Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです   作:這い寄る影

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躊躇ォ?それは選択肢のある奴の言葉だな。

石川雅之「もやしもん」一巻の予告カットより抜粋


二十四節 「行き止まりロンド」

人間では英雄には勝てない。

これは純粋にジャンルが違うという事であろうと解釈できる。

テクスチャ毎にほぼ肉体構造が違うのだからそういえなくもない。

だが近代において人間の生み出した兵器は英雄の技巧と火力を凌駕した。

例えばクーフーリンの槍の突きだって突撃銃やら狙撃銃を持ち出せばいい。

インド系英雄の奥義も弾道ミサイルで代用できる。

神秘が乗っていないから通用しないだけであって、それが無ければ金で代用できてしまうのが今日に至って英霊が生まれない原因でもあるのだ。

故にある程度の神秘を乗せられ且つ素養のある人間であれば英雄に勝つことも不可能ではない。

もっともそれは理論上の話しである。

まず大前提として極まった魔術師やら魔法使い、最上位のペルソナ使いであるということで論ずるに値しなくても。

今この場では十分に通用する方程式と言えよう。

 

「ちっ」

 

オルガマリーは舌打ちしつつコルトの弾倉を露出し薬莢を排出し、リローダーで弾を装填する。

ジャンヌ・オルタの通信阻害はコルトの転送式自動装填術式にも影響を及ぼしていた。

もしもを想定し服のポケットや身に着けたポジェットに鱈腹銃弾を詰め込んでおかなければ弾切れになってだろうし。

もしもを想定し装填訓練を受けておいてよかったとオルガマリーは思いつつ弾倉を元に戻す。

 

「さてどうしようかしら・・・」

「相手は空中ですからね」

 

ドーム状に作られたこの地下室は広大且つ天井も高い。

ジャンヌ・オルタの心像風景が色濃く出ているためであろう。

そこをアタランテは自由に飛び回っているのだからたまった物ではない。

 

「所長は先輩の様に高速で飛べるペルソナは無いんですか?」

「あれば一緒に空中でドッグファイトよ」

 

マシュが盾を構え炸裂する矢を防ぎつつオルガマリーに聞く。

だが手持ちにそのように空中における高速戦闘可なペルソナは習得して無いし作れない。

Lvが足りないとのことである。

Lvとは魂の強度であり容量だ。

アマラではLvを上げれば上げるほど強力な存在となる。上げ方は単純明快で相手を殺傷し魂のエネルギーをものにするという魂喰らいシステムだ。故に型月世界の魂喰らいのデメリットはなく。

ペルソナシステムを使えるようになったことで。アマラのそのシステムをオルガマリーは十全に搭載している物の。

まだまだLv不足と言わざるを得ない。

それだって、そのシステムに引っ張られる形で現代魔術師としては異様な実力ではあるし。

ペルソナを+すれば神代の魔術にも指を掛けられるだろう。

閑話休題。

兎にも角にも、達哉が使い手としておかしいのだ。

こればかりはオルガマリーが悪いわけではない。

 

「兎に角、隙を突いて、引き摺り下ろすわ」

「どうやってです?」

「ちょうどいい踏み台がそこらかしこにあるじゃない」

 

引きずりおろすと言っても飛べないのであれば話になるわけないのだが。

丁度良い踏み台がそこらかしこにあると、オルガマリーは指を差して言う。

幸いなことに周囲は暗いしオルガマリーは先ほどからマシュの後ろに隠れて銃弾を撃っているだけだ。

 

「という訳で、マシュ、援護して」

 

マシュにフラッシュグレネードとサイドアームである「S&W M500」を手渡す。

自動装填術式こそ掛けられていないが強力な術弾が込められている。

既に魔力もペルソナパワーも注入済みだ。

といってもペルソナ補正があっても強化を多重に掛けなければM500の反動はオルガマリーでも抑えきれずろくに扱えないため。緊急時の切り札であるものの。

デミサーヴァントのマシュであれば十分に扱えるだろうと判断してのことだ。

これを撃っている間はアタランテもマシュの後ろにオルガマリーは隠れていると思い込むだろう。

 

