Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです   作:這い寄る影

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私達は羊の群れ。
道を誤りそれぞれの方向み向かって行った。
その私達の罪を全て主は彼に背負わせられた。
苦役を課せられ、屈みこみ彼は口を利かなかった。
祭壇に捧げられる子羊の様に。


イザヤ書より抜粋。


第一章幕引き 「奇跡は無く故に我らは選ばなければならぬ」

ジル元帥は何時も取り残される側だった。

これはジャンヌの気質もあろう。

旗を掲げ鉄火場へと突撃する、いつも不安だった。そして取り残されていくような気分だった。

ジャンヌが武功を上げれば上げるほど彼女は最前線へ、ジルがその知略を発揮すればするほど彼は後方へ。

何時も英雄譚などとは無縁だった。

無論後方の重要性は知っているが裏方は裏方だ、本当は表に出てジャンヌと共に駆け抜けたかった。

だが立場がそれを許さない。

そして経つ時間が徐々に彼と彼女の間に溝を作り、最前線と後方勤務という谷となった。

そして運命の時が訪れる、コンピエーニュ包囲戦である。

無論、ジル元帥は止めたが、手紙でのやり取りでその誠意まで伝わらず、結果ジャンヌは捕縛された。

後は言わずもかなと言う奴である。

だから彼は自分自身に対する怒りか失望で魔道へと歩みを進め。

 

フランス全土がある日突然炎上したかのように惨劇に見舞われた。

 

ジャンヌ・オルタの具現とそれに伴うIFの発生。

そして蘇ったジャンヌ。ジル元帥は取り返せるのだと思った。

だが・・・

 

 

蓋を開けてみればどうだっただろう。溝は広がるばかり、無理をして最前線に出て見れば結果は御覧の通り。

主役は達哉を筆頭とするカルデアと抑止のサーヴァントばかりと言った有様だ。

ジャンヌは最前線へジルは後方へ。

そしてジャンヌは心を折られた。

だから今度こそ救おうとする。

あの日、須藤がティエールに強襲を掛けた日。

落ち込むジャンヌに声を掛けようとして声を掛けれなかった。

どの様な言葉を言っていいか分からなかった。なんせあそこまで今にも砕けそうな罅だらけの水晶のような表情をするジャンヌを見るのは初めてだったから。

ジルが知る凛とした彼女はどこにもいない。どう言葉を掛けるべきかと迷っていた時である。

そこに現れた達哉がジャンヌを癒して見せたのだ。

 

故にまた機会を取り逃がしてしまったということに他ならない。

もっとも達哉はそこらへんの経験値が違う。何度もニャルラトホテプにへし折られればそこからの立ち直り方を学習するのも当然で。

それはへし折れた他者を救う手立てを持っている事でもあるからだ。

もっともその場はお開きとなった。須藤が強襲して場が荒れたからである。

 

機会を逃す。

 

だからこそ今度こそはと影の誘いに乗った。

 

 

だが・・・・

 

どうだ?

 

ボロボロになっているジャンヌ。

未来の服装を着こなし、右手には大剣、左手には異形の短剣を持ち絶叫しながら殺意を滾らせるジャンヌ・オルタ。

鬼の様な形相で神々を呼び出し剣を振って肉薄する達哉。

両者ともに人間どころか並のサーヴァントですら立ち入れぬ超高速戦闘を行う。

ぶつかり合う殺意と殺意が炸裂しジル元帥を竦ませた。

入口付近でへたり込むジル元帥を他所に。

状況は進んでいく、そして紙一重の差で達哉が勝利した。

敗北したジャンヌ・オルタのか細い慟哭と歓喜が場に虚しく響き、ジャンヌ・オルタは救われたかのように目を閉ざした。

そして達哉がジャンヌを背負う、彼女には少女の様な微笑み。達哉は苦笑していた。

英雄譚の終幕にして幕引きである。

故に、蚊帳の外に置かれたジル元帥の嫉妬はいかがばかりか。

何時も置いていかれた。彼女を救いたいと望み叶わず狂気に埋もれかけて・・・

今回こそはと意気込みこそしてみたが、いつもジャンヌを助けたのは達哉で。

ジャンヌ・オルタに死と言う救いを与えたのも彼である。

本当なら自分がその場に居たいのに、なぜこうぽっとでの達哉がそこにいるのかと怒り、狂い嫉妬し。

ちらりと隣を見る、ジルのすぐ横にはロンギヌスの槍が転がっていた。

誰も癒せぬ傷を刻み込む聖槍。

ジャンヌがサーヴァントしてよみがえったことによって封印されていた狂気が罅割れた感情の蓋からあふれ出し。

 

そして

 

「・・・なんか問題があったら言ってくれ」

「いえでも大丈夫です、幼いころ遊び疲れてピエール兄さんに背負ってもらったことを思い出しまして」

「そうか、じゃ行こうか」

 

ジル元帥ですら聞いたことのない家族の思い出をジャンヌが達哉に言う場面を見て。

なぜそこに居るのが自分ではなく、ぽっと出の匹夫なのかと言う想いが洪水のように溢れて。

壊れかけていた精神が完全に崩壊し。

懐にしまい込んでいた魔導書が胎動し、ジル元帥の身体能力を強化して。

 

 

気付けば”ジル・ド・レェ”はロンギヌスをもって、達哉を刺し貫いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「達哉さん!?」

「ごふ・・・」

 

 

腹部に穂先が刺さり込む。

血反吐を吐きながら達哉は見た。

憤怒の形相に染まり切って自分を見ている、ジル元帥を。

 

「ジル・・・元帥・・・、なにを・・・」

「だまれぇ!! ジャンヌを惑わす異教徒の神の徒めがぁ!!」

 

