Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです   作:這い寄る影

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ご自分の剣をどうぞ―――神の御前で、黒白をつけましょう。

ディビット・ウェーバー著「航宙軍提督ハリントン」より抜粋。


二十六節 「こうして本物と贋作はオメラスの牢の前で殺し合う」

伸ばした手は届くことはなかった。

伸ばして掴めば相手の手には熱はなく力尽きていた。

だからせめて一人で背負って事態さえ収束できればとも考えて孤独に歩んで。なお失っていく。

如何に無頼を気取ろうとも他者とかかわりを持てばそれが鎖となって引っ張ってしまう故。

だから言葉で諭し、時には拳を振い、そして剣を向けて彼らを遠ざけても、運命は彼等を逃がすことはせず。

結局失う羽目になって。ジャンヌ・オルタは此処にいる。

 

「ふぅ」

 

ロンギヌスを地面に突き立て、そこを起点にテクスチャを徐々に捕食しリソース化しているのだ。

ゆっくり自分に馴染ませるように。先のような一気食いをして吐き出すような無様はもうしないとしてだ。

そして俯かせた顔を上げて玉座の間の入り口を見る。

ぎぃいと音を軋ませて入ってくるのは白い自分と同位の存在。

 

「まったく、相変わらずお気楽ねアナタ」

 

ジャンヌ・オルタは自分のオリジナルを見て嘲笑うことはしなかった。

寧ろあきれ果てたというべきか。

分かっていてやっているならまだわかる。

分かっていないからあきれ果てるまでの事だ。

 

「なにがですか?」

「実力差があるっていうのに突撃してきたことよ」

「そんなの百も承知の上です」

 

勝てる手段があるから突撃してきたのだとジャンヌはジャンヌ・オルタに言い返す。

最もジャンヌ・オルタからすればそうではなかった。

どこかで見た光景に類似し結末も大体予想できた。

ここで彼女は選択肢を間違えた。

責任を果たすという名目で単独でジャンヌ・オルタと対峙するという選択肢が間違っている。

広域通信ジャミングがあるとはいえ、探すことだってできたはずだ。

 

「それに聞きたいことがあります。アナタは、一体何がしたいのです」

「それ、今更聞く?」

「はい。行動が良くわからない」

 

世界を殲滅するためにリソースを得るという行為は分からなくもない。

だがしかし、多次元的宇宙のこの世界の一角を削ぎ落したことで満足するのかと言う疑問が、ジャンヌの脳裏に残っていたから。

ジャンヌ・オルタが嫌うのは人間のその性であろ。

世界の在り方故に、その程度で済ますのかと言う疑問があったからだ。

 

 

「言ったでしょう。全て殺す皆殺しにする。その為の踏み台。人間の魂や草木の情報体、テクスチャと言う概念、そして人理光帯、全てが強力なリソースな訳、一部の無駄ににもできないし、手の届く場所にあるなら利用しない手は無いでしょう?」

「・・・まさか」

「そのまさかよ。間違ったパズルはリセットすればいい、ならこのエネルギー総量を持って私が究極の汚濁となり、最初の一に干渉して人類が発生しなかったという結果を適応する。つまり、全ての特異点のエネルギーリソースを回収し、剪定前に回収したリソースで根源に干渉、並行世界も含めて人類が発生しなかったという事象で塗り替えるのが目的よ」

 

文字通りの皆殺しである、自分も含めて。

そしてやっていることは人理焼却犯より苛烈だ。ジャンヌ・オルタは根源へと干渉し、この世界、並行世界を跨ぎつつ無かった事にするという鏖を敢行しようとしているのである。

だが、そうでもしなければ。大いなる意志。明星。聖四文字。阿頼耶識の黒白の観測からは逃げられないし。

アマラの干渉を跳ね除けるにはそれしかないのだ。

 

「それぐらいやらないと。また連中は這い寄って来る。大いなる意志の打倒と言う大義名分を振りかざしてね」

 

人間の認識とあらゆる感情を媒介に顕現する影や蝶、そしてアマラの高位次元に存在する情報生命体たる”悪魔”の干渉を跳ね除けるにはそうするほかないのだ。

もしくは人類すべてが高位の次元にいたれればいいかもしれないが。

そうなるまでにどれほどの血と涙が流れるというのか。

少なくとも現在地点に至る人類の全ての血液では足りないくらいの量となるだろう。

だったらそうするのが道理だと。

 

「・・・正気なんですか、そんなことやって許されると「正気よ」」

 

ジャンヌの言葉にジャンヌ・オルタはまたテンプレート的な返し文句だとため息を吐きつつ言葉を返す。

 

「元から許されるだとか思ってやってるわけじゃないのよ。そんなもの巌窟王あたりにでもやらせておけばいい。そういえば風の十二方位のオメラスを去る人々って知ってる?」

「?」

「・・・現世に出たら勉強する事ね。だから私相手にもきれいごといってやり返される」

 

風の十二方位。

ジャンヌ・オルタが七姉妹高校での図書館で初めて手に取って読んだ本だ。

あの幻想の中でこれを手にとって気まぐれに読んでいたのは今でも覚えている。

 

「いま思えばこれが出発点だったのかもね」

 

