Fate/Grand Order たっちゃんがグランドオーダーに挑むようです 作:這い寄る影
うちの庭に、立派な。立派な・・・・
GTOより抜粋
ザンッ!!、その音とともに数体のディアブロが崩れ落ちる。
ネクロカリバーは両刃剣だ。
熟達した使い手が使えば複数人を一気に制圧できる。
加えて克哉のペルソナパワーを込めたニューナンブは一発で楯列に陣を構えていたディアブロ数体を撃ち抜く。
「全く数だけは多い」
「このタイプは数で押すのが、常ですから」
確かに数は多い、だが極まったペルソナ使いと最高のヴィランとしての英才教育を受け実戦経験を積み重ねた存在には鎧袖一触されるだけだった。
量が質を圧するという言葉があるように、逆もまた成立するものだ。
質が量を圧する、なにも珍しいことではない。現実ではそうもいかないがサーヴァントとペルソナ使いとなるとその方程式は成立するのだ。
故に数押しタイプのディアブロなんぞ二人の敵ではないのである。
だからこそ順調に敵を片付けて奥へと進む。
目指すはブリッジ、多くの制御系が並ぶ場所でもあり敵の玉座でもある。
礼装越しの通信では状況は優勢であった。
達哉の率いるチームは推進室の制圧まであと一歩というところまで来ているし。
オルガマリー率いるチームも刑部姫に苦戦中ではあるがリソースの削りあいに移行した以上制圧も時間の問題だった。
要するにテロリストなんぞこうである。
正規の部隊には勝てないと相場が決まっているのが当たり前だ。
「さてカードキィなんて僕たちはもちろん持っていないわけだが・・・」
「カードキィならここにあるでしょう?」
ブリッジの扉の前まできてそう冗句を交わす。
二人は無論ブリッジに入るカードキィなんて持ち合わせていない。
だがマスターキィに相当するものを持っている。
謎のヒロインXオルタが持つネクロカリバーだ。
この程度の扉ならネクロカリバーでロックを破壊し、二人の蹴りでこじ開けることは容易である。
だからこそ謎のヒロインXオルタは扉の中央にネクロカリバーを差し込みジジッという音とともにロック部分を溶断。
そして二人で蹴りを加えこじ開け、ブリッジにたどり着く。
「やはり来ましたか、周防克哉、謎のヒロインXオルタ」
そしてそこにいたのは白いヘルメットマスクに白いマントに青を基調とした戦闘服を身に纏っている女性だった。
脇には漆黒のディアブロ。
ディアブロの最高級モデル。サーヴァントに匹敵し得る数ある軍用の中でもワンオフに近い諮問官モデルが二体控えている。
「当たり前ですよ、この世界の技術基準で来れるのは私達だけです。そして」
謎のヒロインXオルタはそういった。
確かに、米国が秘密裏に神の杖を配備している世界ではあるが。
それでも大規模な施設なしには宇宙に上がれない。
個人が宇宙に飛ぶというのはまだ無理な世界だ。
故にこういうほかないのは道理。
それはさておきながら謎のヒロインXオルタは――――――
「何やってるんですか、X」
白マスクの正体を見破った。
いやでもわかる。元は同じ霊基より生み出された双子の様な存在だからだ。
故に正体を見たりというやつだ。
「やはりアナタを誤魔化すのは不可能ですか・・・」
「いやせめてボイスチェンジャーくらい使え、僕でも一発でもわかったぞ」
「シャラップ!! 今いい場面なんですから! そういう突っ込みは後にしてください!!」
「ええ・・・」
克哉の突っ込みにシリアスやってんだから黙っていろと叫ぶ。
「決まっているでしょう? 未来の私が銀河警察とかいう内実ブラックな場所に就職してあんな様になるなら、こんなこともしようもんですし。政治家共の糞っぷりを見もすればこうもなろうというものです」
自分をふりまく糞っぷりに嫌気がさしただけだと。
ある日突然現れた影に真実を見せつけられ嫌気がさしたのだという。
「ニャルラトホテプか・・・だが君のそれは至る可能性というだけであって、今の行動を見直せば避けられる行為だった」
克哉は一発で謎のヒロインXがそうなった経緯を見抜いた。
ニャルラトホテプの仕業であるとすぐに理解できたからだ。
あの事件を通して謎のヒロインXと首謀者たちの姿がうっすらと重なったからだ。
「ええ、あなたのいう通り、彼に私は至る未来を魅せてもらいました、故に認められません、あんなブラック企業に就職して疲れたOLみたいになる運命なんて!!」
「・・・それでも君が自分自身で選んだ道だろうに」
克哉は哀愁を漂わせながら謎のヒロインXの言葉を切って捨てた。
