Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです   作:這い寄る影

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青春期を何もしないで過ごすよりは、青春期を浪費する方がマシである。

ジョルジュ・クルトリーヌ


三節 「遅れてやってきた青春」

時間をさかのぼる。

具体的にはローマ市が樹で覆われる一時間前くらいの事であった。

ローマ連合宮殿でレフは苛立っていた。思ったように事が進まない。

ネロ軍が勢いを取り戻したがゆえに戦線が硬直状態へと移行しているのである。

眼で見てみたがネロの最も信頼する宰相であるソーンは姿形もなく。

補足不可能でネロとソーンを狙った暗殺者は返り討ち。数少ない生き恥晒して帰ってきた奴は例外なく精神を病み自殺した。

おかしい、なにかがおかしいと苛立ちながら廊下をあるいていると気づく。

不自然なほどに誰もいないことにだ。

馬鹿なとレフは人除けの結界かと、自分の探査能力を超えられる者がいたことに驚愕しつつ。

探査術式を張り巡らした。結界などは張られておらず単純に誰もいない異質さが場を覆っている。

だがそれは結界などの効果ではない。

 

―とてつもなく恐ろしい気配がする―

 

レフの脳裏にそんな言葉が浮かんだ。

生物は本能的に霊的にもとどまってはいけない場所という物を察知する能力がある。

言うなれば人が本物の霊地に踏み入ってしまった境界線を越えた感覚。

故に今この場所は無意識に人が避ける危険地帯へと変貌していることに他ならないのだ。

存在するだけで近づくだけで拙いと思わせるナニカがいるのだと。

だがその恐怖される側にカテゴライズされる自分が恐れるなどあってはならぬと憤りを感じた時である。

 

「鈍いね」

 

声、鈴の様な声に蠅音が混じるような声が響き渡る。

レフがハッと前を見れば、

そこにはゼットがいた。

レフは思考する、ロムルスの連れて来た悪魔召喚師の一族のただ唯一の生き残りで放浪者であるとのことだった。

つまりただの人間というカテゴリライズなのだが。

今ゼットは明らかに人間ではないナニカであった。

だが視覚や探査魔術だけは人間と伝えてくる。

雰囲気だけが異様だったのだ。

 

「誰だ貴様・・・」

「ゼット・ゼブ、君たちのオリジナルの一つさ」

 

オリジナルと言うものの

何処をどう見ようが人間でしかない、基本設計、魔術回路の数と質。この時代の魔術師としては優れている物の。

あくまで人間の範疇でしかない存在が自分たちのオリジナルを名乗るなどおこがましいにもほどがある物だ。

レフが腕を振るう。

それはゼットを殺せる魔力弾頭であった。

彼は避けるも何もせず甘んじて受けて頭部付近で爆発する。

これで頭部のなくなった死体が一つ出来上がると思っていたのに。

ゼットは健全だった。傷一つすら負っていなかった。

 

「なんだい? この程度? 本物のフラウロスがお前を見たらもう彼の腹の底だ」

「ッ・・・貴様なんな・・・!?」

 

ゼットの挑発に二発目の魔力を射出しようとするものの。

レフが気づけばゼットはレフの横を通り過ぎていた。

そしてゼットの右手には金色の聖杯が握られている。

いつの間にと振り返りつつ腕を振り抜こうとするが、レフの右手は宙をまってボトリと床に落ちる。

 

「これはもらっておこう、もう君はこの舞台に必要がない。参加できたと仮定しても、君はオルガマリーに殺されるか、同行を許されたところであの牢獄に閉じ込められて何もできないからね」

 

聖杯を弄び

いよいよ異質な空気が濃くなっていく。

昼間だというのに影が濃くなり虫・・・あるいは蠅の羽音が酷くなってくる。

拙いと思い、伸びた影が足に触れて。

右足が内側から食い破られた。

 

 

「がぁぁあああああ!?」

「仮にも魔神を名乗るならこの程度で叫ばないでよ、情けない」

 

ゼットはそういって嘲笑した、たかが腕の一本や二本程度、ちぎれただけで泣き叫ぶのは魔に有らずだ。

拙いと判断しレフは右足を切り離し無様に叫びつつ倒れ込んだ。現在進行形で右足の内からナニカが上ってくる。

切り離された右足は蛆と蠅に食い荒らされ、さらには即座に真っ黒に腐食していく。

影が伸びてくる。

取り囲まれていた。

影に触れただけでこうなるのだから言わずもがなと言う奴であり。

もう目の前の存在を認識のままに人間と思うようなことは流石にしなかった。

身命を賭して屠る必要のある魔性であると認識し、

レフは魔神柱としての本性を現した。

瞬間、レフの肉体が膨張し、肉塊の様な柱が凄まじい魔力を放ち影やら建物やらを突き抜けて顕現する。

それでもゼットは左手を懐に突っ込み、右手で聖杯を弄びながら、それを見届ける。

 