オメラスを歩み去る人々。

ユートピア物の極地であろう。

功利主義を語るのであればこの書物は外せない一つだ。

あの時は何気なしに読んでいたが。

今は違う、これが今の自分の出発点だった。

オメラスの幼子は牢に閉じ込められ多数の幸福のために閉じ込められ続ける。

そうやって哀れなものを作り上げて人々は幸福を享受する。

無論、事実を知った人々の中には幼子を助けようとする人もいるが。

閉じ込められ続けて白痴に成り果てた幼子をどうやって普通の人間に戻せばいいか分からず絶望し。

そうなった人々は都を去るというのが大まかな流れである。

ジャンヌ・オルタも試された。

即ち英雄という犠牲をもって存続される世界を見て。

己が幸せを享受するのかそれとも去るのか・・・

 

 

「話は単純よ、オメラスと言う都市は絶対的な幸福が約束されている、けれどね、その幸福は一人の不幸で成り立っている。幸福を維持し、視認できる情報として。たった一人の幼子を閉じ込めておくのよ、なにもない地下牢に。そして幼子に与えられるのは最低限の食事だけ、牢屋には光もなければ着替えなんかもないし便器もない場所にね。そんな幼子を見て自分たちはなんて幸福なんだろうと思い込むことで幸福は維持され。そしてある人々は都市を去るのよ」

「それがなんだというのです、助けてあげればいいだけではないですか、その幼子を」

「ククク・・・あのさぁ自分が何言ってるか分かってるの? アンタ、殺したわよねぇ」

「え?」

「ジャック・ザ・リッパーっていう幼子を殺したわよね? 閉じ込められ続けた幼子が普通だとなんで思う訳? 閉じ込められて精神がぶっ壊れて周りの事も正しく認識できなくなった幼子もアレと一緒。救うこと自体がどうすればいいか分からない類の子なのよ」

「!?」

「助ける、救う、言葉にすれば簡単よねぇ、でもどれだけ助けられたのよ、アンタの私と一緒の血染めの両手で」

 

クツクツとジャンヌ・オルタは嗤いながらも怒り狂い、旗槍の石突を鳴らしながら立ち上がる。

 

「この世界も一緒、出来るやつに擦り付けて感謝もせず地下牢に閉じ込める、。あるいは自国の平和を他者の国での代理戦争で意図的な不幸を生み出し幸福を自国に供給し続ける大国。そんなオメラス的功利主義の上で世界は成り立っている」

 

その上で世界を肯定できるのか?

懸命に最善手を尽くせるのか?

それが彼らの問いだ。

ジャンヌ・オルタは許せなかった。

 

「そんな幼子を見てどう助けて良い変わらず、そしてそんなもので維持されている都市と幸福に恐怖した人々は都市を去る。私は歩み去る人々にはならない」

 

救えぬ、だが死と言う救済を与えることはできる。死と言う断罪を執り行うことは出来る。

だから殺すことにしたに過ぎない。

 

「全て殺す、死体で丘を作り。流血で川を作って。その果ての殺戮の丘に一人立つ。」

「・・・」

「分からないでしょうね。アンタには・・・」

 

故に彼女は獣に在ず。

個人に期待こそすれど。人類に期待なんぞ欠片も無い。

特定の誰かには期待するが。有象無象に期待なんぞしていない。

全体に対する無形の物に彼女は愛を抱かない。

人類愛は持ち合わせていないのだ。

 

「・・・いえ分かった気がします」

「へぇ・・・」

「私は都合の良い私に縋りつき過ぎていた。影が出てくるのも道理でしょう。だから抜身の私として告げます。私は歩み去る人にはならない。救います、全霊をかけて。達哉さんとカルデアとジークくんを。」

「できるわけないわ」

「いいえやり遂げます。幼子には救済を。民衆には教えを。それが私の誓いだ。」

 

助けるのだと宣戦するジャンヌに対して。ジャンヌ・オルタは一瞬呆けて・・・

 

嗤った。

 

可笑しくて可笑しくて仕方がの無いといった様子で。

 

ジャンヌの宣言の本質を知るがゆえに可笑しくてたまらない。

第一に、都合のいいものを与えられ、都合よく切り捨てた側のジャンヌが何を言っているのか。

背負う背負う言って、失った事に気付いて血涙一つ流したことも無い女が何を気取っているのかと。

背負う事の辛さを知らない癖に、そうやって英雄を気取っている姿が滑稽で仕方がなかった。

故にイラつく、ご都合主義を成し遂げるためにいばらの道をどれだけ這いずった痛みさえ知らない癖に、自分がどれほど背負い、失って、それでも背負いたかったのに取り上げられて、擦り切れて来たかを知らない癖になに英雄を気取るのだと。

誰も救えたことが無い癖にと。

 

だから一通り嗤った後の、ジャンヌ・オルタの表情は憤怒だった。

血がにじむほどにロンギヌスとロングソードを握りしめる。

そして叫び疾駆した。

 

 

 

「そうやって知ったかぶってんじゃないわよ!! オリジナルゥ!!」

「悲観に暮れて自分の過去を押し付けるんじゃありませんよ!! 贋作!!」

 

 