「所長は?」

「ちょっくら走ってくる」

 

そしてその隙を突く、強化魔術 質量操作魔術 ペルソナのブーストスキルがあれば十分に組み付くことが可能だ。

 

「合図は前と一緒、順番はフラグ、私、マシュ援護、でうまいこと引きずりおろせたら袋叩きよ。」

「了解しました」

 

ふぅと呼吸を落ち着けて、二人がフラグを投擲。

闇が数秒払われ。凄まじい音がホールを満たす。

マシュとオルガマリーは対策済みなので問題ないが。優れた五感を持つアタランテは溜まった物ではない。

まず閃光が眼孔を焼くが如き光に覆われ。聴覚が強力な音にかき回されたのだから当たり前の話であるが。

それでも飛行を維持できるのは流石はカリュドン随一の狩人と言ったところであろう。

もっともそのどさくさにまぎれでオルガマリーは、空中に滞空するアタランテの一番近くの柱に向かって走る。

それと同時に、マシュはM500を持って一応念のため魔力を注ぎ込みつつ。

右手で盾を保持しながら、左手でM500を発砲

 

「ッ」

 

もっともオルガマリーはそも先も述べる通り、扱い自体がやけくそ前提で使う物で。

使いこなせない悪あがき用の切り札だ。

もう悪あがきならと言うことで、ダヴィンチが改造しすぎたせいで初弾なら兎にも角にも。

次弾は反動でまともに狙いを付けられないレベルであり。

サーヴァント規格で筋力Cのマシュでも扱いずらい品物である。

現に一発撃っただけで手が反動でムラついた。

加えて銃器の扱いはマシュはレクチャされていない。

それこそ不自然な体制と腕運びで打つほかない分けで。もっとも牽制射になれば御の字とオルガマリーも割り切っているのでそこは問題ない話である。

と言っても、腕が跳ね上がるから秒間隔での射撃になる。

だがこれで、アタランテの目からオルガマリーを反らすことに成功した。

後は自分が耐えればいいだけであると盾の

 

 

「コウガザン!!」

 

大鎌を振りかぶったラプラスを出現させたオルガマリーが組み付かんとしていた。

振われる大鎌は頭を下げることで回避。同時に放たれた銃弾を弓を振るい弾く。

オルガマリーはラプラスを維持しつつ空中で前転、ワザと身一つくらい高度を下げる。

このままでは胴に組み付く前に弓を鈍器代わりに叩き落とされるのが目に見えていたからだ。

ラプラスに再度大鎌を振わせ鍔迫り合いに持ち込みつつ、自分自身はアタランテの足にしがみつく。

 

「ガァアアアアアアア!!」

 

理性が吹っ飛んでいるのか上げるのは雄たけびだ。

オルガマリーが組み付いたのは右足であるため。左足で蹴り落そうとするが。

ラプラスは未だそこに存在しているのだ。

足を振り上げた瞬間、再び大鎌が振るわれる。

咄嗟に弓を割り込ませて防ぐが。オルガマリーの狙いはアタランテの首ではなく、背中から生えている翼だったからだ。

鎌の形状上。柄を押さえても刃は届く位置にあった。

 

「Gi!?」

 

片羽根にラプラスの刃が食い込む、コウガザンは光属性だ。再生を許しはしない。

それによって翼の片方が機能停止し飛行能力が格段に堕ちる。

ラプラスをどうにかしようと力を籠めるアタランテ。だがオルガマリーはそれを逃がさず。

右手に握ったコルトの銃を向け引き金を引く。

反動を肘を曲げて逃がしつつ転々と狙いを替えて、左足内太腿、右脇腹、右翼の順番にだ。

術弾にも光属性はたっぷりと乗っている。叩き落すには十分だった。

結果、両者もつれ合う様に落下、オルガマリーは強化魔術を最大起動しながらコルトをホルスターへと戻しつつアタランテの身体を両手を使って這い上がりつつ。

ラプラスも使って抑え込みにかかる。

オルガマリーのLv帯ではアタランテの拳一撃で死亡確定だからだ。

だから完全に堕ちきるまでは組み付いて抑え込まなければならない。

ものの数秒も立たず地面へと迫りくる中で。

 