なぜなら自分もそうしたからだ。
親の事もあった、弟の事もあった、いろいろあった。
だから後悔はあっても未練はないゆえに、そう切って捨てたのだ。
もしかしたらの自分の姿がそこにある。
だが受け入れなければ弟の達哉に申し訳が立たぬし、そのうえで否定しなければ今の自分を否定することになるからだ。
そして克哉の事情も謎のヒロインXオルタは理解している。
一年も同居生活しているのだ。
思わぬはずがない。菓子作りを趣味としているのに喫煙していることを不思議に思って聞いたことがあるからだ。
そしたら身の上も話されたのだから知っていて同然だ。
克哉はその道を誇っている。
故に甘えに走り世界改変なんぞに走った謎のヒロインXを謎のヒロインXオルタは許せない。
それぐらいに克哉が宇宙の星々を見ながら語った彼自身の歩みと影の起こした事件は苦しく光り輝いていたから。
そうだとも、彼らのように生きたいと謎のヒロインXオルタは思ったのだ。
誰かに言われたわけではない自分がそうしたいのだと願ったからだ。
無論それに付属する影に翻弄されることも覚悟している。
故に自分が選んだ道、克哉が歩いてきた道を謎のヒロインXオルタは謎のヒロインXが侮辱しているようにしか聞こえなかった。
「もう私の知っているXはどこにもいないのですね」
「ええいませんよ、ここにいるのは型月ナンバー1ヒロインの謎のヒロインダースXですからね!!」
「知ったことではありませんよ、そんなこと、私から見ても型月ヒロインなどではなくヒドインですよ今のあなたは」
「・・・ほざくな!! えっちゃんは私がやる、ディアブロは克哉を抑えろ!!」
『『了解』』
「えっくん!!」
「大丈夫です、任せてください」
そういってダースヒロインXは剣を構え、消えた。
瞬間的に謎のヒロインXオルタは反応、ネクロカリバーで受け止める。
ジジと光刃同士が激突スパークする。
それと同時に諮問官モデルが二体同時に克哉に襲いかかった
「貴女はいいですよねぇ!! やけくそ強化でオルタ兄貴と同レベルのバーサーカー性能なんですから!!」
「いやいや、今時兄貴オルタって!? 今の主流はオルジュナですよね!?」
「うるさい黙れ!! 単騎Q宝具だってスカとスカ水着で復権、おまけにイベボイスでは超優遇待遇、キャラストだってそうです、あなたはアイドルまで行って私しゃ社畜ですよ!? こんなのあんまりじゃないですか!! ひどすぎるじゃないですか、ふざけるなぁ!! それで今はあれですか!? 初恋失恋確定ですけど、次のピクシヴに番外編投稿するならアナタと克哉との宇宙冒険譚ですか。なんで何時も何時もアナタだけが優遇されて私だけ、某赤い人のように情けないを晒す羽目になった挙句。ブラック企業に就職したOLキャラなんぞになっているんでしょうか! おかしいでしょう!? 常識的に考えて!!」
「金に釣られて銀河警察なんてブラックまっしぐらな職場に着いたのは、アナタ自身の意思でしょうに!! 下調べしてないあなたが悪いとしか言いようがないでしょうが!! というかアイドルって何です?!」
境遇での八つ当たりではないかと、謎のヒロインXオルタが刃を返しつつ謎のヒロインダースXXはエクスカリバーで返される刃を受け止める。
だが謎のヒロインXオルタの攻めの手は緩まない。
元々両刃剣とは棒術を主体とした攻め手だ。
防衛より攻めの続けるほうが理に適っているのである。
そこに片刃を消しては表しを繰り返し相手を幻惑する
だが手が鈍る、相手が親友であることは無論起因しているが第四の壁を越えたネタを連発されるせいで困惑するほかないわけで。
「下調べしても情報が出てこないからこんな羽目になってるんですよぉ!!」
「いや、出てくるでしょう、大方、丼勘定とかで自分ならすぐ上に上がれるとか思って受けたんじゃないですか!?」
「ギクッ」
「図星ですか!? ふざけないでください!! 世の中家族のために選択を妥協する人だっているんです!! それなのにあなたは適当に職を選んで八つ当たりとか、ふざけるな!!」
エクスカリバーをはじき後退、左手からオルタライトニングを射出。
謎のヒロインダースXはエクスカリバーでそれを受け止め苦悶の表情を浮かべた。
「うるさい!! それ以外に職業適性がない私の悲哀があなたに分かりますか!?」
「そんなに気軽に過ごしたいならバウンティハンターとかの自由業があるでしょうに、あなたはそうです、何時も何時もズボラに適当にやってはしりぬぐいさせられるのは私だった!!」