交差する旗槍と旗槍が火花を上げる。

ジャンヌは衝撃に呻いた。

達哉ですらノヴァサイザーで一呼吸置かねば耐えられないほどである。

この馬鹿力には宗矩も真正面からの打ち合いを放棄すると言えるレベルなのだ。

加えて出力低下によって思考が冷静さを取り戻し、技量が戻ってきている。

達哉と交戦した時より淀みなく武を振ってくるのだからシャレになっていない。

ジャンヌがしのげるのは啓示スキルとサーヴァントとしての補正値+噂による出力補正があるからでしかない。

通常仕様のジャンヌであれば一合で詰みである。

 

「往生しなさいよぉ!!」

 

ジャンヌ・オルタの猛攻は止まらない。

先も言ったっとり真っ当に打ち合うには地力が足りなさすぎる。

元よりジャンヌはまともに戦う気などさらさらなかった。

此処に来るまでに嫌というほどわかっている。

 

なれば後はソレを悟られないようにするべきである。

 

勝てないとわかっているが全力で抵抗する。リスクを承知のうえで宝具クラスの魔力放射をさせないために張り付いていく

勝利に突き進むように見せかけて勝利を投げ捨てていた。

だが。

 

「シィ!!」

「ッ!?」

 

こうも連撃に晒されては逆襲劇も糞もあった物ではない。

特に旗槍の一撃の重さは剣の比ではなかった。

故に、わざと隙を晒しながら啓示スキルを最大限に展開。

十数手の選択肢をそれで読み切る。なお完全には対応が出来ない。

一手ごとに手が蒸れる。お得意の足癖の悪さもジャンヌ・オルタの前では悪手でしかない。

ひっしに攻撃を捌き、待っていた攻撃がついに翻る。

それはジャンヌが間合いを開けた刹那の追撃であった。

一直線に伸びるロンギヌスの槍、バックステップでの短い跳躍時間という回避できぬ間を精密に狙った一撃は回避できない。

ふつうなら。読み切っているなら話は別だ。

身をねじり空中で体の位置をずらし回避。さらに全身全霊で槍にしがみつきつつ回転しながらジャンヌはジャンヌ・オルタの腕をねじりあげようとする。

そしてその対応に、これは間に合わないとジャンヌ・オルタは判断し。旗槍を手放した。

そのままジャンヌは旗槍を自分の後方、部屋の入口まで投げ飛ばす。

これでジャンヌ・オルタはロンギヌスを使えなくなり、攻撃にも多少の淀みがとジャンヌが思った瞬間。

 

啓示に数十手の攻撃が表示された。

どういうことだと思う前に体が動き、

全身が浅く切り裂かれる。

 

「・・・本当に滑稽ね」

 

出力低下に伴う思考の演算リソースが増えたことによって。

技の冴えは達哉と戦った時よりもはるかに冴えているというのに。

 

「高性能装備に気を取られて身近な物に目が行かないとか笑えるわ」

 

入口付近に転がった、旗槍をジャンヌ・オルタは完全に捨てて。

空いた左手に予備のロングソードを装備した結果。

以前の戦闘スタイルに近い故か。

さらに冴えが増すという事態に陥っていた。

以前は出力強化を無理に行い、その分思考に余裕が持てなかったことに、ジャンヌ・オルタは自分自身を嘲笑しながら。

 

「さぁ行くわよ」

「ッ―――――!?」

 

ジャンヌを切り刻む。一方的にだ。

それをしのぐことしかジャンヌにはできない。

当たり前だ。

そも体や才能的基本設計は両者とも同じ。

されど育った環境がまず違うし潜り抜けた修羅場が違うのだ。

ジャンヌは対人戦闘や攻城戦をこなしてはいるがジャンヌ・オルタが戦ったのは。

悪魔という超常の軍勢に

さらには一個体として極地に居る神やら英雄と魔人たちと戦った。

 

最終標的に対しては最終的にはいつも負けこそしたがそれでも生き延びたのである

純粋に闘争のレベルが違う。

修羅場の数も違う。それを乗り越えるべく鍛錬した執念も違う。

何もかもが違い過ぎた。

それが絶対的差となる。人外舞踏を演じ切ったジャンヌ・オルタにジャンヌ・ダルクは勝てない

 

「くぅ、ツァ!!」

「そんな付け焼刃でねぇ!!」

 

何とかしのぐものの押し込まれていく。

こればかりは堪った物ではないとジャンヌは遂には生前には抜かなかった剣さえ抜いて防御に回る。

無論、ジャンヌ・オルタからすればそれは幼稚なものでしかない。

一方的に押し込んでいく。

ジャンヌは堪った物ではないと我が神はここにありてを起動。

 

「旗よ!! 我が同胞を守り給え」

「誰も守ったことが無い癖にほざくな!!」

 

起動の口上ですらジャンヌの言葉はジャンヌ・オルタをイラつかせた。

そして叫ぶ、誰も守ったことが無い癖にどの口がほざくのかと。

 

「違います私の後ろには皆が居る!! 負けるわけには行かないんですよ!!」

「それが都合の良い思考だと言っているのよ! 自分の掌を見たことがある? 自分の歩んできた道を振り返ったことがある? ないわよねぇ!! 気味悪いのよ、空っぽの癖にさも持っているかのようにふるまう、”今も出来るからやってる”のでしょう?神の人形風情がぁ!!」