―死ぬ、死ぬ、しぬぅ!?―と心の中で叫びつつアタランテを抑え込む。

 

達哉とは違うのだ。アタランテクラスのパンチに耐えられる訳がない。

攻撃されたらそれこそ致命傷である。

だから必死に押さえつける。

その間にも床との彼我の距離は縮まっていく。

マシュは落下ポイントへと向かって全力疾走だ。落着と同時にフォローを入れるべくである。

M500を使ってオルガマリーを援護するべきなのではと思う方もいるであろうが。

マシュ自身、銃の腕は牽制射位しかできない腕前なのだ。空中でもみくちゃになっているアタランテとオルガマリーに向かって撃てばフレンドリーファイアの可能が高くできるはずもないし。

第一にM500は弾切れだ。

急造品であるため予備弾薬はオルガマリーも持っていないのである。

 

ラプラスと己が力を持ってアタランテを拘束しつつ猶も落下。

床まで1mを切った刹那に。

オルガマリーはアタランテから両手を離すと同時に両足に力を込めてアタランテを踏み台に跳躍。

床の衝突から逃げつつアタランテを床にたたきつけた。

そのまま、空中で一回転しつつ地面に着地しようとする物の。

 

「ウルガァ!」

「五雨斬り!!」

 

アタランテが即座に復帰、弓に矢を番って速射。

放たれる矢をラプラスの五雨斬りで迎撃する。

仕留めきれないと判断するアタランテは次弾装填するものの。

 

「ヤァ!!」

 

盾を保持する場所を切り替えながら盾に肩を当てて盾によるマシュの靠撃を乗せたシールドバッシュだ。

疾走からの震脚によって速度と荷重がたっぷり乗っている一撃が炸裂する。

これにはさすがのアタランテも吹っ飛ばされる。

普通のサーヴァントならこの段階で意識が飛びつつ致命傷だが。

ジャンヌ・オルタの憎悪で意識が焼き切れて吹っ飛んでいるのだ。加えて再生能力も健在。

痛みも感じぬのだから即座に戦闘復帰してくるのは眼に見えている。

柱に衝突したアタランテへとマシュは全力疾走。

オルガマリーはペルソナをゲンブに切り替え、マハブフを放ちつつ、コルトの弾倉を露出、排莢からのリローダーを使っての再装填を完了し銃口をアタランテへと向ける。

普通なら誤射を嫌うところだが。ペルソナパワー全開にして、先の会戦の乱闘とは違うので落ち着いて狙えるためマシュは気にしなかったし。

オルガマリーも誤射をするつもりはなかった。無論自信の方はないのだが、今はそういう事よりも自分がやらねばという恐怖に押されて行動を履行している。

まだまだな危険を伴う連携であるがこれが現状で出来る精いっぱいなので。できぬよりはマシと言う物だろう。

 

「クグッ・・・」

 

対するアタランテの対応は弓をぶん投げた。

 

「へ?」

 

これにはマシュも呆然としつつ盾で受け止めて弾く、真上にかちあげられるアタランテの弓。

そして。

 

「早ッ!?」

「シャァァァアアアアアアア!!」

 

マシュの前にテレポートするが如くアタランテが現れる。

彼女的には走っただけだが、カリュドンの狩人の健脚はワープと見違えんばかりに凄まじい健脚であるし。

ジャンヌ・オルタからのブーストを受けているのだ。この位は当たり前の事でもある。

アタランテは盾の縁を掴みどかす様に腕を振るう。

無論筋力の差でこうなればマシュに抵抗の余地はない。

下手に盾を保持し、体勢を崩して押し倒された方が対抗手段的に問題が起きる故だ。

故にマシュは一度盾を手放し。

八極拳の構えを取ろうとして。

 