学生時代の話を持ち出しつつオルタライトニングの出力を上げる。
それに比例して負けじと謎のヒロインダースXも聖剣の出力を上げた。
「そして今度は職場待遇だのスキル調整がどうのこうのストーリー扱いが悪いだの、文句言うな!!」
「なにを・・・それは恵まれている者の意見です!! アサシンと言えば今はカーマ タマモ光の二択じゃないですぁ!! 私と同じ顔ばっか量産した挙句、シリーズの中では一番の不遇ぐらいの扱いをされている私の気持ちがあなたに分かりますか!?」
「バーサーカーポジの私も出番ないですよ、それ言ったら」
「スカスカで復権した奴が何言うか!!」
「それはあなたも一緒でしょう!?」
「星稼ぎもジャックに負け、攻撃力補正値の低いアタッカーアサシン、限定的特攻持ちの私が見向きもされないのは当たり前でしょうが!!」
「それは極論です!!」
「うるさい!! 運営が好き勝手、セイバー顔生産した挙句塩漬け性能にするなら、私も好き勝手するまで!!、この鋳造されたエリザ粒子弾頭を星の中枢核に打ち込み、根源に干渉、スキルを人権にする!!そうです・・・」
オルタライトニングがはじかれ互いに後退。
そして謎のヒロインXオルタは見る。かつての親友の表情が狂気に歪んでいることに。
「強力なステータス!! コマンドカード一色三枚!! 威力があり汎用的特攻の乗る宝具!! カッコいいバックボーン!! 下半身に直撃する絵!!」
突然としてメタ的意味不明なことを言い出す。
マスクからチラ見する彼女の双眸は赤く真紅に染まっていた。
シャドウに乗っ取られつつあると謎のヒロインXオルタは感じる。
シャドウの原理、それは克哉がすでに話していたからだ。
「あとはそこに人権キャスターと私以外のサーヴァントが下方ナーフ修正されば、完成する!!」
「ならば答えろ、私とお前、何が違う!! やけくそ強化を貰っていいバックボーンを付けてもらい他のサバを殺したお前!! 碌な強化を貰えないから私自らの手で強化し他の鯖を殺そうする私!! 無自覚の殺人と自覚ある殺人、どこが違うというのか!!」
「分からんか?」
「分からんか!?」
「ウヒャハハハハ!! 高難易度の特別エネミーを真正面から小細工抜きで単騎で攻略する!!」
「痛快で爽快、だから人権なんだ!! これが美だ!!」
「分からんか? えっちゃん、分らんだろうなぁ!! 謎のヒロインXオルタァ!!」
もはやシャドウも主人格も狂って交じり合い訳の分からないことメタ的にほざき始めた。
だが問題は、制御システム諸々を握っているのはコンソールではない。
現に誰も彼もコンソールに触っていないのに勝手に動いている。
いうわゆる脳波制御システムだ。
今謎のヒロインダースXがかぶっているマスクによって遠隔操縦されているのである。
止めるにはマスクをはぎ取るか彼女の首を斬り飛ばすしかない。
前者は物理的に困難、こうも高速戦闘をしながらマスクだけを狙うのはほぼほぼ不可能。
技量が極まっている宗矩や書文にクーフーリン、そして時止めを使える達哉なら可能かもしれないが。
少なくとも謎のヒロインXオルタではそれができない。
であるなら必然的に後者となるのだが。それも今まで気づき上げた絆が足を引っ張ってできはしない。
いくら狂おうが友人は友人なのだ。殺すことなんてできはしなかった。
「ヒャハハハハハ!! 撃ちーかたはじ・・・・」
狂気のまま引き金を引いた瞬間だった。
克哉と謎のヒロインXオルタの通信機に連絡が入る。
『こちらオルガマリー、エリザ粒子弾頭の確保&星間砲撃システムの鎮圧に成功』
『こちら達哉、ブースターユニットの確保に成功した。そちらに合流する』
すでに謎のダースヒロインXは裸の王様だった。
砲撃ユニットを抑えられ、ブースターユニットですら抑えられた。
つまり打てないし仰角をとれない。
これには訳がある、いかに刑部姫とはいえ単騎でオルガマリー軍団を相手どるというのは無理なことだ。
ブースターユニットも同じ理由である。
質と数で両立されたなら勝ち目がないのは至極当然であり。
ユニット奪還のためのクラッキングツールをオルガマリーと達哉に事前に謎のヒロインXオルタは渡しておいたのだ。
そのことに唖然となった謎のヒロインダースXの側頭部に謎のヒロインXオルタの上段蹴りが叩き込まれ壁際までふっ飛ばされる。
壁を陥没させるほどの威力だが、追撃として克哉のニューナンブの四連射が謎のヒロインダースXの四肢を貫き行動不能に陥らせた。