彼は完全に正気を失い錯乱していた。

なにがどうしてと達哉もジャンヌも思い

 

「そりゃそうなるでしょ、愛しの聖女が異邦から来た青年に熱を上げている様を見せつけられた挙句、自分にはできない事をやってのけて、蚊帳の外に置かれる。並大抵の男でさえ嫉妬するんだから、人の頸木を外れた狂信者だったらこうもなろうに」

 

嘲り。

達哉とジャンヌの視線の先で頭部は骸骨、衣類は黒装束の化身「Lucid」苦笑気味に嘲笑っていった。

ジルには捉えられない存在。

即ち影である。

 

「同じことをなしうると考える限界までは、他人の幸福をよしとして受け入れられるも、限界を超ゆる人は嫉妬され、疑惑の目を向けられるだったかな、いまの状況にピッタリだろう? 君は作られた代用品の聖女にある意味導きを与え救いを与えた。そこのへし折れた聖女には答えへと導き本当の芯を与え救いを齎した。ジル・ド・レェが過去も今も未来も出来なかったことだ。

彼が何よりもやりたくてできなかったことをやってのけた。本物にも理想とした代用品にも。だからこうなるのさ」

「っ」

 

影はそういって嗤いつつ。

そんな姿をしり目に達哉はジル・ド・レェの顔面を殴り飛ばし、次に腹部に蹴り飛ばし間合いを離す。

たまらずジル・ド・レェは強引に離されて仰向けに倒れながら悶絶していた。

 

「達哉さん!?」

 

フラリと膝をついた達哉の左肩を掴み支えるジャンヌ。

その姿を見てジル・ドレェの狂った嫉妬心は加速する。

もうこうなれば止まらない、ジャンヌと達哉のかかわりがジル・ド・レェには嫉妬心を掻きむしる者にしか映らない。

あの美しい光景に居るのは自分であるべきはずなのにと・・・

ジャンヌは達哉を支えつつその場を離れる。

既に人理定礎は修復されあと5分ほどで場は無くなる。

そうなれば・・・逃げ切れると判断しての事だった。

 

「おのれぇ・・・、おのれぇ・・・・!!」

 

緩やかに立ち上がるジル・ド・レェ。

普通であれば達哉の拳を顔面に喰らったのである、首がへし折れるような衝撃が襲ったはずだ。意識が飛んでいてもおかしくはないのだが。懐に入れた魔導書の影響で身体能力が強化されておりそうはならなかった。

折れた鼻が自動的に修繕され彼は飛び出すように”槍”を握りしめて走り出した。

 

「また逃げた」

 

そうLucidは呟き口元を三日月上に吊り上げる。

選べる分水領だった。

だが彼女は逃げた、狂気に染まった彼から。

現実というのは常に選択を迫るが猶予はある。

達哉やオルガマリーにマシュ、そしてカルデアは最善とは言わず最良の選択を取っていった。

 

「頑張ったね、君たちの勝利だとも。嗚呼、けれどね」

 

群れで行動するというのは団結するという強みがあるが。

それは同時に一人のミスが群れを破滅に導く脆弱性を秘めている。

 

 

そう選択をミスったのだ。

 

周防達哉が? オルガマリー・アニムスフィアが? マシュ・キリエライトが? カルデアが?

 

否、いいや否であろう。

 

彼らは懸命に周囲と向き合い出来ることをやって勝利をもぎ取った。

カルデアの面々はきちんと周囲と向き合った。

だが彼の狂気を払えるのは狂気の十中にいる者のみ。

即ち、ジル・ド・レェがこんなことになったのはジャンヌの所為であろう。

彼が狂気に居る以上、壊すことは他人にできても、治すことはジャンヌにしかできぬ役割だったから。

がしかし件の聖女は己の代替品に人間性を否定され、人形によって信仰を完膚なきまでに破壊された。

精神的に壊れかけていた?

そんなもの理由にもならない。

壊れるまでに追いつめられる前に彼と過ごしていたはずだ。

人理の守り手故に彼のその後を知っていたはずだ。

壊れるまでの期間に正せたはずなのに。彼の上っ面だけを信じて目を背け。

そして壊れかけて太陽に救われ、光で目を閉ざして目を背け続けたのだ。

当然の報いであろう。

 

「ふふ、贋作の方が出来がいいとは滑稽だよ」

 

間違いこそ全力でしていたが、

周囲に目を配り憎悪を背負って歩む不出来な贋作の方が、

宗教的聖人の殉教者に見えるというのは実に皮肉である。

 

「だからこそ、選べ、それが君の最後の試練であり、僕が与える罰だ」

 

そうだからこそ選ばなければならない。

現実という影は逃がしはしないのだから。

己がIFという名の影から目を反らし、隣人の狂気には目を伏せて、自身を救ってくれた太陽に依存する。

逃げ続け都合の良い綺麗な概念に縋りつく女にはふさわしい罰であるとのだ。

 

 

 

 

 

「皆ボロボロね」

 

偶然にもオルガマリー達は合流に成功していた。

加えて通信が回復し、既に達哉とジャンヌがジャンヌ・オルタと交戦状態と言う事もある。

と言っても全員ボロボロだ。

魔王を相手取っているのだからむしろ損害は軽い方だろう。

と言っても、長可たちの様相は酷い物だった。

衣類鎧がボロボロである、彼ら曰く無茶をしたとの事らしい。

帰還後はダヴィンチによる霊基修繕が待っているだろう。

そして・・・

 

「想定していたより、遅かったねカルデア」

 

二階へとつながる階段の上にソーンが存在していた。

 

「誰ですか?」

 

無論、マシュも所長も知らない存在である。

と言うか特異点内部で現代の服装をしている時点で異常だ。

さっと、クーフーリンと宗矩が二人を庇いように前に出る。

 