 

ロングソードの刃表面に魔力が迸り循環。

収縮極まったそれは障壁に食い込み始める。

ああ、ペルソナがあれば、こんな障壁食い破ってやるのにと思いつつ、ジャンヌの哀れな神の人形っぷりに怒りながら食い込ませていく。

 

「違う! 私は私の意志で戦っているんですよ!! あの戦争を終わらせたいと願い行動した!! 神とか関係ない!!私自身の意志です! そこに嘘なんかない!!」

「自分の意志で戦っただぁ? ほざくな!! お前は民衆に都合のいい情報を摂取させて。突撃させただけだ!! そこいらのクソみたいな革命家と一緒よ!! 自分自身が血で濡れている自覚すらない!! やっていることに対して酔って悪手だという自覚すらない!!」

「そういうあなただって糞みたいな革命家と何が違うのです!? 気に食わないからぶっ壊して殺して、あとは投げっぱなしジャーマンじゃないですか!! 世界を良くしようとは思わなかったんですか?! 達哉さんが大事なら隣に立って戦おうとは思わなかったんですか!! いいえ! いいえ!! 思っていたんですよね!! だからあんな言葉を投げかけたんでしょう!?」

「一時の気の迷いよ!! 並行世界の類似した他人にもうそういうことは求めてなどいない!! 第一に私は人類に一片も期待もしちゃない、世直しなんか求めていない!! 求めるのは私も含めての皆殺しだ!!」

「そんな意味のないことして何の意味があるのかって聞いてるんですよォ!!」

「復讐に意味のある結果を求めるのは、ナンセンスだ!! ムカつくからぶっ殺すで十分、許せないから殺すで十分!! 美しくある必要なんかどこにもない!! 復讐自体が醜いんだから美しい結末を求める巌窟王みたいなヘタレと一緒にするんじゃない!! 第一ねぇ・・・」

 

剣と旗が激突

だが先ほども言ったように経験値が違う。

鉄板をただの稲妻が穿てないとの同様ではある。

並大抵の宝具ではジャンヌ・オルタの宝具を穿つことは出来ないのだ。

だが

 

収束 収縮 圧縮。

 

物質化寸前まで収縮された魔力リソースはソレを可能とする。

要は、運用の問題である。

ジャンヌ・オルタは馬鹿ではない、力押するにしろ効率性を求めるのだ。

エネルギーの物質化寸前まで圧縮されたエネルギーの杭は。

見た目に反して十二分に旗を穿って見せた。

 

「なっ」

「投げっぱなしジャーマンはお前もだろぉうがぁ!! オリジナルゥ!!」

 

ジャンヌは旗を保持する腕ごと弾かれて、胴ががら空きとなる物の、ジャンヌは右手の剣を走らせる

一方のジャンヌは振り下ろされる剣を見つめつつ間合いをさらに詰めて両腕を交差しつつ振り下ろされる剣が着弾する前に腕を締め付けて阻止しながら。頭突きをかます。

この距離なら剣の方が有利とジャンヌも意識を剣を握る手に集中させ何とか手離さずに済むが、

ジャンヌ・オルタはジャンヌの側頭部を狙い身を翻させ、ハイキックを繰り出す。

ジャンヌは今動かせる左腕を割り込ませ防ぐが、骨のへし折れる音と肉が裂ける音が響き、旗を握る手は痙攣し手放してしまう。

ジャンヌ・オルタは自分自身の再生能力も込みでジャンヌの剣は脅威ではないと判断しつつ

落した旗は万が一にも拾われると面倒と判断し。ジャンヌ・オルタはジャンヌの旗を軽く蹴り飛ばす。

 

「くっぐゥ、このぉ!!」

「いい加減、死ね!!」

 

回収不能な距離に蹴り飛ばすと同時に、腕を限界まで引き絞り、ほぼ密着状態から刺突を繰り出し。

奇しくもジャンヌもそれは同じであったらしくジャンヌ・オルタの霊核を貫こうとする。

だが動作の淀みの差でどうあがいてもジャンヌ・オルタの方が早い。

咄嗟に身をねじって胸を貫かれこそすれど。霊核への直撃だけは避ける。

よってできあがるのはジャンヌオルタが早いと言う相打ちである。

無論、ジャンヌ・オルタは再生能力で致命傷をものともせず、ジャンヌはジャンヌで致命傷は避けていた。

故に、ジャンヌの狙いはこれである、相応必殺が成立する至近距離での相手の油断。

再生能力があるから大丈夫であるという油断を欲していた。

 

「ハッ。この程度」

 

無論、この程度はジャンヌ・オルタにとっては無傷にも等しい。

如何に出力が低下したとはいえど不死性は健在なのだから。

ジャンヌは旗を手放し刃が深くめり込むことに頓着せず。

左腕をジャンヌ・オルタの後ろ首に回して引き寄せて拘束。

そしてジャンヌの剣から火の粉がチラついている

左腕を素早くジャンヌ・オルタの後ろ首に回して。ハグをするように密着。

ジャンヌはジャンヌ・オルタがその一手先を行くだろうと信じていた。

 