「へぇ、これが君たちの本当の姿なんだ。悪魔というよりはスパコンの筐体に見えるね、まぁ悪魔と言うよりシステムとして僕らを模倣して生み出された君たちには相応しい姿かもしれないけど。」

『黙れ、黙れ、黙れ、不明なバグめ、我が焼却式で魂まで消えると良い』

 

もっとも言われたくない例えにレフは激昂した。

だが吹っ飛ばされた影が胎動しレフに再び伸びていく。

このままでは拙いと判断し。

且つ、ゼットが力を使ったせいか、彼自身の隠蔽が解けかけており。

レフはゼットの中身を少し見た。

薄く辛うじて見える程度だが、昆虫のような光の翼を生やした巨大な蠅の様な影が蜃気楼のように揺蕩っている。

拙い、あれは拙い。存在してならぬ者だとレフは認識し。

全てを消し飛ばす意味を込めて全力を放った。

 

 

―焼却式フラウロス―

 

普通のサーヴァントであれば霊基を一瞬で焼き尽くし蹂躙する絶対の炎、範囲も広く、温度的にも物理的消去能力も優れている。

そんな人間なら余波だけで死ねる様な狂う炎をゼットは可愛げな赤子のじゃれつきを見るかのような瞳で見て。

 

両手の指を鳴らした。

 

それだけで焼却式フラウロスがその場で魔神柱を巻き込みながら爆発。

自らの攻撃で瀕死になるとかいうフザケタ様相を呈する。

無論、ゼットは無傷だ。

ただただ嘲笑うかのようにレフを見ている。

レフからすれば今起こった攻防自体があり得なかった。焼却式に一瞬のうちに介入し乗っ取りを掛けて、

指向性を操作し炸裂させたのである。

最早人間業ではなく、神にも等しい所業ではあるが。

相も変わらず、ゼットはレフの眼には人間としてしか映らない。

 

「君たちは個にして群だけど、並列化の影響か厳密には意識を統合した個体だ。そんな君たちがいくら議論を重ねても、鏡に向かって言葉を投げているのと変わらない、そんなんで自分は間違えていないとなぜ検証できるんだい?」

 

ゼットが彼の本体に向けての皮肉と批判を送っている間にも。

それでもレフ、フラウロスはその巨躯をしならせ立ち上がり、

その無数の眼光から攻撃を射出するものの。

 

「弱い、弱すぎるよ、お前達、それで世界を変えられると思っているのか?」

 

ゼットには傷一つすら付けられなかった。

傷つけられるはずもない、彼は本物の悪魔なのだから。

 

「無理だね、力も無ければ事の本質を理解する頭も無い。だから君たちは”獣”なんていう影の駒になり下がっているのさ。現に――――――」

 

そして第一、ゼットは最初からレフにそこまで構う気はなかった。

何故なら、殺すなら最初の段階で飲み込んで消すか。自身の権能で消し飛ばしている。

そうしなかったのは自分の上司からの命令があるから。

本来ならレフには手を出す予定はなかったが、

緊急事態という事もあってロムルスにそれを説明したうえで今回限りの契約を結んだ。

自分の業務に抵触しないギリギリの干渉である。

つまり、これが彼の現状における最大の譲渡の結果であり。

 

「頭上注意だ」

 

その契約内容はレフの本性を引きずり出して、完全にゼット自身に意識を釘付けにして隙を晒させることである。

現にレフの頭上、扇の如き槍を構えるはロムルスである。

既に宝具を解放していた。

レフは気づくがもう遅い。迎撃手段は間に合わず、この身体では回避能力はないのだから。

 

「すべては我が槍に通ずる!!」

「キッ」

 

レフの頭上を押さえていたロムルスによる全力の宝具行使。

一時的な仮契約とはいえゼットから送られる魔術師では考えられぬ魔力量に、その宝具は規格外の規模を持って炸裂。

それは一瞬にして大樹となり、巨大な質量を持って、魔神柱フラウロスを文字通り圧殺せしめた。

最後にナニカをレフは言おうとしていたが、その断末魔は成立しなかった。

ハッキリ言えばゼットはレフの始末に大仰に乗り出せないでいた。

本性を表せば契約違反となるからだ。自らが仰ぐ明星と、明星と取引した影とのだ。

故にロムルスを説得し仮契約までしてレフの抹殺を遠回りにこうやって行う事になったのだ。

 