「下がっていなさい。こやつ人間ではない」

 

宗矩は一目見て見抜いた。確かに目の前にいる存在は人間であるが。

中身が人間ではないと見抜いたのである。

 

「テメェ・・・この深淵の香り・・・テメェがニャルラトホテプか」

 

そして神代の英雄であるクーフーリンの鼻は誤魔化せない。

魔力の匂いから、あからさまに神に類似すると感付いたのである。

 

「その通り、私がニャルラトホテプの貌の一つ、第二特異点担当のソーンだ。よろしくお願いするよ」

 

カラカラと笑みを浮かべて、ソーンは揺るがない。

場が凍っている。殺意だとかではない、コイツは存在してはならない生き物だと全員が無常の殺意を発しているのだ。

 

『所長、止まってないで早く、達哉君の所に!?』

「ロマニ、なにがあったの?」

『分からない!? 達哉君の礼装がイカレたのか状況はこっちでもつかめないんだ! 兎に角、達哉君のバイタルサインが酷く乱れて・・・致命傷だ!!』

 

復旧した通信からはロマニの悲鳴が上がる。

達哉が重傷を負ったと。

ジャンヌ・オルタの悪あがきでも喰らったかとマシュとオルガマリーの顔色が急降下。

それを見てソーンは嗤って

映像を展開、さらにカルデアの管制室の大スクリーンにも介入し、達哉の惨状を映し出す。

 

「さて、フィレモンのヤツは見ているだけだが、私は違うよ」

 

映し出されるのは、狂った表情でロンギヌスを達哉に突き刺す、此処にはいないはずのジル元帥の姿が映し出されている。

 

「では解説と授業の時間だ。カルデア」

 

映像を見ていた全員が呆然とする最中でも調子を崩さずに

 

「と言う分けで・・・あの聖女モドキは最善を尽くせなかった。その結果がこれだ。」

「ジャンヌさんが最善を尽くせなかった?」

「ああそうとも、全員が向き合っているなか、与えられた都合のいい役職に縋りつきジル元帥とのコミュを怠った。君たちが来るまでの交渉はマリー・アントワネットとそこのゲオルギウスが行っていった。初期の交戦で仮面を剥がされかけていた彼女は本当の小娘としての自分を見られたくない余り、ジル元帥の前ではいつも以上に英雄として振る舞い、自分自身として胸元を開くという事を怠った。それで須藤によってへし折られた彼女が縋ったのはジル元帥ではなく、都合のいい答えを与えてくれた周防達哉だ。お前たちもジル元帥の狂気は知っているだろう? ジル元帥が恋慕していたジャンヌが

自分を無視して得体のしれぬ男に興味を移せば容易く狂うのは目に見えていたはずだ。そしてそんな危険な狂気を持っていることを知っている上に原因は自分にあるということも分かっているくせに無視したからこうなったまでの事だよ。ね? 最善を尽くしていないだろう?」

 

ジル・ド・レェの抱える狂気の事は分かっていたはずなのだ。だがそれを抑える努力を怠った。

ボロボロだったというのは言い訳にもならない、ジル・ド・レェの望みはジャンヌが自分自身に背を預ける事だったから。

寧ろ本心を明かすことでジル・ド・レェの狂気を抑えられたはずなのに。

少女としての自分を見せて失望されたくないと一線を引いてしまったことが今回の元凶である。

 

「吹かしこくなや・・・貌無し、テメェがジル元帥をけしかけたんだろうが!!」

 

長可は激昂する、大方お前がけしかけたんだろうと。

ソーンはその様相を見て嗤いを深めた。滑稽で仕方がないと言わんばかりにだ。

 

「うん、私の片割れがそうしたね。でもね、私たちは何時も選択肢を提示しているだけに過ぎないんだよ? 選ぶのは当事者たちでしかない。間違っているならば選ばなければいい、違うかい?」

「選ぶ選ばない云々前にそう追い詰めりゃ、誰だって選ばざるをえねぇだろうが!」

「それでもと言える強さが無いのが悪い、第一にだ。死人が戻ってくるわけないだろう? 甘い蜜には裏がある。真っ当な人間なら選ばない、ましてや達哉レベルで追い詰めていた訳じゃないんだからね、都合のいい事象に目を向けて都合のいい答えを選んだ結果じゃないか、自業自得だよ、それに巻き込まれただけだ。たっちゃんはね」

 

クーフーリンの反論にも達哉レベルで追い込まれていたならまだマシも、状況的には選ぶ余裕はたっぷりあったはずだとニャルラトホテプは指摘する。

現にその通りである、ニャルラトホテプはそこまでジル・ド・レェを追い詰めてはいない。ただ選択しを提示しただけだ普通の大人ならばまず選ばないことをだ。

故にニャルラトホテプからすれば、脅かすだけに危険もなんもない場所で背を押したら、勝手に都合のいい妄想を行い爆走したあげく、恋慕していた女を刺し殺すという滑稽な結果が出たに過ぎないのである。

もっともそうなる前にジャンヌがちゃっちゃと内心ぶちまけておけばこうはならなかった。

故にジャンヌのせいで、彼女のやり残しの不始末に達哉は巻き込まれただけだという。

 

「まったく。君たちは最善を尽くしたというのに最後の最後のであの女がダメにした。物語の主役とはつまり神の玩具。私のお気に入りの駒に夢中になればこの結果は簡単に予測できただろうに。そう言った意味では主役として「コノォ!!」っと」

 