「アンタ。正気!?」

「正気では勝てませんし聖女じゃいられませんよ、主よこの身を委ねます!!」

 

相打ちした瞬間に宝具を起動していた。

勝ち目なんかないことなんぞジャンヌは自覚済みだ。故に自爆染みた宝具を起動させる。

自らが生み出してしまった物を始末するためにだ

またジャンヌ最大の祝福武装でもあるので。出力もジャンヌ・オルタの最大値に合わせられる。

故に今この瞬間ならば、如何に膨大なリソースを所持するジャンヌ・オルタでさえ焼き尽くせるのだ。

だからこそ躊躇なく祈る様に剣に力を込めて、真名を解放する。

 

 

紅蓮の聖女(ラピュセル)

 

 

焔が上がり火柱の様に伸びて二人を包み込み、一拍の間をおいてジャンヌがなんと生きて炎の中から倒れ込むように飛び出る

それは偶々の出来事でもあった。

 

―攻撃特化礼装にしすぎて失敗したわ・・・―

 

「はぁ・・・グゥッ・・・」

 

ガッツ礼装。

それがジャンヌをこの世に押しとどめたものである。

事前に配布された礼装は攻撃的に過ぎるとして。

オルガマリーが回収。再配布した物は読者の方々も知っての通りである。

それがジャンヌの命を繋いだのだ。

 

如何に執念と技巧を重ねようとも勝負事は基本あっけなく終わる。

今回はジャンヌ・オルタの油断が彼女自身の首を断ち切ったに過ぎない。

良くも悪くも無力なジャンヌしか見ていなかったから、彼女が決死の間合いに踏み込み断行した逆襲劇を読み切れなかった。

復讐者が逆襲劇に敗れるという皮肉とケレン味きいた結末へとたどり着くのはある種の必然染みた物であり。

 

 

―まぁ誰とてそうするだろうよ。戦場とは不確定要素と摩擦が入り乱れる混沌だ。安全マージンを組みたいと願うのはごく普遍的な物だとも。―

 

 

だがそれは逆に影の読み通りだ。

 

 

故に

 

 

ー罰を下そう、ジャンヌ・ダルク。カルデアの人々よ。お前らのせいで周防達哉は現世と彼岸の狭間を彷徨うだろう。そして知れ。大事な者は常日頃脅かせるという現実にだー

 

 

運命は決まった。

その様な中途半端は許さない。奇跡など容認しない。

 

―第一にそのような自爆特攻で殺せるような女ではないぞ。彼女は―

 

影の言う通り、炎が蠢いた。そして炎上するジャンヌ・オルタの人型に。ガラスに罅が入って割れる寸前の様に亀裂が入り。

浸食していた心像風景が砕け散っていく。

それと同時に城も掛かった過負荷が押し寄せでもしたのかボロボロに崩れる箇所も出て来ていた。

それらが、まるで雛鳥が割った卵の殻の様に崩れて堕ちて行く。

そして・・・彼女は生まれる。この瞬間に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

炎上する、燃える、燃え尽きていく。

ジャンヌ・オルタ自身と彼女を構成するすべてが燃えていく。

まるでジャンヌが処刑された時のように燃え尽きていく。

それがオリジナルたるジャンヌがジャンヌ・オルタにやってのけたのだから皮肉が聞いているという物だ。

身を浄化の炎で焦され。

ため込んだ怨霊たちは浄化され尽くしていく。

召喚し取り込んだ霊基でさえ消失しかかっている

このままいけばジャンヌ・オルタは消えるだろう。

全てが無明に帰っていく中で。

走馬灯の様にジャンヌ・オルタの脳裏に過去が過る。

 

最初の慟哭。

罪と罰物語。

ジャンヌ・オルタの出発点。

 

無様で情けなさすぎる己が姿

 

それを見て思う。

 

『死にたい、皆の所に行きたい』

 

助けたかった。救いたかった。恩を返したかった。

幻想であってもあの人たちの温かみに報いたかった。

だがそれはもう成せない。

もう存在しない。全て幻想になったのだから。

だから強くなろうと無理を押し通した。

過去の弱い無様な自分から目を背けて復讐を大義と掲げて、達哉に幻想を重ね合わせて押し付けた。

 

逃げに逃げていただけに過ぎない。

人は過去から逃げられない、故に強くなるということは過去の傷を受け入れて土台としてなすことを言う。

過去を拒絶していては間違った物しか手に入らない。

外装を見繕っても本質は変わりがない。

世界が憎いのどうのこうのではなくて。

ここにきて彼女は過去を受け止めて原初を見つめて。

 

「ああ・・・やっぱり・・・」

 

ジャンヌ・オルタの瞳に輝きはない。

 

「間違えたまま走っちゃ・・・勝てないか・・・」

 

分かっていた。

分かってはいたのだ。

間違えていると自覚していた。

でも許せなかった。

正しさを人は英雄に強要し。間違いを犯すことを許さない。

無敵、不変、絶対。

そんな誇大妄想を押し付けて戦いを強要する。

許せるはずがなかった。

 

正しくないのだとしても。自分の愛した人たちに泥を塗る行為であっても。

 