「助かった、慈雨と雷の神よ」

「それ・・・嫌味で言っている?」

「否、純粋に賞讃である」

 

悪魔の成り立ちからしての前の異名を呼ばれたことに思ってもいないのに嫌味かとゼットが問いただし。

されどロムルスが返したのは賞讃と礼だった。

 

「だが、アレを知っていたのなら話は別である」

 

ロムルスの瞳に初めて殺意が宿る。

ローマ市の空がガラスが砕けるように崩落し闇の帳を降ろし始めていた。

ゼットは聖杯をロムルスに投げ渡しこともなげに言う。

 

「知るわけないでしょ。僕が受けた命は緊急事態に際してなるべく手を出さず、ロムルスのやる気を出させるようにしろって事だけだ」

「そうか」

「随分簡単に信じるんだね?」

「貴殿の眼は嘘を言っていない、それに悪魔とは契約に真摯であるのだろう?」

 

そこでようやく、仕事がひと段落したことにため息を吐くゼット。

彼の仕事は先ほども言った通り緊急事態が起こった場合にロムルスのやる気を出させるのは無論だが。

あの浸食固有結界ともいっても過言ではない噂を媒介とした獣性の発露を食い止めるための聖杯奪還を行いロムルスに預けることまでが第一段階であり。

第二段階はアマラ回廊から介入せんとする者たちと第六から介入を強める天使へのけん制がまだ残っている。

 

「さて」

「ぐ」

「君本当にしつこいね」

 

下半身が消失し猶も逃げようとするレフをゼットは見逃さなかった。

潰される瞬間に魔神柱としての形態を解除しギリギリの所で生き延びたのである。

もっとも霊基の大半が圧殺され、虫の息と言った様子であるが。

それを見下ろしつつゼットが行かせまいとレフの前に立ちふさがる。

 

「最後に君たちの本体に伝えておいてくれよ、人間の本質を知りたいのなら人間を見ているだけではいけないよ、人間が何を見ているのかに注目しないと、今回のように容易く足元を掬われるとね」

「知るか・・・貴様は此処で死ぬのだ」

「あのね―――――」

 

そう言った瞬間、レフの霊基が爆発した。

大爆発したのである。

プライドの高い連中だからしないと思い込んでいたのがいけなかった。

一瞬ではあるが、光が広がり、爆破を包み込む。

だがそれの発動が遅かったというのもあって。見事に宮殿が吹っ飛び。

その周辺は呪詛を含んだ魔力に汚染された。

だというのに二人は無傷だった。

ロムルスの霊基強度では消し炭になるレベルだが咄嗟にゼットが庇ったから無事だった。

無論、冠位を持ち出していればロムルスもこの程度の爆発は余裕で耐えられていたが。

 

「ちぃっ、油断しすぎた。僕もなまってるのかなぁ・・・。それよりも時間がないよ、君が行かないと疑似創世が始まってしまう」

「心得ているが・・・」

「この状況は僕と孔明の方でどうにかしておく。早く行きなよ、じゃないと本当に何もかも台無しになるよ」

「・・・すまぬ」

 

そのやり取りの後ロムルスは飛翔しローマへと向かった。

その後十分もしないうちにローマは大樹の天蓋によって封鎖されることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして現在。

達哉は困っていた。非常に困っていた。ものすごく困っていた。

 

「ぬぐぉぉぉぉぉ・・・」

 

低い声で呻きつつ脱出を試みる。

何から? 決まっている、自分に関節技やら組み付きを掛けているマシュ、オルガマリー、ネロの三人からだ。

昨日の宴会は最後まで何とか達哉は記憶を保っていた。

マシュは間違ってコークハイを飲んでしまい、気づいたときにはもう何本も開けており。

オルガマリーとネロは完全に出来上がっており、飲んでいる者もストゼロに完全シフト、泥酔状態である。

エリザベートと孔明は愚痴の言い合いで盛り上がっていたし。

クーフーリンとダレイオスは腕相撲を始めていた。

書文と宗矩にアレキサンダーは長可とカエサルの飲み対決にもりあがっていた。

そんな連中に厄介絡みされては生来酒が強いのもあるのだろうが、そんな状態では酒を飲もうがそりゃ酔いきれないわけで。

兎にも角にもお開きとなったのだが。

ネロが一人で寝たくないと駄々こね出したので自分たちの部屋に招待となった。

達哉は頑張って三人を担ぎ部屋に戻った。

部屋にはトリプルベッドがあったが男である自分は床で寝ると言っていたので、

実際に使うのはマシュとオルガマリーのみとなった。

誰が好き好んでラブコメに行くのかと言う話である。

だが、今回はそれが功を奏した。トリプルベットは三人が寝て丁度いいサイズだからだ。

ひぃこらと言って担いできた三人を寝かせるにはちょうどいいサイズである、

マシュ、オルガマリー、ネロの順に羽毛を扱うように三人を寝かせた達哉は、現地調達した水をアポロで熱消毒してビャッコでキンキンに冷やし、飲んで酔いを落ち着けてから寝ようと思い、ベットを背にした瞬間である。