未だ直、挑発を続けるソーンにマシュが盾を振って躍りかかる。

もっともソーンは右手にタクトを媒介とした漆黒の槍を呼び出し防ぎつつ、振るわれた盾を受け流し、体勢が崩れて露になったマシュの横腹に蹴りを叩き込み吹っ飛ばす。

フォローに動いた、クーフーリンと長可も槍を繰り出すが、ソーンはひょいひょいと余裕を持って回避。

そしてマシュを得物を前にした猛禽類の如き笑みを浮かべながら見つめて。

 

「君、ジャンヌ・オルタに言ったよね。”自分がされたことを他人に押し付けてなんになるんですか””痛みを知るアナタが止めなければならない事じゃないですか”とね。でもねそれでは達哉の理解者とはほぼ遠い。彼とて日輪丸で盛大にやっているんだよ。私に対する思念でね。ではその復讐心の根源を分からせるため。彼の心の裡をどうにかしてやりたいと思い願う君たちの為には? 単純だ他者を憎むシチュエーションを作ればいい。作ってあげたのだ。一ついいことを学び、君たちは彼の心を理解できただろう? どうだい? これが他者を心の奥底から憎むということだ。そしていくら君たちが頑張っても所詮は此処においては修繕者でしかない。過去の濁りを解消できるのは当事者たちのみという無常な現実を味わい一つ理解したわけだ。成長できたかな? じゃないと第二を一旦切り上げてここまで来たかいが無いというものだ。」

「―――――――殺す」

 

ソーンの挑発に普段のマシュからは考えられない殺意のこもった声が漏れる。

自分は良い、だがジャンヌを侮辱され、達哉まで笑い、悪意で人を絡めとって選ばせたあげく滑稽で仕方がないと嘲笑い。

挙句お前の成長のためにやっているんだと嘯くのだ。

切れない方がおかしいだろう。

 

「いいね、実にいい、人形から人間らしくなったじゃないか!! いいね一つ成長できたんだ喜べよ、そして感謝したまえよ。」

「誰がお前なんかにぃ!!」

 

マシュが怒りのままに盾を振う。

オルガマリーも宗矩も怒髪天で武器を向ける。

 

「おいおい、そこの所長さんは兎にも角にも、剣豪殿がキレるのは珍しいなぁ。ああそうか。そこまでだったか? いい子だろう周防達哉は、お前の不気味な息子とは違って率直で凡才ながらもしっかり付いてきてくれる子だものね」

「ッーーーーー」

 

宗矩の怒髪天具合から彼の過去を暴き立てていく。

それは少なからず思っていったことではあるだが。

 

「そう思ったこともあるが、アレは私の自慢の息子だ。貴様風情が語るでない」

「おや失敬失敬、――――――っとこれ以上は調整に支障が来るな」

 

確かに剣才に不気味に思った事もある。だが手塩にかけて育て上げた自慢の息子でもあるのだ。

その愛に嘘はないと啖呵を切る。

もっともソーンはさらに抉り込もうとして時間を思い出す。

ゲームはこれからだからだ。

始める前にゲーム機とソフトを叩き潰しては元もこうも無いと言わんばかりにだ。

 

「さて、君たちは私の相手なんかしていていいのかな? このままじゃジル・ド・レェに二人とも殺されるよ」

「「「「「「「「「ッーーーーーーーー」」」」」」」」

 

全員がソーンの言葉に行動を止める。

今は時間が無かった。

 

「ダヴィーンチ、ロンギヌスの傷の癒し方は知ってるはずだよね? 達哉が実践してくれたんだから」

『そうなのかい。ダヴィンチ!?』

『ああ、先の会戦でね、ロンギヌスの傷はいえない、でも逆に言えば傷を上書きすれば治癒できる、傷の部分を抉り取ればね』

『それを早く言ってくれぇ!! アマネ!! 保安部連れて医務室から野外で使用する緊急無菌テントと各種機材に医療器具に万能細胞式生体人工臓器持ってきて!! ダヴィンチは技術スタッフと共に達哉君のコフィン前にそれらを設置して!!』

 

そしてソーンがロンギヌスの傷の治癒法を知っているだろうと指摘。

ロマニの問いに治癒法をダヴィンチが言って、ロマニは即座に保安スタッフと技術スタッフに指示を飛ばし緊急手術の準備を指示する。

 

「特異点崩壊修復まであと5分程度。達哉の体力も何処までもつかな? ほら早く行ってあげなよ、私としても折角整えた舞台があるから死なれても困るしね」

 

次があるから死なれても困るという理由でソーンは道を開ける。

マシュは犬歯をむき出しにしながらソーンをにらみつける、オルガマリーも無論同じで彼女に至っては握りしめた左手拳に指の爪が食い込んで血が流れていた。

 

「・・・行くわよマシュ、皆もそれでいいわね?」

「・・・了解ッッ」

 

オルガマリーの言葉に歯を食いしばってマシュが同意。

全員が達哉のもとへと急ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁはぁ・・・」

 

息が荒くなる、神経がささくれる、気が動転し思考が上手く回らない。

 

「なんでですか・・・」

 

ジャンヌは涙を流しながら達哉の腹部の傷を押さえる。

啓示スキルは機能せず聖女の祈りスキルでは傷は癒せない。

血は止めどなく溢れ続ける。

 

「なんで血が止まらないのよォ・・・」

 

癒せず止血もできない。

槍の効力もあるが止血処置による遅延ならできる。

がしかしジャンヌは近代医療の止血処置なんぞ知る筈もない。

所詮は文盲の田舎娘だ。

奇跡が意味をなさぬ場に放り込めば無力な小娘でしかない。

 

「ああだがしかしこのままいけば。レイシフトが終了しカルデアに帰還し際どいけれど死にはしない」

「貴方は・・・」

 

通路の奥から先ほどの少年が歩んでくる。

両手には二丁の拳銃が握られていた。

 

「なんでこんなことをするんですか?!」

 