いくらサーヴァント級の戦闘能力を持つとはいえ極まったペルソナ使いには上位サーヴァントクラスでなければキツイものがある。
現に諮問員は黒煙を上げて行動不能になっていった。
「はぁ・・・はぁ・・・・」
「なぜ・・・だ私」
「確かにそうあればいいですね・・・けれどそれは違うでしょう私・・・」
「皆、苦労している、小細工抜きで生きていけるほど世の中は甘くない」
そう皆苦労して攻略法を積み上げてきた。そこに人権だのなんだのはないのである。
好きな風に戦い好きな風に勝つ、それがそれぞれの戦いであるがゆえにだ。
「もうじき達哉やオルガマリー達も合流する、あきらめるんだな」
克哉がニューナンブの弾倉を露出し排莢しつつ、そこらのプロが裸足で逃げる速度で装填しながら降伏勧告を行う。
「そうです、逃げることはできません、上位サーヴァントを連れたペルソナ使いのマスターがこちらに向かってきてます、それにここはサーヴァントユニヴァースじゃない、もう私たちが大立ち回りなんてする必要がないんですよ」
「・・・まだだ!! 何も終わっちゃいない!! 何も終わっちゃいないんだ!! 私にとって戦争はまだ続いたままなんだ!! 現に第二部終わったと思ったら次があったじゃないですか!! そしてXX化したら皆好き放題いいやがる!! あいつらなんなんだ!!何も知らないくせに!!」
「時代が悪かったんだとしか言いようがない」
「悪かった!? ちっとも現状良くないっどころか主要時間軸では最悪の引き延ばし展開、この世界線ではニャルラトホテプが暗躍して難度上昇!! ふざけているのか!!」
「だったら最高のヒロインって栄誉を捨ててこんなところで死ぬんですか?」
「私だって最初は推してくれる人がいてメインを務めていました!! ですがアルトリア顔が増えるたびに人は移動して、挙句未来は疲れたOLそしてORTへの使い捨ての鉄砲玉扱い!!、この時間軸アーサー王はやらかしの元凶!! 帰ってくるんじゃなかった!! 必要とされるのはいつも最優戦力だけでした。それでもですが戦場には仲間がいたんだ!同じ待機組って仲間が!!」
そして謎のヒロインダースXは膝を抱えて泣き出した。
だが誰も責めることはできない、誰だって自分を必要としてくれる場所を探しているからだ。
だから泣く謎のヒロインダースXを謎のヒロインXオルタは黙って抱きしめた。
「兄さん、無事か!?って全部終わったのか・・・」
「ああ終わったよ・・・」
そこに達哉とオルガマリー達も合流する。
全ては終わった後は引き揚げ作業やらなんやらの事務的手続きにと思った瞬間である。
船が揺れた。
『いやはこの土壇場で日和るとは全く情けない執念だ』
モニターにアルビノの美青年の顔が映し出される。
同時に各モニターにワーニングの文字が浮かび警報が鳴り響く。
「アナタは、マキシマ・・・」
『そうだよ、久しぶりだね謎のヒロインX、どうしたんだい? 君の目的はかなうんだ』
「え?」
『君の目的には鋼の大地とサーヴァントユニヴァースに分岐する起点への干渉による改変だ。あとはこの燃えた大地でエリザ粒子を爆散させれば・・・作業は完了だ』
マキシマと名乗るニャルラトホテプはコロコロと嗤いつつそういう。
人理の分岐点、その結末は地表をエリザ粒子で満たすことによって完成するのだと。
『試作品だ。盗まれるくらいなら自沈させるプログラムくらい組んでいる、それを解除したのは僕で。どのような状況になろうとも君の願いが叶うようにした。喜びたまえよ』
その瞬間、さらなる振動。
船が地球へ向けて下降し始めた。
さらに落着と同時に自爆する機能まで作動。
このままでは船の核融合炉エンジンの爆発とエリザ粒子の飛散もあいまって地表がエリザの冬が訪れる。
そしてそのままニャルラトホテプの通信が終了し。
全員がまたかよと思いながら席に座る。
達哉とマシュは操縦桿を握りしめて、オルガマリーはクラッキングツールを突っ込みつつシステムをカルデアへとつなげる。
いかんせん根本的クラッキングとなるとオルガマリーとクラッキングツールでは役不足もいいところ。
高度も下がりカルデアとの通信も回復したため、そういうのに得意なスタッフの力も借りることにするのは当然の処置とも言えた。
「所長、自爆解除までどれくらいかかる!?」
「6分待って!!」
「そのくらいなら何とか・・・」
「ですが先輩、船を地表に落したらそれだけで人理崩壊ですよ!!」
未来船が地表に落下。
軟着陸時点でも相当にやばいのはマシュのいう通り事実だ。
だが達哉には冷や汗かきつつも当てがあった。