後ろから手が伸びてきてベットに引き摺りこまれ、仰向けに倒れ何かの感触、おそらく三人の内の誰かの額か顔面に後頭部を打ち付けてしまい

達哉も酔っていたということもあって気絶。

現状に至るわけである。

美女三人に組み付かれる、大の男なら夢であろう。なんせ合法的に女性との接触が可能だからだ。

現に胸、太腿 腕が接触してきているのである。

だが件の三人は何かしら強化補正が入っているのだ。

オルガマリーはペルソナ補正

マシュはデミサーヴァント補正

ネロは自らのシャドウの影響か身体能力が英雄クラスにまで底上げされている、

さらにオルガマリーとマシュはアマネや宗矩、書文にCQC 組み技、寝技を直々に仕込まれているのだ。

もし現状の三人に組み伏せられたのが達哉以外の男性であれば全身複雑骨折の変死体か締め上げられての窒息死体の出来上がりというわけであり。

現に達哉が目を覚ましたのもその苦しさと痛さからである。

抜け出そうにも、流石に四方八方から固められては達哉も脱出のしようがない。

だから、もう殴られてもいいから誰か起きてくれと固められた首と喉を必死に動かしモゴモゴと低い唸り声を上げていた。

幸いに首の周辺は緩めな拘束だから良いが、他は違うなんか骨が軋み上げてる。関節が地味に痛い。

均衡が動けば壊す方向へと流れていく。

だから必死になって唸っているのだ。

 

「マスター、皆が呼んで・・・・」

 

そこにシグルドとブリュンヒルデがやってくる。

余りにも起きてくるのが遅いので迎えに来たらしい、ちなみにこの眼鏡夫妻、酔った勢いのままにあの後も楽しんだのか。

シグルドの方がなんか血まみれだった。

ブリュンヒルデは恥ずかしそうにしつつシグルドの後ろから部屋をのぞき見している。

助けが来たと達哉は内心小躍りした。

唸って必死に右手を伸ばし助けを求める。

二人はそんな達哉の様相を見て、シグルドとブリュンヒルデは顔を見合わせ。

何度か頷き合った後。

 

「マスターたちもお楽しみの様子だったようだ。行こうか我が愛よ」

「そうですね、シグルド、邪魔してはいけませんし」

「ふごぉぉぉぉ(違う!!)」

 

お楽しみ(意味深げ)と盛大に二人は勘違いした。

長可がいれば『いやいやテメェラみたいな特殊性癖夫婦じゃあるまいし』と突っ込みを入れていただろう。

なお長可は完全に昨日の飲み合いでぶっ倒れていた。

つまり彼は此処に来ない。

完全なる詰みであった。

 

 

 

 

 

「で遅れたわけね」

「すまん」

 

そこからさらに一時間ほどでようやく達哉たちは玉座の間に来たのだ。

アルコール度数の高い酒を入れた何名かは頭を痛そうにしている。

全員二日酔いと言う奴であった。

だが達哉の顔にはひっかき傷やらビンタの後があった。

あの後目を覚ました三人から解放されたは良いが、反射的に行動に走ったオルガマリーとマシュには案の定こんな目にあわされたが。

無論、すぐに達哉がこんなことをするはずがないと気づいたオルガマリーとマシュは引っ搔いたことビンタしたことを謝ったが。

ネロだけは達哉に何するわけでもなくキョトンとして、美男美女が複数交わるのは普通じゃないのと言ってのけた。

性が奔放のローマ人ならではの認識であるが、間違っても彼等はしていないのである。

本当に只達哉は昨晩貧乏くじを引かれてこんなことになっただけなのだ。

 

「シグルドから聞いたぜ? お楽しみだったんだろ? ならもっとゆっくりしていてよかったじゃねぇか」

「いやしてないしやってない。酔っぱらっていた彼女たちに組み伏せられてただけだ」

「・・・達哉、そりゃそうだがそこまでされて食わねぇってのも問題だぜ、男としてヨォ」

 