あの時、先の会戦で組伏せたジャンヌ・オルタを殴った時を思い出す。

 

感情の赴くままに殴りつけ、相手の肉を割き骨を叩き砕いた感触。

同時に自分の内臓が破裂した時の感覚。

自分が何をしようとしているのかを理解する。

 

自分は拳でまた人を撲殺しようとしているのだと気づいて。

 

「シャァ!」

「マシュ!?」

 

押し倒される。

取られるマウントポジションと同時に、殴るではなく、落ちてきた弓を再キャッチし矢を番える。

密着状態なのだ外すことはない。

マシュは死を感じて短く意識を吐き。

 

「トート!! マグナス!!」

 

オルガマリー、もう幾度目かの渾身のインターセプトである。

コルトの銃弾がアタランテに直撃。

姿勢を崩したところで、トートによるマグナスを直撃させようとするものの。

 

「ルゥアガッ!!」

 

矢先をマグナスに向けて射出し相殺。

挙句の果てに貫通しつつ飛翔、最も弾道がそれたということもあってオルガマリーの頬を掠めて一筋血を流させる。

もう少しズレて居たらオルガマリーの顔面に風穴があいていただろう。

それを見て今度はマシュの脳裏に黒い何かが沸く。

それは恐怖ではなく激情でもあるが今の彼女にはよくわからない物でもある。

その感情の赴くままにレッグシース―からナイフを抜き放ち。

アタランテの衣類を掴んで手繰り寄せ、ナイフを胸部に差し込む。

アタランテ、絶叫。

祝福儀礼の乗ったそれは十分にダメージになる物だからだ。

だが、霊核を完全崩壊させるには至らない。

アタランテが鋭い爪を生やした手を走らせるが。寸前の所でマシュが腕を押さえて防御。

ならばとばかりにアタランテは弓をそのまま振り上げ、弓の末弭をマシュの顔面に振り下ろす。

マシュはナイフを引き抜き、その振り下ろされたを末弭を反らす。

ズレて床に振り下ろされた弓の末弭は、ものの見事に床にぶっささった。

その刹那、アタランテの頭部や肩、腕に銃弾が着弾し。

 

「マシュから、離れろぉ!」

 

射撃地点に振り向いたアタランテの顔面にオルガマリーの飛び膝蹴りが突き刺さる、

オルガマリーはさらに空中で身を翻し、回転、全力を乗せたローリングソバットで靴裏をアタランテの顔面に叩き込み、弾き飛ばす。

ペルソナによる強化スキルと魔術の強化に質量操作で威力マシマシの物だ。

中世期クラスのサーヴァントであれば、直撃させさせれば首をへし折って座に返す威力を持っている。

だがしかし、アタランテはカリュドンの狩人である。

幾ら理性がねじ切れているとはいえ身に沁みついた反射行動で吹き飛ばされこそすれど威力は軽減され。

精々、鼻がへし折れた程度だ。

 

「マシュ、大丈夫!?」

「はい、なんとか・・・」

 

マシュを気遣いつつオルガマリーが彼女を立たせる。

マシュはオルガマリーに手を貸してもらいながら、盾を手にして立ち上がるが。

その体は震えていた。

だが敵はまってくれるはずもない。

アタランテは空中で縦軸に反転、床に爪を突き立て減速する。

次が来るかと二人は身構えた時だった。

地下空間が揺らぐ。石柱が倒れ床や壁に天井と亀裂が入る。

 

「ちょ、なにが・・・」

 

オルガマリーの驚愕を他所にアタランテが宝具を展開。

床も壁も天井も先ほどどれほど暴れようが壊れる気配がなかったというのに。超質量の具現によって崩壊を開始している。

施設にはジャンヌ・オルタの心像風景が侵食していることで強度が上がっている。

つまり何かがジャンヌ・オルタに何かがあったわけと言う結論が出せられるが。

超質量を身に纏ったアタランテの重量に、もう一階下のある通常の石畳の床が耐えられるはずもなく。

 

「所長!!」

 