「幸いにもこの船はチェイテ特異点とのつながりがある、このまま特異点のチェイテ村に落す」
そうこの船はチェイテ特異点とつながっている幸いにもだ。
出なければエリザ粒子の転送輸送なんてできるはずもない。
そしてチェイテ特異点はその方式上人理に影響しない、落とすには絶好の場所である。
「え、ちょっと待ってよ!! 街中に落すとか言わないでしょうね!?」
「そこまではしない、落すとすれば外れの墓場だ」
エリザベートの抗議に達哉は当たり前のように答えた。
市街地に落す気はない、人間として人理修復者として、よほどの事がない限り人員の欠損は認められないからである。
それを容認すればただのテロリストに過ぎないがゆえにだ。
だからこそ全員が最善を尽くすのはいつも通り。
いつも通り過ぎて通常運転みたいになっているが必死さは決して嘘ではないのだ。
と言ってもバイクのコントロールとはわけが違う。
騎乗スキル持ちのマシュのほうがうまくやれるだろうが複数人で操縦する以上いないよりはましだろう。
「俺はマシュのサポートに回る、マシュ頼めるか?」
「そうは言いたいですが、脳に回ってくる情報が多すぎて」
「マシュちゃんに私も同意、ちょっと無理があるわ」
騎乗スキルに反して彼女自身のスキルが追い付いていない。
当たり前だ。バイクや馬のシュミレーションはやったが、宇宙船の操縦なんてしたことがない。
騎乗スキルによる知識と操縦のバックアップがあるとはいえ限度がある。騎乗の形式が古代と違う。
まだバイク程度なら何とかなろうが複数人で制御される宇宙戦艦を一人で制御するのはいかな高位騎乗ランク持ちでも分身でもしなければ不可能だ
それはマシュよりも高い騎乗ランクのマリー・アントワネットも同じだ。
「結局俺か! マシュ、マリーさんサポートを!!」
「当方たちは何をすればいい、マスター?」
「シグルドはオルガマリーの補佐、他はまだ稼働中のディアブロがいるかもしれないから第一種戦闘態勢で待機!!」
「「「「「了解」」」」」
操縦桿を握りブースター出力を最大限にしつつまずは星を一周する。
だがいくらブースター出力を最大にしても出力は下がる一方だ。
ニャルラトホテプが組んだプログラムは強固でオルガマリー&シグルド+カルデアのプログラマーチームが総出で当たっても五分五分という状況である。
「こうなったら・・・ブースターユニットを起爆させる!!」
どう考えても地表に落下すると判断した達哉はブースターユニットの自爆させる判断を下した。
「でもそれじゃ余計に」
「大丈夫だ、ブースターユニットを暴走させて指向性を持たせた上で自爆させる、そうすればスピードも出るしあとは姿勢制御用のスラスターとスイングバイで特異点に落せるはずだ!!」
出力が低下している以上、もうブースターユニットは使い物にならない。
ニャルラトホテプが仕込んだプログラムを解除してというのも時間がないのだ。
なんせ今船の自爆プログラムを解除するのでやっとこさなのだから。
だったらわざと自爆させて一時的推力を得る、そのほうが賢明だ。
後はスイングバイで特異点を目指す。
『演算結果だしたよ!! 参考にしてくれ!!』
「助かる!!」
ロマニが軌道演算予測を達哉の礼装に転送する。
正確な航路が映し出された。
「というわけで。クーフーリンに長可、メインブースターユニットを適度に壊してきてくれ。それで強制的に自爆システムを起動させる」
「了解」
「あいよぉ」
推力が低下しているなら意図的に壊してブースターユニット自体を臨界に持っていく。
そのため。達哉は再度二人をブースターユニットに派遣する。
いわゆる動かぬなら人力で意図的にというやつだ。
そこからの作業は皆無言だった。
いうことは言ったし。あとはやるべきことをやるだけである。
それで何分たっただろうか? マシュがモニターを見つめるとメインブースターユニットに異常が発生。
臨界までというやつにになっていった。
「先輩、クーフーリンさんたちは上手くやったようです!!」
「よーし、二人とも場を離脱してくれ」
『塩梅よく壊せるか不安だったが上手くいったようだな! 長可離脱すんぞ』
『わーてるよ、このまま宇宙の藻屑になりたかねぇからな』
二人が離脱したのを確認し、自爆と同時にブースターユニットを切り離す。
タイミングが重用だ。地味にノヴァサイザーで0.1秒停止を繰り返しつつタイミングを計る。
もとより門外なのだ。こうでもしなければ達哉でも厳しい。