そんなベンサム染みた世界が嫌いだった。

 

故に納得する。

これは当然の帰結であり、何もなしえないことというのが自分自身に対する罰。

魔王役として主人公に約束された勝利を彩る仇花でしかないのだろうと。

 

『いい加減。諦めたらどうです?』

 

意識の暗がりの中。

這いつくばり立ち上がろうとした。ジャンヌ・オルタの背後に現れるのは。

幼少期の如く幼い”もう一人の自分”

 

『もうわかったじゃないですか・・・いくら頑張ったところで伸ばした手は届かない』

 

大事だった。失いたくなかった。本当ならこんなことしたくなかった。

けれどもう無い。

取り戻す機会は永劫無い。

 

『かと言って八つ当たりの意味の無さは、良く知ってますよね? この宇宙はアマラの宇宙より下位であれど多次元的な宇宙です、一つを皆殺したところで。大いなる意志と聖四文字と明星に影と蝶の観測からは逃げられない、意味がない』

 

かと言って八つ当たりも総じて意味がない。

多次元的宇宙を片端から皆殺しにするなんて不可能だ。

だから立ち上がるな。ここで死ねば有終の美を飾れるのだと、自分の自罰意識と自死衝動の仮面は嘯く。

 

『黙れ、もう一人の私ぃ!! やりたいからやっている!! 許せるか!! 許せるものか!!』

 

今度はジャンヌ・オルタの前に嘗てシュバルツバースに傭兵として挑んだ自分が現出し叫び散らす。

 

『死んでなんになる? 足掻いた果てのしなら良いかもしれないけれど。目を閉じて耳を塞ぎ自分の命すら絶って何もかもから解放されるって究極の現実逃避を選べばどうなるか、知ってるわよねぇ!? 私が殺さなきゃ同じ人たちが奇跡の為に切り刻まれて惰眠を貪る人々にバラ売りにされるのは嫌と言うほど見てきたでしょうが!?』

 

 

『もう止めなさいもう一人の私」

『立て!! もう一人の私』

 

自罰意識は死ねと言う。意味がないからと。

他罰意識は立てと言う。そうしなければ誰も報われないからと

 

そして・・・。何もかもを辛そうにへたり込む。ジャンヌ・オルタは視線を下げて・・・答えようとして

 

「私は――――――」

 

―走れるさ―

 

思い出す。

海岸沿いの岬でのやり取りを。

 

「―――――」

 

―俺達―

 

夕焼けが酷く美しい。

風が気持ちよく肌を撫でる中で。

 

「―――――――――」

 

―友達だろう?―

 

夕日をバックにそう言って、はにかむ様に微笑んだ彼との約束と友好の証明・・・

 

 

何のために・・・戦ってきたかを思い出す

たったそれだけの為に。

 

本当はともに行きたかった。罪と罰を背負って。

 

だからユルセナイ。

当たり前の事。

故に剣を取ったまで。

 

全てを殺し飲み干し汚濁を背負って彼らを救う為に。

 

「五月蠅い」

『? もう一人の私?』

 

自罰意識の仮面は震えた。

他罰意識の仮面もそうだ。

何かが目覚めた。

そして感じる。自分たちの主人格が悍ましい物になっているのを

 

「いちいち言うな。死にたいと思うのは当然。あれだけ無様晒せばそうもなるでしょう?」

『そ、そうです、ですから』

「そんな安息なんて私は許さない、死にたいから死んでなんになる? 巌窟王の様な綺麗な死にざまなんぞ選べない この道を選んだ瞬間から退路なんてないのよ。どうせ後にも先も同じなら後を選ぶべきでしょう?」

『よく言った私』

「アンタもよ。狂い過ぎていて自分でもわからなくなった他罰意識、一つ訂正するわ。私は彼等の奇跡を奪った世界が許せない、あとの連中なんて知ったことか。なんてどうでもいい、憎いから殺す。」

 

掴み取る様に両手を突き出し、繋げる。

取り上げられたとはいえ、嘗てはつながっていた。

感覚は染み付いている。であるなら自力でこじ開け汲み取るだけの話し

 

「やりたいことはやっている、今立ち上がってやるから、大人しく私の元に還れ、そして存分に使われろ」

 

両者ともに自分だと認めて受け入れて捻じ伏せて制御する。

彼女が帰ってきた。

アマラからこの世界に。

 

 

 

 

 

 

ジャンヌは呆然とした。 そうするほかなかった。

 

「そこで諦められるようならなぁ! そもそも復讐なんて決意してないのよォ!!」

 

咆哮である。

炎に焼焦されて蠢いた彼女の動きが静止し。

叫び散らすように吠えながら静止する。

 

いまの今までが半覚醒状態の様なものである。

幻想の中で弱かった己を認められなかったがゆえに至っていなかっただけの話。

幻想の中で共に過ごした愛しい誰かが、今現在に存在してしてしまったがゆえに滅ぼしくたくないと願った故に発生した自己矛盾。

それらが彼女の目覚めを阻害していた。

そして過去をを受け入れ求めた時に

彼女を覚醒させる。

過去の傷を着火剤に。今持っているものを薪にしてくべて燃え上がる。

 