床がド派手に陥没し滑落するのは当然と言えるものだった。

壁際の階段に退避しようとする物の。当然の如く間に合う訳もなく。

オルガマリーが退避と叫ぶと同時にマシュがデミサーヴァントしての健脚を生かし、オルガマリーを抱え込むと同時に。

瓦礫と一緒にオルガマリーとマシュ、そしてアタランテは下へと瓦礫と一緒に落下していくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マリー・アントワネットとヴラドの交戦はマリー・アントワネットが不利だった。

先の会戦での誇りだとかそういった類のものが取り払われ。完全に冷酷な頃に逆行していているヴラドの技の冴えは先の比ではない。

躊躇なく何が何でも殺すことに特化しており隙がより無くなっている。

しかも先の会戦での手札開示が痛い方向に運んでいた。

悉く、マリー・アントワネットの手札は封殺されている。

と言うより宝具展開の時間なんぞ与えられなかった。

 

「ジュノン・マハコウガダイン」

「またそれか」

 

突き出される杭を薙ぎ払いつつ、レイピアで突き出される槍を捌くきながら宝具展開の機会を伺う。

馬さえ呼び出せれば、先の会戦の様に持っていける。そうなれば長期戦は覚悟しなければいけない物の。

前提の土台を引っ繰り返せるからだ。

手数の不利を火力で補えるという事である。

無論、向こうもそんなことは承知済みであるがゆえに連撃を繰り出し、機会を与えないようにする。

第一、ヴラドの攻撃は掠めただけで試合終了な初見殺しも良い所だ。

偏に押し込まれていないのはジュノンのテトラカーンと闇耐性があるからである。

これにより直撃でも貰わねば杭を生やされることはない物の。

その直撃を凌ぐのに多大なリソースを払わされているのが現状であった。

要するに、大札を切りたいが、相手の札に封殺され出せないのが現状と言える。

 

「テトラカーン!」

「もうそれの仕様は見切った」

 

テトラカーンによる全方位バリアを展開。

だがテトラカーンの仕様を見切ったヴラド三世は展開する杭の順番を決めて射出する。

針の様に小さいソレ(無論当たったらただじゃ済まん)を射出し。

テトラカーンを反応させて消失、次に砲弾と同等サイズはあろうかと言う杭の射出と現出だ。

マリー・アントワネットは舌打ちしつつそれでも距離を詰める。

離れればそれこそ物量の差で押し切られるのは眼に見えているのだ。

もう何度同じことを繰り返しただろうか・・・

マリー・アントワネットは損耗しつつあった。

如何に精神エネルギーを使うからといって、ペルソナは無限には使用できない。

出来るのは頭のネジが吹っ飛んだ筋金入りの馬鹿か自分自身をも擦り切れさせる狂気持ちのキグルイだけなのだから。

生前ならば豊富なペルソナで強引に場を開ける事もできただろうが。

故に駄目だなこれ、という言葉が、マリー・アントワネットの脳裏に浮かんだ。

どうあがいても手札も火力も足りない。

目の前の二人のサーヴァントは一人一人が嘗てマリー・アントワネットとアマデウスにサリエリの三人がかりで討伐した悪魔神父を凌駕している。

いくらサーヴァントとしての宝具やら身体補正があってもトドカナイ。

彼女の第六感は生前の捕縛時くらいに詰んでいると言って悔いる

 

「くっうっ」

 

それでも歯を杭張り、槍と杭を捌いていた時だ。

空間の何かが変わった。

そこにあった物が抜けていくような感覚と、それに比例して起きる振動。

そしてヴラドは呆然と上を見る。

 

「ジャンヌ?」

 