ジャンヌが叫ぶ。

こんなことする必要性がどこにも見当たらないからだ。

がしかし少年はいけしゃあしゃあと述べる。

 

「なんでこんなことを? 当たり前だろう? ジル・ド・レェには狂ってもらわねば困る。それが歴史の修繕ってやつだからね。最善も最悪もこの世界は要らぬとおっしゃるから、僕はそのお通りに動いているだけさ」

 

ケラケラと少年は嘲笑いつつ言う。

全てが無かった事になるとはいえ歴史の齟齬は少ない方が、

修繕作業も楽になるという理由でだ。

 

「だから僕は僕の仕事をしているだけさ。でもまぁそれではいい結果という物は出ない。だから選ばせてやろうと思ってね」

「なにを・・・」

「ジル・ド・レェは狂わなければならない、がしかしだね、特異点の犠牲者は全てが戻ってくるはずがないというのは君もしっての通り。だからさ、狂ってしまった彼を終わらせるチャンスだよ。」

「・・・なにを」

「目を背けないでほしいね、君はサーヴァント、人理の守り手だ。知っているんだろう?」

「・・・」

 

そう達哉たちに告げられていない真実を無論。

ジャンヌは知っている。

 

「だから殺して楽にしてやりなよ。そうすれば、余った時間で達哉の止血処置で時間を引き延ばして、治療可能なカルデアまでの時間を稼げる。」

 

だからこそとち狂って暴走している彼を哀れに思うのなら彼を殺せと影は嘯く。

そうすれば達哉は救われるのだと。

 

「ああそれとも、恩師を殺すのは気が引けるから救いの言葉をかけて彼を説得するかな? でもさぁ。これは望んだことだよ、誰よりも君がね」

「何を言ってるんです」

「何言っているんだい? 君には後悔も嘆きも無念もないとおっしゃり。その上で自分たちの辿った結末は変えてはならないと言ったじゃないか。藤丸の方、すなわち主要時間軸でね。だから結末だけは変えないで上げたのさ、僕自ら動いてね。感謝してくれたまえよ?」

「ふざけるな!!」

「ふざけるな? フフフ、アーハハハハ!! ふざけてるのは君だ。先のご立派な倫理を述べた口で向こうでジルの狂気を払う事を言ったよね?」

「――――――」

「後悔も無念もない癖に、なんであんなことを言ったよ。これは君自身のスタンスと矛盾している。あの行動の影響で再び人理が崩れるとは思わなかったのか? 記憶から無くなっているとはいえ無意識領域では覚えている故にだ。おかげで向こう側のジルを狂わせるのに一手間かける羽目になった。故にお前は矛盾だらけだ。しかし口では何とも言える。本当はサ、無慙無愧な人間は存在しないのも確かだ。故に選んで存分にやりたいことをやるがいい」

 

だがしかしジル・ド・レェを説得するという選択肢もある。

だがそれをすれば、止血する存在が居なくなり、

達哉は失血死するだろう。

 

「どれでもいいんだよ、僕としては。ジルか達哉か、個人か世界か、慈悲をもっての死か無慈悲を持っての生か。好きな方を選べばいい、誰かを救いたいという願いを叶えてやったんだ。そして選択の重みを分かっていない君に理解させるためにこの場を用意したんだ。むしろ喜んでほしいくらいだね」

 

そう決意を、あり様を口にして履行した。

であるなら救ってもらおう、彼が大事なのだろうと影は笑いながら。

 

「両者ともに大事ではある、しかし嗚呼、しかしだね君は二人を救えるほど手は長くなく、また知恵も持たない」

 

両者ともに選べる力も知恵も哲学もない、

故に選ぶほかないなのだ。

人は全てに手を伸ばせぬゆえに選ぶしかない。

影は嘲笑い聖女を己が心を優先したがゆえに裏切った騎士は迫って。

兄の様と慕い自分自身を救済してくれた青年は血を流し続ける。

試練である

 

 

―そう、この試練を乗り越えた果てに君は人の英雄としてなれる―

 

 

蝶が言祝ぎを告げる。

これぞ聖女に貸せる最後の試練。

大事な者を認識し救うことによって人の心を知って器となれる超人を生む試練だ。

 

「君はあまりにも多くの事を知らなかった。ジャンヌ・オルタの指摘した通り、殺人に対する責任感が欠如していた。命の重みを知らなかった。今分かっただろう? 君が旗を振って扇動し突撃させた者たちの命の重みが!!」

 

もう此処に至り、命の重みが分かっただろうとLucidは嘲笑う。

血が抜けて冷たくなっていく体、命が失われようとして小さくなっていく鼓動。それに比例して生きたいという思いが強くなり足掻く様。

それらをすべて見届けるという行動の重み、命をすり減らすということはこういう事なのだと。

本当の意味でジャンヌに教え込む。

 

「さて、それを踏まえたうえで、選択しろ」

「ジャンヌゥ」

 

さぁ今こそ選択の時だと影が嘲笑う。

成長が本物であれば。心が本物なのなら。信念が本当の物なら選んで救えるはずだと。

さらに最悪のタイミングでジル・ド・レェも来る。

その手にはロンギヌスの槍だ。

彼を殺して救うか彼を殺さず達哉を見殺しにするか。

涙が両目から流れてジャンヌの視界はジル・ド・レェと達哉を行き来する。

どれを選べばいいのか、答えは二つに一つ、やり直しは利かない、これが他者の命を背負ったうえで選択する重荷であると。

Lucidは口には出さないがカタカタと顎を鳴らして嘲笑っている。

どうすればいいと、ジャンヌは必至に頭を動かすが、どうあがいても出てくるのはこの二択のみ。

だがしかし。

 

「タツヤ!!」

「先輩!!」

 