クーフーリンに達哉は遠回しにお前は不能か不感症かと言われればさしもの達哉も頭を抱えつつ。

 

「いや俺のはちゃんと起つし、ちゃんと女の子とか好きだからな・・・ でも女の子を襲うマネはいただけないだろうが」

「身持ちが硬いことで」

「皆が軽すぎるんだよ」

 

ある意味現代と古代の価値勘違いと言う奴でもあった。

今では身持ちが硬い事が美徳とされているが。

昔は出生率も低く数を撃たなければならなかったし、娯楽も少ない時代だったのだからしょうがないというのもある。

もっとも避妊具や避妊方法の発達もあって現代でも身持ちが硬いのは美徳と言う価値観が崩れつつあるのは達哉はしらなかったりするのだが。

一方の加害者三人組は。マシュは顔を赤らめて両手で頬を負押さえつつ「先輩にあんなことを、あうぅぅぅ」とうねっているし。

オルガマリーは顔を赤らめつつ達哉から顔を背けていた。

ネロはそんなの関係ねぇとばかりにそれよか二日酔いの方が問題だと頭を抱えていた。

まぁ皆そうなのだが。

 

『皆二日酔いが酷いみたいだから。アルコール分解剤送っておくね。アマネの伝手で手に入れた強力な代物だから常用は出来ないよ、次からは気を付けるように』

 

と言う分けで全員、特殊部隊向けの極秘開発され試験運用されていたアルコール分解剤を投入し。

朝食となった。

 

「なぁなぁ、オルガマリー、これは何なのだ?」

「クロックムッシュよ」

 

オルガマリーが持ってきた朝食にネロは眼を輝かせた。

当初はエミヤが作ると言ったのだが、この男、日ごろ鬱憤がよほど溜まっているからか料理で発散して凝った物を作りかねないとして。

オルガマリーが一人で作った。

もっとも手間のかかる物でもないし、持ち込んだ食材で作っているので衛生面も気にしなくていい。

彼女が作ったのはクロックムッシュと言う物だった。

トーストの一種である。

パンにハムとグリュイエールチーズを挟み、油代わりのバターを引いたフライパンでカリカリに表面を仕上げ、表面にベシャメルソースを塗ってパンが冷えないうちに刻みチーズを乗せて完成である。

西洋人のネロであればとっつきやすいであろうとしてオルガマリーがチョイスした。

チーズもたっぷりで、これ一つで昼食まで持つから手間もかからない。

朝食にしてはお重めだがアルコール分解剤の影響で皆が問題なく食べられた。

 

「さて腹ごしらえもしたし健全な話と行きたいのだけれど」

「私としてもそれは同感ね」

 

健全な話とは。

誰がどう行動するかについての事である。

今やマッシリアはエリザベートの政治方針によって拡大傾向にあった。

人手は全盛期に比べれば少ないと言われているが。

それでも一都市としては多いのである。

故に前監督官が放置気味にしていた政治政策を断行する羽目になって現状に至っているというのが現状である。

政治と言うのは近代に連れて清廉されていている一種の体系であり。

エリザベートはローマより先の人間であるし、特異点チェイテでは政治本を頭痛めつつ読み漁ったという事もあって。

この時期には考えられぬ合理性で動いている物の。

その分負担が三倍となっているのだ。

エリザベートとしては是非にも欲しい存在がオルガマリーなのである。

もっとも本人からすれば絶対に御免被ることでもあった。

普段も書類仕事をしているし前の第一特異点でも開戦前は書類仕事に会議での説得交渉までやっていたのである。

第二に来てまでしたくない感が犇々と出ていた。

 

「あのなエリザよ、余も手伝いたいんだが」

「「「「「「駄目に決まってるだろ」」」」」」

 

そこで声を上げたのがネロである。

自分も何か手伝いたいと言いだしたが、全員が却下する。

鬱病の初期段階だ。そんなやつを働かせていい結果が出るとはお思えないし。

何より本人の為にならないのだ。

残された時間は最大で二週間、最小で一週間である。

鬱などの精神的病理が悪化しては堪った物ではない。

直すまでとは言わずとも立ち直るくらいになってもらわねば、それこそ保安部が緊急時に使うコンバットドラッグを使うコースになる。

それは拙いので皆却下するというのは当たり前だった。

 

「余が無能だからか?」

「ちがぁう!! アンタ今ビョーキなの病気!! 精神由来のね!! だから今は余裕のある私たちに任せて。大人しく休んでらっしゃい!!」

 