信じられないようなものを眼にしたかのように呆然と呟きながら。

そこにある種の悪寒がマリー・アントワネットの背筋を走るが、ヴラドとは別種の悪寒でもあった。

勘がささやく時間が無いと。

故にこの好機を逃さずマリー・アントワネットは歯を食いしばりながら渾身の一撃を繰り出さんとして。

場に轟音が鳴り響き天井が抜けた。

それで我に返ったヴラドは自身の心臓部を貫かんとしているマリー・アントワネットの刃の切っ先に気付きそれを払いのけて。

互いに後退する。

なんせ上から瓦礫が落下してきているのだから当たり前な事で。

ついでに言えばオルガマリーはマシュに抱えられながら半泣きで悲鳴を上げ。

マシュはオルガマリーと大盾を抱え込みつつも、魔力を現状回せるだけ回転させて落下する瓦礫を足場して飛びつつ降りてくる。

もっとも魔猪化しているアタランテはそんな華麗なことを出来るわけもなく。

そのままビターンと言う形で落下し、床を陥没させながら落着している。

 

「マリーさんご無事で?」

「ええ無事よ、なんとかね・・・、オルガちゃんは・・・」

「だ、大丈夫ブブブ・・・」

「大丈夫じゃなさそうね」

 

マシュの全力機動に振り回されたのとこれまでの白兵戦で吐きそうになっていった。

もっとも交戦に備えて吐く様なものは食べていないので、出るとすれば胃液くらいだろうが。

それでも二人が合流し数では上回れると、マリー・アントワネットは喜ばなかった。

むしろ二人が合流したのはより拙いとマリー・アントワネットは感じていた。

正直なところヴラド三世相手でさえ手に余るというのに、アタランテまで合流されれば、宝具半壊状態のマリー・アントワネットでは手に余る。

さらにアタランテは宝具を展開済みであり質を考慮すれば数の差なんぞチリ紙にも等しい物でしかない。

この場にクーフーリンか達哉という大物狩りを得意とする二人のうちどちらかが居れば話は違う。

が二人ともこの場にはいないのは見ての通りである。

つまり人数こそ増えたが詰められる手札を持つ人材がいない。

ヴラドを詰めるには、理不尽と形容する初見殺しの札。

アタランテを屠る大火力も無い。

つまり、言っては悪いがお荷物が増えた上に、敵を引きつれて来てしまったという感じである。

マリー・アントワネットの心境は塹壕にこもって必死になって応戦したら、戦車が来た兵士の心境だ。

彼女の戦闘理論でももう勝ち目がないことは分かる。

故に、斬りたくない手札を切ることにした。

生前は出来なかったし。サーヴァントといしての在り様を利用した裏技である。

これさえ使えれば、ヴラドとアタランテを葬ることは十分に可能どころかお釣りがくるレベルだ。

もっともそれは裏技に等しい。

加えて、ここまで交流した二人の心に傷を刻み込むのを強制する手段でもある。

本音を言えば切りたくはない、サーヴァントになっても死にたくないと思うのは当然の事なのだから。

だからこそ、亡霊であっても過去にしがみ付いてしまう。間違ってしまうのだ。

されど、マリー・アントワネットはそう自覚したうえで煮えたぎった鉛を飲み干しような感情の感覚を押し殺しながら飲み干す。

本当に現状、それしか手が無いのだ。

 

 

「マシュちゃん、オルガマリーちゃん、先に行きなさい」

「え?ですが・・・」

「嫌な予感がするのよ、本当にさっきから嫌な予感が止まらないの、だから達哉君たちの方に行きなさい」

 

 

マリー・アントワネットは自分より前に出ようとするマシュをレイピアで遮って止めつつ、先に行けと伝える。

無論嫌な予感も本心で言う、本当に生前の時と同じ感覚なのだ。

ここで二人が居たところで勝ち目はないから先に行かせて自分は遅滞戦闘という合理的判断と。

尚且つ嫌な予感がするというのも本当なので、此処は先に二人を行かせるべきだと判断する

 

マシュは先の会戦のジャンヌの様に鳩が豆鉄砲で撃たれたかの如き表情をするが。

この場で冷静に戦力の差を理解できるオルガマリーはマシュの肩を掴み、猶も食い下がろうとするマシュを止める。

無論マリー・アントワネットがしようとしていることを間接的に理解した上である。

何故理解できたのかと言えば簡単で。

オルガマリーはマリー・アントワネットの瞳の在り様に覚えがあった。

なんせ身近な連中、つまり保安部がそうだった。

自らの死者の群れと評し、只最善を尽くして意味のある死が欲しいと渇望する連中と同類の目だっだからだ。

本質的には違うけれど類似はしている。

最善を尽くすために死を選ぶ人の眼だった。

 

