアアアアア!?!?」
悲報、第一特異点終了後、エリザベートはチェイテで領主やりつつ全特異点出勤確定。
これには賢王も同情目線(ただし人手が足りないのでこき使う事に躊躇は無し)
ニャルの謝罪会見
ニャル「ジルが狂ったのは私のせいだwww だが選んだのはジルなので私は悪くないからwwww謝らない(キリッ!!)」
ジル、バットもって殴りかからんばかりの勢い、フランス勢に羽交い絞めされ中
ニャル「あと、聖女モドキ、罰ゲーム確定な」
ジャンヌ「え?」
ニャル「フラグwwwへし折ったのwwwwお前自身だよwwwww自覚無しィ?(タンバリン鳴らしながら反復横跳びの貌芸しつつ) まぁ予習と駄目押しは第一特異点終了後だwwww」
ジャンヌ「―――――――え?」
次回、所長&マシュVSアタランテ及びマリーアントワネットVSヴラドでお送りします。
時系列が前後するのでご容赦ください