遠回しに言っても伝わらないとしてエリザベートはぶった切る勢いでネロに言う。

鬱の初期症状が出始めているので、故に出始めの治療がものをいうのだ。

ただでさえ治療に時間が必要な病気なのに一週間から二週間そこいらでどうにかしなきゃならないのだから。

ネロを政治にかかわらせるのはアウトである。

此処が踏ん張りどころだとエリザベートは気合を入れ直してきぱきと指示を飛ばす。

 

「オルガマリー、そっちの人員は借りるわ、悪いけれど結構ヤバめの案件に対応しなきゃならないから」

「ヤバめ?」

「ええカルトよカルト」

 

エリザベートは言った。カルトであると。

この時期のカルトと言えばまぁ某宗教なのだが。

 

「そっちとは別口のカルトよ。ローマがああなった噂のインフルエンサーを担っていたカルト」

 

それとは別口のカルトが出来ているらしい。

故に此処に来た当初から衛兵や密偵が多く街の中で見られたという事だった。

それに関してはカエサルが説明を引き継ぐ。

所謂、ネロを勝手に祭り上げたカルトであり永遠の都を目指している集団であるらしい。

当初は小さく木端のような集団だったが。特異点化とソーンの断頭を気に一気に勢力を増しているとのこと。

現在は予言が成就したということもあって事態が鎮静化・・・するわけもなく。

樹へのアクセス手段を模索しテロリストと化しているとのことだった。

勧誘も悪質である上に。

 

「一部の人間はペルソナを使えるみたいだ。取り押さえるのにも苦労物だよ」

 

一部の人間はペルソナを出せる麻薬までキメてまで抵抗してくる始末。

鎮圧に赴くのはダレイオスの不死隊でなければ鎮圧できぬ事態になっており手を焼いているのが現状だった。

故にカルデアの手を借りたいということである。

それにはオルガマリーも文句はなかった。

 

「と言うことで、達哉、マシュ、オルガマリーはネロとマッシリア観光を楽しむなり。カルデアから送られてきた娯楽品とかで楽しんできなさい」

「だが「悪い頼む」

 

猶も食い下がろうとするネロを遮りつつ達哉はエリザベートの好意に乗っかった。

達哉もマーラ事件とか同室事件とかで、気が休まる時間がなかったからである。

自身も休めて切り札となるネロも休めるのならそれに越したことは無いとしてである。

昨晩の事もあって寝た気もしていないし。

正直休みが欲しかったのだ。

サーヴァントの皆には悪いがそういう事もあって了承したのだ。

無論皆がそれを肯定した。

と言う分けでマスター勢とネロは休暇である。

だがさっそく問題が発生した。休暇と言っても何をすればいいのか分からないのである。

時代背景的にマスター勢の趣味はこの時代にはない。

ネロは演劇でもどうかと言ったが。

このマッシリアには劇場はなかった。と言うか不死隊とアイオーン教団が大乱闘を引き起こし絶賛封鎖中である。

 

『なら、礼装経由で映画やらアニメやら流すから、それで映画とか見た後で外をぶらつくってのはどうよ』

 

盗み聞きしていたのか、カルデアからムニエルの通信が入る

プランが浮かばないのなら映画でも見て。

外でもぶらついたらどうだということになった。

これはネロが食いついたという事もある。未来の演劇もとい映画に興味津々であるし。

アニメーション作品にも興味を示したからだ。

丁度良い息抜きとしてムニエルに作品を選んでもらい。

送られてきた映像投影礼装(本来は潜入任務とかで使うデコイ)を使い見ることとなった

それから数時間後

 

 

「あーそろそろ・・・外行かない?」

 

オルガマリーがそう言う。

 

「今良い所なんですよ!?」

「ブランドンどうして・・・・」

 

それを跳ねのけるのは食い入るように見ていたマシュとネロだった。

最初は復讐物だと思っていたが、裏社会で生きる男たちの友情と裏切りを描いた傑作アニメである。

今丁度過去編に入り、登場人物の過去と心情が明かされていくシーンであった。

マシュは此処で切るのかと声を上げ。

ネロは主人公がヒロインの好意を彼女の幸せのために会えて振り切るシーンに愕然としている。

ネロからすればラブロマンスものだと思っていたら、これなんだとどうしてともいいたくなるだろう。

もっとも達哉は主人公の気持ちは痛いほどわかった。

分かってしまう物なのだ。自分の器を知ってしまえば愛した者が幸せになれるのかと。

言ってしまえばいくら幹部格とはいえ主人公はヒットマンだ。

故にしっぺ返しは帰ってくる、ヒロインの幸せを想うのなら自身が父と慕う組織の長に譲るのは痛いほどわかっていたし。

同時に主人公とその親友の友情の歯車のずれも分かった、分ってしまった。

故にこのままだと、男たちの挽歌だとかゴッドファザーを履行している達哉とオルガマリー以外の二人は胃もたれしてしまうと達哉は判断し。

 