「マシュ、行くわよ」

「ですが! マリーさんを一人で置いてなんて「もう勝てないのよ!!」ッ」

 

マシュの左手を掴み踵を返しつつ言うオルガマリーにマシュは駄々を捏ねる様に進言するが。

オルガマリーはそれを真っ向から切って捨てる。

もう勝てないと。理由は先ほども述べた通り、純粋な実力不足が原因である。

二人増えたところでアタランテとヴラドには逆立ちしたって勝てないのだと。

 

「だから、マリーさんを放っておくのですか!? 見捨てて逃げるのが最善手なんですか!?」

「ええ、そうよ」

 

マシュの言葉にオルガマリーは言葉を紡ごうとして、それを制したのは当のマリー・アントワネット本人だった。

 

「マリーさん?」

「マシュやオルガちゃんは生きてるもの、生きているってことは一度きりなのよ、失えば次はない、私は死者で死んでも次はあるかも知れないもの、だからこういったことは任せて、そしてまた会えるわ。きっと」

 

マシュやオルガマリーは今を生きている、無論それは一度きりの物。

失ったものは戻ってこないのだ。

だから死んでもサーヴァントとして呼び出される可能性のある自分が決死の遅延戦闘を行うのは自分の役目であると諭す。

マシュの視線がオルガマリーとマリー・アントワネットの間を行き来する。

どう選んでいいか分からない。

脳裏によぎるのは冬木での達哉の記憶映像。

彼等の幸福を祈り忘れろという舞耶。

極限状況下に置かれて盛大にミスをした達哉。

 

今まさにマシュは選択を迫られている。

 

どうしようもない現実を突きつけられている。

 

オルガマリーは既に選んでいる。

無論、最善手だからと言って開き直りなんてしていない、悲しくて悔しくて力のない自分自身が憎くて仕方がない。

だが時間が無い。

言いようの知れぬ不安がよぎるのだ。

何かを天秤に駆けて選ぶほかない。

 

「わ、私は・・・・」

 

ギリリと心が締め付けられる。

何かを手放す行為は激痛が走る物だ。他者には石ころ当然の価値であっても。

自分にとっては宝石レベルで大事な物だからだ。

残るか、見捨てるか選ばなければならない。

マシュは特にマリー・アントワネットとカルデアの中では親しい仲である。

酷だが選ばなければならない。

 

そしてそうこうするうちに、アタランテがその巨体を揺らし、ヴラドが槍を構えながら杭の出現させ迫ってくる。

 

だがマリー・アントワネットはそうやすやすと突撃されてたまるかと。

広大な地下空間に愛すべき輝きは永遠に、百合の王冠に栄光あれまで展開して。

自分事、ヴラドとアタランテを封じ込めつつ。二人を結界外に弾き飛ばす

 

「マリーさん!?」

「行きなさい!! やるべきことがあるでしょう!!」

 

まだ煮え切らないマシュに対し駄々を捏ねる子供を叱る様に激を飛ばし。

オルガマリーはマシュの手を強引の引いて壁沿いの階段へとかけていく

 

「今の貴様が私たちに勝てるとでも?」

「勝てるだなんて思っていないわ。ムッシュ」

 

突撃してくるアタランテと殺到する杭を城壁を再配置展開しながらそういう。

戦力差的に時間稼ぎは無謀極まる物となっている。

だからこそ。マリー・アントワネットは勝利だとか生存だとか投げ捨てていた。

 

「でも退場の時間よ。ムッシュ」

 

心残りはある、結局ゴタゴタでカップ麺は食べる気もしなかったので手つかずのままだったし、マシュと買い物ももっとしたかった。

オルガマリーに料理だって教えてもらいたかったし。達哉には気が廻らなかったからもっとかまってあげたかった。

そして今を生きる若者たちの歩む道をもうちょっとだけ楽にしてあげたかったと。

自らの霊基、霊核、宝具、ペルソナを―――――――

 