そこにみんなが来る。

助かったとジャンヌは思い。

 

「ダメダメ、これは彼女に対する試練だ。余人が介することは認められないね」

 

Lucidが本格的に動き出し二丁拳銃を構える。

 

「お前、手出さないじゃぁなかったの!?」

「それはソーンがそういうスタンスで僕は違う。ああ名乗るのを忘れていたね、僕は第一特異点担当のLucidだ。長い付き合いになると思いますれば、よろしくお願いしますよ、星見の方々」

「そこをどけぇ!!」

「いやだよ」

 

オルガマリーが発砲、だが未来を見ているかのようにLucidは完全に対応する。

全員が総攻撃を開始するが結果は変わらない。

 

「そらそら!! 僕を倒して達哉の所に行くんだろう? もっと頑張らなきゃ死んじゃうぜ?」

「いい加減!!」

「黙れ!!」

「嫌だよ、ほらもっと頑張れって、じゃないと僕を倒して彼を救うって選択が取れないよ」

 

援軍は見事にLucid単騎で止められ。

ジル・ド・レェがゆっくりと近づいてくる。

ジャンヌは場を走馬灯のように見た。

ゆっくりと流れる時の中で全員の視線がジャンヌに釘付けになっている。

選べ、選べ、選べと攻め立てる様に。

時間はなく選択の時は近づき。

焔が上がり、うめき声と共に赤が疾駆した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朦朧とする意識だけれど彼は意識が覚めた。

ちらつく槍。

狂気濡れた誰かと、刺されようとしている女性。

光景がダブる、されどあの時とは違い槍を持つ存在を殺してはならないと直感が告げた。

意識は白濁としているが死に身突いた戦闘感覚が最適解を呼び起こす。

 

 

故に

 

「ア・・・ポろ・・・・」

 

アポロを呼び出しながら首筋に造血剤のアンプルを叩き込む。

 

「マハラギダイン・・・・」

 

舌を噛まぬように布の代わりに自身の腕を噛み。

スキルは攻撃魔法を選択。

極限まで炎を絞って腹部の傷に炎を当てロンギヌスの傷を焼き切りつつ火傷で一時的に止血。

 

「ギッ!?」

 

余りの激痛に意識が飛びそうになる。

腹部の傷が焼き切られて聖槍の傷を上書きする。

そして白濁とした意識は傷を焼き切った痛みで完全に覚醒した。

無論一時的な物であっても。十分なものだと。

達哉は足に力を込めて立ち上がり。地を蹴る。

 

「なっ」

 

誰の驚愕だったかは知らない、達哉的にはもうどうでもよかった。

放たれた矢の如く走る。

突き出されるロンギヌスを半身翻して完璧に回避。

そのままジル・ド・レェに組み付き押し倒し拳を振り上げ、思いっきり振り下ろす。

 

「うぉぉおおおおおおおお!!」

 

フラッシュバックする。

姉と慕っていた人が刺された瞬間を。

そして焼ける寺の境内に閉じ込められていた夜を。

だから殴るひたすらに殴り続ける

 

「この「五月蠅い!!」

 

抵抗するジル・ド・レェであるが達哉はそれを許さず。

それに跨り襟首を左手でつかんで達哉は右こぶしを振り下ろした。

それでもジル・ド・レェは気絶しない。

魔導書の自動強化による神経系の異常発達によって薬物をキメた状態だからだ。

だから殴る。

殺すことは出来ない。だから殴り続ける。

そして特異点の修繕が始まり、レイシフトアウトが開始される。

そんな中ただジャンヌは呆然と見ることしかできなかった。

 

「タツヤ!!」

「先輩」

 

オルガマリーとマシュが叫び。レイシフトアウト。

彼等が光の粒子になって消えていく中で。

呆然とジャンヌは彼等を見送り。

 

「ははははは!! クハハハハハハ!! アハハハハ!! これが君の選択の結末だ。選べないという都合の良い答えを選び、他者の貌から逃げた!! 結局、君の思想は綺麗だけれど、中途半端で幼稚で傲慢だ。そんなもの現実の前では意味をなさない。」

 

影が彼女を見下ろし、ジャンヌの顔面を覗き込み。

絶望に目を見開く彼女の最後の希望を。

選べなかった罰として。

影は粉砕する言葉を投げかけた。

 

「死んだかもね、彼。君が選ばなかったせいでね」

 

ジャンヌの貌に罅が入り。

その形相を見て影は嗤う

 

「ククク、おいおいその表情は何だい? 君の自己申告では憎悪や無念に悔恨と言った感情はなかったはずじゃないか? 何を怒る?  その表情そっくりだよ。舞耶を失った時のジャンヌ・オルタとね!!」

「お前・・・お前がッ!!」

「感謝したまえよ? 君はこれで人間に成れたんだ。都合の良い物に縋り封じて目を背けてきた感情を開封したことによってね。他人に自分を見せる事、選択の重みを理解し君は人として成長したんだ。喜べよ!! ククク、アハハハ・・・ アーハハハハハ!!」

 

世界が崩れ再編し修復される。

そんな中で聖女を演じていた少女の慟哭と憤怒が入り混じった叫びは虚しく響き。

誰にも届くとはなく、影がそんな様を見て嗤っていた。

そしてカルデア管制室

 

『ロマニ医療主任、達哉及び所長とマシュの完全レイシフトアウトを確認しました!!』

「達哉くんのコフィンのキャノピーの強制排除!!」

『了解!!』

 

通信機器を通じて管制室に指示を出し。

達哉のコフィンキャノピーを緊急時における強制撤去を遂行する。

ボルトロックの少量爆薬で排除され。

キャノピーがすっ飛ぶのを確認したロマニはアマネやメディックに医療班の人達と共に達哉をコフィンから引きずり出す。

 