そしてすさまじい衝撃音が響き渡ると同時に船が加速。
カルデアの提示した軌道ラインへと何とか乗せる
「所長、兄さんそっちは?」
「順調って言いたいけど」
「うまくはいかんな、こういう時に薫の奴がいればいいんだが・・・」
「薫?」
「パオフゥの事だよ、あいつあの一件以降本名を名乗ることにしたんだ」
「克哉さん、しゃべっていないで手を動かしてくっださい」
「すまん、えっくん」
思い出話に移行しそうになったのを謎のヒロインXオルタはたしなめつつ、自身も手を動かす。
厭味ったらしいプログラムだと悪態をつくほかない。
だがニャルラトホテプの化身にはチクタクマンという機械に精通する化身も存在する。この程度のプログラムは悪戯の範疇だろう。
本気になれば最初から詰ませられたのだから。
そして目標ポイント到着まであと一分を切った。
すでに大気圏に降下している、達哉は緊急停止のための各種固定ワイヤーを射出準備した時だった。
「よっし!! プログラム解除成功!!」
オルガマリーの声が響く。
それと同時である、別のプログラムが起動する。
いわゆる連鎖プログラムだった。
船の姿勢が一瞬にして入れ替わるぐあんと音を立てて船の先端が下を向くのだ。
「ちょぉぉおおおおお!?」
「全員身近なものにつかまってください!!」
ブリッジが悲鳴の嵐になる。
モニターに映るのは高速でスライドする地表だ。
さらに上下真っ逆さまになったことでスピードが減衰し。
計算上、このままだと。
「くっそ、このままだとチェイテ村のど真ん中に落ちる!?」
「ええ!?」
達哉のいう通りチェイテ村のど真ん中コースとなった。
「そんなの認められないわ!!」
エリザベートからすれば住人に大損害が出る場所に落すなんて言語同断だ。
何か手はと達哉もマシュもマリー・アントワネットも手を尽くす。
そして思いつく、最終手段。
「一応の手はある」
「あるの!?」
「・・・君の城に船をぶっさす」
「え? ええええええぇぇぇぇえええええええ!?」
エリザベートの驚愕をよそに説明する。
姿勢制御用の重力姿勢制御装置を使えば十分に勝算はあると。
エリザベートは瞬間迷うが。
「領民に犠牲が出るよりはましね・・・やって頂戴」
「わかった!!」
達哉の提案を支持、即座に城に落すように言う。
「ロマニさん、城の人たちに避難勧告を!」
『もうやってるよ!! そしたら全員フェスに出ているから城は無人だって!!』
「わかった!!、目標まで30秒、全員対ショック姿勢!!」
怪我の功名か、何かの導きか、今城に人はいないという。
なら好都合だとばかりに。
まだ手の付けられる姿勢制御スラスターと重力姿勢制御装置を使って速度を殺していき。
落着。振動に揺さぶられながら達哉は船の姿勢固定用ワイヤーを射出し、船を地面に縫い付けたのっだった。
「まさかメーデーやる羽目になるとは思わなかったわ」
「私もですよ、所長」
「二人とも、メーデーってなんだ?」
「航空事故に関するドキュメンタリー番組ですよ、先輩」
「そうか・・・」
そんなやり取りをしつつサーヴァントはサモライザーに戻し。
全員で這う這うの体で何とか船から脱出。
城の部分に抜けて一息ついて、外に出てみれば。
チェイテポエナリ城に見事にドゥスタリオンMk=Xが突き刺さって。
チェイテポエナリドゥスタリオンMk=X城となっていった。
「お墓をつくってあげましょう・・・この子の為に、立派な・・・」
「まずいです先輩、エリザベートさんがあまりの惨状に訳の分からないことを・・・」
「そっとしておこう」
そして城の惨状を見てエリザベートは泣きながら笑いつつ意味不明なことを口走って。
この場は解散と相成った。
さてその後は滞りなく進んだ。
謎のヒロインXオルタは自身の船を修理が終わるのと銀河連邦警察が到着するのを待つことになった。
謎のヒロインダースXはチェイテの地下牢に放り込まれ監視されている。
カルデアの面々はいろいろ終わったということもあって多少の羽伸ばしと相成った。
フェスの後祭を楽しみつつ過ごした。
だが何事にも終わりは来るものだ。
「これは・・・」
克哉とティアの体が粒子状の光となって消え失せていく。
即ち両方の役目が終わったということを意味していた。
「役目は終わったということか」
「Ar」
両者ともに自身の体に戻っていく感覚がする。
ニャルラトホテプの呪縛が抜けたのだ。
「克哉さん・・・行ってしまうんですか?」
「ああ」
「・・・」
謎のヒロインXオルタは当たり前のことを聞いて克哉は躊躇なく言い切った。