「奪われたから奪い返して何が悪い!! 全部終わってしまってなくなったからと言って捨てなくて何が悪い!!」

 

この状況から脱するのは簡単だ。

幻想の中で味わった修羅場の数々が身を燃やされていようと思考を冷静に走らせ。

解決策を断行させる。

取り込んだ聖杯は願望機として機能している。

これで偏に世界を吹っ飛ばなかったのはジャンヌ・オルタ自身が自らの手でやらなければ気が済まないことと。

計画に支障が出るからだ。

故に今までは単純な出力機器としてしか使っていなかった。

 

「復讐は不毛? 虚無じみた虚しい自慰行為? 愚者の典型的な行動? だから復讐なんてやめて悟った賢人の振りをして穏やかに逝け? ふざけるナァ!!」

 

今はジャンヌの特攻を受けてリソース不足とはいえ。

願望機として再起動させる燃料はある。

即ち取り込んだ霊基を全て引きはがし聖杯に突っ込んだ。

彼女は何もかもを失った。

だが過去を本当の意味で肯定し全部を殺し尽すことを決めた。

本当の意味で許せなかったのは自分。

そして世界を憎むのはそんな弱き己であることを受け止めて。

もう誰も必要としなくなっていった。

しまったのだ。

だから止めに入った同志たちですら怨敵にしか今の彼女の眼には映らない。

躊躇なく都合の良い御託を並べてきたので聖杯に突っ込み

さらに彼らの言葉を真っ向からふざけるなと咆哮し己の身体さえも捧げて聖杯を起動させる。

炎上するジャンヌ・オルタの炎が剥がれ落ちる。

外殻と共に床に落ちる。

 

「大事だった!! 大切だった!! 至高だと声高々に叫んでも恥ずかしくないものだった!! だから・・・それらを切り捨てて賢者とかキレイな終わりを選ぶくらいなら」

 

声が、咆哮が止まらない。

例え幻想だったとしても愛した物はそこに合ったのだ。

確かにあった。

故に憎い。故に許せぬ、世界を民衆を己でさえも・・・

だからこそ何にもかもを、引っ繰り返して投げ打って足掻く。

 

「醜くても無様でも汚泥に塗れても。罪と罰を背負って、私はァ!! 復讐を選ぶ!! だから見くびってんじゃない!! ニャルラトホテプゥ! 私をぉぉおおおおおおおおおお!!」

 

物は先ほども書いた通り存在している。故にこれは確約された奇跡という物であり必然だ。

獣のような叫びを上げながら蛹から羽化する蝶の様に自身の肉体だった物を引き裂き、抜け出て、踏みしめて。

ジャンヌ・オルタは一歩踏み出して新生した。

 

開門せよ(ルデマラージュ)――我が原罪(ナチュール)

 

胸の心臓部から漆黒の杭が突き出る。

 

蹂躙せよ(ルデマラージュ)――我が陰我(ナチュール)

 

その周囲を彩るのは黒百合とコルチカウムの花

 

覚醒せよ(ルデマラージュ)――我が慙愧(ナチュール)

 

そして杭から肌を這うように漆黒の入れ墨が伸びていき、両腕を漆黒に染め上げる

さらに衣類の霊基も歪められていく。

歪められた聖女像染みたバトルドレスではなく。

間違いなく。自分が自分として生きていたあの頃の物にだ。

黒のノンスリーブに漆黒の胸当て。黒のホットパンツにサイハイソックスに軍用ブーツ。

額当の代わりに両脇から角のようなブレードアンテナが突き出たバイザーゴーグルに両手には薄手の皮手袋。

そして幻想の達哉に選んでもらった使い古され思い出の詰まったボロボロのライダージャケット

 

 

 

 

弱き己を受け入れ復讐の定義を確立したことによって幻想の中で影に与えられ奪われた物を取り戻し

心の奥底から剣を引き抜く。

 

 

 

             霊基再臨 受肉完了 生命再誕。

 

           「ペルソナァ!! フルンティング!!」

 

                  心像具現

 

        「ダーインスレイヴゥゥゥウウウウウウウウウウウ!!」

 

 

 

                 

        

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                 魔人 再誕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今ここに立つのはたった一人の『ジャンヌ・オルタ』という女性だけだ。

 

 

あの幻想を駆け抜けた時のように。

弱き自分自身を、憎む己を認めたことによって幻想の中で貸し与えられた力が発現する。

 

ニャルラトホテプがサーヴァント能力を取り上げる代わりに貸し与えたその力。

 

ペルソナの亜種能力「カタルシスエフェクト」

過去を受け止めた事で。ニャルラトホテプに与えられ幻想の終了と共に取り上げられた力をそれらを土台に取り戻す。

掌に具象化した漆黒のそれを引き抜く様に両腕を振り抜けば。

右手には柄と鍔が異様に長く刀身がジャンヌ・オルタの身丈にも匹敵する長さを持つ細身の大剣。

左手には握られているのは釵と呼ばれる刺突短剣に近いが。その刃は歪に捻じ曲がっている独特の形状の短剣。

 