 

 

 

 

 

 

壊れた幻想に仕立て上げた。

 

 

 

 

 

 

パキリと彼女の皮膚にひびが入る、ガラスの宮殿が振動し崩れていく、ペルソナも硝子の馬も光を鈍く発している。

正気ではできない、真っ当ではできないはずだとヴラドは眼を剥いた。

宝具どころか自分自身の霊基にペルソナまで使った自爆である。

いかな、ヴラドとアタランテとはいえ耐えることは不可能だ。

それを抜きにしても気が狂っているという選択肢には他ならない。

故にヴラドには彼女の行動が理解できなかった。

 

「なぜそこまで出来る!! この人理に意味はない」

「それはあなたの主観でしょう、生きる意味だとか存在する意味だとか当人たちの問題で、自分でつかむ物よ」

 

生に意味など存在しないのだ。

それは逆に言えば自分自身で決めなければならない自由と言う奴である。

今生きる人々がそれらをぶつけ合って生きるのは仕方ないことではあるが。

裏技染みた幻想にしがみ付き利用して墓穴から出張って根本的に否定するのは筋違いだ。

あくまで出来るのは間違っていると、根本的に否定せず諭して先人としてより良い道を示すことだけである。

 

「だから、もう舞台上からすでに退場した亡霊の私たちが出来るのは、あの子たちに少しでも良い道を行ってほしいと手を貸すことだけ」

 

故に、彼女は自分の存在を投げ出してでも、オルガマリー達を送り出すことを選択したのだ。

子供のために命を投げ出す大人の選択を誰が責められようか?

 

壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)

 

「マリー・アントワネットォォオオオオオオ!!」

 

アタランテの絶叫。ヴラドの驚愕を置き去りしながら。

マリーアントワネットは躊躇なく己が安全ピンを引き抜いて

 

「アマデウス、少し遅れたけれど今行くわ―――――――」

 

今はもういない親友へと言葉を告げ。

もっとまともな結末へと導けぬ自分を許してくれと懺悔しながら。

 

 

 

 

 

百合が散った。

 

 

 

 

 

 

 

大爆発である、床をぶち抜いてさらに広大となった地下空間を光が満たし。

マシュの慟哭に満ちた絶叫と。

竦む彼女の腕を掴み、無理やり引っ張りつつ視線を光の中心部から切りつつ、上を目指して駆け上がった。

胸に沈殿する黒い気持ちをにじませながら。

何もかもが崩壊して瓦礫に山へと埋まっていく。

 

 

 




前のあとがき通り、時系列が前後しております、ご容赦ください。
言っておきますが邪ンヌはまだ死んでませんのであしからず。

そしてトラウマが抜けるわけないんですよねぇ。
邪ンヌはマシュのトラウマになってます。
明確に自分の手を血で濡らして殺そうとして殺されかけた相手ですからね。
同時に恐怖と相反する殺意を邪ンヌはマシュに植え付けて行きました。


そしてマリーアントワネット自爆。
ヴラドとアタランテを巻き込み滅殺完了。
ヴラド三世&宝具展開アタランテとかいくら所長とマシュが居るからと言っても。
普通に交戦したら負けるからね、自爆で相手を葬って所長たちを先に行かせるのは正解です。
ビーム持ちかたっちゃんか兄貴居れば自爆無しでも倒せたんですが。
この二人は今魔王と交戦中ですからマジでどうしようもないというね。
と言うか今のカルデアマジでビーム持ち急募中。



さて次回は少し時間を巻き戻して、兄貴&マルタ&タラスクVSフロストカイザーとたっちゃんVSベリアル&その取り巻きでお送りします。

やっと第一特異点終わりが見えて来たぞォ。
実際10話程度で終わらせるつもりが、二倍近くなってるもん、ほんと無計画に邪ンヌの掘り下げし過ぎたと反省してます。



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