「所長の言う通り外に出よう、目がシパシパしてきたしな」

 

眼が映像ものを長時間みた固有の現象に見舞われているため外に出ようとオルガマリーの意思に同調する。

 

「タツヤのいう通りよ、それに私達集中しすぎて昼飯もろくに食べてないじゃない」

「それも・・・そうですね、ネロさん、此処は一旦外に出て「ブランドンどうして・・・」 拙いです所長、先輩、ネロさんが思いのほか以上にショックがでかすぎて亡失状態に」

「とりあえず引っ張って行こうか・・・」

 

ショックがでかすぎたのか。茫然自失状態のネロを引っ張りつつ。

四人は市場へと繰り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

達哉にとってはこうも荒事が関わらず友人と街を練り歩くなんてどれだけ久々の事だったか。

それこそ下手すればあの火事が起きるまでの小学生以来と言う奴である。

もっとも男が自分ひとりと言うのは胃にくるものがあったが。

なんでネロ皇帝まで女性なんだと男一人とはきついものがある。

あのセクハラ魔王がカルデアに現れてから女難が一層厳しくなったような気がして。

達哉はマーラを恨んだ。

 

余談ではあるが観測に入っているマーラは達哉の疑似ハーレム状態に血涙を流していたと某宰相が語っているがどうでも良い事であろう。

ニャルラトホテプは笑い転げていたが。

閑話休題。

 

 

「ブランドン~なぜだぁ~」

 

ワインを煽りつつネロがいまだにショックを引き摺りながら嘆く。

やはりあの光景はさぞショックだったのだろう。

 

「そうですよね・・・長年思っていった女性を振るなんて・・・どうして・・・」

 

人の機微にうといマシュも顔を曇らせ気味に同意する。

因みに彼女は持ってきたぶどうジュースを飲んでいる。

そんな最中、達哉だけは外に目をやって、ベルベットルームで購入した麦茶を飲みながら。

外に目をやる。

 

『近隣警邏移駐のみんなへ、不審人物発見、データを送る、捕縛されたし』

『一番近いのは当方か・・・了解捕縛に向かう』

 

先ほどから自分たちをつけ回している奴らがいる。

補足した感じ薬物中毒者だ。

それらが数人連携を取って追跡してきたのだ。

眼の礼装の録画機能で対象を撮影し、捕縛命令を出す。

近場のシグルドが対処することになった。

それにふぅとため息を吐きつつ達哉はエールを胃に流し込む。

この時代、衛生観念から言えば酒が安全であった。蒸留技術の発展具合からアルコールも少ないので致し方なしにと言う奴である。

 

「先輩は・・・ブランドンさんの気持ちが分かりますか?」

 

アニメの話題でワチャワチャしていた三人が突然と達哉に話を振う。

 

「まぁ分かるかな・・・結局のところ分かってしまうんだよ、自分がやってることを自覚していると」

「そう言う物なのでしょうか?」

「そうだ。マシュ。幹部候補とはいえ殺し屋だ。人の命を食い物にしている以上、復讐やら報復ってのは付きまとうんだ。現役とくれば猶更だろう、ブランドンは彼女の幸せも考えてビッグダディにマリアを託したんだ。愛する人の幸せのために。それに」

「それに、なんだというのだ達哉?」

「彼は友人と上がる事も考えていたからな、両方切り捨てられない以上そうするしかない」

 

そう言った意味では彼のとった行動は自分の幸せこそ二の次だったが。

最善策であると達哉は思う。

と言ってもあそこからあの現代につながる事や。

主人公とその親友の独白がズレ始めているのが達哉的には気になった。

あそこから相当拗れるのだろうと思う。

 

「しかし、未来の世界とはすごい物よな。絵をああいう風に動かす技術や役者を派手に動かす技術は凄まじい物が在る」

 

そこから話がそれて、ネロは現代の映像技術に感銘を受けていた。

人間ではできない動きを可能とする各種技術にえらく感銘を受けているのだ。

 

「CGもいいけれど、日本の特撮もすごいわよ。ゴジラVSビオランテの操演も圧巻だった」

 

オルガマリーが意外な事を言いだした。

彼女ゴジラを見たことがあるというのは実に意外だった。

 

「ほう、そんなにすごいのか?」

「ネット映像のクリップがあるからそれを見せるわね」

 