この出会いこそ偶然、いずれは別れがセットなものなのだ。
いずれは来ると思っていた。だがいざ直面すると何と言っていいかわからない。
克哉には克哉の生活基盤があり居場所がある。
ここではない。だがしかし一年彼と過ごすうちに彼を好きになってしまった。
だがそれも彼は別の人を愛している。己の気持ちは伝わらない。
もしくは伝えてはならぬだろう。重荷になるからだ。
どうしていいかわからず立ちすくんでいる内に、
克哉の下半身が粒子状になって消えていく中で彼は彼女に近づき。
「えっくん、この一年は助かった・・・本当にありがとう」
「はい」
「ここで僕たちは別れる、今生の別れになるだろう。だからひとつ言わせてくれ、僕たちは心の海を通してつながっている。いつでも会えるさ」
「本当にッ・・・そういうとこ卑怯ですよ、克哉さんはッ・・・さよならです、ですがいつかまたきっと偶然があるなら良きところで会いましょう」
「ああ、それと達哉、みんな元気にやっている、お前も納得のいくようにやれ」
「わかっているよ兄さん。俺はこの世界で生きていく、もう背は向けない犯した罪にも自分にもだ。だから俺は元気にやっているって伝えてくれ、それじゃさようなら兄さん」
「ああ、さようなら達哉」
そして克哉が消える。
風が染みると謎のヒロインXオルタは夜空を見上げた、彼女の頬には一筋の涙が流れていた。
そしてティアも。
「Arrrr」
「ごめんなさいね。振り回すことになっちゃって」
オルガマリーがティアにそういいつつ手を握る。
マシュも達哉も同じように握って手の甲が重なる。
「今度会えるなら少し落ち着いたところがいいな」
「先輩に同意です、ここはちょっとやかましかったですから」
そして手を放しティアも粒子状になって消えていき最後に。
「ソレデモたのしかったです。アナタタチにデアエテよかッタ」
微笑んで消えた。
「それじゃ私たちもカルデアに帰りましょうか」
オルガマリーの言葉と同時にレイシフトアウト。
まだ第三特異点の位相をつかみきっていないということもあってしばらくは通常運転だろう。
そしてあわただしい音楽フェスは幕を下ろした。
ティアことティアマトは自分自身へと帰った。
そこに待ち受けるのは影だった、ニタニタと彼、あるいは彼女は嗤い。
そして告げる。
「どうだった? 私が用意した男は、なかなかの物だろう? そう! 英雄として」
「エいゆうとして・・・?」
「そうだとも、彼らは傷つき嘆き、神を殺すための駒、英雄譚の最後は悲劇と相場が決まっている」
「・・・!?」
「そしてこれが現状彼らが乗り越えた戦場だ」
そこにあったのは悲劇だ。
ジャンヌ・オルタ 冥府の聖女、殺戮の聖人。 皆殺しの荒野
ネロ・クラウディウス 紅き衣を身に纏う大淫婦。ビーストⅥ/R
ヤルダバオト 統制神 大淫婦のまたがる獣。 ビーストⅥ/L
そして達哉が槍で貫かれるシーンとオルガマリーが剣で貫かれるシーンが投影され。
戦場と化した特異点の映像が流れていく。
「ナンデ・・・・」
どうしてとティアは思う。
彼らがなんでこんなひどい目に合わなければならないのか?
「なぜ? どうして?? 当たり前だろう? 彼らは素晴らしい人間だが、所詮は光と闇の境界線を行く只人だ。少し押してやればどちらかに転ぶ砂上の楼閣でしかないのだよ、そんなものに意味なんてないのだ」
「イミ? イミダト?! ソレヲオマエがキメルノカ!?」
「決めるのは連中だとも、そしてそれに見合った試練を用意するのが私の仕事だ」
自分の定義すら揺らぐものに意味はないと嘲笑い。
ティアマトは怒りのままにニャルラトホテプの胸倉をつかみ上げて問いただす。
それでも彼の者は嘲笑うばかり。
「お前もその一人だ。獣に落ちた時点でそれを取り巻く人間模様を混沌とし、超越者を錬成するための火種なのだよ、そして”怒ったな”?」
「!!??」
「いいぞもっと怒れよ、その果てに滅びが波のように押し寄せてすべてを零にするだろうさ、その彼岸の果てで生き残るであろう周防達哉と見合わせて言祝いでやる、貴様と周防達哉ほどの”王”が無から作る世界、さぞや素晴らしいものになるだろう、安心しろ今度は捨てられることはないぞ、アプスーの屑と周防達哉は違うからなぁククク、ハハハハハハハハハ!!」
ティアマトが怒れば怒るほどその本性は暴れだしていく。
抑えるのがやっとだ。
ニャルラトホテプは胸倉をつかんでいるティアマトの両手を振りほどき嘲笑いながら消えていく。