「造血剤投与!! 血液パックと生体人工臓器準備!!即効性の麻酔を使う。オーヴァードーズに注意、所長とクーフーリンはそのまま治癒魔術を維持してくれ!」

 

事態が事態であったため。

受け入れ準備は整っていた野外用の無菌室や医療機器はセットされている。

それでも致命傷だ。

ペルソナ使いだから持っているだけの話で、普通なら失血死である。

そして通常の施術では癒せない。

患部を切除しその代わりとなる、万能細胞を培養して作った魔術臓器を移植しなければならないからどうしても長丁場になる。

故に、輸血と同時に造血剤の投与。

持たせるために、オルガマリーとクーフーリンの治癒魔術が必要になる。

ダヴィンチは麻酔医として参加だ。

宗矩はロマニの助手として参加。

 

「俺たちはどうすればいい!!」

「薬剤やら資材がまだ完ぺきに持ってきていないんだ。スタッフの指示を聞いて此処に持ってくれ」

「わかった!!」

 

ロマニは指示を飛ばす、ダヴィンチは危機をにらみつけ麻酔と造血剤に輸血の量と格闘を開始。

マシュとオルガマリーも必死に声を掛けながら治療に奔走する。

マシュは力仕事で長可と機材や薬剤運搬。

オルガマリーはクーフーリンと共に治癒魔術による手術のサポートだ。

まず火傷をすべて切り取る、ロンギヌスの呪いもあるから万が一も考えて、呪いを切り取る意味でも少し過剰気味に切り取らねばならない。

そして彼の体力も考慮するなら万能細胞から培養された臓器移植も並行でやっていかなければならない。

長くなりそうだとロマニは思いつつメスを走らせる。

こんな事が続くのかと誰もが今は思えない、最善を尽くし何が何でも達哉を救うべく皆が奔走するので一杯一杯だから。

故に今回の特異点修復は勝利と言えるものではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「消えると思っていたのだけれどね・・・」

 

ジャンヌ・オルタは自らに与えられた座に座り、目の前に剣を突き立て柄尻に両手を乗せてぼやいた。

彼女はやり過ぎてしまったのである。

特異点という状況を生み出し、ティエール以外を陥落せしめ、竜と亡者と悪魔を従え。

フランスの一角を消し飛ばしかけた。

如何に修正力であっても、噂結界という無意識の力を利用しその恐怖は人々の無意識下に根付いてしまい修正しきれず。

憎悪を持たないジャンヌ・ダルクの代用品として、人々が恐れる怒り狂う理想のジャンヌとして彼女は承知されてしまった。

主要時間軸とは違い徹底的すぎる殺意を刻み込んでしまったがゆえに永遠の座に至ってしまったわけである。

 

「どうです? 座に至った気分は」

「最悪よ。糞野郎」

 

ジャンヌ・オルタの前に影が現れる。

ご丁寧にジャンヌ・ダルクの姿でだ。

無論、影の化身である以上、ジャンヌ・ダルクのうり二つであるが。

両目の瞳は黄金色に、表情は嘲りと皮肉で歪みまくっている。

 

「ですが哀れですよねぇ、貴方も終わらせると言いながら永劫の座に来てしまうとは。貴方の戦いは終わらない」

「別に良いわよ。復讐なんて悍ましいことをやっておきながら、美しい終わりなんて求めていないもの」

 

影にそういう。

第一に復讐なんぞ遣らかしておいて、救いなんぞ求める方がおかしい。

故に破滅することは知っていたし理解していた。その上で走って。

満足は出来た。であるなら上等という物であろう。

故に彼女はぶれない。

納得は出来たのだから。

 

「だから敗者は敗者らしく。今は沈黙するわ。あの世界で復讐は彼等が生きている限りはしない」

 

彼らは自らの手で道を切り開いたのだ。

自分という驚異を跳ね除けて進むことを決意しているのだ。

故に敗者がまた出しゃばって敵対するなんぞ恥の上塗り等できはしない。

彼らが彼等であり続ける限りは、あの世界に出張ることはない。

だがしかし。

 

「最も他は別だけれどね。例外はないわ全て殺す一人残らず。」

 

他は別だ。であるなら望むところだ。呼び出された世界悉くを滅ぼそう。

復讐に濡れたジャンヌを望む時点でそういう願いだろうから。

であるなら自分の願いの為に呼び出された時点ですべてを殺す。

終わるまで殺し続ける。

だから今は見ているだけにとどめると。

 

「こんな酷い現実があったとしても?」

 

影が嘲笑いながら”起こるべき未来”を投影する。

だがジャンヌ・オルタは動じもしなかった。

 

「それは可能性の一つでしょうよ、たとえ未来が決まっているにしても。複数用意されているのがこの世の理でしょうに。都合の悪い結果だけを見せてこの結末に行くかもという不安を煽って引き金を引かせるのがあんたの常套手段。そうはいくか」

 

その手には乗らない。

ジャンヌ・オルタはそう一蹴する。

まだ賽子の出目は決まっていない。

だというのに決めつけてまたであるのはさっきのこと以上にナンセンスであると切り捨てる。

 

「そうなったとしても、それでも彼らは生きるでしょう。あの世界に手は出さない」

 

せめて彼らが生きている間だけは手は出さない。

 

「ならば、自分のやったことくらいは清算してもらわないとね」

「なに」

 

座から視界が一転する。

そこはかつてジャンヌ・オルタが生きていた”世界”

 