礼装経由でオルガマリーは自室のPCに接続、映像クリップを展開し見せる。

植物の怪物であるビオランテがゴジラに突撃するシーンだった。

 

「これ全部人力なのよ」

「すごいです」

「本当なのか?」

 

マシュとネロはこの動きがノンCGと言うことに驚きを隠せないでいた。

機械工学などに詳しい達哉も関心してみている。

 

「うーむ、余のプロデュースする劇でも出来ぬものか・・・」

「無理よ、歌劇のステージ程度の広さじゃぁね・・・それにワイヤー技術も無いでしょ」

 

やりたくてもそも、使うワイヤーの精製技術が無ければお話にならないわけで。

加えて出来たとしても操演とは多人数の連携プレーがものをいう。人材を集めただけでは駄目である。

まぁどうあがいたところで、この時代ではできないわけで。

 

「でも操演も、CG技術にとってかわられちゃったのよねぇ」

「まぁそれは仕方が無いだろう、CGの方が金掛からないし」

 

しかし如何に卓越した匠の技とは言え、それに代替且つコストも少なくより細かい動きを出来るCG技術にとってかわられるのは仕方の無い事であろう。

 

「まぁそれは置いて置いてだ、余は、これを見たいぞ」

「・・・やめておいた方がいいと思うわよ」

 

ネロがゴジラVSビオランテを見たいと言いだすが当のオルガマリーが止める。

それには理由がった。

 

「シリーズものだから平成シリーズ見ないと理解できないし、ビオランテはオチがねぇ」

「まぁ俺も見に行ったからわかるが・・・あのオチは流石に・・・」

 

最後のオチでミスったのがビオランテである。

当時平成ゴジラ全盛期の頃だった達哉は映画館に足を運び、オルガマリーはDVDを購入し愕然としたものである。

当初ギャグかと思ったほどだ。

シリアスぶち壊しにされて余韻も糞もねぇのである。

 

「なんとシリーズものなのか?」

「ええ、ここ最近はやって無いけれどね。たぶんお金とかの問題で」

「あの、所長、一応ハリウッドがやってましたよね・・・ゴジラ」

「あんな鮪食ってる奴はゴジラじゃないわよ!、ジュラシックパーク見た方が有益だわ!!」

 

マシュの指摘にオルガマリーはキレ気味である。

どれだけ酷かったんだと達哉は思った。

1999年以降のゴジラがどうなったのか、彼は知らなかったからである。

鮪食うゴジラって何だと、逆に興味の沸く達哉であった。

ゴジラとガングレイヴという共通の話題で四人は盛り上がりつつ。遅めの昼食を取って。

宮殿へと戻り、再びガングレイヴの視聴に戻る。

今度はサトミタダシで購入したビールとチューハイ、あとネロのリクエストで再びオルガマリーが作ったクロックムッシュを食べながら。

四人はワイワイやりつつ、時間が過ぎて行った。

 

 

 

 




ロストジャッジメントやっていて遅れました。本当に申し訳ない
あとちょっとメガテン色強すぎた反省してます。
後半戦はパレス攻略なのでペルソナやるから許してください


ゼット超絶舐めプ、レフ右足を腐食捕食したのは自分の領地を展開する固有結界をごく小規模展開。
攻撃のハッキングは赤犬理論でレフは魔術式でゼットは魔王として格が上であるため容易に可能。
レフの攻撃が効かなかったのは単純にゼットはゼット本体が超気合い入れて作った遠隔操作端末の様なもので、ゼット本体とほぼ同性能の分霊という霊基密度を持っているためです。
倒したかったらライドウやメガテン主人公とかデビルチルドレンとか双子の悪魔狩人片割れかその兄貴の息子などの内の誰かを呼んできてください


そしてペルソナ名物カルト教団です。
薬物キメてペルソナしてくる厄介な連中です、なお幹部たちはネロパレスに居るので事実上無力化されているけれど。
樹の開封の為に下っ端連中が暴れているのが現状です。
サーヴァントやペルソナ使いであれば鎮圧は楽ですが、相手は薬中なので一般兵士の手には余ります。
キメてる薬は、桐条が作ったペルソナ抑制剤の応用で逆に強引にペルソナを引き出す代物。
用意したのは教団を裏で操っていたソーンことニャルが用意しました。

因みに四人が見てたのはガングレイヴアニメ版ですね。
あれ見たら誰だって泣くよ、名作だよ本当に。
ムニエルがたっちゃんの好みに合わせました。所長もゴットファザーとか履行していたんでムニエルが気を利かせました。



次は今回より遅くなりますのでご了承ください。





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