そしてペタンと両ひざをついて両手でティアマトは自身の顔面を覆う。
すでに意識してなければ本体との融合が始まってしまうかもしれないからだ。
それだけギリギリだったのだ。
何とかせねばと思考を張り巡らす、そして脳裏に流れるのはあの優しい人たちと人々。
自分が怒ってしまうことによってすべてが消えてしまうことを自覚した。
「ナントカシナキャ・・・」
だから手持ちの札でどうにかする。
最後に手をつないだ三人からこっそり採取していた遺伝子マップ。
そして自身の自滅因子ともいえるがん細胞染みたものを混ぜ合わせる。
「オネガイ、ミナをタスケテ」
そして混ぜ合わせて兵器として生み出したソレヲ一瞬目覚めて外界に解き放ちまた眠りに入る。
あとは賢王に任せるしかないと。暴れ狂う本心を鎮めながら。
彼女はまた眠りに入った。
そしてところ変わってバビロニア王都 王城ジグラッド
「3uqt@64xjw@rt?」
ジグラット宮殿に現れたのは黒衣を身に纏い羊のような角を持つアルビノの美少女だ。
無論。何を言っているのかは誰も理解できない。
「・・・誰だ貴様?」
「0qdfof]、we3jskbw@r。tygs3ych=d84d8dwd=zh;s/e=4:jdq。」
だがしかし敵ではないということは理解できる
何者からか命を受けたらしいということはほんわかと理解できる。
しゃべるのは異世界言語だがジェスチャーも交えているので。
そこらへんはギルガメッシュもほんわかと理解できた。
さてどうするかとため息をギルガメッシュは漏らす。
如何に敵意はないと言えどいきなりこうも押しかけられては不敬もいいところ。
面倒ごともこれ以上ごめんだったので首でもはねてやろうかと蔵から刃一つ取り出したところで
「ちょっと待ってくれ!! 彼女はティアマトの自滅因子だ!! この子を殺すと冠位を持ってくるしか」
「・・・どういうことだ!! このたわけぇぇぇえええええええええええええええええ!!」
マーリンが慌てて飛び込んできて制止する。
英雄王は絶叫するほかなかった。
突然の切り札。
されどそれは研磨されていない剱。
刃を研ぎ澄ますには経験が必要であり。
同時に刃を握る宿命を持つモノはまだ第2の試練を超えたばかりであった。
これでギャグ特異点も終わりです。
レッスンやライヴの様子ももっと詳しく書きたかったのが反省点ですが。
それするとジャンルが別ジャンルになりかねないのと阿呆みたいに長くなるのと作者の病状の事情で断念しました。
というわけで立った一年でチェイテポエナリドゥ・スタリオンMk=X城爆誕回でございます
えっちゃんは初恋が失恋に終わりながらも明日へと歩き出すことで大人になりました。
かっちゃんは元の世界に戻って今作では退場となります。
まぁニャル的にはガス抜きと自己愛と他者愛を自覚させるために作った特異点ですからね。
あとティアの災害規模が増えるための特異点です。
ニャルられた後のティア
ティア(本能)「オォォォォオオオオオオオオオン(暴走エ●ァ状態)」
ティア(理性)「どうしよう!? このままじゃ・・・みんなが・・・せや!!(こっそり採取したたっちゃん&所長&マシュの遺伝子マップに自らの自滅因子を見ながら)」
ティア(理性)「それらを私の権能でこうしてこれして・・・、よし、あとは頼んだよ、私達の娘!! ラハム!!(教育は賢王とノッブに丸投げ)」
知らぬ間に娘が人知れずできているたっちゃんと所長とマシュのまき
ラハムはラフムの姉にあたる存在です、伝承にもちゃんと書いてある、最も本作のラハムは使った遺伝子マップやらなんやらでラハムはちゃんとした美少女型ですねはい。
ティアマトを殺せるがん細胞の役割を持ってますが、教育されていないため、能力は不完全、彼女が完全になるには賢王とノッブの教育手腕にかかっています。
賢王&ノッブ「休みを・・・休みをクレメンス・・・」
ニャル「計画道理(ニチャア)」
なおニャル的にはそれも計画道理です。
じぃじ? 来れるといいですね(暗黒笑顔)
あとORT初公開でしたが圧巻ですね。
本作ではインフレが進むのとスティーブンが残してくれたもので何とかなりそうです。
もっとも自分が第二部できる気力が残っていればですが。
あと水着イベントですが第四終了後のイベ特異点終了後に書こうと思っていましたが。
イベント連続じゃぁなということで。
第三特異点終了後に書くことにしました。
あと作者の近況ですが、日常生活にも支障が出るレベルで状態が悪化しているので。
次も遅くなると思います。