「これだけ私の力を使ってこの程度で済むわけないでしょう、特に貴様はあの幻想という人生で向こう側に縁を作ったのだから」

「・・・まさか」

「そう言う事だよ。あの幻想は放棄された結果の世界、今のところ。人が一応いるからパージが保留されているジャンクデータです。この世界では異聞帯と言うのでしたか? 完全に滅びた周防達哉の世界とは違い、一応は生きているのだ。故に自らを一個生命として確立させ、噂結界という人の心の力を使って、さらにはペルソナを取り戻したことによってアナタの記憶データはこの世界の無意識下に広まってしまった。そしてこの世界の人々はパージされずに都合のいい惰眠を貪れる世界があると認識し、アナタが広げた門と世界の境界線があやふやである事を利用して、君が生きた世界を呼び寄せてしまった。」

 

達哉の世界は完全に行き止まりで放棄されたから来ないだけで

だがジャンヌ・オルタの体感した世界は、一端の保留領域にとどめられている。

故に向こう側の理を噂結界という力媒体を過剰使用したことによって、ジャンヌ・オルタの記憶から都合のいい世界があると無意識下に認識され呼び寄せてしまったのだ。

普通ならばこうはならない、人理焼却下という現象のせいで世界の枠組みがあやふやであるため起きてしまった事象と言えよう。

そしてジャンヌ・オルタの前には大量のシャドウと、この世界の末期に生産されたかつての親友の後継機たちが大量に存在している。

 

「―――――――――」

「ニャルラトホテプよりジャンヌ・オルタへ。冠位指令を発令、異聞帯最後の人である結城理の排除ならびに異聞帯及び神を殺せ」

 

人は眠りつき影となって這いずっている異聞帯が侵食を開始。

止める方法はただ一つ、この世界を維持する月の神を殺すほかない。

 

「望むところよ」

 

そしてジャンヌ・オルタは嗤った。愉悦に憤怒に悲哀に染め上げた悍ましい笑みを持って。

嘗て人だった者たち。そしてその人によって生み出されたかつての親友の量産品たちを睨み付け。

ペルソナを両手に呼び出す。

願っても無い、ああ感謝さえしようとジャンヌ・オルタはたった一人、機械と影の軍勢へと突撃した。

今度こそ、理想を抱くお前たちに現実を叩きつけてやると

 

彼女は止まらない

 

「――――――――――――!!」

 

剣を振い、殺し続ける。

 

 

 

全ての悲劇が終わるまで。

 

 

 

 

 




第一特異点終了!! ここまで来るのに長かったッッ!!
惨劇の第一特異点ですが、第二ではたっちゃん達が完勝するのでご安心ください。



ジャンヌ (鉄血第一期でマクギリスに裏切られた時の愕然としたガエリオと同じ表情)

ジル  口の端から血を流して気絶

アルトリア「これは酷い・・・・」

エミヤ「嫉妬と隣人の裏切り・・・うっ頭が?!(エミヤンの可能性の一つにニャルは同じ手を使った)」

フィレモン「やはり駄目だったか(クソデカ溜息)」

ニャル 「m9(^Д^)プギャー  だが貴様等も対岸の火事ではない、最善を尽くせないなら容赦なく今回の様に刺すからな」


英霊一同「え?」

ニャル「あwwwwwたwwwwwりwwwwwまwwwwwwえwwwwwwだwwwwwww。達哉だけではない私は私自身を含めて嘲笑う存在だ。貴様らも試練の中だとしれwwwwww 良い空気吸いたきゃ、AUOやら邪ンヌやらフローレンスばりに努力するか、海賊共みたいにそれが己だと認めてやる覚悟をキメるんだなwwwwwwww」








ニャル「第一に原作からして悔いありまくりだったしな。後悔も嘆きもないなら原作の第一特異点のラストですました顔であんなこといわねぇよw なんせやり切った上で納得したんだから、ジルの狂気も容認したと言う事だからなぁ。結局後悔してんだよ、口では何とでもいる者さ。だから都合の良い口触りの良い言葉と概念に身を任せた結果こうなるんだよ、普通はwww」

ニャル「そして敗北を味わうには取り返しの効く初期段階が一番いい(ワイングビーしながら)」

ニャル「ゆえに。これでカルデアは学んだはずだ。彼がどういう戦いを一線をギリギリのところで走ってきたのをな」

ニャル「次は上手くやるんだなwwwwww」

ニャル「と言う分けで。次はネロちゃま、お前だ」

ネロちゃま「!?」

ニャル「なにが、!?だwwww。エクストラやらアンコールやらで言った言葉はあるようなぁ、アレが真であれば。私程度の策謀なんぞ簡単にしのげるだろうwwwwwww」


悲報 第二特異点 大崩落する模様


あと異聞帯が進行。
全人類がシャドウ化した世界が、アマラの力を使いまくったジャンヌ・オルタが門を開いてしまった事や都合のいい安息があることを型月世界住人が認識した為、浸食を開始。
と言っても先も言ったとおり破棄すん全だったため異聞帯規模としては小規模。
東京くらいの広さ

ニャル「たっちゃんたちが来るまで足止めよろしく♪」
邪ンヌ「今度こそニュクスムッコロ!!」
ニャル「楽しそうで何よりですwwwwwww」

邪ンヌもまた噂結界を使った影響で人々に認識されているため。憤怒し憎悪し復讐を敢行するというジャンヌの理想図として認知されたため英霊の座に正式就職と言った感じ。
異聞帯特異点絶対殺すウーマンの誕生である。
なおたっちゃん達以外の世界に呼び出されようものなら。誓いの範囲外なので皆殺しを行う模様。
しかも疲弊もないので全盛期全開モードで呼び出されるという悪夢。






という訳でインターバル数話挟んで第二特異点攻略に入ります。
肉体的難度は下がりますが、精神的には第一よりニャルが盛大に絡んでいるためキツイ感じで行きます。
第一では選べなかったマシュには選んでもらいますし、所長にも選択しが付きつけられる予定です。

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