全体的な機能は。さっきの状態に比べれば全て下がっている。

だが技量や経験値が完全に適応され実力自体は上がっている。

寧ろそれに精神が完成され。ここから再び進化を始めていくだろう。

今度は消化不良や負荷などによる不完全な進化などはしない。

無論、全てのリソースを再誕に使ったため嘗ての不死性は失われている。

もっとも今の彼女ならすぐに取り戻せるものでしかないし。

むしろ余計に過剰に過度に強化のために取り付けた物を取り払い。

自己定義を完了したことによって。

まさしく完成された彼女は魔人として世界を食らう修羅として、この瞬間に再誕し帰還したのだ。

新生した彼女は、肩で息をしながら、呼吸を整えて精神を落ち着け、ジャンヌを見て歩みを進める。

 

「皮肉ね」

 

吐く息はまだ荒い。

器として完成こそされたが。再誕の為に中身を聖杯に使ったのだ。

体力も精神も限界に近い。それでもカツカツと音を立ててジャンヌ・オルタはジャンヌに近づく。

礼装による霊気の修復効果でギリギリ生き残っているに過ぎないジャンヌに抵抗するすべは残されていない。

脚に力が入らず崩壊寸前の霊基によって激痛が常時発生しまともに立てない。

剣を杖に何度も何度も立ち上がろうとするが。その都度。床に倒れてしまう。

 

「アンタが拒絶し私が生まれ。アンタが私を殺し私は生まれた。」

 

そしてジャンヌが見上げれば。

ジャンヌ・オルタが無表情でジャンヌを見ている。

 

「本当にクソッたれよ。まぁ先に行きなさい、いずれ全ての座も滅ぼすから」

 

全部殺す

全ての悲劇が終わるまで。

そうすることで己が復讐は完了するのだと宣言し。

 

「逆襲の顎」

 

自身の固有スキルを起動させる。

漆黒の炎がダーインスレイヴに纏わりつき。まるでサメの歯やらチェーンソウを彷彿させるように鋭く巡廻してる。

刃と炎に触れた空気と空間がえぐり取られるように消失し。

ジャンヌ・オルタの力となっていく。と言ってもそれは微量だ。

フルスペックを回復し、尚且つ高みに上る為にはまず。ジャンヌを殺しその霊基を吸収する必要があると。

ダーインスレイヴを後ろで担ぐように構える、ダーインスレイヴの異様な長い柄と鍔の形も相まって、ダーインスレイヴを構える彼女の姿はまるで十字架を背負っているようだった。

そして漆黒の刃がジャンヌの首元に迫って・・・

甲高い音が鳴り響いた。

 

「無事・・・ ではないか・・・」

「達哉さん・・・」

「遅くなってすまない」

 

 

ギャリと刃が擦れる。

 

 

「本当に悪趣味ね、アイツは・・・」

「それには俺も同感だ」

 

 

ジャンヌ・オルタはそう呟きながら刃に力を込めて。

達哉はアポロを呼び出し。

 

ここに神話を駆け抜けた者たちの刃の切っ先は再交差するのだった

 

 




魔人邪ンヌ帰還にして再誕回。
幻想の中で人生を送った彼女は今生れた。
彼女は覚醒ではなくVRの中で培ったものを取り戻しただけです。
実力は周回重ねているということもあって、たっちゃん以上。ライドウの二分の一の実力
フルスペック発揮できるならカルデア総出で袋叩きににしてようやく互角の怪物。
魔人の称号にして地位に座るというのは伊達ではない
と言っても再誕にリソース全部振りしているので現状は疲弊したたっちゃんと互角程度。

ちなみにたっちゃんが割って入ったのは正解です。
ここで邪ンヌがジャンヌを殺したらスキル効果で完全回復+ジャンヌの霊基分強化入って。
ノヴァサイザーも十全に対応できるので、たっちゃんの勝率がなくなり。
たっちゃんを殺せばその分パワーアップ。領域内は自分に庭なのでカルデア各個撃破に持ち込まれて敗北するという流れになりますので。




次回決着回。「恩讐の最果てにて」をお送りします。



オマケ
ジャンヌ・オルタの固有スキル「逆襲の顎」

バフ系だが能力を強化するとかではなく。
ダーインスレイヴの刃で切った物を存在基盤事抉って物質的及び霊質的に削り捕食しジャンヌ・オルタの力とするという物。
斬った物が協力であればあるほど彼女は強力なものに成長する。
元になった渇望は「不死の神々を殺したい」「生に真摯生きて、犯してしまった罪と罰を背負いたい」という物が原型となって発現した彼女の復讐劇である。
またスキルの副次効果として切った物の存在自体を抉っているため再生を許さない。
この剣の刃で殺された場合、存在そのものを捕食する為、不老不死ですら即死損壊を与えられれば殺せるという究極の不死殺し。
防ぐ方法は、ニャルラトホテプや某人形師の様に多数の同位体を有するしかない。
そんな殺傷能力及び格上殺しに特化したスキルではあるが、発動時点では攻撃力や武器の切れ味を上げる物ではなく。
ジャンヌ・オルタの素の攻撃力に依存する為。サイズが大きい相手。純粋に物理的に頑丈な相手や自分と同一規格の代わりを用意できる相手には不利なのは変わりがない、逆に攻撃を通せればどうとでもなる。
殺傷スキルの究極系、彼女の在り方である。




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